彩の国シェイクスピア・シリーズ2ndが2024年5月に始動する。その第1作目『ハムレット』が、2024年5月7日(火) から彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて上演される。蜷川幸雄のもとでシェイクスピア全37戯曲を完全上演することを目指し、1998年のスタート以来、国内外に次々と話題作を発表してきた彩の国シェイクスピア・シリーズ。シリーズ完結間際でこの世を去った蜷川から芸術監督のバトンを引き継いだ吉田鋼太郎は、2017年から残された5作品を上演し、23年2月に『ジョン王』をもってシリーズを完結させた。しかしその後も、シェイクスピア作品を長年愛し続けてきた吉田ならではの解釈とエンターテインメント性を意識した演出で高い評価を得た吉田のもとには、新たなシリーズを望む声が多く寄せられた。その声に押された吉田はこの度「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd」を立ち上げ、その記念すべき1作目として『ハムレット』を上演する。2月22日(水)、3月1日(金) のリニューアルオープンを控えた同劇場で製作発表会見があり、演出・上演台本・出演の吉田のほか、ハムレット役の柿澤勇人、オフィーリア役の北香那が登壇した。吉田鋼太郎司会者から新シリーズが目指すものや思いを問われた吉田は「もし蜷川さんが生きていらっしゃったら、もう30年近くにわたって彩の国のシェイクスピアシリーズをやってきたわけですね。毎回毎回お客様が満員で、シェイクスピアを演じ続けてこれたということがほぼ奇跡のようなもの」と振り返りつつ、「蜷川さんはシェイクスピアは大衆演劇だと仰っていた。僕たちは西洋人でも1600年代の人間でもないので、この現代の21世紀のお客様たちになるべく分かりやすく観てもらうために架け橋を作らないといけない」と演出の心得を話す。観客と話し込む吉田鋼太郎(前列右)吉田は、製作発表を観にきた一般オーディエンスと『ハムレット』のストーリーを語り合う場面も含めて約17分間の熱弁を繰り広げ、「『ハムレット』が1番好きな芝居で、どうしても『ハムレット』だけは自分でも納得がいくようにしたいと思う部分が強くて。今回は素晴らしい理想のメンバーが集まった。これは観ないと損だと思います」と締め括った。柿澤勇人ハムレット役の柿澤は、吉田との二人芝居『スルース〜探偵〜』(2021) の大千穐楽後に、本作の話をされたといい「先輩で、演出家でもある鋼太郎さんに『やろうぜ』と言ってもらえたのがすごく嬉しくて。念願かなって今に至ります」。そして「おそらく僕の役者人生の中で後にも先にも一番のセリフ量だと思いますし、自分の持っているものを全部曝け出しても追いつかないのではという不安もあるのですが、鋼太郎さんを信じて、なんとかいい舞台を開けたいと思います」と話した。北香那オフィーリア役の北香那は「オフィーリアを演じるということがまだずっと新鮮なまま嬉しくて、少し夢見心地なところがあるんですが、これからお稽古が始まっていくにつれて、だんだんとはっきりと実感が湧いてくると思います」と思いを語りつつ、「この作品をやっていく中で、きっと『こんなお芝居をする自分がいたんだ!』と初めての出会いがあるような気がしていて。それが私は今すごくワクワクしているし、 楽しみです」。彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd Vol.1『ハムレット』PV ロングバージョン埼玉公演は5月26日(日)まで。その後、宮城、愛知、福岡、大阪公演を予定している。取材・文・撮影=五月女菜穂<公演情報>彩の国さいたま芸術劇場開館30周年記念彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』ビジュアル作:W.シェイクスピア翻訳:小田島雄志演出・上演台本:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)■出演柿澤勇人北香那白洲迅渡部豪太豊田裕大櫻井章喜原慎一郎山本直寛松尾竜兵いいむろなおき松本こうせい斉藤莉生正名僕蔵高橋ひとみ吉田鋼太郎【埼玉公演】5月7日(火)~5月26日(日)会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール【宮城公演】6月1日(土)・2日(日)会場:仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール【愛知公演】6月8日(土)・9日(日)会場: 愛知県芸術劇場 大ホール【福岡公演】6月15日(土)・16日(日)会場:J:COM北九州芸術劇場 大ホール【大阪公演】6月20日(木)~6月23日(日)会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティチケット情報:()公式サイト:
2024年02月23日彩の国シェイクスピアシリーズ2nd『ハムレット』の全出演者が決定した。本作は、彩の国さいたま芸術劇場が開館30周年を迎える2024年に吉田鋼太郎が新しく立ち上げる【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】の記念すべき第一作。演出と上演台本を吉田が担い、主演のハムレット役は吉田がこのタイトルロールを演じてほしいと熱望した柿澤勇人が務めることが発表され、大きな反響を呼んだ。今回発表されたのは、ハムレットの恋人・オフィーリア役に北香那、ハムレットの親友・ホレーシオ役に白洲迅、オフィーリアの兄・レアティーズ役に渡部豪太、ノルウェー王子・フォーティンブラス役に豊田裕大、オフィーリアとレアティーズの父でありデンマーク王の顧問官・ポローニアス役に正名僕蔵、ハムレットの母・ガートルード役に高橋ひとみ。新シリーズの開幕に相応しい清新な顔合わせが実現した。併せて、埼玉公演の詳細が決定。埼玉公演チケットは1月26日(金) より抽選先行がスタート。<キャスト コメント>■吉田鋼太郎(演出/クローディアス役)ハムレットがあらゆる戯曲の最高峰、最高傑作と呼ばれる事が稀ではないようです。彩の国シェイクスピアシリーズの評価と人気を不動のものにした故蜷川幸雄氏も生涯でこの芝居を全9回に渡って演出しており、まさに人生を賭けて取り組み続けた戯曲でもあるようです。それだけ演出家たち、俳優たちを魅了して止まない高く美しい山のような存在であるのかも知れません。 今回いよいよその最高峰を目指す事になりました。 さて、どのルートからアプローチするのか?アプローチの仕方によっては遭難する危険も孕んでいるでしょう。かと言って、今更初心者向けのルートを選ぶ事はしたくない。 幸い、今回は上級者用のルートを選ぶに相応しい心強いバディが集結しました。 だとすれば、迷う事なく最難関のルートを選択して、彼等と共に今まで見た事のない景色を見渡すことの出来る特別な頂きを目指そうと思っています。この戯曲のテーマや構造、更には面白さ、完成度の高さについては沢山の人々、その無数の著述によって知る事が出来ます。ただ、今回ひとつだけ僕がしっかりと心に留めておきたい事があります。それは、この戯曲はシェイクスピアが彼の夭折した息子に捧げたものだったのではないかという事です。息子の名前はハムネットでした。この想像は僕だけのものではないかも知れませんが、僕には想像ではなく、確信に思えて仕方ないのです。 シェイクスピアが、亡くなった息子の名前に酷似した名前をタイトルロールにした芝居。大切に大切に、そして繊細にダイナミックに創って行きたいと思っています。■柿澤勇人(ハムレット役 )『ハムレット』という役は僕にとってプレッシャーでしかなく、僕が持っているものや今まで経験してきたこと全てを出しても敵わない大変な役だと思っています。生半可な気持ちで出来るものではありません。全身全霊で挑みたいと思います。劇場にてお待ちしております。■北香那(オフィーリア役)舞台の上でオフィーリアとして演じることが出来ると思うと、今から本当にワクワクして仕方がないです。本公演を観てくださる皆様の心をどのくらい動かすことができるか、ということが自分の中で目標になっています。吉田鋼太郎さんはじめ、素敵なキャストの皆様と一緒に一歩一歩前に進めるよう、自分を奮い立たせて頑張っていきたいと思っています。■白洲迅(ホレーシオ役)またひとつ大きな挑戦をさせていただけることを本当にありがたく思います。僕にとって初めてのシェイクスピア作品であり、それが『ハムレット』であるということ、とても身の引き締まる思いです。鋼太郎さんとは何年もドラマでご一緒させていただいていますが、そんな鋼太郎さんに演出をしていただけることが本当に楽しみです。稽古に励みながら、ハムレットの世界に没入していけたらなと思っております。皆さんもぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。■渡部豪太(レアティーズ役)『ハムレット』という大作に、レアティーズという大役でこの度出演することになりました。役者としてシェイクスピア作品に携わることが出来てとても嬉しいです。険しい道のりだとは思いますが、カンパニーの皆様と、楽しく前を向いて今の私にできることを精一杯出し切りたいと思います。■豊田裕大(フォーティンブラス役)初めての舞台で、初めてのシェイクスピア作品で、わからないことだらけです。一方で、映画やドラマの現場との違いも興味深いです。不安や緊張だけでなくワクワク、たくさんの気持ちがすでに溢れています。その気持ち全部をこれから演じるフォーティンブラス役にぶつけて、一生懸命作り上げていけたらと思っております。■正名僕蔵(ポローニアス役)2年前に『終わりよければすべてよし』で初めて吉田鋼太郎さんの演出を受け、舞台の楽しさを改めて教えていただきました。そんな鋼太郎さんの演出で、しかもなんと『ハムレット』に参加できることが非常に嬉しいです。と同時に私は役を全うできるのか、という不安と恐怖が裏側にあり、武者震いが止まりません。恐らく観客の皆さまも並々ならぬ期待を持って劇場にいらっしゃると思われますので、我々もさらに並々ならぬ熱量を持ってお迎えしたいと思います。どうぞご期待ください。■高橋ひとみ(ガートルード役)長くお仕事をさせていただいておりますが、シェイクスピア作品は初めてです。自分が出演できるなんて、本当に夢のようです。今までたくさん観させていただいてきた分、どうしようどうしよう、ワクワク、ドキドキ、楽しみ、大きなことが待ってる、と、色々な感情が溢れておりますが……やっぱり喜びですね。この年齢になっても、初めてのことがまだまだあるんだなと思うのと同時に、鋼太郎さんの上演台本、演出、そして、初めて共演させていただける方々ばかりなので、本当に楽しみにしております。<公演情報>彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』作:W・シェイクスピア翻訳:小田島雄志演出・上演台本:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)【キャスト】柿澤勇人北香那白洲迅渡部豪太豊田裕大櫻井章喜原慎一郎山本直寛松尾竜兵いいむろなおき松本こうせい斉藤莉生正名僕蔵高橋ひとみ吉田鋼太郎【埼玉公演】期間:2024年5月7日(火)~26日(日)会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール【チケット料金】S席:10,000円A席:8,000円B席:6,000円U-25:2,000円※劇場でのみ取扱い■一般発売2月17日(土) 10:00~【ツアー公演】■宮城公演期間:2024年6月会場:仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール■愛知公演期間:2024年6月会場: 愛知県芸術劇場 大ホール■福岡公演期間:2024年6月会場:J:COM北九州芸術劇場 大ホール■大阪公演期間:2024年6月会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公式HP:
2023年12月19日木南晴夏が主演を務める「セクシー田中さん」の8話が12月10日に放送。田中さんが一緒に出かけた笙野の母・悦子に伝えた、朱里からもらった言葉に「泣いた」「心を動かされた」などの声が上がっている。芦原妃名子の同名漫画が原作の本作は、登場人物たちの出会いがポジティブな化学反応を起こしていく物語。ベリーダンサーとして活動する主人公・田中さんを木南晴夏、田中さんの同僚で彼女のファン・倉橋朱里を生見愛瑠、女性への偏見が強かったものの田中さんとの出会いで大きく変化中の商社マン・笙野浩介を毎熊克哉、笙野の母親・悦子を市毛良枝、笙野の同僚で朱里を好きな小西を前田公輝、田中さんの憧れの人でサバランの店主・三好を安田顕、ベリーダンススクールの講師・Miki先生を高橋メアリージュンが演じている。※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。田中さん(木南晴夏)に心無い言葉をかけた男たちに立ち向かった笙野(毎熊克哉)は、うっかり転んで靭帯を損傷。四十肩の時助けてもらったお礼に、今度は田中さんが笙野の家事を助けることに。するとそこに、笙野の母・悦子(市毛良枝)が突然やって来て、田中さんを家政婦と勘違いする。しかし田中さんと意気投合した悦子は、一緒に歌舞伎を見に行く約束をしてウキウキ。一方で笙野に若い女性とのお見合いを勧める。また、田中さんが慣れないメイクで笙野とのデートに挑んでしまったことを知った朱里(生見愛瑠)は、プチプラメイクで田中さんを変身させようとするが、得意のモテメイクは田中さんには合わなかった。そこでリベンジを誓った朱里は、小西(前田公輝)の協力も得て、田中さんに似合うメイクを研究することに。そして、メイクの楽しさを知った朱里に変身させてもらった田中さんは、悦子との待ち合わせ場所に向かう。そんな中、笙野は頑固な父・正晴(螢雪次朗)と悦子の間に、何かあったのではないかと心配しており――というのが8話の展開。メイクで変身した田中さんは、洋服も朱里に選んでもらい、いつもとは違う雰囲気をまとい悦子と会う。悦子も田中さんの変化に驚きを隠せない。歌舞伎が満席で見られなかったふたりは、素敵なレストランでおしゃれなスイーツを楽しむ。そこで悦子は、友人と遊びに行きたかったのに夫に反対されて行けなかった出来事や、やりたいことをやってこなかった過去について後悔の気持ちを吐露。そんな悦子にSNSでは「笙野のお母さんに共感した。入退院繰り返しながら子育てだったんでずっと自分がやりたいことは我慢して、子どもが大学入ってからは少し出かけたりできたけど数年で全て諦めたから。こういう気持ちをドラマで描いてくれたのは始めてだったから嬉しかった」や「笙野のお母さん、家の為に人生の楽しいことをどれ程諦めさせられてきたんだろう」、「笙野のお母さんの話で倍泣いた」などの声が上がっている。その後、今日のやりたいことが思いつかない悦子に、田中さんは映画を観ようと提案する。映画を色に喩えて、悦子に選んでもらう田中さん。悦子が選んだのはイランの映画だった。そして田中さんは、朱里に言われた言葉をアレンジして悦子に「今日、友達が言ってたんですけど。ずっと来たかった場所に来られた、カフェで食べたケーキが美味しかった、好きな色のスカーフを見つけた、初めての国の文化に触れた。一つひとつは些細だけど、たくさん集めれば生きる理由になるよって」と伝える。そして、その言葉を聞いた悦子は、さっきは自分には勿体無いと眺めるだけで終わっていたスカーフを思い出し「今度はスカーフ手に取ってみようかしら」と答えるのだった。そんな田中さんから悦子へと渡された朱里の言葉に「あかん「一つひとつは些細なことでも、集めれば生きる理由になる」って言葉を思い返してたらベッドの中で一人涙ちょろりしてる。現代社会で悩んでる全ての人に見てほしいドラマ」や「朱里ちゃんの一つ一つは些細な事でも集めれば生きる理由になるって言葉に凄く心を動かされたなぁ」、「「ひとつひとつは些細だけど、集めると生きる理由になる」に泣いた。毎日ドラマで泣きすぎている。けど幸せである」などの声が上がっている。【第9話あらすじ】母・悦子から勧められた女性・ふみか(朝倉あき)とお見合いすることになった笙野。ふみかの体調や母のことを思いやる姿、家庭への価値観に好感を持ち、結婚を前提に付き合うことになる。その話を小西から聞いた田中さんは、動揺を隠せない。そして、田中さんはクリスマスイベントで一緒にステージに立つ約束をしたにも関わらず顔を見せない笙野を待ちながら、ひたすら練習を続ける。そんな姿を見た三好(安田顕)は、「笙野くんの代わりに俺が出ちゃダメかな?」と田中さんを誘う。一方、朱里は老人ホームのメイクボランティアに参加し、さらにメイクの仕事にやりがいを感じていた。徐々に距離を縮めていた小西からはついに「付き合って」と告白され――。「セクシー田中さん」は毎週日曜22時30分~日テレ系にて放送中。(シネマカフェ編集部)
2023年12月11日吉田鋼太郎による新たなシェイクスピア・シリーズの第1作目「ハムレット」に、柿澤勇人が主演することが分かった。蜷川幸雄のもとでシェイクスピアの全37戯曲を完全上演することを目指し、1998年のスタート以来、国内外に次々と話題作を発表してきた彩の国シェイクスピア・シリーズ。蜷川さんから芸術監督のバトンを引き継いだ吉田さんは、2017年から残された5作品を見事に上演し、2023年2月に「ジョン王」の上演をもって、彩の国シェイクスピア・シリーズが完結した。そして、観客の期待に応えるように来年5月、吉田さんによる新シリーズ<彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd>がスタートする。その記念すべき1作目は「ハムレット」。タイトルロールを担うのは、吉田さんからの信頼も厚い柿澤さん。「デスノート THE MUSICAL」「アテネのタイモン」「スルース~探偵~」に続いて4本目の共演となり、演出と主演のタッグとしては、「ブラッド・ブラザーズ」以来、2年ぶりだ。なお、全37戯曲の中でも、その奥深さをもう一度伝えたい作品を吉田さんが選び、年に1本を目安に上演。25年には「マクベス」、26年には「リア王」の上演が予定されている。コメント<吉田鋼太郎(演出/クローディアス役)>僕がずっとハムレットをやって欲しいと思っていた柿澤くんを迎えての『ハムレット』ということで、今からワクワクドキドキ、素晴らしいものができるのではないかという予感に満ち溢れています。ハムレットという役は、誰にでも出来る役という訳ではないと思っています。イギリスには“ハムレット役者”という言葉があるくらいなので、ぜひ選ばれた役者、柿澤勇人のハムレット、見届けていただけたらと思います。<柿澤勇人(ハムレット役)>「ハムレット」という役は僕にとってプレッシャーでしかなく、僕が持っているものや今まで経験してきたこと全てを出しても敵わない大変な役だと思っています。生半可な気持ちで出来るものではありません。全身全霊で挑みたいと思います。劇場にてお待ちしております。ストーリーデンマーク王国では、2か月前に王が亡くなり、先代の王の弟クローディアス(吉田鋼太郎)が王に即位。そして、先代の王妃ガートルードはクローディアスと再婚する。父の死の悲しみも冷めぬ間に母が叔父と再婚したことに、王子ハムレット(柿澤勇人)は憤りを感じていた。ある日、従臣から亡き王の亡霊が夜な夜なエルシノアの城壁に現れるという話を聞き、ハムレット自身も確かめに行く。父の亡霊に会ったハムレットは、父の死はクローディアスによる毒殺であったと告げられ、復讐を決意する。やがて、叔父クローディアスが父である王を暗殺した確かな証拠を掴んだハムレットは、王妃ガートルードとの会話を盗み聞きしていた侍従長ポローニアスを、クローディアスと誤って刺殺してしまう。ポローニアスの娘で、ハムレットの恋人であったオフィーリアは、悲しみのあまりに正気を失い、川で溺死してしまう。ポローニアスの息子であったレアティーズは、父と妹の仇をとろうと怒りを募らす。クローディアスはハムレットの存在を恐れ、復讐心を持ったレアティーズと結託してハムレットを剣術試合に招き、毒剣と毒入りの酒を使って殺そうと画策する――。彩の国シェイクスピア・シリーズ2ndVol.1「ハムレット」は2024年5月、彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて上演予定。※ほかツアー公演あり(シネマカフェ編集部)
2023年10月31日2024年5月より、吉田鋼太郎による彩の国シェイクスピア・シリーズ2ndがスタートすることが発表された。蜷川幸雄のもとでシェイクスピアの全37戯曲を完全上演することを目指し、1998年のスタート以来、国内外に次々と話題作を発表してきた彩の国シェイクスピア・シリーズ。シリーズ完結間近でこの世を去った蜷川幸雄から芸術監督のバトンを引き継いだ吉田鋼太郎は、2017年から残された5作品を見事に上演し、23年2月に『ジョン王』をもってシリーズを完結させた。新たにスタートするシリーズ2ndの記念すべき一作目に吉田が選んだのは、シェイクスピア不滅の金字塔『ハムレット』。また、そのタイトルロールを担うのは、吉田からの信頼も厚い柿澤勇人。二人は、『デスノート THE MUSICAL』(15年)、『アテネのタイモン』(17年)、『スルース~探偵~』(21年)に続いて4本目の共演となり、演出と主演のタッグとしては、『ブラッド・ブラザーズ』(22年)以来、2年ぶりとなる。『ハムレット』埼玉公演は2024年5月彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて上演後、ツアー公演が行われる。なお、『ハムレット』上演後は、25年『マクベス』、26年に『リア王』の上演を予定している。【新シリーズのコンセプト】・シェイクスピア演劇をより多くの方に気軽に楽しんでもらうことを目指す新シリーズ。芸術監督はこれまでのシリーズに引き続き吉田鋼太郎が務める。・シェイクスピアの全37戯曲の中でも、その奥深さをもう一度伝えたい作品を吉田鋼太郎が選び、年に一本を目安に上演していく。・吉田鋼太郎が上演台本を手掛けることで、より理解しやすいシェイクスピア演劇を届ける。・難しいと思われがちなシェイクスピア演劇の作品理解に役立つ情報を積極的に発信し、新しいお客様にアプローチする。また、各作品のキャスティングにおいてオーディションで選ぶ役を必ず設けることで、新しい役者との出会う場をつくる。・鑑賞サポートをこれまでのシリーズよりもさらに充実させ、様々なお客様が一緒にひとつの芝居を楽しめる機会を増やす。<演出家・キャスト コメント>■吉田鋼太郎(演出/クローディアス役)僕がずっとハムレットをやって欲しいと思っていた柿澤くんを迎えての『ハムレット』ということで、今からワクワクドキドキ、素晴らしいものができるのではないかという予感に満ち溢れています。 ハムレットという役は、誰にでも出来る役という訳ではないと思っています。 イギリスには“ハムレット役者”という言葉があるくらいなので、ぜひ選ばれた役者、柿澤勇人のハムレット、見届けていただけたらと思います。■柿澤勇人(ハムレット役)「ハムレット」という役は僕にとってプレッシャーでしかなく、僕が持っているものや今まで経験してきたこと全てを出しても敵わない大変な役だと思っています。生半可な気持ちで出来るものではありません。全身全霊で挑みたいと思います。劇場にてお待ちしております。<公演情報>彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd『ハムレット』作:W・シェイクスピア翻訳:小田島雄志演出・上演台本:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)【キャスト】ハムレット役:柿澤勇人クローディアス役:吉田鋼太郎ほか【埼玉公演】期間:2024年5月会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール※ほかツアー公演あり公式HP:
2023年10月31日女性アクション派俳優として知られ、2023年現在は『花創作家』として活動する、志穂美悦子さん。同年10月29日に、68歳の誕生日を迎えたことを自身のInstagramで報告しました。その際に投稿された、志穂美さんの全身写真がネットで話題になっています。志穂美悦子、68歳『筋肉バキバキ』写真に反響志穂美さんが公開したのは、トレーニング器具などが設置されている場所で撮影した1枚。マッスルポーズを取り、68歳とは思えないほどの若々しさを見せる、志穂美さんの写真がこちらです!※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 この投稿をInstagramで見る 志穂美 悦子 Official(@etsuko_shihomi)がシェアした投稿 腕や肩の筋肉が美しく浮き上がっており、見ているだけで惚れ惚れしてしまう肉体美ですね。志穂美さんは、いろいろと『やりたいこと』があるようで、身体づくりをしているのだとか。投稿文では、誕生日を迎えて「この1年はさらにアグレッシブに」と抱負をつづっていました。志穂美さんの全身写真には、驚く声が多数上がっています。・悦っちゃんかっこいい!同世代として尊敬します。・お誕生日おめでとうございます。素晴らしい肉体美!・永遠の憧れです。「すごい!」のひと言…。また、夫であるミュージシャンの長渕剛さんのファンからのコメントも。長渕さんも、SNSなどで自身の肉体美を披露していることから、「ご夫婦で素敵」「剛さんもビックリな上腕二頭筋」などの声が寄せられていました。長渕剛の現在の姿が、66歳とは思えない肉体美年齢を重ねると、体力が衰えていき、身体を鍛えることが難しくなっていくものです。そんな中『やりたいこと』のために、トレーニングに励む志穂美さんの姿は、とてもキラキラして見えますね![文・構成/grape編集部]
2023年10月30日シェイクスピアの“ダークコメディ”交互上演『尺には尺を/終わりよければすべてよし』が新国立劇場中劇場で開幕。初日を前に同劇場で会見が行われた。『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』の2作品は、シェイクスピアの戯曲の中ではそれほど上演回数も多くなく、どちらも最初の全集では“喜劇”に分類されるも、ストーリーもやや複雑で登場人物も屈折したキャラクターが多く、“ダークコメディ(暗い喜劇)”と呼ばれている。この2作品は時をおかず執筆されたと推測され、ストーリー的にも同じテーマを持つ表裏一体のような戯曲。悲劇とも喜劇ともつかないその結末から「問題劇」とも分類される2作品を交互に上演することで、現代劇かとも思わせるシェイクスピアの鋭い視点と同時代性が浮かび上がる。演出の鵜山仁は「今まで見ていなかったことに目がいったり、圧倒されていたことが実は薄っぺらいものだと分かったり、いろいろな意味でストレッチできるので面白い。正解が何かが分からないことがいいし、人生そのものという感じがする」とコメント。初日を迎える心境を問われると、岡本健一は「2本同時に稽古をやって、やっと初日を迎えることができるが、正直全体像が全く見えない。お客さんが入って初めて成立するものではないかと思う。問題作と言われている作品をお客さんがどのように捉えるのか。劇場で体験してもらいたい」と話す。ソニンは「2ヶ月間稽古をして、2倍大変なのかなと思っていたら、4倍大変だった。稽古初日から足を止めず、セリフを喋り続け練習をしてきたけれど、『まだ足りない』とずっと思いながら稽古をしてきた。『2倍』の2乗の『4倍』の2乗で、16倍味わい深い本番になったら」。新国立劇場が2009年~20年に展開した「シェイクスピア歴史劇シリーズ」のチームが再結集している本作。浦井健治は「節度は持っているが、家族のような人が集まっている。10年以上一緒にやらせてもらっていて、亡くなった方もいるが、面影や思いを板の上で感じる瞬間がたくさんある」といい、中嶋朋子も「みんながぽろっと言ってくれる一言で、すごく大きな転換が訪れたり、目から鱗が落ちたりするカンパニー。その一言を待っている自分がいる。この信頼関係は本当に宝物」と語っていた。公演は11月19日(日)まで。取材・文:五月女菜穂
2023年10月25日シェイクスピア、ダークコメディ交互上演の二つ目の作品『終わりよければすべてよし』が、10月19日(木) に東京・新国立劇場 中劇場で初日を迎えた。シェイクスピアの戯曲の中では上演数もそれほど多くはなく、登場人物も屈折したキャラクターが多く、"ダークコメディ(暗い喜劇)"と呼ばれる『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』。この2作は同時期に執筆されたと推測され、悲劇とも喜劇ともつかない、その結末から「問題劇」とも分類される。なお10月18日(水) からは『尺には尺を』の上演がスタートしている。『終わりよければすべてよし』では、浦井健治演じる「バートラム」と中嶋朋子演じる「ヘレナ」の恋の行く末や、亀田佳明演じる「ぺーローレス」の顛末が描かれ、客席は度々笑い声に包まれた。公演期間は11月19日(日) まで。<公演情報>シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』10月18日(水) ~11月19日(日) 新国立劇場 中劇場作:ウィリアム・シェイクスピア翻訳:小田島雄志演出:鵜山 仁【キャスト】岡本健一浦井健治中嶋朋子ソニン立川三貴吉村 直木下浩之那須佐代子勝部演之小長谷勝彦下総源太朗藤木久美子川辺邦弘亀田佳明永田江里内藤裕志須藤瑞己福士永大 宮津侑生チケット情報:公式HP:
2023年10月20日シェイクスピア、ダークコメディ交互上演の1つ目の作品『尺には尺を』が、10月18日(水) に新国立劇場 中劇場で初日を迎えた。シェイクスピアの戯曲の中では上演数もそれほど多くはなく、登場人物も屈折したキャラクターが多く、"ダークコメディ(暗い喜劇)"と呼ばれる『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』。この2作は同時期に執筆されたと推測され、悲劇とも喜劇ともつかない、その結末から「問題劇」とも分類される。『尺には尺を』では、岡本健一演じる「アンジェロ」とソニン演じる「イザベラ」の激しい攻防とそれぞれの葛藤が描かれる。そのほか、浦井健治、中嶋朋子といった面々がキャストとして名を連ねている。なお本日10月19日(木) には、交互上演のもう一つの演目『終わりよければすべてよし』が開幕する。<公演情報>シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』10月18日(水) ~11月19日(日) 新国立劇場 中劇場作:ウィリアム・シェイクスピア翻訳:小田島雄志演出:鵜山 仁【キャスト】岡本健一浦井健治中嶋朋子ソニン立川三貴吉村 直木下浩之那須佐代子勝部演之小長谷勝彦下総源太朗藤木久美子川辺邦弘亀田佳明永田江里内藤裕志須藤瑞己福士永大 宮津侑生チケット情報:公式HP:
2023年10月19日約400年前の戯曲ながら、今なお世界中で上演されているシェイクスピア作品。なぜこんなに愛され続けているのか。まさに今シェイクスピア劇に向き合う岡本健一さん、浦井健治さんの対談と、数々のシェイクスピア作品から魅力を探る。2009年に新国立劇場で鵜山仁さん演出により一挙上演された『ヘンリー六世』三部作。三部を通すと上演時間全9時間にものぼる超大作に出演していた岡本健一さんと浦井健治さんのふたり。そこを皮切りに、『リチャード三世』『ヘンリー四世』『ヘンリー五世』『リチャード二世』など、鵜山演出のシェイクスピア作品の数々に共に出演してきた。そしてこのたび出演するのは、「シェイクスピア、ダークコメディ交互上演」と称しておこなわれる、『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』という2作の交互上演。岡本健一(以下、岡本):過去に鵜山さんともっと大変な企画をやったから、今回の交互上演くらいでは驚きはなかったな。浦井健治(以下、浦井):確かに(笑)。ただ、これまでのような歴史劇じゃなく、シェイクスピア作品の中でも問題作といわれるダークコメディ。どっちもベッドトリック(相手を騙して違う人にベッドの相手をさせる罠)があったり、似たテイストの物語だから、ちょっと…というか結構混乱しますよね。岡本:これまでは歴史劇で戦争ばかりしていたけれど、今回はそういう争いごとは全然ないし、女性を主体とした物語というのも初めてだし。今の時代に、自分たちがこの話をやることに意味がある気はしてて。浦井:どちらの作品も、女性がすごく戦略家なんですよね。岡本:女優陣と話してると、男性側と女性側で全然作品の捉え方が違っているのが興味深いなと。――『尺には尺を』は、公爵の代理でウィーンの統治を任されたアンジェロが、婚姻前に男女の性交渉を禁じる姦淫罪でクローディオに死刑の判決を下したことから起こる物語。そして『終わりよければすべてよし』は、伯爵夫人の息子・バートラムに想いを寄せるが彼に結婚を拒否された侍女のヘレナが一計を案じる物語。岡本:『尺には尺を』とか、登場人物がみんなひどい人たちだよね。浦井:全員ひどいです。岡本:公爵が人に統治を押し付けるとかありえないでしょ(笑)。ただ、法律っていうものをちゃんと見直さなきゃいけないのかもしれないというのは、この作品で思ったかな。あと、ひとりの女性との出会いで、こんなに人間の思想が変わるんだっていうことの面白さとか。浦井:僕が演じるクローディオ側の目線で言うと、政治とか権力側の意向で人間の生死が決まるっていうのが不条理ですよね。クローディオのセリフに「生きようと願うことが死を招くことであり、死を求めることに生があると覚悟しています」っていうのがあるんですけど…。岡本:えっ今の、もう一回言って。浦井:(笑いながら復唱して)死に立ち向かうことが生きることに繋がるって、他のことにも置き換えられる気がするんです。大変なときこそ成長のチャンスというか。生きる意味を考えさせてくれる話だなと。もう片方もまた、生きることの意味をみんなで見つけていくような作品ですけど、こっちのほうがもっと体当たりな感じはありますよね。岡本:『終わりよければすべてよし』で自分が演じる王は衰弱して死の間際なんだけれど、ひとりの女性との出会いで元気になる。一応、薬が効いたってことなんだけど、人間の生きようとするエネルギーがそうさせたと思ってるんだよね。まさに「終わりよければすべてよし」って思うことで、物事が前に向いていくことってある気がして。そう思ってもらえる作品にできたらいいなと。――演出の鵜山さんをはじめ共演者も、これまでシェイクスピアシリーズを一緒に作ってきた面々ばかり。岡本:10年以上、ほぼ同じカンパニーでやってきてるけど、それがすべて鵜山さんの頭の中から始まってるんだと思うとすごいよね。浦井:今回ご一緒してあらためて感じたのは、それぞれの人に寄り添って、その人が理解しやすい言葉を選んで話してくれているんですよね。岡本:人それぞれに説明の仕方が違って、俺には擬音ばっかり(笑)。浦井:僕は『ヘンリー六世』三部作が初めてのシェイクスピアだったんですよね。それまでセリフ劇的なことをあまりやったことがない中、周りは劇団を背負ってこられたような方ばかりで、そのときは、稽古場で毎日自分の不甲斐なさばかりを実感させられる日々でした。岡本:それ、全然楽しくないじゃん。浦井:でもその心理状態が、そのときに演じた役とリンクできた部分はあったんです。鵜山さんからは、役と一緒に道を歩んでいるようなイメージでセリフを体感しながら言って、と言われていて。実際、役の血が体の中に流れているかのようにセリフを言っている諸先輩方と、何作品もご一緒させていただいて学んだことも大きいですし。岡本:ここでご一緒している年配のみなさん、本当にすごいからね。シェイクスピアうんぬんていう次元じゃなく、セリフが話し言葉としてスッと入ってくる。それを見て自分もあそこに追いつこうってなるし、無言の教えがいっぱいあるからね。最初の頃、この人たちに役者として認められたい、認められるにはどうしたらいいだろうってすごく考えてた。俺としては、シェイクスピアだとか話がどうとかは置いといて、このすごい俳優さんたちが頑張っていて、それだけでも感動するから観に来たほうがいいよって思ってるくらい。高尚な劇じゃないよということは言っておきたい。――数々のシェイクスピア作品を経験してきたおふたりに、あらためてシェイクスピアの面白さを聞いた。岡本:いつも言うんだけど、シェイクスピアの戯曲って劇場で演じるために書かれてるから、本を読んだだけじゃ面白くないんだよね。人の声を通してようやく面白さがわかる。浦井:僕もシェイクスピア劇に対して、セリフが難しいってイメージを持っていたんです。でも、実際にそれぞれのキャラクターを理解して聞くと、そんなこともなくて。岡本:劇場で体感して、ようやくその魅力がわかるんだと思う。なんでこんな400年も前の作品を日本で上演するんだろうって思うけど、やってみると、今の自分たちとか今の日本の社会とかに通じるものが、そこに書かれていて、そこにちゃんとメッセージがあるんだよね。今回の舞台も、観に来たお客さんの中に、きっと似たような物語があるし、共鳴する登場人物があると思うし。浦井:イギリスのストラトフォード=アポン=エイヴォン(シェイクスピアの故郷)に行ったときに、街にシェイクスピア作品の登場人物の銅像が立っていたんです。それを見て“人気キャラ”なんだなと思ったんです。人間の中身とか関係性をわかりやすく分類してキャラクターとして描いているから、誰もが自分や周りの人に置き換えて物語を身近に見られるのかなって。しかもそれが未来への教訓にもなる。岡本:政治家こそ観たほうがいいよね。それこそ国のつくり方とか、国を統治する成功例も失敗例もたくさん描かれているから。浦井:シェイクスピア劇っていうと高尚なイメージがありますけど、人間の普遍的なことを、国だったり恋愛だったりに置き換えて面白おかしく書いたものなのかなっていう気がしています。岡本:それを高尚なものとしてやろうとすると、退屈な芝居になるんだよ(笑)。このカンパニーは、壮大なセリフをどうしたら自分たちの生きた言葉として生々しくしゃべるかってことを考えてる人ばかりだから。新国立劇場だから格式高い印象があるかもしれないけど、高尚な劇じゃないよってことは言っておきたいな。シェイクスピア人間の本質をついたセリフの数々が時代を超えて愛される。16世紀後半から17世紀初頭に活躍したイギリス出身の劇作家で詩人。シェイクスピア作として現存する戯曲は全37作品にのぼる。歴史劇、悲劇、喜劇と、そのジャンルは多岐にわたり、現在に至るまで世界各地で上演されている。その多くは古くから残る説話や歴史文献が題材となっているが、物事の本質をついたセリフなどが時代を超えて評価されている。シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』10月18日(水)~11月19日(日)新国立劇場 中劇場作/ウィリアム・シェイクスピア翻訳/小田島雄志演出/鵜山仁出演/岡本健一、浦井健治、中嶋朋子、ソニン、立川三貴、吉村直、木下浩之、那須佐代子、勝部演之、小長谷勝彦、下総源太朗、清原達之、藤木久美子、川辺邦弘、亀田佳明、永田江里、内藤裕志、須藤瑞己、福士永大S席8800円A席6600円B席3300円2作品通し券(S席のみ)1万5800円当日発売のZ席1650円のほか高齢者割引(65歳以上)、学生割引、ジュニア割引(小中学生)、障がい者割引などあり新国立劇場ボックスオフィス TEL:03・5352・9999岡本健一さん(写真右)1969年5月21日生まれ、東京都出身。俳優として舞台で精力的に活動し、これまでに数々の演劇賞を受賞。また、音楽活動もおこなっており、所属するRockon Social Clubの2ndアルバムのリリースも控える。浦井健治さん(写真左)1981年8月6日生まれ、東京都出身。主にミュージカル、ストレートプレイで活躍。来年3月、ミュージカル『カム フロム アウェイ』が控える。発売中の3rdアルバム『VARIOUS』のタイトルを冠したライブDVDが10月18日発売。※『anan』2023年10月4日号より。写真・小笠原真紀構成、取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2023年09月30日シェイクスピアの作品の中でも“ダークコメディ”、“問題劇”と称される『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』の2作品を同一キャストで交互上演するという新たな試みが新国立劇場にて行われる。2009年から2020年まで同劇場で上演されてきたシェイクスピアの歴史劇シリーズのチームが再結集して行われるこちらの公演。両作品で中心的な役割を担う岡本健一に話を聞いた。『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』メインビジュアルインタビューの数日前には、この交互上演の制作発表会見が行われたが、岡本をはじめ、多くのキャスト陣が語っていたのが、歴史劇シリーズのチームが再び結集することへの喜びだった。『ヘンリー六世』(2009年)から『リチャード二世』(2020年)まで足かけ12年にわたる同じチームでのシェイクスピアの歴史劇への参加は、岡本にとってどのような経験であり、何をもたらしたのか?「一番大きかったのは、おそらく多くの人が抱いているような、“難解”とか“崇高”といったシェイクスピアという作家のイメージが覆されたことですね。このカンパニーの俳優が演じることで、シェイクスピアをより身近に感じることができましたし、自分で演じることで初めて腑に落ちることも多かったです。歴史劇だと特に王様や権力者といった国を動かす人が主体ですが、いかに彼らが人間臭いか? 『え? こんなことで戦争になるの?』『こんなことで全てを手放してしまうの?』ということがたくさんあって、言葉の持つ力を感じました」今回の2作は、歴史劇とはまた違った市井の人々の感情や男女の機微といった部分が描かれている。「特にこの2作は、他のシェイクスピア作品と大きく異なる部分として、女性が軸を担い、主体となって物語が動いていくので、その部分の面白さを感じます。特に婚前交渉や処女性――つまり“純潔さ”みたいな部分がテーマとして描かれているんですよね。それこそ日本でもかつては、恋愛結婚なんてほとんどなくて、女性は家が決めた相手に嫁ぐものだという時代が長かったけど、そうした価値観をベースにした物語をいまの若い観客が見たら、どう感じるのか? 楽しみですね」。『尺には尺を』で演じるアンジェロは、外遊に出ることになった公爵より、謹厳実直な性格を買われて、彼の不在中の街の統治を任される男という役どころ。アンジェロは早速、婚姻前に恋人と関係を持ち、妊娠させたクローディオに対し、法に従い死刑を言い渡す。しかし、助命嘆願に現れたクローディオの妹・イザベラの美しさに心奪われたアンジェロは理性を失い、自分に体を許せば兄の命を助けると提案するのだが...…。先の会見で岡本は「政治家の方たちにぜひ劇場に足を運んでほしい」と訴えていた。「アンジェロが出ていないところで周りの人々がアンジェロについて語っている言葉を聴くと、実直で冷酷で、規律を守るということに揺るぎない信念を持った男だという部分が見えてくるんですけど、そんな男の価値観が、ひとりの魅力的な女性と出会うことで崩れてしまう。ただ、そこに何とか正当性を持たせようとあれこれ画策していくところが面白いなと思います。そもそも、こういう男が公爵代理として権力を持つということ自体、普通じゃないと思うし、彼に(統治を)頼む公爵もどう考えてもおかしいですよね(笑)。そういう部分も含めて、現代の政治や社会と重なる部分もあると思います。総理大臣にせよ、どこかの大統領にせよ、彼らの言葉は本当に彼ら自身の中から発せられた言葉なのか? それとも、周りによってつくられた言葉なのか? いずれにせよ、その言葉で人々が動かされていくんですよね」生の言葉を浴びるのを楽しんで同時期に執筆されたと言われるこの2作はもともと喜劇に分類されていたが、果たしてそこで描かれる結末は純粋にハッピーエンドと言えるのか? といった議論や様々な解釈を経て、ダークコメディ、問題劇と言われるようになったという。「それこそ“終わりよければすべてよし”という言葉も、じゃあどうしたら、終わりがよくなるのかっていうのが見えないですよね(笑)。結局、それは言葉だけのものに過ぎなくて、現実には“終わりよければすべてよし”という結末に行き着かないからこそ、人間は常にそう思い続け、この言葉を使うのかなという気がしています。同時に、この言葉を生み出したシェイクスピアのすごさを改めて感じますね」。岡本と共に両作で中心的な役割を担うのは浦井健治、中嶋朋子、ソニンら、歴史劇シリーズをはじめ、これまで幾度も共演を果たしてきた面々。彼らをはじめ、カンパニーへの信頼は揺るがない。「私生活で会うこともほとんどないので、歴史劇で12年も一緒にやってきたといっても、一緒に過ごしている時間は数か月ですよね。稽古場でも私語なんてほぼないし、普段、どんな人間で、何を考えているかなんて、お互いにどうでもいいんです。舞台の上で、シェイクスピアの言葉を借りて会話をする、ただそれだけです。でも、そんな舞台上だけの作りものの世界で、いろんな感情が生まれてきて気持ちが動かされるし、そこに真実とか本心が見えてくる――みんな、その力を持っている俳優達なんですよね」8月に開催された制作発表会見より。演出の鵜山 仁をはじめ、岡本健一、浦井健治、中嶋朋子、ソニンら総勢20名が出席した撮影:阿部章仁与えられた役柄の人生を身にまとい、借り物の言葉を発する――その舞台上で、岡本は他のどの場所よりも「自由」を感じるという。それこそが、岡本が舞台に立ち続ける理由である。「自分とは全く違う人間になって、違う国、違う時代の物語に飛び込むと、そこで自分の目を通して見えてくる世界って全く未知のものだし、相手役とのやり取りで、全く未知の感情がわき上がってくるんですね。何より舞台の上って一番自由な空間なんです。それが面白いですね」インタビューを通して、岡本が何度も口にしたのが“言葉”の大切さ――読み物として目で追いかける言葉ではなく、役者の存在を通して、“声“として発せられる言葉の面白さである。「僕自身、シェイクスピアの戯曲を読んでも正直、何が面白いのか全然わかんないし、面白さを感じないですよ。シェイクスピアの作品は“読み物”ではなく、あくまでも生身の俳優がお客さんの前で演じるところに面白さがあるものなんだと思います。いまの時代、生身の人間の肉声を聴くということ自体、あまりない経験になっているかもしれませんが、そういう意味でもぜひ生の言葉を浴びるのを楽しんでいただきたいです」取材・文:黒豆直樹撮影(岡本健一ソロカット):石阪大輔<公演情報>新国立劇場 2023/2024シーズン 演劇シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』作:ウィリアム・シェイクスピア翻訳:小田島雄志演出:鵜山 仁キャスト:岡本健一浦井健治中嶋朋子ソニン立川三貴吉村 直木下浩之那須佐代子勝部演之小長谷勝彦下総源太朗藤木久美子川辺邦弘亀田佳明永田江里内藤裕志須藤瑞己福士永大宮津侑生2023年10月18日(水)~11月19日(日)会場:東京・新国立劇場 中劇場★11/4(土)は2作品を1日通しで楽しめる、ぴあスペシャルデー(ぴあ貸切公演)を開催!チケット情報公式サイト
2023年09月21日新国立劇場にてシェイクスピアが同時期に執筆した『尺には尺を』、『終わりよければすべてよし』の2作のダークコメディが交互上演される。8月31日、制作発表会見が行われ、演出の鵜山仁をはじめ、岡本健一、浦井健治、中嶋朋子、ソニンら総勢20名が出席した。この2作は“ダークコメディ”に分類され、同時代に執筆された表裏一体をなす2作とも言われる。シェイクスピア作品には珍しく女性が物語の主軸となっているのも特徴。問題作とも称され、“ベッド・トリック“(相手を欺き、期待した相手とは違う相手とベッドを共にさせる仕掛け)が入っている両作の同時上演について、鵜山は「人間は必ず過ちを犯すけど、愛がそれを救済できるのか? というのが大テーマ」と語る。2009年の『ヘンリー六世』から2020年の『リチャード二世』まで、新国立劇場にてシェイクスピアの歴史劇シリーズを作り上げてきたカンパニーが再結集。キャスト陣はいずれもこのカンパニーで再びシェイクスピアをできる喜びを口にする。岡本は「いろんな権力者や市井の人々が出てきますが、政治家や国を動かす人たちにもぜひ足を運んでいただきたいです。いろんな過ちや発見、何が大切なのか? といったことが詰まった作品になっている」と言葉に力を込める。浦井は2009年に『ヘンリー六世』でこのカンパニーに参加した時のことをふり返り「(亡くなった)渡辺徹さん、中嶋しゅうさん、金内喜久夫さんら諸先輩方と並んで『浦井って誰なの?』という感じで、僕は公開処刑のような形でここに座ったまま何もできずにいました(苦笑)。そういう先輩たちの思いや存在の価値を感じながら、この2作上演という過酷なトライに挑めることを幸せに思いながら演じたいと思います」と語る。中嶋は2作交互上演について「それぞれ単体で読むより、2本をいっぺんに読むと、見えてくる世界が違ってきて、それはマジックだと思うし、それを肉体を使って届けるのが楽しみで仕方ないです」とその意義を強調。ソニンは「読めば読むほどシェイクスピアの描く女性は難しい!」と苦笑い。今回の2作、さらに過去に出演したシェイクスピア作品のいずれでも“貞淑な処女”の役だったことに触れつつ「欲とか人間臭さを秘めて、それが透けて見えるような女性像を作っていけたら」と意気込みを語っていた。『尺には尺を』、『終わりよければすべてよし』交互上演は10月18日より新国立劇場中劇場にて開幕。(文:黒豆直樹)
2023年09月01日年上の素敵なお姉様を招き、お話を伺う「乙女談義」。今回は、過去の名作シリーズをお届けします。女優の市原悦子さんと、料理家の鈴木登紀子さんです。市原悦子「『家政婦は見た!』のお話は、労働者へのエールなんですよ」作品を選ぶとき、役柄が孤独だったり、重く、暗く、不幸な題材に興味を持ちますね。『家政婦は見た!』もそうですよ。あれは働く女の原点を描いている物語。主人公の石崎秋子さんは、バーゲンを漁ってブラウスを買って、それを着て家政婦の仕事に行くわけだけど、お給料は日当だから風邪をひいたらもらえない。体を大事にして、とにかく一日一日働くんだっていう女性。彼女には、夫も子供もいない、猫しかいない。孤独なんですよ。あれは、体を使って汗をかきながら働いている、しかも定収入のない不安定な人たちへの、“元気に頑張ってね”という、エールがこもった作品。社会的に弱い立場の人たちが、エリートに対して憤る。松本清張作品の根本はそこなんです。でもそれをマジメに理屈っぽくやっても、ちょっとね。よくあの作品はユーモラスだと言われましたが、そんな狙いはなかったんですよ。でも人間って一生懸命になり、そして健気だと、おかしいものなんじゃないですか(笑)。いちはら・えつこ女優。千葉県生まれ。俳優座出身。舞台や映画、テレビ、ラジオと幅広く活躍。アニメ『まんが日本昔ばなし』での声の芝居や、ドラマシリーズ『家政婦は見た!』などで知られる。2019年1月に逝去。’15年2月に連載に登場。初出は1943号。鈴木登紀子「長い人生を豊かにするためには、“好きなこと”を見つけましょう」好きこそものの上手なれ、と言いますが、私は小さい頃から母のお手伝いをしていたことで料理を好きになり、40代でそれが仕事になりました。今でも自宅で料理教室を開き、テレビで料理を作ったり、本にまとめたり。毎日好きなことができて、本当に幸せだと思いながら過ごしています。これを読んでいる皆さんは、今はお仕事を一生懸命になさっていることでしょう。でもそれとは別に、何か好きなことを見つけるといいと思いますよ。誰でも、好きなことをしているときは、幸せでしょう?人生はとても長いもの。夢中になれるものを持っていると、年をとったときでも、豊かな時間が過ごせると思いますよ。好きなことは、いくつあってもいいです。若い頃は旅行も好きで、毎年スイスに主人と二人で出かけてました。それもとっても楽しかった。でも今思うのは、美味しい料理を食べることが一番楽しい。娘に「食べすぎちゃダメ」って言われるけど、セーブできなくて困っております。やめられないわね。すずき・ときこ料理研究家。1924年、青森県生まれ。テレビ『きょうの料理』や『あさイチ』(共にNHK総合)などで活躍。『誰も教えなくなった、料理きほんのき』(小学館)など著書多数。2020年12月に逝去。’14年2月に連載に登場。初出は1894号。※『anan』2023年7月26日号より。写真・中島慶子ヘア&メイク・山本理恵(Team/市原さん)(by anan編集部)
2023年07月22日新国立劇場バレエ団『シェイクスピア・ダブルビル』が、4月29日(土・祝) に開幕し、振付のウィル・タケットのコメントと舞台写真が公開された。本公演では、ウィル・タケットが新国立劇場のために創る『マクベス』、そしてアシュトンの英国の雰囲気漂う『夏の夜の夢』の二作品を新制作にてお届けする。新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」『夏の夜の夢』柴山紗帆、木下嘉人『マクベス』は、オリヴィエ賞など数多くの賞を受賞したウィル・タケットを迎え、新国立劇場バレエ団から世界に発信するオリジナルバレエ。スコットランドの作曲家、ジェラルディン・ミュシャによって作曲された同名作品にインスピレーションを得て、オペラや映画でも幾度となく題材として取り上げられてきたこの物語が、タケットの手で新たに生まれ変わる。『夏の夜の夢』は、英国バレエの巨匠フレデリック・アシュトンによる傑作で、まるで絵本の世界から飛び出したような森と妖精たちの世界が華麗に描かれる。新国立劇場では2022年1月に上演を予定するも、新型コロナウイルス感染症の影響により公演中止となり、今回上演されることとなった。新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」『夏の夜の夢』山田悠貴■ウィル・タケット コメント吉田都芸術監督から『マクベスの悲劇』のバレエの依頼を受けたとき、マクベスとマクベス夫人の情熱的で野心的で殺意に満ちた、しかし最終的には悲劇的な夫婦関係を中心に掘り下げるというコンセプトを伺って、一瞬にして魅了されました。シェイクスピア戯曲の登場人物と悲劇的な筋書きが、バレエの観客にとっても魅力的でダイナミックなものに生まれ変わったと確信しています。このような素晴らしい創作の機会を与えていただいた都さんと新国立劇場バレエ団のスタッフの皆さんに感謝しています。そして何より、登場人物に命を吹き込んでくださったバレエダンサーの皆さんに感謝したいと思います。<公演情報>2022 / 2023 シーズン新国立劇場バレエ団『シェイクスピア・ダブルビル』マクベス<新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演>/夏の夜の夢<新制作>芸術監督:吉田都『マクベス』振付:ウィル・タケット音楽:ジェラルディン・ミュシャ編曲:マーティン・イェーツ美術・衣裳:コリン・リッチモンド照明:佐藤啓※一部に、流血表現がございます。『夏の夜の夢』振付:フレデリック・アシュトン音楽:フェリックス・メンデルスゾーン編曲:ジョン・ランチベリー美術・衣裳:デヴィッド・ウォーカー照明:ジョン・B・リード指揮:マーティン・イェーツ管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団出演:新国立劇場バレエ団【公演日程】※終了分は割愛5月2日(火) 19:005月3日(水・祝) 14:005月4日(木・祝) 14:005月5日(金・祝) 14:005月6日(土) 14:00会場:新国立劇場 オペラパレス予定上演時間:約2時間30分(休憩含む)チケット情報:
2023年05月01日PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』が、6月6日(火) から25日(日) にPARCO劇場で上演されることが決定した。『新ハムレット』は、太宰治が戯曲形式の小説として書き下ろした作品で、シェイクスピアの四大悲劇の一つに数えられる『ハムレット』のパロディ。設定は同じながらも太宰治のレンズを通すことで、ハムレットや彼を取り巻く人物たちが拗らせる悩みや関係性が身近に感じられる内容となっている。本作の主人公・ハムレット役は木村達成、ハムレットを慕うオフヰリヤ役は島崎遥香がそれぞれ務める。またハムレットの学友ホレーショー役で加藤諒、侍従長ポローニヤスの息子レヤチーズ役で駒井健介、侍従長ポローニヤス役で池田成志、ハムレットの母でデンマーク王妃ガーツルード役で松下由樹、現王にしてハムレットの叔父にあたるクローヂヤス役で平田満が名を連ねた。演出を手がけるのは、『コーヒーと恋愛』『貴婦人の来訪』『毛皮のヴィーナス』で第30回読売演劇大賞の最優秀演出家賞を受賞した五戸真理枝。古典作品を現代的かつ親しみやすく描く手腕に定評のある五戸が、この戯曲形式の小説を上演用台本にブラッシュアップし、“新しい”ハムレットを立ち上げる。また本作は地方公演も予定されており、詳細は後日アナウンスされる。■上演台本・演出:五戸真理枝 コメント太宰治が筆を執ったこの翻案戯曲は、日本の現代演劇の隠れた至宝なのではないかと、強く惹かれています。『新ハムレット』が書かれた昭和16年は、太宰に初めての子供が生まれ、12月には太平洋戦争が開戦するという年でした。どの登場人物もシェイクスピアの傑作でお馴染みの人物ですが、ひとりひとりの、人生に対する期待と不安が、よりはっきりと描かれています。本家『ハムレット』のように、何度も再演され、語り継がれる物語として存在してほしいです。戯曲の魅力をお客さまにご堪能いただけますように、キャスト、スタッフの皆さまと力を合わせてがんばります。■ハムレット役:木村達成 コメントとんでもない苦悩にぶち当たる、そんな初夏を迎えることになりそうです。冒頭の「からかわないでください、僕は地獄へ行くんです」というセリフがイヤな親近感をわかせます。不思議と読み進めていくうちにフラストレーションより共感することが勝っていました。理解とまではまだいきませんが、その気持ちわかるよハムレットと、背中をさすってやりたい。ぜひお楽しみに、よろしくお願いします。■オフヰリヤ役:島崎遥香 コメントPARCO劇場50周年という記念すべき年に出演させて頂けるなんて光栄です!自分自身、新たな挑戦とも思えるこの作品でまだ出会ったことのない自分に出会えたら嬉しいです。『ハムレット』はイメージとして復讐悲劇のイメージがありますが、『新ハムレット』はユーモアに溢れ、ひとつの家庭のちょっとした喧嘩のようにさえ感じてしまう面白さがあると思いました。そしてどの時代も『愛とは?』という正解があるようでないテーマに悩み苦しむ姿は、現代を生きる私も考えさせられるものがありました。是非観に来て下さい!■ホレーショー役:加藤諒 コメント演出の五戸真理枝さんをはじめ、素敵な座組の一員として、2020年に新しくなったPARCO劇場へ立たせて頂けること、大変嬉しく思います。今は台本をいただいて読んだ所なのですが、未知の洞窟に入っていくような不安と、遠足前夜のようなわくわくが混ざった気持ちを抱いています。力みすぎずに、不安を拭いながら挑めたら良いなと思ってます。僕は出演者なので観る事は出来ませんが、『新ハムレット』早く観たいです。■レヤチーズ役:駒井健介 コメントPARCO劇場開場50周年おめでとうございます。このようなお祭りに、出演者として参加することが出来てとても嬉しいです。登場人物はみんな、ゴツゴツしていて、とても人間くさいです。そこがなんだか愛おしいし、たくさん共感出来る部分でもあります。あ、自分もこういう所あるなって。太宰治の描く新ハムレット。太宰は言います。「作者の勝手な、創造の遊戯にすぎない」と。そんな作者の言葉に勇気をもらいながら、自分も精一杯、創造して遊べたらなと思います。■ポローニヤス役:池田成志 コメントなんじゃこれは!最初に脚本を読んだ感想です。確かに『ハムレット』の体裁なのだけども……確かに普通のお芝居ではないですね。太宰治の小説の中の人間が、いますね、皮肉で、夢想家で、理屈っぽいのに、寂しがり。そして誰もが饒舌なのです、饒舌多弁なのに、肝の事はなかなか言わないんです。普通ではないです。気が滅入りそうです。やるのは難しそうです。でも、少し楽しみです。■ガーツルード役:松下由樹 コメント太宰治のハムレットに今から緊張と期待でいっぱいです。私自身新たな挑戦をする心持ちです。演出家の五戸真理枝さんとキャストの皆さんと面白い舞台になるように頑張ります。新ハムレット、キャストの面々に面白い舞台になる予感しかないです!是非観に来てください。■クローヂヤス役:平田満 コメントシェイクスピアの舞台に出るなんてまったく想像もしなかったのですが、読んでみたらどこをとっても太宰印で、これなら案外恥ずかしくないかも、とその気になってしまいました。みんなが悩んでいるのも小人物ぶりも太宰治らしくて、グローバルスタンダードではない『新ハムレット』は、バズりはしなくても意外といけるかもしれないなと思いました。そんな、器量の小さい、失敗の多い、それでいて真面目な太宰のハムレットが、僕は嫌いではないです。<公演情報>PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』6月6日(火)~6月25日(日) PARCO劇場※地方公演ありPARCO劇場開場50周年記念シリーズ『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』ビジュアル作・太宰治上演台本・演出:五戸真理枝出演:木村達成島崎遥香加藤諒駒井健介/池田成志松下由樹平田満【チケット料金】(全席指定・税込)一般:11,000円U-25チケット:6,000円(観劇時25歳以下対象、要身分証明書(コピー・画像不可、原本のみ有効)、当日指定席券引換/「パルステ!」、チケットぴあにて前売販売のみの取扱い、指定席との連席購入不可(連席ご希望の場合は指定席をご購入ください))一般発売日:4月8日(土)公式サイト:
2023年03月10日新国立劇場の2023/2024シーズンのラインアップ発表会見が3月7日(火)に行われ、各部門の芸術監督が出席した。演劇部門のオープニングを飾るのはシェイクスピアの「尺には尺を」と「終わりよければすべてよし」。新国立劇場で2009年から12年にわたり「ヘンリー六世」、「リチャード二世」などの歴史劇を作り上げてきた制作陣が再集結! 演出に鵜山仁、キャストには岡本健一、浦井健治、中嶋朋子ら実力派俳優陣の名が並ぶ。2作が交互に上演され、キャスト全員が両作品に出演する。小川絵梨子芸術監督は「歴史劇と違った視点でシェイクスピアを綴っていきます。歴史劇ではどうしても男性の役柄が中心になりますが、この2作は女性が“軸”に置かれていて、違った魅力をお届けできると思います」と語る。6作目となるフルオーディション企画では、演出に藤田俊太郎を迎え、小川芸術監督就任以来始まったフルオーディション企画で初のミュージカルとなる「東京ローズ」を上演。2019年に英国の「BURNT LEMON THEATRE」が製作し、日米ふたつの祖国に翻弄されながらも戦う女性の姿を6名の女性キャストで描く。4月から7月にかけて上演される「デカローグ Ⅰ~Ⅹ」は、ポーランド出身の映画監督クシシュトフ・キェシロフスキの映画『デカローグ』の完全舞台化。旧約聖書の十戒をモチ―フにとある団地に住む人々の姿を10篇の物語で描き出す。小川芸術監督自身が20代の頃に見て「ずっとやりたいと思っていた」という本作。「人間の根源的な葛藤や悩み、『何が正しいのか?』ということを問い続けていく物語。日々の選択で犯す間違いや悩み、弱さ、それでも愛したいという思いなど、等身大の人間の姿を真摯に見つめる作品です」と語る。上演台本を須貝英が手がけ、小川と上村聡史が5篇ずつ演出を担当する。小川が就任以来、力を入れてきた長期にわたって作品を育てていく「こつこつプロジェクト」も第3期がスタートする予定。さらにギャラリープロジェクトとして中高生向けのワークショップやバックステージツアーなども積極的に行なっていく予定だという。コロナ禍における公共劇場の役割について問われた小川芸術監督は「公演を行なうだけの場ではないということが重要だと思います。たとえ公演ができなくともトークなど、やれることがあり、劇場に来れば“文化”がある。収益が出にくい部分ですが、だからこそ公共の劇場がやるのはよいことだと思います」とその意義を訴えた。取材・文:黒豆直樹
2023年03月09日大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で圧倒的な存在感を見せた俳優・小栗旬が魅せるシェイクスピア演劇、『ジョン王』が上演されている(東京公演:Bunkamuraシアターコクーンにて1月22日まで、埼玉公演:埼玉会館 大ホールにて2月17日~2月24日)。同作は1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもとでシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指し、国内外に次々と話題作を発表してきた彩の国シェイクスピア・シリーズの最後を飾る作品となる。2017年12月、シリーズ2代目芸術監督に就任した俳優・吉田鋼太郎が演出する『アテネのタイモン』でシリーズが再開され、2019年2月に『ヘンリー五世』、2020年2月に『ヘンリー八世』を上演し、『ジョン王』が、完結目前の第36弾として2020年6月に上演予定であったが、緊急事態宣言の影響で敢え無く中止に。2021年5月に上演された第37弾『終わりよければすべてよし』でいったんのシリーズ完結を迎えたが、『ジョン王』を上演しないことにはシリーズは終われないという吉田の強い想いから、改めて上演が決定した。小栗が演じるのは、生命力とユーモアにあふれ世の中をシニカルに見つめる若者“私生児”。16年ぶりにシリーズに復帰で、本作がシリーズ4作品目の出演となる。東京公演ではタイトルロールの“ジョン王”役に吉原光夫、演出も兼ねる吉田鋼太郎がジョン王と敵対する“フランス王”役で出演する中で、小栗が何を感じているのか、話を聞いた。○■『鎌倉殿の13人』が終わってすぐ稽古に――大河ドラマの撮影が終わってすぐ『ジョン王』の稽古に入られたとのことで、率直にどういう気持ちで臨まれていたんですか?全然、やりたくなかったです(笑)。でもやるしかないから頑張っています。もちろん上演を渇望していたところだったんですけど、やっぱり『鎌倉殿の13人』の撮影が終わって2週間ぐらいで稽古開始だったので、さすがにきついなあ! と。もうちょっと、ぼ〜っとしてたかったんです。1週間ぐらいしかゆっくりできず、次の週からすぐに準備を始めなきゃいけなかったので、どうしても「もうセリフを覚えたくない……」という気持ちはありました。――ちなみに今の髪型は役に関係あるのでしょうか?2年間ずっと黒髪で伸ばしていたので、イメチェンしたかっただけです(笑)――『鎌倉殿の13人』もシェイクスピア劇に近いと言われていましたが、共通するものは感じましたか?たしかに三谷さんがシェイクスピア劇と重なる部分があるとおっしゃってました。例えば実朝と和田義盛の関係が『ヘンリー四世』のハル王子とフォルスタッフみたいだということとか。どこかでシェイクスピア劇の中での人物像を、鎌倉に置き換えられていると思うんです。でも言葉も全然違うし、演じる方としては、とにかくシェイクスピアは基本的にセリフが長いんだと実感しています(笑)――たしかに、戯曲を読み込むのも一苦労ですよね。ただそこは演出の鋼太郎さんが素晴らしい読み解き方をされていて、鋼太郎さんの説明によって自分たちの中でも輪郭が見えてくるんです。セリフを覚えながら台本を読んでた時には「これ、なんなんだろう」と思っていたような箇所が、減っています。ある意味、もしコロナで中止にならず2年前にこの公演をやっていたら、こういう読み解き方とか受け取り方って、僕らもたぶんしなかっただろうなと思うんです。やっぱりコロナというもので、1度中止になり、そこから自国ではないにしろ戦争というものを身近に感じているわけで、改めて思うのは『ジョン王』は戦争をテーマにした物語だということです。正直そのまま読んでいくと、物語に対してどうしてこうなるんだ、と思うところもあるんですが、演じてみると思った以上に群像劇のようにみんなに見せ場があって、常軌を逸した状況の中で人間らしさみたいなものが浮き彫りになってくる。自分は演じる“私生児”というキャラクターにある種の客観性も持たせながら話を進めていって、客席と作品の世界をつなぐ存在みたいな感じだと思っています。作品を通して、結局戦争ってあまりに人の人生を変えるものなんだということを、お客さんに近い形で受け取ってもらえるようになっているのではないかと思っています。ここまでエネルギーのある芝居は、最近なかなかないんじゃないかなと思うんですよね。例えるとすると、”ラーメン二郎”みたいなことだと思います。コッテリ味に全部のせ、みたいな感じなのにもう1度食べたいと思わせるみたいな。○■「勉強」は客に見せる手前の段階――小栗さんは蜷川幸雄さんから「古典をやろう」と言われたことがあったそうですが、実際に俳優としてシェイクスピアのような古典演劇をやる意義は、どのようなところにあると思いますか?古典って、何百年経っても作品が残り、それでいて今でも必ず上演されていると思うと、やっぱりすごいパワーを持っているんですよね。結局、数百年前から人間ってさして変わらないんじゃん! みたいな。新作が生まれても、結局どこかで古典を踏襲していたり、オマージュであるということがつきまとう世の中で、原点に還ると思うと面白いですし、特にシェイクスピアってとにかくしゃべらなきゃいけない、しゃべって人を面白がらせる戯曲なので、なかなか現代劇では同じようなものはないと思うんです。それを楽しんでできるのは、本当にやる意義があることだなと思います。――若手の俳優の方も「挑戦したい」と言うこともあるかと思いますが、そこについてはどう思われますか?それはもう……やりたい人だけやればいいと思います。今やお芝居の形も、やれることも、本当にいろんな方向がありますからね。わざわざ無理して古典をやる必要もないと思うし。僕が昔から非常に思ってることは、ある時から、若い子たちがみんな舞台に出ることを「勉強」みたいに言ってるんじゃないか、と。いやいや、お客さんがいる時点で勉強なんかしてる場合じゃないよ、と思っている自分もいるんです。――確かに! 小栗さん自身はそういう感覚はないまま挑まれていたのでしょうか?僕はいつのまにか蜷川塾みたいなところに入って、勉強したくもないのに無理矢理勉強させられたみたいなところがあったのかもしれません(笑)。本当にノウハウも教えてもらったし、今となったら財産でありがたいことだなと思っています。でもどうしてそういうことになるのかというと、結局現代に生きる僕たちが、あまりに演劇に対する素養がなさすぎるというか、素地がないというか、そういう状況だから、どうしても「勉強します」という環境になっちゃうんだろうな、と。もちろん学ぶ場所は探せばどこにでもあって、舞台で学ぶこともたくさんありますけど、でもやっぱり「学ぶ」って、お客さんに見せる手前の段階だと思うんです。だから演劇を学びの場だと思ってるなら、違うんだぞ! といつでも考えてはいます。――一方で、客席で観る方としてもあまり素養がないのかも…と感じてしまうこともありますが…。でも、観た方はどんな風に受け取ってもいいと思うんですよね。別に何かを知ってなければいけないとか、ない。単純に観た人にとって面白いか、面白くないかで判断すればいいだけだと思うんです。だからたとえば時代背景とか、この表現にある種のオマージュがあるとか、時代に対するアンチテーゼなんだとか、そういう意図は作ってる側が意識するだけでよくて。観て面白いと思ったら、違う枝葉が生まれて興味が広がっていくと思うので、そこを楽しんでもらえればいいと思います。今は演劇もいろんな視聴方法がある状況で、全てはお客さんに委ねられていて、僕たち作り手はそこに迎合するしかない環境の中にいるんです。でも演劇ってやっぱり足を運んでもらって、一緒に空間を共有するということが素晴らしい体験だと僕は思っています。演じる僕らもそうですけど、集まったお客さんのエネルギーがすごいパワーをもってくるし、僕たちはそれを上回るパワーでいなきゃいけないと思っているんです。だから、その気持ちをしっかり受け取って帰ってもらったらうれしいです。■小栗旬1982年12月26日生まれ、東京都出身。98年、ドラマ『GTO』で連続ドラマレギュラーデビュー。03年、蜷川幸雄演出の舞台『ハムレット』に初出演し、以降は蜷川作品の常連となる。主な出演作はドラマ『花より男子』シリーズ(05~07年)、『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(07年)、『信長協奏曲』(14年)、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(17年)、『日本沈没-希望のひと-』(21年)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22年)、映画『クローズZERO』シリーズ(07/09年)、『銀魂』シリーズ(17/18年)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19年)、『罪の声』(20年)、『キャラクター』(21年)など。
2023年01月12日吉田鋼太郎による演出、小栗旬の主演舞台、彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』が、最終舞台稽古を終え本日12月26日(月) にBunkamuraシアターコクーンにて初日を迎える。1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもとでシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指し、国内外に次々と話題作を発表してきた彩の国シェイクスピア・シリーズ。その芸術監督を引き継いだ吉田鋼太郎によって、シリーズ真の完結を迎える作品となる『ジョン王』。上演される機会が非常に少なく“幻の歴史劇”と呼ばれるほどの本作を、今の日本の観客にいかに届けるべきか腐心したという吉田がテーマと捉えたのは、本作が全編にわたり描いている“国と国との戦争”。本来であれば2020年6月に上演される予定であった『ジョン王』は世界を襲った災厄により延期となり、奇しくも“戦争”が強く意識されることになった2022年の年末に開幕するという偶然を必然と捉え、本作の演出構想を一変させたという。今秋に再演されたシリーズ第36弾の『ヘンリー八世』とは全く異なる世界観を演出し、吉田の演出手腕の幅広さと、強いメッセージを感じる作品となった。主役となる私生児役を演じるのは、主演を勤め上げたNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が最終回を迎えたばかりの小栗旬。本日26日、舞台の初日が自身40歳の誕生日となった小栗は、10代から舞台に立ち続けた彼だからこその多彩な表現で、一人の青年が出生の真実を知り王族となって戦争に足を踏み入れていく様子を演じる。1993年に吉田鋼太郎も演じたこの役はシェイクスピア作品の見せ場である独白が多い難役だが、小栗は16年ぶりのシリーズ参加というブランクを感じさせない緩急のあるセリフ回しで言葉を的確に客席へ届ける。セリフだけでなく、殺陣や、とある演出でも観客を魅了し物語へ引き込んでいく。左より)小栗旬、吉原光夫ジョン王役の吉原光夫は本作がシェイクスピア作品初挑戦となるが、ミュージカルで培った華々しい存在感がタイトルロールにぴたりとはまるだけでなく、こまやかな芝居が人間的魅力にあふれ、一国の主の傲慢と虚勢と弱さをあぶりだしていく。左より)中村京蔵、吉原光夫吉田はフランス王役としても出演。シェイクスピアの言葉ひとつひとつを真に理解しようと心を砕き口にするそのセリフからは、観客が受け取るべき真実が見えてくる。左より)吉原光夫、吉田鋼太郎約400年前に描かれた本作と現代を結びつける構造を加え、かつて若者がメッセージを込めて歌ったフォークソングが流れる、吉田の用意した演劇的な仕掛けに観客は心を揺さぶられてエンディングを迎えるだろう。左より)玉置玲央、吉田鋼太郎高橋 努真ん中より)植本純米、白石隼也上演時間は1幕80分、休憩20分、2幕80分の3時間予定。公演は12月26日(月)~1月22日(日) まで渋谷・Bunkamuraシアターコクーンにて上演。その後1月26日(木)~29日(日) 愛知・御園座、2月3日(金)~12日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、2月17日(金)~24日(金) 埼玉・埼玉会館にて上演される。<コメント>■吉田鋼太郎いよいよ彩の国シェイクスピア・シリーズ最後の作品『ジョン王』が開幕いたします。主演に小栗旬くん、ジョン王役に吉原光夫さんを迎え、非常に中身の濃い作品となっております。また、滅多に上演されることのないレアな作品でもあります。この機会をお見逃しなく。様々な衝撃を、色々な想いを、皆さんの胸に送り込むことが出来るのではないかと思っております。ぜひ楽しみにしていらしてください。今回はリラックス・パフォーマンスという新しい試みも行います。芝居の中身はいつも通りに、幅広く、色々な方に観ていただけたら幸いです。色々なサポートも用意されているようなので、ぜひ利用してみてください。■小栗旬今ゲネプロを終えて、なんと口にしていいかまだまとまらないけれど、とにかく高カロリーな芝居です。「何を見せられているんだろう」と戸惑う瞬間もあるかもしれません。僕たちはとことん真面目に、今あるこの世界の中で『ジョン王』という物語を上演したらどうなるだろう、どうすべきだろう、と皆で向き合って創った作品なので楽しんでもらえたら嬉しいです。また、今回はリラックス・パフォーマンス公演もあります。初めての試みで、俳優陣にとってもどんなことになるのかドキドキする部分もありますが、普段は演劇を観に行くことに躊躇してしまう方々にも、気楽に一つの娯楽として楽しんでいただける機会になれば、とても良いことだなと思っています。リラックス・パフォーマンス公演詳細:<公演情報>彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』公演ビジュアル【スタッフ】作:W.シェイクスピア翻訳:松岡和子演出:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)【キャスト】小栗旬 / 吉原光夫中村京蔵 / 玉置玲央 / 白石隼也 / 高橋努 / 植本純米間宮啓行 / 廣田高志 / 塚本幸男 / 飯田邦博 / 坪内守 / 水口テツ / 鈴木彰紀 / 堀源起 / 阿部丈二 / 山本直寛 / 續木淳平 / 大西達之介 / 松本こうせい / 酒井禅功・佐藤 凌(Wキャスト) / 五味川竜馬吉田鋼太郎<東京公演>期間:2022年12月26日(月)~2023年1月22日(日)会場:Bunkamuraシアターコクーン<愛知公演>期間:2023年1月26日(木)~29日(日)会場:御園座問い合わせ:御園座TEL:052-222-8222(平日10:00~18:00)<大阪公演>期間:2023年2月3日(金)~12日(日)会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティお問合せ:梅田芸術劇場TEL:06-6377-3888(10:00~18:00)<埼玉公演>期間:2023年2月17日(金)~24日(金)会場:埼玉会館お問い合わせ:SAFチケットセンターTEL:0570-064-939(月曜・埼玉会館休館日を除く10:00~17:00)※本公演にジョン王役で出演を予定されていた横田栄司さんは、心身の不調のため降板されることとなりました。東京公演におきまして同役は、吉原光夫さんが出演、埼玉・愛知・大阪公演については、同役を吉田鋼太郎さんが務め、東京公演で吉田さんが演じるフランス王役として、新たに櫻井章喜さんが出演。関連リンクホリプロステージ 公式HP:「彩の国シェイクスピア・シリーズ」公式Twitter:
2022年12月26日コロナ禍での中止を余儀なくされた、彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』が、ついに2年半越しの上演を決定!大河ドラマ『鎌倉殿の13人』も話題の小栗旬が、主演を続投する。もちろん演出を担うのは、故蜷川幸雄から本シリーズのバトンを受け継いだ吉田鋼太郎。さらに吉田はフランス王(東京公演)、ジョン王(愛知・大阪・埼玉公演)も演じる。1998年からスタートした本シリーズも、ついに今回で本当の最後。作品について、小栗について、シリーズについてなど、たっぷりと吉田に語ってもらった。世相の変化により演出プランは白紙に――コロナ禍による全公演中止から2年半。ついに『ジョン王』の上演が決定しました。現在の率直なお気持ちは?この10月、同じく2年半前に一部の公演が中止になった『ヘンリー八世』の再演が無事に終わり、心からホッとしているところです。ただもちろんコロナ禍がおさまったわけではありませんし、今回こそ最後まで出来ればいいなと、ドキドキハラハラしている状態。ただロシアのウクライナ侵攻が始まったり、この2年半の間にだいぶ世の中が変わってしまいましたから。前回予定していた演出プランなどは、一度すべて見直さないといけないなと。今の世の中でどんなお芝居をやっていけばいいのか、どういうお芝居を作っていけば人の心に響くのか、そういったことをかなり慎重に考えていかなければいけない。つまり改めてやれる喜びと、果たしてそんな芝居が出来るのかという不安と、両方が入り混じっている感覚です。――その演出プランについて、現段階ではどのような構想が?やはり戦場が舞台の芝居なので、お客様の中には現在進行形で行われている戦争ってものが絶対にちらつくと思うんです。そして自分の中にもあるその問題意識を、どうやって吐露するのか。だから恐らくわりと激しい芝居になるのではないかと思います。俳優としては「これちょっとやりたくないぞ」と思うくらいの、そんな仕掛けになるような気がしています。――作品のキーパーソンとなる私生児を演じるのは、吉田さんとのおつき合いも長い小栗旬さんです。俳優として、どういった魅力を持った方だと思いますか?僕とかはわりとその役になり切ってしまう、憑依型の俳優なんですが、小栗くんっていうのは必ず客観性があって、それが良さでもある気がするんです。ただ今回に関しては、この役が目の前で起こっている出来事に対してのめり込んでいくように、小栗くん自身ののめり込んでいく姿が見えるといいなと。だから最終的には髪の毛を振り乱して、もう涙でぐちゃぐちゃになっている小栗くんが見たいと思っています。――小栗さんと言えば、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での好演も話題ですね。小栗くんももう40歳になりますからね。大人の色気や力強さみたいなものも見せてほしいわけで。ただそれはある程度『鎌倉殿~』でも見せてきた部分だと思うので、そこを土台に、さらに成長した姿をお客様に見せつけて欲しいなと。大河のあとにシェイクスピアなんて、なかなかこんな機会ないですから。――大河での経験を、すべてこの『ジョン王』に注げるわけですね。そうそう。ある意味、こっちは得してるって感じです(笑)。この作品、蜷川さんならどうしますか?――「彩の国シェイクスピア・シリーズ」は、彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督であった、故蜷川幸雄さんによって1998年にスタートし、蜷川さん亡き後の2017年からは、吉田さんが演出を担い、跡を継がれています。この壮大なシリーズも、ついに本作をもって真の完結を迎えますね。役者として脂が乗り始める時期の20年、40代から50代後半にかけてはシリーズ一色でやってきた感がありますからね。感慨というよりは、まだずっと続いているような感覚があります。蜷川さんはすでに亡くなられているとはいえ、(片手を少し挙げながら)いつもこの辺にいるわけで(笑)。「鋼太郎、それでいいのか?」と常に問われているような感じ。だから終わってホッとしているとか、ちょっとセンチメンタルになる、みたいなことはありませんね。――俳優として、さらに演出家としても携わることで、ご自身にどんな変化や成長をもたらしてくれたシリーズだったと思いますか?俳優ってどうしても心が折れがちなんですが、このシリーズで長い時間を過ごすことで、ものすごい胆力、底力みたいなものはついたと思います。「自分に高いハードルを課さなければ、人を感動させるものなんて作れない」ということは、蜷川さんに嫌と言うほど教えられましたが、心が折れそうになった時でも、いやもうひと頑張りしよう、もうひと頑張り出来るんじゃないか、と自分に言い聞かせられるようになりました。諦めない、みたいなね。それは蜷川さんからもらった、とても大事なものだと思っています。――とはいえ今回の『ジョン王』は、一筋縄ではいかない作品ではないでしょうか?蜷川さんに言いたいです。よくぞこの一番ややこしい、面白くない芝居を残して逝ってしまわれましたね、と(笑)。蜷川さんならどうしますか?と。まぁ稽古前の今(インタビュー時)の状況ではまだなんとも言えないですが……、すごくわかりやすい、シンプルな話ではあるんですよ。ただシンプルだからこそ、ちゃんと演出を加えないと、「なんだったんですか、これ?」と言われてしまう。ただそれがまた楽しくもあるんですけどね。シェイクスピアはこちらがいかようにしようとも、それを許してくれますから。まぁシェイクスピアの中では駄作なんて言われている作品ですが、絶対にそんなことはないですし、本当にレアで面白い舞台にします。たぶん今後40年は上演されない作品だと思いますので(笑)、くれぐれもお見逃しなきよう。取材・文=野上瑠美子撮影=You Ishiiぴあアプリ限定!アプリで応募プレゼント★吉田鋼太郎さんのサイン入りポラを抽選で2名様にプレゼント!【応募方法】1. 「ぴあアプリ」をダウンロードする。こちら() からもダウンロードできます2. 「ぴあアプリ」をインストールしたら早速応募!<公演情報>彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』■東京公演2022年12月26日(月)~2023年1月22日(日)会場:Bunkamuraシアターコクーン■埼玉公演2023年2年17日(金)~2023年2月24日(金)会場:埼玉会館 大ホールチケットはこちら:
2022年11月30日彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』が、12月から2023年2月にかけて東京、愛知、大阪、埼玉で上演されることが決定した。1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもとでシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指し、国内外に次々と話題作を発表してきた同シリーズ。本作は、完結目前の第36弾として2020年6月に上演予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で中止に。2021年5月に上演された第37弾『終わりよければすべてよし』でいったんのシリーズ完結を迎えたが、『ジョン王』を上演しないことにはシリーズは終われないという2代目芸術監督・吉田鋼太郎の強い想いから、このたび改めて上演される運びとなった。生命力とユーモアにあふれ世の中をシニカルに見つめる若者・私生児を主演として演じるのは、16年ぶりに同シリーズに復帰する小栗旬。そして、タイトルロールのジョン王役にはシリーズを代表する俳優・横田栄司。演出も兼ねる吉田は、ジョン王と敵対するフランス王役で出演する。また今回は蜷川の時代から度々上演されてきた、女性の登場人物含めすべての役を男性キャストが演じる“オールメール”公演となる。演出の吉田が「モーレツな女性」と評する3人の女性たちは、ジョン王の母・皇太后エリナー役に中村京蔵、幼き息子アーサーを王にすべく奔走する・コンスタンス役に玉置玲央、ジョン王の姪でフランス皇太子と結婚する姫・ブランシュ役に植本純米という布陣。さらに、フランス王の息子・皇太子ルイ役に白石隼也、ジョン王の臣下・ヒューバート役に高橋努など、シリーズ初参加の若手からシリーズ常連の面々まで、多様な魅力を持った俳優陣が集結した。東京公演、埼玉公演のチケットは今秋発売される予定だ。■吉田鋼太郎 コメント彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』。一昨年予定されていた上演はコロナ禍により遺憾ながら全公演中止となってしまいました。コロナの影響はまだまだ予断を許さない状況ですが、主演の小栗旬始めキャスト、スタッフ一同、2020年の中止から今回の上演まで更に2年間の準備期間を貰ったと解釈し、リベンジマッチに向け意気軒昂にそして粛々と動き始めています。近年殆んど上演される事のない、シェイクスピアの作品中最も駄作とさえ言われるこの『ジョン王』。蜷川幸雄の志を継いだ我々彩の国シェイクスピアチームと、約15年の歳月を経てこのシリーズに帰って来た小栗旬、そして初参加の強力な俳優達の共演が、駄作と呼ばれたこの作品にどんな光を当てる事ができるのか、楽しみでもあり少し不安でもあり、今から武者震いが止まりません。果たして駄作なのか、それとも…。皆様、どうぞ劇場でお確かめ下さい。■小栗旬 コメント本当ならばもう終わっているはずの公演が時を経て、 改めて出来ることになりました。再びこの場に戻してくれた鋼太郎さん、私にとって特別な彩の国シェイクスピア・シリーズ。楽しみにしてくれているお客様。本当に感謝しています。しばらく板の上を離れている自分に果たして務まるのか、一抹の不安はありますが、やらなくては、やるんだ。どうぞ、蜷川さん、怒らず見守ってください。後は皆様どうなることか、目撃してください。■横田栄司 コメント「『ジョン王』やらないんですか?」この2年間で一番聞かれた質問です。ようやく「やりますよ!」と答えられます。本当に長かったです。お待ちいただいた皆さま、ありがとうございました。そして、大変お待たせいたしました。皆さまのご期待にお応えできるよう、鋼太郎さんや旬をはじめとするキャスト・スタッフと力を合わせ、たくさん稽古をしてお待ちしております。溜まりに溜まった2年分の鬱憤を、さあ、思いっきりみんなで一緒に解き放ちましょう!<公演情報>彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』公演ビジュアル【スタッフ】作:W.シェイクスピア翻訳:松岡和子演出:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)【キャスト】小栗旬、横田栄司中村京蔵、玉置玲央、白石隼也、高橋努、植本純米間宮啓行、廣田高志、塚本幸男、飯田邦博、坪内守、水口テツ、鈴木彰紀、堀源起、阿部丈二、山本直寛、續木淳平、大西達之介、松本こうせい吉田鋼太郎【東京公演】期間:12月下旬~2023年1月会場:Bunkamuraシアターコクーン【埼玉公演】期間:2023年2月会場:埼玉会館お問い合わせ:彩の国さいたま芸術劇場TEL:0570-064-939(休館日を除く10:00~19:00)※2023年1月愛知公演、2月大阪公演あり※本公演にジョン王役で出演を予定されていた横田栄司さんは、心身の不調のため降板されることとなりました。東京公演におきまして同役は、吉原光夫さんが出演、埼玉・愛知・大阪公演については、同役を吉田鋼太郎さんが務め、東京公演で吉田さんが演じるフランス王役として、新たに櫻井章喜さんが出演。関連リンクホリプロステージ 公式HP:「彩の国シェイクスピア・シリーズ」公式Twitter:
2022年07月27日浜中文一と桜井日奈子がW主演を務める、浪花節シェイクスピア「富美男と夕莉子」のゲネプロ・囲み取材会が5月4日(水・祝)に東京・紀伊國屋ホールで行われ、脚本・演出の末満健一、浜中、桜井が初日に向けた意気込みを語った。撮影:堀川高志本作は、末満が、世界で最も有名な悲恋劇である「ロミオとジュリエット」を原案に、舞台を昭和の大阪に移して描く作品。物語は、紋田木弁太郎役の近藤頌利と、九羽平千代蔵役の板倉チヒロによる前説からスタート。大阪の架空の町である浪花坂で、任侠一家「紋田木家」の息子・富美男と、対立する「九羽平家」の娘・夕莉子が命を落とす。それは、両家の対立に起因する悲劇であった。彼らの家族、友人たちは、ふたりが交わしていた交換日記から、なぜふたりが死ななければならなかったのかを探っていく。誰もが知るロミオとジュリエットの恋物語を描きながら、大阪弁で人情味溢れる物語へと変貌させた今作。浜中が演じる富美男も桜井が演じる夕莉子も、時に暴走し、“おバカ”なやり取りで周りをズッコケさせるが、互いに素直に気持ちをぶつけ合い、真っ直ぐに生きる姿は魅力的だ。“悲恋”というイメージとは違う力強い物語が繰り広げられる。ゲネプロ後に行われた会見で、浜中は「稽古1週間くらいで、台本を通して演じていたので、そこから考えると結構時間が経っている。もちろんドキドキしているところもありますが、ようやく始まるんだという気持ちです」と初日を直前に控えた心境を語った。一方、桜井は「これから本番ですが、ゲネプロで力を使い果たした感があるくらい、みんなで“とみゆり”の世界観を作っていけた。本番を楽しみにしていたので、無事に迎えられて嬉しいです」と笑顔。作・演出の末満は、「悲劇として有名な『ロミオとジュリエット』が題材ですが、こんなにも元気になって、こんなにも恋がしたくなると思ってもらえると思います。そんじょそこらのマッチングアプリには負けないくらい恋がしたくなります」と自信をのぞかせた。浜中と桜井は本作が初共演。浜中が「初めてお会いした時にビジュアル撮影をして、抱き合っている画(え)を撮影したんです。僕も日奈ちゃんも人見知りで、初日で抱き合うのはきつい」と苦笑いで初対面時のエピソードを明かすと、桜井も「抱き合っているときは息ができなかった」と同意。しかし、その後の稽古場で「席が隣同士だったので、『昨日、何食べた?何時に寝た?』というところから会話が弾んでいきました」と桜井は振り返った。原案の「ロミオとジュリエット」といえば、悲恋物語としてあまりにも有名だ。しかし、本作では「演じていても、台本を読んでていても、ガチガチの恋愛ものじゃないのに、恋をしたくなる。恋って生きる原動力になるんだなと思うような作品になっている」と浜中は話す。末満は、「シェイクスピアのお芝居は、テンション高く話しているなと感じ、それを関西弁でワーッて話したらすごく合いそうだなと思ったことをきっかけ」に本作を構想したそうで、「シェイクスピア作品が好きだという方がこれを観てどう思われるのかというのは興味深いので、ぜひ観に来てもらえたら」と呼びかけた。会見の最後には、末満は「『ロミオとジュリエット』には難しい、悲劇、苦しい、残酷なイメージがあると思いますが、(今作は)世界一優しいシェイクスピア作品になっていると思います。シェイクスピアを知っている方も知らない方もお楽しみいただけたら」と改めてアピール。桜井も「若い2人の恋愛物語なんでしょうって思う方も多いと思いますが、本気で恋をしながらも、本気でふざけている舞台になっているので、笑いたい方は、ぜひいらしてください。楽しくお届けできると思います」と語った。そして、浜中は「難しいお芝居ではないので、普段、あまりお芝居を観劇されない方も気負わずに観に来ていただけたら。恋を始めてみようかなと思っていただけるように頑張りますので、楽しんでください」とメッセージを贈り、会見を締めくくった。浪花節シェイクスピア「富美男と夕莉子」は、5月4日(水・祝)〜17日(火)に東京・紀伊國屋ホール、5月29日(日)〜30日(月)に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演。【公演概要】浪花節シェイクスピア「富美男と夕莉子」東京公演:2022年5月4日(水・祝)~17日(火)東京・紀伊國屋ホール大阪公演:2022年5月29日(日)~30日(月)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ【原案】ウィリアム・シェイクスピア「ロミオとジュリエット」より【脚本・演出】末満健一【出演】浜中文一、桜井日奈子、松島庄汰、近藤頌利、板倉チヒロ、幸田尚子、緒方晋、高木稟、明星真由美、オクイシュージ他【チケット】全席指定 9,800円(税込)《公式サイト》 《公式Twitter》@tomiyuri2022撮影:堀川高志/文:嶋田真己 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年05月04日宮崎駿監督のアニメーション映画『となりのトトロ』が、イギリスの名門演劇カンパニー「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー」(RSC)によって初めて舞台化されることが決定。この秋、ロンドンのバービカン劇場で上演される予定だ。サツキとメイの姉妹が、森で出会った不思議ないきものトトロとの交流を描き、1988年に公開されたアニメーション映画『となりのトトロ』。今回の舞台化は、映画音楽を手掛けた久石譲が提案し、宮崎監督がこれを快諾したことで始まった。今作では、久石さんがエグゼクティブ・プロデューサーを務める。以前から『となりのトトロ』の舞台化を熱望していたRSC。演出は「アクナーテン」でローレンス・オリヴィエ賞を受賞、数々のオペラ作品を手掛けてきたフェリム・マクダーモット。脚本は、書き下ろし作品「オッペンハイマー」でRSCが世に送り出した注目の若手脚本家トム・モートン=スミスが手掛ける。舞台化にあたり久石さんは「日本にはミュージカルや舞台を好きな人が大勢います。ところが、日本発の世界中で上演されているオリジナル舞台作品、あるいはミュージカル作品がありません。『となりのトトロ』は世界中の人が知っている日本の作品です。もし舞台になったら、世界に出ていく最初の作品になるんじゃないか、そういう思いがあって『僕が観たい』と、宮崎さんに話した」と今回のプロジェクト始動のきっかけを明かす。続けて「外国で舞台化すると、スペクタクルになってしまう心配があります。トトロが飛び回ったりすることがないよう、僕は言い続けています。お互いに率直に意見を言い合える、いい関係で作っています。とても素晴らしい舞台になると思っています」と期待を寄せている。また、題字を手掛けたスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーも「果たしてどうやってトトロと出会えるのか。とても楽しみにしています」とコメントしている。なお本作は、演出のフェリム・マクダーモットが主宰するカンパニー「インプロバブル」が制作協力し、RSCと日本テレビの共同制作となる。「MY NEIGHBOUR TOTORO」は10月8日(土)~2023年1月21日(土)ロンドン・バービカン劇場にて上演。※10月8日(土)~14日(金)はプレビュー期間(cinemacafe.net)■関連作品:となりのトトロ 1988年4月16日より公開
2022年04月27日12月15日(水)より上演される舞台「シェイクスピア様ご乱心」にモデル・坂口風詩(さかぐち ふうた)が出演することが分かった。晩餐ヒロックス2年ぶりの本公演となる今作は、『賭ケグルイ』シリーズや、現在放送中の「真犯人フラグ」を手掛けた脚本家・高野水登の企画協力の元、2016年に発表した舞台を新演出、新キャストで上演。劇作家ウィリアム・シェイクスピアの幻の新作が発見され、世界最速公演を目指して大急ぎで準備が進められるが、肝心の作品が“クソつまらなかった”。さらに、トラブル続出で稽古は進まず、現場は大荒れする始末。本番前夜の劇場で繰り広げられる、すったもんだの大騒動が描かれる。今回新たに発表されたのは、配信番組「恋愛ドラマな恋がしたい~Kiss On The Bed~」に参加し、今作が初の舞台出演となる坂口さん。演じるのは、向上心とプライドの塊である実力派舞台女優・サキ。「まだ正直自分が舞台に出演することが信じられないくらい驚いています。初舞台なのでとても緊張していますがワクワクもしていて、これから始まる稽古が楽しみです!」と期待し、「先輩たちに迷惑をかけないように、沢山学んで人一倍努力しないといけないなと思っています。もちろん不安もありますが、持ち前の気合いと根性で乗り切って、自信を持って本番を迎えたいです!」と意気込んでいる。なお本公演のチケットは、カンフェティにて11月13日(土)11時より先行発売される。晩餐ヒロックス特別興行第1弾「シェイクスピア様ご乱心」は12月15日(水)~26日(日)中野ザ・ポケットにて上演。(cinemacafe.net)
2021年11月11日明治大学文学部は、本学創立140周年記念事業として、演劇界における明治大学とシェイクスピアのかかわりを広く知っていただく機会を提供するため、「明治大学とシェイクスピア」と題し、展示会を開催いたします。本学は多くの演劇人を輩出していますが、彼らの多くがシェイクスピアの上演においても優れた成果を披露しています。また、何より今年で第18回を数える「明治大学シェイクスピアプロジェクト」(MSP)の伝統もあります。今回の展示では、こうした明治大学出身の代表的演劇人の功績を紹介し、同時に、MSPの全18回の活動を振り返ります。ぜひ、この機会に日本のシェイクスピア上演史の中で明治大学が果たしてきた貢献を実感してください。■ 《紹介予定の方たち(敬称略)》木下順二(劇作家/元文学部教授)、唐 十郎(劇作家、演出家、小説家/元文学部客員教授/2021年度文化功労者)、青木豪(劇作家、演出家/元文学部兼任講師)、谷 賢一(劇作家、演出家)、原田大二郎(俳優、明治大学シェイクスピアプロジェクト創設者)表1: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2021年11月11日パルコ・プロデュース 2021『ジュリアス・シーザー』は、女性キャストたちだけで描かれるシェイクスピア劇。その見どころを吉田羊さんに聞きました。意外にも、シェイクスピア劇への出演は初めてだという吉田羊さん。「観客として観るシェイクスピアって難解で、途中でセリフを聞き逃すと置いていかれてしまうんですよね。役者としては、舞台上の俳優の胆力とパッションに圧倒されるのだけど、それをどう楽しんでいいかわからない。でも、今思えば、自分と関係のないものだと決めつけて、その魅力に向き合おうとしてこなかっただけなのかなと感じています」というのも、今回初タッグとなる森新太郎さんの演出を受けて、これまで抱いてきたシェイクスピア戯曲のイメージがガラッと変わったそう。「森さんは演出するうえで、英語の原典を引用されるんです。たとえば、同じ“自由”という言葉でも、自ら闘って得ていく“liberty”と人間がもともと持っている権利としての“freedom”では、ニュアンスが違いますよね。そういう言葉ひとつひとつを読み解いて、シェイクスピアが表現しようとする真意を理解して演じさせようとしてくださる。ひとつひとつに時間をかけるので、稽古が始まって10日ほどですが、まだ本読み段階(笑)。それでも、シェイクスピアで大事なのは言葉で、役者同士が言葉という武器を手に戦う作品ですから、着実に理解は深まっていると思います」森さんの稽古は声を荒げることなく淡々と快活に、でも何度も何度も何度も同じ場面を繰り返すスタイル。「98点では満足しない方なんですよね。だから100点が出るまで何度も繰り返すんです。でもそれって、役者を信頼してくれているからで、だからこっちも食らいついていけるんです。何より森さん自身がおもちゃを与えられた子供みたいに、誰より稽古を楽しんでいますから。あと、演出するときに用いる比喩の表現が本当に面白くて」そんな森さんからは、「役の感情に流されないように」ということも。「今回は、言葉を伝えることを重視しているため、感情を作るのは大事だけれど、流されずに言葉をしっかり相手に投げていく訓練をしています。これまで、『セリフを歌うな』というダメ出しはされてきましたが、今回は逆。言葉のリズムが音楽の旋律のようで、口にするうち自然に体に馴染んで気持ちよくなっていく。今まで感じたことがない体験です」舞台『ジュリアス・シーザー』は、共和制ローマの最高実力者・シーザーの暗殺を巡る権力闘争と愛憎の物語。吉田さんはシーザーの親友ながら、暗殺に力を貸すことになるブルータス役。なんと今作は、すべての役が女性キャストによって上演される。シェイクスピアの時代の上演スタイルを踏襲して全役男性で演じられることはときどきあるが、オールフィメールは珍しい試み。「最初こそ俺という一人称に違和感がありましたけど(笑)、戯曲の中の性別を固定するようなセリフは今回ほぼカットされていますし、性別を超えた人間の物語として観ていただけるんじゃないでしょうか。ジェンダーレスが声高に叫ばれる昨今ですが、根本にあるのは、性別で人間をはかるなってことだと思うんです。どんな感情も人間が等しく持つもので、性別によって区別されるものではない。この作品を通じて、そういうメッセージを発信できたらと思うし、そういう意味でまさに今やるにふさわしい作品ですよね」嫉妬や欲が渦巻く中で、ブルータスは「私利私欲がなくて、誠実だと誰もが評する人物」。「人望が厚く優しいけれど、ここぞというときに詰めが甘くて、その優しさが自分の首を絞めていく。そんな人間味のあるブルータスをお見せしたいと思っています」近年の吉田さんといえば、ジェーン・スーさんのエッセイをドラマ化した『生きるとか死ぬとか父親とか』や、異色の設定で話題を呼んだドラマ『きれいのくに』など、ひと癖ある作品に出演している印象が。「脚本、演出家、企画…判断基準はいろいろありますが、基本的にやりたいかやりたくないかの直感です。お芝居って心なので、自分が面白いと思って取り組めないと伝わってしまう。だからこそ心を大事に作品を選んでいきたいなと思うんです」ならば今回の舞台、出演を決めた最大のポイントはどこですか?「優先順位をつけるのは難しいですが、一番はPARCO劇場かな。選ばれた俳優しか出られない劇場のイメージ。長く小劇場で演劇をやってきて、あそこに呼ばれるようになりたいと奮闘してきたので、成功させるぞという思いで臨みます」共和制末期のローマ。次々と戦果を挙げ権力を増大化させていくシーザー(シルビア)の存在を危ぶんだキャシアス(松本)。ブルータス(吉田)を仲間に引き入れ、シーザーを暗殺する。その知らせを聞いたアントニー(松井)は…。10月10日(日)~31日(日)渋谷・PARCO劇場作/ウィリアム・シェイクスピア演出/森新太郎出演/吉田羊、松井玲奈、松本紀保、シルビア・グラブ、三田和代ほか全席指定1万1000円ほかパルコステージ TEL:03・3477・5858大阪、山形、福島、宮城、富山、愛知公演あり。よしだ・よう福岡県出身。舞台を中心に活動する中、2009 年の『returns』や‘11年の『国民の映画』などの三谷幸喜演出舞台に出演し注目を集める。最近の出演作にドラマ『恋する母たち』など。ブラウス¥75,900 スカート¥86,900ピアス¥26,400(以上sacai TEL:03・6418・5977)※『anan』2021年10月13日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・梅山弘子ヘア&メイク・井手真紗子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年10月12日シェイクスピアのローマ史劇の名作を、女性キャストだけで上演することで注目を集めている、森新太郎演出・吉田羊主演『ジュリアス・シーザー』が10月10日、東京・PARCO劇場で開幕した。その演出力の高さから俳優たちから最も信頼されている演出家・森新太郎が、3月に上演された『Romeo and Juliet ーロミオとジュリエットー』に続いて今年2本目のシェイクスピア劇を手がける本作。もとは男性による政争劇だが、性別を意識させるセリフをあえて排除し、オールフィメールキャストたちが「男性」を演じるのではなく、「人間」を演じるよう演出。人の業や欲望、正義や信念といったものをつまびらかにしながら、よりリアルな人間たちのドラマを浮き彫りにしていく。初日を終えて森は、「権力闘争劇の金字塔ともいうべき本作が、これほどまでに様々な感情の渦巻く人間ドラマであるとは知りませんでした。オールフィメールで臨んだことによって、この作品の新たな魅力に出会えたような気がします。歴史劇や政治劇の類い、そして何よりもシェイクスピア劇といったものに普段まったく食指が動かぬ方にこそ、是非観ていただきたく思います」とコメント。主人公・ブルータスを演じる吉田羊は、「お客様が入って、この作品の最後のピースが埋まったというか、物語が完成したなという感じがしました」と初日公演の感想を述べ、「シリアスな物語にも関わらず笑いが絶えず、毎日、演出をつけられた役者が目に見えて変わっていく様がとても面白かったです」と稽古を振り返る。見どころについては「“言葉”によって突き動かされていく人々の物語を、かくもドラマティックかつパワフルに仕上げた森新太郎氏の手腕! そう来たか!と唸って頂きたいです!」と息巻く。シーザーの腹心の部下・アントニー役の松井玲奈は、「稽古中の『芝居は呼吸。息を吸ったときに感情が生まれる』という森さんの言葉が強く印象に残っています。今まで感じていたことがハッキリとした言葉で表された時、ハッとするものがあり、この現場での大きな学びの言葉となりました(中略)アントニーを演じる上では、生まれた感情を殺さないようにしたいと考えています。ブルータスとアントニーの演説場面は大きな見どころのひとつです。民衆の心が動かされていくように、客席の皆様の心までも動かす演説ができるよう、ひとりひとりの心に強く訴えかけていきたいと思います」と稽古での手ごたえと見どころについて語った。シーザー暗殺を企てるキャシアス役の松本紀保は、稽古を振り返り「キャストが女性だけなので、稽古場でのリラックスした時間は女子校の休み時間の様な雰囲気で、笑顔のたえない時間でした」としつつ、「演出の森さんとは 2 回目ですが、とにかく容赦ないダメ出しの嵐は 2 回目も健在でした。役者の心に火をつけるのがとても上手な演出家だと思います。今回は歌手、スポーツ選手、芸人さんなど、〇〇さんのようにという例えを使われていてそこがとてもわかりやすく面白かったです」「この作品は全てが見せ場なので、1シーンたりとも見逃せない! なかでも民衆達が扇動されていく姿は、現代にも通じるも のがあるのではないでしょうか」とコメントを寄せた。シルビア・グラブが演じるジュリアス・シーザーは今回「妻のキャルパーニアの前では弱みをかなり見せてます」とのこと。「男たちのドラマであるのはもちろん、今回、森さんはキャラクターのヒントとしていろんな俳優や有名人の名前を持ち出し、そのキャラクターに近づけていくキャストの皆さんを見るのが楽しかった。古畑任三郎をはじめ、松岡修造さんからオードリーの春日さんまで、バラエティに飛んだキャラクターたちがステージ上に隠れています」と松本同様、独特な森演出についてふれた。上演は10月31日(日)までPARCO劇場にて。その後、大阪・山形・福島・宮城・富山・愛知と全国を巡る。
2021年10月11日1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもと、シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指す「彩の国シェイクスピア・シリーズ」は、蜷川亡き後、2016年10月に二代目芸術監督・吉田鋼太郎が就任し、翌年12月に『アテネのタイモン』によって再開された。そのシリーズ最後の作品となる『終わりよければすべてよし』について、演出・出演の吉田鋼太郎に話を聞いた。「なんとか希望を見出そうとしている人」はすごく美しい――お稽古がスタートして、現時点で感じている手応えをお聞かせください。『終わりよければすべてよし』は、シェイクスピア作品の中でもあまり上演されないものです。なぜかと言うと、不備な点があるとか、扱いづらいとか、終わり方がちょっと苦いとか、カタルシスがないとか、そういうことらしいのですが、実際に稽古をしてみて、ひょっとしたらこれは『ハムレット』と双璧の面白い芝居なんじゃないかと思い始めています。これはアピールでも宣伝でもなんでもなくてね。――それはなぜですか?この作品の主人公でもある(石原さとみ演じる)ヘレンは、自分の運命を自分の力で切り拓いていき、自分の思うような人生を手に入れるという人なんです。そのパワー、その力強さ、そのひたむきさ、そして可憐さがとても魅力的で、その一言一言に、その行動に、目が釘付けになります。『終わりよければすべてよし』メインビジュアル――それをうかがうと、逆になぜこの作品が「問題劇」と言われているのかが気になります。物語の序盤でヘレンは、(藤原竜也演じる)バートラムと結婚をするのですが、その結婚は王の権力によって決められたもので、バートラムはそれを拒否するんですよ。それでヘレンも一度は身を引くけれども、やっぱりバートラムが好き、自分のものにしたいと、ある策略をします。一言でいうと、バートラムをだましてベッドを共にする。それで妊娠するんですけど、え、それやっていいことなの!? って話じゃないですか。それはちょっとダークな話なんじゃないの?と。そういう苦さがある芝居なんですよ。ただそれは、裏を返せば非常に現実的なんですけどね。そこには夢も希望もないかもしれないけども。――なるほど。そういうこともあって、みんなこの芝居をどう解釈していいかわからなかったというところがある。でもそれは戯曲を“読んで”思うことであって、実際に稽古をしてみると、全然そうじゃないんです。そこがシェイクスピアのすごいところ。やっぱり人間は、自分のしあわせを勝ち取るためにあらゆる努力を惜しまない、あるいは、惜しまないほうがいいじゃないですか。諦めちゃうよりも。そういう「なんとか希望を見出そうとしている人」はすごく美しいわけです。それによって周りの人間たちも感化されて、どんどん変わっていくんですね。この作品はそういう美しい構造を持っていることが、稽古しているうちにわかってきて、これはものすごく感動するんじゃないかと思っています。蜷川組の血を受け継ぐ藤原竜也と、“全部持ってる”石原さとみの共演――どんな芝居になりますか?盛りだくさんな芝居になると思いますよ。俳優たちがすごく個性的だし、役も人間臭くて、いつにも増して個性的だから。――さらに描かれるものも盛りだくさんで。そう、そこが面白いところなんですよ。しめやかなところはしめやかだし、悲しみのどん底になることもあるし、だけど賑やかなところはめっちゃ賑やかっていう。ふり幅がすごく激しい芝居です。それを俳優さんたちがキッチリ体現してくれれば、どこを観ていいかわからないくらい盛りだくさんな芝居になると思います。――藤原竜也さんがこのシェイクスピア・シリーズの最後の作品に出演されるのが嬉しいです。やっぱ竜也が出ないとね。蜷川さんなしには語れない俳優人生だから。ぜひこの作品には出てほしいとオファーしました。――稽古場ではいかがですか?もうね、蜷川組の血を受け継いでいますから。「そこでそんなことする?」「そこでそんな大きい声出す!?」「そこで転がる!?」みたいな(笑)。やりたい放題やっていますよ。やっぱり竜也が芝居すると、蜷川さんがいるなって感じがしますね。他のキャストも、「こういうところなんだ、蜷川組の稽古場は」とびっくりしていますしね。楽しいです。――石原さとみさんはどんな方ですか?役にピッタリですよ。悲しむ時はその悲しみ方も深いし、そこから立ち直るパワーもすごいし、行動していく賢さ、パワー、情緒、頭脳……石原さとみは全部持ってるから。――それ以外の皆さんも個性的ですよね。そう。だから、それぞれの個性を出して、やりたいようにやってくれと言っています。強烈だと思うよ~(笑)。――ご自身も出演されますが。強烈だと思う!(笑)――(笑)。登場人物も個性的なのですか?基本的にこの芝居の登場人物は、人間の“負”の部分を持っています。例えば(横田栄司演じる)パローレスはいつも嘘ばかりついて、自分を良く見せようとする。僕が演じるフランス王は、権力を振りかざしてみんなに言うことを聞かせようとする専制君主。道化のラヴァッチも常に軽口を叩いていて、その軽口は肉欲、性欲のことなんです。でもそういう人はおそらく現実にもいますよね。つまりみんな非常に人間的。これでもかというくらい人間的な登場人物です。今作は蜷川さんが残した“無名な作品”の最たるもの――「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の最終作品となりますが、そこはどうお感じですか?感慨深いです。僕自身が俳優として鍛えてもらったシリーズですし、僕の人生において絶対に大切な現場だったので。まさかその最後の演出を自分がやるとは思ってもいませんでした。責任は重大であるというプレッシャーはあるんだけれども、それは心地よい……と言うとカッコつけすぎなんだろうけど。このシリーズを楽しみされているお客さんはたくさんいらっしゃいますし、このシリーズに出演してきた綺羅星の如き俳優さんたちもたくさんいらっしゃいますし、その人たちが最後に「よかったね」と言えるような作品に、絶対にしてやろうと思っています。――楽しみです。自画自賛になりますが、このシリーズでは「え、この戯曲がこんなふうになるの!?」とよく言っていただけるんですよ。というのも、蜷川さんが残したのが無名な作品ばかりだったから。今回はその最たるものになると思います。シリーズファイナルの演出は、最初のシーンで劇場の半数の人が泣く!?――おっしゃる通り、吉田鋼太郎演出のシェイクスピアはわかりやすい、ということは、シリーズのキャストの方々からも何度もうかがいました。なぜなのでしょうか?それはおそらく僕が18歳からシェイクスピア作品をやっているからだと思います。ものすごい本数をやってきましたから。だいたい、本で読むシェイクスピアって全然面白くないんですよ。やっぱり芝居でやってこそ。そこは絶対に守らなきゃいけないというか。本で読んだほうが面白かったと思われないようにしなきゃいけない、というのはずっと自分の使命のようになっています。――余談ですが、ラストならではの演出もあったりするのでしょうか?あります。最初のシーンを見たらわかるようにしてあります。そこで劇場の半数の人が泣くと思います。――半数も泣くんですか!?(笑)。具体的には言えないけどね。俺だったら泣きます。――コロナ禍での上演についてはどう思われていますか?今年の1月に『スルース~探偵~』(演出・出演)という芝居をやった時に、お客さんって本当に芝居が観たいなんだなってことがよくわかったんですよ。もうね、ものすごい観ますもん。食い入るようにして。「今観なきゃ、いつ観られなくなるかわからない!」というような感じで。観る側にそれだけの意欲があるのであれば、こっちはそんなに工夫しなくてもいいんじゃないかという気すらしました。そうなると、こっちの負担は減るんですよ。怠けられるという意味ではなくてね。いい関係性ができるから、「さあ観てくれ!がんばるから観てくれ!」じゃなくていいわけです。どちらかというと今までの俺は「さあ観てくれ!」が強いほうだったので、それでお客さんは「ちょっとうるさいな」とか「そんな大きい声出さなくてもいいのにな」とか(笑)。――ちなみに前作『ジョン王』の中止はどう思われていますか?そこは延期と考えていただきたいです。近い将来、必ずやります。小栗(旬)くんも久しぶりのシェイクスピア作品でとても意気込んでいたからね。必ずやるつもりです。――では最後に、個人的に楽しみになさっていることを教えてください。ラストシーンです。「問題劇」と言われる所以のひとつで、なんとなく気持ち悪いラストシーンなんです、本で読むとね。でも多分、シェイクスピア全作品の中で一番素敵なラストシーンだと思う。よくぞこの『終わりよければすべてよし』を書いてくれたと思うくらい。この大団円に、こういうシーンを持ってきてくれるっていうのがね。もう全部がうまくいっている感じがして。もちろん、蜷川さんは亡くなったし、コロナ禍でもあるから、「すべてよし」とは言えないけれど、「終わりよければすべてよし」は願いでもあるので。幕が開くのを楽しみにしていてください。取材・文:中川實穗撮影:HIRO KIMURA公演情報彩の国シェイクスピア・シリーズ第37弾『終わりよければすべてよし』作:W・シェイクスピア翻訳:松岡和子演出:吉田鋼太郎出演:藤原竜也 / 石原さとみ / 溝端淳平 / 正名僕蔵 / 山谷花純 / 河内大和 / 宮本裕子 / 横田栄司 / 吉田鋼太郎廣田高志 / 原慎一郎 / 佐々木誠 / 橋本好弘 / 鈴木彰紀 / 堀源起 / 齋藤慎平 / 山田美波 / 坂田周子 / 沢海陽子【埼玉公演】2021年5月12日(水)~2021年5月29日(土)会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール【宮城公演】2021年6月4日(金)~2021年6月6日(日)会場:名取市文化会館 大ホール【大阪公演】2021年6月10日(木)~2021年6月13日(日)会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ【豊橋公演】2021年6月18日(金)~2021年6月20日(日)会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール【鳥栖公演】2021年6月26日(土)~2021年6月28日(月)会場:鳥栖市民文化会館 大ホール最新の公演情報につきましては、公式サイトにてご確認ください。(本ページに掲載された情報は5月7日時点のもの)
2021年05月07日「彩の国シェイクスピア・シリーズ」のフィナーレにあたる舞台『終わりよければすべてよし』が、2021年5月に、彩の国埼玉芸術劇場 大ホールで上演される。宮城・仙台、大阪、愛知・豊橋、佐賀・鳥栖での公演も予定。「彩の国シェイクスピア・シリーズ」がフィナーレへ「彩の国シェイクスピア・シリーズ」は、シェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指すシリーズ。1998年のスタート以来、芸術監督・蜷川幸雄のもと、国内外で次々と話題作を発表してきた。2016年10月には、故・蜷川幸雄の後を継ぎ、シリーズ二代目芸術監督に俳優・吉田鋼太郎が就任。2017年12月に『アテネのタイモン』でシリーズを再開させ、2020年2月に上演した『ヘンリー八世』では、その演出手腕が高い評価を得た。23年の時を経てフィナーレを飾る第37弾『終わりよければすべてよし』は、若き伯爵バートラムに恋する身分違いの孤児ヘレンを中心とした物語。バートラムが縦横無尽に駆け巡る姿や、バートラムに一途に好意を寄せるヘレンの様子に、最後まで釘付けになる作品だ。藤原竜也&石原さとみ&吉田鋼太郎が出演キャストには、フィナーレに相応しい豪華メンバーが集結。バートラム役を藤原竜也、ヘレン役を石原さとみが務め、芸術監督の吉田鋼太郎もフランス王役で出演する。<ストーリー>舞台はフランス。ルシヨンの若き伯爵バートラムと家臣のパローレスらは、病の床にあるフランス国王に伺候するためパリに向かう。バートラムの母ルシヨン伯爵夫人の庇護を受ける美しい孤児ヘレンはバートラムに想いを寄せているが、身分違いで打ち明けられない。ヘレンは優れた医師の父から受け継いだ秘伝の処方箋で瀕死の国王を治療し、見返りに夫を選ぶ権利を与えられる。ヘレンはバートラムを指名するが、バートラムは貧乏医師の娘とは結婚しないと断固拒否、しかし国王に叱責されしぶしぶ承諾する。やむを得ず結婚したもののヘレンと初夜を共にする気のないバートラムは「自分の身に着けている指輪を手に入れ、自分の子を宿さなくては夫婦にならない」と手紙で宣言し、伊フィレンツェの戦役へ赴く。ヘレンは巡礼の旅という口実のもと、彼を追ってフィレンツェへ。そこでキャピレット未亡人の家に身を寄せ、当地でバートラムが大きな戦功を上げたこと、そしてバートラムが未亡人の娘ダイアナに求愛していることを知る。ヘレンは真の妻となるためにダイアナとキャピレット未亡人に協力してもらい、ある計画を実行に移す…。【詳細】『終わりよければすべてよし』上演時期:2021年5月場所:彩の国埼玉芸術劇場 大ホール住所:埼玉県さいたま市中央区上峰3-15-1TEL:048-858-5500チケット発売:3月27日(土)予定※仙台、大阪、豊橋、鳥栖公演あり。<キャスト>バートラム:藤原竜也ヘレン:石原さとみデュメイン兄弟:溝端淳平ラフュー:正名僕蔵ダイアナ:山谷花純デュメイン兄弟:河内大和ルシヨン伯爵夫人:宮本裕子パローレス:横田栄司フランス王:吉田鋼太郎
2021年01月23日第一線で活躍中の声優陣によるリーディング形式で、シェイクスピアの代表作『マクベス』が、11月26日(木)よりサンシャイン劇場にて上演されることが発表された。『マクベス』は、実在のスコットランド王マクベスをモデルにした、シェイクスピアの四大悲劇のひとつ。勇猛果敢な一面と小心な性格を持ち合わせた将軍マクベスは、妻と一緒に謀って主君を暗殺し、王位の座を得るが…。演出は映画監督や舞台演出家として活躍する深作健太が担当する。出演者は各公演6名ずつ日替わりで登場。主人公のマクベス役として、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』で毒島メイソン理鶯の声を担当する神尾晋一郎、『テニスの王子様』のアニメやミュージカルにも出演経験のある豊永利行など、豪華声優陣が第1弾キャストとして発表された。今回の『マクベス』はただ座って読むスタイルの朗読劇ではなく、深作が声優の表現力を最大限引き出す演出で上演されるとのことだ。「声のプロフェッショナルが奏でるリーディングシェイクスピア『マクベス』」作:ウィリアム・シェイクスピア翻訳:平田綾子構成・演出:深作健太期間:2020年11月26日(木)~12月6日(日)会場:サンシャイン劇場出演:《第一弾発表公演》11月27日(金)19:00神尾晋一郎、古賀葵、代永翼、増元拓也、竹内栄治、帆世雄一11月29日(日)13:00豊永利行、安済知佳、中島ヨシキ、坂泰斗、矢野奨吾、堀江瞬11月29日(日)19:00豊永利行、諏訪彩花、中島ヨシキ、坂泰斗、矢野奨吾、堀江瞬12月4日(金)19:00中島ヨシキ、工藤晴香、小野友樹、山中真尋、竹内栄治、汐谷文康12月6日(日)12:30駒田航、石見舞菜香、石谷春貴、荻野晴朗、村田太志、市川蒼12月6日(日)18:00駒田航、大原さやか、石谷春貴、笠間淳、中澤まさとも、榊原優希
2020年10月30日新国立劇場が2009年より続けてきたシェイクスピア歴史劇シリーズが、本日10月2日(金)に開幕する『リチャード二世』をもっていよいよ完結する。通しで観ると9時間を超える上演時間となった2009年の『ヘンリー六世』三部作に始まり、2012年の『リチャード三世』、2016年の『ヘンリー四世』二部作、そして2018年の『ヘンリー五世』まで。毎回ほぼ同じスタッフ・キャストが集結するだけでなく、『ヘンリー六世』と『リチャード三世』、『ヘンリー四世』と『ヘンリー五世』では同一俳優が同じ役を引き継いで演じるという、世界的にみても珍しい趣向で演劇界の話題をさらってきた。今回は役こそ異なるが、岡本健一、浦井健治、中嶋朋子らお馴染みの面々が再集結。演出はもちろん、鵜山仁が務める。文・町田麻子
2020年10月02日