畑を借りて野菜を自分たちで育てられる体験農園。自治体や民間が運営するものなど様々な形態で増えており、都心でも子どもと一緒に農作物作りを楽しめることからファミリー層にも少しずつ身近になってきています。植物を育てるのが苦手なうえに、虫が大嫌いな筆者がたまたま見かけた体験者募集に応募したことから始めて1年半。その経験を振り返り、ファミリーで体験農園に参加するメリット、デメリットをお伝えします。■人気の体験農園は抽選倍率〇倍! 最初の難関は「権利獲得」体験農園は民間が運営するものや自治体が運営するものなどがあり、金額も形態もさまざま。筆者家族が申し込んだのは行政が運営するもので、比較的、値段はお安め(かなり広めのスペースで月4000円程度)で、道具や種は全て運営側で用意してもらえ、必ず行かなくてはならない作業日も年間10日ほどの午前2~3時間程度、と敷居は低めでした。それだけに、倍率は3倍ほどと人気で、申し込み前の見学会には大勢の人が参加していました。「人気がある」と知るとなんだか欲が出てきて、「ぜひやりたい」という気持ちになるのが人間の浅ましさ(笑)。抽選の結果、晴れて参加資格を得たものの、その後、決して甘くない野菜を作る大変さを思い知るのでした…。■体験農園といえども甘くない! 人間と自然の真剣勝負申し込んだ体験農園は約15組が同じ時期に同じものを植える、という方式でした。メンバーはやはりシニア層が中心。子育て世代は筆者家族ともう一組だけで、とても大切に手入れされている農園だけあって、何となく子どもがチョロチョロ動き回るのは、はばかられる雰囲気でした。というのも、畑には鍬(すき)や雑草抜きに使う刃物などがあり、危険がともなう場所でもあるからです。「畑でケガをすると、土にはいろいろな菌がいるから気をつけてくださいね」と畑のオーナーさんから、繰り返し注意を受けました。場所にもよると思うのですが、筆者の体験農園は「畑好きが真剣に作業する場所」といった雰囲気。そのため、ほかの方たちの迷惑になってはいけないと思い、「大切に手入れしている方たちのエリアに踏み込まない」「自分たちのエリアだけにとどまる」ことを子どもたちと約束しました。■手をかけた分だけこたえてくれる、野菜の出来・不出来もちろん、農作業は決められた10日間だけですむはずはありませんでした。発芽した中から元気なものを残す間引き作業、ぼうぼうと生えてくる雑草抜き、ほっといておくととんでもないことになるツル野菜の誘因(支柱にツルを巻く)など、畑ではやらなければいけないことはたくさん!苦手な虫も油断するとすぐ作物につくので、白菜が虫だらけになってしまったり、耕すのが甘いと足が2つに分かれた大根ができたり(土中に固い部分が残っていると、きれいに真っすぐ伸びた大根にはならない)。スーパーで売っているきれいな野菜が奇跡のように思えました。しかも、参加者はみんな同じものを育てているはずなのに、明らかにわが家の作物の出来が悪い…。やっぱり手入れを怠った分だけ、野菜の出来に直結すると思い知りました。 ■1年半やってみてわかった、体験農園のメリット・デメリット1年半、体験農園をやって感じたメリットは次の通りです。1. 野菜がおいしいこと。夏のキュウリはみずみずしく、子どもたちが「おやつはキュウリでいい」と言うくらいでした。2. 野菜がそのままでもおいしいと、ほとんど調理しなくても食卓に出せるので、食事の準備も自然と時短に。料理ベタの筆者は大助かりでした。3. 自分たちで育てた野菜は子どもたちも文句を言わずに食べるので、万願寺とうがらしやモロヘイヤなど珍しい野菜も含めて食べる野菜の量は増えました。4. 畑では各自が効率よく動かないと作業が進まないので、子どもたちもそれぞれ自分たちのできることを見つけ、進んで仕事ができるようになりました。それに対して、デメリットは以下の4つが挙げられます。1. 時間的な制約。決められた作業日に予定を入れられないのはもちろんのこと、結局は平日もちょこちょこと雑草抜きや収穫に行かなければならず、忙しい時は正直「つらいなー」と思うことも度々あります。自宅から自転車で5分ほど、なおかつ子どもの小学校のすぐ近くという立地だから何とか続けられている状態です。2. 子どもは習いごとやイベントなどで不在になることも多く、結局は大人だけで作業する日も頻繁にあります。3. 虫嫌いにとって、やっぱり畑作業はつらいこともあります。筆者は、虫が大丈夫な長女に駆除を頼む、がんばって自力でやる、見ないふりをするという3つの選択肢からその時々によって選んでいます。4. 野菜はおいしいけれど、土や虫のついた野菜の下処理はそれなりに大変。さらに、同時期に同じ野菜が大量にとれるのでそれを食べきるのも時には悩みに。しかし、これらデメリットを大きく上回る予想外のメリットが続けていくうちに浮上してきました。■土や野菜に触れるだけで大きなヒーリング効果がデメリットを乗り越えて「まだ続けよう」という気持ちになっているのは、実は筆者も予想していなかった「思いがけないメリット」でした。それは畑に癒されるということ。「忙しいのに面倒だな」。そんな気持ちで畑に行っても、畑で土に触れていると、なんだか本当に心が落ち着き、嫌なことも全部忘れられるような気がしてきます。土のパワー、植物のパワーを実感しました。そして、自分の子どもだけではなく、ほかの子どもたちも畑が大好き、という発見もありました。作業が大変な時は、長女の友だちに声をかけて手伝ってもらうこともありましたが、小学校6年生ともなると体力もあり、大きな戦力。しかも、みんなとても楽しそうに作業して、「またやりたい」と言ってくれます。畑の作業が楽になるうえに、なんだか子どもたちの食育にも貢献できたような、すがすがしい気持ちになります。さらに、ママ友におすそ分けをするととても喜んでくれる、というのも予想外のメリットでした。何かしてもらった時に「ちょっとしたお礼」を何にするか意外と迷うものですが、わが家は「とれたて野菜」にしています。「買ったきゅうり3本」などあげたら変に思われそうですが、自作の野菜なら少量でもOK。「この料理を作ったよ」などと写真を送ってくれるママ友もいました。■体験者だから大きな声で言える、「体験農園のススメ」最後に、体験農園に興味のある方へアドバイス。ひと口に体験農園と言ってもその形態はさまざまです。以下の点をチェックしてから始めることをおすすめします。1. どこまで自分で用意する必要があるのか、農園側にどんなサービスがあるのか、値段も含めて条件をあらかじめ詳しく確認しましょう。2. 子育て世代は、小さな子どもが農園に入っても歓迎される雰囲気かどうかも、事前に知っておくといいでしょう。3. 手入れをすればするほど野菜は育つので、通いやすい立地かどうかは最重要。4. 家族の合意はとても大事。「みんなでやろう」という気持ちがあるかどうかで、楽しさも変わってくるように思います。「子どもが何歳くらいから始めればいいか」と聞かれれば、個々のお子さんでも変わってくると思いますが、雰囲気を味わう程度なら園児から(ただし子連れ歓迎の農園)、体験を始めるなら小学校低学年くらいから、そして戦力になってくれるのは小学校中・高学年から(ただし習い事などで物理的に忙しくなっているケースも)と感じます。虫嫌い、植物を枯らす筆者でもなんとか続けている体験農園。大変なことはたくさんありますが、子どもにも大人にも楽しいので、ぜひ気になっている方は挑戦してみていただきたいです。
2017年11月11日美しい里山が広がり源氏ぼたるが自然生息する千葉・いすみは、肥沃でミネラル豊富な粘土質土壌に恵まれた、古くは皇室に献上米を納めていた歴史がある米の名産地。最近は、市内の小中学校の給食に地元の無農薬・特別栽培米が採用されるなど食の安全に関心が高まる状況も後押しして、担い手不足の地域の米づくりに変化が起こり始めています。日本の原点である自然と人間が共生する里山の風景が、都会からそう遠くない千葉県いすみ市にありますその変化を若い力で牽引する「つるかめ農園」は、鶴渕真一さんと修子さん夫妻が4年前に立ち上げた、完全無農薬・無肥料の自然循環米を生産する農園です。実家は祖父の代から建設業を生業としていたものの、地域の自然と農に魅力を感じた真一さんは一代で米づくりを始めました。「僕は生まれも育ちもいすみですが、大学入学と同時に地元を離れて、長らく都会暮らしをしていました。卒業後は家業を継ぐことも考えて住宅メーカーに就職。でも、そこで働くうちに心が満たされなくて、それを何かで埋めるために誰かと競争する都会の生活に疑問を感じ始めた。それで紆余曲折ありながら、震災、そして父の死をきっかけにいすみに戻ることに決めたんです」農園の周囲を案内してくれた「つるかめ農園」オーナーの鶴渕真一さん。「NO RICE NO LIFE」とプリントされたつなぎは、友人のTシャツブランド「米T」のもの「そもそも豊かな暮らしの土壌があれば、奪い合いの競争をする必要もなく、互いに分け合い支え合う精神が芽生えるはずだと、都会で暮らしていた時に考えていました。無農薬・無肥料の米でいこうと決めたのも、あくせくしなくてもこの世界はすでに豊かだということを自分自身で感じたかったから。そして、それをみんなで共有したかったから。」真一さんは「つるかめ農園」で栽培する米を「自然循環米」と呼んでいます。それは農法をカテゴライズするためではなく、自然の調和と循環に焦点を当て、そこに適した農業をするという意図を込めて名付けたそう。田植えを目前の青々とした苗。プール育苗に加えて、今年はハウスを使わない本格的な路地苗作りに挑戦したそう農園を始めた当初、周囲からは一般的な米づくりから始めればいいんじゃないのかと、提案もあったと言います。「まったく言われていた通りだと思います。でも、最初に農薬や肥料を知ってしまったら、もう後戻りできない気がしたんですよ。正直、農業を知らないから挑戦できたんでしょうね。農地が狭いうちに一番難しいことにチャレンジして、面積が拡大した時に対応しきれない部分を変えていけばいいという逆の発想でした。風当たりは強かったですけど、いすみで自然栽培をやっている先輩農家の方々にも応援していただいているし、市の取り組みも追い風となり随分やりやすくなりました。最近は逆に自然栽培に興味を持つ農家の方が増えているように感じます。紆余曲折ありましたが、素直に嬉しく思っていますね」鶴や白鳥など大型の鳥類が飛来したり、海にはウミガメが産卵にやって来る地域である、そんないすみの豊かな自然の特徴を捉えた「つるかめ」のロゴをスタンプしたパッケージ。冷めても美味しい玄米はおにぎりにぴったり。昨年度分は完売し、9月末から新米が販売される予定です「つるかめ農園」では日本ではまだ珍しい、ファームシェアにも取り組んでいます。出荷した商品が消費者の手に渡り売り上げが立つまでの間、農家は無収入状態。そこで、若手農家や新規参入者を支援するために考えられた、いわば農業における先行投資システム。「つるかめ農園」では、支援者に対して秋の収穫時にお礼として米を提供したり、田植えから稲刈りまでを体験できる田んぼオーナー制度などを設けています。「ヨシ一辺倒の耕作放棄地を草刈りして復田した後、たくさんの生物がそこで見られるようになりました。その時、人間が手を入れることによって里山の生物層が増え、多様性が生まれる可能性があるんだと、初めて気づいたんです。ファームシェアはそんな豊かさをみんなで共有する機会。たとえ都会で忙しく働いていたとしても、一口支援してもらうことで確実にそういった自然を維持することができる。農業を維持するという目的を超えて、この豊かな自然を未来に残していくことを志して日々取り組んでいます。その結果として日本の農業に少しでも活気を与えていく存在になれれば嬉しいです。」妻の修子さんは2歳の息子さんの子育てをしながら、真一さんと共に農園経営を行っています。約1年間の世界一周旅行の後に縁あって訪れたいすみの自然に魅せられ、結婚するより先に移住を考え始めたそう出荷量も年々増加し、最近は煎餅、味醂、酒などの加工品の生産も徐々に増やしているそう。いすみ市内では「ブラウンズフィールド(Brown's Field)」にある「ナチュラルショップ アサナ」で玄米と米粉が取り扱われています。(売り切れの場合あり)いすみの名産品として、お土産にしても喜ばれそうですね。【農園情報】つるかめ農園連載【千葉・南房総のゆる旅】
2017年06月23日「こどもちゃれんじ」の人気キャラクター“しまじろう”が活躍するアニメ「しまじろううのわお!」の劇場版第4弾『しまじろうとえほんのくに』が、2016年3月11日(金)より全国にて公開されることが決定した。ある日、海辺で見つけた一冊の不思議な絵本。それは、しまじろうが幼いころに大切にしていた絵本でした。しまじろうたちを呼ぶ愛らしい声とともに、なんと絵本の中に吸い込まれてしまったしまじろうたち…!かわいらしい「プニたん」と出会い、いっしょに森やお菓子の町などさまざまな世界を進んで、絵本の国をたすける冒険に出ます。途中しまじろうと、とりっぴいがけんかをしたり、絵本の住人たちに追いかけられたり大変なことに。はたして、みんなは絵本の世界をたすけ、無事に元の世界に帰ることができるのでしょうか?本作の舞台は絵本の中。海で見つけた不思議な絵本に吸い込まれてしまったしまじろうたちの大冒険が、アニメと実写が融合したユニークな構成で描かれる。しまじろう映画の大きな特徴といえば、観るだけでなく歌・ダンス・応援で一緒に楽しめること。今回も、お話の途中にメガホンを使って元気に声を出したり、体を動かしたりして参加できる内容を取り入れているので、小さなお子さまでも最後まで楽しめるような工夫がなされている。また、表情を確認できるよう場内は完全に暗くせず、約60分の上映に際し途中休憩が設けられており、映画館が初めてのお子さまも安心、映画館デビューを飾る“ファーストシネマ”にもぴったりだ。実際に、前作『しまじろうとおおきなき』公開後には、「娘の映画館デビューで、落ち着いて観ていられるか心配でしたが、最初から最後までしっかり楽しめる構成で、また劇場の子どもたちが一緒に盛り上がって参加でき、とても楽しんでいました。途中休憩があったのもよかったです」「映画というより、映像とともに子ともが遊べる参加型のエンターテインメントだと思いました。子どもも飽きずに楽しめたのはもちろん、大人も子どもの気持ちを理解するのに役立つ映画で、ぜひともおすすめしたいと思います」と観客からも絶賛の声が上がった。また「サンディエゴ国際子ども映画祭」で“Best Animation Feature Film”を受賞し、インドの「インド国際子ども映画祭-ゴールデンエレファント-」でもコンペ部門にノミネートされ、さらに韓国や台湾でも上映されるなど、ますます期待を集めるしまじろう映画。本最新作でも、親子で一緒に楽しめる「初めての素敵な映画館体験」を体感してみて。『しまじろうとえほんのくに』は2016年3月11日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)
2015年11月06日貸し農園の利用者に向け、PHS回線を用いて農作物の育成具合いを毎日配信するキューズの画像配信ソリューション「ミエファーム」。現在、農園ベンチャーのアグリメディアが展開するシェア型の農園サービス「シェア畑」でトライアルを実施しているミエファームの仕組みとビジネス展開について、キューズの代表である上條哲也氏に話を聞いた。○農園向けソリューションとは?最近、貸し農園の人気が高まっている。都市部から比較的近い場所で、家庭菜園より高度な農業体験ができることに加え、日常の農作業をサポートする専門のスタッフを配置し、水やりや草取りなどを代行したり、農作業に関するアドバイスしたりしてくれるなど、農作業の負担を減らす仕組みが提供されるようになったことなども、人気に大きく影響しているようだ。都市部ではキャンセル待ちの貸し農園も多く存在するようで、その人気の高まりを見て取ることができる。そうした貸し農園に向けたソリューションとして、キューズが取り組んでいるのが「ミエファーム」である。これは、貸し農園の区画に専用の端末を設置し、農園の様子を毎日撮影して利用者のスマートフォンなどにメールで配信するというものだ。○なぜ今PHS回線なのか専用端末には、農園の様子を撮影するカメラとソフトバンク(ワイモバイル)のPHSモジュールを搭載しており、これらを用いて定期的に農園内の写真を送る仕組みとなっている。電源は単1乾電池12本で、約半年は動作するとのこと。上條氏によると、回線にPHSを用いたのは、農園に設置する関係上、ケーブルの接続を不要にして設備を小さくしたかったことが大きいとのことだ。だが最近では、より通信速度の速い3GやLTEのモジュールも提供されており、画像だけでなく動画によるライブ配信などができる環境を整えることも不可能ではない。しかしながら上條氏によると、3Gなどのモジュールは運用する上で大容量のバッテリーが必要になること、そして内容がリッチ化して通信量が増えると、それだけユーザーの料金負担が増えてしまうことから、消費電力の小さいPHSを選び、画像配信に絞る形で提供しているそうだ。また、ミエファームの端末は屋外の農園に常設しておく関係上、台風などの突風時に機器が倒れ、人や野菜に被害が及ぶ可能性がある。そこで、1.5mの端末を地中に打ち込んで固定している。また、こうした機器は盗難のおそれもあるが、機器に振動センサーを搭載しており、持ち運ぼうとした人物の画像を撮影し、アラーム駆動とともに、位置情報を通知するという。キューズは、プロダクトにデザイン性を取り入れて価値を高める取り組みを進めている企業であることから、ミエファームもデザインには力を入れているとのこと。高級オーディオ機器のデザインを手掛けているデザイナーにデザインを依頼し、ステンレス素材を職人が手で加工するなど「こだわりを持った、より現場に溶け込むデザインを実現している」と上條氏は話している。ほかにも、端末には人感センサーを備え、人が通り過ぎた時に写真を撮影するなどして、人による"荒らし"の被害などをチェックできる仕組みも備えているという。ただし、貸し農園という場所柄、人の往来が比較的多く発生することから、人感センサーに反応したからといってすべて写真を送ってしまうとかなりの頻度になってしまうため、まだ工夫の余地があるとのことだ。このミエファームは現在、農業ベンチャーのアグリメディアが管理する川崎市多摩区の「シェア畑川崎多摩」でトライアルを実施している。トライアル期間は7月11日~10月31日までで、同農園の利用者から応募を募った5名の区画に設置し、実際に利用してもらっているとのことだ。○貸し農園に画像送信ソリューションが必要な理由そもそも、貸し農園向けにこのようなソリューションを提供するに至ったのはなぜだろうか。上條氏によると、それには貸し農園のビジネスモデルが大きく影響しているのだそうだ。貸し農園は、基本的に月額や年額制で畑の区画を貸し、農作物を育ててもらうことで売上を得ている。だが熱心に農園を訪れる人がいる一方、あまり農園に訪れない人もいる。そうした人達は農園に対する関心が日に日に薄れてしまうことで、利用を止めてしまう可能性が高まるのだそうだ。そこで定期的に農園内の作物の状況を伝えることで、農園に対する関心を保ち、継続利用につなげるべくこうしたソリューションの提供に至ったのだという。確かに、農園で作物が育つ様子を常に知ることができれば、関心が高まり継続利用にはつながりやすいだろう。だが、それをオプションサービスとして契約した場合、料金が上がるのを敬遠して利用されない可能性も十分考えられる。上條氏もこうした点は課題としており、商用展開に向け料金プランをどう組み立てつつ、端末の設置やメンテナンス、さらにはサーバの管理などを考慮しながら採算を確保できる仕組みを整えるかを考えていきたいとしている。また、現在は1区画に1端末を設置している状況だが、商用化にあたっては4、5個の区画に対して1つの端末を設置する"共同利用"のスタイルで展開したり、通信モジュールを搭載した「親機」に、Wi-FiやBluetooth経由で「子機」を接続することにより低コストで多くの端末を設置しやすくしたりするなど、さまざまな展開の仕方を考えているとのことだ。そしてもう1つ、検討しているのがサーバの有効活用だと上條氏は話す。現在、ミエファーム用のサーバは画像を電子メールで送るためだけに利用している。そこで、このサーバに農園利用者同士のSNSを設けるなどして利用者同士のコミュニケーションを活性化する仕組みを備えることで、「付加価値を高めていく」ことを上條氏は考えているようだ。さらにミエファームの技術は、貸し農園向けだけでなく、監視カメラとしての利用にも生かすことができることから、監視用途で活用したいという問い合わせも多いとのこと。それゆえ上條氏は今後、農園向けだけでなく、住宅や屋外の敷地などに向けた防犯・監視用ソリューション展開も考えていきたいとしている。
2015年08月10日大地を守る会はこのほど、「農園スムージーかき氷」(税込800円)を東京都・丸の内の「Daichi&Travel cafe」にて発売した。同社は、"自然環境と調和した、生命を大切にする社会の実現"を目指し、1975年に設立したソーシャルビジネス(社会的企業)。安全・安心とおいしさにこだわった農・畜・水産物、加工食品、雑貨などを届ける宅配サービスなどを運営している。同商品は、野菜を気軽に摂(と)ることができるとするかき氷。同社の契約生産者の有機野菜や果物を使用した商品「農園スムージー」をシロップとして氷にかけるスタイルとなっている。りんご、バナナ、ほうれんそうなどを使用した「農園スムージー」は、同商品のためにレモンをきかせ、清涼感のある味わいにアレンジしたとのこと。また、フルーツのような甘さを持つトマトをトッピングするほか、蜂蜜を好みでかけることができる。販売は8月30日までの日曜日限定。カフェタイムの14時~16時(ラストオーダー15時30分)に提供する。
2015年08月03日農業ベンチャーのアグリメディアは6月30日、キューズが提供する、ミエファーム(農園利用者向け画像配信サービス)の導入に向け、農園利用者を対象にトライアルを開始すると発表した。農園に設置する通信機器は、ソフトバンクモバイルが提供し、ワイモバイルブランドの通信回線を経由して配信される。サービスは、農園の区画内に画像配信端末を設置し、毎日定期的に撮影した画像を利用者のスマートフォンやパソコンへEメールで送信するもの。また、人感センサーで不審者が敷地内に侵入した際にもEメールで通知する。画像配信端末は、風雨に強いステンレス製で、スタイリッシュなデザインの筐体。乾電池駆動なので、屋外など電源が引き込めない場所への設置が可能であり、PHSを使用した省電力設計となっている。トライアル期間は7月11日(予定)~10月31日で、費用は無料。実施場所は川崎多摩のシェア畑で、台数は5台(希望者先着順)となる。
2015年07月01日春のフルーツといえば、いちご! たくさん食べられるいちご狩りは、季節のイベントデートにぴったりです。でも、車がないと行けない場所にあるのはちょっと不便…。そこで今回は、都内から電車で行け、さらに駅から徒歩でOKないちご農園2カ所に行ってみました。車がなくても大丈夫なので、彼と気兼ねなくお出かけできますよ。■ショッピングとセットで楽しむ 埼玉県「ふじみストロベリー」やってきたのは、埼玉県富士見市。最寄駅は東武東上線「ふじみ野駅」で、池袋駅から直通25分で来られる好立地。駅前は再開発が進み、道路もきれいに整備されています。そこから徒歩15分にあるのが、「ふじみストロベリー」です。紅ほっぺと、あきひめの2種類が30分間食べ放題。あきひめは、果皮がやわらかいためあまり市場には出回っていなく、主にイチゴ狩りなどで楽しめる品種だそう。食べてみたら、酸味が少なくジューシーでしっかりと甘みがついていました。おいしい~!ちなみに、4月10日(金)には、「三井ショッピングパーク ららぽーと富士見」がオープン。ふじみ野駅からららぽーとへの巡回バスも出るそうで、そのバスでふじみストロベリー近辺まで来れるそう。午前中にいちご狩り、午後はららぽーとでお買い物というプランもいいですね。「ふじみストロベリー」住所:埼玉県富士見市勝瀬1083 公式サイト 営業期間:1月~6月予約不要・先着順(事前に電話で確認しましょう)■温泉とセットで楽しむ 神奈川県「AGRIWAYS」続いて紹介するのは、都心から約90分の神奈川県小田原市。最寄駅はJR御殿場線「下曽我駅」です。電車からは海が見えたり、駅周辺からは山や川などがみられる自然あふれるところです。そんな旅行気分が満載の駅から徒歩15分にあるのが「AGRI WAYS(アグリウェイズ)」です。紅ほっぺ・さちのかをメインに、もういっこ・やよいひめ・おいCベリー・レッドパールなど7種類のいちごが30分食べ放題。しかもうれしいことに、ミルクもついてきて、おかわり自由です。「いちごは先端が甘いので、ヘタをとった部分にミルクをつけるのがおいしい食べ方です」とオーナーさん。それは知らなかった! ミルクをつけずに、そのまま食べても甘みがあり、十分おいしいですよ。「AGRI WAYS」は、箱根や湯河原・熱海が近く、電車からもアクセスできるので、温泉地とセットで観光される方が多いそう! いちごと温泉が楽しめるとはなんて贅沢。ちなみに下曽我駅は、ローカル線なので電車の本数が少なめ。朝10時のオープンに合わせていくなら、余裕をもって国府津駅を9時12分発の電車に乗りましょう。帰りの電車の時間もあらかじめ調べておくといいかも。「AGRI WAYS(アグリウェイズ)」住所:神奈川県小田原市 上曽我2624 公式サイト 営業期間:1月~5月事前予約推奨・予約の方優先どちらの農園も、いちごの状態でやむなくお休みする場合があり、不定休。営業日はホームページで確認することをお忘れなく。また営業日でも、いちごの残り具合によって早めに営業終了してしまう場合も。ピーク時は、開園から数十分で終わってしまうそうです…。必ず電話で営業を確認しましょう。ちなみにいちごが栽培されているビニールハウスの中は、30℃ほどに設定されており、暑いほど。そのため脱ぎ着できる服装で行くのがポイントですよ!「車じゃないと行けない」と思っていた方も、電車でいちご狩りを楽しんでみてはいかがでしょうか。お店では買えない、新鮮ないちごをたくさん味わえますよ!
2015年04月03日キーコーヒーはこのほど、コーヒーの国際品評会"カップ オブ エクセレンス"を受賞した「メキシコ エル エキミテ農園」を、全国の直営ショップおよびKEY COFFEE通販倶楽部にて数量限定で発売開始した。○世界でもトップクラスの品質の、選び抜かれたコーヒーを限定発売"カップ オブ エクセレンス"は、中南米を中心としたコーヒー生産国で、年1回開催される国際的にも注目度の高い国際品評会。最大5回のステージからなる厳しい審査により、高評価を得た一握りのコーヒー豆のみに与えられる称号。「メキシコ エル エキミテ農園」は環境に配慮した農園で、シェードグロウンと呼ばれる伝統的な方法でコーヒーを栽培。今回発売の商品は、果実のような甘い風味があり、酸味と苦みのバランスに優れた滑らかな口当たりが特徴だという。発売は12月13日~で、各店で完売次第終了となる。価格は、1,404円(税込)/100g。
2014年12月19日コズミックダイナーは11月25日、大阪・梅田に「北海道農家と漁師のレストラン 金丸農園」をオープンした。11月28日には、梅田店に続いて大阪市福島区に福島店もオープンする。「金丸農園」は、北海道の農家と漁師が提携したレストラン。これまでも札幌や神戸などで展開してきたが、今回姉妹店として大阪に2店舗をオープンする。店内では、札幌の店舗ではほとんどの人が注文するという大粒の「生カキ」(100円)や、「猟師の石鍋ガンガン焼き」(ホタテ1枚210円)などを提供。ガンガン焼きは、厚く熱した石鍋にホタテを敷き詰め、客の目の前で酒をかけて仕上げる。福島店では、有頭エビや特大ホッケを丸ごと串に刺し、炉の前で焼く"原始焼き"を提供。その他、タラバガニやズワイガニも用意する。「オホーツク産タラバ蟹足 250g網焼き」は1,280円、「オホーツク産ズワイ蟹むき身入り蟹味噌甲羅焼き」は980円となる。また、いくらを山のようにのせて提供する「こぼれいくら丼」(1,280円)や、「真狩産じゃがいも3種の3色ポテトフライ」(400円)なども用意する。ドリンクは北海道の野菜やフルーツを取り入れた農園カクテルを提供。ジャガイモやクリ、ニンジン、ミルクなどを使用したカクテルで、全12種類を取りそろえる。※価格はすべて税別
2014年11月27日IT企業のテンダとジェイアール総研エージェントはこのほど、全国の鉄道会社の情報をまとめたスマートフォン・タブレット向けの鉄道情報ポータルサイト「くにたち鉄道情報館」を公開した。同サイトの趣旨に賛同した鉄道会社のウェブサイトにあるコンテンツをジャンルごとに整理し、シンプルに見やすく表示することを目的として開設。オープン当初は、真岡鐵道、わたらせ渓谷鐵道、小湊鐵道、長野電鉄、江ノ島電鉄、上毛電気鉄道の6社の情報を掲載し、順次賛同する鉄道会社を増やす考え。おもに観光情報、各鉄道会社主催イベントの情報、お得なきっぷの情報、グッズ紹介などを掲載するほか、各鉄道会社のおすすめ画像や動画に簡単にアクセスできるリンクも貼るとのこと。今後はさらに、会員機能、EC機能、アプリ配信などの展開も予定している。
2014年10月15日農園メニューが味わえる「大地を守る会」は野菜宅配サービスの他にも、東京・丸の内にある新装ビル「丸の内永楽ビルディング」の商業ゾーン「iiyo!!(イーヨ!!)」に、新業態 農園カフェ&バル「Daichi & keats」を営業しています。「農家を訪れたときのように、たっぷりの旬の食材とさりげない気づかいで、元気と安らぎを感じられる場所」をコンセプトとしたこのレストランは、祐天寺の雑穀ライフスタイルショップ&カフェ「keats」とのコラボレーションとして、2012年3月にオープンしました。フレンチ、スパニッシュ、イタリアンなど世界中のおいしい食事や、自然派ワイン、フレッシュハーブ入り農園モヒート、農園カクテルなどが味わえます。また、15:00~17:00はティータイムとなっており、オーガニックコーヒー&ティーや農園ジュース、雑穀ワッフルなどが楽しめます。もちろん、国産有機野菜や雑穀などの食材の中には、「大地を守る会」で取り扱っている商品です。大地を守る会の新鮮有機野菜が980円!お試し野菜セット「Daichi & keats」の新鮮有機野菜を自宅でも楽しみたいという方にオススメなのが、980円の「お試し野菜セット」の販売をしています。「大地を守る会」を初めて利用する人を対象とした商品で、ブロッコリー、長ねぎ、にんじんなど、2000円相当の野菜や肉が980円で購入できるという、とてもお得な商品です。野菜は、こだわりの生産者たちが除草剤を使わずに有機肥料で育てたものばかり。また、「大地を守る会」は業界一厳しいといわれる放射能等の安全基準をクリアした野菜のみを販売しているので、安全対策も万全です。なお、「お試し野菜セット」の他にも、たくさん味わって試してみたい人向けに「たっぷりオトクお試しセット」や、子どもたちに安全な野菜を食べさせたい人向けに「子どもたちへの安心野菜セット」なども販売しています。元の記事を読む
2013年02月24日在日コリアン2世であるヤン・ヨンヒ監督が自身の実体験を基にオリジナル脚本で手がけた初のフィクション映画『かぞくのくに』が、来年開催される第85回米国アカデミー賞外国語映画賞部門の日本代表作品に決定した。病気治療のために25年ぶりに北朝鮮から一時帰国することを許された兄・ソンホと、彼を日本で迎える妹・リエや家族たち、日本に残った友人らの再会を通して、価値観の違う社会に生きるもどかしさと、それでも変わらぬ家族の絆を浮き彫りにしていく。帰国事業に翻弄される在日コリアンの家族という難しい題材を扱いながら、あくまでも「私は私の家族の話をしているだけ」(ヤン監督)というシンプルな物語と安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュンら出演陣による好演が観客の圧倒的な支持を集め、国内では着々と公開スクリーン数を伸ばしている本作。同賞における外国語映画賞部門の日本代表作品としては今回、女性監督初の快挙を果たしたヤン監督は、「怖じ気づく心を押さえ込んで闘った昨年の夏を思い出します。スタッフを信じ、俳優陣を信じ、観客を信じ、自分を信じようともがきました。家族に会うという当たり前のことを手放してまでも世に出した作品です。『かぞくのくに』が人々の中で、世界中の様々な家族について思いを馳せる触媒となることを祈ります。これからも魂を込めて作品を作り続けていこうと思います。大きな叱咤激励をありがとうございました」と喜びと共に、本作に込めた熱い想いを明かす。今年2月に開催されたベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式出品され、見事C.I.C.A.E<国際アートシアター連盟>賞を受賞。さらに、モントリオール世界映画祭、釜山国際映画祭など12の海外映画祭への正式出品も決定するなど、海外でも高い評価を得ている本作。これまでアカデミー賞外国語映画賞の日本代表作品に選出されたのは、2009年に見事受賞を果たした『おくりびと』、2011年の『告白』、2012年の『一枚のハガキ』とそれぞれ異なる個性の光る作品が並ぶが、国家や政治が個人の人生を否応なしに翻弄する悲劇を背景に描いた『かぞくのくに』は、人権問題により敏感な欧米社会でどのように受け入れられるのか?『おくりびと』以来の本選参加、ノミネートにも大いなる期待が寄せられる。『かぞくのくに』は全国にて公開中。■関連作品:かぞくのくに 2012年8月4日より東京・テアトル新宿、大阪・テアトル梅田ほか全国にて公開© 2011 Star Sands, Inc.おくりびと 2008年9月13日より丸の内プラゼ−ルほか全国にて公開© 2008 映画「おくりびと」製作委員会告白 2010年6月5日より全国東宝系にて公開© 映画「告白」フィルムパートナーズ一枚のハガキ 2011年8月6日よりテアトル新宿ほか全国にて公開© 2011「一枚のハガキ」近代映画協会/渡辺商事/プランダス
2012年09月04日第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門で国際アートシアター連盟賞を受賞したヤン・ヨンヒ監督の最新作『かぞくのくに』が8月4日(土)、東京・テアトル新宿で封切られ、ヨンヒ監督を始め、出演する安藤サクラと井浦新の3人が初日舞台挨拶を行った。50年代から始まった北朝鮮への帰国事業を題材に、ヨンヒ監督がオリジナル脚本を手がけた初のフィクション映画。自身の実体験がベースになっており「兄に会えなくなるのと引き換えに、この映画が世に出た」と複雑な胸中を明かし、「いまでもサクラちゃんは、私の“分身”に思えて仕方ない。サクラちゃんがお兄ちゃんと一緒にいてくれる感じ」と目を細めていた。病気治療のために25年ぶりに北朝鮮から一時帰国することを許された兄・ソンホ(井浦さん)と、彼を日本で迎える妹・リエ(安藤さん)や家族たち、日本に残った友人らの再会を通し、時間と距離が引き裂いた“かぞく”の実像を浮き彫りにしていく。「監督の強い思いから生まれた作品なので、世界中の人に届いてほしい」(安藤さん)、「公開初日を迎えて、ようやく作品が完成しました。心に何かが残れば幸い」(井浦さん)。撮影初日は、2人が演じる兄妹の距離感が上手く掴めなかったと言い、ヨンヒ監督は「2週間の撮影は模索、模索の連続だった」とふり返った。それでも「サクラちゃんが『リエはずっとお兄ちゃんを見ていれば、いいんですよね』って言ってくれて、私自身も『そういう映画だよな』と思えるようになった」とヨンヒ監督。実際の演出も「のびのび演じてほしかったので、具体的な動きやしゃべり方の指示はせず、たくさん私の思い出話をしました。2人もそこからエキスを吸い取ってくれて、本当の兄妹になってくれた」とあくまで自然体だったのだとか。「決して規模の大きな作品ではないが、スタッフやキャスト、そして宣伝スタッフのみなさんなど初日を迎えるまでにたくさんの人たちの苦労があった。本当に頭が下がる思い」と思わず涙ぐむヨンヒ監督。それだけに「物語の背景にある問題を“分かる”に越したことはないですが、これは授業ではなくあくまで映画。だから、登場人物たちの怒りや悔しさといったものを“感じて”もらえれば」と挨拶にも熱がこもっていた。『かぞくのくに』は全国にて公開中。■関連作品:かぞくのくに 2012年8月4日より東京・テアトル新宿、大阪・テアトル梅田ほか全国にて公開© 2011 Star Sands, Inc.
2012年08月06日在日コリアン2世のヤン・ヨンヒ監督が、北朝鮮で暮らす家族を想って撮り上げた『かぞくのくに』。北朝鮮から家族が暮らす日本へ戻る兄ソンホを演じた井浦新が、ヨンヒ監督の想いに応えるために独自のアプローチでカメラの前に立ったメソッドを振り返るとともに、撮影中は「演じている人間は誰もいなかった」と本物の家族として生きたことを明かした。その他の写真『ディア・ピョンヤン』、『愛しきソナ』と一貫して自身の家族を見つめ続けるヨンヒ監督が、実体験を元に書き起こした初のフィクション。1970年代に帰国事業で北朝鮮へ渡った兄ソンホが治療のために日本へ再入国を果たすが、家族と過ごす束の間のひと時の中で、両国の間で揺れ動く人々の複雑な想いを描く。井浦にとっては無縁の題材だったが、ヨンヒ監督が熱い想いを記した手紙を読み、出演を快諾。「ヨンヒ監督は北朝鮮が題材の政治色が強い作品は俳優にとってリスクが高いと懸念されていましたが、僕はそういう基準で作品を選別したことはなく、どちらかといえばやりがいを感じるタイプ。その想いに応えたいという心境も伝えたくて監督にお会いしました」と初動時を回想する。本作は、実際、政治的メッセージは薄目で、家族の風景を切り取る演出がメイン。「どこにでもいる家族に起こる問題と、苦悩する様を淡々と描いています。日本の家族の原風景のようにも見えました」と井浦も普遍的な家族の姿だと説明する。事実、極めて私小説的な側面が強いため、「再現ドラマになることは避けたかった」と意識していたようだが、そこには初フィクションに挑戦するヨンヒ監督への優しい想いがあったようだ。「そこに収まってしまうことは、ヨンヒ監督にとって一番面白くないことだと思いました。ソンホはヨンヒ監督の3人の兄の集合体のような存在だそうですが、それを全部受け止めた上でいかに距離を離して、裏切っていくか。そのセッションを繰り返して、初めて互いに気が付くこともありました」。おかげで撮影現場では、本当に“家族”のような関係になったという。「フィクションの中で、僕たちは確かに“家族”として生きていました」と井浦も証言。演技を超えて生きた時間が、代えがたい経験になったようだ。「俳優には覚えた技術を力技でこなす局面もあるけれど、この作品は違いました。個々の言葉を自分の血肉に変え、絞り出して落ちる一滴をどれだけ生々しいものにするか。その作業が、どこにでもいそうな家族を表現するために必要なことでした。あの時、演じている人は誰もいなかった。それは本当に素敵な時間でした」。『かぞくのくに』8月4日(土)、テアトル新宿、109シネマズ川崎ほか全国順次ロードショー取材・文・写真:鴇田 崇
2012年08月03日映画『かぞくのくに』のジャパン・プレミア試写会が7月12日(木)に都内で開催され、ヤン・ヨンヒ監督を始め、主演の安藤サクラに井浦新(ARATA改め)、この日のイベントのために来日したヤン・イクチュンが舞台挨拶に登壇した。また、本作のモントリオール国際映画祭への出品、韓国での劇場公開が正式に決定したことも発表された。ヨンヒ監督の実体験を基に製作された本作。かつての帰国事業で北朝鮮へと渡り、25年ぶりに日本へ一時帰国を果たした兄(井浦さん)と日本で暮らしてきた妹(安藤さん)。国家という巨大で理不尽な力により、離れ離れにならなくてはならなかった家族の姿を丁寧に、そして力強く描き出す。潤沢な予算もなく、決して明るいとは言えない政治的・歴史的な問題を孕んだ作品とあって、お客さんへのお披露目までこぎつけたことに一同は万感の思い。監督自身をモデルにした主人公を演じた安藤さんは「監督の思いに応えようと必死になってて…。監督がどうにかして伝えようと思っていた作品で、それがこうしてお披露目できて、今日が特別な日であることを実感してます」と言葉を絞り出した。井浦さんも真夏の15日間の撮影をふり返り「監督の思いをひしひしと受けながら、いい意味で監督の想像を裏切り、どう飛び越えていけるかと監督と戦い続けた15日間でした。ヨンヒ組という一つの組が、間違いなく家族になった日々だったと思います」と言葉に力を込める。主演・監督を務めた『息もできない』が日本でも話題を呼んだイクチュンさんは、本作で描かれる北朝鮮を巡る様々な問題について「私たち韓国人にとっても悩むべき歴史です。この映画が、美しい世界を作るためにみなさんと一緒に悩むきっかけになったら嬉しい」と思いを訴えた。帰国事業で実際に北朝鮮に渡った監督の3人の兄と日本に残った監督の体験に基づいてはいるが、監督は「私の実体験を超える作品になったと思います。というのは、兄と私の間にはどうしても遠慮があるんです。(安藤さんと井浦さんの)2人の演技を見て、もっとガツンと言い合いたいのに感情を押し殺している部分があったのかな?と思い知らされました」と2人の演技に称賛を送った。この日は映画上映後の舞台挨拶となったが、井浦さんは「この4人が揃うことはなかなかないので、聞きたいことや感想などがあればぜひ手を挙げて」と観客に呼びかけ。予定の時間を大幅に超え客席を巻き込んだトークセッションとなり、熱いやり取りが繰り広げられた。安藤さんは締めの挨拶で、監督が過去の2作のドキュメンタリー映画(『ディア・ピョンヤン』、『愛しのソナ』)で北朝鮮から入国禁止措置を受けていることに触れ、「さらにこの作品を作るのってすごい覚悟ですよね?監督の中でこの作品を作ることで何が変わったんですか?」と監督に質問。現在も家族が北朝鮮で生活をしている監督は「家族の話を撮れば撮るほど家族に会えなくなっているという矛盾があるんですが…」と複雑な思いを明かし、「正直、不安だし家族に申し訳ない気持ちもあるし(3作目の本作を撮ったことで)もっと心配になっています」と悲痛な思いを吐露。その上で「家族を守るためにもこの映画を通じて世界中のいろんな人にうちの家族を知ってもらえたら。“オフィシャル問題児”になる覚悟でいます。だからぜひこの映画をいろんな人に観てほしい。写真の人(=額入りの写真で飾られている北朝鮮の最高指導者)にも観てほしい!」と本作が世界中に広まることで少しでも状況が変化していくことへの期待を口にし、客席からは大きな拍手が沸き起こった。『かぞくのくに』は8月4日(土)より東京・テアトル新宿、大阪・テアトル梅田ほか全国にて公開。■関連作品:かぞくのくに 2012年8月4日より東京・テアトル新宿、大阪・テアトル梅田ほか全国にて公開© 2011 Star Sands, Inc.
2012年07月13日