「ゴールキーパー」について知りたいことや今話題の「ゴールキーパー」についての記事をチェック!
ゴールを守る最後の砦として、専門的なスキルとメンタルが求められるのが、ゴールキーパーというポジションです。ジュニア年代のゴールキーパーを、どのように育成すべきか----。そんな問いに答えてくれるのが、プロから子どもまで、幅広い指導経験を持つ松下太輔コーチです。松下コーチは2006年末までヴァンフォーレ甲府で選手としてプレーした後、指導者としてのキャリアをスタート。社会人クラブや星稜高校(石川)での経験を経て、ヴァンフォーレ甲府に戻り、2010年から2018年4月まで、トップチームのGKコーチを務めました。その後、ヴァンフォーレ甲府アカデミーでGKコーチのチーフとして、ジュニアからユースまでの育成カリキュラムを構築・実践。現在は日本文化大学で指導にあたっています。「幼稚園児から大学生、プロまで、ほぼすべての年代の指導経験があります」と穏やかに語る松下氏。今回は、7月末に開催予定のサカイクGKキャンプを前に、小学生年代のゴールキーパー育成に関する思いを聞きました。(取材・文鈴木智之)関連記事:ゴールキーパー練習に"テクダマ"を活用!テクダマ特有の「イレギュラー」と「ブレる軌道」がポイント■ゴールディフェンスからスペースディフェンスへ松下氏がゴールキーパーの指導で大切にしているのは、年代に合わせた段階的な育成です。「シュートストップは大前提として、小学生年代ではまず『ゴールディフェンス』(ゴールを守る技術)に重きを置きます。そして6年生くらいになると『スペースディフェンス』の基礎も教え始めます。相手のスルーパスに対する準備や、サイドからクロスが上がる時の正しい体の向きなど、ゴールを直接守るだけでなく、スペースを管理する技術も教えていくことが大切だと考えています」これは中学生になり、ピッチサイズとゴールが大きくなったときのギャップを埋めるための準備でもあります。「ゴールを守る観点から考えると、シュートストップだけではなく、相手にシュートを打たせる前にボールを奪うという意識も、11〜12歳くらいから少しずつ教えていきます」■「常に」考えるキーパーを育てる松下氏が強調するのは、ピッチ上で常に「考える」姿勢です。「キーパーは試合中、ピッチのどこを見るべきか、どの選手と連携を取るべきかなど、常に考え続ける必要があります。ボールが遠くにある時でも、ちょっと休憩ではなく、集中し続けることが大切です」例えば、味方が攻撃している場面でも、「もしこの瞬間にボールを奪われたら、最も危険なのはどこか」を考え、相手のストライカーをマークしているセンターバックとコミュニケーションを取るなど、先を考えて準備することの重要性を説きます。■サカイクGKキャンプで目指すこと7月末に開催予定のサカイクGKキャンプでは、基本技術の習得はもちろん、「考える力の育成にも力を入れたい」と松下氏は語ります。「キャンプでは基本技術を教えることはもちろん、トレーニングの間には映像を使ったミーティングも行います。そこで子どもたち同士がディスカッションする機会を作りたいです。『僕はこう思う』と、自分の意見を言葉にして伝えられるようになれば、チームに帰ったときに仲間からの信頼も高まります」また、参加者それぞれの課題にも丁寧に向き合う予定です。「ハイボールが苦手」「1対1の場面で飛び出すのが怖い」など、子どもたちが抱える具体的な悩みを一つでも解決できるよう、個別対応にも力を入れます。「キーパーの成長には、課題を一つずつ改善し、実戦で試し、失敗を次の成功につなげるというサイクルが大切です。このキャンプで、そのプロセスも体験してほしいですね」■キーパー仲間を増やそう最後に、サカイクGKキャンプへの参加を検討している子どもたちへ、温かいメッセージを送ります。「小学生の場合、チームにキーパーが2、3人しかいないことが多いと思います。まずは『キーパー仲間を増やそう』という気持ちで、気軽に参加してみてください。同じ悩みを持つ仲間と出会い、『そういう問題、僕も経験したことがある』と共感し合い、一緒に解決策を見つける場にしたいです」松下コーチは「一方的に教える」というスタンスではなく、「子どもたち自身が、課題を解決するための手助けをする」という姿勢で指導に臨むと言います。子どもたちの自主性を尊重しながらも、プロの目線から的確なアドバイスを提供する。そんな貴重な学びの機会になりそうです。サカイクGKキャンプは「ゴールキーパーをしている」「もっと上手くなりたい!」「成長したい!」と思う子にとって、Jクラブでの指導経験を持つコーチから直接学ぶことのできる、貴重な機会です。ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。きっと、ひと夏の思い出以上に、サッカー選手として成長するきっかけとなる経験ができることでしょう。
2025年05月21日サッカー界随一の知名度を誇る記者、ファブリツィオ・ロマーノが7日、自身のXを更新。【画像】バルセロナが退場者出すも先勝!ラフィーニャがチームを救う貴重な決勝点ロマーノは「マンチェスター・シティは、才能あるゴールキーパー、ベン・ヴィッカリーの移籍についてハイバーニアンと原則合意した。」と報道した。マンチェスター・シティは将来を見据えて、この若手GKを獲得したようだ。移籍後の活躍に注目が集まる。 Manchester City agree deal in principle with Hibernian for transfer of talented goalkeeper Ben Vickery. Deal almost done and set to be signed, sealed soon with Manchester City building again for the future. #MCFC pic.twitter.com/swLfycLW9I — Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) March 7, 2025 この投稿にファンからは「興味深い」「この選手は知らなかった」「びっくり」など、コメントが多数寄せられている。
2025年03月08日コーチからの指摘に「だって、~が悪い」「あれは、~だから仕方ない」と言い訳ばかりで聞き入れない息子。自分も身に覚えがあるし、大人であっても自分の短所を認めるのは難しい。だけど、そろそろ中学生だし、傾聴力を意識できるようになってほしい。どうかかわればいい?と悩むお父さんからのご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、悩めるお父さんに3つのアドバイスを送ります。(構成・文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<サッカーに向いてない息子。親が他競技への転向を勧めてもいいのか問題サッカー少年少女が自ら伸びる親のかかわりかたLINEで配信中>><サッカーパパからのご相談>小学校6年生の子どもの父です。息子はGKをやっています。トレセンに選ばれるなど、GKとしての競技力はあるほうですが、足元の技術が低く、足でボールを扱う局面でミスを連発してしまうという課題があります。チームのコーチにも、トレセンのコーチにもいつもそれを指摘されています。「判断を早く!」「持ちすぎるな!」と。しかし、息子はいつも「だって、~が悪い」「あれは、~だから仕方ない」と言い訳ばかりで、アドバイスを聞き入れる姿勢はありません。かくいう自分も子どものころはいつも言い訳ばかりしていましたし、息子の性格は自分の性格を受け継いだのかもしれません。大人であっても、自分の短所を認めることは難しいものです。ただ、自分も大人になり過去を振り返ってみると、もっと周りのアドバイスに耳を傾けていれば、と後悔することも多々あります。この先々の人生においても、周りの意見に耳を傾けられるようになることは重要ではないかと思います。今は、試合や練習を見た際は「良かった点」と「課題」は端的に内容だけを伝えています。「課題」に返ってくる「言い訳」に対しては、特にコメントはしていません(妻は「言い訳するな」とお説教していますが)ただ、このままで良いのかという迷いはあります。 来年には中学生になりますし、そろそろ、傾聴力を意識できるようになっても良い頃ではないかと思います。反抗期に入りつつあるので、親のかかわり方は難しい時期ですが、どのように接するべきかアドバイスを頂けますでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。ご相談の中で、お父さんのようにご自分と似た性格傾向があると打ち明けてくれる方は珍しいです。当然ながら、親子は顔や体つき、能力的な部分以外にパーソナリティも遺伝します。新たな視点を与えていただきありがたいです。三つほどアドバイスさせてください。■親は過去の栄光より失敗話を話してあげるようにしてひとつめ。息子さんに対し、ご自分の自慢話を控えましょう。一般的に親は子どもに「俺がお前くらいの頃は......」と過去の栄光を自慢しがちです。特に優秀な親御さんは「少年野球で最初は補欠だったけど自主練をして最後はエースになった」とか、「成績はいつもトップクラスだった」「大学受験のときは睡眠3時間で頑張った」などと、自身の武勇伝を子どもに言ってしまう。自慢する材料があったとしても、そこは能ある鷹は爪を隠すが如く胸にしまいましょう。その理由は、子どもにとって立派であればあるほど、不安をかき立てられるからです。どうしたって乗り越えられない。もう自分には伸びしろがない。「到底お父さんみたいにはなれない」と自己肯定感が下がります。特に、自我が確立する思春期以降は気をつけなくてはいけません。息子さんは12歳なので「前思春期」といって思春期の入り口です。自分と周りを比較して自分が何者であるかを見極めようとする自我を持ちつつあるいま、ぜひそこを意識して接しましょう。それよりもお父さんがやらかした話、つまり失敗談のほうが、子どもの自己肯定感は上がります。なぜならば「そんな失敗をしたのに、お父さんはちゃんと大人になって楽しそうに生きている。僕も大丈夫だ」と思えるからです。そうすれば家庭は子どもにとって安全基地になりえます。子育てセミナーでそんな話をしたら、一度「ちゃらんぽらんでも生きていけるって勘違いしませんか?」と父親らしき男性に質問されたことがあります。そこで「生まれたときからずっと接してきた親がどれだけ仕事を頑張っているか、真面目なのか、努力家なのか、優しいのかなど、お子さんは親を見ています。十分知っています。お子さんとの時間と、お子さんの力を信じましょうよ」と話したら、質問された方は深くうなずいていました。しかも、お父さんは相談文に「自分も大人になり過去を振り返ってみると、もっと周りのアドバイスに耳を傾けていればと後悔する」と書かれています。であれば、そのことを率直に伝えるといいでしょう。あのときこう言われたときに、こうしていれば、もっとこうなったかもしれないと。それなりに生きて来たけれど後悔もある。あくまでどうするのかを選ぶのは君だけど、親がそんな後悔を抱えていることは知っていてくれ。そんなふうに伝えてはいかがでしょうか。■抽象的な言葉を伝えるだけでは反抗するだけあれこれ世話を焼かないことふたつめは、あれこれ世話を焼かないこと。親は子どもに自分と似た短所を発見すると、いら立つものです。多くの大人は自分の悪いところを自認していますが、目の前で似たわが子を見るとそれを見せつけられるようで嫌悪感が湧き出るようです。短所は長所でもあります。息子さんがアドバイスを受け入れられず言い訳ばかりしているのは自尊心、プライドが強い表れかもしれません。世話を焼かれたくない。ある意味「自分を持っている」とも言えます。大人の言うことを聞けば「素直でいい子」と言われますが、流されやすく自分がないとも言えそうです。親としてはイライラせず、ぜひたくさん失敗させてください。奥様は「言い訳するな」と説教をしているようですが、〇〇するなと否定したり、謙虚になれなどと抽象的な言葉を伝えるだけでは、お父さんが書かれたようにこの先思春期になって反抗するだけです。試合や練習の「良かった点」と「課題」など、12歳であれば自分でわかっています。わかっていることを親に言われると腹立たしいものです。息子さんには「わからないことがあれば言って来て。いつでも相談に乗るよ」とだけ伝えて何も言わないこと。息子さんのことは、息子さんに任せることです。■本人が気づかなくては始まらない親は自立させる環境を整えて(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)三つめは、自立させる環境を整えることです。「このままで良いのかという迷いはあります」とありますが、「このままでいいのか?」と本人が気づかなくては何も始まりません。親の役目は、子どもをジャッジするのではなく、子ども自身が自分の中にエネルギーを蓄えられる環境を整えることです。エネルギーがなければ自分の足ですっと立てません。その鍵は「安心・安全」。両親はそこそこ夫婦仲も良く、家庭はリラックスできて安心で安全。どうすれば、自立を妨げない子育てができるかを奥様とともに考えてください。そう考えると、親の役目は運動部活動のマネージャーみたいなものかもしれません。野球部やサッカー部のマネージャーは、選手が自分たちで決めた目標に立ち向かえるようサポートします。選手に「絶対3割打て」とか「居残り練習をやれ」なんて指示しません。選手のエネルギーの創出、つまり力を発揮するのをただただ見守っています。そうやって、勝てばともに喜び、負ければともに泣く。親もそれでいいのです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年11月06日キーパーのゴールキックが奪われ、得点を決められてしまう。ゴールキック=相手チームのチャンスになってしまっている。ビルドアップを理解させる練習法を教えて。とのご相談をいただきました。ゴールキックが相手のチャンスに、というのは小学生年代でよくあることですよね。ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、低学年から理解させたほうがいいビルドアップの指導法を教えます。(取材・文島沢優子)サッカー少年少女が自ら伸びる親のかかわりかたLINEで配信中>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<ギャップを作ってそこに入る、使うができない。どう教えたらギャップを作る動きを習得させられるか教えて<お父さんコーチからの質問>はじめまして。スポ少で指導をしている者です。担当はU-10です。元々高校までサッカー部で、社会人になっても趣味程度にサッカーをしていました。子どもの少年団入団後、周囲のお父さんに誘われ指導に携わっています。担当はU-10です。指導者ライセンスはまだ保有していません。プレー経験があるのと子どもたちに教えるのでは随分勝手が違うので、悩みます。相談内容は、ビルドアップについてです。まだ強いボールが蹴れないのもあり、ゴールキックが=相手のチャンスになってしまうことが多いです。GKがキック→ボールを奪われ相手にゴールされる、という場面が結構あります。ポジションの修正や、どこにパスを出すか、ちゃんと味方が見えているかなどが課題だと思うのですが、この辺りをどのように教えるのがいいでしょうか?いい練習メニューがあれば教えてください。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。ゴールキックがそのまま失点につながってしまう。少年サッカーにおいて、日本中どこに行っても耳にする話です。そうなる理由のひとつは、ルール上の問題もありそうです。■ドイツでは10歳前後はゴールキックではなく、手で投げてOKなケースが多い例えばドイツでは、10歳前後はゴールキック自体やらせません。ボールがゴールラインを割ると、キーパーが手で持って投げてOKというルールにしているケースが多いです。さらに地域ごとでルールを工夫しています。ゴールキックになると、相手チームの選手たちはハーフラインまで下がらなくてはいけない。そんなルールにしている地域があると聞いたことがあります。育成年代でビルドアップを経験させるために、そのようなローカルルールを設けているわけです。サッカー少年少女が自ら伸びる親のかかわりかたLINEで配信中>>■DFにボールを預けた後の展開、周りをどう見るか、状況判断を学ぶ必要があるそういったルールを設けてビルドアップできるようにするには、キーパーがディフェンダーにボールを預けた後どう展開するかといった原理原則を学んでもらう必要があります。しっかり周りを見て、状況判断してボールを運ぶには、まわりをどう見るか。ボールが自分のところに来ることで何が起きるか。そういった状況をちゃんと見る。見たら、どこにパスをしたほうがいいかを判断する。それらができるようになるトレーニングをするといいでしょう。■3対2のビルドアップ練習法私がよくやるのは、キーパーと選手2人を合わせた3人に守備2人がつく3対2のビルドアップの練習です。小学4年生くらいであれば、サイズは縦30メートル、横20メートくらいのコートを作ります。そして、3人が攻めるほうの30メートル先の両サイドにそれぞれゴールを設けます。キーパーを含む3人はボールを運んでゴールにパスできれば1点にします。例えば右から左にパスして揺さぶるとうまく相手を外せます。相手にはキーパーはいないので結構簡単に点が入るでしょう。相手の外し方がわかってきたら、今度はそこをドリブル通過できると1点にします。そうすると、あまり低い位置でボールをもらってしまうと、ドリブルを長くしなければいけなくなります。当然相手は取りに来ますし、追いつかれる可能性が高くなります。そうなったところで子どもたちに「どうしますか?」と尋ねます。無理に前に行こうとせず、キーパーを使って逆サイドにボールをふるのか、あるいはもう1人が味方に近づいたり、裏を突くといったことをします。そのような練習をしておけば、試合でゴールキックのときに、どうやってボールを運ぶか理解できるはずです。■高校生も実践している練習メニューこれは今私が教えている高校生たちもやっている練習です。高校生はもう少し人数を多くしますが、狙いは同じビルドアップのトレーニングです。簡単に言えば、両サイドにボールが出て、前のゴールにパスしたり、ベースラインをドリブルやパスで越えれば1点にします。そんなことがだんだんと理解できてきたら、ゴールを三つにします。サイドだけでなく、真ん中に行ってもいいよということです。そうすると、横へのパスだけでなく縦のパスも理解できるようになってきます。■一瞬手詰まりに見えるけど、ダイレクトで返せば有効に展開できるそんな経験をさせてそもそも、すぐ取られるのであれば何が問題なのか。そこを考えなくてはいけません。例えばキーパーがパスしたときに、キーパーが選んだ場所が悪いかもしれません。ほかに、日本の子どもは駆け引きをするという感覚が足らないようです。自分のところにうまく相手を呼び寄せて、他の選手がフリーになるように動くとかそういったことが理解されていないようです。例えば仲間が受けに来てくれた。ところが相手もついてきている。そういうときにわざとその選手に出して、その選手がダイレクトでキーパーに返すと、キーパーがフリーで持って上がれるようになる。そのように、一瞬手詰まりに見えるけれどダイレクトで返すことで有効に展開できる。そんなことを経験させてください。■どうすればフリーになれるか、を理解させる動きを低学年から取り入れよう上述した3対2のビルドアップ練習で、両サイドにゴールがある場合、ダイレクトパスを返されたキーパーはシュートができます。これは「前のサイドの仲間にパスができるんだ」という理解になります。いつも近い人ばかりにパスをするのではなく、少し遠くを見たらここにもパスできるよねという気づきです。すると今度はキーパーに渡ったときにシュートを打たれたくないので、相手がシュートをコース防ぎに行きます。その子にマークされていた子がフリーになってくる。ここでフィールドプレーヤーの2人は相手と2対1の状況になります。この2対1を低学年のうちからやっておけば、どうすればフリーになるかという理解を深めることが容易くなります。その際、指導者が「こう来たら、こうだろ」といったふうに見ている側の枠にはめたくなりますが、そこを我慢しましょう。できるようになるのが狙いではなく、まずは成り立ちを理解すること、そして楽しく習得することに軸足を置いてください。親が変われば子どもも変わる!?サッカー少年の親の心得LINEで配信中>>■足元の技術が足りてないだけなのか、理解していないゆえのミスかはきちんと見極めて(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)子どもは周りをよく見て蹴ったんだけど、技術がなくて正確にパスできないことがあります。そこをきちんと見極めることが指導者の仕事です。足元の技術が足りなくてできなかったとしたら「いいよ、いいよ。すごくいいところ見たよね」と言って「あとはしっかり蹴られるようになるといいね」と言ってあげてください。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2024年10月25日Jクラブの育成組織でキーパーとして所属しているが、試合には全く出してくれず、専門コーチもいない。出場時間ゼロに、いい加減私が憤慨している。13歳(中1)はまだまだ子どもで自分で判断できないから、親が導くべきだと思っている。どうしたらいい?というご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、お子さんが悩めるお母さんのために、これまでの取材で得た知見をもとに3つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<社会人野球までやった父。中1サッカー息子に文句を言ってしまう自分を何とかしたい問題<サッカーママからの相談>すみません。子どもは13歳で中学生だし、周りに相談しても「中学生なんだから自分で色々する年代でしょう。親があれこれ世話する年代じゃない」と言われるのですが、普通の部活ならそうかもしれませんが、うちはプロになれる可能性があるJ下部所属なので、13歳はまだまだ子どもで自分で判断できないため親が導いてやらないと思ってご相談します。相談が長くてすみません。昨年春からJクラブのジュニアユースにキーパーとして所属している息子ですが、 試合出場0分、良い加減憤慨しています。(私が)育成年代に経験する機会を与えないのは、我が子をどう育成しようとしているのか全くチームの意図が見えません。昨年スカウトが来た時、もう一つのJクラブからもオファーを頂き、たくさん人参をぶら下げられた今のチームに入りました。もう一つのチームよりも地元では強い選手を集めたという背景も背中を押しました。しかし、実際入ってみたら我々保護者へ行ったこと何一つ実現しておらず、キーパーという専門職に教える人がいない環境です。練習も、中1の二人で何となく練習し、背が大きい方が毎回出場、我が子は完全無視。本当は意図があって失敗したプレーも勘違いされ、「ビビってんじゃねえ!」という一撃で本心が言えなく萎縮している我が子。今練習会場は毎回違うし、グラウンドは土だし、このまま後2年半このチームに在籍してて我が子の成長が期待できるのか非常に不安です。月1回程度来る本部のキーパーコーチに言わせると二人は互角だとの評価です。じゃあなぜ試合の経験させないのか分かりません。勝ちにこだわるから?練習でうまく行って明日ようやく試合出れるかもとワクワクして行ったのに、我が子だけ出さない。大差で勝ってても怪我しているフィールドの選手は出すけど、我が子だけ出さない。こんな屈辱ありますか?決して上手いとは思っていないけど 理由があって選ばれて、育てたいと思ってスカウトしたのではないのか?それなのにこの大事な育成年代に全く出場の機会を与えないのは、長男のJクラブでも絶対になかった。サッカー大好きで、本気でサッカー選手になりたいと小さい時から思い行動し、ヨーロッパで活躍するんだって具体的な夢も描いてるのに、この8ヶ月間、何をしてくれちゃってるの?そんな中近日海外遠征で6日も行くという。 こんな状況で試合に出すとは到底思えません。だんだん自身も喪失し、何のためにわざわざ高い金を払って海外に行かせるのか意図不明です。チームは育成年代に回すお金がないし、ネームバリューのあるチームだから下手なキーパーコーチは雇えない、と言います。 じゃあ我が子はどうなる?この8か月間、自信喪失し、自己効力感を下げてもらいに通わせてるだけじゃないか?と疑問です。親としてこのままこのチームに預けてていいのか非常に悩んでます。U-13の監督は昨年まで他県のユースの監督でした。ユースや大学年代になれば出れない選手がいても当たり前。それがプロになる厳しさであり、スタメンを勝ち取るために自己対峙し修正を重ねる精神力が培われていると思います。ですが13歳の子はどうでしょうか?そこまで人間ができているでしょうか?ワンオペでみてる監督は、元日本代表と言う経歴を持ち、現役時代のポジションはフィールドだそうです。自分の成果として勝利に執着する気持ちは分かります。だけど、我が子の成長には何の利益もない。ジュニアユースに入り明らかに楽しそうではない息子。本気で長男がお世話になったもう一つのJクラブへ相談しようと考えたりしてます。それかいっそのこと辞めてもいいのではとも。本部の下部には毎回キーパーコーチがいて同じ会費を払ってるのに、かたや指導者不在で人工芝ではなく、補助食も出ず、なんかこの選択は違うんじゃないかと感じてなりません。親としてどうしたら良いでしょうか?<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。いただいたメールを拝見すると「長男がお世話になったもう一つのJ下部」とあるので、兄弟そろってJリーグのジュニアユースでプレーしているようです。よってお母さんのなかで「こうしてほしい」「ああしてほしい」といったクラブ側への要求が高くなるのでしょう。お書きになった不満を、箇条書きにしてみました。・たくさん人参ぶら下げられたのに、入ってみたら試合に出られない。・常勤のキーパーコーチが不在。・大事な育成年代に全く出場の機会を与えない。・指導者不在で人工芝ではなく、補助食も出ず、なんかこの選択は違うんじゃないか。親心から生じる要求かもしれませんが、クラブの態度や方針を変えられるわけではありません。相手を変えるよりも、自分が変わるほうが現実的な方策です。■大事なのは子どもの気持ちお母さんの「お気持ち表明文」から子どもの本心が見えないそれに加え、そもそも肝心の息子さんは現在の自分の状況についてどう感じているのでしょうか?メールを読むと、ほぼ全文がお母さんの「お気持ち表明文」になっています。もしサッカーをしているのがお母さんであれば、私はここで「そうかァ、それは悔しいね。じゃあ、今の自分の状況をどうとらえようか?まずは何のためにサッカーをしているか考えてみようか?」と話せます。ところが、サッカーをしているのはお母さんではなく息子さんです。周りの方が「中学生なんだから自分で色々する年代でしょう。親があれこれ世話する年代じゃない」とおっしゃったと書かれていますが、その通りだと私は思います。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■アドバイス①欧州での活躍を本気で夢見るアスリートが「親に導いてもらわないと動けない」とは考えないここでは三つほど私からお伝えさせてください。ひとつめ。上述したように、息子さんに今のピンチを乗り越えさせましょう。今のクラブを選んだのがお母さんだったとしても、最終的に了承して通っているのは彼自身です。このままこのクラブで控えのまま続けるのか、他のクラブに移籍するのかを自分で決めさせてください。本気でサッカー選手になりたいと小さい時から思い行動し、欧州で活躍する具体的な夢を描く人間であれば尚更です。そんな志を持ったアスリートが「僕はまだ子どもだからお母さんに導いてもらわないと動けません」とは考えていないと思います。少しばかり考えるのがゆっくりで、なかなか動けなかったとしても、立ち止まってステイするのも彼の人権です。親からすればぐずぐずしているように見えるかもしれませんが、そこは待ってあげましょう。■アドバイス②すでにスポーツ毒親になりかけているかも!?毒親に共通することとはふたつめ。これを機会に子育てをやり直しましょう。お母さんは私が『スポーツ毒親』(文藝春秋)というルポを執筆していることはご存知でしょうか。この本の文脈から言わせていただくと、現時点でお母さんはスポーツ毒親になりかけているようです。さまざまクラブへの不満が書かれていますが、もしかしたら息子さんが常に試合に出ていれば何の問題もなかったのではありませんか?例えば「試合出場0分、良い加減憤慨しています。(私が)」とありますね。お母さんは息子さんが試合に出られないことが屈辱的だと感じたり、試合に起用しない指導者に対して「大事なわが子に何してくれてんの?」と親心をむき出しにしています。私は憤慨している。私が悔しい。私が屈辱的。サッカーをしているのは息子さんなのに、主語が「私」なのです。子どもに起きたネガティブなことをつい自分と重ねてしまう。これは毒親の方々に共通するものです。実は、私が、私がと「正直な親心」をむき出しにすればするほど、息子さんのストレスはぐんぐん高まります。仮に息子の前では言ってなかったとしても、親の怒りや落胆は子に伝わるものです。そうすると「試合に出られない自分は親から愛されない、認めてもらえない存在だ」と子どもの自己肯定感は下がり、すこやかな成長の妨げになります。子の自己肯定感は「ありのままの自分」を親が受け入れてくれることが基盤になるのに、「補欠のままではダメ」というニュアンスで伝わってしまうリスクが大きいのです。試合に出られない息子さんに対し「それは悔しいね。出られるといいね」と"共感"することは大切です。そこに息子さんのサッカーへのこだわりが行き過ぎると、「私のほうが悔しい」と親の感情が子どもと"同化"してしまいます。それではなかなか良い方向には進めません。そのような親子を、これまでの取材や相談を受けるなかでたくさん見てきました。お母さんは「自信喪失し、自己効力感を下げてもらいに通わせているだけじゃないか?」とクラブに対し疑問を呈しています。しかし、指導者はストレートに言えば「たかが他人」です。親さえしっかり認めていれば、子どもは自尊感情を維持できます。他人の手で容易に潰されるものではありません。■アドバイス③お子さんの自己肯定感を育もう(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)三つめ。子育てで最も重要なことは、わが子の自己肯定感を育むことです。そこで、次の三点に注力してみてください。①「試合に出ることがすべてではないよ」とか「君は十分頑張っているよ」と息子さんを励ましてください。②サッカーを楽しむことが第一だという価値観を伝え「楽しくないなら、試合に出られそうな他のクラブに移籍するのもありだよ」とほかの選択肢を提案してもいいかと思います③最終決定をするのは息子さんであり、その決定が道義的に問題なければぜひ尊重してください。私自身もかつては毒親でした。皆さんの揺れる気持ちや正直な親心が理解できるから、この連載を続けられています。道を間違えたら立ち止まって「どっちに行けばいいのかな?」と考えれば良いのです。子育てはいつからでもやり直せます。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年01月10日サカイク初のゴールキーパー向けキャンプとして、リピーター続出なのが、澤村公康コーチによるゴールキーパーキャンプです。日本代表のシュミット・ダニエル選手の恩師として知られ、サンフレッチェ広島時代には、日本代表の大迫敬介選手を開花させたことでも有名な、澤村コーチによるゴールキーパーキャンプは、2023年12月に開催予定です。サカイクでは、澤村コーチによる「良いGKになるためのポイント」を紹介中。※全4テーマ①失点しないコーチング(味方への指示)②失点しないためのポジショニング③プレーの反応速度を上げる(ステップワーク、プレー予測など)④状況判断能力を上げる※今回はこちらラストとなる今回は④の「状況判断能力を上げる」についての解説です。判断力を上げるために、どのようなことを心がければいいのでしょうか?ゴールキーパーとしてレベルアップしたい小学生に知ってもらいたい内容です。ぜひ保護者の方は記事の内容をお子さんにもかみ砕いて紹介してください。(取材・文鈴木智之)GKキャンプで選手たちと談笑する澤村コーチシュミット・ダニエル選手、大迫敬介選手を育てたGKコーチによるGKキャンプを開催関連記事:GKの反応速度を上げるために大事なのは「人間観察」!?プレーの反応速度を上げるために必要な要素とは■ゴール前での1対1、シュートをキャッチかセーブか、失点しないための状況判断を身につける今回のテーマは「状況判断能力を上げる」です。ゴール前で相手選手と1対1になった時に、どう対応すればいいのか。飛んできたボールに対して、キャッチをするのかパンチングをするのかなど、プレー中に判断をくだす場面はたくさんあります。相手選手と1対1になると、経験の浅いゴールキーパーほど「やばい」「失点のピンチだ」と思ってしまうのではないでしょうか。とくに、ゴールキーパーを始めたばかりのジュニア選手であれば、なおさらです。しかし澤村コーチは「相手選手とゴール前で1対1になることは、ゴールキーパーからするとチャンスです」と笑顔を見せます。「そこで止めると目立つことができますし、相手のチャンスを防いだ後は、こちらのチームに流れが来ることが多いです。1対1はピンチに見えますが、ゴールキーパーのプレーで試合の流れを変えるチャンスなのです」■GKはフィールドの選手より1.5ぐらいアドバンテージがある、と語る理由さらに澤村コーチは「フィールドプレーヤーが1だとすると、ゴールキーパーは1.5ぐらいのアドバンテージがある」と言います。「フィールドプレーヤーは足しか使えませんが、ゴールキーパーは手と足を使うことができます。その時点で、どちらが有利かはおわかりですね。1対1ではなく、1対1.5とイメージしてもらうと、気分的にも楽になるのではないでしょうか」相手にシュートを打たせないように、じっくり守っていると、味方選手がゴール前に戻ってくることもあります。そうなった場合、相手1対こちら2.5とカウントすることができます。それを頭に入れておくと、1対1になったからといって「ピンチだ!」「やばい!」とむやみにボールにアタックに行くのではなく、相手にシュートを打たせないように、簡単には飛び込まない対応をしながら、味方が戻ってくる時間を作るといった選択肢も生まれることでしょう。「ゴールキーパーの役割は『シュートを止めること』だと思いがちですが、大事なのはゴールを守ることです。それならば、時間をかけて味方が戻ってくるのを待ち、連携してゴールを守る、もしくはボールを奪いに行けばいいわけです。その考えはゴールキーパーである前に、ひとりのフットボーラーとして知っておいてほしいです」■GKが主導権を握るために大事なこと前回の記事で「ゴールキーパーのプレーサイクル」を紹介しましたが、相手を観ることは、良い判断をするための第一歩です。澤村コーチは言います。「僕は、プレーの主導権はゴールキーパーが持つべきだと思っています。シュートを打たれるのではなく、打たせる。その気持ちが大切で、主導権を握るためには、相手選手の特徴を把握することもポイントになります」たとえば、相手FWは足が速いのか、遅いのか。小柄なのか、大柄なのか。テクニシャンなのか、そうでないのかによって、得意とするプレーは変わってきます。「相手FWが足が遅いタイプであれば、1対1の場面でゴールキーパーは飛び出さず、じっくり相手を引き込むことで、味方選手の戻る時間を作るという選択肢もあります。それは相手にドリブルをされているのではなく、ドリブルをさせている、つまりこちらが主導権を握っていることになります」試合終盤で相手が疲れているのであれば、相手にドリブルをさせて、疲労によってコントロールが乱れたり、スピードが出ないことを想定して対応するのもいいでしょう。「ゴールキーパーは、試合開始直後に相手の特徴をスカウティングすることが大事ですが、それも判断の精度を高めるためです。これはピッチ内だけでなく、日々の人間観察でも養うことのできる能力だと思います」■良いGKは自分の考えを言葉で伝えることができる澤村コーチは「ゴール前で堂々としているゴールキーパーは、見えているものが多い」と言葉に力を込めます。「なんで、いまそういうプレーを選択したの? と質問をすると、『なぜならば~』と答えを持っています。相手がここにいて、味方がここにいて、時間帯はどれぐらいでと、あらゆる要素を元に判断し、決断する力は、良いゴールキーパーになるために必要不可欠なものです」澤村コーチのゴールキーパーキャンプでは、ピッチ内外でのディスカッションを通じて「考えたことを、言葉にして伝える」ことにも力を入れています。「良いゴールキーパーになるためにはリーダーシップが必要で、それはピッチ内だけでなく、日常生活でも意識できることです。そして前向きな、ポジティブな気持ちを持って、ゴールキーパーというポジションを楽しんでほしいですね」■GKとしてのスキルが上がるキャンプを開催澤村コーチのゴールキーパーキャンプは、今月下旬に開催予定。この記事を読んで、少しでもピンと来たお子さん、保護者の方はぜひ参加してみてください。ゴールキーパーとしてだけでなく、人として成長するためのきっかけを得られるキャンプとして、大好評のゴールキーパーキャンプ。キーパー歴を問わず、サッカーが大好きで、もっとうまくなりたいという気持ちにあふれる選手たちの参加をお待ちしています。子どもたちも成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>>
2023年12月12日サカイク初のゴールキーパー向けキャンプとして、リピーター続出なのが、澤村公康コーチによるゴールキーパーキャンプです。ゴールキーパーコーチとして、およそ30年に渡って活動する澤村コーチは、子どもからトップレベルのプロ選手まで、たくさんの選手を見てきました。教え子にはシュミット・ダニエル選手や大迫敬介選手など、日本を代表するゴールキーパーがいます。また「ゴーリースキーム」という活動を通じて、小学生から中学生、高校生、大学生と、あらゆるカテゴリーのゴールキーパーを指導しています。そんな澤村コーチがサカイクの読者に向けて、オンラインのお悩み相談会を行いました。参加してくれたのは、ゴールキーパーをする小学生のお子さんと保護者の方々。たくさんの質問が飛び出したお悩み相談会から、質疑応答をピックアップして紹介します。澤村コーチがメインコーチを務める「サカイク・ゴールキーパーキャンプ」に興味のある方、ゴールキーパーとしてレベルアップしたい、ゴールキーパーをする子どもの成長をサポートしたいと思う保護者の方々は、ぜひ参考にしてみてください!(文・構成鈴木智之)■24時間の過ごし方が大事Q:息子がゴールキーパーをしているのですが、フィールドプレーヤーとの相性によって、プレーにムラがあります。均一なプレーが続けられるようなマインドの持ち方やコーチングなど、普段から意識することがあれば、アドバイスをお願いします。A:ご質問いただいたお子さんの場合、考え方にムラがあるのか、心の持ち方にムラがあるのか。それによって変わってくるので、一概にお答えするのは難しいのですが、僕が選手に言っているのは「1日24時間の過ごし方や考え方がプレーに出る」ということです。良いプレーができたら調子に乗る、悪いプレーをすると落ち込んでしまう。そのようなマインドを持っていると、一緒にプレーするチームメイトもやりづらくなってしまいますよね。ゴールキーパーは攻守の要であり、リーダーでなければいけません。そのために、ピッチの中での立ち居振る舞いや味方とのコミュニケーションをどうすればいいのか。それを普段から考えながら、1日24時間の活動の中から、メンタルを安定させるような考え方をするように、トライしてもらえたらなと思います。ゴールキーパーにとっては、失点から学ぶことも大切です。ゴールキーパーの世界には「失点から学ぶ勇気」という言葉がありますが、僕はそれを大切にしています。ミスや失点など、次に同じような過ちを繰り返さないために、どうすればいいんだろうと考えることが楽しかったり、コーチにアドバイスを求めることが楽しかったり、連携ミスをしてしまった仲間と腹を割ってコミュニケーションとって、今度は成功させようねという仲間意識を持つことも、サッカーやゴールキーパーから学ぶ、大事なテーマだと思います。うまくいかなかったから駄目ではなく「うまくいくために、次に成功させるためにはどうしたらいいんだろう?」という考えを、選手自身も持っていただきたいと思いますし、保護者の皆様も、失敗の後、次に向かっていけるような、前向きなコミュニケーションをとってもらえたらと思います。■ゴール前で目印を意識しようQ:背が低くて、頭上を越されて失点してしまうことがあります。頭上を抜かれないためのポジショニングのコツを教えてください。A:ジュニア年代のゴールは高さが2メートル、横幅が5メートルです。そのサイズの中で、ゴールキーパーの選手たちは体を張って、チームのためにゴールを守っています。高さが2メートルなので、身長が低い選手の場合、ジャンプをしてもクロスバーに手が触れるか、触れられないかぐらいの感じだと思いますが、頭上を越されないために、ゴールにへばりついてしまうと、相手選手から見たときに、シュートを打ちやすくなってしまいます。 ゴールキーパーがゴールライン付近に立つと、横幅の5メートルがかなり広く見えるので、相手はシュートが打ちやすいのです。とはいえ、前に出過ぎると、横幅は狭められますが、相手からすると高さ(奥行き)が見やすくなってしまうので、ロングシュートを打たれる可能性が高まります。では、どうすればいいのでしょうか?まずは自分の身長や手の長さに合った、最適な立ち位置を知ることです。練習や試合で様々な経験をして「このタイミングでこのポジションをとっていると、ループシュートを打たれやすい」「このタイミングで下がっていると、左右に速いボールのシュートが来てしまう」など、シュート1本、1本から学んでもらえたらなと思います。ポジショニングのコツとしては、PKマークやゴールエリアの角、ペナルティエリアの角などを目印にしておくと、自分がどのあたりに立っているかがすぐにわかります。自分から見て、右側にシューターがいるのであれば、ニアポストを見て、ゴールの位置を確認することも大切です。ジュニア年代の場合、ボールばかり見ながらプレーした結果、ゴールの中心から大きく外れた位置に立っていることもあるので、自分で自分の位置を確認できるように、普段の練習から目印を意識していただけたらと思います。■まずはしっかり立つところからQ:ジャンプ力をつけたいのですが、どのようなトレーニングをすればいいでしょうか?A:小学生年代であれば、ジャンプトレーニングをするのは悪いことではないですが、他に目を向けるべきものがあると感じています。まずは「しっかり立つこと」です。猫背になっていたり、足のどちらかに体重がかかっていたりと、乱れた姿勢で立ってはいませんか?かかとを地面につけたまま、屈伸はできますか?股関節の柔軟性は保たれていますか?太ももの前と裏側、ふくらはぎに柔軟性はありますか?正しく立つことができて、正しく屈伸ができれば、日々のボールに飛びつくトレーニングのなかで、ジャンプ力はつきますし、フィジカルも高まっていくと、僕は思います。小学生年代は筋肉が発達する前段階なので、重いものを持ってジャンプするといった、プラスアルファのトレーニングは必要ないと思います。それよりも、体の動かし方や土台の部分に目を向けてみてはいかがでしょうか。私の大学時代、周りにはバスケットボールやバレーボールの選手がたくさんいました。みんな185cm以上あるような環境でしたが、彼らに共通していたのは、体が大きいにも関わらず、スムーズに、きれいに動くことができていたことです。ゴールキーパーも同じで、日常生活から背筋をしっかり伸ばして、みぞおちを斜め上に引き上げるようなイメージで、頭の上から糸で引っ張られるような立ち方、歩き方を意識してもらえると、良い姿勢になり、トレーニング効果も高まっていくのではないでしょうか。なにより、ゴールキーパーのトレーニングを楽しんでもらえたら、自然とジャンプ力も高まっていくと思います。■サカイク・ゴールキーパーキャンプ、参加者募集中!今回の記事で紹介したのは、お悩み相談会のほんの一部に過ぎません。ですが、澤村コーチが担当する「サカイク・ゴールキーパーキャンプ」に参加すると、お悩みや疑問、上達のアドバイスなどを、直接聞くことができます。それも、リピーターが続出し、参加満足度が非常に高い、澤村コーチのキャンプの特徴のひとつです。「ゴールキーパーとして、もっとレベルアップしたい!」「トップレベルのゴールキーパー指導を受けたい!」「子どものために、ゴールキーパーの知識をもっと知りたい!」など、たくさんのご要望にお応えする、サカイクゴールキーパーキャンプ。一度、澤村コーチの指導を受けに来てはいかがでしょうか?技術、戦術面に加えて、心の成長が期待できること、間違いありません!<PR>サカイクGKスペシャルキャンプ2023冬冬休みは大阪での開催!開催日:2023年12月27日(水)~12月29日(金)集合時間:12月27日(水)12:30解散時間:12月29日(金)12:30予定開催会場:J-GREEN堺(宿泊:DREAM CAMP)定員:20名対象:小学校4年生〜中学生3年生
2023年12月07日サカイク初のゴールキーパー向けキャンプとして、リピーター続出なのが、澤村公康コーチによるゴールキーパーキャンプです。日本代表のシュミット・ダニエル選手の恩師として知られ、サンフレッチェ広島時代には、日本代表の大迫敬介選手を開花させたことでも有名な、澤村コーチによるゴールキーパーキャンプは、2023年12月に開催予定です。サカイクでは、澤村コーチによる「良いGKになるためのポイント」を紹介中。※全4テーマ①失点しないコーチング(味方への指示)②失点しないためのポジショニング③プレーの反応速度を上げる(ステップワーク、プレー予測など)※今回はこちら④状況判断能力を上げる今回は③の「プレーの反応速度を上げる」についての解説です。ゴールキーパーとしてレベルアップしたい小学生に知ってもらいたい内容です。ぜひ保護者の方は記事の内容をお子さんにもかみ砕いて紹介してください。(取材・文鈴木智之)GKキャンプで選手たちに指導する澤村コーチシュミット・ダニエル選手、大迫敬介選手を育てたGKコーチによるGKキャンプを開催関連記事:GKのポジショニングで失点は防げる!「相手にシュートを打たせないGKのポジショニング」とは■小学生からの要望にも多いGKにとっての「反応速度を上げる」、GKの反応速度とは要するに何か?第3回目のテーマは「プレーの反応速度を上げる」です。サカイクでゴールキーパーをする子どもたちにアンケートをとったところ、「反応がもっと速くなりたい」「速く動けるようになりたい」という声が寄せられました。ゴールキーパーにとって「反応速度」とは、どのようなものでしょうか?澤村コーチは「反射神経ですね」と答えます。「周りの動きに対して、自分がどう動くのか。反射なので、考えて動くのではなく、考える前に動く能力だと思います」■日常の過ごし方でGKとしての反応速度も上がる理由大切なのは日頃の訓練であり、日常の過ごし方です。澤村コーチは言います。「サッカーは陸上競技と違って、ヨーイドンのスタートではありません。なので、いかに良いプレーをするために、予測することができるか。それが大切なポイントになります」澤村コーチは「ゴールキーパーのプレーサイクル」を用い、次のように説明します。「反応速度を上げるためには、まずは周囲を観察すること。観ることから始まり、状況を把握することで、予測が生まれます。予測があることで判断しやすくなり、決断→プレーの実行。そしてまた観るに戻るという、ゴールキーパーのプレーサイクルがあります。それをサッカー以外の時間でもやれるようになると、予測力がつき、物事に対しての反応速度も上がっていくと思います」常に周囲を観て、この人は何を考えているのか、何をしようとしているのかについて、思いを巡らせること。これはサッカーから離れていてもできることです。「それはゴールキーパーにとって、すごく大事なことです。相手選手が何をしようとしているのかがわかれば、そうさせないようにすればいい。反対に、仲間はこのプレーをやりたがっているから、あそにボールを出してあげようといったように、攻撃面でも同じように考えることができます」■反応速度を高めるには、人間の基本「正しく立てる」「正しく歩ける」が大事澤村コーチはフィジカル的な側面からも「サッカー以外の時間の過ごし方が大事」と声を大にして言います。「反応速度を高めたいのであれば、まず正しく立てるかどうか。そして正しく歩けるか、正しく座れるか。姿勢と体の動かし方に尽きると思います。子どもたちを観ていても、姿勢が悪い子が多いです」澤村コーチはそれを「カッコ悪いゴールキーパーが多い」と表現します。「グラウンドに来るとき、ユニフォームを着たとき、ゴールマウスに立っているとき。カッコ悪いゴールキーパーが多いです。その子たちをサッカーのトレーニングで成長させるのは当然ですが、ご家庭や学校でも、背筋を伸ばす、正しく座るといったことに、目を向けてほしいと思います」■足指が使えないと踏ん張りが効かず反応が遅くなる立ち方、歩き方、姿勢はサッカーをする上で重要なポイントであり、根底にあるのが「足の指」です。「子どもたちの足の指を見ると、指が動かない、使えない。だから踏ん張りが効かず、反応も遅くなる。みんな良いスパイクを履いて、良いソックスを履いていますが、指が使えない子は多いです」■反応速度を上げるには受け身じゃダメ、気持ちの持ち方で相手に重圧を与えることもできるゴールキーパーの反応速度と一言で言っても、マインドから日々の姿勢、立ち方や足の指の使い方まで、様々なポイントがあります。それらに目を向けて、ゴール前では堂々とした気持ち、立ち姿でいたいもの。それが相手選手へプレッシャーをかけることにもつながります。「反応速度を上げるには、受け身ではなく、前向き、積極的な思考も重要です。シュートを打たれるのではなく、シュートを打たれたとしても、最後の砦である自分(GK)がいるのだから大丈夫。『シュートを打たれたらどうしよう』という気持ちでいると、表情や態度に出てしまいます。そうならないために練習や日常生活から、積極的で前向きな思考を持って、何事にも取り組むようにしてもらえたらと思います」■良いGKになるためのマインドも伝えるキャンプ澤村コーチが指導をするサカイクのゴールキーパーキャンプでは、技術や戦術に加えて、良いゴールキーパになるためのマインドの部分も重視しています。それが「2泊3日の短期間で、うちの子が変わった」と保護者が驚くような成果につながっています。まだ澤村コーチの指導を体験したことのない若きゴールキーパーは、サカイクのキャンプに参加してみてください。いままでにない視点から指導を受けることができ、お子さんだけでなく、保護者にとっても有意義な時間になること間違いなしです。子どもたちも成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>>
2023年12月01日サカイク初のゴールキーパー向けキャンプとして、リピーター続出なのが、澤村公康コーチによるゴールキーパーキャンプです。技術、戦術はもちろんのこと、「良いゴールキーパーになるための心構え」や「ゴールキーパーをするお子さんをお持ちの、保護者に向けたアドバイス」など、ゴールキーパーとして成長するためのヒントをたくさんもらえるキャンプです。日本代表のシュミット・ダニエル選手の恩師として知られ、サンフレッチェ広島時代には、日本代表の大迫敬介選手を開花させたことでも有名な、澤村コーチによるゴールキーパーキャンプは、2023年12月に開催予定です。サカイクでは前回より、澤村コーチによる「良いGKになるためのポイント」を紹介中。※全4テーマ①失点しないコーチング(味方への指示)②失点しないためのポジショニング※今回はこちら③プレーの反応速度を上げる(ステップワーク、プレー予測など)④状況判断能力を上げる今回は②の「失点しないためのポジショニング」について、解説していただきました。ゴールキーパーとしてレベルアップしたい小学生に知ってもらいたい内容です。ぜひ保護者の方は記事の内容をお子さんにもかみ砕いて紹介してください。(取材・文鈴木智之)GKキャンプで選手たちに指導する澤村コーチシュミット・ダニエル選手、大迫敬介選手を育てたGKコーチによるGKキャンプを開催関連記事:良いGKに必要な「失点しないコーチング」を身につけるコツ味方を上手く動かす声かけ・指示とは■GKのポジショニングによって「シュート打っても止められそう」と思わすことができる第2回目は「失点しないためのポジショニング」です。ゴールキーパーの位置によって、相手選手は「シュートが打てそう」「打っても止められそうなので、やめておこう」など判断を変えるほど、大きな影響があります。それほど、ゴールキーパーのポジショニングは大切なのです。澤村コーチはポジショニングについて「セオリーとして、ボールとゴールの中心を結んだ、線上に立つ」と話します。ただしこれは『立つ位置』について限定したもので、試合中ゴールキーパーは常に、スターティングポジションをとり続けることが求められます。「ゴールキーパーがプレーを始める位置のことを『スターティングポジション』と言います。適切な位置に立っていれば、相手選手はシュートを打ちづらいと感じることでしょう」■スターティングポジションをとるときに大事なのは3つ「立ち位置、開始姿勢、体の向き」スターティングポジションをとるときに、重要なことが3つあります。それが立ち位置、開始姿勢、体の向きです。「立ち位置は、ボールとゴールの中心を結んだ線上です。さらに、頭上を越されたときに届く位置、左右どちらのボールにも反応できる位置です。頭上に関しては、身長によって個人差があるので、練習のときから意識して、自分に合った立ち位置を探してみましょう」「開始姿勢」とは、プレーを始めるときの姿勢のことです。「相手が近くにいる場合は、足下のボールに対応しやすいように、肩幅より足を開き、腰を落とします。肩を少し下げ、指先を下に向けて、足下のボールに触りやすい姿勢をとります」さらに、こう続けます。「ボールとの距離がそれほど近くない『中距離』であれば、様々なボールに備えて、やや前傾姿勢のまま、両手は腰のあたりで構え、足幅を肩幅より広めにとることで、動きやすい体勢を作ります」最後に、ボールとの距離が遠いときは「前に跳び出すことも考え、両手を軽く下げて、前後左右、どの位置にも動けるようにすることが大事」と教えてくれました。そして「体の向き」ですが、シュートストップの際は「ボールに対して正対すること」がポイントになるそうです。「そのため、相手の様子を観察しながら、こまめにステップを踏み、常に正対できるポジションをとり続けましょう」以上が、シュートストップにおける技術的なポイントです。■技術だけでなく、大事なことは試合中の「人間観察」このスキルは日常生活でも身につけられる加えて澤村コーチは「大切なことは、試合中の人間観察です」と、言葉に力を込めます。「ボールを持っている選手が何を考えているのか、何をしようとしているのか。それをイメージして、ポジションをとることが大切です。そのためには、サッカーのプレー中だけでなく、日常生活においても、人間観察はすごく大事だと思います」ボールを持っている選手が、シュートを狙っているのか、スルーパスを出そうとしているのか。視線や体の向きなどから察知し、どのようなボールが飛んできてもいいように、常にアンテナを張っておくこと。それが良いゴールキーパーになるための第一歩です。「学校やサッカーの行き帰りで、周囲を観察したり、電車に乗ったときには周囲の人を見たり、友達や先生、コーチは何を言おうとしているのかを観察するのも、ゴールキーパーに必要な能力を高めるために、日々の生活でできることです」■サッカーの技術、戦術はもちろん自分で考えて動けるようになる力がつくキャンプを開催澤村コーチが担当するサカイクのゴールキーパーキャンプでは、サッカーの技術・戦術はもちろんのこと、ゴールキーパーというポジションを、人間的な成長につなげる取り組みを行っています。サカイクの理念は「自分で考えるサッカーを子どもたちに」ですが、2泊3日のキャンプの中で、子どもたちに考えさせるよう働きかけることで、ピッチ内外で必要な力を養っていきます。サカイクのゴールキーパーキャンプは、経験豊富な澤村コーチに直接指導を受けられる絶好の機会です。もっと良いキーパーになりたい。サッカーを楽しみたい、好きになりたいと思うお子さんは、ぜひ参加してみてください。きっと、たくさんの刺激を受けられるはずです。子どもたちも成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>>
2023年11月21日サカイク初のゴールキーパー向けキャンプとして、リピーター続出なのが、澤村公康コーチによるゴールキーパーキャンプです。技術、戦術はもちろんのこと、「良いゴールキーパーになるための心構え」や「ゴールキーパーをするお子さんをお持ちの、保護者に向けたアドバイス」など、ゴールキーパーとして成長するためのヒントをたくさんもらえるキャンプです。日本代表のシュミット・ダニエル選手の恩師として知られ、サンフレッチェ広島時代には、日本代表の大迫敬介選手を開花させたことでも有名な、澤村コーチによるゴールキーパーキャンプは、2023年12月に開催予定です。そこで今回から4回に分けて、澤村コーチに、①失点しないコーチング(味方への指示)※今回はこちら②失点しないためのポジショニング③プレーの反応速度を上げる(ステップワーク、プレー予測など)④状況判断能力を上げるをテーマに、ポイントを教えてもらいました。ゴールキーパーとしてレベルアップしたい小学生に知ってもらいたい内容です。ぜひ保護者の方は記事の内容をお子さんにもかみ砕いて紹介してください。(取材・文鈴木智之)GKキャンプで選手たちに指導する澤村コーチシュミット・ダニエル選手、大迫敬介選手を育てたGKコーチによるGKキャンプを開催関連記事:「ノートを見返すことで周りを見る習慣がついた」センアーノ神戸の選手に聞いたサッカーが上手くなるサッカーノートの使い方■相手にシュートを打たせないGK第1回目は「失点しないコーチング(味方への指示)」です。ゴールキーパーのもっとも大切な仕事は、ゴールを守ることです。相手にシュートを打たせなければ、失点する可能性は限りなく低くなります。澤村さんは「コーチング(指示出し)」の重要性を強く認識しており、これまでの指導経験をもとに、こう話します。「僕はこれまで、育成年代からトッププロまで、38人の監督と仕事をしてきました。その中で38人全員から言われたのが、『味方とコミュニケーションをとって、相手にシュートを打たせないキーパーにしてほしい』ということでした」■味方へのコーチング(指示だし)は「大きく、はっきり、わかりやすく」。「打たせるな」より「寄せろ」が良い理由澤村コーチはコーチング(指示出し)のポイントを、次のように説明します。「大きく、はっきり、わかりやすく。味方に指示を出すときは、この3つを意識しましょう。たとえば、シュートを打たせたくない場面で、味方に対して『打たせるな!』という指示を出しているキーパーを見かけます。はたして、これは良い指示でしょうか?」そう疑問を呈し、次のように続けます。「相手にシュートを打たせないために、味方は何をすればいいのでしょうか? 『打たせるな!』だと、指示が聞こえたとしても、具体的な行動は人によってそれぞれです。それならば、ボールを持っている選手に対して『寄せろ!』という指示の方がわかりやすいです」寄せろ! という指示を聞いた選手は、相手との距離を詰めるようになります。結果としてシュートを打たれたとしても、足に当たる可能性が高くなりますし、シュートコースを塞がれていることを察知したシューターは、シュートではなくパスを選択するかもしれません。「『寄せろ!』は語尾の母音が『お』なので、声を発しやすく、体に力がみなぎりやすいです。このように、ゴールキーパーが発する言葉ひとつで、味方も、自分もプレーがしやすくなることを、キーパーを始めたばかりの子たちに理解してもらいたいと思っています」■DFラインを上げて欲しい時は「下がるな」ではなく......また試合中、ゴールの近くでボールを持たれたくないので、ディフェンスラインを上げてほしい場面があります。「そのとき、ディフェンスの選手に『下がるな!』と声をかけているキーパーをよく見かけます。『下がるな!』は『下がる』という動詞に『な』を加えて、否定する言葉です。試合の緊迫した状態で『下がる』と『下がるな』を聞き分けるのは難しいですし、最後まで聞かないと、『下がる』なのか『下がるな』なのかがわかりません」では、ここで問題です。ディフェンスラインを下げさせたくないときに、どのような指示を出せばいいでしょうか?「僕は『止まれ!』を推奨しています。人間は止まれと言われると、その場にとどまろうとします。結果、ディフェンスラインをずるずる下げることはなくなります。『止まれ!』は短くて発しやすく、言われた方もどうすればいいかが瞬時に理解できますよね。大きく、短く、わかりやすく。これがコーチング(指示出し)のポイントです」■わかりやすいコーチングは、親との会話など日常生活で意識することができるわかりやすいコーチングは、サッカーの場面だけでなく、日常生活からも意識することができます。「たとえば、親御さんと話をするときや、監督・コーチ、学校の先生から質問をされたときなど、わかりやすく、はっきりと大きな声で簡潔に話すように心がけると、試合のとっさの場面でも出せるようになってきます。大事なのは、日々の積み重ねです」澤村コーチのゴールキーパーキャンプでは、ピッチ内でのトレーニングはもとより、日常生活やピッチを離れたときに、仲間同士でどのようなコミュニケーションをとるか、あるいは親子でのコミュニケーションなど、ゴールキーパーとして成長するために、多角的なアプローチをしています。「お子さんもそうですが、見学に来てくれている保護者の方も、とても満足してくれています。それはすごく嬉しいことですし、キャンプで学んだことを家に持ち帰って、家庭や日々の活動で意識していってほしいと思っています」■GKとしてもっとレベルアップしたい子におすすめのゴールキーパーキャンプを開催リピーター多数、参加満足度も高評価の澤村コーチによる、ゴールキーパーキャンプ。「ゴールキーパーとしてもっとレベルアップしたい」「将来はプロになりたい」と思う子は参加してみてください。多数のプロを指導し、本物を知る澤村コーチから学べることはたくさんあるはずです。子どもたちも成長を実感!サッカーが上達するサッカーノート>>
2023年11月10日チームの人数はそこそこいるけど、GKをやりたい子がいない。試合では仕方なく2,3人に順番でGKをしてもらっているが、どうしたらいい?褒め続けて固定のGKを作るべきか、今のように順番で回すべきか......。と悩むコーチからのご相談をいただきました。同じような悩みを抱えるチームもあるのでは?今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ご自身が現在指導している現場の例や、元日本代表監督オシムさんのエピソードを交えてアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<技術や熱量の差で3学年ミックスの縦割りグループ分け、学年ミックスで気を付けないといけないことは?<お父さんコーチからの質問>こんにちは。ほとんど少年団のような街クラブで3年生を教えています。隣の市と隣接するエリアなので、市をまたいで入団してくる子も多く、人数はそこそこいるのですがキーパーをやりたい子が同学年にいないため、試合では仕方なく、2、3人を順番にキーパーとして出場させています。うまく褒め続けて固定キーパーを作るべきか、今までのように順番にやっていくべきか、良いキーパーを育成するためにはどちらが良いのでしょうか?<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。例えばドイツには、全員がゴールキーパーを経験できるシュートゲームにした練習があります。攻撃をしていてボールを取られると、その子がキーパーをします。シュートを止められても同じ。そうするとみんなにチャンスが出てきます。楽しくやれるシュートゲームなので、キーパーは嫌だという空気感がなくなってくる設定です。このように、私は育て方ひとつで変えられると考えます。■全員に全部のポジションを経験させる大人がGKを押し付けないこと私は小中学生のチームを持っていますが、ポジションを固定せずに毎回替えていきます。フィールドのポジションもみんなが毎試合替わります。そうすると、子どもたちから「僕はキーパーはやりたくない」といった苦情が出ません。みんなが全部のポジションを経験するのが当たり前の世界になっているからです。しかも、そのようにしていると、今度は反対に「もう一度キーパーをやりたい」という子どもが出てきます。そこで私が「この子、もう1回やりたいって言ってるけど、みんなどうかな?」と尋ねます。それでみんながいいよと言えば、じゃあ2回目やってみようかとなります。ただし、2回目まで。そのままひとりが続けることはありません。このように、本当に自分からキーパーをやりたいという意欲を見つけてあげたほうがよいでしょう。くじ引きで外れた子がキーパーをやるとか、大人が「悪いけどキーパーやってくれないか」などと誰かに押し付けたりしないほうがいいのです。キーパー問題だけが理由ではありませんが、子どものポジションを固定しないことが重要です。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■芝のグラウンドで試合するときがチャンス!土では転ぶと痛いことを大人が考慮しよう加えて、子どもたちがサッカーをする環境にも影響されます。近頃はどの都道府県も人工芝のグランドが増えています。人工芝で試合をするときがひとつのチャンスです。セービングして転んでも痛くないし、服も汚れない。そういう機会にウォーミングアップで全員ゴールキーパーの練習をすると良いでしょう。日本はほとんどが土のグラウンドで練習するので、子どもたちは珍しくて喜んでやると思います。ジェフ時代は、天然芝のトップチームの練習場で小学生の大会をたくさんやっていました。オシムさんが全く問題ないとOKしてくださるので開催できました。そのときはゴールキーパーはいつでも交代してOKにしていました。キーパーをする子はとても楽しそうでした。そんな姿を見ていると、海外はまさしく芝生が日常なので、優秀なキーパーが育つのかなと感じました。大人は、子どもたちが転ぶと痛い土の上でキーパーをしなくてはいけないことをもう少し考慮して欲しいと思います。以前、ある場所で行われたサッカークリニックに子どもたちを連れて行ったときのことです。暑い日なので子どもたちは半袖でした。グランドも土です。でも、クリニックをやる人はそこでセービングの練習をさせました。ケガだらけになることを予測できないのです。■GKにも足元の技術がなくてはいけない日本はGK指導そのものが遅れているゴールキーパーの育成を考えるとき、日本の指導者はどうもキャッチングのことばかりに気をとられている気がします。ボールをキャッチしたら、次はどこに投げたほうがいいとか、どう処理するか。攻撃するときはどこに渡したらいいのか。もしくは、状況によって自分はどこにポジションをとればいいのか。そのようなことに目を向けてほしいのです。以前から、日本はキーパーの育成が他国より遅れていると指摘されています。その要因のひとつが指導そのものが遅れていると言えます。また、キーパー練習と言ってキーパーとフィールドの選手の練習を分けるチームがありますが、小学生のうちは一緒の練習をしてもらいましょう。現代サッカーは、みなさんW杯を観てお気づきかと思いますが、キーパーにも足元の技術がなくてはいけません。相手がいくらプレッシャーをかけてきても、フィールドの選手たちはそういう中で正確なパスが出せる。精度の高いキックができることが重要です。であれば、キーパーにその能力があれば、実はビルドアップするときに非常に有利だということです。■オシムさんが変えた「GKの理想像」(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)私がジェフで育成に携わっていたころ、オシムさんが監督に就任されました。当時からオシムさんは、キーパーもフィールドプレーヤーのような足元の技術とサッカーの認知が必要だと説いていました。当時のゴールキーパーやコーチたちは、キーパーの理想像みたいなものを一変させられたそうです。オシムさんが来てから、キーパーたちのウォーミングアップが変化しました。それまでキャッチングからスタートしていたのに、キックから始めるようになったのです。それをJリーグのいくつかのチームも真似をし始めました。ドイツ代表のノイヤーが誕生していない20年前のことです。小学生は全員がさまざまなポジションを経験する。足元のスキルを磨く。そのようなことを考慮して指導をしてください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2023年03月25日チーム事情で上の学年に駆り出されてキーパーやらされているけど、本人は「キーパーは絶対やりたくない」と言う。春からは同学年のチームでもキーパーになりそう。人見知りだから今のチームで続けたいけどキーパーは嫌という息子。親も楽しかったサッカーが嫌なサッカーになってほしくない。どうしたらいい?とのご相談をいただきました。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの子育てと取材で得た知見をもとに、お子さんをサポートするために必要なことをお伝えします。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<下手くそと言われ「おまえはそんなに上手いのか?」と返す弁が立つ息子に困ってます問題<サッカーママからのご相談>小4(9歳)の息子が所属しているのはそんなに強くないチームですが、その中ではセンターバックのポジションでチームの中では一番走り回って頼りになる存在です。ですが、来年度のチームは学年が上がり5、6年チームになるのですがキーパーがいないのでうちの子がかり出されてキーパーをやらされています。本人は絶対キーパーはやりたくないと言います。フィールドを走り回るサッカーが大好きでキーパーは全然面白くないと言います。でもコーチが怖くていえないと言っています。このままでは学年上がったらキーパーにさせられそうです。でも親が口出すのは憚られそうで移籍も視野に入れております。本人は人見知りで出来ればこのチームで続けたいけどキーパーは嫌なのです。どうしたらいいのかわかりません。楽しいサッカーを嫌なサッカーにさせたくありません。アドバイスお願いします。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。まず、ゴールキーパーというポジションについてお伝えしておきます。例えば日本では、子どもがサッカーを始めたら、ボール、トレーニングシューズ(トレシュー)やスパイク、そしてどこかの欧州クラブか代表のユニフォームを練習着として買ってあげる親御さんが多いです。一方ドイツでは、ボール、スパイク、キーパーグローブを購入すると聞いたことがあります。ドイツでカーンやノイヤーなど世界的なゴールキーパーが生まれていることからも、キーパーが人気のポジションであることがわかるかと思います。■欧州ではキーパーは人気ポジションなのに、日本ではネガティブなイメージを持たれているドイツや欧州ではゴールキーパーの役割がいかに大きいものかを、指導者、保護者ともに理解しています。そこが、サッカーがプロ化されてまだ30年の日本と、100年以上の歴史を持つクラブがひしめく欧州との大きな違いだと考えられます。さらにいえば、サッカーは小柄ですばしっこい子どもがやるスポーツという先入観もあって、身長が高かったり体の大きな子どもはバスケットボールや野球を選択します。そんな要素も相まって、キーパーというポジションが過小評価されているのかもしれません。このようにキーパーというポジションへの価値が乏しい一部の指導者は、試合に勝つために「大きくて動ける子ども」にずっとキーパーをやらせたり、消去法のように「フィールドではあまり動けないからキーパーでもやらせるか」という考え方になりがちです。本来なら小学生のうちにさまざまなポジションを経験してもらって、サッカーがどんなスポーツなのかをしっかり理解してもらうことが必要なのに、どうしても試合に勝つことが何より優先されてしまうのです。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■他の子もキーパーをやりたくないかもしれない、その場合の解決策をコーチに提案してみるそのような風土で息子さんも育っているわけなので「キーパーをやりたくない」という感覚を抱くのは仕方のないことでしょう。ただ、息子さんに「自分も嫌なんだから他の子たちも嫌かもしれない」という視点はないでしょうか。そこはお母さんが「君が嫌なら他の子も嫌なんじゃないかな?」と考える糸口を与えてもよいかと思います。だったら、どうすればいいかな?そんな問いかけをしてみてください。そこが第一段階です。おのずと「試合ごとに交替してキーパーをやる」という答えが出てくるかもしれません。もしもそういった結論に達したのであれば、息子さんと一緒にコーチと話してみてください。ここが第二段階です。キーパーは全員で交替でやれないか。小学生のうちはさまざまなポジションを経験させてほしい旨を伝えるのです。本来なら息子さんに任せて自分で言えるといいのですが、コーチが怖くて言えないということなのでお母さんが付き添ってはいかがしょうか。メールの文章だけなので、どんなクラブでどんな方針で指導なのかはうかがい知れません。ただ「親が口出すのは憚られる」とあるので、お母さんにとって自由に意見を言えるようなクラブではないのでしょう。コーチに言うのが難しいというのなら、とりあえず第一段階までやってみて、しばらくは息子さんに任せてみてはいかがでしょうか。■このチームにいたいけどキーパーは嫌、は子どもの問題親が転ばぬ先の杖を用意せず、見守ってご相談文に「どうしたらいいのかわかりません」と書かれていますが、本人が「もう嫌だ。このチームでやりたくない。僕は他のチームを探す!」と立ち上がるまで何もしなくていいと思います。「人見知りで出来ればこのチームで続けたいけどキーパーは嫌」これは息子さんの問題です。また「楽しいサッカーを嫌なサッカーにさせたくありません」とありますが、嫌なサッカーだからどうするか?を決めるのも息子さんです。今のお母さんの心情を察すると、転ばぬ先の杖を用意しようと一所懸命に見えます。「チームの中で一番走り回って頼りになる存在」なのに「キーパーをやらされるなんて悔しい」。そんな負の感情が、お母さんの中にあるかと思います。もちろんそう感じるのは当然です。かわいいわが子ですから自然なことです。私もかつてはサッカー少年と少女の母親だったのでよくわかります。とはいえ一番良いのは、息子さんが自分で「キーパーは交替でやりたい」と仲間やコーチに提案できることです。お母さんが「人見知りだからそんなことできない」と信頼できなければ、息子さんはそこから一歩踏み出すことができません。ゆっくりでよいので、背中を押してあげられたらと思います。■移籍を考えるタイミングは、我が子がそうしたいと言ってきたとき(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)それでも、所属されているクラブが交替でキーパーをやってみんなが試合に出られるよう工夫してくれない。もしくは息子さんが別のクラブでやりたいと自分から言ってきたら、そこで移籍を考えればいいことだと思います。ただし、移籍したとて、次もキーパーをやってと言われるかもしれません。お母さんにとって大事なことは、周りの環境に振り回されず自分を持った子どもに育てることです。息子さんが自分の意思を他者に伝えることができ、なおかつチームのことを考えられる人間になる。そのためにどうしたらよいかを、一緒に考えてあげられるお母さんでいてほしいと私は思います。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2023年01月25日これまで関東・関西で4回に渡って開催し、好評を得ているのが、小学校高学年向けに行うサカイク主催の「GKスペシャルキャンプ」です。日本代表のシュミット・ダニエル選手、大迫敬介選手ら多くのJリーガーを指導してきた澤村公康コーチの指導を2泊3日で学べるのが、キャンプの特徴で、未来の守護神たちが確かな成長を遂げてきました。今回は、愛知県に住む矢野匠海くんが感じたGKキャンプに3度参加し、感じた変化を聞きました。(取材・文:森田将義)【春休み開催】元JクラブGKコーチが指導「GKスペシャルキャンプ」>><<過去の参加者たちの声、GK指導を受けたシュミット・ダニエル選手のコメントなど■「もっと上手くなりたい」から参加を決意保育園の頃に友だちから誘われてサッカーを始めた匠海くんは小学生になり、サッカースクールとフットサルでプレー。2年生になるとそれだけでは物足りず、近所のサッカーチームでもプレーを始めました。3年生に上がったタイミングで、「仲間と仲良くプレーするのが楽しかった」とGKへの転向を志願しましたが、ミニゴールでプレーしていた低学年とは違い、ゴールのサイズが大きくなったため、始めた当初は思うようにシュートを止められなかったと振り返ります。最初は同学年のライバルがスタメンを掴んでいましたが、幼少期に磨いた足元の技術を期待され、5年生になったタイミングでスタメンを獲得。「もっと上手くなりたい」と考えていたタイミングで、お父さんから教えて貰ったのが、サカイクGKキャンプでした。■しっかりキャッチするための具体的なコツを学べた初参加となった2020年の夏のGKキャンプは、匠海くんにとって刺激的な3日間になりました。日々の練習はライバルとの2人でチームのGKコーチから教わったメニューに取り組むのが基本的な流れ。ですが、GKキャンプでは澤村コーチらがGK指導のプロが自らシュートを打ち、アドバイスを貰えます。また、シュートを止める度に誉めるなど、選手のやる気を引き出す指導も一流。「単純なトレーニングですが、単純さの中に駆け引きがあった。『こうすれば、もっと良くなるよ』といったアドバイスも貰えるので、凄く勉強になりました。ただキャッチ出来れば良いのではなく、しっかりキャッチするための具体的なコツを学べました」。■「声の質」などコーチングの細部まで教わった「元々セービングが得意ではなかったけど、ボールを止める喜びを学べたし、1個のボールに集中できるようになった。自分の中で変化を見つけられたのでもっと行ったら、もっと成長出来ると思った」。そう振り返る匠海くんが、2度目のGKキャンプに参加したのは、2020年の冬。緊張で他の参加者に話しかけられなかった1回目とは違い、自ら積極的に話しかけ、県外の選手と仲良くなれたそうです。心にも余裕が生まれ、コーチが言ってくれる言葉も頭に残るようになりました。元々、匠海くんは声の大きさには自信があるため、コーチングを武器にしたいと考えていましたが、なかなか機会がなく、YouTubeで勉強するしかありませんでしたが、澤村コーチに「声の質」などコーチングの細部まで教わる事が出来ました。また、自身がプレーしていない際も、小学6年生のキャッチングの丁寧さや、コーチングの声や質を見て盗み、成長のヒントを掴みました。■一番変化したのはメンタル面、試合中下を向かないようになった6年生になった昨夏には、3回目のGKキャンプに参加。「最高学年なので、年下の子も多い。恥ずかしいプレー、イージーなミスはしないように気持ちでプレーしました」と振り返る匠海くんは、GKキャンプの特徴である普段家ではしない洗濯だけでなく、ミーティングやサッカーノートへの記入も前向きに取り組みました。3回のGKキャンプによって感じる一番の変化はメンタル面。他の選手と比べ小柄な匠海くんは、高い位置へのシュートを苦手としており、失点が続くと気落ちしがちでした。GKキャンプでも複数失点し、試合後に落ち込んでいると澤村コーチにメンタル面の重要性を教えて貰ったのが、印象に残っていると言います。「試合中に下を向いていたら、プレーに集中できない。チームが悪くなるので、試合中は下を向かないようになった」。■親が感じた息子の変化「責任感を持ってGKをやれるようになった」「苦手な所は気持ちでカバーするしかない。届かない球にあと少しで届くというのはよくあるので、止められるという気持ちがあれば変わってくる」と考えられるようになったのもGKキャンプによる変化です。お父さんは「参加してから、責任感を持ってGKをやれるようになった。今までは控えめだったけど、GKというポジションは自分が前に出て、しっかり先頭に立って統率していかければいけないシーンもある。そうしたシーンで責任を持ってプレーできるようになった」と成長を話します。■自信を無くしている子が「もう一度頑張ってみよう」と思えるキャンプ「どれだけ技術があっても、勇気がなければボールは獲れない。GKは非常にメンタルが大事なポジションで、澤村さんは特にGKのメンタルを凄く強化してくれるコーチだと感じています」と話すお父さんはお互いに高め合えればと考え、過去3回のGKキャンプいずれも、知り合いのGK友だちを誘っています。「澤村コーチは凄く盛り上げるのが上手なので、GKをもうやりたくないと自信を無くしている子が、もう一度頑張ってみようと思うには非常に良いキャンプだと思いました。気持ちが落ちている子こそ積極的に参加してもらいたい」(お父さん)。「技術面だけでなく、心から高まっていくキャンプでメンタル的に凄く刺激がある。良いライバルや仲間がいると競い合えるので仲間で行くのが良いと思います」(匠海くん)。■上手くなりたい、自分を変えたいGKの参加を待っていますそう声を揃えるGKキャンプは2022年3月31日(木)から4月2日(土)に千葉県のアルビンスポーツパークで開催予定です。上手くなりたい、自分を変えたいと思っている小学生はぜひ、参加してみてください。【春休み開催】元JクラブGKコーチが指導「GKスペシャルキャンプ」>>
2022年02月04日小3からゴールキーパーのレギュラーだったのに、隣町からエース級の子たちが入団してきた影響でベンチに。ずっとキーパーとしてやってきたので、フィールドプレーヤーとしてのテクニックがなく、控え選手として出場することもない。勝利至上主義で、上手い子が偉いというカーストができている。努力は報われると教えてあげたいが、何が正解かわからない。というお悩みをいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに心を軽くするアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<贈り物をする親の子をえこひいき。暴力暴言もあるコーチを何とかしたい問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。よろしくお願いいたします。現在小6の息子は3年生から主にキーパーとして日々頑張っています。4年生の終わり頃、隣町からエース級の子が3人入ってきて、それまでいつもスタメンで出ていたフィールドの子が押し出し式で控えになる機会が多くなりました。そして、その中でも運動神経のよいフィールドの子がキーパーに回され、いつもキーパーをやっていた息子はベンチに座っていることが多くなりました。3年生からキーパー練習メインでやってきたので、フィールドのテクニックは正直言って他の子より劣ります。なのでフィールドの控えとして出場する機会もなく、キーパーの控えでずっとベンチを温めている状態です。勝利至上主義のチームで、指導者から子どもたちに対しての心の指導がありません。親も口出し禁止のルールがあります。勝つことがすべて。強いことがすべて。上手い子が偉い、上手くない子は偉くないというカースト制が生まれ、主導権のある上手い子が好きな子指名してチームを作り紅白戦をしています。いつも最後に指名される子は決まっています。 月一回、県主催のキーパートレーニングがあり、息子もぜひ参加したいということで、車で2時間かけて参加し、専門的なトレーニングを受けてきました。どんどん上達していく息子。すごく自信がついたようです。県内のキーパーの子との交流も深まりいい経験になったなとうれしく思いました。そして、全国大会の県予選が始まりましたが、息子はやはりベンチです。「試合に出なくても、みんなのために自分ができることを探して頑張れ!」息子にそう伝えました。ひたむきに休まず練習に行って、専門的な練習をして頑張っても、実力主義のチームではベンチです。頑張っている息子は子どもたちの中では雑魚扱いです。指導者もそんな空気スルーです。このわだかまりをどうしたらいいのか、努力は報われると息子に教えてあげたいのですが、何が正解かもわからなくなってきました。母親としてどうすればいいのでしょうか。教えていただきたいです。<島沢さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。見守る側も辛いですね。母さんの悲しみ、頑張りやの息子さんを思う気持ちはお察します。お気持ちはわかるのですが、今お母さんが私に訴えられている内容すべてに共感できないなあというのが正直なところです。■息子さんがレギュラーの時も「出られない子」がいたはず、まずは親の心構えを変えよう頑張っても実力主義のチームではベンチ。競争に敗れた息子さんは雑魚扱い。指導者もそんな空気。そういった負の現実に心を痛め、「このわだかまりをどうしたらいいのか」と書かれています。ここに少しばかり疑問がわいてきます。お母さんは、チームがすべての子どもを平等に扱い、サッカーの楽しさを伝え、心身共に成長させる指導だと理解していたのでしょうか?もし、そうであれば、この扱いに動揺してしまうのはわかります。しかしながら、3年生から主にキーパーとして4年生の終わり頃に隣町からエース級の子が入ってくるまではレギュラーだったわけですね。実力主義のチームなので、すでにその当時他に補欠の子どもや試合に出られない子がいたはずです。できればお母さんの息子さんへのマインドセットを変えましょう。ここでいうマインドセットとは「サッカーをする息子に対しどう向き合っていくか」という心構えです。そこで、ひとつアドバイスさせてください。■自分の子を「弱い人」グループに入れたくない気持ちはわかるが......「努力は報われる」と親が教える必要はないと私は考えます。お母さんは、もしかしたら、とても頑張り屋さんで、子どもの頃からやってきたことやトライしてきたことで成功を収めてこられたのではないでしょうか。そんな成功者がもちやすいものに「生存者バイアス」という概念があります。例えば、交通事故の生存者の話を聞くと、私たちは「あの事故はそれほど危険ではなかった」と判断してしまいがちです。話を聞く相手が全て「生き残った人」だから、そう感じてしまうわけです。そう考えると、お母さんがもし勝ち抜いてこられた方なら「努力すれば報われる」と感じてしまうのは当然です。例えば、スポーツ経験のある親ほど「あの厳しい実力主義の世界を乗り越えたからこそ今の私がある」と思い込みがちです。そうなると、サバイバルした人は途中で脱落した仲間を「弱い人間」と見なすので、自分の子どもを「弱い人」のグループに入れたくありません。■一番大切なことは、前向きに取り組むプロセス私などは、サバイバルできなかった人間です。バスケットボールをしていて、高校時代まで全国大会にレギュラーで出ていました。しかし、大学ではベンチには入れましたが、レギュラーにはなれませんでした。精一杯努力したとも思えませんが、だからといって120%頑張ったとしても活躍できなかっただろうと思います。スポーツをすることで「頑張っても報われないことがある」という現実を知りました。これは勝ち負けが明確なスポーツで得られる、大きな学びのひとつでしょう。じゃあ、届かないと思えば頑張らなくていいのかといえば、それは違いますね。一番大切なことは、頑張って報われることではなく、結果が出なくても「前向きに取り組むプロセス」です。■どんな状態ならサッカーに前向きになれるのかではどんな状態なら前向きになれるのか。それはサッカーが大好きなこと。仲間やチームやコーチが大好きなこと。そして、サッカーを楽しめる自分が大好きなこと。それらが前提としてあってこそ、初めて前向きに取り組めるのです。したがって、お母さんに考えてほしいのは、息子さんがどうしたらサッカーを楽しく続けられるかということです。私が上述したのは、あくまでも大学時代の話です。小学生時代は、実力主義などではなく、試合の出場機会を平等に与えてくれる、指導の本質を理解し、実践しているクラブに預けてほしいと思います。サカイクの読者さんであれば、さまざまな読み物や情報でそのあたりは伝えられているので、たくさん勉強できると思います。■子どもに対しての間違った接し方、扱いとはまた、「何が正解かもわからなくなってきました」とあります。子育てに「これが正しいやり方だよ」といった正解はありません。子どもはそれぞれ違うからです。ただし、「間違い」は共通しています。これは、サッカーの指導も同じだと考えます。子どもにしてはいけないこと。福祉や教育の世界で言う「ミス・トリートメント」(間違った接し方、扱い)は、以下のようなものです。暴力。暴言。子どもを委縮させること。誰かと比較するなどして傷つけること。人権を軽んじたようなパワーハラスメントをすること。セクシャルハラスメントなどなど、たくさんあります。■子どもがサッカーを楽しめているのか、きちんと「傾聴」しよう(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)いま、日本でジュニア(小学生)の指導がどのような方向性をもって行われているのか。そこもぜひ勉強してみてください。日本サッカー協会のホームページにも、子どもに対する大人の理想的な態度や在り方が書かれています。その内容はもしかしたら、息子さんが所属するクラブとは違うかもしれません。とはいえ、もう小学6年生の3学期も間近です。息子さんとよく話して、サッカーを楽しめているのか、どんな気持ちなのかをきちんと傾聴してあげましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年11月24日サッカーにおけるゴールキーパーは、ピッチ内で中唯一手を使用できるなど、フィールドプレーヤーとは特徴が大きく異なります。そのため、プレーに関する用語も聞き慣れないものが少なくありません。この記事では、キーパーの「ファンブル」とはどのようなプレーなのかその概要について解説します。キーパーをやっているお子さんがいらっしゃる方はぜひ参考にしてみてください。ファンブルとはファンブルとは、ゴールキーパーが相手のシュートなどを一度はボールをキャッチしたものの、落としてしまうことです。ファンブルは、サッカーにおいて一般的に使用されている言葉ですが、サッカー以外の球技スポーツにおいても使用されています。ファンブルするとどうなる?ゴールキーパーがファンブルすると、ピンチを招く可能性があります。これはシュートを打つ場合、基本的に相手選手はゴール前につめてくるためです。そのため、試合中、特にゴール前の混戦時などは、ゴールキーパーはファンブルを避けなければいけません。ファンブルはどういう時に起こる?ファンブルは試合中のさまざまな場面で起こりますが、特に無回転ボールによるブレ球シュートや回転がかかったシュートをキャッチしようとするときに起こりやすいとされています。また、クロスやコーナーキックのボールをジャンプしてキャッチしようとしたものの、ファンブルしてしまうケース、スピードのある力強いシュートのキャッチを試みようとした時などにもファンブルするケースなどもあります。そのほかにも、雨の日の試合は手が滑りやすくなるため、ボールを落としやすくなっているため注意しなければいけません。ファンブルしないためのポイント勝敗にも大きく影響する恐れのあるファンブルは、絶対に避けなければいけません。ここでは、ファンブルをしないための基本的なポイントについて解説します。キャッチできるかどうかを素早く判断するファンブルをするケースの1つに、キャッチが難しいボールを無理してキャッチしようとしたためにボールを落としてしまうというものがあります。このようなケースは、ボールをキャッチできるかどうか素早く判断できれば回避することができるでしょう。例えば、無回転ボールのシュートを打たれた場合でも、キャッチングではなくパンチング(フィスティング)や、手のひらの固いところではじくディフレクティングなどで回避することもできます。キャッチングできるに越したことはありませんが、失点しないことが一番大切であるため、適切な判断を素早く下すようにしましょう。判断力を磨くためには、実戦経験を積むことも欠かせません。試行錯誤しながら取り組んでみてください。キャッチングの正しい方法を学ぶ正しいキャッチング方法を理解することも大切です。例えば、ゴールキーパーの中には、ボールの大きさを正しく把握できておらず、キャッチングの形を作る際に、ボールの大きさよりも大きい形で手を構えるケースが少なくありません。またボールを怖がり、ちゃんと見ていないためにキャッチできないケースもあります。そのため、ボールの大きさを覚えさせ、適切な大きさの形で構えられるようにする、ボールをしっかりと見るようにするなどキャッチングをするためのポイントを知ることが欠かせません。まとめ今回は、ゴールキーパーのファンブルについてその概要から、起こりやすいシーン、ファンブルをしないためのポイントなどについて解説しました。サッカーにおいて1回のファンブルで試合に負けてしまう可能性は十分にあるため、ゴールキーパーは適切な判断をすること、キャッチングの正しい方法を学ぶことなどが大切です。ぜひ今回の内容を参考に練習に取り組んでみてください。
2021年04月26日ボールを奪いに行ったり、近くの味方が抜かれた時は相手選手を追いかけるけど、それ以外の場面で連係プレーが少ない。DFとGKが連携してプレーできるようになってほしい、プレーのイメージを共有してお互いの声かけができるようになるにはどう指導したらいい?という質問をいただきました。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、今回も具体的なトレーニングの例を挙げてアドバイスを送ります。参考にしてみてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<相手やボールとの距離感が理解できない小6、中学入学までに幅と深さの意識を身につけさせる練習を教えて<お父さんコーチからの質問>いつも連載を拝見しています。指導年代は小学生年代全般ですが、今シーズンは主にU-12を見ています。相談したいのは主にDFとGKの連係イメージを共有させることと、お互いの声かけ(コーチング)についてです。ボールを奪いに行ったり、近くにいた味方が抜かれたときに一生懸命相手選手を追いかけるなどのフォローはできていますが、それ以外の選手の動きが連動できていません。もっと連動して守備ができるように指導したいと思い、いくつかのパターンを用意して練習しているのですが......。最近では小学生年代でも自分たちで戦術を決めて試合に臨むチームもあるようで、私たちもそうなりたいと思っています。何より、自分たちで考えられる力をつけてほしいのです。どんな時にピンチになるか、どんな時がチャンスなのかを理解して、お互いに声をかけあって欲しいのですが、その辺の理解を促進するトレーニングがあれば教えてください。<池上さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。ゴールキーパーとフィールドプレーヤーとの連携を高めるには、試合やミニゲームでの攻撃の際にキーパーにビルドアップに加わるよう指示することです。■まずは連携の感覚を養うキーパーはゴールキックを蹴ることなく、なるべくサイドバックかストッパーに出すように言います。そこで相手がボールを奪いに来たら、またすぐキーパーに返せば取られません。そして、キーパーはまた、センターバックやサイドに出せばいいのです。最初はゆっくりと回すようにします。まずはそういうことをして「連携している」という感覚を養ってください。それをやってくと、次に「守る時も同じだ」ということに気づきます。誰が誰がボール保持者に最初にディフェンスに行くのか。カバーはどうするのか。だんだん見えてくるので、最後尾にいるキーパーからもコーチングの声が生まれてきます。ところが、これを守備から入ってしまうと、どうして守ることに意識が向いてしまいます。したがって、必ず攻撃から入って相手の先手を取る方法さえ知れば、スムーズにできるようになります。■トレーニングでの状況設定のしかたでは、練習はどうするか。まずは2対1の状況をつくればボールを取られないことがわかります。相手トップがボールを奪いに来ても、サイドバックがいて、センターバックもいるので取られません。例えば4バックなら、守備4人とキーパーがいて相手2人という5対2の状況設定でトレーニングをします。逆にディフェンス側から見たら、数的不利の時にどう守るかをここで練習できます。6年生くらいになるとそんな練習をしていく必要があるのですが、このようなビルドアップトレーニングを実際に行う人は少ないようです。すぐ試合をしてしまい、そこでやろうとします。ところが、試合になると相手に取られたらいけないと怖くなるので、焦ったキーパーやバック陣がすぐに前線に大きく蹴ったり、ミスをしてしまいます。ですので、同じ状況が何度も出てくるような設定をつくって、練習をさせてください。■攻撃と守備どちらが先か、ではなく両方一緒に高める練習のスタートが2対1で、それをベースに考えていけると、問題なくビルドアップできるようになります。例えば、相手ボールでスタートする。さあ、どういうふうに守りますか?次にディフェンスをしていてボールを奪ったら、攻撃に転じます。前進できるようつながないといけません。ところが、つなぎ方を知らないと、また取られる。つまり、守り方を知っていても、奪ったボールをつなぐことを知らなければ、取られ続けることになります。よくコーチ同士で「攻撃を先に覚えるのか、守備が先か」という話になります。いい攻撃をしてくれると、守る側は守備力を磨けます。守備力がアップすれば、そこをこじ開けなくてはいけないので、つなぐ力やアタックのスキルは向上します。鶏が先か卵が先かという話と似ていますが、両方を一緒に高めていくことを目指します。守備の場合、ファーストディフェンダーがまずはボールを奪いに行って、次はセカンドがいくというかたちで、全体で連動します。ところが、日本の少年サッカーの場合は、ファーストディフェンダーがボールを取りに行きません。このアプローチのところで、コーチの皆さんは「飛び込むな」と選手に言ってしまいます。でも、取りに行かないと取れません。相手は、プレッシャーを感じずに自由に何でもできてしまいます。これは、プロ選手でさえ同じ状況です。取りに出ていかないため、なかなかカバーリングを学べません。そこが大きな問題です。■相手に抜かれても追いかけてゆくように導いてあげる皆さんはドイツやスペインなど海外のサッカーをよくご覧になると思います。見ていると、プロたちが足を踏まれているシーンがよく出てきます。ボールを保持している選手が、寄ってきた相手に足を踏まれ倒れる場面があります。これが日本なら、体を寄せに行きます。子どもも同じようにやるので、体ごとぶつかってしまう場面が多くなるようです。それを考えると「相手にかわされてもいい。思い切って行け」と育成年代には言ってあげるべきだと思います。しかし、抜かれて失点して負けるのを避けるため、前述したように「飛び込むな」と命じてしまう。非常に根が深い問題です。このあたりの指導は、コーチの「生きざま」「生き方」みたいなものが現れるようです。取りに行って一度かわされると、日本の子どもは諦めてしまいます。かわされても、抜かれても、それでも追いかけてゆく気持ちが大切なのです。指導者がそこで「もう一回追いかけてごらん」と導いてあげてください。■日本の子どもは戦術理解に乏しい(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)ご相談者様が尋ねている「連携の声」は、戦術を理解することで出てきます。声ではなく、頭の問題といえます。相手が攻めてきた時に、どんなふうに守ったらいいのか。そういった戦術理解が、日本の子どもは乏しいようです。キーパーであれば、背後からディフェンダー全員を見て、相手が右から攻めてくるけれど、左のスペースはどうかな?と考えられる。つまり、ボールだけ見ていてはダメで、マークが外れそうな仲間に「そこケアしよう」「裏来るよ」などと教えてあげる。戦術眼やゲーム感を身に付けなくてはいけません。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年10月23日