●拳銃の不正押収は「絶対に楽しいこと」死刑囚の告発をもとに、記者が殺人事件の首謀者を追い詰めていく犯罪ドキュメント小説『凶悪』。山田孝之の主演で2013年に実写化され、第37回日本アカデミー賞の優秀監督賞をはじめその年の映画賞の28冠に輝いた。原作からはジャーナリズム精神を正義とする記者の姿が浮かび上がるが、映画では悪事を暴くことにのめり込み、家庭が崩壊するという闇の部分も映し出す。妻からの「面白かったんでしょ?」という言葉は、山田演じる藤井の心を深くえぐる。この作品を手掛けて一躍時の人となった白石和彌監督が、今度は北海道警察の不祥事をテーマにした映画『日本で一番悪い奴ら』(6月25日公開)でメガホンをとった。綾野剛演じる刑事・諸星要一は「正義の味方、悪を絶つ」という信念を持ちながら、先輩刑事・村井(ピエール瀧)の教えに従って、裏社会に身を投じる。スパイであるSの協力により次々と拳銃を押収し、「銃器対策課のエース」と呼ばれるまで昇りつめるが、「日本警察史上、最大の不祥事」によって破滅の運命へと導かれる。『日本で一番悪い奴ら』の原作が、主人公のモデルである稲葉圭昭氏のノンフィクション小説『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』。この小説は同氏の懺悔録とも言える内容だが、一方で映画はド派手で浮世離れした私生活や倫理観が麻痺した姿も描くことで、笑いのエッセンスも加えている。この常に"二面性"を重視する白石監督とはどのような人物なのか。「インモラルなことをできる範囲でやらなきゃダメ」「そういうものを作る責任が自分にはある」という強い信念で突進する北海道出身の白石監督。撮影秘話のほか、「表現の自主規制」や「邦画界の未来」といった"白石イズム"の根底にも触れた。○「不正」テーマの作品に正義感はない――試写室が大混雑で、途中からは笑い声も。評判はどのように伝わっていますか。試写で入れない方がたくさんいるとは聞いていますけど……僕にはいい話しか伝わってこないですからね(笑)。まぁ、興奮気味に褒めてくださる方もいるので、まず1つ目の階段は上がったかなという気はします。――前作の『凶悪』が重いテーマだったことから、今作はエンターテイメント性に重きを置いたそうですね。原作が懺悔録のような内容だったので、「告発するヒーロー」として描く選択肢もあったのではないでしょうか。私も原作を読んだ時に、告発したい気持ちが全面に出た懺悔録だと受け止めました。ただ、100丁もの拳銃を押収するのは、「絶対に楽しいこと」なんじゃないかと。右折禁止のところで警察に待ち伏せされたことってありますよね? そういうのも、実は楽しいはずなんです。低姿勢に「すみませんね。急いでるのは分かるんですけど、免許証見せてもらっていいですか?」なんて言われますけど、こちらがキレるのを待ってますからね(笑)。警察の方も同じ人間ですから、そんなもんだと思います。このあたりのことを原作の稲葉(圭昭)さんに尋ねてみたら、やっぱり「楽しかった」と。ヤクザを養って一丁1~2万円で拳銃を仕入れるのは、コスト的に完全な赤字なわけですから、楽しさや興奮がないとやってられませんよね。――綾野さんが演じた諸星は、見方によっては仕事熱心なタイプとも。ただ、一線を越えると人が離れていくのも、残酷ではありますが現実ですね。組織というものは、調子に乗っている時は頼られますが、不要とされると煙たがられるもの。政治、野球、相撲……世の中の組織内ではだいたい同じようなことが繰り返されていると思います。――『凶悪』の原作はジャーナリズム精神で突き進む週刊誌記者の話でしたが、映画では奥さんから「面白かったんでしょ?」という核心をつく言葉がありました。そういう人間の二面性は常に意識されているんですか。『凶悪』の原作者・宮本太一さんはとてもすばらしい方ですし、ジャーナリズム精神を実践して高い評価を得た方。そこを映画で描くことは重要だと思いますが、一方で「結局それで飯食ってるやん」「何部売れたって話をしてるんでしょ」という見方もされるわけです。それはテレビやほかのメディアも同じだと思います。僕らだって北海道警察の悪事をテーマにしていますが、公開初日に果たして何人見てくれたのかはやっぱり気になります。そこには「正義」も「悪」もないと思うので、そこから一歩引いたところで見たいという思いは常にあります。――『週刊文春』の編集長を取材したことがあったのですが、仕事に「正義」はないと。同じようなことをおっしゃっていました。そうなんですね(笑)。売れるものが「良いネタ」とされるわけで、われわれもヒットをすればそれは「良い映画」になる。○シートベルトしない描写は「もっと自由を」の悪意――今回の映画では、刑事がシートベルトをしない描写がありました。表現の自主規制として、よく話題に上がるのがこの"シートベルト問題"です。テレビだけでなく映画でも、俳優さんが車のCMに出演している場合は必ずシートベルトをしないといけません。そもそも「道路交通法違反」という指摘もありますから、仮にシートベルトをしないのであれば私有地で撮るしかありません。実は今回はCG合成の停め撮り。そういった制約によって撮りたいものも撮れない時代。すごくつまらないですよね(笑)。これは良い意味での"悪意"というか。こんな自主規制をよしとするクリエイターなんて一人もいないはずですから。表現はそういうことに左右されるのではなくて、もっと自由であるべきだという、僕なりのエールでもあります。覚せい剤や濡れ場のシーンもそこに含まれるのですが、昔は映画の中で当たり前のようにやっていたこと。そんなに難しいことやっているつもりはないんですけどね。――本音をいえば、諸星が悪事の限りを尽くして絶頂期を迎える銃器対策課時代をまだまだ観たかったです。こうして観客側も倫理観が崩壊してしまうんですね(笑)。ありがとうございます(笑)。ただ、「調子に乗っているとヤケドをする」というメッセージを伝えるためには堕ちていく様も描かなければなりません。きっと人間のバイオリズムなんでしょうね。うまくいっている時もあればダメな時も。それを「堕ちていく=ダメ」じゃなくて、そういうバイオリズムの中で生きているということを客観的に映したいという思いがありました。そもそも堕ちていく人間、実は美しかったりするんですよね。――稲葉さんにも直接会われたそうですが、どんな方なんですか。人当たりがよく色っぽい方。原作にも入ってない話も聞きましたが、やっていたことがひどすぎて……。映画ではできないことがいっぱいあるなと思いました(笑)。部屋で拳銃が暴発したり、喫茶店で拳銃とお金を交換したりするシーンがありますが、実際には拳銃を喫茶店に忘れてしまったこともあったそうです。――なんといううっかりミス(笑)。上司である課長も、押収した拳銃を棚にぶん投げてましたね。ははははは(笑)。――そういう何気ない描写が、道警の体質を物語っているわけですね。ただ、道警だけでなく日本全国規模でまかり通っていたことなので、多かれ少なかれあっただろうし、やっていなくてもそういうことは必ず目にしていたはずです。●元大阪府警は絶賛も「笑えなかった」――本作でいえば勝矢さん演じる経理担当の次長が、"緩く"ではありますが「ストッパー」的な役割を果たしています。そういう正義感がある人でも、大きな組織の中では次第に染まり、「NO」という方が変人扱いされてしまう。――拳銃を押収するために密売することについて「買うんですか!?」とツッコミを入れてくれるのがその次長。ただ、その笑いが行き過ぎるとコントのようになってしまいます。そうなんですよ。そのバランスが一番難しかったです。心がけたのは「笑いをとりにいく芝居」にしないこと。組織の中で、それぞれが必死になって動いていることを念頭に演じてもらいました。――撮影初日の前夜、綾野さんとお酒を飲んで一致した部分があったと聞きました。具体的にはどのようなことだったのでしょうか。今作は諸星の22歳から48歳までを描いています。綾野くんは34歳で、経験値や想像だけではその年齢差は埋められない。そこに迷いがあったようなので、「それを埋める方法は僕もわからない。ただ、この人は真面目で一生懸命。選択肢を求められた時に、常によりベターなことを考えて実行していた。その先に事件があった。でも根底にあるのは真面目な部分。先々のことを考えず、正直に生きていたという彼の姿を1シーン、1シーンに置き換えて、まずは全力でやっていくしかない」と伝えました。そういうルール作りが互いに一致したんです。展開によってテンションをあえて変えるとか、そういう計算は一切しませんでした。人生って、そうじゃないですか? 人がいつ死ぬなんて誰にも分からない。「その時その時のことを考える」とはそういうことだと思います。○運命を変えた孝行息子"凶悪"――北海道にキャンペーンに行かれたそうですね。地元は盛り上がっていましたよ。社会正義のためだけにこの映画を作ったわけではないということが、観てくれた方に伝わったみたいなので安心しました。ただ、道警さんは面白くはないでしょうね。今でも働いている方もいらっしゃいますから。――北海道警察からのコメントは?今のところはありません。警察関係者の中で何人かは観た方もいると思いますけど……。そういえば、元大阪府警の銃器対策課の方がご覧になったみたいで、大絶賛してくれました。「周りは笑っていたけど、自分は笑えなかった」と(笑)。稲葉さんはこの映画を通して追体験するわけですから、「ひどいことしてたんだな」とあらためて感じたそうです。捕まった後に道警を擁護する場面がありますが、稲葉さんは観るたびに必ずそこで泣いてしまうとおっしゃっていました。――そういう意味でも観る人によって変化する映画だと思います。何が正義で、何が悪なのか。「だから何なの?」と思われるかもしれないですけどね(笑)。結論を訴えるのは簡単なことなのかもしれないですが、こういう実録系の話は結局、結論なんて出ない。過去にはそういう話があった……結局そこに着地します。――最近ではさまざまなオファーが舞い込んでいるそうですね。音楽を担当された安川午朗さんが「仕事を選んでほしい」とおっしゃっていました(笑)。しばらくはやれるだけやってみたいです。面白くないものはやりませんが、どんなものでも「面白い」と思ったことはやりたいと思っています。――『凶悪』で多くの賞を受賞されましたが、そこから風向きが変わった感じですか?今回の企画もこの『凶悪』という"孝行息子"がいたから。『凶悪』がないままこれを持ち込んでも、うまくいかなかったでしょうし、それはすべてがつながっていると思っています。『凶悪』がそこまで評価されるなんて……あんなひどい映画が(笑)。賞をもらいたくて映画を作っているわけではないんですが、いただいたことで今までは「白石って誰?」というところからはじまっていたのが、最近では「『凶悪』の人ね」と認識してもらえるようになりました。それに関してはよかったと思います。○これからの日本映画について――「インモラルなもの」をテーマとして掲げていらっしゃいますが、何かきっかけが?まさか自分がそうなるとは思っていませんでした。『凶悪』を撮る前ぐらいに若松(孝二)さんが亡くなられて、新藤(兼人)さんや大島(渚)さんもちょうどそのころで……。みなさんがインモラルなものばかり撮っていたわけではないんですが、日本映画の中で、ある地位を築かれていた。「大手配給の作品だけじゃない何か」というか。――エンターテイメントの幅は狭まっていると思いますか?お金をかけている映画の中では幅はあるのかもしれませんが、本来、映画はギャンブルなんですよ。当たるか当たらないかは誰にも分からない。それが分かるのであれば、当たる映画だけを作っていけばいいだけの話で。製作委員会方式が主流になると大穴は狙わずに、本命にしか張らなくなっているわけですよね。そうなるとレース自体がつまらなくなってしまう。買っても配当1.2倍みたいな。たまにはこういう、"大穴"みたいな映画にみんな張りたいはずなんですよね。――邦画界が盛り上がるには何が必要なのでしょうか。『凶悪』ぐらい低予算の枠組みで、連発して実績を残すことができれば……。2、3億かける映画でこういうものは難しいと思うので、あのぐらいのバジェットでもう少しいろんなことができる環境を作っていくことが大切だと思います。ただ、ミニシアターも少なくなってきている。そういうペイできる環境が縮小していることも、マイナス要因だと思います。シネコンに入ることができても最初の土日で評価されてしまって、お客さんが入らないものは一瞬にして淘汰されていく。そこで勝負しても瞬殺されるという厳しい現実が待っています。ミニシアター向けにその手の作品はたくさん作られてはいます。でもロングランでは上映できない。邦画の盛り上がりは興行の問題と密接なので、NetflixやHuluといった映像配信サービスで1カ月配信するという選択肢も今後重要になってくるかもしれません。■プロフィール白石和彌(しらいし・かずや)1974年北海道生まれ。1995年、中村幻児監督主催の映画塾に参加し、その後、若松孝二監督に師事。助監督時代を経て、行定勲、犬童一心監督などの作品にも参加。初の長編映画監督作『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(10年)の後、ノンフィクションベストセラー小説を実写化した『凶悪』(13年)は、第37回日本アカデミー賞優秀監督賞ほか、各映画賞を総なめした。最近ではNetflixのオリジナルドラマ『火花』の監督も務めた。
2016年07月05日2年ぶりに元日決勝となる『第95回天皇杯全日本サッカー選手権大会』が、8月29日(土)に開幕となる。今年もノックアウト方式で戦う全88チームが、8月23日に出揃った。『第95回天皇杯』の切符を手にした都道府県代表のうち、ラインメール青森(青森)、北陸大学(石川)、徳島大学ヒポクラテス(徳島)、東海大学熊本(熊本)、J.FC MIYAZAKI(宮崎)の5チームが初出場、16チームが大学チームとなった。天皇杯全日本サッカー選手権大会 チケット情報昨年は国立競技場が改修工事のため12月に横浜で決勝を開催したが、今回は2016年1月1日(金・祝)・味の素スタジアム(東京都)にて決勝を迎える。日程は以下のとおり。■1回戦:8月29日(土)・30日(日)■2回戦:9月5日(土)・6日(日)・9日(水)■3回戦:10月10日(土)・11日(日)・14日(水)■ラウンド16(4回戦):11月11日(水)・14日(土)・15日(日)■準々決勝:12月26 日(土)■準決勝:12月29日(火)■決勝:2016年1月1日(金・祝)3回戦は、2回戦の結果によって、対戦カードに関連のあるスタジアムで実施する。また、ラウンド16(4回戦)以降の組合せを決める抽選会は10月22日(木)を予定している。第89回(2009年)大会から設けられた、ジャイアントキリングを起こし『天皇杯』を象徴するゴールを表彰する“SURUGA I DREAM Award”は今回も健在。大会を一層盛り上げる。公益財団法人日本サッカー協会 大仁邦彌会長は、「『AFCチャンピオンズリーグ』の出場権もかかっているので、アジア、またその先にある世界を見据えて『天皇杯』の歴史に残る激しくもフェアな戦いを繰り広げてほしい」と語った。前大会王者のガンバ大阪・遠藤保仁は今大会について「一番古い、歴史のある大会だし、『ACL』にも繋がる非常に重要な大会。連覇もかかっていますし、連覇する難しさも十分分かっています。連覇できれば、チームにとっては大きな意味を持つタイトルになる」とコメントした。全国2377チームの頂点を決める『天皇杯』は、8月29日(土)より開幕。今年は1回戦からJ1・2クラブ、J2全クラブがお目見えする。『天皇杯』1回戦および2回戦はチケット発売中。
2015年08月24日かつて指揮していたリーガ・エスパニョーラのサラゴサで、八百長試合に関与したとして告発された日本代表のハビエル・アギーレ監督。疑惑を全面否定するメキシコ人指揮官を日本サッカー協会(JFA)も信頼する中で、それでも浮かび上がる3つの疑問に迫る。○手詰まりで身動きが取れないJFA■疑問(1) 日本協会の対応はなぜ鈍く映るのかスペインの司法制度は日本と異なり、告発された段階ではまだ"シロ"である。スペイン検察庁の反汚職課からの告発を、バレンシア裁判所が受理してから本格的な捜査がスタート。証人喚問などを経て嫌疑が十分と見なされればアギーレ監督は起訴され、「容疑者」として裁判に臨む。しかし、告発後のJFAの対応は遅きに失した感が否めない。大仁邦彌会長が公の場で初めてメディアの取材に応じたのが、スペインの検察当局の告発より3日後の12月18日。前代未聞の事態に揺れる中で、JFAの副会長も兼ねるJリーグの村井満チェアマンは、起訴に至れば「重大な問題になると思う」と危機感を募らせている。「Jリーグは興行として夢を売る役割があり、そこは敏感になる。日本サッカー協会も問題が明確になれば、毅然(きぜん)とした態度を取るでしょう」。村井チェアマンの言う「そこ」とは「八百長」であり、「毅然(きぜん)とした態度」とは「契約解除」となる。しかし、裁判の判決が下される前に解任されれば、アギーレ氏が名誉毀損(きそん)でJFAを訴える可能性も出てくる。「イメージが悪いから」という理由で"シロ"の指揮官を更迭したとなれば、海外のサッカー界から日本へ批判的な視線が向けられることになる。自ら八百長を認める形になるため、アギーレ監督もJFAからの辞任勧告などを受け入れないはずだ。JFAの対応が鈍く映る理由は、小倉純二名誉会長が発したこの言葉に集約されている。「手の打ちようがない」。○腑に落ちない原専務理事の反論■疑問(2) 契約前に十分に素性を洗ったかアギーレ監督招聘(しょうへい)の中心的な役割を担ったJFAの原博実専務理事が、告発後で初めて記者会見に応じた18日にはこんな質問が飛んでいる。「アギーレ監督の身体検査が疎(おろそ)かだったのではないか。世界中に恥をさらしている」。4年越しのラブコールを実らせてアギーレ監督との契約を結んだ原専務理事は、やや色をなして反論している。「この疑惑がスペインの新聞で報じられたのが(アギーレ監督就任後の)今年の9月。八百長の告発自体がスペインでは初めてのケース。本人が『わからない』と言っているのに、(クロと)決めつけていいのでしょうか」。要するに「事前にわかりようがない」ということか。ただ、自身に任命責任が及ぶ事態を避けるかのような対応にも見えた。しかし、すでに2013年6月の段階で、スペインプロリーグ機構のハビエル・テバス会長が八百長疑惑を警察へ報告。検察当局が2011年5月に行われたシーズン最終戦でサラゴサが勝利し、1部残留を決めた試合の調査に乗り出した結果、今回の大量告発に至った。この事実を見落としていた、あるいは意中の人物だからと盲信していたとすれば、アギーレ監督との契約は拙速だったと言わざるを得ない。○待望の日本人監督へ、機は熟した■疑問(3) 後任監督候補になぜ日本人がいないのか続投が発表されているアギーレ監督だが、すでにメディアの間では後任人事を巡る報道がかまびすしい。待望論が強いのは、現役と監督を含めて14年という時間を日本に刻んだドラガン・ストイコビッチ氏。現在は自宅のあるフランス・パリで英気を養っているものの、日本代表監督就任への意欲は強い。名古屋グランパスの監督を退任してからまだ1年あまりで、日本のサッカー事情に対するブランクもほとんどないだろう。2015年6月からは、ワールドカップ・ロシア大会出場をかけたアジア予選が始まる。活動時間が限られる代表チームの宿命を考えれば、日本人選手の特徴を熟知し、日本サッカー界にも精通している点が大きな条件になってくる。1998年のワールドカップ・フランス大会出場をかけたアジア最終予選中に加茂周監督が更迭されて以来、スクランブル就任の岡田武史監督を除くと、すべてが外国人の指揮官だった。こうした現状において、選定・交渉に当たるJFAの技術委員会内には、「いつかは日本人監督で」という悲願がある。ただ、プロ化以降の歴史がまだ浅く、ヨーロッパのクラブに所属する選手が年々増えてきているのが日本サッカー界の現状。ワールドカップやUEFAチャンピオンズリーグをはじめとする大舞台での経験や実績を代表監督に求めてきたのは、指導にカリスマ性や説得力を持たせるためだ。しかし、アギーレ監督に最悪の事態が生じた場合、代表監督を探す過程でこうした経験や実績を度外視する決断も求められてくるかもしれない。サンフレッチェ広島を連覇させた森保一、ガンバ大阪を史上2チーム目の三冠獲得に導いた長谷川健太両監督を筆頭として、数多くの優秀な日本人指導者がすでに育っている。機は熟しつつあるのだ。○サポーターが失望する「疑惑が悪いのでしょうか」舞台が法廷闘争に移れば、結審まで数年かかるとされる。日本とスペインとを頻繁に行き来すれば代表監督の仕事に支障をきたすおそれもあるし、「ダーティーなイメージがあるから」と、日本代表のマッチメークでも断られるケースも生じるかもしれない。不安材料はいくつもある。何よりも残念なのは、日本代表を中心とするコミュニティーが大きく揺らいでしまったことだ。コミュニティーにはサポーターやファン、テレビや新聞をはじめとするメディア、キリングループやアディダスジャパンをはじめとするスポンサー企業、そしてもちろんJFAも含まれる。全員の思いが長い時間をかけて巨大なベクトルと化し、同じ夢を描きながら日の丸を背負って戦う選手たちを後押ししてきた。しかし、こうした状況が続く中で、いままでと変わらずに一体となって、心の底から日本代表を応援できるだろうか。選手たちも集中して戦いに臨めるだろうか。原専務理事は記者会見でこんな言葉も発している。「疑惑をかけられたことがすべて悪いのでしょうか」。開き直ったかのような印象を与えるし、JFAの最高議決機関である理事会でもアギーレ監督の問題に関して批判すら起こらなかった。「組織として機能しているのか」という疑問すらもわいてくる。裁判の原則である「疑わしきは罰せず」の精神は、もちろん尊重されなければならない。一方では「火のないところに煙は立たない」とも言われるように、代表監督が八百長疑惑の対象となった事実もまた重く受け止める必要がある。もやもやした思いが晴れない理由がここにある。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 藤江直人(ふじえ なおと)日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。
2014年12月25日今週末の9月28日(日)に、『第94回天皇杯全日本サッカー選手権大会』準々決勝のチケットが発売となる。対戦カードは、9月16日・都内で行われた組合せ抽選にて決定している。抽選には、大仁邦彌 公益財団法人 日本サッカー協会会長、岡野光喜 スルガ銀行代表取締役社長兼CEO、元日本代表・名波浩と田中誠が登場し、ドロワーを務めた。ガンバ大阪は、第88・89大会と連覇を達成している。そのG大阪がホームに迎えるのは、現在J2リーグ降格圏の17位・大宮アルディージャ。今シーズンのリーグ戦は2勝とG大阪に分があるが、何が起こるか分からないのがカップ戦だ。ドロワーの名波は、「G大阪はリーグ戦でも夏前からグッと上がってきて、調子が良い。大宮は監督が交代してから好転している雰囲気があるので、良い勝負になる」とコメントした。過去2度の『天皇杯』覇者の経験を持つ名古屋グランパスは、清水エスパルスと対戦。これまでのリーグ戦戦績は、清水の22勝7分20敗とほぼ互角。東海ダービーを制し、準決勝へと駒を進めるのは果たして……。反対ブロックでは唯一のJ1クラブとなるセレッソ大阪が、J2・ジェフユナイテッド千葉と激突する。千葉は、Jリーグ元年に参戦した「オリジナル10」のうちのひとつでもあり、地力は備わっている。『天皇杯』優勝未経験のC大阪(前身のヤンマーディーゼルサッカー部は3回優勝)がJ1の意地を見せるか、はたまた、千葉の下克上なるか。モンテディオ山形は、ギラヴァンツ北九州とのJ2対決になった。今季の対戦結果は1勝1敗となっており、J2リーグの順位は山形が8位、北九州が4位。どちらに軍配が上がってもおかしくない、緊迫した試合となりそうだ。『第94回天皇杯全日本サッカー選手権大会』は、国立競技場の改修工事により、風物詩の元日・国立ではなく12月13日(土)・日産スタジアムで開催される。抽選を終えた名波は、スケジュールが前倒しとなった今大会について「リーグ戦や、『ナビスコカップ』、日本代表戦があるので、(選手が)いる・いないなど(の状況)も出てくる。総力戦になる」と語った。準々決勝は、10月15日(水)G大阪×大宮・万博記念競技場、10月11日(土)名古屋×清水・名古屋市瑞穂陸上競技場、10月15日(水)・C大阪×千葉・キンチョウスタジアム、10月15日(水)・山形×北九州・NDソフトスタジアム山形にてキックオフ。チケットは9月28日(日)一般発売。
2014年09月26日キリンは5月25日、キリングループが「サッカー日本代表オフィシャルパートナー」として、日本サッカー協会と2015年4月から8年間契約を更新することを発表した。現在締結中の日本代表オフィシャルスポンサー契約をより踏み込んだ形で更新する。○37年にわたるキリンのサッカー支援キリンとサッカーの最初の関わりは1978年開催の「ジャパンカップ」協賛に始まる。当時、キリンビール原宿本社と日本サッカー協会が、山手線をはさんだ向かい側という"ご近所さん"の関係であったという縁もあり、「日本サッカーを強くしたい」というサッカー協会の意思にキリンが賛同して支援がスタートした。しかし、当時はまだ日本サッカーの黎明(れいめい)期。支援開始の1年前に入社したというキリンの磯崎功典代表取締役社長は記者会見の場で、「当時は営業をしていて、スタジアムでビールを売っていた。でも、お客さんはあまりいなくて……。現在のような人気は感慨深い」と、長年の支援に思いをはせた。そんな現在のような人気が集められない中でも、「ジャパンカップ・キリンワールドサッカー」「キリンカップサッカー」と、キリンは日本代表の強化支援を続け、1995年には日本代表オフィシャルスポンサーとなっている。○サッカーで「日本を元気にする! 」取り組みそして、支援開始からちょうど20年目の1998年、日本代表がワールドカップへの初出場を果たす。この頃からは「キリンラガー 初出場記念缶」など、日本代表の応援商品やキャンペーン、応援拠点の開設など、ファン・サポーターとともに日本代表を応援する取り組みを積極的に行うようになった。「U-23」「U-20」「U-17」 の各年代での代表のほか、日本女子代表の「なでしこジャパン」やフットサル、ビーチサッカーなどのスポンサーも務めるようになり、サッカーのフルカテゴリーを支援。次世代の育成にも尽力し、応援と支援の両方で日本に活力を送ってきた。また、2011年の東日本大震災後からは「東北の子どもたちの笑顔をつくりたい」と、小学校の授業で元日本代表選手によるサッカー教室「JFA・キリン スマイルフィールド」を開催している。2013年12月末までにのべ521校、7万8,787名が参加、たくさんの子どもたちに笑顔を運んだ。そのほかにも、元日本代表の小倉隆史さんや、元なでしこジャパンの四方菜穂さんがコーチを務めるサッカー教室「キリンサッカーフィールド」なども開催。こころと体の健康や夢をはぐくむ活動を行うことで、「日本を元気にする! 」取り組みを続けている。○後方支援ではなく、一緒に応援するパートナーに今回の契約更新で、キリングループは「スポンサー」から「パートナー」へと変わった。日本サッカー協会の大仁邦彌会長は「これまでの支援からの強い信頼関係を表すため、パートナーへと表現を変え、力を貸していただくことになりました」と、より強固な信頼関係を表せる名称にしたと語った。そして、「キリングループの社会貢献活動に、サッカーがお手伝いできることを心よりありがたく思っております」と、長年の支援と協力に感謝を述べた。磯崎社長は「キリンは飲料を提供するだけの企業ではなく、多くの人々に喜びと感動を提供する企業でありたい」と、キリングループの理念を伝え、「(相撲の)タニマチのように後方から支援する企業ではなく、ファンやサポーターの皆さんと一緒になって応援する企業に変わる。新たな思いで、日本サッカー協会とともに取り組んでいきたい」とこれからの活動に意気込みを見せた。またキリングループはこのほど、新たなスローガンとして「新しい日本を見せよう」を掲げ、今後の活動を展開するという。この言葉には、これまでの「サッカーで日本を元気に! 」という願いや「新しい日本のサッカーを見せよう」という意図だけでなく、新しい日本の「底力」、日本の「気持ち」を見せたいという、思いも込められているという。さらに現在、キリンビールでは、6月より始まる「2014 FIFAワールドカップ」のサッカー日本代表応援プロモーションを展開中。5月27日からはその第3弾がスタートし、「サッカー日本代表缶」の新デザインと「一番搾り 日本代表応援スペシャルセット」を同時発売する。パッケージの表と裏に、躍動感あふれる選手の姿があしらわれ、観戦気分がより盛り上がるデザインとなっている。サッカー観戦に欠かせないビールを、サムライブルーの応援ユニフォームと一緒にぜひ楽しみたい。
2014年05月27日「携帯のアプリを見れば、その人のことが分かる」なんて言われるくらい、携帯の中身は持ち主のひととなりを表現するもの。今回のゲストは、堂珍嘉邦さん。CHEMISTRYとしてデビューし、現在はソロ活動を行いながら、シンガーだけでなく映画や舞台等にも出演し、多岐に渡って活躍されています。気になるプライベートについて、お話をうかがいました。―――先日、広島東洋カープの始球式を務められていましたが、野球は昔からお好きなんですか? 堂珍:そうですね。僕は広島出身で、故郷に球団があると、やっぱり野球が身近になりますね。―――子供の頃に野球を観に行った思い出などは? 堂珍:家の畑で取れたメロンや瓜を食べやすく切ってタッパーに詰めて、夏休みにバックネット裏で親父と野球を観るっていうのが小学生の頃は毎年の恒例行事でした。当時は酔っぱらいの客が多くて、バックネットによじ登っちゃう人がいたり(笑)。テレビの『珍プレー好プレー』なんかでよくオンエアされてますよね? あれを実際に生で観ていました(笑)。―――お忙しい今では、球場に観に行くこともなかなかできないのではないかと思うのですが、試合はテレビやネットでチェックしているんですか?堂珍:やはり結果を楽しみにしているので、仕事がナイターの時間より早く終わりそうなのであればネットはチェックしないようにしています。でも仕事が遅くなってテレビ中継に間に合わないときはネットで試合速報を見ますね。―――実は今回、エキサイトでは、 ドコモの「スゴ得」 というプランをみなさんに紹介しています。定額で、魅力的なコンテンツが使い放題になりまして。スゴ得には『プロ野球TV』という公式戦の全試合を速報でご覧いただけるサイトがあるんですよ。堂珍:このサイト、選手名鑑もあるんですね。データが充実していて、すごくいいですね! 野球においてデータは本当に重要ですから。12球団の1軍選手を一通り、一日1回は目を通すので、その辺の解説の人より詳しい時期がありました(笑)。有望な若手の選手が入ると2軍の試合もチェックして、いつ1軍に入って来るんだ?って。 ―――監督目線ですね(笑)。堂珍:そういうふうに組み立てて、チームを考えてシュミレーションするのがすごく好きなんですよ。そういう野球ゲームも大好きだし。―――自分の理想のチームを想像するわけですね。堂珍:友達とは、この選手をトレードに出して、今のうちにあの選手を取っておいた方がいいんじゃないかって話をしたり。それで、「だよな! 俺とお前が監督やった方が絶対いいよな」って盛り上がったり(笑)。広島だと、高校の後輩だった投手の永川勝浩くんと仲が良かったり、最近は堂林翔太くん(内野手)が、僕がプレゼントした曲を入場曲に使ってくれているんです。先ほどお話に出た始球式はマツダスタジアムだったんですけど、何度か達川光男さんと実況解説もやらせてもらっていて。達川さんより僕の方がデータは詳しくて、「アンタよう知っとんのう!」とよく言われますね(笑)。だから、そういうデータを全部網羅しているこのサイトはいいですよね。野球の解説に近いトピックスが書いてあるのも嬉しいです。 あとは選手の怪我や手術の情報があるといいかも。野球ファンなら知っておきたいですもんね。ほかに日本人選手のメジャーでの活躍も知ることができるし、記者の方の記事も載っているから、それもすごく便利だと思います。―――想像以上のカープ愛で圧倒されていますが(笑)、野球がオフシーズンのときはどうされているんですか?堂珍:ゲームです! ゲームで恋しさを紛らわせています(笑)。『プロ野球スピリッツ』というゲームがあって、相当買うのを我慢していたんですけど、最近我慢しきれずに買っちゃいました。もともとはパワプロ(『実況パワフルプロ野球』)が好きだったんですよ。カーブとストレートとフォークぐらいしか球種の意味を分かっていなかった僕が『実況パワフルプロ野球』で初めて球の緩急とか変化球を知って、そこから野球にのめり込んだんです。―――実はパワプロもスゴ得にあるんですよ。ちょっと一緒にやってみましょう! 結構データが詳しく入っていて面白いですよ。堂珍:12球団には毎年、身体測定をやってもらって、各選手の肩の強さなどのデータを出してほしいですよね。こういうゲームの監修とかすごいやりたいですもん(笑)。伊集院光さんも詳しいんですよね。『パワプロ』はRIZEのメンバーの方やスチャダラパーのANIさんもすごく好きですよ。会っただけで、お互い話さなくても相手がパワプロを好きなのがわかる、みたいな(笑)。(『モバイル・パワフルプロ野球2014』を起動し、オープニングの音楽を耳にして)堂珍:あーっ、これこれ!(笑) ―――ゲームのBGMは当時と変わっていないですか?堂珍:変わっていない感じがしますね。―――ゲーム内容はどうですか?堂珍:2D感があって懐かしいですね。背景や作り込みは今のユーザーも満足する感じになっていると思います。―――では、野球以外のサイトもご紹介させていただきたいのですが、5月17日公開予定の映画『醒めながら見る夢』で初主演されていますが、スゴ得には『映画MovieWalker』という全国各地の映画館情報だけではなく、映画に出演された方への独自インタビューが載っているサイトもあるんですよ。堂珍:いいですね。昨年、その『醒めながら見る夢』の撮影で京都へ行った時に、空き日に映画館を調べて観に行ったんですけど、このサイトならすぐに探せますよね。土地勘のない場所ならなおさら便利ですね。―――どんな映画が好きなんですか?堂珍:SFが好きですね。わかりやすいのがよくて、ハッピーエンドの映画が好きなんですよね。ちっちゃい頃に観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なんか最高だったじゃないですか。やっぱりね、映画もライヴもハッピーエンドじゃないとダメですね。ほかには、アーティストが出ている映画も観ておきたいし、ジブリはもう永遠じゃないですか。―――『映画MovieWalker』は作品から上映している映画館を探すこともできるんですよ。堂珍:ツアーメンバーとコミュニケーションをとるためにみんなで盛り上がって観に行ったりしたので、次のライヴツアーで地方に行く時にはぜひこのサイトで映画を探して観に行ってみたいと思います! 野球とゲームがお好きな事は事前に伺っておりましたが、やはりその話題になるととても盛り上がりました。お会いするまではクールな印象を持っていましたが、とても熱くそして無邪気な方でした! 堂珍さん、ありがとうございました! 今回ご紹介したコンテンツも使い放題の 「スゴ得コンテンツ」 では、ドコモスマートフォンで毎月380円(税抜)を支払うと、ニュースも、乗換も、レシピも、約120種類という豊富なコンテンツが好きなだけ利用できるサービスです。更に初回お申し込みから月額使用量が31日間無料! 是非チェックしてみてくださいね。エキサイトでは「著名人にインタビューしました」というお題で特別シリーズを展開しています。他にも話題の著名人のとっておき情報を公開中! 特集「あの著名人はどんなアプリを使ってるの?」(スマホ用サイト) ■堂珍嘉邦プロフィール1978年11月17日生まれ。広島県出身。2001年3月にCHEMISTRYとしてデビュー。ヴォーカルデュオの代名詞となり、CD総売上枚数1800万枚を誇る日本を代表するアーティストに。2012年、ソロミュージシャンとして活動を開始。2012年11月に自らの音楽性を“耽美エント(耽美+アンビエント)Rock”と命名し、両A面シングル『Shout / hummingbird』でソロデビューを果たす。2014年3月に最新『Bronze Caravan』をリリース。現在、今作を引っさげての全国ツアーを開催中。2009年には映画『真夏のオリオン』で俳優としてもデビュー、2011年には音楽劇『醒めながら見る夢』で主演を務めた。来る5月17日には初の主演映画『醒めながら見る夢』が公開予定。
2014年05月02日約1年ぶりの2ndソロアルバム『Bronze Caravan』をリリースするCHEMISTRYの堂珍嘉邦。ツアーを共に回ったバンドメンバーや海外のミュージシャンなど、多彩な音楽家との共同作業から生まれた本作は、ソロ以降の先鋭的な音作りをさらに推し進めた内容となった。ギターロックからエレクトロニカまで多彩な音楽的要素を吸収しつつ、その歌声には彼らしい艶かしさが宿っており、ポップミュージックとしても一級の輝きを放っている。堂珍嘉邦は今作をどんなコンセプトの元で作り上げたのか、その音楽観と創作プロセスをじっくりと聞いた。 ■約1年ぶりの2ndソロアルバム『Bronze Caravan』は、ギターロックやエレクトロニカ、その他にも様々な要素を取り入れつつ、バンド的な躍動感を感じさせる力作です。まず、どんな作品にしたいと考えて制作に入りましたか? 昨年1stアルバムをリリースして、ツアーを終えたところで、バンドとしての手応えを感じたんです。そこで、もう少しメンバーがステージで“炸裂している”姿が見たくなったというか、もっとそれぞれのポテンシャルを引き出したいと思うようになって。自分の曲にもいろんなアプローチがあると思うのですが、1stアルバム『OUT OF THE BOX』で“枠からはみ出た”自分が、2ndアルバム『Bronze Caravan』で“キャラバンでさらに遠くに引っ張っていく”という流れですね。■「メンバーのポテンシャルを引き出す」というテーマは、曲作りの段階から考えていたのでしょうか? そうですね。曲作りもメンバーと一緒にやったほうが早いじゃん、と思って。それに、メンバーのポテンシャルが炸裂するということは、もっと自分のよさを出さないといけない。やっぱり、メンバーがノッていれば、ボーカリストとしてもノれますしね。あとは歌詞の部分で、自分が伝えたいものをしっかり書こう、と考えました。■今作の歌詞はドキッとするようなフレーズ――辛辣な部分もあるし、ハッピーな部分もあって、感情の振り幅が広いと感じました。そのときに思ったこと、サウンドに呼ばれて書いたことが、結果として幅広いものになったんです。たぶん自分自身が、音楽も含めて多くのことにチャレンジしたいと考えているからでしょうね。ひとつに決めてしまうより、自分のいろんな面をまだまだ広げていきたい。おかずは色んなものがあって、少しずつ食べるほうが自分もうれしいんです。自分の過去の経験や夢に見た景色が明確にあるから、書けることはたくさんある。それは、自分の経験値だと思っています。■歌詞だけでなく、楽曲自体からも“幅広さ”は感じられます。ロマンチックな世界と、現実的な視点、総合力を使って音楽的に煮詰めていく部分がミックスされているように思いましたが、音作りのプロセスは? デモのときはとにかく想像力をふくらませて、アイデアを残していきました。まずは好き勝手にやって、気になる部分はあとで考えようと。そうして、ミックス段階では作業しながら、具体的にどうするかを話し合っていく……という流れでしたね。かなり音を重ねているので“コンプ感”が出ています。■84年にマンチェスターで結成され、90年前後に人気を博した4人組バンド“The Railway Children”のGary Newby(Vo,Gt)とも共作をしていますね。 制作作業はロンドンに行って、スタジオに2人で入って、実際に演奏しながらメロディを付けていったんですが、気さくな兄さんというか(笑)。向こうも向こうで、「弟というか、同級生と久しぶりにあったような気分だよ」と言ってくれました。僕も楽しかったし、彼も楽しんでくれていたみたいです。■The Smithの少し後に出てきたバンドで、かつてはとても美形でした(笑)。今はちょっとポッチャリしていますけど(笑)、人も曲も、すごく爽やかなんですよね。いつもはけっこう無口らしくて、シャイな感じはしました。実際の作業としては、Garyがコードを弾いてくれて、そこに自分がメロディをのせていく、という感じ。お互いに遠慮せず、ギタリストとボーカリストに徹して、アイデアを出し合って。僕も、途中で気に入らないコード進行があったら、「違うコードにしてくれ」と言いました。■そこで生まれたのが、5曲目の「Reminisce」と、最終曲として収録された「To the end for me」。最初に「Reminisce」を作ったのですが、曲が煮詰まってきたところで一度ストップして、「せっかくだからもう一曲」ということで作ったのが、「To the end for me」だったんです。いちから作ったらギターとボーカルだけで成立してしまって、あとからリズムやベースも入れてみたんですけど、結局は合わなくて。これまで、ギターとボーカルだけというのはやったことがなかったけれど、自分の好きなアーティストもやっているし、セミアコで弾き語る感じもすごく好きだったので、結果的にいい曲に仕上がったと思います。タイトルについては、デタラメ英語で歌っているときに出てきた、“トゥジエンフォミー”というのを文字に起こしてみたら、“終着地点に向かって”という意味になったので、ラストにピッタリだなと。■「To the end for me」はアルバムを締めくくる、憂いを帯びた楽曲ですね。ロンドンという環境が大きかったかもしれません。日本なら自分のことを知っている人がたくさんいて、街で指を差されることもありますが、ロンドンでは自分のことを知らない人だらけで、自分がポツンと浮き彫りになった感覚があったんです。そこで、自分が何をやるのか、ということが整理されて、一番シンプルなものが出てきたというか。それと、Garyと作業をしているとき、自分や日本の音楽シーンにはない、UKっぽいものを感じたんですよね。自分が聴いていた90年代の音楽と、日本の音楽に強い影響を受けてきた自分の音楽、そして、2001年にデビューしてからこれまでやってきた音楽と、色んなものが混ざって、出たひとつの答えがこの曲で。それがすごく繊細で物悲しげなものだったから、ギターとボーカルがすごくマッチしました。■一方で、3曲目の「Hey! Mr.」のように言葉遊びが全開の曲もあります。コーラスも含めて、ボーカリストとして要求されるものがかなり高い曲ですね。CHEMISTRYでのコーラスとはまた違って、ブリッジのところで“ぶっ壊れ気味のサラリーマンの聖歌隊”みたいなイメージで歌ってみたり、奇声を入れてみたり(笑)。歌詞も自分なりの曲がりくねった言葉で、皮肉も入っているし、マジメなものじゃないから、不思議とそういうものがハマるんです。■歌詞はキーワードを起点に、連想ゲーム的に作っていった感じですか? いや、むしろ即興で当てずっぽう状態でした(笑)。ライヴでやるときは、基本的にはCDの音源を忠実に再現しようとしています。■本当に色んな表情のあるアルバムですが、2曲目の「It's a new day」は堂珍さんのやさしい部分が出たメロディだと思います。あらためて出発をする、というのはそうとうな決意が必要で、その裏側にある切ない部分も、うまく表現できたと思います。ソロでの再出発、みたいなことはあまり深く意識していないけれど、そういうテーマがサウンドにうまくハマって。Sigur Rosというと少し違うかもしれませんが、北欧っぽさは意識しています。こういう曲が好きな若い男の子なんかが、ライヴに来てくれるとうれしいですね。■Sigur Rosもそうですが、ヨーロッパ的なギターサウンドは随所に出てきますね。タイトル曲「Caravan」についても聞かせてください。耽美なものは奥深く、気持ちいいし、落ち着きます。ただ、それに浸っていると、攻撃的になってみたり、皮肉を言ってみたりしたくもなるんですよね。「Caravan」は、この曲が突破できれば、僕のアルバムを好きになれるよ!という試金石のような1曲です。1曲目に持ってきたのは、はじめに大風呂敷を広げて、“やらかしたかった”から(笑)。そういう意味では「It's a new day」が1曲目だという考え方もできるので、曲間を短めにしてもらったりしています。■最初にハードルを高くして、リスナーに“かます”というのは面白い発想ですね。ツアーから2作目という流れで、堂珍さんの音楽がリスナーに届いているという手応えはありますか? そうですね。少しずつ、自分が持っているスケール感やイメージが伝わっていると思うし、ライヴの大歓声があって初めて得られる快感を目指したいなって。ライヴは一つ一つが大事で、もっと新しい人たちに聴いてもらいたい、という気持ちでやっています。■堂珍さんの表現衝動がどんどん高まっている、という印象を受けます。少しずつでも、表現していきたいと思います。そういう意味でも、1年に1枚のアルバムとツアーというペースはキープして、走り続けなきゃいけない。バンドとして全国を回るなかで、より“足跡を残す”という意識が高くなっているし、今回のツアーでまた大きく成長したいですね。いっぱいいっぱいな部分もありますが、ガッツで最高のライヴに仕上げます! (取材・文/神谷弘一[blueprint]、撮影/宮腰まみこ)■作品情報堂珍嘉邦 2nd Solo Album『Bronze Caravan』2014年3月5日リリース【初回限定盤】CD+DVD SLCL-002/¥3,800(消費税別) >>購入する 【通常盤】CD SLCL-003/¥3,000(消費税別) >>購入する ・堂珍嘉邦 オフィシャルサイト ・堂珍嘉邦 エキサイトミュージック撮り下ろし特集
2014年03月12日12月19日、日本サッカー協会は日本代表各カテゴリーの2013年スケジュールを発表した。2013年3月26日(火)・ヨルダン戦で『W杯』出場を決めたいザッケローニ日本代表監督、昨年の『W杯』優勝、8月の『ロンドン五輪』銀メダルを経て、さらなる成長を求める佐々木則夫なでしこジャパン監督、来秋『U-17W杯』が控える吉武博文U-17日本代表監督らが一堂に会した。『キリンチャレンジカップ2013』日本代表×ラトビア代表 チケット情報来年6月にはプレW杯と言える『コンフェデレーションズカップ』という大勝負が待っているザッケローニ監督だが、まずは『W杯アジア最終予選』が重要だと語った。「2012年はポジティブな一年だった。2012年の目標はふたつ。『W杯最終予選』でいいポジションにつけ、2013年につなげることと、2011年よりもチームの成長を促すこと。個人的な見解だが、十分に目標をクリアしたと自負している。ただ、まだチームは『W杯』出場を決めたわけではない。『W杯予選』に簡単な試合は一試合もない。最後まで全力を尽くして戦いたい。まず2013年は『W杯』出場を早く決め切る。その後にチームのさらなる成長を促す方針を決めていきたい」。ザックは『コンフェデ杯』についても語った。「ブラジル、メキシコ、3チーム目はどこか忘れたが(ザッケローニ監督の母国・イタリア)、非常にタフなグループに入った。だが、私は日本代表を信頼している」。さらに、日本人選手の決定力不足に付いて質問が飛ぶと、持論を展開する。「もしかしたら、日本代表はチャンスを多く作っているから、選手が『またチャンスが来るだろう』と思っているのが問題かもしれない。世界のトップに対して、チャンスを継続的に作られればいいが、多くのチャンスを作れないかもしれない。技術面ではなく、慣れの問題」。また、佐々木監督は「2015年『W杯』連覇が目標。来年はチームをさらにベースアップし、新たな選手の発掘もして、2014年の予選に望みたい」と次なる山を目指し、吉武監督は「1996年生まれ以降の選手を作品と捉え、博覧会(U-17W杯)で見せるつもりでやっていきたい」と意気込んだ。「9~11月に日本代表の欧州遠征が組むと、収入が減り支出が増幅するが」と問われた、大仁邦彌日本サッカー協会会長は「お金はかかるが、代表チームは強くないといけない。まず代表が強くなること、強くなってお金がさらに集まるという順番にしたい」と笑いを誘った。2013年2月6日(水)・ホームズスタジアム神戸で開催される『キリンチャレンジカップ2013』日本代表×ラトビア代表のチケットは12月22日(土)一般発売開始。
2012年12月20日92回目にして、初の試みだ。11月8日、天皇杯ベスト16抽選会が行われた。大仁邦彌日本サッカー協会会長は「抽選会という新たな試みですが、これによって天皇杯に関心を持ってくださる方が増え、ひとりでも多くのファンがスタジアムに足を運んでくれることを願っています」と抱負を語った。ドロワーは木村和司をはじめ、長谷川健太、名良橋晃、福西崇史と天皇杯で幾多のドラマ、名勝負を演じた錚々たるメンバー。ドロワーたちは天皇杯の思い出を口々に語った。天皇杯で6度の優勝を果たした木村は、一番印象に残っているのは第63回大会だと言う。「ヤンマーと対戦した第63回大会。釜本(邦茂)さんがプレイイングマネージャーをされていて、後半に交代出場した時、これは勝ったなと思った」と笑わせた。名良橋は「3度の優勝よりも準優勝に終わった時の方が印象に残っている」と振り返った。福西は83回大会の決勝はケガで出場は叶わず。「大晦日の夜、サッカーのためにホテルに泊まって、日本一になることを願って寝たんですが……」と笑いを誘った。長谷川は78回大会を強烈に覚えていた。相手はチームの消滅が決まっている横浜フリューゲルス、清水エスパルスは前半を1-0でリードするも、「後半は国立競技場全体がフリューゲルスを応援し、すごい逆風だった」。結果は1-2で準優勝に終わった。抽選の結果、新たなドラマを刻むカードが決定。鹿島アントラーズ×ジュビロ磐田、浦和レッズ×横浜F・マリノスなど、黄金カードが決まる中、特に注目されたのが4回戦に勝ち残ったアマチュア2チームだ。福島ユナイテッドFCはジェフ千葉に挑み、横河武蔵野FCは柏レイソルに立ち向かう。大仁会長は「東北リーグの福島ユナイテッドFC、JFL所属の横河武蔵野FCは、天皇杯ならではのジャイアントキリング(番狂わせ)を起こしたチーム。今後も台風の目となって、天皇杯の歴史に名前を刻んでほしい」と2チームへの期待を語った。木村も「ジャイアントキリングはサッカーの面白さ、天皇杯の醍醐味」と言えば、名良橋は「格上のチームの方がやり辛い」と解説した。チャレンジが続く2チームの関係者は意気込み十分。「相手はどこでも関係なくチャレンジしていくだけ」(横河武蔵野FC・依田博樹監督)、「柏には強いイメージしかないが、粘り強い戦いをしたい」(金守貴紀主将)、「絶対に諦めない気持ちでやっている」(福島ユナイテッドFC・鈴木勇人社長)。福島は除染のため、ホームグラウンドを使用できない状況にある。選手たちは働きながら、米沢(山形)、白石(宮城)、会津若松(宮城)へ練習に出向く。往復の移動時間が練習時間を上回るのはざらという悪条件だが、鈴木社長は「タフな状況にはもう慣れている」とコメント。4回戦のその他のカードはガンバ大阪×FC町田ゼルビア、セレッソ大阪×清水エスパルス、名古屋グランパス×ロアッソ熊本、大宮アルディージャ×川崎フロンターレ、キックオフは12月15日(土)。決勝は2013年1月1日(火)・国立競技場で開催される。チケットの一般発売は11月24日(土)より。
2012年11月09日今年4月にソロ活動の始動を発表したCHEMISTRYの堂珍嘉邦が、ソロとして休止後初のワンマン・ライブ『堂珍嘉邦 A La Musique』を渋谷公会堂にて10月8日に開催した。この日は、1日限りのスペシャル・ライブとあって、全国から多くのファンが駆けつけた。堂珍にとってこの日は、ソロアーティストとしての新たな一歩となる記念すべきステージ。そのオープニングを飾ったのは、彼が自分にとってのロックの原点と語る、ザ・ビートルズの『Helter Skelter』。バンドを従えて歌う姿は、これまでの彼のイメージを覆すロック色あふれるアグレッシブなものだった。冒頭で「いろいろなタイプの曲を演ります」と語った通り、時にギターを時に鍵盤を奏でながら、様々な堂珍嘉邦の引き出しを見せてくれた。また、自らが作詞作曲を手掛けた『Shout』と『hummingbird』の制作秘話を語りながら、11月14日(水)にリリースされるソロデビュー作となるこの2曲を披露した。途中MCでは、今回のカバー曲としても選んだ『Rootless Tree』の意味に込められている「自分の根っこをしっかり生やしていきたい」という決意表明をし、新たなスタートの火蓋を切った。全20曲熱唱し終えた後も、会場からは大歓声が止まなかった。なお、このライブを写真に収めた「メモカぴあ」を実施中。
2012年10月10日