第72回ベルリン国際映画祭 パノラマ部門正式出品 【ドキュメンタリー賞/ブロンズ観客賞/アムネスティ国際映画賞】受賞の『ミャンマー・ダイアリーズ』が8月5日(土)より公開されることが決定し、予告編とポスタービジュアルが解禁された。東南アジアの国、ミャンマー。民主化にむけて変革が続いたこの10年、市民は自由と発展への希望を抱き始めていた。しかし2021年2月1日、軍が再び国の支配に乗り出し、反発した民衆による大規模な抗議デモが全国各地で勃発。人々は抵抗のシンボルとして“3本指”を掲げて軍政に反対する声をあげるも、一人の少女の死を皮切りに軍の弾圧行為は激化し、人々の自由と平穏な暮らしは崩れていく…。インターネットは定期的に遮断され、軍に都合が悪い情報を発信するメディアやSNS投稿が処罰の対象となるなど、国内外に情勢を伝えることが困難な中、若手ミャンマー人作家たちが自らの匿名性を維持しながら“ミャンマー・フィルム・コレクティブ”を結成。それぞれの日常から生まれた10人の映画監督による短編映画とSNSに投稿された一般市民の記録映像をシームレスにつなぎ、抑圧された日常における切実な“一人称の物語”を紡いでいく。この度解禁となった予告編は、軍への抗議を示す“3本指”とデモの場面から始まる。つぶやき声と交互に差し込まれる悲痛な叫び声の間からは、ミャンマーの生々しい日常が浮かび上がってくるようだ。また併せて解禁されたポスタービジュアルでは、コロナ禍の抗議活動を象徴するマスクとヘルメット姿の人物のシルエットを背景に、「SAVE MYANMAR(ミャンマーを救え)」「STOP KILLING OUR PEOPLE(私たちを殺すな)」 「RESPECT OUR VOTE(我々の選挙権を尊重せよ)」「RELEASE OUR LEADERS(私たちのリーダーを解放せよ)」 「WE WANT DEMOCRACY(私たちは民主主義を望んでいる)」といった市民の声、また劇中でアニメーションとして描かれる“蝶”をレイアウトし、「どうか私たちの声が届きますように」というコピーとともに映画のメッセージをストレートに表現したものになっている。ドキュメンタリーとフィクションを行き来しながら、圧政下のミャンマーにおける市民の声の断片を生々しく伝える本作は、 世界の話題から忘れ去られつつあるミャンマーで今なお生きる人々の”叫び”を伝える、きわめて重要性の高い作品と言えるだろう。なお、配給元の株式会社E.x.Nでは、本作の興行収入より映画館への配分と配給・宣伝経費を差し引いた配給収益の全額 を支援金とし、ミャンマー避難民の生活支援活動を行う団体・施設に寄付を行うという。『ミャンマー・ダイアリーズ』は、8月5日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2023年06月12日先ごろ閉幕したカンヌ国際映画祭で脚本賞、クィアパルム賞に輝いた映画『怪物』が公開されている。本作の監督・編集を手がけたのは『万引き家族』『真実』『ベイビー・ブローカー』の是枝裕和監督。本作では長編デビュー作『幻の光』以来、久々に自身ではなく、坂元裕二が書いた脚本で創作にあたった。是枝監督はこれまでに『誰も知らない』『そして父になる』など数々の作品を手がけているが、ある時期から意図的に自身の創作のルーティンを良い意味で壊し、開かれた創作の場をつくることに力を注いできた。時には映画において、画家でいうところの“絵筆”にあたる撮影監督を変え、時には海外に渡るなど、創作の環境が固定化し閉じてしまわないような試みがなされてきた。2018年には初めてタッグを組む撮影監督・近藤龍人、初めて迎えた俳優・安藤サクラをはじめとする俳優陣、スタッフと共に手がけた『万引き家族』がカンヌ映画祭の最高賞パルムドールを受賞。さらに変化し、さらに先へ……そのタイミングで本作の企画が持ち込まれたようだ。「最初にプロデューサーから『坂元裕二さんと進めている企画があるのでプロットを読んでほしい』と言われたのは2018年の暮れでした。僕としてはプロットを読む前からこのオファーを受けると決めていたんです。きっとそういうタイミングなんだろうなと思いましたし、これでまた次の扉が開くと思ったんです」そこから長期間にわたる脚本づくりが始まった。「一緒にキャッチボールをしながら脚本づくりを3年ほどやりました。それが本当にいい時間だったんですよ。そこでかなりの試行錯誤をした上で、撮影に入っているから、いい意味で撮影に入ってからの迷いはなかったです」とは言え、これまでの是枝作品では、是枝監督が撮影されたばかりの素材をすぐに編集し、時には編集されたもの、それまでの撮影で得たものを反映して脚本が繰り返し監督の手で修正・更新されてきた。「そのルーティンについては変わりました。変わったんですけど、そこには違和感は感じませんでしたし、これまでやってきた有機的な感覚もまったく失われずにやれたと思います」さらにいうと、これまで是枝監督は多くの作品で、子どもが出演する際にはあえて台本を渡さず、撮影現場で状況を説明して撮影に臨んできたが、本作では子どもたちにも事前に台本が渡され、リハーサルを行なってから撮影が開始された。「それについても何かに“縛られている”という感覚はまったくなかったです。完成された脚本を渡されて“これで撮ってください”と言われたわけではないですから。ただ、俳優と向き合ってやっていく上では試さないといけないことがあったので、子どもたちには台本を渡して、ちゃんとリハーサルもやって現場に入りました。撮影しながら編集もしていくというスタイルもこれまでと変わらずです。ただ、編集しながら、修正していく量が本当に少なかったんですよ。結果として、子どもたちを観ながら『このシーンは電車の中でやるよりは外で撮った方がいいな』とか『いいロケ地が見つかったからそこで撮ろう』とかアレンジは加えていっているんですけど、セリフ自体を変えたいとは思わなかった」『怪物』の舞台は大きな湖のある町。そこではクリーニング店で働きながら息子を育てるシングルマザーや、生徒想いの教師、子どもたちが暮らしている。しかし、ある日、学校で子どもたちのケンカが起こり、教師が生徒に暴力を振るったのではないかという話が持ち上がる。それぞれの主張は食い違い、小さな出来事は次第に大きくなっていく。本作は可能な限り、事前に情報を入れずに真っさらな気持ちで観た方が楽しめるため、具体的な内容については触れないが、作品は大きく複数のブロックに分かれており、ある一定期間で起こる出来事をそれぞれのブロックで異なる視点、語り口で描いていく構造になっている。興味深いのは、それぞれのブロックで物語を語るリズム、映像のルック、カメラの動きが驚くほど異なっていることだ。(劇中で明示されるわけではないが便宜上、本稿ではこのブロックを一章、二章、それ以降の章を終盤の章と記載する)。「最初に一章と二章の脚本を読んだ時に“これは自分には書けないな”と思ったんです。坂元裕二、恐るべき才能だと思いましたね。何かが起きそう、という不穏な感じがずっと続いていて、それだけで物語が進んでいく」その結果、本作の一章と二章はこれまでの是枝作品にはない語りのリズム、カット数、アングルが選択されている。「たぶん、脚本がそのようなリズムを求めていたんだと思います。だからそこは自分なりの脚本に対するアプローチのしかたで、一章・二章のリズムと終盤の章のリズムを変えるということは意識していました。それに一章と二章はセリフも、キャラクターの輪郭も、際立ち方も自分がこれまでにつくってきたものとはまったく違う。そこは面白かったです。僕は自分自身の作家性というか、そういうものがあまり好きではないので、消せるものなら消したいと思っていますから、そういう意味では一章と二章は自分の作家性とかどうでもよくて、この脚本をどうしたら面白くなるか、その目線で見たときにいろんなことがクリアになった。結果としてこの脚本の良さを自分なりには引き出せたつもりです」そして訪れる終盤の章を是枝監督は「ここは自分にしか撮れないな、と思えた」と語る。「だから、来たるべき終盤の章のことを視野に入れると、一章と二章のもつ特殊性というか、不穏なトーンにあまり乗っかり過ぎてしまうと断絶が起こってしまうので、そこは気をつけました。演出的にはすべての章がシームレスにつながっていないといけないわけで、一章と二章は確かに面白いんだけど、面白がりすぎてはいけない。その“ギリギリ”を攻めたという感じです。章によって視点が違って、キャラクターの見え方が違ってもいいんですけど、それをやりすぎてしまうと映画がバラけてしまう。そこは丁寧にやったつもりです」俳優の“動き/運動”を描き出す先に言っておくと本作は複数のブロックに分かれてはいるが、章が進んでいくことで“提示されていた謎が解ける”わけではないし、“章によってキャラクターの見え方が違う”というほど単純な内容ではない。確かにこれらの章は異なるトーンとリズムで構成されている。物語が進んでいくと新しい情報がもたらされることもある。しかし、これらはひとつの世界で起こっている。むしろ“このような事態が別々ではなく同じ世界で発生していること”が重要なのだ。「撮影監督の近藤(龍人)さんと最初に話したのは“一章、二章、終盤の章の映像のトーンをどれぐらい変えるか?”ということで、カメラワークも含めて章によって変えていこうという話になりました。サイズをシネスコにしたのは近藤さんからの提案です。“視界を狭めたい”という意図でした。全体が見えていない形にしたいのでシネスコでやってみたい、と」さらに本作ではロケ地の選定、登場する部屋の装飾などプロダクションデザインの完成度の高さに驚かされる。本作ではある一定期間の出来事を複数のブロックでそれぞれ描くため、シーンによっては同じ場所が視点を変えて繰り返し描かれることになるが、本作ではそれに耐えうるロケ地、セット、美術が揃った。「この映画は一歩間違うとすごく観念的な話になってしまうので、あの町とそこで暮らす人と風景はちゃんとリアルに描かないといけないと思っていました。あの場所から少年たちがどのように浮上するのか、という話なので。だから、今回の映画で一番最初におさえたスタッフは後藤一郎くんといって『万引き家族』で見えない花火を見上げるシーンを撮った家を見つけてくれた人でした。この映画はロケ場所がすごく大事で、さらにコロナ禍で学校を舞台に撮影するのもかなり難しい。でも、彼が苦労してロケ地を見つけてきてくれて、地域の方々の全面的な協力体制を敷いてくれて、環境を整えてくれたので撮ることができた。そこは一郎くんの力が本当に大きいですし、美術の三ツ松(けいこ氏。日本を代表するプロダクションデザイナーのひとり)さんとチームの力も本当に大きかった。その点ではそれぞれのスタッフが、最高のレベルの仕事をしたなというのが今回の僕の実感です」さらに異なるトーンと語りをもつ複数のブロックをさらにシームレスにつなぐものがある。それは俳優の“動き/運動”だ。本作では、これまでの是枝作品よりもさらに丁寧に俳優の動きが描き出される。俳優の運動によってキャラクターが立ち上がる、確実に“そこにいる”と感じられる。「安藤サクラという役者をどう評価するかは人によっていろいろだと思います。感情の表出のしかたの瞬発力や集中力が高いのは『万引き家族』でも感じたことですが、改めて思ったのは、彼女は身体能力が高い、ということ。綾瀬はるかも高いけど、彼女とは違った身体能力の高さが安藤サクラにはある。そこはこの映画でちゃんと撮ろうと思っていました。そのことで“動かない田中裕子”との対比になる。ふたりが揃うことで対比が生まれ、緊張感のある瞬間が生まれる。動いていたものが止まる瞬間、止まっていたものが動き出す瞬間……そこは撮っていて本当に面白かったですね」それは劇中に登場する子どもたちも同様だ。彼らは大人ほど多くを語れるわけではない。時には想いを秘めている。しかし、彼らが駆け出す、跳ねる、どこかをゆっくりと覗き込む……すべての運動=アクションがどんなセリフよりも雄弁にキャラクターを表現するのだ。「子どもたちを動かすことは徹底的にやろうと思っていました。セリフが魅力的なことはわかっていたし、あのふたり(黒川想矢、柊木陽太)が優れた俳優であることもわかっていたから、リハーサルの段階から動きながらセリフを言ってもらって、どのセリフも”何かの動きのついで”に言ってほしいといいました。劇中のグリコ(じゃんけんグリコ:じゃんけんをして勝った方が階段などを進んでいく遊び)のシーンもリハーサルの段階からやっていたんですけど、最初は本読みをして表に出てやってもらったら、グリコをやり終わってからセリフを言うんです。で、セリフを言い終わったらグリコに戻る(笑)。だから、『いや、そうじゃなくてセリフとグリコは同時にやっていいんだよ』って言ったら、柊くんはその直後からできるようになった。それはすごいことで、大人でもなかなかできなくて、やりたがらない役者もたくさんいるんです。想矢も最初はセリフに集中したいのか、なかなか馴染まなかったけど、柊木くんとリハーサルをやるうちにどんどんほぐれていった。どうやって(意識を)散らしていくのか、ということをリハーサルでやっていったので、結果的にふたりのシーンはとても動的なものになりましたし、撮影ではなるべく座って喋るシーンもなくしたので、撮影の後半ではふたりも楽しそうにしていましたね」信頼できる脚本家と、信頼できるセリフを得た是枝監督は本作で新たな語り口、リズム、映像のルックを得た。そして、これまで以上に俳優の運動を丁寧に描き出している。映画『怪物』は、もしかしたら是枝監督が初めて手がける“アクション映画”なのかもしれない。「近藤さんのカメラと、この脚本をもらって作りながら学べたことがすごく大きかった。これを経験して次に自分が脚本を書く時に俺、変わるぞと思っていますし、変わるだろうなと。それぐらい坂元さんの脚本づくりには影響を受けました。だから次をまた楽しみにしていてください」『怪物』公開中
2023年06月07日現地時間5月27日夜、フランスで開催されていた第76回カンヌ国際映画祭の授賞式にて、映画『Perfect Days』で主演を務めた役所広司が男優賞に輝いた。日本の俳優の受賞は、2004年の『誰も知らない』の柳楽優弥以来2人目で、さらにエキュメニカル審査員賞も受賞し、作品としてはW受賞となった。エキュメニカル審査員賞は、キリスト教徒の映画製作者、映画批評家らによって1974年に創設されたもので、日本人の監督作では過去に青山真治監督の『EUREKA(ユリイカ)』が2000年、河瀬直美監督の『光』が2014年、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が2021年に受賞しており、邦画としては4作品目となる。併せて、役所広司本人、さらに会場で感動の表情を浮かべていた監督のヴィム・ヴェンダース、そしてカンヌで一緒にプレミア上映に立ち会ったキャストからコメントが到着した。■役所広司日々を丁寧に静かに重ねるように生きる。この平山という男を演じるのは、大きな挑戦でした。ヴィム・ヴェンダースという偉大な監督には、フィクションの存在であるこの男にとても大きなリスペクトがありました。それが私を導き、平山という男をこの世界に生み出した気がします。このような賞をいただいてとても光栄です。日本の、世界の、映画が少しでも、もっと素晴らしいものになるようにこれからも努力を重ねていきたいと思います。日本でもみなさんに、「平山」という男をご紹介できる日が楽しみです。■ヴィム・ヴェンダースこれ以上の言葉を私は見つけることができない。“役所広司は、監督をする者にとって最高の俳優である”彼こそが俳優である。それも最高の俳優だ。彼こそが平山であり、『PERFECT DAYS』というこの映画の心臓であり、魂なのだ。この映画を通じて私たちはゆっくりと平山の視線や生き方を受け入れていく。彼の目を通してこの世界をみつめる。そうすることで彼が選びとった人のために生きるというその姿に癒しを感じるようになる。他の俳優でも平山を「演じる」ことはできるだろう。けれど役所広司は平山そのものになった。穏やかさ、謙虚さ、大きな心。同じようなひとに対してだけでなくすべてのひとに対しても。自然に対してもそれをもつ。とくに木々には静かで美しい感情を抱いている。カンヌの劇場から泣いて帰る人がいるとしたら、それはこの偉大な俳優が彼らを旅に連れ出したのだ。彼らの魂に、より良く生きることとは何か。満たされた生き方はどういうものか。そういう考えに火をともしたのだ。こんなことを成し遂げる俳優は世界にそうはいない。私は彼と一緒に映画をつくれたことをとても幸せに思う。この賞は、私と、そしてカンヌに集まったチームの全員が待ち望み、そして夢にみたものである。■中野有紗受賞、本当におめでとうございます。役所さんの演技、作品に取り組む姿勢は私の心に強く響きました。役所さんの存在の素晴らしさが更に世界に伝わったような気がして、自分の事のように嬉しく感じています。その様な受賞作品に、私も出演させて頂けた事を心より光栄に思って居ります。本当におめでとうございました。■アオイヤマダ受賞おめでとうございます。人それぞれの日常や居場所が主人公であり、それこそが平和ということ。与えられた時間を精一杯生きること。そして、決して一人では生きられないこと。私はこの作品に携わらせて頂き、改めて意識することができました。ヴィムさんがみつめる日本には、私たちが気がつくことができない、新芽のような美しさがあります。素晴らしい機会を下さったこと、本当に感謝しております。■田中泯嬉しい!役所さんの受賞が自分のことのように嬉しい。そうして『PERFECT DAYS』を受け入れたフランス、カンヌにヤッホーだ。この作品に関わった全ての人の心の内に秘められていたことがこの結果だった、と僕は信じます。ヴェンダース監督がそんな人々の先頭で喜びに浸っているに違いない。役所さんが体現した平山さんは、自分のテンポとメロディーで生きたい人々の本当の例題となるでしょう。言葉少ない役所さんは、ずっと踊っていた!<作品情報>『PERFECT DAYS』原題:『PERFECT DAYS』/上映時間:124分/製作:日本/日本配給予定【スタッフ】監督:ヴィム・ヴェンダース脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬エグゼクティブ・プロデューサー:役所広司プロデュース:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬【キャスト】役所広司、柄本時生、中野有紗アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり田中泯、三浦友和 ほか(C)2023 MASTER MIND Ltd.『PERFECT DAYS』トレーラー
2023年05月29日先ごろ開催されたアカデミー賞でポール・メスカルが主演男優賞の候補になったのをはじめ、英国アカデミー賞、カンヌ映画祭など多くの映画祭・映画賞で絶賛を集めた映画『aftersun/アフターサン』がいよいよ26日(金)から公開になる。本作は主人公の女性が、20年前の夏に父と訪れたリゾート旅行を振り返る様を描いた作品で、大きな事件が起こるわけでも、劇的な展開があるわけでもないが、観る者の心と記憶を刺激する描写がふんだんに盛り込まれ、映画的な魅力が細部にまでつまっている。本作はなぜ、ここまで観客を魅了するのか? 監督と脚本を手がけたシャーロット・ウェルズに話を聞いた。ウェルズ監督はスコットランド出身で、ニューヨークを拠点に活動する映画監督。大学院で映画制作を学び、いくつかの短編を手がけた後、初の長編作品にこのプロジェクトを選んだ。主人公の女性ソフィは、ホームビデオの映像を観ている。あの夏、11歳だったソフィは父に連れられてトルコのリゾート地に出かけた。いつもは離れて暮らしている父との日々。ビデオに記録された空はどこまでも青く、ふたりは朝から晩まで遊んで、穏やかに時間が過ぎていく。しかし、ソフィはビデオ映像にうつる父の知らなかった一面を見つけ出していく。本作では劇中で父の知られざる一面が劇的に描かれることはない。しかし、観客は11歳のソフィの目を通して父との日々を眺めているうちに、父の抱えているものに少しずつ気づいていく。「多くの映画監督は“ストーリーを伝えるための劇の構造”を選びがちですよね。でも私は、観る人ともっと深いつながりが持てる作品をつくりたいと思っています。ですからこれまでも余計なものは可能な限り排除して、本当に必要なものだけを残すというやり方で映画をつくってきました。本作でもすべてを説明するのではなく、作品の中に余白を残すことで観客にメッセージを読み取ってもらいたいと思いました」監督が語る通り、本作では過剰な説明やセリフは登場しない。カメラの動き、俳優の表情や気配、父と娘の空気感の変化……“映画の言語”を駆使して物語が綴られる。「大学院で映画を学んだのですが、最初にやるレッスンは“映画の音を消してもストーリーがちゃんと伝わるか?”でした。そのことはいつも意識しています。脚本を書く上ではストーリーを前に進めたり、新しい情報を伝えるようなセリフもありますが、私の書くセリフは日常の中にある”とりとめのない言葉”が多いですし、創作する過程ではフォーム(構造)を通じてストーリーを伝えることを大切にしています。それに無駄なセリフを排除して、静寂な時間をつくることで、別の要素を映画の中に入れることができるんです。カメラワークや、音がスクリーンの画とシンクロしていたり、ズレていたり……しっかりとビジュアルで語ることで、そういった別の要素が強まる可能性もつねに意識しています」そこで重要になったのが、フィルムでの撮影だ。本作は“かつて父と娘が旅行中に撮影したハンディビデオの映像を、成長した娘が見る”という設定だが、撮影は全編35ミリフィルムで行われた。「撮影監督のグレゴリー・オークのこだわりでもあったのですが、35ミリフィルムで撮影することは本作を語る上では欠かすことのできない要素でした。デジタル撮影にはない質感が35ミリにはあり、本作が描く記憶のぼんやりとした感じ、ソフトな質感を表現するためにはフィルムが必要だったのです。デジタル撮影だとあまりにもクッキリとし過ぎてしまうのです。フィルムで撮影することで、古い写真や使い捨てカメラで撮った写真の感覚を表現できると思いましたし、フィルムのルックを用いることで観客が“あの時代”を意識せずにさかのぼれると思いました」なぜ、『aftersun/アフターサン』は多くの観客を魅了し続けるのか?さらに本作では編集と構成(どの順番でシーンを語っていくか?)に長い時間が費やされたという。この物語では父と娘はひとつのリゾート地で何日も過ごしている。脚本上では「時間の経過を表現するために、1日のはじまりは必ず同じシーンからはじまるようにしていた」そうだが、完成した映画では時間の経過が曖昧に感じられるようにシーンが構成され、時おり成長した現在のソフィの場面が挟み込まれる。時間が単純に一直線に進んでいくのではなく、過去を振り返る時に誰もが体験する“おそらくこの順番で出来事が起こったはずだけど、一部だけ記憶の順番が曖昧”という感覚を本作は編集によって実現しているのだ。「撮影監督のグレゴリーと、編集を担当したブレア・マックレンドンとは同じ大学院で、短編も一緒につくってきました。私たちは創作のテイストも似ているし、目指している部分が同じなんです。ですから、撮影を終えて、編集前に自分とブレアのために“編集用の脚本”を用意したのですが、結果的には一度も開くことはありませんでした。ブレアは物語が時系列的に一直線に進んでいくことを好まないので、時間が経過して次の日がやってくる“境界線”をうまくボカすような編集をしてくれました。基本的には朝が来て、夜になり……と進んでいくのですが、時折、ソフィが同年代の子どもたちとプールに入るシーンや、彼女が男の子と遊ぶ場面を違う流れの中に上手に盛り込んでいくことで、記憶のもつ“順番が曖昧な感じ”を表現することができたと思います。これはブレアのおかげですね」さらに本作ではシーンの並びを精緻に検討して構成することで、観客が少しずつ父の知らなかった一面に気づいていくことに成功している。人は映画を観ている時、その映画がまだ上映中であっても、数分前に観ていたシーンの印象が変わることがある。映画の前半で楽しそうな人として登場したキャラクターが、あるシーンで得られる情報によって“さっき観たあのシーンの彼は楽しそうにしていたわけではないのだ”と気づくことがある。記憶は人の中で固定されるものではない。記憶はたえず変化し、更新されていく。「そのことはすごく意識しましたし、本作はそのような構造の作品だと思います。この映画を観てくださる方は、最初は父と娘の楽しいバケーションを観ていると思っています。しかし、それがどんどん変化していく、それらが積み重なることで、結末には観客がある感覚を抱くことになる。でも、それは人生そのものがそうだと言えますし、“振り返る”という行為もそうですよね。過去を振り返る時、当時はとても楽しい思い出だったのに、何年か経ってから振り返ると、別の感情が湧き上がってくる。あの時の楽しさを思い出したいけれど、今の感情とぶつかり合ってしまう。そういうことが誰にでもあると思いますし、そのこともこの映画では表現したかったのです」この映画が世界中の多くの観客を魅了しているのは、父と娘の関係を上手に描いたからでも、親子の普遍的なドラマを描いたからでもない。曖昧な記憶が変化/更新される中で、新たな一面を発見し、当時の記憶と現在の感情がぶつかり合う……誰もが一度は経験する感覚を見事に描き出したことが本作の最大の魅力だろう。監督が目指した通り、本作は単に物語やキャラクターを提示するだけでなく、観客と“深いつながり”をもつことに成功したのだ。「公開される前は、私と同じような体験をした方や、似たような体験をした観客だけにこの映画を理解してもらえると思っていました。父と娘の関係だったり、父の抱えている問題が観客に響くだろうと予想していたのです。しかし、映画が公開され、そうではないことが証明されました。この映画はそれ以上の広がりをもって受け入れられました。それは本当にうれしいことですし、今後も自分の信念を貫いて創作を続けていきたいと思っています」誰もが過去を振り返る。楽しかった思い出、つらい記憶、あの日のあの人の印象……しかし、それらは自分が時を経て、経験を重ねることで変化していく。人は何度も過去を振り返り、そのたびに新しい過去に出会う。あの時はわからなかった父の気持ちがわかるようになる。新たに父と出会うことができるのだ。これから多くの人がふとしたきっかけで、映画『aftersun/アフターサン』を振り返ることになるだろう。そのたびに、観客の記憶の中に、あの日のリゾート地の父と娘が、思ってもみなかった新しい姿で出現するはずだ。『aftersun/アフターサン』5月26日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開(C)Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
2023年05月24日映画業界で働く人たちに仕事の裏側やその魅力についてじっくりと話を伺う【映画お仕事図鑑】。今回、ご登場いただくのは、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『新聞記者』、興行収入30億円の大ヒットを記録した『余命10年』など近年、次々と話題作を世に送り出している藤井道人監督。最新作『最後まで行く』(5月19日公開)では、岡田准一と綾野剛をメインキャストに迎え、同名の韓国映画のリメイクに挑戦している。スマートフォンひとつで「映画を撮る」こと自体、誰にでも可能になったいま、藤井監督が考える“プロ”の映画監督の仕事、映画づくりの醍醐味とは――?映画監督への道のりは「消去法で選んだ進路」から――子どもの頃、どんなふうに映画と関わり、どういった経緯で映画監督を志したんでしょうか?地元の映画館は近くにあったんですけど、そんなに足しげく映画館に通ったという感じでもなく、映画を教えてくれたのはTSUTAYAでしたね。ビデオやDVDをレンタルして観るのが僕にとっての映画体験で、お金もそんなになかったので、映画館に行くのは特別な時だけでした。学生時代はずっと剣道しかやってこなかったので、高校3年生の進路選択の時、紆余曲折あって、英語と国語だけで受験できる「映画学科」というのがあるらしいと聞いて、日本大学芸術学部の映画学科の脚本コースを受けました。脚本家を目指す脚本コースに在籍はしていたんですけど、大学でみんなで自主映画をつくる中で、自分が監督をするターンが回ってきて、実際に監督をやってみるといろんなことが見えて楽しくなって、20歳の頃には監督に魅力を感じていましたね。――高校の進路選択の時点で「将来は映画に関わる仕事がしたい」という思いはあったんですか?当時、マイケル・ムーアの映画(『ボーリング・フォー・コロンバイン』、『華氏911』など)が流行っていたこともあって、どちらかというとドキュメンタリーが好きでした。もともと、推薦で受けた大学もメディア系の学科だったし、そこまで「映画」とか「監督」というものを意識していたわけでもなかったですね。大学に行ったらまた剣道をやって、普通に就職するのかな…くらいの感じのことしか考えてなくて、自分の将来について楽観的でしたね。ところが推薦に落ちちゃって「ヤバい! どうしよう?」となって(苦笑)、それまで英語と国語しか勉強してなかったので、それで入れる大学という、消去法で選んだ進路でした。――大学の脚本コースの講義というのはいかがでしたか? 実際の“映画のつくり方”や“脚本の書き方”といった実務的なことを学ばれたのでしょうか?どちらかというと理論的なことの方が多かったです。モノクロ時代からどんな変遷を経て、いまの映画技術が生まれたのか? みたいなことだったり、昔の名画を観たり、ギリシャ悲劇から脚本について学んだり。脚本コースに関しては、あまり実践的なことは教わらなかったですね。自主制作映画で実際の映画のつくり方を学んでいったという部分が大きかったです。――仕事として“映画監督”というのを意識されたのは?当然ですが、大学の先輩で映像系の仕事に就いている方も多いので、あちこちの現場にお手伝いに行ったり、その先輩のツテでお仕事をいただいたりという感じで、大学2年生くらいから、学校に通うよりも、現場で仕事する比率のほうが多かったんですね。大学卒業を迎えて、みんなそのままフリーターをしながら映像の仕事をするのかな? と思っていたら、みんな普通に就職していて、フリーターになったのは僕だけで…、「え? みんな就活してたんだ!?」という感じでした(苦笑)。――そこで「この世界で生きていこう」と?その頃は「俺、いけるな」と勘違いしてた時期だったんですね(苦笑)。「俺はこの仕事で飯が食っていける」と。全然、そんなことなくて、社会人1年目は全く仕事がなかったです。それまでは学生という立場だからこそ、いただけていた仕事があったけど、学生ではなく“プロ”となると、同じ土俵にもっとすごい人たちがたくさんいるんですね。そうなると、自分のところに来る仕事の依頼というのがなかなかなくて…。そこからは営業の日々でした。「BABEL LABEL」という屋号を名乗って、あたかも映像集団に所属しているように見せつつ(笑)、あちこちに営業して仕事をいただいていました。――現在も所属されている映像制作会社「BABEL LABEL」の設立にはそんな経緯があったんですね。もともとは“フリーター”と名乗るのがイヤで、勝手に屋号をつけたんです(笑)。そこで細々と自主映画などをつくったりもしてたんですが、社会人になって3年くらい経つと、普通に働いていた同級生たちが次々と会社を辞めて、「BABEL LABEL」に集まるようになったんです。そこで「俺たちで面白いことをしようぜ!」という感じになりまして。最初は会社組織ではなかったんですが、数が増えていくにつれて「会社にしてもらわないと制作費の振り込みができません」といったこともありまして。「1円で会社が作れる」という情報を耳にして「じゃあ会社にしよう」と。実際には35万円くらいかかって、当時は36万円しかなかったんですけど(苦笑)、なけなしの貯金をはたいて作ったのがいまの会社です。――ご自身の中で、職業として「映画監督になれた」と思えた瞬間は?形式上のことで言えば、(商業映画デビューの)『オー!ファーザー』(2014年公開)になるんでしょうけど、映画だけでご飯が食べて行けるようになったのは『新聞記者』(2019年公開)以降ですね。以前は自分のことを“映像作家”と名乗っていたんですけど、最近はMVやCMのディレクターをやることもほとんどなくなりましたし、自分で“映画監督”と言うようになったのは三十を越えてからですね。――お話に出た『オー!ファーザー』で初めて商業映画の監督を務めたのは、監督にとってどういった経験でしたか?自分の実力のなさを実感したというのがすごく大きかったですね。それまでは同世代の仲間たちと自主映画を作っていただけでしたが、『オー!ファーザー』の現場では僕は年齢的に下から3番目くらいでした。40代や50代のベテランのスタッフさんと一緒に映画をつくる中で、彼らを導く“言語”を持っていないことを痛感しました。『オー!ファーザー』以降、僕は再び自主映画に戻るんですけど、あの人たちと渡り合って、一緒にお仕事ができるような実力をつけないと、この先、通用しない、職業としての映画監督にはなれないなと思いました。河村光庸プロデューサーとの出会い――その後、『青の帰り道』や山田孝之さんのプロデュースによる『デイアンドナイト』を監督され、2019年公開の『新聞記者』は日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝きました。同作で製作・配給会社スターサンズの河村光庸プロデューサーと出会い、その後も河村プロデューサーと共に『ヤクザと家族 The Family』、『ヴィレッジ』などを作ってこられました。そもそも、どういった経緯で河村さんとお仕事をされることになったんでしょうか?いろんな理由が複合的に絡まっているんですが『新聞記者』という映画はもともと、僕が監督する予定ではなかったんですね。クランクインの直前に、監督をされるはずだった方が降板となってしまい、「どうする?」となって、河村さんは周りの人たちに「誰かいないか?」と声をかけていたんです。ちょうど僕は『デイアンドナイト』を撮った後で、そのラッシュを見た河村さんから突如、電話がかかってきまして「明日、会えませんか?」と言われて「会えます!」と。「スターサンズからのオファーだ!」と思って待ち合わせの宮益坂のパン屋に行ったら、なんかいかがわしい感じのおじいちゃんがいて(笑)、「おーっす! これ一緒にやろうよ」ってタイトル『新聞記者』と書いてある企画書を自信満々に見せられたんです。帰りにマネージャーさんに「ちょっとこれはやりたくないです」って言いました(笑)。そんな出会いです。――河村さんは2022年に亡くなられましたが、藤井監督にとって河村さんとの出会いはどういうもので、作品をご一緒されて、どんなことを教わりましたか?本当に僕の人生における、一番大きなターニングポイントだったと思います。人間、大人になると大人なりの“距離感”というものができるじゃないですか? 人のパーソナルスペースにまで踏み込んできて、映画を作ってくれる人なんて滅多にいないんですけど、河村さんは自分のパーソナルスペースを周りのみんなのパーソナルスペースだと思っているというか、良く言うとすごくフレンドリーな方なんですね。毎日電話がかかってきたし、毎日一緒に過ごしてました。親子ほど歳が離れているけど、この人は何かを俺に伝えようとしてくれている――70年もの人生で培ってきたものを自分に伝えようとしてくれているのをひしひしと感じました。その中で企画の作り方から宣伝の取り組み方まで、本当に全てを教わった気がします。映画監督としての作品選び、向き合い方――藤井監督の作品を語る上で、“ジャンルレス”という言い方をされることが多いかと思います。『青の帰り道』のような青春群像劇から『余命10年』のような恋愛映画、そして『新聞記者』のような社会派に『ヴィレッジ』のようなサスペンスまで、ジャンルを飛び越えて、様々な作品を監督されていますが、ご自身にとって“ジャンル”というのはどういうものですか?やっぱり、気にしないというか、ジャンルにとらわれずにいたいとは思っています。別格というか、神様みたいな存在ですけど、スピルバーグだってジャンルレスですよね。僕は、いちコックと言いますか、映画制作の中での技術者のひとりという側面で見た時、「人間を描く」ということさえ通底していれば、ジャンルというものは、まず誰よりも僕らが壊していかなくてはいけないと思っています。恋愛を描いても人間、人生を描くし、もし僕がホラーを撮るとしても、そこに登場する人たちがどういう時代にどんな思いで生きているのか? という部分をきちんと描くことができればと思っています。社会派ではなく、いつも 映画の中に社会が入っているだけです。もちろん、ひとつのものを人生をかけて磨き続ける人もいますし、ひとつのジャンルでつくり続ける方も素晴らしいと思いますが、自分はジャンルというものよりも、プロデューサーとのセッションを楽しんで、映画をつくるという側面を大事にしています。――藤井監督にとって、プロの「映画監督」というのはどういう仕事ですか?映画づくりにおける、いち部署ですね。決定権のあるいち部署だと思っています。責任という点で考えると、もちろん組織における重要なポジションであると思いますが、「監督だからえらい」とか、「監督の言うことは絶対である」といった思いで映画をつくったことはないですね。――ここ数年、次々と監督作品が公開されていますが、オファーが届いた際にその企画を「やりたい」と思う判断基準や企画選びで大切にしていることはありますか?どんな企画と出会うかは「運」と「縁」と「恩」の部分が大きいと思います。たとえば、今回の『最後まで行く』のリメイクも、10年前であれば僕には来なかったと思うし、10年後だったら僕はやってないかもしれない。『新聞記者』、『ヤクザと家族』、『余命10年』という作品をやった上で、自分が好きなアクション、そして喜劇に挑戦してみたいなと思っていた時期にこの企画をいただけたので、まさに縁ですね。「脚本は映画づくりの精密な設計図」――今回も含め、ご自身で脚本の執筆もされますが、脚本を書く上で大切にされていることはどんなことですか?(脚本は映画づくりの)精密な設計図であるべきということですね。小説ではないので、具体性を大事にして、読み物として全スタッフがその内容を認識し、この船がどこに向かうのかを明確に書いたコードであるべきだと思っています。――藤井監督は毎作品、必ず登場人物たちの経歴や嗜好、どんな人生を送ってきたかなどを記したキャラクターシートを作成されるそうですね? その意図やどのように活用されるのかを教えてください。さきほど脚本を「設計図」と言いましたが、作品という船のエンジンがあったとして、そのエンジンがどんな部品でつくられているのか? 知りたい人は知っておいた方が良いと思っています。キャラクターシートはまさにそのための存在で、細かく映画に登場する人物のことを理解し、描いていくために活用するものですね。どうしても、現場で撮影に費やせる時間は限られています。俳優さんたちに迷わずに「こういう思いでこのキャラクターは存在していて、それをあなたに委ねています」ということを伝えなくてはいけない。「はじめまして」とお会いして、現場で芝居をしてもらった時に、その芝居がこちらのイメージと「全然違う!」という状況になった時、キャラクターシートがあることによって、共通認識を持って「もっとこうしてみるのはどうですか?」「これは必要ないんじゃないですか?」と話すことができるのかなと思います。「絶対に読んでください」ということではなく、(より深くキャラクターについて)知りたい人は見てくださいという感じですね。――このキャラクターシートはどの段階で作成されるんですか?基本的には脚本を書き進めながらつくっていく感じですね。初稿を書き終えた段階でできていることもあるし、改稿を重ねて脚本が完成してつくる場合もあります。どういう家庭環境で育って、どんなスポーツをやってきたか? 家族構成、年収、好きな言葉など…今回、岡田准一さんが演じた工藤で言うと「なぜ彼は自堕落な生活を送るようになったのか?」といったことも書いてあります。パーソナルカラーや好きな音楽などもあるので、部屋の美術や衣装でも活用できます。韓国映画を新たにリメイク、日本版ならではの面白さとは?――ここから、映画『最後まで行く』の制作について、より掘り下げて話を伺ってまいります。大ヒットした韓国映画を新たにリメイクするという作業はいかがでしたか?今回の企画は、本当にプロデューサー陣に恵まれていたと思います。「リメイクだからといって、塗り絵をしてほしいわけではない」「日本映画として、藤井さんらしい『最後まで行く』にしましょう」と言ってくださったので、脚本を大胆に解釈し、アレンジを加えることができました。韓国版のオリジナルの美しいプロットラインがあったので、それをベースに自分たちで新しい映画に作り直すという思いで臨みました。なので、オリジナル版を何度も見直すといったこともなかったですね。――リメイクに際してルールや制約などはあったんでしょうか?特になかったです。韓国のオリジナル版の最大の魅力は、開始5分で物語に引き込まれるプロットラインの面白さだと思っていて、そこはしっかりと拝借しつつ、でも、その後の展開を全く同じにするのであれば、韓国版を観ればいい。そうじゃなく、自分たちなりの新しいストーリーとして、工藤と矢崎という2人の男がどこまで行くのか? というのを純粋に楽しみながら脚本づくりができたと思います。――誤って人をひき殺してしまった刑事・工藤がそれを隠蔽しようとするも、窮地に陥っていくさまを描く本作ですが、韓国版に比べて、綾野剛さんが演じる県警本部の監察官・矢崎の存在が、もうひとりの主人公とも言えるくらい、より深く描かれています。韓国版では(矢崎に当たる男の)バックボーンが描かれるのは1分くらいでしたよね。その割り切り方も面白いと思いますが、やはり自分が映画をつくるときは、何よりも「人間をちゃんと描きたい」という思いが強くあります。“A面とB面”といいますか、人間の愚かさみたいな部分を(表に見える部分との)対比で見せたいなと思いました。『最後まで行く』という物語が、主人公の工藤ひとりで最後まで行くのではなく、2人の運命が絡まり合いながら、最後まで行くという構成になったら面白いんじゃないかと。――今回、平田研也さんと共同で脚本を執筆されていますが、共同脚本ならではの魅力や面白さはどんなところにあると感じていますか?やはり複眼的な視点で構成していけるというのは共同脚本の面白さですよね。監督として「これをやりたい」ということは伝えますが、逆に脚本家の方からしか出てこない構成の妙みたいな部分は確実にあります。30年そこそこしか生きていない自分から出るアイディアだけでなく、平田さんのような円熟した脚本家さんのアイディアが加わることで、本に広がりが生まれるんですよね。僕はできることなら常に共同脚本という形で映画づくりを進めていきたいなと思っています。――改めて日本版『最後まで行く』ならではの魅力、面白さというのはどこにあると思いますか?そうですねぇ…、オリジナル版をリスペクトをしつつも、そこまで意識しなかったので、オリジナルとの“区別化”みたいなこともあまり考えてなかったんですよね。自分の中では、喜劇や転落劇というものが、いまの日本映画にはあまりないと感じていて、笑いながらハラハラして楽しめる映画に、いまの日本映画の現在地で、僕らがどれくらいトライできるか? という部分が挑戦だったので、そこに関しては満足のいく作品になったと思っています。――激しいアクションがあり、痛みを描きつつ、思わず笑ってしまうシーンがたくさんありました。岡田さんと綾野さんの2人が素晴らしかったというのが大前提にありますが、ベースにあるのが“愚かさ”なんですよね。2人とも愚かしい(笑)。でも、奇をてらったりはしてないし、「笑わせてやろう!」という意識もない。「あぁ、この人たちは、這いつくばってでも生きようとしてるんだな」というのが伝わってくるし、2人のお芝居によって脚本を大きく超えた物語になったなと思います。――ひき逃げの被害者・尾田(磯村勇斗)の携帯にかかってきた電話に工藤が出るシーンが面白かったです。韓国版でも同様のシーンがありましたが、緊迫したやりとりになっているのに対し、日本版のほうはちょっとしたやりとりでくすりと笑ってしまうシーンになっていました。コミカルなシーンの演出で大切にされたのはどんなことですか?もともと、コメディは大好きなんですけど、自分が映画をつくる上では、一発ギャグではない笑い――人間の愚かさや、どうしようもない人間らしさが感じられるものがコメディだと思っています。そのためにも、2人にも“状況”をきちんと与えないといけないなと思っていました。様々な受難が振りかかり、そこで慌てたり、怒ったりしていろんな表情を見せてくれて、それが喜劇としての面白さを生んでくれたなと思います。今後の目標は「映画を取り巻く環境の変化、それを日本の映画界にどう取り込んでいけるか」――映画監督としての目標、今後、実現したいことなどはありますか?いま、配信プラットフォームが増えたり、映画を取り巻く環境が加速度的に変わっているので、海外などの環境を勉強して、それを日本の映画界にどう取り込んでいけるか?というのが、この数年の目標ですね。凝り固まった概念をたたき壊していかないと、永久にこのままじゃダメなので、システムを含めて、変えるべきところは変えていかないといけないと思っています。――最後に映画業界を志す人たちに向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。僕から言えるのは3つくらいですね。まず「横のつながり」の大切さ。一緒に仕事をする仲間たちや出会いの縁を大事にして、その人たちがどうしたら楽しんで仕事をしてくれるかを考えてほしいということ。それから、仕事がない時期に「オファーは絶対に断らない」ということ。「こういう仕事はしない」と言ってる人は永久にやらないので「自分が適任だと思われてるんだな」と受け入れてやりましょう。最後に、自分の人生なので「自分が納得できることを仕事にする」ということ。そこに関しては、僕自身、昔から変わらないですね。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:新聞記者 2019年6月28日より全国にて公開©2019『新聞記者』フィルムパートナーズi-新聞記者ドキュメント- 2019年11月15日より新宿ピカデリーほか全国にて順次公開©2019『i –新聞記者ドキュメント-』最後まで行く(2023) 2023年5月19日より全国にて公開©2023映画「最後まで行く」製作委員会
2023年05月22日映画『PERFECT DAYS(パーフェクト・デイズ)』が2023年12月22日(金)より公開される。本作は第96回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされており、監督はヴィム・ヴェンダース、主演は本作で第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞に輝いた役所広司が務める。ヴィム・ヴェンダースが渋谷の“公共トイレ”を題材に『PERFECT DAYS』は、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた長編映画。清掃員の平山という男を主人公に、日々の小さな揺らぎを丁寧に追った作品だ。監督を務めるヴィム・ヴェンダースは、『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』など、数々の傑作映画を手掛けてきたドイツの名匠。日本の公共トイレのなかに“平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所(small sanctuaries of peace and dignity)”を見出したというヴィム・ヴェンダースが、『PERFECT DAYS』ではフィクションの存在をドキュメントのように映し出した。その瞬間、その瞬間にしかないものたちの美しさに注目だ。主演は役所広司、トイレ清掃員に主演を務めたのは、ヴィム・ヴェンダースが長年リスペクトしてやまないと話す役所広司。静かに淡々とした日々を過ごしていたある日、思いがけない出来事がおきるトイレ清掃員・平山を演じる。主人公・平山…役所広司渋谷の公共トイレ清掃員。いくつもの風変わりなトイレを清掃してまわる。平山の姪…中野有紗平山のもとに突然訪れる姪。平山の妹…麻生祐未ホームレス…田中泯平山と奇妙なつながりをもつホームレス。平山の同僚清掃員…柄本時生平山の同僚清掃員のガールフレンド…アオイヤマダ居酒屋のママ…石川さゆり平山が休日に訪れる居酒屋のママ。居酒屋のママの元夫…三浦友和カンヌ映画祭で役所広司が最優秀男優賞なお、映画『PERFECT DAYS』は、2023年に開催された第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された。主演の役所広司は最優秀男優賞に輝き、監督・是枝裕和の『誰も知らない』で男優賞を受賞した柳楽優弥以来の快挙を達成した。役所広司はカンヌ国際映画祭・男優賞の受賞に際して次のようにスピーチしている。「僕は賞が大好きです。でも、こうやって華々しいカンヌ映画祭でスピーチするのは、あまり好きではない。でもカンヌ映画祭と審査員の皆様、本当にありがとうございました。パーフェクト・デイズを見てくださったお客様もここにいらっしゃると思いますが、本当にありがとうございました。この映画を製作した柳井康治さんに心から感謝したいと思います。彼がいなければ、映画は世に出ることはなかったと思います」また、第36回東京国際映画祭では、審査委員長としてヴィム・ヴェンダースが来日することを記念し、『PERFECT DAYS』を特別先行上映。第96回⽶国アカデミー賞国際⻑編映画賞の⽇本代表にも選出されている。映画『PERFECT DAYS』あらすじ東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。彼は淡々と過ぎていく日々に満足している。毎日を同じように繰り返しているように見えるが、彼にとってはそうではなかった。毎日はつねに新鮮な小さな歓びに満ちていた。まるで風に揺れる木のような人生である。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読み耽るのが、歓びである。いつも持ち歩く小さなフィルムのカメラで木々を撮る。彼は木が好きだった。自分を重ねているのかもしれない。あるとき彼は、思いがけない再会をする。それが彼の過去にすこしづつ光をあてていく。【作品詳細】映画『PERFECT DAYS』公開日:2023年12月22日(金)~TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー※10月24日(火)~30日(月) TOHOシネマズ日比谷にて特別先行上映監督:ヴィム・ヴェンダース脚本 :ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬出演:役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和製作:柳井康治エグゼクティブ・プロデューサー :役所広司プロデュース:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬、國枝礼子、矢花宏太、ケイコ・オリビア・トミナガ、大桑仁、小林祐介製作:MASTER MIND配給:ビターズ・エンド
2023年05月19日2022年アカデミー賞で作品賞を始め3部門を受賞した映画『コーダ あいのうた』が、日本テレビ系・金曜ロードショーにて地上波初放送が決定した。海の町で暮らし、歌の大好きな高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。新学期、合唱クラブを選択するルビー。すると、音楽のヴィラロボス先生がルビーの歌の才能に気づき、音楽大学の受験を強く勧める。だが、両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢を諦め、家族の助けを続けることを選ぶ…。“コーダ”(CODA/Children of Deaf Adults)は、耳が聞こえない、または聞こえにくい親のもとで育つ子どものことで、本作は、家族の中でただ1人の健聴者である少女が、家族や様々な問題を力に変え、自らの夢を実現していく姿を描いたヒューマンドラマとなっている。本作は、2022年のアカデミー賞で3部門を受賞したほか、ゴールデン・グローブ賞で「ドラマ映画賞」「映画助演男優賞」を獲得。ハリウッドの映画俳優たちが選ぶ全米映画俳優組合賞でも、最高賞にあたる「キャスト賞」を受賞するなど、2021年~2022年の各映画賞を総なめした話題作だ。監督・脚本は、「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」の脚本を担当、カンヌ国際映画祭出品の短編映画『Mother』を監督したシアン・ヘダー。少女・ルビーを「ロック&キー」で人気を博したエミリア・ジョーンズが演じ、手話トレーニングと共に9か月間ボイストレーニングを行い、感動的な歌声を披露。主人公の家族でろう者の父・母・兄は、実際に耳の聞こえない俳優が演じている。金曜ロードショー『コーダ あいのうた』は6月16日(金)21時~日本テレビ系にて放送。(cinemacafe.net)■関連作品:コーダ あいのうた 2022年1月21日より全国にて公開© 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
2023年05月19日「4月末に米国の最大手エージェント・CAAと契約したと報じられた西島さんのハリウッド映画出演料は、最低でも3億円といわれています」(映画関係者)5月16日開幕のカンヌ国際映画祭に出演映画『首』も出品される西島秀俊(52)。主演映画『ドライブ・マイ・カー』が、昨年のアカデミー賞国際長編映画賞を受賞後、各国で人気沸騰中だという。「CAAとは米国最大の芸能エージェント。トム・ハンクス(66)やウィル・スミス(54)、ブラッド・ピット(59)などのハリウッドスターに加え、ビヨンセ(41)やレディー・ガガ(37)らアーティストなど、世界各国の有名人と提携していることでも知られています。今回の契約により、西島さんがハリウッド大作に出演するのは時間の問題。すでに水面下で話が進んでいるようです」(映画ライター)ハリウッドでの西島の高評価は、演技力だけではないという。「まずハリウッド映画に求められるアクションが得意。加えて、英語が堪能なことも挙げられます。西島さんは’11年、主演映画『CUT』でヴェネチア国際映画祭に出た際、流ちょうな英語で現地メディアに対応し、現地で話題になっていました」(前出・映画ライター)ハリウッド映画に著名な日本人俳優が出演する場合、出演料相場はどうなっているのか。「一般的には日本での興行収入を上げる目的で日本の人気俳優をキャスティングすることが多いです。出演料は、1シーンのみの特別出演でも最低3千万円。主要キャストなら1億円は超えます」(前出・映画関係者)実は西島は昨夏、海外ドラマへの進出を発表している。Apple TV+のドラマシリーズ『Sunny』で、1話30分のダークコメディだ。「第89回アカデミー賞作品賞に輝いた『ムーンライト』(’16年)や『ミッドサマー』(’19年)などを手掛けた気鋭の製作配給スタジオ『A24』が製作した作品です。西島さんの米国での知名度がさらに上がることが予想されており、ハリウッド主演映画の出演料は10億円まで上がる可能性すらあります」(前出・映画関係者)西島は昨年、主演映画『ドライブ・マイ・カー』の高評価についてインタビューでこう語っている。《僕は本当に遅咲きと言うか、遠回りしてきた人間なので、(略)ようやくスタートラインに立たせていただいたんだな》 《僕は欲深いところがある。何か自分で限定するのではなく、いろいろなものをやっていきたい》(『日刊スポーツ』’22年1月10日)今度はハリウッド大作で、また新たな西島像を見せてくれそうだ。
2023年05月19日T-SQUAREの新曲「CLIMAX」が、ハリウッド映画『グランツーリスモ』の日本語吹替版テーマ曲に決定した。本作は、1997年にプレイステーション用ソフトとして誕生し、全世界でシリーズ累計9,000万本を売り上げているリアルドライビングシミュレーター『グランツーリスモ』に着想を得たもの。世界中から集められた『グランツーリスモ』のトッププレイヤーたちを、本物の国際カーレースに出場するプロレーサーとして育成するため競い合わせ、選抜するプログラム「GTアカデミー」をめぐる奇跡の実話が描かれる。監督は『第9地区』のニール・ブロムカンプ、GTアカデミーを発足したダニー役をオーランド・ブルームが務めている。T-SQUAREは前身のザ・スクェア時代の代表曲「TRUTH」が『F1グランプリ』のテーマ曲に起用されるなど、レース音楽の第一人者として知られている。「CLIMAX」はT-SQUAREデビュー45周年企画盤『VENTO DE FELICIDADE ~しあわせの風~』(5月31日(水) 発売)に収録される楽曲。T-SQUAREの初期、中期、現メンバーに加え、ゲストとしてギタリストの渡辺香津美も参加している。映画『グランツーリスモ』予告編<作品情報>『グランツーリスモ』9月公開予定公式サイト:
2023年05月15日アダマン号は、人々を孤独から引き出して、世界とつながる手助けをする場所アダマン号へ通う表情豊かな人々、そしてその表情の奥に隠された心の問題までを優しいまなざしで捉えた「アダマン号に乗って」。発達ナビでは、4年ぶりの来日を果たしたニコラ監督に、この映画への思いを伺いました。LITALICO発達ナビ編集部(以下――)アダマン号がどのようなところか、教えていただけますか?ニコラ・フェリベール監督(以下監督):アダマン号は2010年に開所した、デイケアセンターです。パリの中心部、セーヌ川に浮かんでいます。係留されているので、航行する船ではありません。言うならば「浮かぶ建造物」です。乗っているときは水の上にいる感覚があります。大きな船が近くを通ると、ゆらゆら揺れます。船の中にはさまざまな空間があります。患者はその中を自由に移動できて、閉ざされた空間はありません。事務所であっても自由に入れます。船の上なら自由に移動していいんです。船に使われている素材はガラスや木材など重厚感があり、光がたくさん入ります。パリの中心にいるのに別の場所に来たような錯覚にとらわれる、とてもゆったりとした場所です。水が近くにあるというのも重要ですね、場所そのものに癒し効果があるんです。通ってくるのは主にパリに住む患者さんです。精神科の医師や心理師にすすめられて通ってきます。定期的に通う人もいれば不定期に通う人もいますし、複数や単体のワークショップに来る人もいれば、ただ雰囲気に浸ってコーヒーを飲みに来る人もいます。映画を見ていただいても分かると思いますが、スタッフも患者さんもみんな私服ですので、誰が患者さんで誰がスタッフなのかもわからない。レッテルがないんですね。この人は病気、患者、この人は支援者という区別がない、患者さんが「病気」の枠に閉じ込められておらず、ちゃんとした「人」として見られているんです。個性的で、人とは違うものを持ってはいるけれど、ジャッジされることもない、異常な人と見られることもないので、特に直すこところもない。ただありのままのその人として見られているんです。スタッフは、彼らの「勢い」を少し引き出そうとします。彼らを孤独から引き出して、世界とつながる手助けをするのです。アダマン号はそういう思想をもった場所です。Upload By 発達ナビ編集部――アダマン号の「アダマン」はどのような意味があるのですか?監督:「アダマン」はフランス語でダイアモンドの中心という意味です。ダイアモンドの核となる硬い部分ですね。フランス語ではあまり使われませんが、英語では比較的よく使われている言葉かもしれません。adamant は「確固たる」という意味です。「アダマン」って音的にもきれいですよね。Upload By 発達ナビ編集部映画「アダマン号に乗って」オフィシャルサイト精神科医療の世界は、私たちの世界や魂の「拡大鏡」のよう――本作を撮影したいと思ったきっかけを教えてください。監督:約25年ほど前に、精神科医療を舞台にした映画「すべての些細な事柄」(1997年)という作品を撮りましたが、私にとって、精神科医療はとても興味深いものなので、また撮りたいと思い続けてきました。私は、精神科医療の世界は、私たちが生きている世界や魂の「拡大鏡」のような場所じゃないかなと思っています。私たちは、普段自分の内面を隠して生きているところがあると思いますが、精神科医療の現場では、その内面をむき出しにされている人たちがいます。彼らに会うと驚かされたり、ちょっと動揺もすれば不安になったりということもあるかと思いますが、そうかと思うと、私たち自身のことを考えさせられたり、なんだかとっても楽しい気持ちにさせられたりということもあります。彼らと出会ったあと、すごくこう顔が明るくなるような、そういうこともあるんですよね。とにかく、精神科医療の現場というのは、いろいろな心のありようがあって、そういう意味では、映画監督としてとても豊かな現場です。Upload By 発達ナビ編集部考える時間、言葉を探す時間、話が自然な形まで展開するのをじっと待つ――監督は、映画の中で一人ひとりに時間をかけて、ゆっくりと話を聞き、返事を待ち、丁寧に、親切に撮影されていると感じました。「話を聞くことが大事」というセリフもありましたが、みなさんにインタビューしていた際、心がけていたことなどありましたら、教えてください。Upload By 発達ナビ編集部監督:必要な時間を取ることを大切にしました。私のカメラの前で語ってくれた方が考える時間、 これが自分の言いたいことなんだという言葉を探す時間、そして、話が自然な形まで展開するのをじっと待ちました。また、絶対にプレッシャーをかけないというのも重要です。なぜなら、カメラを向けられるということ自体とても威嚇的ですよね。それもあって、なるべく穏やかな空気というのが流れるように、そして信頼関係が生まれるように努めました。今の社会は、とてもスピーディーに全てのことが流れていきます。そして、人の話を聞かないで口を挟んだりする人もいれば、ネガティブな相槌をうったりする人がいます。これは私は暴力的なものだと感じています。だから私は、そういうことはせず、時間をかけることを徹底しました。――ありがとうございます。ゆっくりと待っていると、みなさんが言葉を選びながら、心のうちを語りだしてくれていました。その様子がとても心に残っています。また、監督は受賞のコメントで、「精神疾患への人々が抱く偏見を変えたいし、生産性がない人々に税金を使うのは無駄という風潮に抗いたい」とおっしゃっていました。このような偏見をなくすためには、どのようなことが必要だと思いますか?Upload By 発達ナビ編集部監督:やはり、彼ら自身の本当の声を聞くことから始まるのではないかと思います。精神疾患がある人たちを撮影したものにナレーションを入れたり、代弁をしたりして、彼らの声を直接聞こうとしないということがありますよね。それはよくないので、私は「アダマン号に乗って」ではナレーションを入れていません。私が思うに、偏見をなくすためには、まず彼らにも発言権を提供すること、そして、私たちと同等の場所にいてもらうということ大事なのだと思います。でも、今の社会は、彼らのことは見たくない、聞きたくない、知りたくないという人たちが多く、それが精神科医療をとても閉鎖的なものにしていると思います。そういう「無意味な恐れ」を消すには、当事者の声をちゃんと受け入れることが、最初の1歩になると思います。また、最初に触れましたが、「病人」というレッテルを張って、それで括っておしまいにしないっていうこと。「病人」というレッテルは、その人を人間として見ず、まるで1つのオブジェのようなものとして見ているのだと私は思います。 そうではなくて、この人も人間であり、ちゃんと考えている「主体」として見ること、これが大切です。そして、こういうことを実践しているのがアダマン号です。アダマン号ではみんな一人の人間として扱われていて、この人はこんな興味を持っているんだ、この人はこんな才能があるんだ、それが芸術的才能なんだって、その人が持っているものにちゃんとスポットを当てています。これが大切なのだと思います。実は、助けられているのは、私たちの方かもしれません――最後に、LITALICO発達ナビの読者へ、メッセージをお願いします。Upload By 発達ナビ編集部監督:私は30年前に「音のない世界で」 (1992)という聴覚障害をテーマにしたドキュメンタリーを撮りました。人は、聴覚障害のある方をハンディキャップを持ってかわいそうと同情の目で見ることが多いと思いますが、私はそれが大きな間違いだということを、このドキュメンタリーで伝えたかったんです。彼らの手話はとても素晴らしく、とても豊かなものです。顔、腕、手の表情を使い、これによって彼らの見えている世界を描写することができます。ひょっとしたら、飛行機の300個の部品を全部手話で表現できるかもしれません。みんなは聴覚障害をハンディキャップと言いますが、実はそうではなく、手話という豊かな表現方法を持っているというポジティブな形に受け止めることができるのです。ですので、ご本人も、それからそのご家族の方々もそっと見方を変えて、実はとても豊かなことなんだと自覚されるといいのではないかなと思います。障害がある人は、私たちに多くのことを学ばせてくれますよね。私たちの視野をすごく広げてくれるし、普段の生活にはない詩的な、ちょっとこう豊かなものを加味してくれます。競馬の馬が、前に集中するために視野を遮るマスクをつけることがあります。私たちはこれのマスクをつけているような生き方を、社会の中でさせられていると思います。 でも、ハンディキャップがある人は、マスクを着けている人たちからははみ出しますが、はみ出すことによって、私たちにそういう見方、感じ方があるんだと教えてくれます。実は、助けられているのは、私たちの方かもしれません。――ありがとうございました。「アダマン号に乗って」上映情報Upload By 発達ナビ編集部4月28日(金)より全国公開中パリの中心地・セーヌ川に浮かぶ木造建築の美しい船「アダマン号」は、精神疾患のある人々を無料で迎え入れるユニークなデイケアセンター。ここでは、絵画、音楽等のさまざまな文化活動を通じて、精神疾患のある人の支えとなる時間、安心できる空間を提供し、サポートしています。精神科医療の世界に押し寄せる均一化、非人間化に抵抗し、個人個人に共感的なケアをするこの魅力的な場所は、生きることの豊かさを教えてくれます。監督・撮影:ニコラ・フィリベール共同製作・配給:ロングライドインタビュー:発達ナビ編集部撮影/廣江 雅美
2023年05月04日Prayers Studio(品川区戸越6-23-21-201、代表:渡部朋彦)は、世界中で数々の賞を受賞した映画「POEM」が東京Lift-Off映画祭の公式セレクション作品として上映されることが決定したことをご報告します。Lift-Off映画祭は、一年を通して、世界10都市で開かれる国際インディペンデント映画祭です。本作はアメリカの映画監督ロバート・フリッツ氏により手掛けられPrayers Studio(品川区戸越6-23-21-201)の俳優がメインキャストを務めました。映画「POEM」ビジュアル今年1月の公開から現在までに24もの賞を受賞、監督賞、作品賞の他、メインキャストを務めた劇団の俳優三人全員がそれぞれ演技力を高く評価され、数々の俳優賞を受賞しました。主演を務めた妻鹿有利花は最優秀女優賞や主演女優賞など5冠、劇団代表の渡部朋彦、蔭山恵美は最優秀俳優賞、助演女優賞などそれぞれ4つの賞を受賞しています。映画祭の開催は本年5月1日~31日、オンラインの上映です。チケットは映画祭Webサイトから、5月1日18時(日本時間)から購入可能です。観覧後、視聴者は好きな作品に投票を行い、得票数によって最も人気の作品が選ばれます。■無名の小さな劇団ながら、高い演技力と評価 コロナ禍では超話題作にもキャストとして大抜擢Prayers Studioは、品川にあるアーティストのシェアアトリエ「インストールの途中だビル」に小さなアトリエ兼劇場を構え活動している劇団です。とことん“演技の質”にこだわり、「良い作品を創るためには良い俳優がいなければならない」との理念から研究と俳優育成にも力をいれ、活動を続けています。お陰様で、記憶に新しいところではコロナ禍でオンライン演劇の先駆けとして大きく話題を呼んだ三谷幸喜さんの「12人の優しい日本人を読む会」にキャストとして抜擢されたり、今作もロバート・フリッツ監督から直々にオファーを受け撮影するに至るなど、多方面からありがたい評価をいただき徐々に活動の幅を広げています。「12人の優しい日本人を読む会」Prayers Studio公演の様子■『言葉ではなく、役の気持ちがそのまま伝わってくる』そんな作品を目指して GWは3年ぶりの舞台公演も開催セリフを超えて、『言葉』ではなく『役の気持ちがその瞬間、観客の心に直接伝わってくる』。それが、Prayers Studioの目指す演劇です。このGWには3年ぶりの劇場公演も開催予定です。大竹野正則作 「夜、ナク、鳥」実際に起こった、人の命を救う筈の看護師による、連続殺人事件をモチーフに、人間の心と生き様を描きます。小さな劇場の特性を生かし、空気感や息遣いまで伝わる距離で、贅沢な観劇体験をご提供いたします。5月3日から7日まで、観劇のみ4,000円、“ぷち俳優体験”できるワークショップ公演は5,000円となります。詳細・ご予約はホームページをご覧ください。 既に満席の回もございます。お席が大変少ないですので、必ずご予約の上お越しください。Prayers Studio公演「夜、ナク、鳥」■映画「POEM」監督・脚本 :ロバート・フリッツ出演 :妻鹿有利花 渡部朋彦 蔭山恵美佐久間一生 藤田一照協力 :Prayers Studioプロデューサー :田村洋一エグゼクティブプロデューサー:ロザリンド・フリッツ企画・制作 :RJFプロダクションズ■東京Lift-Off映画祭 2023年5/1~5/31 開催 (日本時間5/1 18時よりチケット発売)<プロデューサー Lee Thomas氏コメント(抜粋)>The Tokyo Lift-Off Film Festival is proud to present a groundbreaking new film that is sure to captivate audiences around the world. Written and Directed by Robert Fritz, this Japanese film is a true masterpiece of independent cinema. With a talented cast that includes Arika Mega, Megumi Kageyama, and Tomohiko Watanabe, this film is a must-see for anyone who loves great storytelling and innovative filmmaking.東京リフトオフ映画祭は、世界中の観客を魅了する画期的な新作映画を上映できることを誇りに思っています。ロバート・フリッツが脚本・監督を務めたこの日本映画は、インディペンデント映画の真の傑作です。妻鹿有利花、蔭山恵美、渡部朋彦ら豪華キャストが集結したこの映画は、素晴らしいストーリーテリングと革新的な映画製作を愛するすべての人にとって必見です。■Prayers Studio(プレイヤーズスタジオ)品川区の「中延」駅前にあるアーティストのシェアアトリエに稽古場兼劇場を構える。ビルの一室を改装した小さな部屋を自由に使い、「演技の質」にとことんこだわって作品創りと俳優育成を行っている。メンバーは現在11名。お芝居を観るのみならず、観客も舞台にあがって演じることを楽しめる「ドラマトライアル」が看板コンテンツ。詳細はホームページをご覧ください。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年04月28日2016年に亡くなったキャリー・フィッシャーが、5月4日の「スター・ウォーズの日」にハリウッドの殿堂入りを果たす。「ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム」に2754番目の星型プレートを刻むことが分かった。記念セレモニーにはキャリーの代理で娘のビリー・ロードが出席するという。ゲストスピーカーについてはまだ発表されていない。『スター・ウォーズ』シリーズの共演者でキャリーの親友だったマーク・ハミルは、この件に関して「長い間待ち望まれていたこと&十分に値する #キャリーよ永遠に」とツイート。「ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム」のプロデューサー、アナ・マルティネスは「ファンは、彼らが大好きな映画のプリンセス、キャリー・フィッシャーがハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに星を刻むことに大喜びでしょう。キャリーは『スター・ウォーズ』の共演者マーク・ハミル、ハリソン・フォードと共に、この歴史的な歩道に仲間入りします」とコメント。マルティネスによると、キャリーのプレートはマークのプレートの近くに設置されるとのこと。さらにキャリーの母デビー・レイノルズ(2016年死去)のプレートが、通りを隔てた向こう側にあるという。マークは2018年、ハリソンは2003年、デビーは1960年に殿堂入りしている。(賀来比呂美)
2023年04月28日ドキュメンタリー映画作家のキティ・グリーンが2017年、ハリウッドを発端に巻き起こった<#Me Too運動>を題材に、今日の職場における大きな問題を掘り下げた映画『アシスタント』から、“アシスタント”のリアルな1日を切り取った、シーン写真9点が一挙解禁された。憧れの映画業界で、新人アシスタントが気づいてしまった誰もが見て見ぬふりをしている“闇(しくみ)”を描いた本作。今回解禁されたシーン写真は9点。名門大学を卒業し、有名エンターテインメント企業に就職したジェーン(ジュリア・ガーナー)は、映画プロデューサーになりたくて働き始めたのに、任せられるのはオフィスの掃除や雑用ばかり。過酷な長時間労働で、新人アシスタントのジェーンは疲労のピーク。打ち合わせのたびに部屋を汚されては片付け、見知らぬ来客からは当然のように荷物を押し付けられ、次々とかかってくる電話では謂れのない罵倒を受けてうんざり。まともな食事をとる時間もなく来客の残したドーナツを思わずつまみ食い、大量のコピーをとりながら放心し、1人だけ帰れずに深夜残業――。まさにリアルなアシスタントの1日を切り取ったものとなっている。ヒエラルキーの末端で働く人々の代弁者でもあるジェーンを全身全霊で演じたのは、Netflixオリジナル「オザークへようこそ」で3度にわたるエミー賞助演女優賞に輝いたジュリア・ガーナー。近年ではNetflixオリジナル「令嬢アンナの真実」で主演に抜擢され、3月には「グッチ(GUCCI)」のフレグランスコレクション「GUCCI GUILTY」のニューフェイスとなるなど、いま最もエキサイティングな若手俳優の1人。細かな演技の積み重ねによって、オフィスで働く人間の仕草やクセ、息苦しいストレス、そしてトップ企業に巣食うハラスメントや搾取の空気と、末端社員である自らの信念との間の葛藤を表現した。『アシスタント』は6月16日(金)より新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2023年04月26日●実写ならではの魅力を実感「アニメを超える部分も」俳優の新田真剣佑が、4月28日より公開される『聖闘士星矢 The Beginning』でハリウッド映画初主演を務めた。大役の重圧に押しつぶされそうになる瞬間もありながら、自身のすべてを注ぎ込んで演じ切った新田は、「日本を出なければ絶対に味わえないような経験ができ、宝物になりました」と噛みしめる。海外の現場にどのように挑み、そして何を感じたのか、新田に話を聞いた。全世界で累計5000万部を超え、アニメシリーズも世界中で人気となった車田正美氏の人気漫画『聖闘士星矢』を実写化。『パシフィック・リム:アップライジング』でハリウッド映画初出演、そして本作でハリウッド映画初主演となる新田が主人公の星矢を演じ、ショーン・ビーンやファムケ・ヤンセンなど、ハリウッド実力派俳優が脇を固めている。本作で描かれるのは星矢のはじまりの物語。星矢はある日、女神アテナの生まれ変わりであるシエナを守る聖闘士になることが運命であると告げられる。そして、挫折や苦難を乗り越えながら少しずつ成長。自らの運命を受け入れ、自らの過去と向き合った時、彼の中に眠っていた力=小宇宙(コスモ)が“覚醒”する。幅広い世代から愛されている『聖闘士星矢』の実写化ということで公開前から大きな注目を浴びているが、新田はオーディションで主演の座をつかみとった。原作やアニメを見ていた世代ではないものの、作品の偉大さは知っていたためプレッシャーも「ものすごく感じていました」と言い、「うれしい気持ちもありましたが、不安もありました」と明かす。そして、現場に入って制作陣の本気を感じてよりプレッシャーを感じたという。「こんなに台本を読むんだ! というくらい読みましたし、『ちはやふる』に戻された感じがしました。あのときも何回読むんだというくらい読んで」原作とアニメをリスペクトした上で、キャストもスタッフも「新しいものを作りたい」という思いで作り上げた本作。実写ならではの魅力があると新田は語る。「実写には実写なりのいいところがあり、アニメを超える部分もたくさんあります。実写化したからこそ生きている人間に聖衣がまとえた。あの瞬間っていいですよね。見ていて『行け!』って応援したくなるようなキャラクターですし、成長を見守りたくなるようなキャラクターですし、とにかく世界のスケールになっています」○■星矢らしいアクションに! 聖衣装着シーンは大興奮アクションシーンも大きな見どころであり、新田は撮影が始まる1カ月前から週5でさまざまなトレーニングを行い、アクション監督のアンディ・チャンとともに星矢らしいアクションを作り上げていった。「アンディがさまざまな選択肢を提示してくれ、その中で星矢のアクションは何だろうと話をしながら一番適しているものを選びました。対戦相手がみんなごついので、星矢はスピードやテクニックで上回り、自分のバネを生かして戦っていく。劇中で『ダンス』と表現されているのですが、よけながら確実に急所を狙って倒していく戦い方で、どんなに大きい相手が来ても星矢なら勝ってくれるという説得力が必要でした」アンディらが作り出すアクションに魅了される日々だったようで、「よりかっこよく見えるようにというのを意識しながらトレーニングしていました」と回顧。新田から動きを提案することもあったそうで、アクションシーンもしっかり時間をかけて作り出すハリウッドの現場にとてもやりがいを感じたという。「週5で1カ月なので日本の映画の何百倍もの時間を費やしています。どうしても日本は、ほかの作品と並行して参加されている方々がたくさんいるので、合間を縫ってアクション練習をしないといけない。今回のように1つの作品に集中して取り組める現場は本当にいいなと思いました」すでに星矢が聖衣(クロス)を装着し、ペガサスの聖闘士“聖闘士星矢”になる瞬間がお披露目されているが、新田自身、このシーンは興奮したという。「うわー! キター! ってとてもワクワクしましたし、映像になったのを見て、ここまでになるんだと思いました。撮影現場ではみんなにめちゃくちゃ写真を撮られました(笑)」また、アクションをこなせるようにデザインされたこだわりの聖衣について、新田は「動きやすく、見た目も含めて、これ以上のものはないというぐらい一流でした」と絶賛。その重さは10キロ弱あり、「ただただ必死に頑張っていました。毎日筋肉痛でした」と明かす。肉体美を披露するシーンも。週5のアクショントレーニングに加え、週7でジムに通って体を作り上げたそうで、「そのときできるベストな状態には持っていきました」と自信をのぞかせる。●「こんなに恵まれた現場はない」 海外作品への意欲増すそして、本作に参加したことで海外の現場の熱量に圧倒されたという。「クルー、スタッフ、一人ひとりが命をかけて参加していると思わされることがたくさんあって、必死に取り組んでいる姿がいいなと思いました。普段一番気合のある僕が押されているのかもしれないというくらい、みんなの気合が常にすごかった。殺気に近い感じで怖かったですが、僕も負けじとぶつかっていきました。皆さん気づいたことやおかしいと感じたことがあればすぐ言いますし、そういうチームがいい作品を作れるのだと思います」ハリウッドの現場は「プロしかいない」と新田は語る。「日本はプロだけではなく、僕も全く芝居ができないときに作品に入らせてもらいました。それは日本特有だと思います。海外はプロしか雇われないですし、実力がなければ雇われないので、本物を見させていただいた感じがします」そんなプロ集団で座長を務め、重圧に押しつぶされそうになることも多々あったという。「毎日不安で、吐きそうでした(笑)。ただただ必死に頑張って取り組み、完成した作品を見たときは、よかったなと。作品は超一流ですし、これが日本から生まれたと考えるとものすごいことだと思います」この物語は、『聖闘士星矢』の前日譚であり、星矢の成長が描かれているが、新田自身も本作に参加したことで成長を遂げた。「恵まれたトップの環境でお仕事させてもらって、役者としての考え方など大きく変わりました。時間やお金のかけ方が違い、そして、いつもやる気だけは自信があった自分がもしかしたら負けているかもしれないと思わされるスタッフの気合……世界はこういう現場なのかと。役者として、こういう現場で死にたいと思いました」そして、「こんなに恵まれた現場はないし、日本を出なければ絶対に味わえないような経験ができて、この経験が宝物になりました」としみじみ。「自分の未熟さも感じました」とも言い、「まだ足りないと気づけたことも含め、4カ月間でたくさん成長できたなと感じています。この経験を生かしてよりよい大きな役者になっていきたいと思います」と力を込めた。日本と海外の違いを感じたものの、日本も海外のようにならなければいけないという危機感は「全くありません」ときっぱり。演技経験の少ない人を起用するということも含めて、「日本には日本のやり方がある」と感じたそうで、「日本で必要とされているものとハリウッドで必要とされているものは明確に違うので、日本では日本のやり方でやりますし、ハリウッドはハリウッドのやり方でやります」と語った。○■父・千葉真一さんから受け継いだもの今後については、「作品はタイミングと出会いだと思うので、そのときに出会えた作品を精一杯やるだけです。どの国の作品であれ、巡り合えた作品は一生懸命やらせていただきたいと思っています」との考え。日本の作品にも変わらず参加していくつもりだが、本作を経験したことで海外作品への意欲は増したという。「海外でより多くの作品に出演したい。日本の現場でいろいろ学ばせてもらったので、次は海外で、まだ想像もできないような経験をして、日本では得られないものを得ていきたいと思います」アクション監督のアンディは新田を大絶賛。「私はこれまでにジャッキー・チェンやドウェイン・ジョンソンなど、多くのアクションスターと仕事をしてきましたが、真剣佑は最高峰に位置すると思います。彼は若いですが、すでに多くの経験を持っていますし、そもそも彼は父である世界のアクションスター・千葉真一さんのもとで育ったのです。才能も技術も規律もすべてが揃っている。絶対的に優れた俳優だと言えます」と太鼓判を押した。アンディの言葉に新田は恐縮しつつ、父・千葉真一さんからの影響について「まず、受け継いでいるものは血ですね」とした上で、幼い頃から空手などに取り組んできたことも「やってきてよかったなと。それが今回のようなアクションに生きています」と実感。さらに、「アメリカで生んで育ててくれたことは本当に親に感謝しています。それがあったからこそ、こういう機会につながったので」と語った。最後に作品を楽しみにしているファンに向けて「こういう作品が日本から生まれたということを噛みしめて見てほしいです」とメッセージ。また、英語の大切さを感じてもらうことも願っており、「これを見た20代に期待しています。20代の方たちの子供に英語を学ばせてほしい。英語の大切さ、そして世界の規模を感じてほしいです」と熱く語っていた。■新田真剣佑1996年11月16日生まれ、アメリカ・ロサンゼルス出身。『ちはやふる -上の句-/-下の句-』(16年)で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。映画『ちはやふる-結び-』『パシフィック・リム:アップライジング』(18年)、『十二人の死にたい子どもたち』(19年)、『カイジ ファイナルゲーム』『サヨナラまでの30分』(20年)、『ブレイブ-群青戦記-』(21年)、『鋼の錬金術師』シリーズ、ドラマ『同期のサクラ』(19年)、『イチケイのカラス』(21年)などに出演。Netflix『ONE PIECE』、ディズニープラス『House of the Owl(仮題)』が2023年配信予定。(C)2023 TOEI ANIMATION CO, Ltd.ヘアメイク:いたつスタイリスト:櫻井賢之[casico]
2023年04月26日4月16日に開催された、第41回香港映画賞のレッドカーペットに登場した、ミシェル・ヨー(Michelle Yeoh)。マリア・グラツィア・キウリによる2023年春夏 コレクションより、刺繍があしらわれたイエローのシルクドレスにベルトを合わせた装いを披露しました。ミシェル・ヨー(Michelle Yeoh)/Courtesy of DIOR@Dior @MariaGraziaChiuri#Diorお問い合わせ:クリスチャン ディオールTEL:0120-02-1947
2023年04月19日俳優の新田真剣佑が18日、都内で行われた映画『聖闘士星矢 The Beginning』(4月28日公開)のジャパンプレミアに登壇。ハリウッド映画初主演作となる本作への思いや役作りについて語った。全世界で累計5000万部を超え、アニメシリーズも世界中で人気となった車田正美氏の人気漫画『聖闘士星矢』を実写化。星矢のはじまりの物語を描く。この日は主人公・星矢を演じた新田に加え、来日したハリウッド俳優陣が参加。アルマン・キド役のショーン・ビーン、グラード役のファムケ・ヤンセン、シエナ役のマディソン・アイズマン、ネロ役のディエゴ・ティノコ、マイロック役のマーク・ダカスコス、トメック・バギンスキー監督が登壇した。観客1000人が熱い視線を注ぐ中、新田は「本当に早くこの映画を見ていただきたかったので、皆さんに見ていただけるということが幸せです。楽しんでください」と呼びかけた。本作で主演を務めるプレッシャーを感じていたか聞かれると、新田は「ありました。押しつぶされそうになることは多々ありました」と打ち明け、「でも、自分がこれまでいろんな現場で学んだことすべてを出し切って、いい芝居ができればいいなと思いながらずっと挑戦していました」と語った。また、アクションシーンの撮影について「スケールはものすごかったです。自分が想像していた遥か彼方に行ってしまったので、撮影の1カ月前から週5で練習させていただいて、星矢のアクションを作り上げました」と説明。劇中で披露している肉体美をMCから絶賛されると、「上半身裸のシーンがあるかもしれないんですが、それは世界中の皆さんに見られるということで、恥ずかしくない体には仕上げたつもりでございます」と少し照れつつ話した。さらに、「確実に言えるのは、いろんな意味で希望を与えてくれる作品だと思っています。日本の映画界にとっても大きな第一歩だと思っています。そして、見終わったあとに『すごい!』と言っていただける作品が出来上がったと思います」と手応えを口にした。原作者の車田氏も登場。新田らと固い握手を交わした。また、吹き替えを務めた声優陣、磯部勉、井上喜久子、潘めぐみ、浪川大輔、咲野俊介も集結。さらに本作の応援隊長を務める霜降り明星・せいやも登場し、イベントを盛り上げた。
2023年04月18日「第94回アカデミー賞」国際長編映画賞にノミネートされた映画『EO イーオー』より、主人公のEOを写した場面写真が公開された。イエジー・スコリモフスキ監督の7年ぶりとなる最新作は、ロベール・ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』に着想を得た物語。主人公は、EO(イーオー)という名のロバ。サーカス団から連れ出され、ポーランドからイタリアへと予期せぬ放浪の旅に出ることに。プレミア上映となった第75回カンヌ国際映画祭では、審査員賞・作曲賞の2部門を受賞。全米映画批評家協会賞でも、外国語映画賞/撮影賞の2部門を受賞し、New York Timesでは2022年のNo.1ムービーに選出された。いち早く鑑賞した、スコリモフスキ監督と親交のある映画監督・濱口竜介は「もう彼だけになってしまった。その人自身を映画と思える人は。崇高と俗悪がかつてなく接近する最新作はまた一つ映画の領野を広げ、相変わらず陳腐な問いを与える。映画とは何か。つまりスコリモフスキとは何者か」とコメント。俳優・渡辺真起子も「ロバのEOの旅。それだけなのだけれど、誰からも忘れられてしまいそうなロバが人間の暮らしの断片を繋いでいく。流転していく中で、思い出す温もりは『EO』にとってなんだったんだろう。『EO』が出会う人間達もまた旅の途中なのだと思う。人間達の暮らしはどこへ向かっていくのだろうか。まずは『EO』が辿り着く先はどこなのか、劇場で見届けていただくしかない」と感想を述べている。『EO イーオー』は5月5日(金・祝)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:EO イーオー 2023年5月5日よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開© 2022 Skopia Film, Alien Films, Warmia-Masuria Film Fund/Centre for Education and Cultural Initiatives in Olsztyn, Podkarpackie Regional Film Fund, Strefa Kultury Wrocław, Polwell, Moderator Inwestycje, Veilo ALL RIGHTS RESERVED
2023年04月14日心身のバランスを崩してしばらくハリウッドから遠ざかっていたブレンダン・フレイザーが、『ザ・ホエール』で本年度米アカデミー主演男優賞を受賞し、見事に復活した。本作は「メイクアップ&ヘアスタイリング」部門も受賞。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が最多7部門を独占という“エブエブ旋風”が吹き荒れた今年のオスカーレースの、もうひとつの話題作だ。映画は4月7日から日本公開される。『ザ・ホエール』この映画の主人公チャーリーは、オンラインで授業をする40代の大学教員。現実逃避のように引きこもりの生活を送っている。体重272キロ、重度の肥満症だ。暴食の果てにこの姿になった。血圧は238/134、うっ血性心不全で、いつ命をおとしてもおかしくない状況。その彼が、いよいよ死を予感し、過ごした最期の5日間を描く。『ハムナプトラ』シリーズなどで颯爽としたアクション俳優のイメージがあるブレンダン・フレイザーが、まるで“ジャバ・ザ・ハット”のような存在に扮してどんな演技をみせてくれるか、そこが大きな見どころ。彼の姿を作り上げた特殊メイク・チームの努力と技もすさまじい。伊藤さとりさんの水先案内をもっと見る()(C)2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.
2023年04月03日8月30日から開催される第80回ヴェネチア国際映画祭にて、俳優のトニー・レオンと監督のリリアーナ・カヴァーニが栄誉金獅子賞を受賞することが分かった。これまでに出演作3本(『非情城市』『シクロ』『ラスト、コーション』)が金獅子賞を受賞しているトニーは、「ヴェネチア・ビエンナーレから知らせを受け、大変驚くと共に光栄に思います。これまで一緒に仕事をしてきた映画製作者たちとこの賞をお祝いしたいですね。この賞は彼らへの贈り物でもあるのです」と受賞を喜んだ。ヴェネチア国際映画祭の常連で、監督作『卍/ベルリン・アフェア』が金獅子賞の候補になったこともあるリリアーナは、「このような素敵なサプライズをくださったヴェネチア・ビエンナーレに大変感謝しており、またとてもうれしく思います」とコメント。リリアーナの代表作には『愛の嵐』『フランチェスコ』『リプリーズ・ゲーム』などがある。栄誉金獅子賞は多くの優れた映画作品を生み出した映画人を称える賞で、これまでに黒澤明監督、宮崎駿監督、スティーヴン・スピルバーグ、スタンリー・キューブリック、クリント・イーストウッドらが受賞。昨年はカトリーヌ・ドヌーヴに贈られた。(賀来比呂美)
2023年03月28日N.ハリウッド テストプロダクト エクスチェンジサービス(N.HOOLYWOOD TEST PRODUCT EXCHANGE SERVICE)とポーター(PORTER)のコラボレーションバッグが、2023年3月25日(土)よりミスターハリウッドなどで発売される。素材&ディテールをアップデートしたヘルメットバッグ今回のコラボレーションバッグのベースは、戦闘機のパイロットが自分のヘルメットを持ち運ぶ為に使用していたバッグに由来するヘルメットバッグ。アイコニックなディテールはそのままに、生地やディテールにアレンジを加えて、コラボレーションならではの仕様に仕上げている。ボディには、特殊な加工を施した、高密度なナイロンタスランを採用。素材の持つ、マットでソフトな風合いを残しつつ、高い耐久性を実現した。また、日常使いしやすいよう改良された仕様にも注目。大容量のメインコンパートメントは、口元の開閉をしやすいドットボタンに変更。大型のポケットを外側と内側にあしらいつつ、ファスナー付きの吊りポケットも装備した。ショルダーストラップには、Dカンを搭載し、着脱出来るようにしている。カラーは、ブラックに加え、N.ハリウッド テストプロダクト エクスチェンジサービスのオリジナルとなるチャコールの2色を用意する。【詳細】N.ハリウッド テストプロダクト エクスチェンジサービス × ポーター発売日:2023年3月25日(土)販売店舗:ミスターハリウッド、ミスターハリウッド 大阪、N.ハリウッド直営店舗、公式オンラインストア、ゾゾタウン価格:49,500円カラー:ブラック、チャコール【問い合わせ先】ミスターハリウッドTEL:03-5414-5071
2023年03月27日イタリアで開催される世界最大のアジア映画祭、第25回ウディネ・ファーイースト映画祭にて、『PLAN 75』の主演でも話題を呼んだ倍賞千恵子にゴールデン・マルベリー(生涯功労賞)が授与されることが決まった。第25回ウディネ・ファーイース映画祭では、昨年2022年の北野武監督に続いての倍賞さんの授与。最新主演作『PLAN 75』(2022年/早川千絵監督)とともに、ウディネ・ファーイースト映画祭の観客のために倍賞さん自ら選んだ傑作、『男はつらいよ』シリーズ1作目の『男はつらいよ』(1969年/山田洋次監督)と『家族』(1970年/山田洋次監督)の特別上映も行われ、倍賞さんが現地に赴き、映画祭にも参加する。『PLAN 75』倍賞さんは「ウディネ・ファーイースト映画祭功労賞を受賞し招待されたと聞き『え、何故?どうして『PLAN 75』で?』ビックリ。お聞きしたら、私が映画の世界に入ってから演じ仕事をして来た事に対しての生涯功労賞との事、とてもビックリ致しました」とコメント。また、「日本で仕事していた私を、外国の方が見ていて下さった事に大変驚き、感謝し、うれしく思っています。映画って素晴らしいですヨネ。ウディネ・ファーイースト映画祭の皆さん本当にありがとうございました。私、これからも精進してまいります」と改めて意気込みを語った。ゴールデン・マルベリー(生涯功労賞)を受賞される倍賞千恵子さんは、1941年生まれ。映画『男はつらいよ』シリーズ50周年記念作品である映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』を含む本シリーズ全作品(1969年~)にさくら役でお馴染み。1980年には『遙かなる山の呼び声』、『男はつらいよ寅次郎ハイビスカスの花』(共に山田洋次監督)にて第4回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞、『劇場版 機動戦士ガンダムI』『ジャングル大帝』『ハウルの動く城』など、アニメーションの世界でも声優としても活躍する。映画祭で上映される『PLAN 75』は、早川千絵監督の長編デビュー作で、2022年・第75回カンヌ国際映画祭にてカメラドール特別賞を受賞、イタリアではタッカーフィルム配給で今年5月11日より公開される予定。『PLAN 75』は企画開発中に、2019年のウディネ・ファーイースト映画祭の期間中に行われる「フォーカス・アジア」という業界関係者向けのネットワーキングセッションにも選出されていたプロジェクトであり、早川監督はこの年、オムニバス映画『十年Ten Years Japan』の一編『PLAN75』の監督としても、映画祭に参加していた。「第25回 ウディネ・ファーイースト映画祭」は4月21日(金)~4月29日(土)イタリア、ウディネにて開催。『PLAN 75』Blu-ray・DVDは4月26日(水)より発売。(text:cinemacafe.net)■関連作品:PLAN75 2022年6月17日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2022『PLAN75』製作委員会 / Urban Factory / Fusee
2023年03月23日ロシア政府の暗部に切り込む緊迫のドキュメンタリーとして、第95回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『ナワリヌイ』が、Bunkamura ル・シネマなどにて凱旋上映が決定した。ロシアの弁護士で政治活動家のアレクセイ・ナワリヌイが、自身の暗殺未遂事件の影に潜む勢力を自ら暴いていく本作。アカデミー賞の授賞式では、舞台上にダニエル・ロアー監督をはじめ、ナワリヌイ氏と共に暗殺未遂事件の実行犯を暴いた調査チームの主要メンバーであるクリスト・グロゼフ氏やマリア・ぺヴチク氏、そして映画でもナワリヌイ氏を支えていた妻のユリヤ氏と娘のダーシャさん・息子のザハールさんも登壇。受賞の喜びを分かち合うとともに、スピーチでは現在収監されているナワリヌイ氏の解放を力強く訴えた。ロアー監督は「ロシア反体制派のリーダー、アレクセイ・ナワリヌイ氏は今も独房にいます。プーチン大統領による不当なウクライナ戦争の犠牲になっています。アレクセイ、あなたの私たち皆に向けたメッセージを世界は忘れていません。独裁者や権威主義がどこで頭をもたげようとも、反対することを恐れてはいけません」とスピーチ。続いて妻ユリヤ氏が「私の夫は真実を語っただけで、民主主義を守っただけで刑務所にいます。アレクセイ、私はあなたが自由の身になる日を夢見ています。そして私たちの国が自由になることを。愛しています。どうか強くあってください」と語った。この授賞式での様子も相まって、SNS上では劇場公開時に見逃した映画ファンからの再上映を望む声が続出。現在、3月17日(金)から京都シネマでの再上映が1週間限定で行われているのに続き、東京でも3月24日(金)より急きょBunkamuraル・シネマでの凱旋上映が決定。そのほかの地域でも、配給会社と劇場の間で上映の調整が進んでおり、今後もドキュメンタリー作品としては異例の再上映が多くの都市で行われることになりそうだ。ロシアによるウクライナ侵攻から先月で1年が過ぎ、未だ終戦の兆しもないまま犠牲者は日々増え続けている。ナワリヌイ氏もロシアで最も厳重といわれる刑務所に移送され、独房に収容されたまま700日以上が経つが、なおもSNSを通してプーチン大統領とロシア政府を批判し、ウクライナ侵攻の不当さを訴え続けている。本作はアカデミー賞ほか、英国アカデミー賞の最優秀ドキュメンタリー賞、全米プロデューサー協会賞の最優秀ドキュメンタリー賞、シネマ・アイ・オナーズの観客賞と製作者賞も受賞している。『ナワリヌイ』は3月24日(金)よりBunkamura ル・シネマほかにて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ナワリヌイ 2022年6月17日より新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほか全国にて公開© 2022 Cable News Network, Inc. A WarnerMedia Company All Rights Reserved. Country of first publication United States of America.
2023年03月21日第4回「大島渚賞」の授賞式が3月14日(火) 、都内で行われ、受賞した山崎樹一郎監督が出席。「大島渚賞という、その生々しく深く、そして重たい賞の受賞の連絡をいただいて以来、この短期間で、すでに翻ろうされておりますが、決して急がず、ゆっくりと映画と向き合っていこうと、まずは自分を落ち着かせています」と喜びとともに、今後の創作活動への決意を示していた。また、関係者への御礼に加えて「最後に小さな二人の娘とパートナーに、感謝します。あなたたちのおかげで、いくつかの視点を生活の中に持ち、映画を作ることができています」と家族に感謝を伝えていた。山崎監督は1978年、大阪府生まれ。2006年に岡山県真庭市の山間に移住し、農業に携わりながら作品に向き合うという、独自のスタイルで映画製作を続けている。対象作品となった2022年公開作の『やまぶき』は監督の長編第3作にあたり、日本映画史上初めてカンヌ映画祭のACID部門に選出されたほか、14の海外映画祭で話題をさらった注目作。クラウドファンディングで資金を集め、16ミリフィルムで撮影に挑んだほか、主演に韓国人俳優を起用し、フランスの製作会社と共同製作を行うという国際色豊かな一面をもつ本作に対して、「段違いの大きなスケールをもった映画である」と審査員の意見が一致し、授賞が決定した。授賞式には山崎監督をはじめ、『やまぶき』に出演するカン・ユンス、川瀬陽太、和田光沙、黒住尚生、審査員の荒木啓子(PFFディレクター)、プレゼンターの大島新(ドキュメンタリー監督・大島プロダクション代表)、矢内廣(一般社団法人PFF理事長・ぴあ株式会社代表取締役社長)が出席した。大島新氏は「これほど、大島渚賞にふさわしい作品はないんじゃないかと思える傑作。野心的な試みに、胸を打たれました」と絶賛。また、審査員の黒沢清監督が、新作を撮影中のフランスからビデオメッセージを寄せ、「地方都市に住む人たちが、社会の角にぶつかりまくる映画です。その様は日本が迷走している様子を描いている」と受賞理由を説明した。PFF(ぴあフィルムフェスティバル)が2019年に創設し、映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする、若き才能に授与される同賞。「日本で活躍する映画監督(劇場公開作3本程度)」、「原則として前年に発表された作品がある」監督を対象に、高い志を持って世界に挑戦した大島渚監督に続く次世代の才能を期待と称賛を込めて顕彰してきた。坂本龍一氏が審査員長を務めるが、今回は療養中のため、審査には参加しなかった。取材・文・撮影:内田涼※山崎樹一郎の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記
2023年03月14日今年のトロント国際映画祭にて初上映され、観客賞の次点に選ばれた話題作『ウーマン・トーキング 私たちの選択』のサラ・ポーリー監督が第95回アカデミー賞脚色賞を受賞。この度、監督のインタビューが脚色について語ったインタビューが到着した。2005年から2009年にボリビアで起きた実際の事件を基にした、ミリアム・トウズによる同名ベストセラー小説をサラ・ポーリー監督が女性側の視点から脚色。その脚本は高く評価され、オスカー前哨戦で数々の脚色賞を受賞、アカデミー賞においても脚色賞を受賞した。ポーリー監督は脚色について、「とても楽しい作業だった」と語る。「もちろん、納屋で何時間にも及ぶ会話が続くのだから、難しさはあったけれど、そんななか叙事詩感と寓話感にこだわりながらストーリーを描いていきました」という。叙事詩には、語り伝える価値のある事件を物語として語り伝えるもの、という意味がある。そして寓話は、教訓的な本質的な作品の意図を隠しながら表現される、たとえ話。サラは本作で取り上げた語り継がれるべき“事件”を、映画作品として練り上げることで、いまの私たちに問いかける。サラ・ポーリー監督もう1つ、サラは「納屋での会話が、この女性たちの生きる世界の進歩に欠かせないものであることもポイント」だと言う。「この女性たちがどのように今の世界を取り壊し、新しい世界を創造するのかを模索することが何よりも大切なことであるということを表現しようとしました。同時にどんな風景を描くのかについても、最初から視覚的に想像しながら脚本を書き進めていきました」と明かした。また、アカデミー賞脚色賞の受賞を祝して、新スチール2枚と作家・柚木麻子からのコメントが到着。スチールの1枚は、納屋に集う女性たちの姿。脚色の手腕を絶賛された長時間にわたる納屋での話し合いの最中が捉えられている。もう1枚は、村の子どもたちが畑で遊んでいる場面。納屋の緊迫感とは裏腹に、のびのびとした雰囲気が伝わってくる。女性たちは、納屋で、この子どもたちを守るために話し合いを進めていく。子どもたちの未来のために、女性たちは赦すのか、闘うのか、それとも去るのか。柚木氏は「被害者同士の対話が、ふみにじられた尊厳を取り戻す。次世代への愛と責任、そして希望。この作品をきっかけに数々の名作が産みだされるであろう、歴史を変える一作」と、歴史的な作品となることを語っている。『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は6月2日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ウーマン・トーキング 私たちの選択 6月2日TOHO シネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開© 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.
2023年03月13日第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、インド映画『RRR』の劇中歌「Naatu Naatu」が歌曲賞を受賞した。インド映画の歌曲賞受賞は初となる。世界的に大ヒットしたインド映画『バーフバリ』シリーズを生み出したS・S・ラージャマウリ監督による最新作。英国植民地時代の激動のインドを舞台に、男の友情と使命がぶつかり合う豪快なアクションエンタテインメントは、公開直後から旋風を巻き起こし、日本国内で公開されたインド映画として、初めて興収10億円を突破する大ブームとなったのは、記憶に新しいところ。英国軍にさらわれた少女を救うため立ち上がったビーム(N・T・ラーマ・ラオ・Jr.)と、大義のため英国政府の警察となったラーマ(ラーム・チャラン)。ふたりは、敵対する立場とは知らずに友情を育むが、ある事件をきっかけに選択を迫られてしまう。インド映画史上初となる歌曲賞受賞を果たした「Naatu Naatu」(M・M・キーラバーニ作曲、チャンドラボース作詞)は、インド総督公邸で開催されたパーティーでビームとラーマが、超高速の「ナートゥダンス」を披露し、イギリス人男性たちを圧倒していくシーンに使用され、映画の大きな見せ場となった。受賞コメントアカデミー協会に感謝申し上げます。子供の頃、私はカーペンターズの曲を聴いて育ちました。そして私が、アカデミー賞に輝いた。この歌を捧げたいと思います。(カーペンターズの楽曲「トップ・オブ・ザ・ワールド」を替え歌で)Once only wish my mind. So was Rajamouli(本作の監督ラージャマウリ) and my family.RRR has to wind, pride of every India,RRRは受賞する必要があるんです、ありがとう、カールティケーヤ(本作のプロデューサー)。これを実現する事が出来ました。(text:cinemacafe.net)■関連作品:RRR 2022年10月21日より全国にて公開警官の血 2022年10月28日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEEYANG FILM. All Rights Reserved.
2023年03月13日第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、国際長編映画賞にNetflixで独占配信中のドイツ映画『西部戦線異状なし』が輝いた。エーリヒ・マリア・レマルク著による 1929年のベストセラー書籍「西部戦線異状なし」を原作に、『パトリック・メルローズ』『ぼくらの家路』のエドワード・ベルガーが監督を務める。主人公・パウルを演じるフェリックス・カメラーや、アルブレヒト・シュッヘ、アーロン・ヒルマーなどの俳優陣が集結。“絶望”と“恐怖”に溢れた第一次世界大戦の西部戦線で戦う若きドイツ軍兵士の心情と体験をリアルに描き出す。撮影技術、美術、メイクや衣装、さらには兵士の訓練に至るまで、あらゆるパートで緻密にそして徹底的に作り込まれた本作はNetflixにて配信開始されるや否や、各国で注目を集めた。本年度アカデミー賞で作品賞・国際長編映画賞ほか9部門ノミネートに加え、英国アカデミー賞では最多14ノミネート・7部門にて受賞、ゴールデングローブ賞でも最優秀非英語映画賞ノミネートという高評価を獲得している。国際長編映画賞には本作のほかに『アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~』(アルゼンチン)、『Close/クロース』(ベルギー・フランス・オランダ)、『EO』(ポーランド)、『The Quiet Girl』(アイルランド)計5作品がノミネートされていた。受賞コメント私たちにとって大切なことです。この映画でたくさんの友達を作ることができました。みなさんのおかげです、スタッフ全員のおかげです。Netflixのサポートに感謝します。素晴らしい役者たち、とくにフェリックス、今回が初めての映画です。しかし、何のプレッシャーも感じずに成し遂げてくれました。フェリックスさん、ありがとうございます。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-西部戦線異状なし
2023年03月13日第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、大本命だったNetflix作品『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』が長編アニメ映画賞に輝いた。第90回アカデミー賞の作品賞ほか4部門を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』の鬼才ギレルモ・デル・トロが、10年以上の歳月をかけて取り組んだ初のアニメーション監督作。『ファンタスティック Mr. FOX』でもアニメーション監督を務めた“ストップモーションアニメ界のレジェンド”マーク・グスタフソンとタッグを組み、世代を超えて愛されるピノッキオの冒険譚に、新たな命を吹き込んだ。ピノッキオ役の声優には、新人グレゴリー・マンを抜てき。ユアン・マクレガーが、語り部となるコオロギのセバスチャン・J・クリケットを演じたほか、ゼペットじいさん役は『ハリー・ポッター』シリーズ、「ゲーム・オブ・スローンズ」のデビッド・ブラッドリーが担当。ティルダ・スウィントン、クリストフ・ヴァルツ、フィン・ウルフハート、ケイト・ブランシェット、ロン・パールマンら豪華俳優陣が声優を務めている。オスカー前哨戦では、第80回ゴールデングローブ賞の最優秀アニメーション賞、第28回クリティクス・チョイス・アワード(放送映画批評家協会賞)の長編アニメーション賞、第34回アメリカ製作者組合(PGA)賞のアニメーション映画部門、そして、アニメ界のアカデミー賞と言われる第50回アニー賞で作品賞など最多5冠に輝き、向かうところ敵なしの快進撃を続けていた。なお、デル・トロ監督は、カズオ・イシグロの長編ファンタジー小説「忘れられた巨人」をストップモーション・アニメ作品として映像化する意向を示しており、そちらの動向にも注目が寄せられている。受賞コメントアニメーションは“シネマ”です。これからも、アニメーションを次なる高みへと押し上げたいと思います。皆様も、ぜひアニメーションを継続していってください。Netflixにも、この映画を信じてくれたことに感謝します。妻のキム(・モーガン)、子どもたち…。そして、もうこの世にはいない両親。でも、私の心の中には彼らがいます。息子である私から『愛している』と伝えたいと思います。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ギレルモ・デル・トロのピノッキオ 2022年11月25日より全国にて公開、12月9日よりNetflixにて配信
2023年03月13日単館公開から、ハリウッド俳優らの激賞を受け第95回アカデミー賞主演女優賞ノミネートの快挙を成し遂げた『To Leslie トゥ・レスリー』が6月23日(金)より全国公開されることが決定した。テキサス州西部に暮らすシングルマザー、レスリー(アンドレア・ライズボロー)は、宝くじに高額当選するが数年後には酒に使い果たしてしまい、失意のどん底に陥る。6年後、行き場を失ったレスリーは、かつての友人ナンシーとダッチ(アリソン・ジャネイ、スティーブン・ルート)のもとへ向かうが、やはり酒に溺れ呆れられてしまう。そんな中、スウィーニー(マーク・マロン)という孤独なモーテル従業員との出会いをきっかけに、後悔だらけの過去を見つめ直し、母親に失望した息子のためにも、人生を立て直すセカンドチャンスに手を伸ばしはじめる。主演のアンドレア・ライズボローの圧巻の演技に対し、グウィネス・パルトロー、シャーリーズ・セロン、エイミー・アダムス、ジェーン・フォンダ、ローラ・ダーンら演技派俳優たちの間で瞬く間に称賛の輪が広がり、ケイト・ウィンスレットは「私の人生で見た中で最も素晴らしい演技のひとつ」と絶賛。また、本年度同じく主演女優賞にノミネートを果たしたケイト・ブランシェットは、全米批評家協会賞の受賞スピーチで恣意的な演技賞で最も見過ごされている演技の一つとしてアンドレア・ライズボローを挙げるなど、ハリウッド俳優から熱い支持を受けている。さらに、米映画批評サイトRotten Tomatoesでは98%の満足度、さらにAUDIENCE SCOREも85%を獲得し、演技、作品評価ともに鑑賞者から広く共感を呼んでいる(※2022/10/11時点)。昨年10月に米公開された本作は、単館公開で興行成績も2万7000ドル(約350万円)と規模が小さく、大規模なPRキャンペーンを行う予算もなかったため前哨戦や下馬評ではあまり注目されていなかった。しかし、作品に感銘を受けたハリウッド俳優たちが上映会の開催や、SNSでの投稿など、アンドレア・ライズボローの真に迫る演技を次々と絶賛。旋風が巻き起こったことで、ついにはアカデミー賞主演女優賞へのノミネートを果たし、賞レースに躍り出ることになった。ノミネートまでのシンデレラ・ストーリーとは裏腹に、アンドレア・ライズボローが演じるのは、宝くじに高額当選(190,000ドル・日本円で約2,500万円)したものの酒に溺れ、行き場を失い放浪するシングルマザー。痛々しいほどリアリティのある演技に誰もが惹き込まれ、ラストには涙なしでは見られない心温まる瞬間が待ち受けている。監督は「ベター・コール・ソウル」や「13の理由」、「ハウス・オブ・カード 野望の階段」などの重厚で良質なドラマを手掛けてきたマイケル・モリス。本作が長編映画デビューとなる。また2017年『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』でゴールデングローブ賞助演女優賞、アカデミー助演女優賞を受賞したアリソン・ジャネイをはじめ、「GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング」出演のマーク・マロン、『猿の惑星』最新作に出演が決まっているオーウェン・ティーグら個性的な実力派俳優が脇を固める。『To Leslie トゥ・レスリー』は6月23日(金)より角川シネマ有楽町ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2023年03月11日「第46回日本アカデミー賞授賞式」が3月10日(金)に開催され、『ある男』が最優秀作品賞を受賞した。今回、12部門13賞を受賞していた最多の『ある男』だが、結果、作品賞に加え、監督賞、主演男優賞ほか計8部門において最優秀賞を受賞し、本年度の日本映画の“顔”なった。『ある男』は、『愚行録』や『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督が同名小説を映画化。亡き夫(窪田正孝)の名が別人のものだったと知った妻(安藤サクラ)が、知り合いの弁護士(妻夫木聡)に身元調査を依頼し、次第に夫の壮絶な過去が明らかになっていく物語。出自や家庭環境をめぐる差別やレッテルも容赦なく映しながら、アイデンティティを問う人間ドラマであり、ミステリー作品だ。檀上に妻夫木さんらキャストやスタッフとともに立った石川監督。最優秀監督賞を受賞の際には、「今日、本当にたまたまいただきましたが、バトンなんだなって感じがすごくしています。本当に先輩方が作った日本映画という大河があって、僕らがつめていくというバトンだと受け止めています」と語っていた。写真提供: 東京写真記者協会そんな石川監督の姿を笑顔で見つめていた妻夫木さんだが、マイクを握るととたんに目には涙が浮かんだ。「うれしいです。監督とはデビュー作から一緒で…」と話し、横にいる窪田さんがそっと妻夫木さんを支えた。妻夫木さんは「一番、僕は彼の才能というものを間近で見ていた自負があるので、認めてくださったのが本当にうれしいです」と喜びで声を震わせた。窪田さんも「本当におめでとうございます。この作品に関われて一員になれて、心からうれしいです。これからの財産になるし縁を少しずつ広げて映画をみんなで盛り上げていきたいです」と言い、安藤さんも「おめでとうございます!これ以上のものはないなって、おめでとうございます!」と笑顔を見せた。清野菜名も「本当におめでとうございます。こんな素敵な作品に参加できてラッキーだなと思います、私も頑張っていきます」と最後は涙声になっていた。そのほか、最優秀アニメーション作品賞は『THE FIRST SLAM DUNK』が受賞。企画から13年かけて制作された本作は、アニメ版でも映像化していない原作内の最終試合を新たな視点で描き、新旧ファンを興奮させ感動を呼んだ。そして現在も公開中、興行収入も100億円を超えて数字を伸ばし続けている。(cinamacafe.net)■関連作品:THE FIRST SLAM DUNK 2022年12月3日より全国にて公開© I.T.PLANNING,INC. © 2022 SLAM DUNK Film Partnersある男 2022年11月18日より全国にて公開©2022「ある男」製作委員会
2023年03月10日第46回日本アカデミー賞の授賞式が10日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて行われ、受賞者たちが登場した。優秀主演女優賞の岸井ゆきの、のん、賠償千恵子、広瀬すず、吉岡里帆の中から、最優秀主演女優賞に輝いたのは、『ケイコ 目を澄ませて』の岸井。声を震わせながら「身に余る賞をありがとうございます。三宅組でなかったら、誰一人かけても私はここに立っていなかったのでとても感謝していますし、支えてくださった関係者の皆さん、そして原案となった小笠原恵子さんに感謝します。ありがとうございます」と感謝の言葉を紡ぐ。岸井は「映画が大好き、映画を観ることが大好きで、映画を観ている時は何語でも喋れるしどこへでもいけるし何者でもないと思えるからすごく好きで、演じることも常に役があって、他者を演じることで自分を見ることができる。現場でわーってやって家に帰って、自分の生活を見つめて『ああ、やっぱり私ってなんでもないんだ』と思えることに安心して、そういうことで自分を見てるような気がする」と映画の魅力を熱弁。さらに「30年も40年も前の映画を初めて観た時に、これを観るために今までがあったんだなと思うことがあって、映画はずっとそこで見つけてもらうのを待ってくれていて、まだ出会う前の誰かのために生きることができるのかなと思ったりして」と話しながら、「わかんなくなってきたんですけど、この作品には私が見たことない景色をたくさん見せていただきました。まだ上映中なんです。ぜひ劇場で見ていただきたいなと思ってます。それだけが私の望みです」と訴えかけた。(C)東京写真記者協会
2023年03月10日