第90回アカデミー賞「外国語映画賞」にノミネートされた、ジアド・ドゥエイリ監督作『判決、ふたつの希望』が現在公開中。8月31日に日本公開したばかりの本作だが、すでに都内で満席の大ヒットを記録し、公開劇場は全国わずか4館だったが、現状、50館で拡大上映が決定し、大きな賑わいを見せている。◆世界中の映画ファンが絶賛! 監督自身の実体験を基にした映画クエンティン・タランティーノ監督のアシスタント・カメラマンという経歴を持つドゥエイリ監督が手掛ける本作は、ふたりの男性の間に起きた些細な口論が、ある侮辱的な言動をきっかけに裁判沙汰となり、国家を揺るがす騒乱にまで発展する――というストーリー。監督自身の“実体験”を基に作り上げた物語だ。本作は宗派や信条の違いを超え、レバノン国内で爆発的な大ヒットを記録。第90回アカデミー賞では、レバノン史上初となる外国語映画賞ノミネートの快挙を成し遂げ、さらに第74回ヴェネチア国際映画祭では、主演俳優のひとり、カメル・エル=バシャが最優秀男優賞を受賞。米有名映画レビューサイトロッテン・トマトでは満足度90%の高評価を獲得(※6月14日時点)と、世界中の映画ファンから圧倒的な支持を集める話題作となっている。◆日本でも好スタート! 都内で満席も続々先月末に日本公開を迎えた本作。公開週末がサービスディに重なったこともあり、メイン館であるTOHOシネマズシャンテでは、早朝に1回上映回を増やす対応をとったが、それを含む計5回が早くから完売し、東京・大阪2館の土日で計9回の完売が続出。またオープニング成績は、土日2日間(全国4館)では、動員数:3,036人、興行収入:3,589,700円。公開3日間では動員数:3,864人、興行収入:4,627,600円を記録した。◆女性からも支持! 満足度1位にも上映後の満足度も非常に高く、Twitterでは「静かな良作」「あまりにも傑作すぎて震えてる…」「笑えて泣けて考えさせられる作品だった」「まさに希望を持てるのでこれは傑作」「素敵な映画だった」「今年のベスト級!」「今年一番」と高評価。また、国内最大規模の映画レビューサイト「coco」では、映画レビュアー満足度は100%、ポジティブ(好評価)指数96%と高い数値を示し、「coco」ユーザーも「ドラマティックな要素も盛り込まれた良作」「譲り合いや助け合いについて学ぶ傑作」「いまに訴えるものがある」と絶賛する声が多数寄せられている。宗教や民族などが深く関わる本作とあって、すでに本作を観賞した人たちからは「パレスチナ人とレバノンの関係を少し勉強して行った方が楽しめるかも」と、予備知識を入れてみた方が良いという投稿や、「パレスチナ問題ってこういう一面もあるのか。あまり報道されないので、知る機会を得た」と、改めて他国の情勢に触れる機会も作った本作。“法廷もの”ながら、鑑賞者の男女比は半々と意外にも女性客の動員も多く、内、年齢層は高めではあるものの20代からシニアまで幅広い。また単独、夫婦、友人同士、団体など形態が多様なのも特徴的で、女性からも支持されるのは、そんなドラマとしての評価の高さがしっかり伝わっていたからなのかもしれない。◆ラストに待つのは感動…?一方、複雑で難しいばかりかと思えば、「笑えて泣けて考えさせられる作品」「社会派作品だけど重すぎずテンポもいいから暗い気分にはならなかった」「歴史的な重いテーマを扱いながらエンタメとしても面白い」「俳優さんたちもすごいよかった…」といった投稿も。また、「政治的に描くだけでなくエンタメ映画としてパッケージした手腕が最高。最後は清々しさまで感じるラストは天才かよ、と。オススメ!」「こんなラストだったらいいのになあという所に上手い事着地するので気持ちいい」と、特にラストシーンを絶賛する声が多く寄せられ、観終わった後も反芻したくなる人が続出している。わずか全国4館スタートから、拡大上映も決定した本作。『タクシー運転手 約束は海を越えて』や『カメラを止めるな!』などと同様、良質な口コミが今後もより幅広い映画ファンに拡がっていくだろう。『判決、ふたつの希望』はTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開中。(cinemacafe.net)■関連作品:判決、ふたつの希望 2018年8月31日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開© 2017 TESSALIT PRODUCTIONS–ROUGE INTERNATIONAL–EZEKIEL FILMS–SCOPE PICTURES–DOURI FILMS
2018年09月04日何かとストレスの溜まりやすい現代。些細なことがきっかけで予想以上にイライラしてしまうことはありませんか?そこで、そんな誰にでも起こりえる感情を見事に映し出し、世界中で喝さいを浴びている話題作をご紹介します。それは……。各国で数々の賞に輝いた感動作『判決、ふたつの希望』!【映画、ときどき私】 vol. 182レバノンの首都ベイルートにある住宅街。違法建築の補修作業を行っていたパレスチナ人のヤーセルは、あるアパートのバルコニーで水漏れを防ぐ作業を行っていた。ところが、その部屋に住むレバノン人男性で自動車修理工のトニーが突如憤慨し、配水管を破壊。それに対して、ヤーセルは暴言を吐いてしまうのだった。しかし、ヤーセルに謝罪を求めるトニーもまた侮辱的な言葉を発してしまい、法廷へと持ち込まれる事態になる。キリスト教徒のトニーとパレスチナ難民のヤーセルという2人の背景もあり、両者の口論はいつしか国全土を揺るがす出来事へ発展していくことに……。日本人にとってはあまりなじみのない中東問題を描いている部分もあるため、敬遠してしまう女子もいるかもしれませんが、この作品の見どころはむしろ人間ドラマと二転三転する法廷劇。歴史的背景を知らない人こそ、新たな扉を開くきっかけになる作品です。そこで今回は、本作の裏側についてこちらの方に話を聞いてきました。それは……。レバノンを代表するジアド・ドゥエイリ監督!若いころにはクエンティン・タランティーノ監督のもとでカメラアシスタントをしながら経験を積み、徐々に頭角を現してきたドゥエイリ監督。これまでも国際的に高い評価を得ていますが、本作では主演のカメル・エル=バシャにベネチア国際映画祭で最優秀男優賞をもたらし、レバノン史上初となるアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされる快挙も成し遂げています。自身の体験から生まれた物語―この作品のきっかけとなったのは、数年前に監督が実際に経験したことだそうですが、そのときのことを教えてください。監督僕はサボテンが好きで集めていたんだけど、ベランダで水をやっていたら下の人に水がかかってしまって、そのあと口論になったんだ。そこで激昂してしまった僕は、映画のセリフと同じようなことを口にしてしまったんだよ。そのときは、奥さんに言われて謝りに行ったからすぐに事態は収束したけどね。―そのときに映画の題材にすることを思いついたのですか?監督そんなふうに些細なことが大きなトラブルになっていくさまを自分でも見ているんだけれど、前からそういうストーリーを思いついてしまう自分もいて、「なぜだろう?」と実はずっと思っていたんだ。その答えは、やはり子ども時代にレバノン内戦を体験していて、そこで恐怖心というものを感じていたからじゃないかな。たとえば、日本では誰かとぶつかって口論になったとしてもそれくらいで終わりだよね?でも、戦争中だと相手がマシンガンを持っているし、それぞれの人の背景にはいろんな政党があったりもするから、それ以上の大きな問題に簡単に発展してしまうんだ。実はどこでも起こりえること―監督自身も子どもの頃からそういう体験を数多くしてきたのですね。監督何度も目にしてきてもいたし、実際に自分の身にも起きたことがあるよ。子どものときに父親が運転する車が検問所で止められたんだけど、財布を出せと言われたんだ。でも、父親は財布を出さずに、代わりにパンをやると言って、車からパンを投げた。それに対して怒った民兵が仲間に声をかけて、突然6、7台のジープに囲まれて危険な状態に陥ってしまったこともあるんだ。そういった経験を何度も何度もしているからこそ、些細なことが恐ろしい事態になるという物語をこの作品では描きたかった。でも、それはレバノンだけではなく、アメリカにいたときにも駐車違反の切符を巡って女性警官と口論になったことがあるし、どこでもそうなることは想像ができるよ。―では、登場人物たちは監督が出会った人たちをモデルにしているのでしょうか?監督まず、トニーはいま自分が住んでいるレバノンの家の近くに住む自動車修理工の人がインスピレーションの源になっているよ。彼が右寄りのキリスト教徒だというのは知っていたんだけど、実は僕は子どもの頃に右寄りで武闘派のキリスト教徒ほど最悪な人間はいないとずっと思い込んでいたんだ。でも、実際は彼ほど親切な人はいないというくらいいい人だし、素晴らしい腕の持ち主でもあるんだよね。トニーというキャラクターは彼から始まったけど、どんどん肉付けしていったから、原形はそんなにとどめていないかな。しかも、彼は自分がモデルになったことをいまでも知らないんだ(笑)。―ヤーセルのほうはどうですか?監督実際に僕が水をかけてしまった人のことはよく知らないし、15分くらいやりとりをしただけだったから、特にモデルにはしてないよ。でも、そのときに彼が黄色い眼鏡をかけていたから、衣装さんにはヤーセル用に黄色い眼鏡を用意してもうようにだけはお願いしたんだ(笑)。俳優陣の熱演も見逃せない!―今回は俳優陣も本当に素晴らしかったですが、監督独自の演出方法などがあれば教えてください。監督特に細かい演出ということはしていなかったよ。それよりも、キャスティングに6か月かけて、精査して選んだんだ。だから、現場では読み合わせをして、リハーサルをして、撮影するだけだった。特に、トニーとヤーセルを演じた2人の俳優は直感型のタイプだから、特にメソッド的なことは必要なかったよ。彼らも、現場では役を引きずることなく、普通に話していたしね。おもしろかったのは弁護士の2人の方かな。というのも、トニーの弁護士役の俳優が大学で演劇を教えている先生で、ヤーセルの弁護士役の女優が本物の生徒だったから、彼のことを現場では「教授」って呼んでいたんだ。レバノンをより知るためには?―この作品を拝見すると、レバノンの歴史や文化に触れることもできるので、日本でも興味を持つ人は増えるかと思います。レバノンをより知るためにオススメの映画や本などはありますか?監督映画や本では足りないから、一番いいのは2か月くらいレバノンに住んでみることだね(笑)!すごく歓迎してくれる場所でもあるので、理解できないことも多いかもしれないけど、少しずつ好きになってもらえると思うよ。日本では物事や歴史について、ある程度統一した見解を持っていると思うけど、レバノンは18の宗派が共生していて単一の思考がないし、それぞれの歴史を主張するような国。50の国に50の歴史があるようなそんなところなんだ。だから、レバノンの歴史については、レバノン人にとっても本当に複雑なものなんだよ。レバノンというのは、モダンなところもあれば、伝統的なところあって、ムスリムの顔もあれば、キリスト教徒的な顔もある。無宗教的なところもあるし、共産党主義的なところもあるというように、すべてがある場所だから、まずは住んでみて、働いてみて、恋愛をしてみて、食事をしてみてというのがレバノンを知るのには一番いいかもね。女性に希望を見出している―それでは最後に、ananwebを読んでいる女性読者に向けてメッセージをお願いします!監督中東のことを日本の女性がどんなふうに思うのかわからないけれど、中東の女性というのは状況をよくしようといま闘っているところだし、僕は女性に希望を見出しているんだ。中東が置かれている暴力的な状況も、権力の座に女性がつけば絶対にいいほうに変わるんじゃないかと思っているくらい。日本よりもアメリカよりもどの国よりも、中東あるいはレバノンの大統領が女性になればいいなと思うし、アラブ圏のなかで女性がもっと力を持つようになったら、物事はもっと良くなるようになるんじゃないかな。衝撃と感動が込み上げる!レバノンという国が抱える問題を描きながらも、根底にあるのは人間としての尊厳や人生における過ち、葛藤、他人を許す寛容さ、家族への愛といった誰もが感じる普遍的な思い。トニー、ヤーセルどちらの姿にも心を揺さぶられる感動を味わってみては?息をのむ予告編はこちら!作品情報『判決、ふたつの希望』8月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開配給:ロングライドⓒ 2017 TESSALIT PRODUCTIONS–ROUGE INTERNATIONAL–EZEKIEL FILMS–SCOPE PICTURES–DOURI FILMS
2018年08月29日映画『判決、ふたつの希望』が2018年8月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次公開される。2018年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品『判決、ふたつの希望』は、レバノン出身の気鋭の監督、ジアド・ドゥエイリの最新作。2017年べネチア国際映画祭にて、主演のカメル・エル=バシャが最優秀男優賞を受賞するなど世界中から絶賛を受けた作品だ。レバノン映画では史上初の、2018年アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされている。『判決、ふたつの希望』は、キリスト教徒のレバノン人男性がパレスチナ難民の男性との口論で侮辱を受けたことが裁判沙汰へと発展し、やがて全国的な事件へと展開していく物語。内戦下のレバノンで育った監督のジアド・ドゥエイリの経験をもとに、独自の視点で描かれた本作は、各メディアで賞賛の的となった。監督のジアド・ドゥエイリは、クエンティン・タランティーノのアシスタント・カメラマンとして『レザボア・ドッグス』や『パルプ・ フィクション』といった作品に参加した経歴を持つ。その後に、1998年の『西ベイルート』で監督デビュー。イスラエル人俳優を起用し、イスラエルで撮影を行ったため、政府によりレバノン国内での上映が禁止された『The Attack(原題)』など、話題性のあるセンセーショナルな作品を精力的に制作し、国際的に高く評価されている。ストーリーレバノンの首都ベイルート。その一角で住宅の補修作業を行っていたパレスチナ人のヤーセルと、キリスト教徒のレバノン人男性トニーが、アパートのバルコニーからの水漏れをめぐって諍いを起こす。このとき両者の間に起きたある侮辱的な言動をきっかけに対立は法廷へ持ち込まれる。やがて両者の弁護士が激烈な論戦を繰り広げるなか、この裁判に飛びついたメディアが両陣営の衝突を大々的に報じたことから裁判は巨大な政治問題となり、“ささいな口論”から始まった小さな事件はレバノン全土を震撼させる騒乱へと発展していくのだった……。【詳細】映画『判決、ふたつの希望』公開日:2018年8月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次公開監督・脚本:ジアド・ドゥエイリ脚本:ジョエル・トゥーマ出演:カメル・エル=バシャ、アデル・カラム2017年/レバノン、フランス原題:L’INSULT英題:ジ・インサルト
2018年03月05日