さまざまな家庭の事情を抱える子どもたちを救うため、社会全体としていくつもの課題に取り組んでいくべきですが、そのなかで注目されている制度のひとつが里親。そこで、ある実話をもとに描き、大きな感動と反響を呼んだ話題作をご紹介します。『1640日の家族』【映画、ときどき私】 vol. 506アンナと夫のドリスが、母親を亡くした里子のシモンを受け入れて4年半。18か月だったシモンは長男と次男と兄弟のように成長し、いつだって一緒に遊びまわっていた。5人はにぎやかで楽しい日々が続くと思っていたが、ある日、激震が走る。月に1度の面会交流を続けてきたシモンの実父エディが、息子との暮らしを再開したいと申し出をしてきたのだ。突然訪れた“家族”でいられるタイムリミットが迫るなか、彼らが選んだ未来とは……。人権や児童福祉を重視し、幅広い取り組みをしているフランスの現状を知ることができる本作。今回は、実際に里親制度を経験したこちらの方にお話をうかがってきました。ファビアン・ゴルジュアール監督© Manuel Moutier子ども時代に、両親が迎えた里子と生活をともにした実体験をもとに本作を手掛けたゴルジュアール監督。そこから自身が学んだことや育児をするうえで大切なこと、そして里親制度に必要なものなどについて語っていただきました。―幼少期に味わった里子との出会いとつらい別れは、監督のご家族みんなに影響を与えたそうですが、それによって監督の人生はどのように変わったと思いますか?監督僕にとっては、“映画監督になるための礎”となるような経験でした。というのも、「映画監督になったらこのストーリーを語るんだ」といった強い思いが自分のなかで生まれたからです。その後、22歳くらいのときに里子に関するシナリオを書いてみたもののうまくいかず、まずはほかの作品で経験を積むことに。そこでプロデューサーともいい関係を築けたので、本作を作ることができました。―里子と一緒に過ごした経験を通して、一番描きたいと思ったものは何だったのでしょうか。監督それはいままでにどんな映画を作っていても感じることですが、僕がテーマとして描いているのは、人の感情について。やはりそれは、子どもの頃に感情を揺り動かされるような経験をしたことが大きいのだろうと自覚しています。前作の『ディアーヌならできる』では、代理母の役割を務めた女性のエモーションが溢れ出るところでラストを迎えていますが、本作では最初からエモーションが溢れ出ている女性を描きました。僕にとって映画というのは、人間の感情を描く役割を果たしているのだと思います。里親は距離感を保つのが難しいと感じた―里親制度を目の当たりにしたことで、親子の在り方についても考えたと思いますが、育児をするうえで大切なものは何だと思いますか?監督僕にも5歳半の娘がいるのでよくわかりますが、子どもが生まれたことによって自分の人生は大きく変わりました。そんななかで、愛が不足することなく、溢れるほどの愛があるほうが親子関係においては大切なことだと確信しています。ただ、愛情がたくさんあるからいい親であるとか、正しい判断ができるとは限りませんよね。愛が溢れすぎて過保護になる場合も、子どもが息苦しいと感じてしまう場合もありますから。そういった弊害もありますが、それが愛であると言えるのかもしれません。―里親だった監督のお母さまがソーシャルワーカーから受けた唯一のアドバイスは、「この子を愛しなさい、でも愛し過ぎないように」だったとか。監督確かに、里親の場合は、愛してあげなきゃいけないけど、愛しすぎてはいけないという距離感を保つのは非常に難しいことだと思います。そのときに考えたのは、里親のように感情を職業的にコントロールするのは可能なのだろうか、ということでした。人によってはできるかもしませんが、僕個人としては、難しいと感じています。母親と父親の立場の違いも見せたかった―劇中では、愛情を抑えきれない母親に対して、冷静さを保つ父親も登場します。里子との距離感がそれぞれ違って描かれていますが、それは母性によるものなのか、それとも監督が実際にリサーチや経験から感じたことなのでしょうか。監督いまの質問にもあったように、それは母性でもあり、リサーチの結果でもあり、自分の母親の姿でもあり、それらすべてが含まれています。ただ、今回の作品で言うと、アンナがヒロインなので、彼女の目線で描くことを意識しました。実際、里親を仕事にしているのは女性のほうが圧倒的に多いと言われています。しかし、だからといって父親よりも母親のほうが愛情深いという意味ではありません。本作では、シモンの母親が亡くなっていることもあり、アンナは余計に母親の代わりになろうとしてしまうところがあります。いっぽう、実の父親は存在しているため、アンナの夫であるドリスは自分を父親と同一化することがないのです。それだけでなく、彼は自分の家族に“嵐”が待っていることを予見していることもあって、愛情を溢れさせることなく、自分が家族を守るために距離を保つことを意識しています。そういった立場の違いというのも、本作のなかでは見せたいと思いました。里親の存在は必要だが、改善すべき点が多い―なるほど。まもなく日本では公開を迎えますが、日本に対してはどのような印象をお持ちですか?監督まだ訪れたことはありませんが、日本といえば新婚旅行で行こうかと話が出たこともあったくらい興味がある国のひとつ。実は、この作品と一緒に行けるのではないかと淡い期待を抱いていたのですが、コロナ禍でその夢が破れて残念に感じています。日本に興味を持つようになった出発点はやはり日本映画ですが、なかでも好きなのは成瀬巳喜男監督です。いま一番好きな監督と言えるほど、最近になっていろんな作品を観ているところです。彼の作品に惹かれる理由は、感情を揺さぶるメロドラマの要素があること。いつか映画のなかの場所を体感できるように、スクリーンを通り抜けて日本にたどり着きたいと思っています。―日本では親と暮らせない子どもたちに対して、施設養育から里親養育への転換を進め始めたところと言われていますが、里親制度を広めていくうえで欠かせないことや改善すべき点などがあれば、教えてください。監督里親制度が存在すること自体はいいと思いますが、システムに関してはまだ欠点のほうが多いように感じています。必要としている子どもの数は減っていないにも関わらず、残念ながら里親になろうという人が減っているのが現状。これはフランスに限ったことではなく、世界的に見ても、他者に対する寛容さが失われつつあるので、悲しいことだと思っています。里親制度において問題を挙げるとすれば、まずは財源不足。そして、使命感の欠如です。里親になりたい人を増やすのは大事なことですが、現在はあまり選別することなく誰でもなれる状況なので、お金目当てだけでやっている人がいると言われることも……。そうならないためにも、財源を増やし、里親を養成する期間をしっかりと設ける必要があると思います。新しい家族の在り方を考えさせられる里親という制度を通して、親と子の間における愛の大切さと難しさを突きつける本作。演技初挑戦とは思えない子役が見せる繊細な表情をはじめ、フランスの実力派俳優たちによる見事な演技は、観る者の感情までも溢れさせてしまうはずです。取材、文・志村昌美心が震える予告編はこちら!作品情報『1640日の家族』7月29日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国公開配給:ロングライド️© 2021 Deuxième Ligne Films - Petit Film All rights reserved.
2022年07月28日ドイツ映画『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』が、2022年6月10日(金)より公開される。主演はトム・シリング。ナチス台頭前夜、青年の恋と戸惑いを描く映画『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』は、2021年のベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、ドイツ映画賞では最多10部門ノミネート主要3部門を受賞した注目作品。ナチスの足音が聞こえてくる1931年のベルリンを舞台に、⻘年ファビアンの恋と惑いの⽇々を描いた。エーリヒ・ケストナー“唯一の大人向け長編小説”を映画化原作は、『エーミールと探偵たち』『点⼦ちゃんとアントン』『⾶ぶ教室』『ふたりのロッテ』などで知られ、⽇本でも多くのファンを持つ児童⽂学の⼤家エーリヒ・ケストナー。彼による唯⼀の⼤⼈向け⻑編⼩説『ファビアン あるモラリストの物語』を実写映画化した。<映画『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』>舞台は1931年のベルリン。出⼝のない不況は⼈々の⼼に空虚な隙間をつくり、ひたひたと迫るナチスの⾜⾳が聞こえてくる。作家を志してベルリンにやってきたファビアンは、時代の中でどこへ⾏くべきか惑い、⽴ち尽くしていた。⼥優を夢⾒るコルネリアとの恋。ただ⼀⼈の「親友」ラブーデの破滅。やがてコルネリアは⼥優への階段を登るためファビアンの元を離れ、次第に⼆⼈の関係は崩壊していく…。主演はトム・シリング■主人公・ファビアン...トム・シリング作家を志してベルリンにやってきた青年。コルネリアと恋に落ちる。主演を務めるのは、『コーヒーをめぐる冒険』でドイツ映画賞主演男優賞はじめ数々の賞を獲得し、その後もスリラー映画『ピエロがお前を嘲笑う』や『ある画家の数奇な運命』の主演で注⽬を浴び続けているドイツ映画界のスター、トム・シリング。■ヒロイン・コルネリア...ザスキア・ローゼンダール⼥優を夢⾒るヒロイン。『さよなら、アドルフ』で主演を務めた⼈気⼥優ザスキア・ローゼンダールが、『ある画家の数奇な運命』以来、トム・シリングと2度⽬の共演を果たす。監督は日本初登場ドミニク・グラフ監督は、映画『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』が日本初公開作となるドイツの名匠、ドミニク・グラフ。刺激的な映像のコラージュや、往年のベルリンの美しさを際⽴てる濃密な描写などを駆使し、原作が持つ世界観を見事に映像化した。【詳細】映画『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』公開日:2022年6月10日(金)監督:ドミニク・グラフ出演:トム・シリング、ザスキア・ローゼンダール英題:Fabian - Going to the Dogs原作:エーリヒ・ケストナー「ファビアン あるモラリストの物語」(みすず書房)2021年|ドイツ|178分|スタンダード|字幕:吉川美奈子|配給:ムヴィオラ
2022年04月10日『ある画家の数奇な運命』のトム・シリング主演、E・ケストナー原作の話題作『Fabian-Going to the Dogs』が、『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』の邦題で、6月10日(金)より公開されることが決定した。舞台は1931年のベルリン。出口のない不況は人々の心に空虚な隙間をつくり、ひたひたと迫るナチスの足音が聞こえてくる。作家を志してベルリンにやってきたファビアンは、時代の中でどこへ行くべきか惑い、立ち尽くしていた。女優を夢見るコルネリアとの恋。ただ一人の「親友」ラブーデの破滅。やがてコルネリアは女優への階段を登るためファビアンの元を離れ、次第に2人の関係は崩壊していく…。原作は、「エーミールと探偵たち」「点子ちゃんとアントン」「飛ぶ教室」「ふたりのロッテ」などで知られ、日本でも多くのファンを持つ児童文学の大家エーリヒ・ケストナーが書いた唯一の大人向け長編小説「ファビアン あるモラリストの物語」(みすず書房刊)。昨年のベルリン国際映画祭でも絶賛され、ドイツ映画賞最多ノミネート主要3部門受賞した注目作だ。監督は、本作が本邦初公開作となるドミニク・グラフ監督。刺激的な映像のコラージュや、往年のベルリンの美しさを際立てる濃密な描写などを縦横無尽に駆使し、原作の世界観を見事に再現した。主演は、『コーヒーをめぐる冒険』でドイツ映画賞主演男優賞はじめ数々の賞を獲得し、その後も大ヒットスリラー『ピエロがお前を嘲笑う』や『ある画家の数奇な運命』の主演で注目を浴びたドイツ映画界のトップスター、トム・シリング。ヒロインは、『さよなら、アドルフ』に主演し、その可憐な姿で大きな注目を集めたドイツの人気女優ザスキア・ローゼンダール。2人は、『ある画家の数奇な運命』に続き2度目の共演となる。併せて解禁された日本版ポスタービジュアルでは、「僕はどこへ?」のキャッチコピーと戸惑いの表情を浮かべる主人公ファビアンの姿が印象的な1枚。背景には、ナチスの象徴である“ハーケンクロイツ”、燃やされる本など、ファビアンを取り囲む時代を象徴する写真が並んでいる。右か左か、前か後ろか、一体どこへ行くべきなのか…。ナチス台頭の前夜、空虚な時代の一人の青年の恋と惑いは、まさに現代と重なる物語だろう。90年前の小説が「今、この世界」の映画になったことが感じられる、今年度最注目のドイツ映画だ。『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』は6月10日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2022年03月24日ミシュランに並ぶレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」でベストパティシエを受賞したファビアン・ベルトー手掛ける「アディクト ショコラ ファビアン・ベルトー(Addict Chocolate Fabien・Berteau)」が日本初上陸。2019年11月1日(金)よりグランフロント大阪南館B1Fウメキタセラー内にオープンする。ファビアン・ベルト―手掛けるスイーツショップが初上陸ファビアン・ベルトーは、フランスを拠点に活動するパティスリー。ミシュランと並んで歴史のある美食ガイド「ゴ・エ・ミヨ」において、ベストパティシエを受賞するほどの腕前の持ち主だ。自身がフランス・ボーヌで展開する「ファビアン・ベルトー パティシエ」には、世界中から多くのファンが訪れる。そんな人気パティスリーが手掛ける「アディクト ショコラ ファビアン・ベルトー」では、彼の代名詞ともいえる“チーズ×チョコレート”の新感覚ケーキをはじめ、一度食べたらやみつきになるスイーツの数々がラインナップする。"チーズ×チョコレート"の新感覚ケーキ注目は、「チーズ」と「チョコレート」を完璧なバランスで融合した4種類の「チョコレートチーズケーキ」だ。「チーズケーキ ピュアショコラ」は、濃厚なクリームチーズとカカオマス70%台のチョコレートの組み合わせた。それぞれが持つ香りと酸味が合わさり、他にはない新たな味わいを生む新感覚の1品。「チーズケーキ ショコララテ プラリネ」は、深みのあるクリームチーズとチョコレート、ミルクをベースにしたチーズケーキ。アクセントとして、芳ばしい香りと食感を運ぶプラリネをプラスした。また、ブラックチェリーのフルーティーで爽やかな酸味が楽しめる「チーズケーキ ブラックフォレスト」や、クリームチーズとフルーティーなカカオが香るチョコレートを合わせた「チーズケーキ チョコレート ノアール」も展開する。カスタムできるショコラドリンクやソフトクリームなども「チョコレートチーズケーキ」以外にも、スイーツのような濃厚な味わいが特徴の「チョコレートソフトクリーム」や、チョコレートの産地や濃度など、自分好みにカスタマイズできる「カスタマイズ ショコラショ」なども登場。さらに、12月10日(火)からは、サンタのベルトをイメージしたクリスマス限定ケーキの販売も開始する。natsu yamaguchiのイラスト入り限定グッズもオープニング時には、大阪出身のイラストレーター「natsu yamaguchi」が、今回のために書き下ろしたイラスト入りのコラボレーショングッズも数量限定で用意。イラストは、テイクアウトのケーキボックスにもあしらわれる。【詳細】アディクト ショコラ ファビアン・ベルトーオープン日:2019年11月1日(金)場所:グランフロント⼤阪南館B1Fウメキタセラー内住所:大阪府大阪市北区大深町4-20営業時間:10:00~22:00TEL:06-6485-8744価格例:・チョコレートチーズケーキ 各680円+税〜・カスタマイズ ショコラショ(ホット・アイス) 500円+税〜・アディクトソフトクリーム 450円+税〜・アディクトパフェ 1,000円+税〜
2019年11月03日各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週土曜日は、洋書を専門に扱う原宿・外苑前のブックショップ「シェルフ(Shelf)」(東京都渋谷区神宮前3-7-4)が選ぶ書籍をご紹介。■『Works 1983-2019』Fabien Baron「世界で最も人気のあるクリエイティブディレクター」(雑誌『バニティ・フェア(Vanity Fair)』)や、「間違いなく、今日最も成功し、影響力があり、人気のあるクリエイティブディレクター」(ウェブマガジン「Wallpaper*」)などと、媒体各社や業界人からも認められる世紀のアートディレクター、ファビアン・バロン(Fabien Baron)の30年以上の成果を収めた待望の回顧作品集。本書では、タイポグラフィー、パッケージング、プロダクト、家具、インテリアデザインなどを含め広範囲から作品をセレクトし、彼の美的論理を明快に伝える内容となっている。また、ケイト・モス(Kate Moss)による前書き、アダム・ゴピック(Adam Gopnik)による文章も収録。デザイン、ファッション、写真を専門とする人には必携の1冊だ。【書籍情報】『Works 1983-2019』写真:Fabien Baron出版社:Phaidon Press言語:英語ハードカバー/424ページ/380×300mm発刊:2019年価格:2万6,010円(為替により変動)■Shelfオフィシャルサイトで『Works 1983-2019』を購入する
2019年10月19日ロンドンのオークションハウス「サザビーズ(SOTHERBY’S)」で10月15日、ファビアン・バロン(Fabien Baron)撮影によるグリーンランドの氷河の写真展がスタートした。本展は、「モンクレール(Moncler)」と高級カメラメーカー「ライカ(Leica)」のコラボレーションによる新作カメラ「Leica X エディション ’Moncler’」の発表に合わせたもの。15日から18日までロンドンで開催中のアートフェア「フリーズ・アート・フェア(Frieze Art Fair)」の一環ともなっている。厳しい環境での撮影に耐えるライカのカメラ、極地の厳しい気候から身体を守るモンクレールのダウン、ファッション撮影の傍らアイスランドなどで長年厳しい風景を撮り続けてきたバロンと、厳しい環境、特に極地への興味が一致した3者が組んだ同プロジェクト。今年春にグリーンランドで撮影された氷河の夜景写真が高さ1.5メートルという巨大なプリントで展示される。Leica X エディション ’Moncler’はモンクレールによるダウンポーチ付きで、ボディカラーとレザーストラップも特別にデザインされている。ベースとなっているのはライカのコンパクトカメラ「ライカX」。モンクレール旗艦店、およびライカの直営店で年内発売予定。また、写真展はニューヨークでも開催を予定している。
2014年10月15日