六本木の街を舞台とした一夜限りのアートの饗宴「六本木アートナイト2012」が、3月24日(土)10時から、3月25日(日)18時まで開催される。© 2010 六本木アートナイト実行委員会今年の「六本木アートナイト2012」のテーマは、「アートでつくろう、日本の元気」。このテーマのもとに、国内外様々なアーティストがメッセージ性の強い作品や、元気を与えるような作品を多数展開予定。Yayoi-chan, Ring-Ring © YAYOI KUSAMA 新作イメージ画像水玉をモチーフにした作品が印象的な前衛芸術家の草間彌生さんの参加が決定し、新作プロジェクト<愛はとこしえ、未来は私のもの!>を発表する。草間彌生さんは、バルーンを用いた全長10mの新作<ヤヨイちゃん~リンリン>を披露する他、ドットに彩られた「水玉カフェ」も登場し、六本木が草間ワールドに彩られる。©YAYOI KUSAMA他にも、京都を拠点に活動する気鋭のアーティスト「Antenna」は、ユニークなキャラクター「ジャッピー」をモチーフにした御輿や、お堂など祭りに関わる日本の伝統文化を表現する。Antenna《六本木伝承2012》 2012年また、美術館をはじめとする文化施設のオールナイト開館を含む開館時間延長、屋外でのインスタレーション、作品展示など、このオールナイトのアートの饗宴を安心して楽しめるよう、飲食店の営業時間延長や無料のバス運行なども行う予定。「六本木アートナイト2012」で、新しいアート・新しい六本木を感じ、特別な一夜を楽しんで。お問い合わせ: 六本木アートナイト2012公式サイト
2012年03月12日アル・パチーノが国民芸術勲章(National Medal of Arts)を受章、13日にホワイトハウスでオバマ大統領から勲章を贈られた。国民芸術勲章は、アメリカ文化に素晴らしい功績を残した芸術家や学者、団体に対して政府から贈られる最高の栄誉と見なされている。『ゴッドファーザー』シリーズや『セルピコ』(’73)、『狼たちの午後』(’75)など数々の傑作に主演し、『セント・オブ・ウーマン夢の香り』(’92)でアカデミー賞主演男優賞に輝いたパチーノの「銀幕での強烈な存在感」が評価されたという。ホワイトハウスのイーストルームで行われた授与式では、パチーノを始めカントリー歌手のメル・ティリスや詩人のリタ・ドーヴら15人と2団体に勲章が贈られた。様々な背景を持つ人々を「結びつける力が芸術にはある」とスピーチした大統領は、受章者たちに「平穏なとき、危機のとき、勝利のとき、そして悲劇のときも、あなたたちは我々が人として成長するよう、導いてくれました」と語りかけた。会場にはサラ・ジェシカ・パーカーやジョン・リスゴーの姿もあり、受章者たちと大統領のスピーチに惜しみない拍手を送っていた。(text:Yuki Tominaga)© ロイター/AFLO
2012年02月15日すっかり秋ですね。夏と違い、少しは心を落ち着けて芸術を楽しむことができそうな気配になってきました。以前、アートを嗜むことのできる映画をご紹介しましたが、今回は音楽。しかも英国ロック・シーンが楽しめる映画をご紹介します。1作目は、『リトル・ランボーズ』。1982年のイギリス郊外を舞台に、家庭の温かさを知らず大人びてしまった不良少年と、プリマス同胞教会(俗世の娯楽から距離を置いて厳格な規律を持つ宗教)の元に育てられ、子供らしくあることを許されない少年との友情の物語。ひょんなことから、交流を持った2人は、映画『ランボー』に刺激されたことを共通点に、自主映画作りに没頭していくのです。そんな微笑ましい情景のバックに流れるのが、80年代を彩ったブリティッシュ・ロックの数々。1972年に英国に生まれた監督が選んだのは、デュラン・デュランの「ワイルド・ボーイズ」やディペッシュ・モードの「ジャスト・キャント・ゲット・イナフ」、ザ・キュアーの「クロース・トゥ・ミー」などその時代に青春を生きた人々には、なんともノスタルジックなサウンド。でも、もしかすると新鮮に感じる若い人々も多いかもしれませんね。これらの音楽が集中的に流れるのが、英国ならではの文化のひとつだという“コモンルーム”の中。コモンルームとは、学校や寮にある娯楽室、談話室のことで、この映画に登場するように、6年生のコモンルームには6年生以外は立ち入り禁止になっているのだとか。そんな刺激的なヒミツの場所で80年代の若者たちが、どんな音楽をどんなファッションで、そしてどのように聴いていたのかを垣間見ることができるので、そんな点にも注目してみては?そして2作目は、英国のロック、そして世界のロックを語るとき、決して欠かせないある人物の物語『ノーウェアボーイひとりぼっちのあいつ』。1950年代半ばの英国リバプールで育った一人の少年が、音楽に芽生え、バンド活動を本格的にスタートしていくまでを描いています。ご想像通り、これはジョン・レノンが大スターになる直前までを描いた実話。厳格な伯母と優しい伯父に育てられたジョンは、かなりの問題児だったことが本作からもうかがえますが、実の母親ジュリアと再会し、彼女によって音楽的才能を開花させていくのです。ただ、音楽的才能をより伸ばす手助けとなったのは、どうやら皮肉にも愛と孤独感だったよう。常に「父親はどこにいるのか、なぜ伯母に育てられているのか、なぜ母親のそばで暮らせないのか」という複雑な思いを抱えていて、育ての母、生みの母のいずれにも打ち明けられない、行き場のない思いをぶつけるかのように音楽に没頭。やがて自分をとりまく複雑な事情を知ったとき、その事情を通して見えて来る愛が、人間的、音楽的な成長をさらに促していくのです。私たちが知っていると思っているジョン・レノンとは違った彼の側面を知ることができる本作。彼の書いた作品への理解もより一層深まっていくこと間違いなしです。もちろん、この物語には出演者たちと同じくらい大切な役割を持って音楽が登場しています。ジョンを刺激したエルビス・プレスリーの歌声、ジョンが学校の仲間たちと結成したバンド“クオリーメン”のサウンド、そしてポール・マッカートニーと出会って、後に“レノン=マッカートニー・ソング”の礎となったサウンド等々。ビートルズファンでなくても、たまらない音の数々に出会えるのです。ところで、この作品でジョンを演じたアーロン・ジョンソンくんについて少し。次回作『キック・アス』でニコラス・ケイジと共演する躍進ぶりからもお分かりのように演技の才能も認められていますが、どうやら女性たちをメロメロにするジョン・レノン的な魅力も持ち合わせているよう。『ノーウェアボーイ』の監督と23歳差結婚で話題となったのも記憶に新しい限り。彼のジョン・レノンぶりには、オノ・ヨーコも太鼓判を押しちゃったというからなかなかのもの。もちろん演技力ゆえでもあるのでしょうが、それだけでないような気も。彼が発する若々しい色気の前では、大人の女性だって恋する乙女になってしまうのかなと思ったりして。若き才能について言うのなら、『リトル・ランボーズ』の2人も英国映画界期待の星です。厳格な家庭に育った少年を演じたビル・ミルナーは、その繊細な演技でリバー・フェニックスやジェイミー・ベルに匹敵するとも囁かれていますし、不良少年を演じたウィル・ポーターと共に、昨年の英国映画誌「エンパイア」で“20歳以下の人気映画スター20人”にも選ばれているとか。偶然にも、英国ロックを背景に、自分の居場所を探して葛藤する少年たちを演じたこの3人。今後が楽しみな限りですよね。英国ロックを楽しみながら、彼らの今後の成長ぶりを想像しつつ、目を細めてみるのもいいのではないでしょうか。(text:June Makiguchi)■関連作品:リトル・ランボーズ 2010年11月6日より渋谷シネクイントほか全国にて公開© Hammer&Tongs,Celluloid Dream,Arte France,Network Movie,Reason Picturesノーウェアボーイひとりぼっちのあいつ 2010年11月5日よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国にて公開© 2009 Lennon Films Limited Channel Four Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved.キック・アス 2010年12月18日よりシネセゾン渋谷ほか全国順次公開© KA Films LP. All Rights Reserved.■関連記事:ニコラス・ケイジ、国連親善大使として組織犯罪撲滅を呼びかける「ゴシップガール」のイケメン、チャック緊急登場(?)にファン大熱狂想像力が少年の世界を変える!『リトル・ランボーズ』試写会に20組40名様ご招待若き頃のジョン・レノンを描く『ノーウェアボーイ』試写会に15組30名様ご招待「ゴシップガール」のチャックが『リトル・ランボーズ』でもイケメン傲慢男に!
2010年10月22日芸術を嗜むのに最適な季節といえば、秋…ですが、暑い夏の過ごし方として、涼しく美術館や劇場を巡るというのも、いいものです。夏休みには、多くのアートイベントも開催されますし、興味深い企画も盛りだくさん。さらに、最近では美術館などに素敵なカフェもあったりして。そう、快適空間での夏のひとときを過ごすのは、かなり良いアイディアなのです。そんなわけで今回は、この夏おすすめのアート関連映画を2本ご紹介します。まずは、『セラフィーヌの庭』から。セラフィーヌとは、アンリ・ルソーに代表される素朴(ナイーブ)派の女流画家、セラフィーヌ・ルイのこと。独学で絵を描いてきた彼女は、もともと家政婦として働いていました。貧しく、孤独に過ごしながらも、草木に話しかけ、自然と対話し、神を敬う女性だったのです。41歳のとき、守護天使からの啓示がきっかけで絵を描くように。とはいえ、貧しい生活の中で、芸術を生み出し続けるのは大変なこと。例えば、画家ならば、感性だけでなく、それをヴィジュアル化するためのキャンバス、絵の具、筆などが必要になります。セラフィーヌは、家賃を滞納し、石炭を買うのを控えながらも、洗濯や掃除で得た僅かな収入を画材へと投入。絵の具は、動物の血や草木などから手作り(材料は人には秘密)。でも、それが独自の色彩へと繋がっているのですから、アートとは何とも良いものです。そんな彼女が描くのは、花や草、果物など。そんな作品に偶然出会ったのが、ピカソ、ブラック、アンリ・ルソーを発掘したドイツ人の画商ヴィルヘルム・ウーデ。そこから、彼女の人生に変化が訪れ始めます。それが結果的に彼女にとって良いものだったかどうかは分かりません。アーティストが世に出るには、支援者(彼女の場合はウーデ)が必要だといいますが、そもそも彼女は自分の作品が世に出ることを望んでいたのかどうかも分からないからです。彼女は心のままに絵を描き、それが彼女にとっては呼吸することと同様生きることに直結していただけ。名誉も地位もなかったとしても、彼女は満たされていたことでしょう。とはいえ、ウーデのおかげで、いま私たちは彼女の才能に感謝し、楽しむことができるのですが。ウーデが熱心に見出した素朴派(ウーデ自身はモダン・プリミティブ派と呼んだそう)は、はじめこそ、その名の通りタッチの“素朴”さゆえ、単純、幼稚、遠近感がないなどと評価されなかったそうですが、やがて、画家たちの表現する美しい色、素直で純粋なタッチの中に価値を見出すように。いまでは、多くの人々に温か味を感じさせる人気のジャンルになっています。日本では、ルソーをはじめとする素朴派画家の作品所蔵に関しては、世田谷美術館が有名。9月5日(日)まで開催されている収蔵品展「建畠覚造―アトリエの時間」の第二部でセラフィーヌの作品「枝」も展示されています。セラフィーヌの作品が気になった方は、ぜひ足を運んでみてください。次にご紹介する『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』は、私にとっては敗者復活戦的作品。あれはそう、ちょうど4年前のこと。サッカーのワールドカップ、ドイツ大会に赴いた私は、アムステルダムを経由。その際、限られた時間内で美術館に向かったところ、長蛇の列を目の前にして、入館を断念した苦い思い出、レンブラントの「夜警」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」をすんでのところで見逃したという断腸の思いがあるのです。その代わり、アムステルダムのアルティス動物園というほのぼのとした施設で遊ぶことができたわけですが、それはそれ、これはこれ。やっぱり悔しい。というわけで、今回、やっと待望の館内を覗き見ることができたわけです。でも、覗いた“内部”はかなりモメていました。内部というのは、そこで働く人々や、国立美術館を愛する市民たちのこと。実は、アムステルダム国立美術館は2004年から大規模な改装工事が始まったのですが、美術館関係者と地元民の間で計画にまつわる対立が勃発。順調にいけば2008年リニューアルオープンの予定でしたが、大もめにもめ、その後もトラブルが続出。2010年のいまも工事は中断していて、予定では2013年には再オープンというかなりの大騒動に発展しているのです。現在も、本館は閉鎖状態。思えば、私が訪れた際も、展示は本館でなく隣接する棟で行われていましたっけ。こんな大きな美術館なのに、なんで入り口がこんなに小さくて横っちょにあるのだろうと思った記憶があります。そんなことを思い出しながら観た本作。そもそも、国立美術館の改装が、日本ではここまで大問題になるのだろうかというところも興味深い話です。そんな騒動だけでなく、この作品では美術館の内部でどんなことが行われているかも、教えてくれます。美術館改革についての会議の様子、学芸員による展示構成の議論、美術品収集の様子、所蔵品の数々、そして力仕事を担う作業員たちや警備員たちの思い、修復家たちの仕事ぶりなどです。なかでも、私が一番興味を持ったのは、美術品の修復。これまでも、様々なメディアで修復場面が紹介されるたびに、「この仕事に私は適しているはず」と思ってきました。こちょこちょとした細かい手作業、何かをはがす、削るという作業が好きな私。その果てに、人類の遺産とも言える名作たちの復活が待っているなら、こんな喜びはないはずです。案の定、今回も彼らの作業にうっとり見入ってしまいました。今度生まれ変わるなら、断然、美術品修復の勉強をしたい。そう強く思ったのでした。社会派ドキュメンタリー監督が4年以上の歳月をかけ、400人にも及ぶ関係者への取材を経て実現したこの作品。当初予想していた単なる美術館案内とは全く違い、いわばバックステージ・ツアー的な性格も持った面白い作品です。優雅な美術品を展示するお高い場所だと思いがちですが、そこには妙に人間くさい面白ドラマが充満していました。“過去”が集まる場所だと思っていた美術館でしたが、実は“今”を生きていました。映画を見続けていくうちに、もはや、知らない人とは思えないほど親しみを感じた関係者たちに、「何があっても負けるな!」とエールを送りたい気分。一日も早い、リニューアルオープンをお祈りしています!と、こんな面白すぎる美術界の裏話も、涼しい美術館に行く前に知っておくといいですよ。『セラフィーヌの庭』と『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』、暑い夏におすすめです。(text:June Makiguchi)「世田谷美術館」公式サイト■関連作品:セラフィーヌの庭 2010年8月7日より岩波ホールほか全国にて公開© TS Productions/France 3 Cinéma/Climax Films/RTBF 2008ようこそ、アムステルダム国立美術館へ 2010年8月21日より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開■関連記事:大騒動勃発!『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』試写会に10組20名様ご招待
2010年07月23日