女優の川口春奈(かわぐち・はるな)さんが、自身のYouTubeチャンネル『はーちゃんねる』を2020年3月29日に更新。『川口春奈のできるまで』と題して、ヘアメイクアーティストの高取篤史さんによるメイク動画を公開しました。川口春奈のメイク動画に「すっぴんがすでにきれい」と反響タレントによるメイク動画は多数公開されていますが、ヘアメイクアーティストによるものは貴重です。川口春奈さんのすっぴんのきれいさもあって、この動画は2020年4月1日現在で200万回近く再生されるほどの大反響となりました。川口春奈のできるまで動画冒頭で川口春奈さんは「しっかりと保湿をすることが大事」とコメントし、それを補足する形で高取篤史さんが家庭でできる簡単な方法を紹介。要所要所で、高取篤史さんがメイクのポイントを教えてくれるのもファンにとっては嬉しいところです。この動画を見た人からは「やっぱりプロってすごい」「目のメイクが決め手なのがよく分かる」といった、プロのテクニックに感心する声が寄せられました。2020年4月からは、スポーツ情報番組『Going! Sports&News』(日本テレビ系)でキャスターに初挑戦する川口春奈さん。持ち前の明るさを活かしたアスリートたちとの掛け合いが楽しみですね。[文・構成/grape編集部]
2020年04月01日ノゾエ征爾率いる劇団はえぎわ。その番外公演が2月28日(金)に開幕する。公演タイトルは、「はえぎわの番外公演をニッポン放送がプロデュースするよ『お化けの進(すすむ)くん』」。こんなに経緯がわかりやすいタイトルも珍しいのでは?出演はノゾエはじめ、井内ミワク、町田水城ら、はえぎわの一部メンバーとゲスト含め8人。そして今作の最大の特徴は、ノゾエいわく「ミュージカルみたいなの」であるということ。もともと、作品の中で音楽を効果的に使うことが多く、近年は音楽劇も多く手掛けているノゾエ。松尾スズキの絵本を舞台化した『気づかいルーシー』や、昨年の東京芸術祭で上演された野外劇『吾輩は猫である』なんかはまさにそうだ。しかしこれらはあくまでも「音楽劇」であり、そんなノゾエがあえて今作の企画で出した「ミュージカル」という言葉……はたしてどんなものになるのか、否が応でも期待は高まってしまう。また、音楽を手掛けるのが田中馨(Hei Tanaka)という点も要注目だ。近年ノゾエとのタッグが多い彼だが、上記の『気づかいルーシー』も『吾輩は猫である』でも音楽を担当。いわゆる「正統派ミュージカル的な音楽」とはまた違う、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような奇妙さと楽しさが同居する田中の音楽は、ノゾエの作り出す世界観ととても良く合う。しかも今回は田中率いるバンドHei Tanakaのバンドメンバーも出演、生バンドの演奏に合わせての舞台とのこと。ミニマムな番外公演とはいえ、なんとも豪華ではないか!今年5月にはシアターコクーンでの『母を逃がす』演出も控え、今後も大きなプロデュース公演の仕事が立て続くこと必至のノゾエ征爾。そんな彼が「やりたいこと」が、この公演には詰まっているはずだ。その贅沢さをぜひ味わいたい。『お化けの進くん』は3月10日(火)まで東京・ニッポン放送のイマジン・スタジオで上演される。文:川口有紀
2020年02月26日綾ベン企画『川のほとりで3賢人』が2月21日(金)から3月1日(日)まで東京・下北沢の駅前劇場で上演される。実はこの「綾ベン企画」、今回でなんとVOL.14。公演を立ち上げているのは劇団・東京乾電池の旗揚げメンバーでもある綾田俊樹とベンガル。だから“綾ベン”なのだ。1990年から1〜2年に1本ペースでコンスタントに公演を続けていたが、2006年以降は途絶えていた「綾ベン企画」。そして2017年に復活し、今回は3年ぶりの公演となる。注目ポイントは大きくふたつ。まずひとつは、綾田俊樹とベンガルという俳優ふたりの実力は言わずもがな、今回ここにゲストとして加わるのが広岡由里子という点だろう。広岡といえばかつて東京乾電池に所属、つまりふたりの後輩にもあたる人物であり、その独特なトーンと飛び道具のような存在感で舞台、映像と幅広く活躍している俳優なのだ。出演者はたった3人だが、どう考えても濃密な作品になることは間違いない。もうひとつは、演出を務めるのが映画監督の平山秀幸であるというところ。平山といえば映画『閉鎖病棟』『愛を乞うひと』などで知られる存在だが、実は前回の綾ベン企画公演で“舞台演出家デビュー”を飾っている。そして今作が舞台演出2作目、これはかなりレアと言えるだろう。もともと長年東京乾電池を観続けており、綾田&ベンガルらとも映像作品では多く関わってきた平山。そんな彼がこの個性あふれる3人をどう演出するのか、そこも見どころだ。舞台は多摩川の河川敷。隣り合わせに暮らすふたりのホームレスの前に、福祉課の馬場マチコという、額にバンドエイドを貼っている女が現れる。マチコの出現でふたりの生活は徐々に乱されてゆき……というストーリー。言葉の断片から少しずつ明らかになるふたりの過去と秘密、彼らにつきまとうマチコの正体……コミカルながらもそこには河川敷に暮らす人のリアルも見え隠れし、彼らが決して“遠い存在”ではないこともわかる。3人の猛者が繰り広げるそんな物語を小劇場で味わえる、なんとも贅沢な時間ではないか。文:川口有紀
2020年02月19日“今、東京で観るべき舞台”とはっきり言い切ってしまっていいだろう。青年団『東京ノート・インターナショナルバージョン』『東京ノート』の2作品連続公演が、2月6日(木)に開幕する。『東京ノート』は、1994年の初演以降13か国語に翻訳され、世界16ヵ国以上で上演されてきた平田オリザと青年団の代表作とも言える作品のひとつだ。国内での上演は8年ぶりとなり、再演を待望していた演劇ファンも多いだろう。舞台は近未来のとある美術館。ヨーロッパで大きな戦争が起こり、そこから避難してきた絵画を前に家族や恋人たちが、両親の世話や相続問題、進路や恋愛などについての会話を繰り広げていく。小津安二郎の『東京物語』をモチーフに描かれたこの作品には、バラバラに暮らしている家族を中心としたミクロな日常と、戦争により世界が不穏な空気をまとっているというマクロな視点、その両方が見事に内包されている。だからこそ、目の前で淡々と描かれる2時間の光景に、いつしか観客は胸を打たれてしまう。一方、『東京ノート』は平田作品の中でも特に世界的な広がりを持つ1本でもある。2017年からは毎年、台湾、タイ、フィリピンでの翻案上演が行われ、“現地化”がされているのだ。今回同時に上演される『インターナショナルバージョン』は、その集大成として上記の3か国の俳優に加え、日本、アメリカ、ウズベキスタンの俳優が参加。脚本も全面改訂され、登場人物も増加しているという。平田オリザと青年団が日本の演劇界に与えた大きな衝撃として、俳優たちが舞台上で同時に複数の会話を行う“同時多発会話”が挙げられるが、このバージョンで飛び交う言語はなんと7か国語!ある意味、究極の“同時多発演劇”と言えるだろう。2019年の豊岡演劇祭とシアターオリンピックスで上演され話題を呼んだ作品だが、東京では初の上演となる。『東京ノート』初演から26年。再演を重ねるごとに「遠い国で戦争が起きている」という状況はよりリアルなものとして私たちに差し迫り、“家族”の形についても私たちに再確認を問いかけてくる。そして、各国の俳優が揃う『インターナショナルバージョン』は、まさに現在の東京が持つ混沌に等しい。今、東京で上演されることに大きな意義がある……そんな2本の作品なのだ。『東京ノート・インターナショナルバージョン』は2月6日(木)より16日(日)まで、『東京ノート』は2月19日(水)から3月1日(日)まで、東京・吉祥寺シアターで上演される。文:川口有紀
2020年02月05日劇作家・演出家の倉持裕が、江戸川乱歩の短編8本を巧みな構成で舞台化した『お勢登場』(2017年)から3年。今春、最新作『お勢、断行』が上演される。倉持の手により、再び稀代の悪女・お勢が舞台に蘇ることとなった。【チケット情報はこちら】倉持は執筆の動機についてこう話す。「やはり、お勢というヒロインが魅力的だったことに尽きるかなと。悪いやつだけれど色っぽいし、これは乱歩自身も言ってるんですけど、悪いことをひらめいて実行するまでにスピード感があるんですよね。そして犯罪の後も悪びれず、完全に演じきる。そこがカッコいいなと」今作でお勢を演じるのは、倉持作品2作目の登場となる倉科カナ。「見た目がきれいで可愛いんですけど、ニヤニヤしてる印象があって。それが悪女にいい」と倉持に言われた倉科は、「ニヤニヤしててよかったです」と苦笑しながらも、「倉持さんの作品に出てくる女性はただ“きれいですよー”というだけではなく、多面的で見ていて共感できる。そういうところが好きなのかも」と倉持作品の魅力について語る。後妻の女主人・園役を演じるのは、倉持の人気シリーズ『鎌塚氏、舞い散る』(2019年)にも出演していた大空ゆうひ。『鎌塚氏~』に引き続きの“女主人”役だが「同じ女主人でも、性格も作品の世界観も違う。ここまで違う作品で2作続けて倉持さんの演出を受けられるのが、今すごく楽しみです」と意気込みは十分。「大空さんには強いものを感じるんでしょうね(笑)。でも逆に、こういう役ができる俳優さんは貴重です」と倉持も太鼓判を押す。倉持作品に初参加となる上白石萌歌は、謀略に巻き込まれていく資産家の娘・晶を演じる。「周りが悪い人ばかりの中で、ひとり被害者というか受け身の役。これから歳を重ねていったらまた違う印象になるんでしょうけど、今の萌歌さんには似合うと思った」と倉持。元々倉持作品が好きだったという上白石は、姉の萌音が出演していた『火星の二人』を2回も観に行ったとか。「倉持さんの舞台の面白さは、1回ではすべてをわかりきれないところだったり、言葉の巧みさだったり。どの作品も見たあとに少し冷ややかな風が吹く感じが魅力的。『火星~』のときは姉に台本を借りて、結末を読んでからまた観に行きました(笑)」とファン心理を覗かせ、稽古開始が待ちきれない様子。『お勢、断行』では、“お勢”というキャラクターを用いた完全新作に挑戦する倉持。「乱歩ファンに楽しんでもらえるかが心配です(笑)」と冗談交じりに倉持は語るが、乱歩の時代や世界観でしか描けないものがここにあるのは確か。お勢と、彼女をめぐる“悪人”たちの新たな活躍を心待ちにしようではないか。公演は2月28日(金)から3月11日(水)まで東京・世田谷パブリックシアターで上演。(愛知・島根・兵庫・香川・長野にてツアー公演あり)取材・文:川口有紀
2020年01月30日女優の川口春奈が29日、都内で行われたネイリスト直接予約アプリ「Nailie(ネイリー)」新CM発表会に出席。2月10日に25歳の誕生日を迎える川口への誕生日サプライズが行われ、“ネイル一生分”の権利が贈られると、「今までもらったプレゼントの中で一番うれしいです」と喜んだ。「ネイリー」は、ネイリストが投稿したネイル画像からデザインを探したり、気に入ったネイリストに直接予約できるアプリ。発表会では、川口を起用した新CM「ネイル失敗しちゃった」篇が公開された。今年初となるPRイベント登場となった川口は、 今年初のネイルをお披露目。「マットとミラーで、色は春っぽく」と説明し、「ネイルは女の子のモチベーションの一つだし、テンションが上がることの一つなので、それをCMで表現できるのはうれしかったです」とCM出演の喜びも語った。また、川口への誕生日サプライズが行われ、「え!?」と驚いた表情に。最初に特製ケーキが運ばれてくると「ありがとうございます。すごい。かわいい」と喜んだ。そして、「あんまり年は意識しないんですけど、数字で見ると、大人の階段みたいなイメージがあるので頑張りたいなと思います」と25歳の抱負を語った。さらに、“ネイル一生分”の権利が贈られると、「え、うれしい! どういうこと? 一生分って。いいんですか」と大喜び。「たまらないですね。めちゃくちゃテンション上がってます。ありがとうございます。最高ですね。今までもらったプレゼントの中で一番うれしいです」と笑顔で話した。
2020年01月29日女優の川口春奈(24)が1月19日、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』第1話に出演した。川口は後に織田信長の正妻となる帰蝶(濃姫)として、番組後半に登場。短時間だが、乗馬のシーンも披露し注目を集めた。各メディアによると、初回の平均視聴率は19.1%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)と好発進だったという。川口は沢尻エリカ被告(33)が昨年11月16日に麻薬取締法違反の容疑で逮捕されたことを受け、代役に抜てきされた。ドラマは1月5日に初回放送される予定だったが、放送日を19日に変更。12月から川口が撮影に加わり、急ピッチで撮り直しが行われたという。「川口さんは13年に『夫のカノジョ』(TBS系)でゴールデンタイムの初主演に抜擢されました。39歳の女性と身体が入れ替わる20歳の女性という難役を熱演したものの、結果は低視聴率。川口さんは、そのことをとても気にしていたといいます」(テレビ誌ライター)しかし、そんな川口が成長をみせている。今年1月4日と5日に放送された木村拓哉(47)主演の『教場』(フジテレビ系)では、警察学校の生徒役を熱演。視聴者からも『良い演技だった』と好評を博していた。「川口さんは警察学校のリアルな訓練シーンは、これまでで最も厳しい経験だったと振り返っていました。なかでも体力以上に、周囲と呼吸を合わせる難しさを痛感したようです。ただそこで団結力やチームワークの大切さを学んだ彼女が今回、大河に初挑戦することになりました。短期間での撮り直しが順調に進んだのも、『教場』で培った団結力が活かされたのでしょう」(テレビ局関係者)そんな川口の成長ぶりに、視聴者からはエールが寄せられている。《楽しみにしてた、今年の大河ドラマ 『麒麟がくる』 初回から私は好きになった。 とくに、川口春奈ちゃん!!めっちゃ合ってた!!違和感ゼロよ》《「麒麟がくる」の川口春奈さんは姿勢の良さとか、きびきびした男勝りな動きなどはドラマ「教場」の訓練で身につけたものが活かされてるんじゃないかな》《#麒麟がくる #教場 でも可愛くて素晴らしい演技だった川口春奈ちゃん帰蝶としても可愛い上に凛とした強さが出てましたね次の登場も楽しみ》
2020年01月20日「劇場」や、演劇が上演される“場”が近年、少しずつ変容しているように思う。若葉町ウォーフも、そんな場所のひとつではないだろうか?『会社の人事~歌なき平成の歌 / 令和アンダーグラウンド』が1月12日(日)から20日(月)まで横浜の若葉町ウォーフで上演される。若葉町ウォーフは、劇作家・演出家の佐藤信らを中心に運営される民間アートセンター。佐藤と言えば劇団黒テントでの活動で日本の演劇界を牽引してきただけでなく、世田谷パブリックシアターや東急文化村・オーチャードホールなどさまざまな大劇場の芸術監督・プロデューサーをつとめてきた人物だ。そんな彼が仲間たちと4人で2017年に立ち上げたこのスペースは築50年のビルを改築し、小劇場・稽古場・宿泊スペースを兼ね備えている。従来の民間の小劇場ではできなかった、施設の特徴を生かしたアーティスト・イン・レジデンスや、長期滞在型の国際ワークショップなども可能になる場所なのだ。大岡川と伊勢佐木モールの中間という、その立地も面白い。そんな個性的なアートセンターの新たな主催公演は、「平成を駆け抜けた“おっさん”たちの物語」。大岡川の川縁、時空の歪みに現れたバーに、会社を退く日を迎えた男が迷い込む……まさにこの若葉町ウォーフという場所と、この時代に合わせて書き下ろされた作品だ。作者の犬井邦益は、自分自身企業戦士として働いていた経験があるという。演出と美術は佐藤が担当、出演者には龍昇、塩野谷正幸(流山児★事務所)、大西一郎、丸山雄也(平泳ぎ本店)、服部容子、牧凌平という二世代の俳優が顔を揃えた。明けて「令和2年」がスタート。新元号にもようやく慣れてきた今日このごろに、改めて「平成」を振り返ってみるのも良いのでは?それも昭和と平成の匂いがしっかりと染み付いた場所で。そんな体験を叶えてくれる公演だ。文:川口有紀
2020年01月09日藤田貴大率いる「マームとジプシー」が、他ジャンルの作家とコラボレーションする企画「マームと誰かさん」シリーズ。その最新公演『ぬいぐるみたちがなんだか変だよと囁いている引っ越しの夜』が、12月25日(水)にいわてアートサポートセンター風のスタジオ、12月27日(金)から29日(日)まで東京・吉祥寺キチムにて上演される。シーンをリフレインしていく映像的な手法で注目を浴び、弱冠26歳で岸田戯曲賞を受賞。もはや演劇界には欠かせない存在となった藤田貴大、そしてマームとジプシーだが、彼らの活動の特徴として、年代、ジャンルを問わない相手とタッグを組んだり、いわゆる「東京での大劇場」ではない公演会場で作品をフレキシブルに上演したりという、ボーダレスな作品づくりが挙げられるだろう。この「マームと誰かさん」シリーズは、その最たるものといえる。他ジャンルの作家とコラボレーションする企画として2012年にスタート、これまでも音楽家・大谷能生や演出家・飴屋法水、漫画家・今日マチ子という顔ぶれを迎えてきた。今作『ぬいぐるみたちがなんだか変だよと囁いている引っ越しの夜』は2017年に歌人・穂村弘とブックデザイナー・名久井直子を迎えて行われた公演の再演作となる。いわゆる「わかりやすい物語が提示される演劇作品」とは、ちょっと違うものといえるかもしれない。穂村とその父、名久井らの物語、ないし“言葉”が、マームとジプシーには欠かせない俳優である青柳いづみによって語られていく。シンプルな作りだけに、観客を含めた空間の雰囲気次第でまた手触りが変わりそうなところも興味深い。もともと今回の再演に関しては、ツアー公演の会場を公募で決定するというあまり例を見ない手法がとられており、今年6月から京都、三重、長崎と公演を重ねてきた。今回東京での会場となる吉祥寺のキチムに関しても、ライブなどもよく行われるイベントスペースであり、いわゆる劇場とはまた異なる空間だ。初演とも会場が変わるだけに、以前観ている観客もまた新たな感覚で楽しめそうだ。ツアー公演を重ねてきて熟成されたこの作品が、新たな場所でどう立ち上がっていくのか。2都市でわずか4日間6ステージの公演、この体験を共有できた人にはえもいわれぬギフトとなるにちがいない。文:川口有紀
2019年12月24日2020年放送の大河ドラマ「麒麟がくる」への出演が決定した川口春奈の撮影が12月初旬からスタートし、順調に進んでいるという。そんな中今回、川口さんが役衣装を身に着けた写真とコメントが到着した。長谷川博己が明智光秀を演じる「麒麟がくる」は、第29作「太平記」を手掛けた池端俊策のオリジナル作品。戦国初期の1540年代、群雄割拠の戦乱の中、若き明智光秀、織田信長、斎藤道三、今川義元、そして、秀吉や家康ら各地の英傑たちが、天下を狙って戦う姿を、戦国時代を描く大河としては初めて4Kでフル撮影。長谷川さんのほかにも、門脇麦、岡村隆史、伊藤英明、染谷将太らが参加する。そんな中、先月に急遽出演者変更の発表があり、斎藤道三の娘・帰蝶(濃姫)役を大河ドラマ初出演となる川口さんが務めることが決定。この帰蝶は、明智光秀とは姻戚関係にあり、政略結婚によりのちに織田信長の正妻となる人物だ。川口さんは「時代劇は初挑戦で、帰蝶という役柄を大切に、大胆かつ丁寧に、そして芯のある様を全身全霊で演じさせて頂いています」と現状を明かし、「帰蝶は知れば知るほど奥が深く、激動の時代を生きた姿は皆様に共感して頂けると思いますので、是非ともご覧ください」と視聴者へアピールしている。また、今回の川口さん起用にあたって制作統括は「戦国の美濃で守護代の娘に生まれた姫・帰蝶は、気丈に生きていくことを運命づけられた役柄です。川口さんの背筋の通った凛とした立ち姿は、まさに信長の妻として織田家を率いていく風格に満ち満ちていました。またその吸い込まれそうな大きな瞳は、どんな困難にも立ち向かうことのできる意思の強さを表現していただけると思いました」と語っている。なお、川口さんは第1回より登場予定となっている。大河ドラマ「麒麟がくる」は2020年1月19日(日)20時~総合にて放送。※初回75分(cinemacafe.net)
2019年12月13日ダンサー、振付家として幅広く活躍する北尾亘。ソロワークはもちろん、近年では小劇場の注目カンパニーの振付を手掛けることも多い彼が主宰するダンスカンパニー、Baobabの最新公演『ジャングル・コンクリート・ジャングル』が12月5日(木)よりKAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオでスタートする。北尾に話を聞いた。実は今作の構想は、KAAT公演が決まった頃……2年近く前から温めていたものだという。「劇場によって、その時に作るもののイメージが変わっていくスタイルなんです。ダンスというもの自体が抽象的ですし、僕らの公演はステージ上に建て込みをするタイプでもない。劇場の中に流れる空気や、特性を想像しながら作品コンセプトを考えていくんですよ。KAATでの公演は初めてですが、僕自身が神奈川県出身ということもあり、馴染みを感じている場所で。海も近いし、少し自然に近づいていくような感覚がある場所なんですよね。ここだったらBaobabの真骨頂的なものと言いますか、大地のイメージ、あるいは土着的な身体……そういったものを遺憾なくやらせてもらえる空気があるのでは、と」近年のBaobabの作品は、社会的なテーマをはっきりと表したものが多かった。今作は旗揚げ当初の作品への“原点回帰”的なところも意識しつつ、タイトルが象徴するように自然と文明や環境問題、生命と自然の関わりなど、彼が今感じている社会問題は表現として盛り込まれていくという。劇場という空間でどうやってそれらを表現するか?彼が今考えているアプローチは、なんともユニーク。「今回は対面の客席に加え“方角”を大切にしてます。例えば、風水に則って動線を決めてみたり、東西南北で振りを分けてみたり。ずっとバレエで言う“8つの方向”(注・バレエにおける基本的な身体の向きのこと)ではない、別のものがないかと探してたんですよね。これ、ちょっと発見なのでは!?と思ってます(笑)」公演チラシには「いのちが、おどりたがっている。」という言葉が大きく打ち出されているが、今作の内容に関しては、近年彼が関わってきた演劇界の才能たちが大きく影響しているという。「“生命讃歌”と大きく言ってみたんですけれども、自分の作品性がそういう方向に向かっていくとはあまりイメージしていなかったんですよ。おそらくこれは、木ノ下歌舞伎の木ノ下裕一さんや杉原邦生さん、ロロの三浦直之さんや範宙遊泳の山本卓卓さん……彼らからの影響がかなりあると思います。特に昨年、まつもと市民芸術館で上演した木ノ下歌舞伎の『三番叟』、あれは大きかったですね。舞踊は祝祭であり、そして祈りでもある。もしかしたら、生贄的なものもあるのかもしれない。そういうことにもっとピュアに向かって行ってもいいのでは、そう思える勇気をもらえたんです」それぞれの現場で得た刺激を自分の中に蓄積し、変換して、ホームグラウンドであるBaobabで表現する。北尾が今考えていることを具現化するため、出演するダンサーはカンパニー史上最多の21人。北尾いわく「それぞれの身体の特性やシルエットにもこだわった」というダンサーは、体格はもちろん、プロフィールもバラバラ。特に年齢は上は40代、下はなんと小学校5年生(!)と、バラエティーに富んだメンバーが揃った。ここにもまた、北尾が抱える“ダンス”というものへの思いが込められている。「舞台作品としてのダンスというものが、お客さんとどう関わりを持てるのか。これが僕の中ではずっとテーマだったんです。これは多分演劇を経験しているのも強いんですけれども、どうしても非日常である“踊る”という行為は、舞台上と客席に境界線が生まれる感覚……美術作品をガラス越しに眺めるような、そういう関係性に近くなってしまう。でも僕はそれを、もう少しつなげて行きたいんですよ。旗揚げ当初からセリフを使ったりしていたのは、それもあると思います。コンテンポラリーダンスにも色々なスタイルがありますけど、僕たちの踊ってる肉体はもしかしたら観客の人に“自分と少し近いのでは?”と感じてもらえる可能性があるんじゃないか、と。そう感じてほしいからこその今回のキャストですし、ダンスをもっとポピュラーにしていく、そのための大事な一歩かなと思うんですよね」出演者たちとは、今年の6月頃からワークショップを重ねてきたという。「劇場から遠く離れた地で起きているかもしれない、人間でもない生き物の営み。そういうことまで僕たちは手を伸ばしたい」と語る北尾。舞台上に立ち上るのはきっと、そういったものまで濃密に感じられるような“いのち”の躍動だ。さまざまな刺激を得て、進化し続ける北尾亘の、Baobabの現在を目撃しようではないか。Baobab『ジャングル・コンクリート・ジャングル』は12月8日(日)まで。取材・文:川口有紀
2019年12月03日HIGHLEG JESUS、オッホなどで役者として活動していた新井友香が、2004年に旗揚げした劇団宝船。その最新公演『社交辞愛』が11月29日(金)、東京・新宿眼科画廊スペース地下でスタートする。その小柄な身体から繰り出される強烈なパワーと年齢不詳的な存在感で、小劇場界で活躍していた新井。近年はドラマ脚本家としての活動のほうがよく知られているかもしれない。NHKのショートドラマ『祝女』をはじめ、『イタズラなkiss』『アラサーちゃん無修正』、そしていま放送中の『僕はまだ君を愛さないことができる』など……可愛らしさからズルさ、情念まで、妙齢の女性の心の機微をリアルに描くことに定評がある。そんな彼女が率いる劇団宝船は、その旗揚げの経緯も面白い。所属していたHIGHLEG JESUS解散後、猫のホテルプロデュース『座長祭り』に架空の劇団「劇団宝船」の座長として参加。その後たまたま「キャンセルになった公演の肩代わりをしてくれる劇団を知らないか?」という知人からの連絡に、本当に劇団宝船を旗揚げしてしまうというまさに“瓢箪から駒”的ないきさつでスタートした劇団なのだ。新井以外のメンバーは、一人芝居やソロプロジェクトでも活動している高木珠里、主に映像で活動している國武綾のふたり。2013年以降はしばらく活動を休止していたが、2018年に7年ぶりの本公演『ああ、またか…とは言いたくない』で復活。前回公演からはHIGHLEG JESUS時代からの盟友であるSYOMIN’S主宰の今奈良孝行が準劇団員として加わった。今作『社交辞愛』の主人公は、40代前半の夫婦である桃花と春樹。子供のいないふたりは倦怠期を迎え、それぞれ“外”に恋愛を求めていく。一方、彼らの親もまた、桃花と春樹らの結婚や、生活に不満を抱えていた。社交辞令のように結婚生活をキープする夫婦と、彼らを取り巻く人々の物語はオムニバスのように見え、やがて絡み合っていき……というストーリー。とはいえただドロドロしているわけではなく、コメディでもあるのが新井作品の特徴なのでご安心を。また、今回の公演は劇場ではなくアートギャラリーで行われるため、劇団いわく「肩の力を抜いて気楽に他人の生活をのぞき見に行く……という感覚で観て頂けたら」とのこと。キャストは小劇場で活躍する手練れたちばかり、一風変わった面白さが味わえそうだ。12月4日(水)まで。文:川口有紀
2019年11月27日M&Oplaysプロデュース『鎌塚氏、舞い散る』が、11月22日(金)より東京・本多劇場で上演される。三宅弘城演じる“完璧な執事”を目指す鎌塚アカシが、上流階級のお屋敷内で次から次に起こる事態に翻弄されつつ、個性的な登場人物相手に問題解決に奮闘するコメディ作品。2011年に第1作『鎌塚氏、放り投げる』が上演され、その好評ぶりからシリーズ作品に。今作は第5作となる。舞台での活躍は言わずもがな、今やテレビドラマでもバイプレイヤーとして引っ張りだこの三宅弘城だが、この鎌塚アカシはまさに彼の魅力が濃縮された役。生真面目で、ときに喜び、悲しみ、怒り、焦り、トラブルに対処しようとしては小柄な身体で舞台上をキビキビと動き回る。作・演出を務める倉持裕作品の中でも完全に“コメディ”に振り切ったシリーズだが、笑いの中にもどこか不条理でシュールな展開が盛り込まれるのがいかにも倉持作品らしい。そんなありえないシチュエーションや主人たちの無理難題に翻弄される姿すら、鎌塚アカシという役はチャーミングに見えてしまう。女主人・マヤコ(大空ゆうひ)や若い執事・佐双(小柳友)ら、初参加のメンバーが演じる人物もくせ者揃いとなりそうだが、過去作で活躍した人物たちがふたたび登場するという点にも注目したい。堂田男爵夫妻(片桐仁、広岡由里子)、かつて堂田男爵に仕えていた宇佐(玉置孝匡)。過去のコンテンツを確認しづらい演劇では、シリーズものはなかなか難しい。それでもこのシリーズがこれだけの上演を重ねているのは、「初めて見る人でもしっかりと楽しめ、それでいて過去作を知っている人だとさらに楽しい」というバランスが絶妙だからだ。特に気になるのは、第1作、第3作で鎌塚アカシと恋(?)模様を繰り広げた、上見ケシキ(ともさかりえ)の再登場。一筋縄ではいかないというか、したたかな部分を持つ“アイドル女中”上見とアカシの中は、果たして今回どうなるのか?倉持いわく「1作目から続く鎌塚アカシと上見ケシキの、相思相愛ながら一向に発展しない恋も、ひとつの節目を迎えそうです」とのことだが……。さてここで今回のタイトルを確認しよう、『鎌塚氏、舞い散る』。シリーズ5作目にして、初めての冬が舞台の作品。舞い散るのは雪なのか、それとも……?その真相はぜひ、劇場で確かめよう。M&Oplaysプロデュース『鎌塚氏、舞い散る』は、12月11日(水)まで本多劇場、12月14日(土)・15日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、12月17日(火)に島根県民会館 大ホール、12月20日(金)に石川・金沢市文化ホール、12月22日(日)に宮城・電力ホール、12月25日(水)に愛知県産業労働センター 大ホールにて上演。文:川口有紀
2019年11月21日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)がKAAT 神奈川芸術劇場と初タッグを組む公演『ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~』が、11月7日に開幕した。2019年は、とにかく精力的に活動していた印象のKERA。ヤスミナ・レザ作品の演出『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~』から始まり、全国ツアーも含んだ『キネマと恋人』の待望の再演。そして今年の締めくくりは、満を持しての書き下ろし。しかも題材はKERA自身が愛してやまないカフカだというから、期待せずにはいられない。KERAはこれまでカフカを題材にした作品を2作上演している。2001年、広岡由里子とのユニット「オリガト・プラスティコ」で上演した『カフカズ・ディック』は、カフカと彼の家族、彼の遺稿を出版したマックス・ブロートなど周囲の人物との関係を描き出した評伝的な内容だった。一方、2009年の『世田谷カフカ~フランツ・カフカ「審判」「城」「失踪者」を草案とする~』は一転、世田谷パブリックシアターという空間を虚実ないまぜにした“カフカ的世界”に巻き込むような作品に。そして3作目となる今作は、「カフカ4作目の長編小説の遺稿が発見され、それが舞台化されたら……」という内容だという。多くの人は中編小説『変身』、もしくは未完の長編である『失踪者(アメリカ)』『審判』『城』のイメージが強いカフカだけに、4作目の長編小説と聞いて驚くかもしれない。でももちろん、そんな遺稿は発見されていない。書かれていない“第4の長編”をもとに作り上げられる舞台作品。KERAは今回、作品が上演される前から観客の私たちを、不条理が満ち満ちた“カフカ的世界”にいざなっているというわけだ。KERA作品初登場の多部未華子、『陥没』(2017年)での好演も記憶に新しい瀬戸康史、近年映像作品でも活躍目覚ましいTEAM NACSの音尾琢真、そして渡辺いっけい、麻実れいなど豪華キャストが顔を揃えた。KERA×カフカという唯一無二の世界観、じっくり楽しもうではないか。11月24日(日)までKAAT 神奈川芸術劇場 ホール、11月28日(木)から12月1日(日)まで兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、12月14日(土)・15日(日)に北九州芸術劇場 中劇場、12月20日(金)から22日(日)まで愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールにて上演。文:川口有紀
2019年11月08日森新太郎演出の『メアリ・スチュアート』が、2020年1月~2月に東京・世田谷パブリックシアターで上演される。16世紀末を舞台に、長谷川京子演じるスコットランド女王メアリと、イングランド女王エリザベス一世の対立を描いたこの戯曲。今作はメアリに恋心を抱く青年モーティマーや、ふたりの女王から寵愛を受ける策略家のレスター伯など、登場人物が 20 数名に及ぶ群像劇となる。9年ぶりの舞台出演となる長谷川、レスターを務める吉田栄作に話を聞いた。【チケット情報はこちら】「オフォーが来たときの感想を聞くと「ずっと舞台をやりたいと思っていたので、お話をいただけたのはすごく嬉しかったんです。けれど、久しぶりの舞台出演でタイトルロール、しかもこういう題材で、と少しプレッシャーがありました」と正直に答える長谷川。それでもチャレンジしようと思えたのは「キャスティングしていただいた際に、可能性を見出してくださったことと、自分の中からも想定外の何かが出るのではという楽しみがあったので。舞台は私にとって、自分の大きな成長につながる場でしたから」と語る。一方、吉田は「まず、自分が演じることを前提に台本を読んでみたんですけど、なかなか想像がつかないんですよね」と、慣れない言葉や言い回しが多いこの戯曲に最初は少し苦しんだ様子。この言葉を受けて「そうなんですよ!なかなか台詞が入らないですよね(笑)」と少しホッとした顔で笑う長谷川。「3回位読むとだんだんと面白くなってきて。だから観ていただくお客様に、いかに難しく思わせないか。それが今後の課題となっていくんだと思います」と吉田。レスターは、かつてメアリと婚約していたという過去を持つ人物。「彼の行動の根本にあるのはやはり、メアリへの思いなんでしょうね。相手側の陣地に入りつつ、彼女に有利になるように仕向けていく。シドニィ・シェルダンの小説に出てきそうなキャラクターですよ」という吉田の言葉に、長谷川が「(レスターは)愛か権力か……という感じの役柄ですよね。吉田さんだったらどっちを取ります?」と思わぬ質問に「愛ですね」と即答する吉田。「他の男性は権力を取るかもしれませんけど、僕はその多くの男の人達とは違うんだろうなと(笑)」と答え、場が和む一幕も。そう、この作品のキーとなるのは“愛”。「メアリの中に筋として一本通っているもの、それは何かというと、私は愛だと思うんです。それは宗教への愛かもしれないし、万人への愛なのかもしれないし、またはある特定の人への愛なのかもしれない。これから台本を読み込んでいきたいですね」と長谷川。歴史に翻弄された悲劇の女王の姿が“愛”というキーワードを核に、現代に生きる私たちにも説得力を持って迫ってくる…そんな作品になりそうだ。公演は1月27日(月)から2月16日(日)まで。チケットは11月23日(土・祝)より一般発売開始。取材・文:川口有紀ヘアメイク:【長谷川・吉田】鎌田直樹、タナベコウタスタイリスト:【長谷川】及川千春【吉田】勝見宜人
2019年11月01日80年代の小劇場ブームの時代に劇団「第三エロチカ」で彗星のように現れた劇作家・演出家の川村毅。2010年の30周年を機に劇団を解散し、以降は自身の戯曲をプロデュースする「ティーファクトリー」を中心に活動を続けている彼の最新作『ノート』が、本日から11月4日(月・祝)まで東京・吉祥寺シアターで上演される。『ノート』は「2019-2020 川村毅劇作40周年&還暦年」と銘打たれた、2019年から2020年にかけて3作品を上演する企画の第1弾。拘置所に留置されている、記憶を失った男・T。記憶を取り戻すため、Tが所属していたある活動団体の仲間たちの証言がノートされていき、この30年間の出来事が召喚される。彼らが追い求めた理想や過ごした日々が徐々に語られるうちに、自分たちが犯罪に至った理由や経緯も明らかになっていく……。このあらすじを読んで、一定以上の年齢ならすぐに思い浮かぶ“現実の出来事”がいくつもあるはずだ。実際、川村がこの新作を書き下ろした理由のひとつには、昨年には平成の大事件に関連する死刑が大量に執行されにもかかわらず、多くの平成生まれの若者たちがその事件と経緯を知らないことに愕然としたからだという。そして、死刑囚の中には川村自身と同世代の人間が少なからずいたことから、自分たちが80年代からの40年間をどのように生きてきたかを描きたかった、と。川村毅は、常にその時代が持つ現実、そして孕んでいる問題を、作品を通じて突きつけてきた劇作家だ。新しい元号という節目を迎え、私たちはどこか“平成”をもう過ぎ去ったものとして片付けようとしていないか。起こった事件を過去のものとして、自分たちとは無関係なものと思い込もうとしていないか。川村の新作はどこか浮かれた空気の私たちに、そんなメッセージを投げかける。ちなみに2020年1月には、川村自身が“女優”として(!)出演する『クリシェ』(1994年初演)を東京・あうるすぽっとで上演、5月には京都芸術劇場春秋座と東京・シアタートラムで2012年に白井晃演出で高い評価を得た作品『4』の再演が控えている。還暦を迎えてなお精力的に活動を続ける川村の“記念イヤー”幕開けを飾る新作公演。“今”だからこそ観ておきたい、そんな作品となりそうだ。文:川口有紀
2019年10月24日女優の川口春奈が16日、東京・渋谷のn_space–エヌスペース-で行われたカルビー「じゃがりこミュージアム」発表会に出席した。カルビーは、10月17~20日の期間限定で、じゃがりこの歴史や美味しさと楽しさを演出する「じゃがりこミュージアム」を東京・渋谷のn_space–エヌスペース-で開催。開催前日となったこの日はオープニングイベントが行われ、CMキャラクターを務める川口春奈が登壇した。ミュージアムの受付嬢が着用するような制服姿で登場した川口は「受付のお姉さんをイメージしました。スカーフを巻いちゃったりして(笑)」と笑みをこぼし、「可愛いですよね」と自画自賛。イベントが行われば場所は、「じゃがりこの日」にあたる昨年の10月23日に開催されたイベントで訪れて以来だといい、「1年あっという間でしたね。その間にもじゃがりこのCMとか撮影もいっぱいしましたし、本当にあっという間の1年で早かったです」と振り返った。また、今年の4月に放送された平成最後のじゃがりこのCMについても言及。同CMは24年前に同商品が誕生した時のCMを復刻し、さらには平成を振り返るというもので、「当時のCMをを似せてコピーするという感じでした。本当に肩の角度といい腕の位置とか気だるい感じとか全部をシンクロさせたい感じだったので、当時の映像を見ながらやるのは難しかったです」と語りつつ、「本当に面白かったですよね。一番印象的なのはギャルやシノラー的なもの。メイクとファッションがこんなに違うのかと思いました。(ガングロのギャル風メイクやファッションを)やってみたいかは別ですけど、通らなかった道だったので面白そうですよね」と興味を示した。イベント中は、川口が期間限定商品『じゃがりこ 激辛インドカレー』などを試食。「辛いの大好きなんです!」と興味津々で「美味しいですね。止まらないですよ(笑)。確かに辛いものが苦手な方は辛いかもしれませんが、辛いお菓子ってないじゃないですか。なのでずっと売っていて欲しいぐらい好きです。皆さんにも食べていただきたいですね」と話していた。
2019年10月16日東京・豊島区池袋エリアを中心に展開する国際舞台芸術祭として、2016年に開始した東京芸術祭。4回目となる今年は9月21日よりスタートしており、国内外を問わずさまざまな団体のプログラムが今後も予定されている。中でも、この東京芸術祭ならではの演目と言えるのが東京芸術劇場の前に広がる池袋西口公園で行われる「野外劇」。今年の野外劇『吾輩は猫である』が、10月19日(土)から29日(火)まで上演される。タイトルから想像できるように、下敷きとなるのは夏目漱石のかの代表作。しかしただの“舞台化”にはならないようだ。まず出演者の数は、およそ500人の応募者から選ばれた約80人。そして脚本・演出を手がけるのは、近年活躍目覚ましいノゾエ征爾。今年活動20周年を迎えた劇団「はえぎわ」主宰として公演もコンスタントに行うだけでなく、近年はさまざまなプロデュース公演の演出家としてもまさに引っ張りだこの状態。それでいて、個性派俳優として舞台やドラマなどへの出演も多い。最近でもNHK大河ドラマ『いだてん』にアナウンサー役で出演しており、その神出鬼没ぶりには驚かされる。そんな彼が今回手がけるのは、大人数が出演する野外劇という、いわゆる一般の公演とは少し毛色が違うもの。しかし、心配は無用といえるだろう。なぜなら彼は2016年に故・蜷川幸雄の後を引き継ぐ形とはいえ、なんと出演者1600人あまりというかつてない大作『1万人のゴールド・シアター2016』の脚本・演出を手がけた経験がある。もともと、強烈な個性を持つ人物たちが群像劇的に交叉してゆく作風が印象的なノゾエ作品。シニカルさとユーモア、そして毒がほどよくまぶされた彼の作風が、池袋というどこか猥雑な雰囲気も持つ街中という特殊なシチュエーションで、どう花開くのか。オーディションで集められた俳優たちも年齢・出自ともにバラバラとのこと、通常の劇場では観られないまさに“一期一会”の公演となりそうだ。少雨決行・荒天中止。前売りチケットは完売しているが、各ステージで当日券が発売されるほか、無料で観劇できる立ち見スペースも用意される。文:川口有紀
2019年10月16日初演から今年で30年目を迎える朗読劇『ラヴ・レターズ』。数多の俳優が演じ、多くの観客を感動させてきたこの作品に、新たな1ページが加わることとなる。「黒柳徹子スペシャル」。そのサブタイトルの通り、黒柳徹子がこの作品に挑むシリーズが本日10月7日より、東京・EX THEATER ROPPONGIで開幕する。『ラヴ・レターズ』というのは、ある意味“特殊”な朗読劇だ。舞台の上にはテーブルと2脚の椅子、そして男女の俳優が1組。彼らが演じるのは幼馴染のアンディーとメリッサだ。自由奔放で感覚人間のメリッサと、真面目でいつも何かを書いているアンディー。幼少期からやがて思春期を迎え、大人になり……という長きにわたる期間の2人を、彼らの書いた「ラヴレター」を通して語ってゆく、というもの。アンディーとメリッサの人生は、けして順風満帆ではない。しかし多くの人が人生において何らかの壁にぶつかるように、経験を重ねれば重ねるほど、この戯曲に描かれた彼らの関係性、そして2人の“愛”が染みわたってくる。こう聞くとオーソドックスな朗読劇のようだが、作者A.R.ガーニーの指定により、稽古が許されるのは1回のみ。どんな俳優であってもそれは守らねばならず、時として舞台上には俳優自身が戯曲に感じたヴィヴィッドな感情がむき出しになる。それがまた結果的に観客の心を揺さぶり、このシリーズの魅力のひとつなのだ。もともと黒柳は、PARCO劇場で長らく『ラヴ・レターズ』を手がけてきた演出家の故・青井陽治から何度も出演を誘われてきたものの、スケジュールが合わず叶うことはなかったという。1989年より「海外コメディ・シリーズ」として30年間で32作品を上演、舞台女優としてのキャリアも輝かしい彼女が、満を持しての“初挑戦”。少女から壮年期までを彼女がどのように演じるのか、期待せずにはいられない。しかも相手役のアンディーには、高橋克典、筒井道隆、吉川晃司というタイプの違う3人の俳優が顔を揃えた。俳優の組み合わせによりテイストが化学反応のように変わる戯曲だけに、観比べてみるのもまた面白いはずだ。EX THEATER ROPPONGIで10月16日まで上演の後、18日から20日まで大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。文:川口有紀
2019年10月07日“演劇”とは、何だろう? 岡田利規、そして彼が主宰するチェルフィッチュの作品は、いつもそんな鮮烈な問いを観る者に投げかける。彼らが美術家・金氏徹平とコラボレーションした最新作『消しゴム山』が、10月5(土)、6日(日)に京都・ロームシアター京都 サウスホールで上演される。思えば、岡田利規の作品はいつも、私たちが一般的に持っている“演劇”のイメージを軽々と飛び越えてきた。舞台上でナチュラルに会話を行う「現代口語演劇」のスタイルに観客がすっかり慣れていた2000年代前半、「日常的所作を誇張しているような/していないようなだらだらとしてノイジーな身体性」と、私たちが日常で使う若者言葉や“整理されていない”言葉をそのまま舞台上で提示するチェルフィッチュの登場は、演劇界に衝撃をもたらした。そして2005年にはコンテンポラリー・ダンスの登竜門『トヨタコレオグラフィーアワード』に出場、最終選考会で大きな議論の的となる。2007年には海外での公演を開始し、アジア、欧州、北米など計70都市で上演を重ねてきた。2017年には自身の代表作『三月の5日間』をキャストを一新するだけでなく、役柄とキャストの“性別”すら超越するという「リクリエーション」版で上演、またもや話題を呼んだ。そんな岡田が手がける今作もまた、観客の予想を遥かに超えたテーマが提示されている。それは「直接の届け先が人間の観客ではない演劇」。「モノのための演劇」であり「モノの演劇」だ。岡田が2017年に陸前高田市を訪れた際、驚異的な速度で人工的に作り変えられる風景を目の当たりにしたことをきっかけに、「人間的尺度」を疑う新作の構想を始めたという。今作で、俳優の演技が向けられる対象は観客ではなく、舞台上のモノや映像上のモノなど。そこでは“モノが人間に従属する”従来の関係性が断ち切られた世界が描かれていく。舞台上に置かれた“モノ”をコラボレーターである美術家・金氏徹平が手がけているという点でも注目だ。また、今作は、岡田が舞台映像デザイナーの山田晋平と共に近年取り組み始めた「映像演劇」の手法も取り入れられる。「映像演劇」とは、岡田によれば「役者の演技を撮影した映像をしかるべき環境のもとで投影するという作法によって上演される演劇」。観客と舞台空間の中に、また新たなレイヤーを提示する存在となる。“演劇”の定義はおろか、“モノ”と私たち“人間”の関係、そして存在すら考え直す……そんな公演になるのではないだろうか。やはり岡田利規、そしてチェルフィッチュは、いつも私たちに新鮮な波紋を投げかけてくれる存在なのだ。文:川口有紀
2019年10月03日柿喰う客の新作本公演『御披楽喜(おひらき)』が、9月13日より東京・本多劇場で幕を開ける。劇団結成13年目の彼らが今回演じるのは、恩師の13回忌に集う13人の男女の物語。“13”という不吉めいた数字と意味深なタイトルも含め、今回の公演について代表・中屋敷法仁に話を聞いた。「いつか劇団の解散公演をやるならこのタイトルで、と決めていたものなんです」と、のっけからドキリとすることを言う中屋敷。しかし、柿喰う客が今作で解散をするわけではもちろんない。「“劇団”の話をやりたいなと思ったんです。今もう、劇団というものがもはや希少価値のある集団になりつつありますよね。今も劇団というものがある、それだけで作品を超える価値があるんじゃないか……そんなことを思っていたんですよ」中屋敷自身も近年、2.5次元ミュージカルなど外部作品の演出を手がける機会が増え、劇団から離れた活動が多くなってきた。演劇活動を始めた頃とは環境が変わっていく中、改めて「劇団でやるべきこととは何か」を突き詰めて考えていくことが増えたという。そして今回、劇団にしか表現できないこととして考えたのが、“解散”。「なぜなら、解散公演だけは劇団にしかできないものだから。例えば『レ・ミゼラブル』に“解散”はないですよね(笑)。劇団の唯一劇団たる所以は、“集合”なんです。“集まれ!”といって集まったのが劇団であるならば、解散する様まで考えるのが劇団ではないか。劇団というものにものすごく興味と確信がある今、劇団の一番最高のパフォーマンスは“解散”にあるんじゃないか、と。ひとつの集団が生まれ、集団がバラバラになっていく様……それがノスタルジズムに陥るのか、それともそこには新しいアヴァンギャルドなものが生まれるのか。そういう興味があります」そうして出来上がったのが、とある美術大学でのかつてのゼミ仲間という“集団”の物語。本当の解散公演ではないが、過去の作品のセリフがところどころに散りばめられた劇団の総決算的作品になっているという。これは、東京公演に先駆け、兵庫県の「豊岡演劇祭」に招かれて『御披楽喜』を上演することも大きく影響しているとか。なぜなら豊岡演劇祭のディレクター、平田オリザこそが、かつて「今後脚本家、演出家としてどうやっていけばいいですか」と問うた中屋敷に「劇団を作ること」と答えた張本人だから。「当時2000年代の初頭だったので、なんでこんな古臭いことを言うんだろうと思ったんです。劇団なんてこれから崩壊していくんですよ、これからは作品と演出家の時代、俳優の営業の時代になってきますよなんて偉そうなことを言ったんですよね。でもオリザさんが言ったのは“だからこそ、劇団をやるんだよ”と」劇団というものに理想を抱いたスタートではなかった、だからこそ劇団の価値を客観的に問うことができたのかもしれない。劇団継続の危機もあったが、その都度周囲の人たちから改めてその価値を知らされることもあったという。そして劇団を続けて13年目、そんな大きなきっかけを与えてくれた“心の師”とでも言うべき存在が手がける演劇祭に、メインプログラムとして呼ばれた。だからこその“総決算”だ。「2.5次元作品の場合は、いろいろな人の憧れや理想がある上での作品だから、幻想があっていいと思うんです。でも劇団はそういった幻想を捨て、“演劇とはなんぞや”という核に迫れる場所」と語る中屋敷。彼の“劇団でしか表現できないこと”をぜひ、劇場で確かめてみようではないか。取材・文:川口有紀
2019年09月10日舞台を中心に、映画やテレビ、小説と活躍の場を広げている人気劇作家・演出家の前川知大と世田谷パブリックシアターがタッグを組む新作舞台『終わりのない』が今秋上演される。前川と世田谷パブリックシアターは、これまでも“日本”をモチーフとした「奇ッ怪」シリーズを立ち上げ3作を発表してきたが、今作はホメロス作『オデュッセイア』を原典としたSF作品になるという。「奇ッ怪」シリーズ全作品に出演し、今回も参加する仲村トオルに話を訊いた。『終わりのない』のチケット情報「小泉八雲作品も『遠野物語』もそれぞれに共通していたのは、『人々の口から口へ伝えられていった話』だったということ。でも今回は、ギリシャで神様とお話しをしていた人たちの物語。ちょっと古い話すぎて(笑)どうするのこれ!?と」古代と未来を往還するような日常と宇宙を繋げる旅を描いた『オデュッセイア』の壮大な物語をどう立ち上げるのか。数々の作品で重要な役どころを担ってきた仲村も、とまどいを見せる。「でも多分、“昔の人には見えたもの”があったんでしょうね。古代のギリシャにも、神様が見えたり、神様の声が聞こえてしまう人たちがいたというか、もっと神々の領域と人間の領域の境界線が曖昧だったんじゃないか、と思うんですよ。じゃあ現代の僕たちは何を失ったから、聞こえなくなり、見えなくなったんだろうかと……。そう考えると、これまでの『奇ッ怪』シリーズと通じるものがあるような気がします」共演には前川作品初参加となる山田裕貴、奈緒らが顔を揃える。前川作品のベテランとしては、稽古場でポジション的に負うところが大きいのでは?と尋ねると「まったく大丈夫だと思いますよ。特に山田君は前川さんの世界がとにかく好きみたいですし。あと『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』の時に出演してた瀬戸康史君もそうだったんですけど、前川さんは本当に、その物語に“最適な人”を連れてくる。これに関しては、何度も『凄いな』と思うことがありましたから」と、演出家・前川知大の采配に全幅の信頼をおいている様子。「前川作品に関わっている時は、なぜか“人の縁”みたいなものが急速に近づいてくると言うか、不思議なことがたくさん起こるんです。稽古場に行く途中で思わぬ人に会ったり、不思議なところで人の縁が繋がったり。今回もそうなんでしょうね」そう言って笑う仲村。舞台という“どこでもない空間”を通じて、この作品の彼方にある“失った何か”の片鱗を掴み取れるのかもしれない。『終わりのない』は、10月29日(火)から11月17日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターで上演。チケットは発売中。取材・文:川口有紀ヘア&メイク:宮本盛満スタイリスト:中川原寛(CaNN)撮影:山本祐之
2019年09月09日稲垣吾郎主演舞台『君の輝く夜に ~FREE TIME,SHOW TIME~』が8月30日に東京・日本青年館ホールで開幕した。今作は2012年、2014年、2016年と上演された稲垣主演の舞台『恋と音楽』シリーズのクリエイター陣が再びタッグを組んだもの。作・演出に鈴木聡、音楽は鬼才のジャズピアニスト・作曲家の佐山雅弘が担当。2018年夏に京都で上演されて好評を博した作品が、さらにパワーアップを遂げていよいよ東京にお目見えとなった。昨年と同じく、主演の稲垣吾郎を、共演の安寿ミラ、北村岳子、中島亜梨沙という3人の実力派女優が囲む布陣。2部構成の音楽劇の合間にショウタイムが入り、音楽は舞台上での生演奏。ショウアップされたエンタテインメント作品となっている。初演から1年近く時間が空いての再演となったが、初日公演前の囲み取材では「去年京都で1カ月公演をしているので、スタート地点が違う。より良い、さらに磨きのかかったものになっていると思います」と稲垣。安寿も「1年経って寝かせたというか、熟成した4人のチームワークはバッチリなので、いい初日を迎えられると信じております」とコメント。中島も「京都の時よりもさらに人の関係がパワーアップしているので、楽しみにしてください」と語れば、「練りこんで寝かせて、良いものをお見せできるように頑張りたいと思います」と北村も自信を覗かせる。また、新しい地図のふたり、香取慎吾と草なぎ剛も観にくるのかと問われ、「多分……そうですね、もちろん来てくれると思います」と稲垣が一瞬照れる様子も。昨年の京都公演にはふたりが訪れていたらしいが、どうやらふたりに今作を観られるのは緊張するようで、「歌とか踊りって、ずっとグループでやってきたものだから。お芝居は昔からひとりでやらせてもらってきたけど、歌と踊りをふたりに見られるのはなんとも言えない小っ恥ずかしさがあり。でもピリッと引き締まります。恥のないようにやりたいと思いますし、逆に頑張れるかなと」と、長く活動を共にしてきたメンバーならではの思いを語った。音楽劇の舞台は、国道沿いにある海の見えるダイナー兼ホテル。稲垣演じる男性客が店を訪れ、店の女主人や逗留客の若い美女、ふらりと店を訪れた謎の女社長らと、夏の終りのひとときを過ごすこととなる。男性客・ジョージにはこの店を訪れた理由があり、それは「10年前に別れた恋人とここで再会の約束をしている」というもの。また、女性たちもそれぞれ過去や事情を抱え、ジョージは再会の時を待ち焦がれながら、彼女らと会話を交わしていく……という物語だ。少しチャラいけれどもナイーブさを抱えたジョージには、まさに稲垣のキャラクターがぴったり。また、コメディエンヌぶりをいかんなく発揮している北村、凛とした佇まいで“大人の女性”の存在感を見せつける安寿、弾けるような天真爛漫さが魅力の中島と、女性陣のキャラクターがまさに三者三様。ジョージが抱えた“大人の恋”の顛末を、歌い踊りながら彩っていく。1幕と2幕の間に入るショウタイムも、見どころがたっぷりだ。全員がデザイン違いの白い燕尾服に身を包み、『ニューヨークニューヨーク』や『マック・ザ・ナイフ』など誰もが知るスタンダード・ナンバーを歌い踊っていく。ときに芝居仕立てでコミカルに、ときにしっとりと繰り広げるナンバーはなんとノンストップで14曲!今回のショウタイムは京都公演から時間が10分拡大されたとのことで、よりパワーアップした構成に。それぞれ活動してきたフィールドは少しずつ違うものの、“歌とダンス”という共通の分野で活躍を続けてきた4人だけに、そのクオリティは折り紙付き。特に稲垣と北村のタップダンスや、『イパネマの娘』や『スマイル』などをソロで歌い上げるなど、稲垣ファンにはたまらないシーンが満載だ。実は今作の音楽監督である佐山が昨年11月に64歳の若さで逝去。今回の公演は彼への追悼の意が込められているが、会見で稲垣が「暗い雰囲気は佐山さん自身が好きではないと思う。今日の初日、本番も一番の特等席で観劇して欲しい」と語ったように、出演者全員の想いが伝わってくるようなパワフルな舞台となっている。夏の終わりにぴったりの贅沢なエンタテインメント作品、ぜひたっぷりと楽しもう。同会場にて9月23日(月)まで上演される。取材・文:川口有紀
2019年09月03日稲垣吾郎主演舞台『君の輝く夜に ~FREE TIME, SHOW TIME~』が8月30日に東京・日本青年館ホールで幕を開けた。【チケット情報はこちら】2012年、2014年、2016年と3度に渡り上演された稲垣主演の舞台『恋と音楽』シリーズ。数々のオリジナルミュージカルを手掛けた実績を持つ劇団ラッパ屋主宰の鈴木聡が作・演出を担当し、鬼才のジャズピアニスト・作曲家の佐山雅弘が音楽監督を務め、好評を博してきた同シリーズ。そのクリエーター陣が再びタッグを組み、昨年夏に京都で上演された舞台がパワーアップして東京で上演される。共演には安寿ミラ、北村岳子、中島亜梨沙という実力派女優3人が顔を揃えた。本作は音楽劇と、合間にショーが入る二部構成となっているところがユニーク。物語の舞台は国道沿いにある海の見えるダイナー兼ホテル。夏の終りのある日、ひとりの男性客・ジョージ(稲垣)が店を訪れる。ライザ・ミネリ好きという店主・ライザ(北村)が訳ありな様子の男に事情を聞くと、10年前に別れた恋人と、この店で今日再び会おうと約束したのだという。そこにホテルの宿泊客である若い女性・ニーナ(中島)、休暇中だという女社長・ビビアン(安寿)が現れ、男一人&女3人の夏の一夜が繰り広げられていく……というストーリー。過去の恋にセンチメンタルになりつつ、若い美女にはつい惹かれてしまうという、ちょっとお調子者のジョージを稲垣が好演。ときに子供っぽくなってしまう振る舞いも、彼のチャーミングさとどこか浮世離れした雰囲気が見事に魅力に変えている。また、彼を振り回す(?)3人の美女たちも、コミカルなライザ、謎めいたキャリア女性ビビアン、若さとパワー全開のニーナと三者三様。歌を交えた軽妙なやり取りが、とにかく観ていて楽しい。そして“楽しい”といえばなんといっても、間に入るショウタイム!全員がゴージャスな白い燕尾服に身を包み、生演奏に合わせて『ニューヨークニューヨーク』や『マック・ザ・ナイフ』などスタンダード・ナンバーを歌い踊っていく。京都公演からはショウの時間も拡大され、稲垣と北村のタップダンスシーンなど、追加された場面も見逃せない。初日前に行なわれた囲み会見で稲垣は、昨年11月に逝去した音楽監督・佐山について触れ、「暗い雰囲気は佐山さん自身が好きではないと思うので。稽古場でもずっと近くに感じながらやっていましたし、本番も1番の特等席で観劇してほしいですよね」とコメント。北村も「きっと今日いらしてますよ」と話し、キャスト全員が頷きあうひと場面も。稲垣は「(今回のキャストは)みんなエンターテインメントの世界でやってきて、でもちょっとだけ畑が違ったりとか、育ってきた環境も違ったりとか。そこがまたミックスされた面白さが特徴」と本作の魅力を語った。夏の終りにしっとりと愉しみたい“大人のエンターテインメント”と言えそうだ。公演は9月23日(月祝)まで日本青年館ホールで上演。チケットぴあでは限定公演のみ公演前日までチケット発売中。取材・文:川口有紀
2019年09月02日舞台を観終わったあと、劇場を出るとなんだかまだ舞台が続いているような気分になるかも!?8月21日、東京・日本橋・三越劇場にて、舞台『上にいきたくないデパート』が開幕した。【チケット情報はこちら】舞台となっているのは老舗デパート・成富百貨店。人当たりがよく、誰からも好かれるデパートのコンシェルジュ・小木曽(今野浩喜)にある日昇進の話が持ち上がる。平穏な日々を望んでいた小木曽はなんとか自身の昇進を阻止しようと奮闘するが、ある日上客・松金綾乃(岸本鮎佳)が購入した商品の不備を訴え、外商担当の海老沢(小松準弥)、松金の元担当の神山(猪野広樹)らとトラブルに。商品を購入した高級ブランドの店長・真壁(矢島舞美)とも対立、騒動は小木曽を巻き込んでどんどん大きくなって……というストーリー。主演は、近年俳優としても幅広く活躍中の今野浩喜。しかし彼ひとりがフィーチャーされるのではなく、総勢14人の登場人物たちが繰り広げる“群像喜劇”といった感が強い。コンシェルジュ、外商担当、ファッションブランドや化粧品売り場の販売員たち……登場人物たちひとりひとりのキャラクターがはっきりしているだけでなく、彼らにもそれぞれバックボーンと悩みがある。ストーリーは小木曽が巻き込まれた外商顧客へのトラブルを中心に展開していくが、その途中でほぼ全ての登場人物たちの個々の部分がクローズアップされ、さまざまな形で解決されていく。また「今の仕事を好きだったはずなのにいつしか情熱が持てなくなった」「同僚を好きになれない」など、彼らの持つ悩みや葛藤が妙にリアル!コミカルな部分に笑っているうち、誰かしらの役柄に共感する観客も多いのでは?ちなみにこの舞台で1番のコメディリリーフとして強烈なインパクトを残しているのが、顧客・松金役の岸本鮎佳。今作の作・演出をつとめた彼女の多才っぷりにも注目だ。そしてリアルと言えば、この作品が上演されているのが日本橋三越本店の中にある三越劇場というのが何とも!まるで本当に百貨店の中で、スタッフたちの裏側を覗き見しているような気分になれるのだ。また、音楽は全編ジャズバンド「Calmera」による生演奏。このゴージャス感もなんだか、百貨店を訪れたワクワク感を再現してくれているよう。コメディとしてはもちろん、“お仕事”ものとしても楽しめる本作。この最高のシチュエーション、ぜひ劇場で体験して欲しい。『上にいきたくないデパート』は、8月29日(木)まで東京・三越劇場にて上演される。取材・文:川口有紀
2019年08月26日キャラメルボックス初期の代表作『ナツヤスミ語辞典』が5月18日、六本木・俳優座劇場で幕を開けた。【チケット情報はこちら】小学校の産休代用教師だったクサナギ(多田直人)のもとに、カブト(石森美咲)、ヤンマ(金城あさみ)、アゲハ(石川彩織)の3人の教え子たちから手紙が届く。そこに書かれていたのは、3人が夏休みの中学校で体験した不思議な出来事だった……。30年前の1989年に初演された本作は、1991年に再演、2003年に再々演された。今回、演出の成井豊が上演を決めた理由は、劇団史上初の試みとして劇団員全員に再演したい作品についてアンケートをとったところ、この作品が一位となったからだという。それほど頻繁に上演されている作品ではないにもかかわらず、根強い人気を誇る本作。劇団員の気持ちと呼応するように、公演初日のカーテンコール、鳴り止まない拍手から、観客もいかにこの作品を待ち望んでいたかがよくわかる。初期作品ということで、近年のキャラメルボックスしか知らない観客は少し戸惑うかもしれない。俳優のエネルギッシュな台詞回しでスピーディーに展開し、物語はとてもファンタジックで、いかにも“演劇らしい”勢いに満ちた作品だ。しかし、逆にそんな部分が新鮮に感じられる。物語はカブトたち中学生と、学校に現れた不思議な男女、ウラシマ(鍛治本大樹)とナナコ(森めぐみ)の出会いにより、思いもかけない方向へと転がっていく。もう子どもではないから、いろいろと飲み込まなければいけないことがあるのはわかる。かといって、自分の心を封じ込めて、大人の言うことを飲み込むこともできない……中学生という不安定な年頃のリリカルさが、観る人の胸へダイレクトに響いてくる。本公演のホームグラウンドであるサンシャイン劇場に比べて距離感が近い劇場での上演ということも、作品の魅力を増幅しているのかもしれない。また、初演でカブトを演じた伊藤ひろみが今作ではヤンマの母親役を、クサナギを演じた西川浩幸がクサナギへ手紙を運んでくる「郵便屋」役として出演している。往年のファンにとってはたまらないキャスティングであると同時に、入団4年目で初主演の重責を担う石森美咲をベテラン勢がしっかりと支えていく構図は、劇団としての歴史と懐の深さをも感じさせる。思い返せば学生時代、夏休みに突入したというだけで、毎日が魔法をかけられたようにキラキラと輝いていなかっただろうか?そんな日々を思い出すような、特別な時間と空間に満ちた舞台。これもまた、演劇という魔法のなせる業なのかもしれない。公演は5月26日(日)まで、東京・俳優座劇場で上演される。前売りチケットは完売。5月23日(木)追加公演のみチケットぴあで当日引換券を発売中。当日券は開演の1時間前から劇場にて販売。取材・文:川口有紀
2019年05月20日吉高由里子、中丸雄一、向井理らの出演で現代の“働き方”を問いかける「わたし、定時で帰ります。」の2話が4月23日にオンエア。内田有紀演じるワーキングママの姿に「泣いた」「自分を思い出す」など共感の声が続々とSNSに投稿されている。本作で吉高さんが演じるのは「仕事は命を懸けるものではない」という思いから“必ず定時で帰る”ことをモットーにする32歳の独身OL・東山結衣。物語はWEB制作会社で働く結衣とその同僚、恋人たちの姿を描いていく。結衣の現在の恋人で結婚も考えている諏訪巧には中丸さん、仕事観の違いから別れた結衣の元婚約者・種田晃太郎には向井さん、仕事に対し自らの信念を貫こうとする三谷佳菜子にはシシド・カフカ、産休から復帰、人が変わったようにバリバリ働こうとする結衣の先輩・賤ヶ岳八重には内田さん、結衣たちのブラック上司・福永清次にはユースケ・サンタマリアといった顔ぶれが共演する。※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。双子を出産、育休をとっていた賤ヶ岳が仕事に復帰するが、以前の彼女とは別人のように仕事に没頭する姿に結衣は驚く。三谷がコンペを通した案件のディレクションを担当することになり、周囲に負担をかけまくり一人で突っ走る賤ヶ岳に対し、社員たちからは不満が噴出。周囲と協調することを勧める結衣に賤ヶ岳は、母親になってもちゃんと仕事ができる姿を見せないといけないと強気の姿勢を崩さない。しかしサイト公開の直前にデザインが競合他社と酷似していることをクライアントから指摘され、急遽作り直しに。さらに夫の陽介(坪倉由幸)から、双子が熱をだしたと連絡が入る…というのが今回の物語。視聴者からは、仕事も育児も手一杯のなかで奮闘しようともがくあまり周囲と溝を作ってしまう賤ヶ岳の姿に「必死な感じ凄く気持ちがわかるから泣いた」「育児と家事と仕事の間でなんか意地張っちゃう感じとか自分を思い出す」「うちも夫婦で育休取った。当時会社で色々言われた」など共感する声が数多く寄せられる。また「前の会社にいたな。可哀想だけど助けてあげれなかった」「もし退職してなかったら今回の賤ヶ岳さんみたいにもなってたかもしれないと思うときゅっとする」といった過去の経験を重ねた感想も続々とSNSに溢れているほか、「リアルガチ職場ドラマで想像以上におもしろい」など、本作のストーリー描写を評価する声も上がっている。(笠緒)
2019年04月24日憧れの“銀幕のスター”が、もし現実に飛び出してきたら――ウディ・アレンによる映画『カイロの紫のバラ』(1985年製作)にインスパイアされ、ケラリーノ・サンドロヴィッチが2016年に書き下ろした舞台『キネマと恋人』。数々の演劇賞を受賞した話題作が2019年、待望の再演となる。しかも初演時のキャスト・スタッフがそのまま顔を揃える、とても理想的な形で。【チケット情報はこちら】「初演の公演中から『再演やりたいね』ってみんなで話してたんですよ。評判もよかったですし、皆さんに愛された作品が同じキャストでまたやれるのは単純にすごく嬉しいです」そう語るのは、売れない映画俳優・高木高助と、高助が映画の中で演じる寅蔵の2役を演じる妻夫木聡だ。「初演はびっくりするくらい、あっけなく終わった印象なんですよ。でもそれは多分、とても楽しかったから。キャストみんなの仲が良かったですし、ひとつひとつの公演が愛おしすぎて……ほら、恋愛真っ只中のカップルって、あっという間に3か月くらい経ちますよね?そんな感じでした」寅蔵&高木と騒動を繰り広げるハルコ役の緒川たまき、その妹・ミチル役のともさかりえをはじめキャスト全員が意気投合、とてもいい空気だったとか。この舞台の音楽を今でもよく聴くほど“お気に入り”の作品になったというが、初演の稽古場ではやはり産みの苦しみもあったようだ。「稽古中にだんだんと台本ができてくるから、突然“ここからこの長ゼリフなの!?”とか、毎日宿題を出されるような状態で。でもそんな経験は初めてだったから、後半は逆に台本が来るのを面白がってましたね(笑)。でもそれも理由があって、KERAさんはやっぱり稽古場での俳優を見てから書きたい、って言われていて。究極の当て書きですよね。俳優のいい部分も悪い部分も詰め込まれるし、だからこそみんなに愛される作品になったのでは、と思います」ときには場面のアイデアをキャストたちから出し合ったりと、妻夫木にとっては初めての体験が多かった作品というのもあり、再演への意気込みも大きい。また、スクリーンから飛び出してハルコと恋をする寅蔵、寅蔵をなんとかスクリーンに戻そうとするうちにやはりハルコに恋をする高木と、なかなか珍しいパターンの1人2役を演じる点も注目だ。「今回の再演では、特に高木役をもう少し考えたいというか、向き合っていきたいなと思ってます。高木も寅蔵も純粋な男なんですけど、“違う意味での純粋さ”が彼らの分かれ道なのかなと。高木という男の魅力をもっと引き出すには、彼の背景が見えたほうが深みが出ると思うんですよね」今回の再演では福岡、兵庫、愛知、岩手、新潟の各地を巡るが「このメンバーで旅公演がやりたかったんで、これも嬉しいんです」と笑顔を見せる妻夫木。愛すべき作品の中で生き生きと演じる姿が見られそうだ。東京公演は6月8日(土)から23日(日)まで世田谷パブリックシアターで上演。チケットは4月13日(土)よりぴあにて発売。取材・文:川口有紀
2019年04月11日演劇集団キャラメルボックス『スロウハイツの神様』が、3月22日、東京・サンシャイン劇場で開幕した。辻村深月の同名小説を原作に、アパート“スロウハイツ”のオーナーである脚本家・赤羽環(原田樹里)と、住人の小説家チヨダ・コーキ(大内厚雄)、環の友人たちの共同生活が描かれてゆく。2017年に上演され、演劇好きのみならず、原作ファンからも高い評価を得た作品だ。【チケット情報はこちら】劇団史上最短での再演というが、観るとその理由に納得がいく。まずは初演時、SNSを中心に好評価が広まっていただけに、「観たかった!」という人のニーズを叶えていること。特に初演時は東京公演のみだったものの、今回は大阪公演も。待ちわびていた人も多いのでは?また、原作はもともと群像劇の要素が強い。環とコーキだけでなく、画家志望のすみれ(小林春世)、漫画家の卵である壮太(玉置玲央)、映画監督を目指す正義(松村泰一郎)らクリエイターへの夢を持つスロウハイツの他の住人たちとの関係性が、作品の印象に大きく影響してくる。初演時とほぼ変わらないキャストでの再演が叶ったことから、俳優陣のコンビネーションも強固なものとなり、会話もより自然なものに。もしかしたら中盤までは、初演よりもさらに静かな印象を受けるかもしれない。ただ重要なのは、この作品は彼らの何気ない会話ひとつひとつが見事な伏線となっているということ。スロウハイツでの生活のリアリティが増していることで、後半にやってくる“怒涛の伏線回収”の効果が増している。今作は“人と人との物語”であるのは当然だが、上質のミステリーでもあるのだ。ひとつの大きな謎が解けた後にもっと大きな謎の秘密が明かされ、観客に畳み掛けられていく構造の見事さ。しかもパズルのピースひとつひとつは、登場人物たちの“想い”だ。だから初演を観た観客は、記憶が新しいうちにこの再演を観られるのはとても幸運なことなのではないだろうか? 1度観たときには気がつけなかった、別の感動が訪れるはず。かつ、演出の成井豊によればこの再演では新たなシーンが追加されているとのこと。初見の観客も、ある意味“決定版”を観られるというわけだ。どうしても長編原作を舞台化する際にはカットせざるをえないエピソードが出てしまうものだが、今回は平日公演の開幕前に原作内のエピソードが短編演劇として上演される試みも。原作ファンとしてはたまらないし、その後の本編がより深く楽しめるような仕掛けになっている。小説の舞台化では定評のあるキャラメルボックスだが、こんなにも“幸せな舞台化”は珍しいのではないだろうか? 待望の再演、ぜひその機会を逃さないで欲しい。公演は3月31日(日)まで東京・サンシャイン劇場、4月5日(金)から7日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。取材・文:川口有紀※「辻村深月」の「辻」は二点しんにょう
2019年03月25日高橋一生と川口春奈の初共演&W主演で贈る映画『九月の恋と出会うまで』。3月12日(火)、公開後記念舞台挨拶が開催され、ホワイトデー間近ということで高橋さんと川口さんが観客に白いバラを渡しながら登場、会場は大歓声に包まれた。新宿ピカデリーにて行われた今回の公開後記念舞台挨拶。W主演の高橋さんと川口さんが1人1人に握手を交えながら丁寧に白バラを渡していく姿に、中には泣き出す人も。高橋さんは「今日は本当のサプライズ登場にしようと思っていたんですけど、司会の方に言われてしまったので、サプライズにはならなかったんですが(笑)皆さんのお顔を拝見して、映画を観終わったあとの反応を間近で伝えていただけたので、とても嬉しかったです」と満足げに挨拶。川口さんも「お花を配りながら『映画良かったよ』と直接言っていただけて、とても嬉しかったです。白いバラの花言葉は、『ひと目ぼれ』ということで、作品にもピッタリですよね」と語った。■高橋一生、高校生カップルに「観るー」宣言される!?映画を鑑賞した観客から「2回目だからこそ2人の行動や言動も理解度が高まった」「平野の先読みした瞬間や志織の確信した瞬間の心の動きが微かな表情で伝わり、涙をこらえるのに必死でした」といった声が寄せられていることについて、周囲からの反応を聞かれた高橋さん。「実はさっき控室の出入り口を間違って、映画館のエスカレーターに繋がる扉を開けてしまいまして。そしたら、ちょうど高校生のカップルがいらっしゃって、すぐ扉を閉めたんですけど、扉越しに『観るー!!』っていう声が聞こえまして。観てくれるんだなって思いました(笑)直の声が聞こえたのでとても嬉しかったですね」とほっこりするエピソードを披露。川口さんも「志織ちゃん可愛かったよとか、お部屋もすごい可愛かったとかたくさん嬉しい声が届いています」と周囲からの声に感謝していると明かした。■“もう一度観たい泣けるシーン”発表に高橋一生「恥ずかしかった(笑)」また、二度、三度と鑑賞している方が多いことから、事前に公式SNSで募集していた“もう一度観たい泣けるシーン”の投票結果の発表が行われた。候補に挙がったのは「(1)丘の上で誕生日プレゼントを渡すシーン」「(2)公園で平野が切ないウソをつくシーン」「(3)すれ違ってしまった2人が部屋で涙するシーン」「(4)平野が想い出の写真を見て泣き崩れるシーン」の4つ。今回1位に選ばれた「(4)平野が想い出の写真を見て泣き崩れるシーン」の映像がスクリーンで流れると、会場からは自然と温かい拍手が!映像をみた高橋さんは「とにかく恥ずかしかったですね(笑)この大画面でしかも皆さん観たばっかりなのに(笑)」と照れ気味。撮影時の思い出を聞かれると、「平野とか志織の部屋のシーンをまとめて撮っていたので、割と撮影の前半でしたね。お互い話しながら、監督を交えて流れを確認しながら撮影していましたね」と淡々と語るも、川口さんは「私もここのシーンの一生さんに泣かされましたね。自分が参加していないシーンでもあるので、完成した映像を観たときにゾクッとしましたね」と感動を告白した。■「普段あまり泣かない」高橋一生、「お芝居の時だけ感情が豊かになっているのかも」さらに会場からの質問で、「涙は自然と流れるものなのか、意識して泣くものなのか」と訪ねられた高橋さんは「泣くぞ! とはやらないですね(笑)あまり意識して泣かなきゃってやると、泣けなくなっちゃうんじゃないかと思うので。普段あまり泣かないので、お芝居の時だけ感情が豊かになっているのかもしれないですね」と自己分析。一方、川口さんは「この映画に関しては自然に涙がこぼれたなって思いますね。脚本を読んだだけでもグッときましたし、そこに平野さんが立つと余計にくるものがありました」と明かした。最後に、川口さんは「こうして足を運んでくださったり、日々色んなところからメッセージを届いていることに感謝しております。もし映画を気に入っていただけたなら、大切な人と何度でも観ていただけたらと思いますので、これからもよろしくお願いいたします」と挨拶。そして、高橋さんは「今日皆さんとかなり近い距離で反応を見れたことは僕にとって収穫だったなと思っています。1つの作品をこうして皆さんが観て下さっているんだと改めて思い知りました。僕がお芝居させていただいているものが、1人1人の心に少しでも残っているということは、これから前に進んでいくときに原動力になるなと思いました」と観客の反応に感謝を寄せて語り、イベントは幕を閉じた。『九月の恋と出会うまで』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:九月の恋と出会うまで 2019年3月1日より全国にて公開Ⓒ松尾由美/双葉社Ⓒ2019 映画「九月の恋と出会うまで」製作委員会
2019年03月13日