映画『ポトフ 美食家と料理人』 が、2023年12月15日(金)より全国順次公開される。同作品は、第76回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。カンヌ国際映画祭最優秀監督賞受賞作品映画『ポトフ 美食家と料理人』は、19世紀末のフランスを舞台に、料理への情熱で強く結ばれた美食家と料理人の愛の物語を紡いだ感動作。新たなるグルメ映画の⾦字塔として、第76回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞に輝き、第96回アカデミー賞国際長編映画賞フランス代表に選出された作品だ。名匠トラン・アン・ユンが紡ぐ、天才料理人と美食家による愛の物語メガホンを取ったのは、繊細な映像美で高く評価されてきた監督、トラン・アン・ユン。『青いパパイヤの⾹り』でカンヌ国際映画祭カメラ・ドール、『シクロ』でヴェネチア国際映画祭⾦獅⼦賞を受賞した名匠トラン・アン・ユンが愛と⼈⽣を味わう感動の物語を描き出す。名優ジュリエット・ビノシュが天才料理⼈に出演は、フランスの名優ジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメル。全⾝全霊をかけて厨房に⽴つ料理⼈と、料理へのまっすぐな情熱をそぞぐ美⾷家を演じる。ウージェニー…ジュリエット・ビノシュプロとして矜持を持って⽣きる天才料理⼈。ドダンが閃いたメニューを完璧に再現し、極上の料理によって⼈々を驚かせてきた。ドダン…ブノワ・マジメル〈⾷〉を追求し芸術にまで⾼めた美⾷家。ウージェニーへの切なく揺れる想いを抱える。彼女に何度目かのプロポーズをするが、ウージェニーはキスで答えるだけ。しかし⼆⼈の絆は強く結ばれている。ミシュラン3つ星シェフのピエール・ガニェールが監修映画『ポトフ 美食家と料理人』は、ミシュラン3つ星シェフのピエール・ガニェールが料理を完全監修しているのも見どころの1つ。前衛的かつ独創性と芸術性に満ちた料理から“厨房のピカソ”と称されるピエール・ガニェールによる極上メニューが次々と登場する。劇中では、ピエール・ガニェール本人がシェフ役として登場するシーンもあるので、ぜひチェックしてみてほしい。また、“食”という芸術を捉えるためのこだわりが、随所に散りばめられているのもポイント。調理過程を1台のカメラで撮影したり、劇伴を使うことなく魚や肉を焼いたり煮たりする音を音響効果と捉えたり、自然光をメインの照明としたり……と、食材が“究極のひと⽫”へと進化を遂げる様⼦を美しく描き出している。なお、映画『ポトフ美食家と料理人』では、肉、魚、野菜、バターなど使用する材料も出来上がった料理も全て本物。カットがかかってもあまりの美味しさに俳優たちはお皿を手放さずに食べ続けていたという。監督は、「2人とも実生活でも美食家で料理が得意なので非常に細かいところまで表現していて、さらに積極的に自分の役に取り組んでくれて、とても仕事がしやすかった」と振り返っている。映画『ポトフ 美食家と料理人』あらすじ舞台は19世紀末フランスの片田舎。シャトーで暮らす美⾷家のドダンと天才料理⼈のウージェニーの2⼈が⽣み出した料理は、⼈々を驚かせ、その類まれなる才能への熱狂はヨーロッパ各国にまで広がっていた。そんなある日、ドダンはユーラシア皇太⼦から晩餐会に招待される。豪華なだけで論理もテーマもない⼤量の料理に退屈するドダンは、家庭料理で皇太⼦を魅了できるか挑戦することに。トライするのは、最もシンプルな料理“ポトフ”。だが、そんな中、ウージェニーが倒れてしまう。ドダンは⼈⽣初の挑戦として、すべて⾃分の⼿で作る渾⾝の料理で、愛するウージェニーを元気づけようと決意するのだが……。【作品詳細】映画『ポトフ 美食家と料理人』公開日:2023年12月15日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋⾕宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開監督:トラン・アン・ユン脚本・脚⾊:トラン・アン・ユン出演:ジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル料理監修:ピエール・ガニェール配給:ギャガ(ギャガロゴ)原題:La Passion de Dodin Bouffant字幕翻訳:古⽥由紀⼦©2023 CURIOSA FILMS – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA
2023年10月19日故ジャニー喜多川元社長が、菊田一夫演劇賞特別賞を取り消されたことが18日、明らかになった。同賞は、演劇界の巨星・菊田一夫氏の名を冠し、大衆演劇の舞台ですぐれた業績を示した芸術家(作家、演出家、俳優、舞台美術家、照明、効果、音楽、振付、その他のスタッフ)を表彰する賞。2003年4月4日に第28回(2002年度)菊田一夫演劇賞の選考結果を発表し、永年のショービジネスに対する多大な情熱と功績を讃え、故ジャニー喜多川氏に対して菊田一夫演劇賞特別賞が贈られていた。この度、一般社団法人映画演劇文化協会は、故ジャニー喜多川氏による性加害の実態が明らかとなったことから「菊田一夫演劇賞における顕彰に相応しくないとの判断に至りました」と発表。贈賞を取り消すとともに、協会のホームページ、菊田一夫演劇賞の授賞記録からも削除した。
2023年10月18日第73回ベルリン国際映画祭にて、主演ソフィア・オテロが2020年より新設された男優賞・女優賞の性別区分のない主演俳優賞を史上最年少受賞したスペイン映画『ミツバチと私』(英題:20,000 SPECIES OF BEES)が2024年1月5日(金)より公開決定。併せて、ポスタービジュアルと場面写真が解禁された。夏のバカンスでフランスからスペインにやってきた家族。8歳のアイトールは、自身の性自認に戸惑い、違和感に悩み心を閉ざしていた。母はそんなアイトールを愛しながらも向き合い方に迷っている。ある日、叔母が営んでいる養蜂場でミツバチの生態を知ったアイトールは、ハチや自然と触れ合うことで心をほどき、ありのままで生きていきたいという思いを強くしていく――。本作は、第73回ベルリン国際映画祭にて主演ソフィア・オテロの驚くほど自然な演技が評価され、史上最年少の8歳にして最優秀主演俳優賞を受賞した注目作。ソフィア・オテロは、約500人の中からオーディションで選ばれた新人で、今回が映画初出演。子どもが抱える不安や心の機微を繊細に演じる様子は、『ミツバチのささやき』(73)のアナ・トレントを想起させる。手掛けたのは、数々の短編を監督し、『Chords』(原題/22)では第75回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映された実績を持つスペイン人監督のエスティバリス・ウレソラ・ソラグレン。彼女の輝かしい長編デビュー作となった本作は、ベルリン国際映画祭の銀熊賞に加え、ギルド賞をW受賞。さらに、第26回マラガ・スペイン映画祭でも最優秀スペイン映画賞を受賞するなど世界各国から注目を集め、米映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では95%フレッシュと高い満足度を記録している。監督は、「家族との関係が、自分探しの旅にどう影響するのかを探りたかった」と語っており、トランスジェンダーの本人だけでなく、母、祖母ら3世代の視点を交え、それぞれの考えで人生を生き抜く姿を描く。スペインのバスク地方の緑豊かな美しい景色とともに、自然光のみで撮影した美しい映像も必見。今回解禁された日本版ポスターは、主人公アイトールを中心に、繊細な表情に柔らかな光が差し込む様子を捉えたもの。そして右下には、「生まれ変わったら、女の子になれるのかな?」という劇中に登場する台詞があり、性自認を巡って思い悩む心の内を告白するもの。併せて解禁となった場面写真は、ポスタービジュアルの表情とは打って変わり、ベットの上で、アイトールが穏やかな表情で微笑みながら母親を見つめるシーン。自身の心と、家族との関係性の変化に伴って移り変わっていく、アイトールの細やかな表情に注目だ。本作は第36回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門でひと足早く上映され、エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン監督の来日も予定されている。『ミツバチと私』は2024年1月5日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)
2023年10月16日濱口竜介監督作『悪は存在しない』がロンドン映画祭で最優秀作品賞を受賞した。審査員全員一致の決定だったという。「繊細で、シネマティック、そして完全に悟った演技によって強調された、濱口監督の確信に満ちたドラマ」「家族とコミュニティ両者の抒情的な肖像画であり、土地開発の倫理についてのニュアンスを含む考察でもある」と評された。濱口監督は同映画祭のXアカウントに動画で喜びのコメントを発表。「『悪は存在しない』がロンドン映画祭で最優秀賞受賞という本当にうれしいニュースを聞いて、驚きました。ありがとうございます」と感謝を述べた。キャストやスタッフの仕事ぶりをカメラ越しで見ていて、濱口監督自身も「素晴らしい」と思っていたため、それが評価されたことに「勇気づけられる」と語った。また、前作『ドライブ・マイ・カー』の音楽を担当し、今作では音楽と共に企画・発案も担当した石橋英子氏の名前を挙げ、「彼女の音楽の存在が、この映画を完成まで導いてくれた」と説明した。『悪は存在しない』は今年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞も受賞した。日本公開は2024年GWを予定している。(賀来比呂美)
2023年10月16日10月23日(月) から11月1日(水) にかけて開催される第36回東京国際映画祭で上映される「Amazon Prime Video テイクワン賞」のファイナリスト作品が発表された。この賞は、国内外でオリジナル作品を製作し多様な映像作品を配信するPrime Videoの協賛を得て、東京国際映画祭が更なる才能の発掘を目指して2021年から設立。これまで商業映画の監督・脚本・プロデューサーを担当したことのない、日本在住の映画作家が制作した15分までの短編作品を対象としたもので、7月5日から9月4日までの2カ月間で143作品の応募があった。厳正なる審査の結果、ファイナリスト作品として選ばれたのは、坂本憲翔監督の『窓辺のふたり』、木口健太監督の『GIRLS BRAVO』、岡本多緒監督の『サン・アンド・ムーン』、平田雄己監督の『凛として』、ヤン・リーピン(楊礼平)監督の『Gone With The Wind』、安村栄美監督の『ビー・プリペアード』、大黒友也監督の『ゴミ屑と花(short ver.)』、ジミー・ミン・シャム監督の『TALK TO ME』の全8作品。映画祭での上映は初日の10月23日(月) 午前11時半からTOHOシネマズ シャンテで行われ、受賞結果は11月1日(水) のクロージングセレモニーで発表される。今年度の審査委員長は昨年に続き行定勲監督が務め、そのほかの審査委員は玉城ティナ(俳優)、芦澤明子(撮影監督)、森重晃(プロデューサー)、戸石紀子(Amazon スタジオプロデューサー)が務める。<イベント情報>第36回東京国際映画祭開催期間:10月23日(月)~11月1日(水)会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区公式サイト:
2023年10月12日京都を拠点に活動し、これまでSF、ファンタジー、非日常といったシチュエーションにおいて、数々の“企画性コメディ”を生み出してきたヨーロッパ企画。2023年に25周年を迎えた彼らだが、その記念すべき年に上演されるのが、劇団初となるミステリーコメディ『切り裂かないけど攫いはするジャック』だ。本公演を前に、劇団代表で脚本・演出を担当する上田誠、上田とともに劇団を立ち上げた永野宗典、諏訪雅の3人が来福し、作品について語ってくれた。19世紀のロンドン。街は、「謎の怪人ジャックが徘徊している」という噂で持ちきりだ。そんな中、捜査が始まる…はずなのだが。「稽古の初日から、すでに脂が乗っています」と笑顔の上田。まずは今作が、「ミステリーコメディ」となったことについて、「これまで『文房具コメディ』や『迷路コメディ』など、ニッチなジャンルで勝負してきましたが、見渡すと同規模の劇団でコメディを主軸にしているところは、もはやうちくらい。そろそろ、ジャンルを広げても大丈夫だろうと(笑)。ただ、ミステリーというジャンルは非常にコアなファンが多いので、そこでいかに自分たちらしさが出せるかが課題でした」と振り返る。ミステリーの中でも、どちらかと言えば都市伝説やゴシップといった部類に入る『切り裂きジャック』を題材としたのも、“ズラす”ことでオリジナリティを抽出してきた上田の作戦。下世話な思いが渦巻く人々の騒動を群像劇で表現しながら、劇団らしいミステリーコメディを成立させてくれそうだ。そして今作で16年ぶりに座長を務める永野は、警部として捜査を担当。しかし「群衆が勝手に推理を始めるので捜査ができない」と早くも嘆き節。また、群衆のひとり、オルガン弾きとして登場する諏訪は、「エチュードの段階で、群衆に押された永野さんが一言も喋れていない状態。本当に捜査を進められるのか今から心配(笑)」とこちらもコメディアンぶりを発揮。「キャナルシティ劇場という舞台を最大限に活用し、19世紀のロンドンへ皆さんをお連れしたい」と上田。さらに、「最後には、アッと驚く結末を用意しているのでお楽しみに」とも。果たしてその全貌は。公演は10月14日(土)~15日(日)福岡・キャナルシティ劇場ほか、東京、高知、広島、大阪、神奈川、愛知で上演。チケットは発売中。
2023年10月05日第15回TAMA映画賞 受賞作品・受賞者が5日、明らかになった。同映画賞は、多摩市及び、近郊の市民からなる実行委員が「明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる"いきのいい"作品・監督・俳優を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰」するもの。最優秀作品賞には「声に出せない思いを抱えるこどもたちが解放された光溢れる世界を映すことで、「怪物」を生み出す実社会の生きづらさを描き出した」として『怪物』、及び「少年たちは、友の危機にそれぞれの覚悟で立ち向かう。その姿は大人へと成長する逞しさを感じさせ、観る者の胸に熱く迫った」と、『雑魚どもよ、大志を抱け!』が選ばれた。最優秀男優賞には「俳優・佐藤浩市ならではの滲み出る渋さと颯爽と放つ華が、若手俳優の魅力も最大限引き出し、作品を輝かせ続けている」と評価された佐藤浩市と、「『エゴイスト』において、愛とエゴの狭間で葛藤しながらも献身的に注ぐ愛は繊細で切なく、実在感あるものとして観る者の心に刻まれた」という鈴木亮平、最優秀女優賞には「故郷への旅のなかでさまざまな人と出会い、自身の孤独な人生と向き合って、静かに奮い立つ瞬間を表現した」という菊地凛子と、「凛とした所作が美しい武家の娘であり、気っぷがよいおきゃんな娘でもある『おきく』の創出により、爽やかな青春ドラマに昇華させた」という黒木華が選出された。また最優秀新進男優賞の目黒蓮は「キャラクターを華がある演技でスクリーンに焼き付けて観る者をとりこにし、美世への想いの移ろいを繊細な感情表現で演じきった」、奥平大兼は「物語に溶け込み、役柄を的確に捉える優れたバランス感覚と素直な表現力は、映画の未来を担っていくことを予感させる」と評価を受けたほか、下記の受賞者・受賞作品がそろった。○■最優秀作品賞『怪物』(是枝裕和監督 及びスタッフ・キャスト一同)『雑魚どもよ、大志を抱け!』(足立紳監督 及びスタッフ・キャスト一同)○■特別賞宮崎駿監督及びスタッフ・キャスト一同(『君たちはどう生きるか』)上田誠氏、山口淳太監督はじめヨーロッパ企画及びスタッフ・キャスト一同(『リバー、流れないでよ』)○■最優秀男優賞佐藤浩市(『春に散る』『せかいのおきく』『仕掛け人・藤枝梅安 2』『大名倒産』『キングダム運命の炎』『ファミリア』『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』)鈴木亮平(『エゴイスト』『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』)○■最優秀女優賞菊地凛子(『658 km、陽子の旅』)黒木華(『せかいのおきく』『ヴィレッジ』『映画 イチケイのカラス』『ほつれる』)○■最優秀新進監督賞福永壮志監督(『山女』)金子由里奈監督(『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』)○■最優秀新進男優賞目黒蓮(『わたしの幸せな結婚』『月の満ち欠け』)奥平大兼(『君は放課後インソムニア』『ヴィレッジ』『あつい胸さわぎ』『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』)○■最優秀新進女優賞山田杏奈(『山女』)高石あかり ※高ははしごだか(『ベイビーわるきゅーれ 2 ベイビー』『Single8』『セフレの品格 決意』『わたしの幸せな結婚』ほか)
2023年10月05日「第15回 TAMA映画賞」の受賞作品及び受賞者が発表された。市民がつくる映画ファンの祭典「第33回映画祭 TAMA CINEMA FORUM」が、今年も開催される。2009年にスタートした「TAMA映画賞」は、前年10月から当年9月に一般劇場で公開される作品及び監督・キャスト・スタッフを対象に、市民ボランティアの実行委員が選考、「明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優」を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰する。本年度、最も活力溢れる作品の監督及びスタッフ・キャストに対し表彰する<最優秀作品賞>には、監督・是枝裕和、脚本・坂元裕二、音楽・坂本龍一のタッグによる『怪物』と、足立紳が執筆した小説「弱虫日記」(講談社文庫)を、自身で監督し映画化した『雑魚どもよ、大志を抱け!』が決定。『怪物』実行委員会は、今回の受賞理由について「声に出せない思いを抱えるこどもたちが解放された光溢れる世界を映すことで、『怪物』を生み出す実社会の生きづらさを描き出した」(『怪物』)、「少年たちは、友の危機にそれぞれの覚悟で立ち向かう。その姿は大人へと成長する逞しさを感じさせ、観る者の胸に熱く迫った」(『雑魚どもよ、大志を抱け!』)と説明している。『雑魚どもよ、大志を抱け!』<最優秀男優・女優賞>は、佐藤浩市(『春に散る』『せかいのおきく』『仕掛人・藤枝梅安2』『大名倒産』『キングダム 運命の炎』『ファミリア』『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』)、鈴木亮平(『エゴイスト』『劇場版 TOKYO MER~走る緊急救命室~』)、菊地凛子(『658km、陽子の旅』)、黒木華(『せかいのおきく』『ヴィレッジ』『映画 イチケイのカラス』『ほつれる』)が受賞。『658km、陽子の旅』<最優秀新進男優・女優賞>には、「Snow Man」の目黒蓮(『わたしの幸せな結婚』『月の満ち欠け』)、奥平大兼(『君は放課後インソムニア』『ヴィレッジ』『あつい胸さわぎ』『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』)、山田杏奈(『山女』)、高石あかり(『ベイビーわるきゅーれ 2 ベイビー』『Single8』『セフレの品格 決意』『わたしの幸せな結婚』ほか)が決定した。『山女』なお、チケットは10月28日(土)よりPassMarketほかにて発売予定だ。「第15回TAMA映画賞」各賞受賞一覧●最優秀作品賞『怪物』『雑魚どもよ、大志を抱け!』●特別賞宮崎駿監督及びスタッフ・キャスト一同上田誠、山口淳太監督はじめヨーロッパ企画及びスタッフ・キャスト一同●最優秀男優賞佐藤浩市鈴木亮平●最優秀女優賞菊地凛子黒木華●最優秀新進監督賞福永壮志監督金子由里奈監督●最優秀新進男優賞目黒蓮奥平大兼●最優秀新進女優賞山田杏奈高石あかり「TAMA映画賞授賞式」は11月25日(土)パルテノン多摩大ホールにて開催。※11月11日(土)~26日(日)各種上映プログラム 東京都多摩市内3会場(休映日あり)(シネマカフェ編集部)■関連作品:雑魚どもよ、大志を抱け! 2023年3月24日より新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会怪物 2023年6月2日より全国にて公開©2023「怪物」製作委員会
2023年10月05日濱口竜介監督の『悪は存在しない』が、アジア・パシフィック映画賞に最多ノミネーションを果たした。作品、監督、脚本、撮影の4部門。作品部門には、やはり日本映画であるヴィム・ベンダース監督の『PERFECT DAYS』も候補入りしている。この部門のほかの候補作は、ジョージア、フランス、ブルガリア合作の『Citizen Saint』、カザフスタンの『Qas』、中国の『Snow Leopard』。また、若者映画部門には是枝裕和監督の『怪物』、アニメーション映画部門には『すずめの戸締まり』と『THE FIRST SLAM DUNK』、演技部門には『PERFECT DAYS』の役所広司、『Last Shadow at First Light』の白田迪巴耶が候補入りした。授賞式は11月3日。『悪は存在しない』2024年公開予定(C)2023 NEOPA / Fictive文=猿渡由紀
2023年10月04日2024年に開催される第96回アカデミー賞の国際長編映画賞に、フィリピンからゲイのアニメーターを主人公としたアニメ映画『Iti Mapukpukaw(原題)/The Missing(英題)』が出品されたことが分かった。フィリピン映画開発評議会がSNSで発表した。監督・脚本はカール・ジョセフ・パパ。長編アニメ映画を手掛けたのは初めてだという。主人公のエリックはフィリピンでアニメーターとして働きながら、ごく普通の生活を送っていた。マンションに住み、高収入の仕事に就き、好きな男性もいる。唯一目立つことといえば、「口がない」ということだけだった。ある日エリックは母からの電話で、音沙汰のないおじの様子を確認してきてほしいと頼まれる。おじがすでに亡くなっていることを知ったエリックは、なぜだか知っているような気がする異星人と出会う。異星人はエリックの記憶と感情を紐解く手助けをしてくれるのだった。エリックの声は『Seasons: めぐりゆく季節の中で』のカルロ・アキノ、母ロザリンダは、今年『逆転のトライアングル』でゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされたドリー・デ・レオンが担当。なお、日本からは同部門にヴィム・ヴェンダース監督×役所広司主演『PERFECT DAYS』が出品されている。(賀来比呂美)
2023年10月02日積水ハウス株式会社は、本日発表の「第17回キッズデザイン賞」において3作品がそれぞれこども政策担当大臣賞・キッズデザイン協議会会長賞・BEYOND COVID-19特別賞を受賞しました。キッズデザイン賞は、キッズデザイン協議会主催の子どもや子どもの産み育てに配慮したすべての製品・サービス・空間・活動・研究を対象とする顕彰制度で、大人が使うものでも子どもに配慮されたものやサービスはすべて対象とし、普及を後押しすることで子どもを産み育てやすい社会づくりを目指しています。キッズデザイン賞受賞作品258点の中から、優秀作品へノミネートされた37作品が最優秀賞、優秀賞、奨励賞、特別賞として選出され、当社は『「一つ屋根の下で一緒に過ごす!」フジ虎ノ門こどもセンター』がこども政策担当大臣賞に、『~子育て世代へ LIFE IDEASを盛り込んだ住まい提案~ 積水ハウス ノイエ』がキッズデザイン協議会会長賞に、そして『分譲マンションにおける子育て支援サービスの提案』がBEYOND COVID-19特別賞に選出されました。キッズ・ファースト企業である積水ハウスは、2007 年の設立第1回から17年連続、累計116作品を受賞しています。受賞作品表1: 積水ハウスは“「わが家」を世界一幸せな場所にする“というグローバルビジョンのもと、子どもたちや高齢者を含む誰もが安全で使いやすい「スマート ユニバーサルデザイン」の推進など、子どもや子育てに関わる社会課題解決に取り組み、人生100年時代における「幸せ住まい」を追求し続けてまいります。キッズデザイン賞 公式サイト: キッズデザイン協議会HP: 受賞作品詳細■優秀賞 こども政策担当大臣賞:「一つ屋根の下で一緒に過ごす!」フジ虎ノ門こどもセンター受賞部門:子どもたちを産み育てやすいデザイン部門 地域・社会部門【作品説明】:一つ屋根の下で、ケアの必要な健常児とチャレンジドが一緒に過ごすこどもセンターを医療法人が運営。こどもたちが安心して学び生きるためのコミュニケーションを実践しています。小児難病や発達障がい、不登校児を支援、放課後児童クラブを併設、保護者様の子育て不安解消等、”すべてはこども達のために”をテーマに、地域の持続可能な暮らしを支える場を目指します。公式サイト: 【受賞理由】:「未就学から高校生まで、多様な立場の多世代交流を促す空間とプログラムが相互の学びの場になる。インクルーシブデザインが意味する、多様な存在を認め合い、交流と気づきを得るという考え方はキッズデザインでも非常に重要な視点であり、本賞にふさわしい内容である。」■奨励賞 キッズデザイン協議会会長賞:~子育て世代へ LIFE IDEASを盛り込んだ住まい提案~ 積水ハウス ノイエ受賞部門:子どもたちを産み育てやすいデザイン部門 個人・家庭部門【作品説明】:共働きを中心とした子育て世代の家族に向け、積水ハウス ノイエでは、家事を効率化しつつ子どもと一緒に過ごす時間を楽しめるアイデアやデザインが盛り込まれた『パッケージプラン』を提案しています。吟味を重ねてつくり上げた理想のプランの中から最適な住まいを提案し、家族みんなが楽しく共に成長できる住まいを提供していきます。公式サイト: 【受賞理由】:「収納・家事・食事・育児の4つのテーマについてリサーチ、アンケートを実施し、データに基づいたプランをパッケージ化した子育て支援住宅の提案である。それぞれの間取りや設備、空間のアイデアは子育て層の悩みやニーズを丹念に拾い、解決策を提示したもので現実的だ。」■特別賞 BEYOND COVID-19特別賞:分譲マンションにおける子育て支援サービスの提案受賞部門:子どもたちを産み育てやすいデザイン部門【作品説明】:これまでの分譲マンションにはない子育て支援サービス(設備)を提案します。1.共用エントランスに自動水栓・ソープディスペンサを備えた手洗いを設置。2.住戸玄関ポーチにネットスーパー用受取りボックスを設置。住戸内ではなく共用部に設置することで居住者共通のメリットとなります。今後子育て支援サービスとしてシリーズ化が可能です。【受賞理由】:大規模分譲マンションでありながら共用部に手洗い場や宅配ボックスなどを備え、インフラに新たな提案を行った。コロナ禍を経て日常の衛生に関するリテラシーも変化した。分譲マンションも個別住戸の集合体からコミュニティとしての機能が必要である。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年09月20日「ベビーカーを押して階段にさしかかると……」杏さんは2016年5月に双子の女の子、2017年に男の子を出産し、昨年からお子さんと一緒にフランスのパリに移住。宇多田さんは2015年7月に男の子を出産し、イギリス・ロンドンで長く暮らしています。お互い子育てをしながら海外で暮らし、デビューしたのも同じ年頃だという、共通点の多い二人。宇多田さんは15歳でデビューし、「生活に必要な能力がなにも身につかないまま20代になっちゃって。家を借りたり、銀行口座を開いたり、インターネットや電話の契約をしたり、自分で生活できるようになりたいと思った」ことがきっかけで、知り合いはいないけれど英語が通じ、興味のあったヨーロッパのいろんな街へ気軽に行ける距離感のロンドンで暮らすことにしたのだそう。一方の杏さんは、子どもが小学校に上がるタイミングがちょうどいいかなと、フランス・パリに移住する決意をしたのだそうです。宇多田さんは最近、8歳になった息子と二人きりでの旅行の楽しさに目覚め、昨年はイタリア北部にある避暑地・レイクコモに出かけたそう。日本でも、もっといろんな場所に子どもを連れていきたいと思っているそうです。杏さんもまた、旅行が大好き。ヨーロッパはもちろんのこと、この夏は仕事を兼ねて、大阪、京都、北海道、富士山麓にある河口湖など、お子さんと日本各地を旅したそうです。ただ、子どもとじっくり向き合う時間として「1人ずつと旅行したいな。それぞれとゆっくり話す時間があったらいいな」と心の内を明かしました。ずっとロンドンで子育てをしてきて、日本での子育て経験がないという宇多田さん。日本と海外の子育て環境の違いは友人から聞く程度で、あまり実感がないと言い、両方を経験している杏さんに「フランスに引っ越して(日本の子育てと)すごい違うなって感じますか?」と尋ねました。杏さんは、フランスは本当に子育てしやすい環境だといい、「ヨーロッパってエスカレーターとか全然ないじゃないですか?でも、何となくベビーカーで階段に差しかかると、どこからともなく人が来てとにかくヘルプするっていうのが根付いている」と、実際に文化の違いを感じていると答えました。すると「誰も嫌な顔しないですもんね、子どもに対して」と宇多田さんも同意し、「海外の(人たちの)子どもをみんなで育てるってのはすごい素敵」だと、ともに声を揃えます。そんな話をしながら餃子のタネを作り、手際よく包んで焼いていく二人。杏さんが唐突に「お酒って飲みます?」と振り、宇多田さんが「昔ほどじゃないけど飲むのは好きです」と、普段はブルゴーニュの白ワインなどを飲んでいることを明かすと、「じゃあ是非今度パリでワイン会を!」と飲み会に招待していました。
2023年09月14日京都を拠点に、ユニークな設定とユルい会話で繰り広げられるコメディで人気を博すヨーロッパ企画が、劇団結成25周年を迎えた。今年6月公開の長編映画『リバー、流れないでよ』を自ら製作したり、劇団員が出演する実験的ドキュメントバラエティ『ヨーロッパ企画の暗い旅』の制作など、劇団ながら演劇の枠組みを超えて活動する彼ら。最新作の『切り裂かないけど攫いはするジャック』を前に、25年続く秘訣を旗揚げメンバーである上田誠さん、諏訪雅さん、永野宗典さんに伺った。――25周年を迎えた劇団の最新作は、19世紀にイギリスで起きた切り裂きジャックの事件がモチーフ。上田誠:25周年ですし、劇団員たちがワクワクする企画をというのが使命感としてあり、今回はミステリーコメディでいこうと。ミステリーというと作家がトリックを構築するのが主流ですが、僕らは集団でものを作る劇団ですから、ジャックものならやれるかなと思ったのが最初で…。諏訪雅:劇の中盤くらいには、ジャックが何者か明らかになりますよね。永野宗典:いま稽古中盤ですけど、僕はこれからまだ見ぬ新しいジャックが出てくるのかなと思ってますけど?上田:ミステリーって最後の謎解きに注目が集まるのが宿命ですけど、それが怖すぎて、本当は最初に「僕がジャックです」ってところから始めようと思ったくらいです(笑)。永野:僕が警部の役なんですが、群像劇でみんなが勝手に推理しだすから、邪魔くさくて仕方ないです。上田:「推理をするな!」っていう決め台詞が生まれたぐらいですから。諏訪:でもみんながまくし立てるように自分の言いたいことを言ってるのって、まさにヨーロッパ企画って感じの群像劇になってると思う。上田:ミステリーってある材料を最初にざっと出して、ロジックでそれを収れんさせていくものだけれど、演劇…というかコメディは、要素がどんどん出てきて場が散らかっていく様子が面白かったりする。それを両立させられないかというのが、今回の狙いでもあります。――タイトルの絶妙なユルさも秀逸。上田:演劇は結構作家主義ですけど、僕らはタイトルも合議制です。でも毎回超コメディらしいタイトルですから、発表するのに勇気がいるんです。演劇界で馬鹿にされないだろうかとか、もうちょっと文芸チックな方がカッコつくかなとか思いながら、ひたすら痩せ我慢してる感じ(笑)。諏訪:僕らはつねに判断基準が面白いか面白くないか、ですからね。永野:ふたりは関西人なんで笑いにむっちゃ厳しいんですよ。上田:もともと僕も諏訪さんもお笑いに関して結構うるさい方なんで、どこかでダサい笑いはやりたくないっていう気持ちがあるんですよ。あと、演劇というと、伝えたいメッセージがあったり、感情のヒダを描くとか、現代社会を切り取るとかの目的が多いと思うんですけれど、僕らの場合、面白いことをやろうと集まっているっていうのが、ヨーロッパ企画の特性なのかなと思います。諏訪:そもそも劇団名に劇団を付けなかったのは、演劇だけじゃなくいろいろなことできそうな気がしたからなんだよね。昔からみんな映像を撮るのが好きだったりもしたし。上田:ただ演劇は好きなんで、せっかくなら“劇団”のイメージをもう少し広げられたら面白いですよね。(写真上)うえだ・まこと1979年11月4日生まれ、京都府出身。脚本を手がけるドラマ『時をかけるな、恋人たち』(カンテレ、フジテレビ系)が10月10日より放送スタート。(写真中)すわ・まさし1976年8月26日生まれ、奈良県出身。俳優のかたわら、脚本・演出なども手がけており、作・演出舞台に『ガチでネバーエンディングなストーリぃ!』。(写真下)ながの・むねのり1978年2月17日生まれ、宮崎県出身。俳優のかたわら、映像監督や脚本なども手がける。出演近作にドラマ『スーパーのカゴの中身が気になる私』。ヨーロッパ企画第42回公演『切り裂かないけど攫いはするジャック』9月20日(水)~10月8日(日)東京・本多劇場作・演出/上田誠出演/石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、藤谷理子、金丸慎太郎、早織、藤松祥子、内田倭史、岡嶋秀昭一般7000円U25シート2500円(前売りのみ)平日割一般6500円サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(平日12:00~15:00)滋賀、京都、高知、福岡、広島、大阪、神奈川、愛知、富山でも上演。劇団結成25周年。四半世紀にわたり人気を継続し続けるヨーロッパ企画とは?人気の理由1:ユニークな設定押し入れ1間程度の超々狭小集合住宅に暮らす人々の工夫を凝らした日常を描いた『Windows5000』など、劇構造や設定のユニークさで魅せるのがヨーロッパ企画。「まだ世の中で劇になってないものを見つけて、どうしたら劇にしていけるかを考える」(上田さん)そうで“企画性コメディ”と呼ばれる。見たことのない世界を舞台上に具現化させる、凝った美術セットも興味深く見応えあり。「設定だけ聞くと、演劇として成立するの?と思うけれど、どう劇化するかを聞くと、毎回、それ面白そうって思えるんです」(諏訪さん)『遊星ブンボーグの接近』地球に降り立った身長数cmの宇宙人たちが、デスクの上を旅し、巨大文房具と戯れる。普段見慣れたカッターナイフや消しゴムが、巨大化して劇場に置かれている状況からすでに楽しく、自分も小人になったような気分に。撮影:清水俊洋人気の理由2:笑いのセンスヨーロッパ企画のコメディは、大爆笑というより、ユル~い会話の中から生まれる、ちょっとトボけたクスッとした笑いが特徴。じつはこれ、稽古場で上田さんが提示した設定で俳優たちがエチュード(即興劇)を繰り返し、その中で生まれたものが取り入れられている。「自分たちがやった場面だから、すでに笑いとして出来上がっている」(上田さん)ゆえのリアルさも絶妙。「設定はトリッキーだけど、誰もが感じるようなことを取り上げていて、そのへんのリアリティが多くの人に楽しんでもらえている理由かも」(永野さん)『来てけつかるべき新世界』通天閣を擁する大阪・新世界を舞台にしたSF作品。狭い路地をドローンが行き交い、野良犬ならぬ野良のロボットがうろつき、売れないお笑い芸人がAIを相方にするなど、未来も新世界らしさは変わらずなところが面白い。撮影:清水俊洋人気の理由3:個性あふれる劇団員稽古場でのエチュードから生まれた笑いが作品に反映されていることは書いたけれど、その面白さも、リアルな生っぽい空気感がそのまま舞台上に再現されるからこそ。しかもそれを演じる面々は、どこにでもいそうなのに佇まいや風貌に、それぞれの個性が滲み出て、それが作品の面白さにも繋がっている。「僕は劇作の中身と同じくらい、作品を立ち上げる中で起きる実際のドラマを大事にしていますが、それは劇団員やスタッフに対しても同じ」(上田さん)。「その蓄積が、物語に生かされているんだと思います」(永野さん)『ムーミン』世界的に有名なトーベ・ヤンソンの同名童話をモチーフに、谷で寝たり食べたり、ひたすら遊び暮らす男たちを描いた作品。設定はトリッキーながら、シンプルな劇構造だからこそ、出演者それぞれのキャラクターの面白さが生きた作品。※『anan』2023年9月13日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2023年09月12日ヨルゴス・ランティモス監督最新作『哀れなるものたち』が、第80回ヴェネチア国際映画祭にて最高賞である金獅子賞を受賞した。現地時間9月9日の受賞式では、世界最高峰の才能を集めて構築された色彩感溢れる壮麗かつ大胆な美術、音楽、衣装、撮影や、奇想天外でありながらもカタルシス溢れるエンディングに導く脚本、そして個性豊かな俳優陣の才能を最大限に引き出した唯一無二の作品世界に惜しみない賛辞が集まった。さらに、プロデューサーとしても参加した盟友エマ・ストーンのキャリアベストの演技も大きく後押しし、ランティモス監督としては、前作『女王陛下のお気に入り』での審査員大賞受賞に続き、念願の最高賞受賞となった。名誉ある受賞を受けて、ランティモス監督はスピーチにて「私のチームは、ここまでくるのに、全てにおいて助けてくれました。(ストの影響で)素晴らしいキャストのみなさんと一緒にここで祝うことができませんが、彼らがすぐに参加できるようになることを祈っています。何よりも、主人公であり信じられない人物であるベラ・バクスターは、エマ・ストーン無しには存在しませんでした。エマはもう一人の信じられない人物です。この映画は彼女の映画です。カメラの前にも、カメラの裏にも彼女は居てくれました。本当にありがとうございます。みなさん、ありがとう」と主演のエマ・ストーン含めキャストとスタッフへ向けて感謝の気持ちを表した。原作は、日本でも2008年に翻訳された、スコットランドの作家アラスター・グレイ著の傑作ゴシック小説『哀れなるものたち』(早川書房刊)。物語は、自ら命を絶った不幸な若き女性ベラが、天才外科医ゴッドウィン・バクスターの手によって奇跡的に蘇生することから始まる。蘇ったベラは“世界を自分の目で見たい”という強い欲望に導かれ、放蕩者の弁護士ダンカンの誘いに乗り、壮大な大陸横断の冒険の旅へ出る。貪欲に世界を吸収していくベラは平等と自由を知り、時代の偏見から解き放たれていくのだった──。主人公ベラを演じるのは『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞主演女優賞を受賞、ランティモス監督作品『女王陛下のお気に入り』でアカデミー賞助演女優賞ノミネートのエマ・ストーン。今回はプロデューサーとしても名を連ねるエマ・ストーンがヒロインを熱演。そして、天才外科医のゴッドウィン・バクスターを名優ウィレム・デフォー、ベラを誘惑し大陸横断の旅に連れ出すダンカンを『アベンジャーズ』シリーズのハルク役で知られるマーク・ラファロが演じる。併せて、本作の日本劇場公開がオリジナル無修正R18+バージョンでの上映となるほか、公開日が2024年1月26日(金) に決定した。『哀れなるものたち』予告編<作品情報>『哀れなるものたち』2024年1月26日(金) 公開監督:ヨルゴス・ランティモス出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ ほか公式サイト: 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2023年09月12日オスカーの特別賞に当たるガバナーズ賞の授賞式が、11月18日から来年1月9日に延期されることになった。映画俳優組合と脚本家組合のストライキが理由。今年は、アンジェラ・バセット、メル・ブルックス、キャロル・リトルトンが名誉賞を受賞する。ガバナーズ賞はテレビ中継されず、特定の映画の宣伝につながるものでもないが、席はひとり7,500ドルと高額で、基本的にはスタジオがテーブルを買い、本番のオスカーに入ってきそうな作品にかかわった俳優、脚本家、監督などを招待する。それは、メジャースタジオと配信会社に対して俳優と脚本家がストライキをしている中では無理がある。しかし、現在も両者の話し合いは進んでおらず、1月にストライキが終わっているのかどうかも不明だ。文=猿渡由紀
2023年09月08日ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』が、第96回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品として出品されることが分かった。日本映画製作者連盟が発表した。7名の選考員が、8作品の中から選出したという。近年、同部門に出品された作品には早川千絵監督の『PLAN 75』、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』、河瀬直美監督の『朝が来る』などがある。海外メディアも報じており、「The Hollywood Reporter」は「日本からこの部門に、日本人以外の監督が手掛けた作品が出品されるのは初めて」と報じている。ヴェンダース監督は『パリ、テキサス』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』などの名作を世に送り出してきた映画界の巨匠。主演の役所広司は今年のカンヌ国際映画祭で、日本人俳優としては『誰も知らない』の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞する快挙を成し遂げた。また、本作は同映画祭でエキュメニカル賞も受賞した。監督はドイツ人だがキャストは日本人で言語も日本語。役所さんのほか、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、三浦友和、田中泯が出演している。『PERFECT DAYS』は、10月23日から11月1日に開催される第36回東京国際映画祭のオープニング作品に決定しており、ヴェンダース監督がコンペティション部門の審査員長を務めることも明らかになっている。日本公開は12月22日。(賀来比呂美)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年09月05日映画『ヨーロッパ新世紀』が、2023年10月14日(土)より、ユーロスペースほかにて全国で順次公開される。小さな村で起こる複雑怪奇な人間模様を描き出す社会派サスペンス映画『ヨーロッパ新世紀』は、ルーマニア中部トランシルヴァニア地方の小さな村を舞台とした群像劇。幾多の火種を抱えたヨーロッパにおいて、分断され引き裂かれた世界の現状をあぶり出し、不穏な新世紀の新たな現実と、予言の黙示録など寓意に満ちた社会派サスペンス映画に仕上げている。舞台となるルーマニア・トランシルヴァニア地方は、ブラム・ストーカーの古典的な恐怖小説『吸血鬼ドラキュラ』の舞台としても有名な場所だ。古くからの伝統行事が受け継がれ、ヨーロッパ有数の野生動物の生息地でもあるこの地は、ルーマニア人とハンガリー人、少数のドイツ人やロマの人々が暮らし、多言語が飛び交う特異な地域である。そんなトランシルヴァニア特有の風土を余すことなくカメラに収めた本作では、他民族の村で起こる人間の対立と凶暴性を描き出す。劇中で描かれるのは、村のあるパン工場が外国人労働者を雇用したことで、村人が彼らに対して容赦のない偏見の視線や攻撃的な言葉を向けるといった人種差別の話に留まらない。民族、宗教、貧富の格差などの問題に根ざした住民の不満が暴発し、EUが推進するリベラルな政策やグローバル資本主義の歪みをも浮き彫りにする、刺激的なスリルと寓意に満ちた映像世界に注目だ。監督はルーマニアの巨星、クリスティアン・ムンジウ監督を務めるのは、社会と人間を鋭く見据えた作品を多く生み出すルーマニアン・ニューウェーブの潮流を牽引してきたルーマニアの巨星クリスティアン・ムンジウだ。カンヌ国際映画祭パルムドール受賞の『4ヶ月、3週と2日』、カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した『エリザのために』などを手掛け、今回の映画『ヨーロッパ新世紀』は、6年ぶりの作品となる。映画『ヨーロッパ新世紀』のクライマックスでは、17分間にも及ぶ怒涛の長回しショットで撮影。鮮烈に映像化された、他人事ではいられない“壊れゆく世界”の有り様が映し出される。映画『ヨーロッパ新世紀』あらすじ鉱山の閉鎖によって、経済的に落ち込んだトランシルヴァニア地方の村。そんな村に、出稼ぎ先のドイツで暴力沙汰を起こした粗野な男マティアスが帰郷する。しかし、疎遠だった妻との関係は冷めきっており、森でのあることをきっかけに口がきけなくなった幼い息子、病気で衰弱した高齢の父への接し方にも迷うマティアスは、元恋人のシーラに心の安らぎを求める。ところがシーラがが責任者を務める地元のパン工場が、スリランカからの外国人労働者を迎え入れたことをきっかけに、よそ者を異端視した村人たちとの間に不穏な空気が流れ出す。やがて、その小さな諍いは村全体を揺るがす激しい対立へと発展し、マティアスやシーラの人生をも一変させていく。【作品詳細】映画『ヨーロッパ新世紀』公開日:2023年10月14日(土)監督:クリスティアン・ムンジウ出演:マリン・グリゴーレ、エディット・スターテ、マクリーナ・バルラデアヌ日本語字幕:関美冬配給:活弁シネマ倶楽部/インターフィルム原題:R.M.N.
2023年08月24日アニメ作家、塚原重義が原作・脚本・監督を務める劇場長編アニメーション『クラユカバ』が、第27回ファンタジア国際映画祭にて、長編アニメーション部門の観客賞・金賞を受賞した。探偵業を営む荘太郎に舞い込んだのは、自身の暮らす扇町を騒がす奇怪な集団失踪事件の解明。目撃者はいない。目的も分からない。しかし、被害者に共通したのは現場に残された“不気味な轍”…手がかりを求めて訪れたのは、奈落に巣食う地下迷宮“クラガリ”。そこに、現れた銀髪の少女との出会いをキッカケに事態は大きく動き出す。2018年・2020年にかけて実施した2回のクラウドファンディング企画にて累計1,570万364円の支援を集めた本作は、探偵業を営む荘太郎が、町で起こる奇怪な“集団失踪事件”の解明に挑む姿が描かれた痛快探偵活劇。荘太郎を演じるのは令和4年度花形演芸大賞・大賞を受賞し、“最もチケットが取れない講談師”と言われる六代目神田伯山。監督を務めた塚原重義は、2002年頃よりアニメーションの自主制作を始め、近年はオリジナルの短編作品を発表しつつ、「SEKAI NO OWARI」ライブのステージデザイン協力など、映像以外の世界観構築も手掛けている。本作が初の長編アニメーション監督作品となり、事件の真相はもちろん、塚原監督が作り出すノスタルジーを感じるフィルムも必見だ。ファンタジア国際映画祭はカナダ・モントリオールで1996年から開催されている北米最大のジャンル映画祭。ジャンル映画の中でも特にアジア映画に強みを発揮しており、なかでもアニメーション部門は、日本の名監督であった、故・今敏の名前から由来してグランプリが今敏賞と名付けられていることでも知られている。なお本年の長編アニメーション部門には『THE FIRST SLAM DUNK』(原作・監督・脚本:井上雄彦)、『SAND LAND』(原作:鳥山明)など、日本でも話題を集めた作品が選出されている。観客賞は、映画祭参加者からの投票により決定される賞で、本作は映画祭開催中2回の上映が行われ、各回ともに満席となっていた。上映後に行われた塚原監督登壇のトークセッションでは、観客から多くの歓声が上がった。<塚原重義監督コメント>本作がワールドプレミアの場でこのような素晴らしい賞をいただけたこと、そして何より文化圏の異なる地の方々に楽しんでいただけたことが大変光栄です。これを今後の糧としていきたいです。本作は現在、国内上映に向けて進行中。今後の展開にも注目だ。(シネマカフェ編集部)
2023年08月16日今やアジアだけでなく世界中で人気の韓国カルチャー。ヨーロッパでもその人気は留まるところを知らず、クラブカルチャー盛んなドイツではK-POPオンリーの音楽イベントが開催されるほどに。世界を席巻する韓国ファッション系スタイル。日本だけでなく、ヨーロッパにも広がるこのトレンドと韓国風ストリートファッションを演出するポイントを紹介していきます。定番ジャージでスポーティーにスタイリング韓国分ファッションブームの火付け役はやはりK-POPアイドル。アイドルたちがトレーニングで着用するウェアは注目されるアイテムの一つ。ジャージは韓国風ファッションを取り入れる上で欠かせない定番アイテムです。普段のスタイリングのアクセントとしてaddidasやNIKE、PUMA、FILAなどのスポーツブランドのジャージアイテムを合わせて着るのがトレンド。ネオンカラーのアイテムもスポーティなスタイリングに欠かせません。オールホワイトのジャージスタイリングこちらは先月開催されたパリメンズファッションウィークでキャッチされた女優兼モデルのLiya Kebete。ジャージをトップスとして用いてオールホワイトでまとめたスタイリングです。襟を立たせてハイネックとして着用しその上からビーズのネックレスを重ね付け。アイテム合わせに細かく気配りされたハイセンスなスタイリング。ハイウエストからローライズへハイウエストのパンツが人気だった昨今のファッショントレンド。レトロポップのリバイバルを受け韓国のストリートファッションではローライズパンツがトレンドに。ヨーロッパのファッショニスタたちももちろんスタイリングに取り入れています。特に人気なスタイリングはバギーパンツ×ミニ丈トップスのヘルシーな肌見せ。腰履きしたパンツに臍ピアスやウエストジュエリーを合わせて夏らしいファッションを楽しんでいる人が多い印象です。近未来を意識したY3Kファッション2000年代ファッションのリバイバルとして注目を集めたY2K。いま韓国ではeaspaなどのK-POPアイドルを中心としてYear3000のフューチャリスティックなファッション、Y3Kが話題になっています。宇宙っぽさ、近未来感、AIを想起させるようなシルバーメタリック、ネオンのアイテムがトレンドに。サングラスでY3KY3Kファッションに挑戦する上で、ヨーロッパで注目されているのは日差しの強い夏にぴったりなサングラスを用いたスタイリングです。ヘッドピースのような特徴的なシルエットのサングラスがおすすめ。顔のサイドまで覆うようなサングラスや、ブリッジ部分が無く一枚のレンズで構成されたサングラスはサイバーチックな印象がありグッとY3Kファッションに近づきます。Writer: Yuca
2023年07月20日ヨーロッパでは、パンデミック中にSNSを騒がせた「コテージコア」スタイルを取り入れるおしゃれさんが急増中です。そもそもコテージコアとは、Cottage(田舎小屋)とcore(中核・熱狂的)から成る造語で、田舎での生活をロマンチックに解釈したもの。言わば、都会にいても海を感じることができるようなリラクシーなシルエットだったり、ちょっぴりノスタルジックでスイートな花柄や、レース、クロシェ編みなどを取り入れたホワイトドレスが特徴。特に今年は、コテージコアそのままよりも、都会的なシルエットや素材を生かしたちょっぴりリュクスなコテージコアを楽しむおしゃれさんが続出。可憐な花柄で大人のコテージコアを謳歌!まるでおとぎの国に迷い込んだかのようなロマンチックな雰囲気のフラワープリントドレスの彼女。パープルのお花が散りばめられた上品なプリントは大人の女性にぴったりです。ボリュームのあるスカートがメリハリのあるウエストラインを作ってくれるので、スタイルよく見えるのも嬉しいポイントです。花柄とリンクさせたパープルのミュールなら全体に統一感も生まれそう。シアードレスに艶やかな花柄がリュクス・コテージコア透明度の低い軽やかなシアー素材を靡かせながら颯爽と街を歩くおしゃれさんをキャッチ。カラフルなフラワープリントのドレスがとっても華やか。ゆるっとしたシルエットが都会にいながらリラクシーな雰囲気を与えてくれます。ドレスがロマンチックなぶん、バッグはブラックで引き締め、足元はハイヒールでレディに演出するのがリュクス・コテージコアのよう。大人可愛いフラワーレースが魅力影響力の高いインフルエンサーの一人であるタマラ・カリニックが披露してくれたのは、PRADAのピュアホワイトドレス。都会にいてもコテージコアな雰囲気を演出できるのは、デコルテや裾などに施された繊細なレースのおかげ。ほんのりと日焼けした肌に映えるホワイトドレスとフラワーレースがなんとも大人可愛い。トレンドのグリーンは、バッグで取り入れてちょっぴり都会っぽさをトッピング。牧歌的ドレスもレースのディテールで洗練さを感じさせて夏のリゾート地に着ていきたいような優しいクリームカラーのドレスは美シルエットが自慢。チラッと裾から覗くレース使いがとっても上品で、優雅な大人の休日スタイルにも最適です。ロングヘアを後ろでまとめたトレンドのスカーフ使いもとってもエレガント。海岸沿いを歩きたくなるような最旬コテージコア夏のコペンハーゲンでキャッチした彼女。ゆったりとしたシルエットの白ドレスがまさにコテージコアな雰囲気を醸し出していました。くるぶしまである可憐なクロシェ編みがビーチリゾートを連想させてくれそうです。ゆったりとしたシルエットでコテージコアを堪能しつつ、レザーのトングサンダルで小綺麗にまとめることでアーバンウェアとしても大活躍間違いなし。ヴィンテージ感漂うカラフルなサマードレス存在感抜群の刺繍風サマードレスを着こなした彼女。ヴィンテージ感漂うカラフルな色使いもブラックベースなら大人っぽい雰囲気に仕上がりそうです。歩く度に揺れる裾のフリンジがアクセント。足もとは抜け感のあるフラットサンダルが相性◉!リュクスなコテージコアスタイルはいかがでしたか? 都会にいながらもリラックス感のある優雅な夏ファッションを楽しみたいという方におすすめです。ぜひ、可憐な花柄やレース、クロシェ編みの白ドレスを見つけて楽しんでみてください。Senior Writer:H_aco
2023年07月20日京都を拠点に活動する劇団「ヨーロッパ企画」が、9月9日(土)の滋賀・栗東芸術文化会館さきら中ホールでのプレビュー公演を皮切りに、10都市をめぐる本公演ツアーを開催する。ヨーロッパ企画第42回公演「切り裂かないけど攫いはするジャック」チケット情報第42回公演となる今作は、新作『切り裂かないけど攫いはするジャック』を上演。ヨーロッパ企画メンバーはもちろんのこと、ヨーロッパ企画ともゆかりの深い、金丸慎太郎、早織、藤松祥子、内田倭史、岡嶋秀昭をゲストに迎えて贈るミステリコメディだ。劇団代表で作・演出を手掛ける上田誠は「場所はロンドン。切り裂かないけど攫いはする、謎の怪人ジャックが徘徊しているイメージです。ジャックは誰なのか。何が目的なのか。攫ってどうするのか。攫うってジャックひとりでできることなのか。集団名なのか。誰が言い出したのか。いつまで続けるのか。衰えはいつ来るのか。すべては霧の中です」とコメント。非日常的な設定における群像コメディを得意とする彼らが、今作ではどんな展開で楽しませてくれるのか、期待したい。ヨーロッパ企画オフィシャルサイトでは、7月8日(土)12:00から13日(木)23:59まで、先行予約を受付中。
2023年07月08日2025年に開催予定の第97回アカデミー賞授賞式より、作品賞の選考対象作品に対し、劇場公開基準が拡大されることが分かった。主催の映画芸術科学アカデミーが発表した。現在は、作品賞の受賞選考対象となるには、全米6都市のうちいずれかの都市で7日間、劇場公開することが条件とされている。しかし、2024年に公開される映画からは現在のルールに加え、初公開から45日以内に全米上位50市場のうち10市場で連続・非連続を問わず7日間の追加上映を行う必要があるという。(アメリカ国外の地域での公開は10市場のうち2市場としてカウントすることができる)。「毎年行っているように、私たちはアカデミー賞の受賞資格要件を見直し、評価してきました」というアカデミーのCEOビル・クレイマーと会長のジャネット・ヤン。追加上映を行うことで、「映画の世界での認知度を高め、観客に劇場という場所で私たちの芸術表現を味わってもらえることを促せると期待しています」とコメントしており、「この進化は映画に携わるアーティストと映画ファンの双方に利益をもたらすと感じています」と自信を見せている。新しいルールは作品賞の選考対象作品にのみ適用される。(賀来比呂美)
2023年06月22日アカデミー賞の資格を得るためのルールが、一部変更になった。アカデミー賞は劇場で上映される映画のためのものだということがより強調された形だ。現状では、年内に最低7日間、アメリカ国内の6つの指定都市のうちひとつの街で劇場公開されれば、資格がもらえる。これは「資格を得るための上映」と呼ばれる。だが、2024年以後の公開作品は、「資格を得るための上映」の後、45日以内にアメリカの10都市で最低1週間上映しなければならなくなる。本格公開が年明けの場合、配給会社はアカデミーに公開計画を提出する必要がある。この変更の影響を受けるのは、主に配信作品と小規模のインディーズ映画。1週間だけ公開して資格を得れば、あとは配信という方法は、オスカーを狙う以上、来年からは通じなくなる。文=猿渡由紀
2023年06月22日映画『エゴイスト』に主演した鈴木亮平が、第22回ニューヨーク・アジアン映画祭2023(New York Asian Film Festival/略称:NYAFF)にてライジングスター・アジア賞を受賞することが発表され、鈴木さんからコメントが到着した。ニューヨーク・アジアン映画祭は北米でもっとも由緒あるアジア系映画祭。7月14日から30日までニューヨーク、リンカーン・センターで開催され、各国から60以上の作品が出品される。『エゴイスト』は世界的に注目度の高いアジア映画を紹介する「Standouts部門」に出品され、現地時間7月15日にリンカーン・センターにて行われる上映の際に授賞式が行われる予定。舞台挨拶には鈴木さんとともに松永大司監督も出席予定となっている。ライジングスター・アジア賞は、世界的にもっとも活躍が期待される俳優に贈られる賞になり、過去の日本人では池松壮亮、小松菜奈、綾野剛らが受賞してきた。鈴木さんは、大河ドラマ「西郷どん」や「エルピスー希望、あるいは災いー」出演、『孤狼の血 LEVEL2』では日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をはじめとする数々の賞を受賞、最近では映画『TOKYO MER~走る緊急救命室~』の大ヒットも記憶に新しく、日本を代表する俳優の1人。本作では、恋人とその母へ愛情を注ぐゲイの主人公を演じた繊細な演技が高く評価され、この度の受賞に繋がった。なお、2013年には鈴木さん出演の『HK/変態仮面』がNYAFFにて観客賞を受賞している。鈴木亮平コメント愛する街ニューヨークで、このような重要な賞をいただき非常に光栄です。また、映画『エゴイスト』が国境や文化の違いを越えて評価されていることをとても嬉しく思います。『エゴイスト』は「恋人との愛」「親子愛」「救い」などのテーマと共に、セクシュアリティやアイデンティティについて大きな気付きを与えてくれた、私にとっても特別な作品です。この作品がさらに世界中に広がり、たくさんの方々の心に届いてくれることを願っています。改めて、原作者の高山真さん、共演の宮沢氷魚くん、阿川佐和子さん、松永大司監督をはじめ、協力してくださった全ての方に感謝いたします。「ライジング・スター」という名に恥じぬよう、今後とも俳優として、人間として研鑽を積んでいきたいと思います。なお、本作は、2023年2月10日の劇場公開以降、いまなお日本中でロングラン上映を続けており、動員数は20万人を突破、興行収入は約3億円と、ロングランヒットを記録中。北米に加えてアジアでは香港、韓国、台湾で公開が決定、映画祭は、アジア全域版アカデミー賞といわれる「第16回アジア・フィルム・アワード」(助演男優賞受賞:宮沢氷魚)のほか、イタリア「ウディネ・ファー・イースト映画祭」、ドイツ「第23回ニッポン・コネクション」、米「フレームライン映画祭」、米「プロビンスタウン映画祭」、韓国「富川ファンタスティック映画祭」など続々と出品が決定している。『エゴイスト』は全国にて公開中。8月25日(金)Blu-ray&DVD発売発売元:日活販売元:ライツキューブ(シネマカフェ編集部)■関連作品:エゴイスト(2023) 2023年2月10日より全国にて公開© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
2023年06月19日今季のビッグトレンドとして復活したスカーフですが、ヨーロッパではスキニータイプのスカーフを首元で垂らすおしゃれさんが急増中。スキニータイプの特徴は、大判のスカーフとは違い、主張しすぎず、だからと言って控えめすぎない、自然な縦長シルエットを作ってくれるコーデの名脇役といったところでしょうか。今回は、洗練さを与え、顔まわりのアクセントになるスキニースカーフを取り入れたおしゃれさんをご紹介。ブラックのスキニースカーフがコーデの引き締め役ヌーディーな透け感が魅力のシースルードレスですが、ちょっぴり物足りなさを感じた時はスキニースカーフを首にONしてみてはいかが? 引き締め効果のあるブラックならアクセントにもなりコーデにメリハリが生まれます。さらに、風に靡くサマが優雅で大人っぽいと人気。さらりと巻くだけで洗練された雰囲気にシルバーのクロッシュ編みセットアップに繊細なシルクのスカーフを合わせた彼女。スキニータイプなので、主張しすぎず程よいアクセントになり、バランス良く着こなせるのがおすすめ。クロッシェ編みのセットアップやヘアスタイルを際立たせるなら、さらりとシンプル巻きがおすすめです。首元でスカーフをリボン結びした大人の可愛さ2023年春夏コレクションでもスキニースカーフを披露したmiumiuの会場では、首元でリボンのようにキュッと結んでラブリーなスカーフコーデの彼女をキャッチしました。清潔感のあるオールホワイトに、揺れ動くスカーフが涼しげな印象です。ロングドレスはスカーフを垂らして縦長ラインをメイクボディラインがわかるタイトなシルエットのドレスには、長めのスキニースカーフが相性抜群です。首元に巻き付けて垂らすだけで、美シルエットのロングドレスをさらに縦長ラインにメイクしてくれます。オールホワイトのドレスを際立てるブロンズのバズカットもおしゃれ。素肌にスキニースカーフを合わせるのが新鮮!ロングタイプのスキニースカーフをタイ風に結んだマニッシュなスタイルの彼女。素肌にスカーフをONするコケティッシュな印象はまさに海外ファッショニスタですね。夏は薄手ジャケットやシャツを羽織って素肌にコーデするのも◎! 人と被らないのもとっても魅力的です。首にさらりと巻いて垂らすだけで洗練さを与えてくれるスキニースカーフ。海外ファッショニスタは続々と取り入れ中です。ぜひ参考にしてみてください。
2023年06月15日第72回ベルリン国際映画祭 パノラマ部門正式出品 【ドキュメンタリー賞/ブロンズ観客賞/アムネスティ国際映画賞】受賞の『ミャンマー・ダイアリーズ』が8月5日(土)より公開されることが決定し、予告編とポスタービジュアルが解禁された。東南アジアの国、ミャンマー。民主化にむけて変革が続いたこの10年、市民は自由と発展への希望を抱き始めていた。しかし2021年2月1日、軍が再び国の支配に乗り出し、反発した民衆による大規模な抗議デモが全国各地で勃発。人々は抵抗のシンボルとして“3本指”を掲げて軍政に反対する声をあげるも、一人の少女の死を皮切りに軍の弾圧行為は激化し、人々の自由と平穏な暮らしは崩れていく…。インターネットは定期的に遮断され、軍に都合が悪い情報を発信するメディアやSNS投稿が処罰の対象となるなど、国内外に情勢を伝えることが困難な中、若手ミャンマー人作家たちが自らの匿名性を維持しながら“ミャンマー・フィルム・コレクティブ”を結成。それぞれの日常から生まれた10人の映画監督による短編映画とSNSに投稿された一般市民の記録映像をシームレスにつなぎ、抑圧された日常における切実な“一人称の物語”を紡いでいく。この度解禁となった予告編は、軍への抗議を示す“3本指”とデモの場面から始まる。つぶやき声と交互に差し込まれる悲痛な叫び声の間からは、ミャンマーの生々しい日常が浮かび上がってくるようだ。また併せて解禁されたポスタービジュアルでは、コロナ禍の抗議活動を象徴するマスクとヘルメット姿の人物のシルエットを背景に、「SAVE MYANMAR(ミャンマーを救え)」「STOP KILLING OUR PEOPLE(私たちを殺すな)」 「RESPECT OUR VOTE(我々の選挙権を尊重せよ)」「RELEASE OUR LEADERS(私たちのリーダーを解放せよ)」 「WE WANT DEMOCRACY(私たちは民主主義を望んでいる)」といった市民の声、また劇中でアニメーションとして描かれる“蝶”をレイアウトし、「どうか私たちの声が届きますように」というコピーとともに映画のメッセージをストレートに表現したものになっている。ドキュメンタリーとフィクションを行き来しながら、圧政下のミャンマーにおける市民の声の断片を生々しく伝える本作は、 世界の話題から忘れ去られつつあるミャンマーで今なお生きる人々の”叫び”を伝える、きわめて重要性の高い作品と言えるだろう。なお、配給元の株式会社E.x.Nでは、本作の興行収入より映画館への配分と配給・宣伝経費を差し引いた配給収益の全額 を支援金とし、ミャンマー避難民の生活支援活動を行う団体・施設に寄付を行うという。『ミャンマー・ダイアリーズ』は、8月5日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2023年06月12日先ごろ閉幕したカンヌ国際映画祭で脚本賞、クィアパルム賞に輝いた映画『怪物』が公開されている。本作の監督・編集を手がけたのは『万引き家族』『真実』『ベイビー・ブローカー』の是枝裕和監督。本作では長編デビュー作『幻の光』以来、久々に自身ではなく、坂元裕二が書いた脚本で創作にあたった。是枝監督はこれまでに『誰も知らない』『そして父になる』など数々の作品を手がけているが、ある時期から意図的に自身の創作のルーティンを良い意味で壊し、開かれた創作の場をつくることに力を注いできた。時には映画において、画家でいうところの“絵筆”にあたる撮影監督を変え、時には海外に渡るなど、創作の環境が固定化し閉じてしまわないような試みがなされてきた。2018年には初めてタッグを組む撮影監督・近藤龍人、初めて迎えた俳優・安藤サクラをはじめとする俳優陣、スタッフと共に手がけた『万引き家族』がカンヌ映画祭の最高賞パルムドールを受賞。さらに変化し、さらに先へ……そのタイミングで本作の企画が持ち込まれたようだ。「最初にプロデューサーから『坂元裕二さんと進めている企画があるのでプロットを読んでほしい』と言われたのは2018年の暮れでした。僕としてはプロットを読む前からこのオファーを受けると決めていたんです。きっとそういうタイミングなんだろうなと思いましたし、これでまた次の扉が開くと思ったんです」そこから長期間にわたる脚本づくりが始まった。「一緒にキャッチボールをしながら脚本づくりを3年ほどやりました。それが本当にいい時間だったんですよ。そこでかなりの試行錯誤をした上で、撮影に入っているから、いい意味で撮影に入ってからの迷いはなかったです」とは言え、これまでの是枝作品では、是枝監督が撮影されたばかりの素材をすぐに編集し、時には編集されたもの、それまでの撮影で得たものを反映して脚本が繰り返し監督の手で修正・更新されてきた。「そのルーティンについては変わりました。変わったんですけど、そこには違和感は感じませんでしたし、これまでやってきた有機的な感覚もまったく失われずにやれたと思います」さらにいうと、これまで是枝監督は多くの作品で、子どもが出演する際にはあえて台本を渡さず、撮影現場で状況を説明して撮影に臨んできたが、本作では子どもたちにも事前に台本が渡され、リハーサルを行なってから撮影が開始された。「それについても何かに“縛られている”という感覚はまったくなかったです。完成された脚本を渡されて“これで撮ってください”と言われたわけではないですから。ただ、俳優と向き合ってやっていく上では試さないといけないことがあったので、子どもたちには台本を渡して、ちゃんとリハーサルもやって現場に入りました。撮影しながら編集もしていくというスタイルもこれまでと変わらずです。ただ、編集しながら、修正していく量が本当に少なかったんですよ。結果として、子どもたちを観ながら『このシーンは電車の中でやるよりは外で撮った方がいいな』とか『いいロケ地が見つかったからそこで撮ろう』とかアレンジは加えていっているんですけど、セリフ自体を変えたいとは思わなかった」『怪物』の舞台は大きな湖のある町。そこではクリーニング店で働きながら息子を育てるシングルマザーや、生徒想いの教師、子どもたちが暮らしている。しかし、ある日、学校で子どもたちのケンカが起こり、教師が生徒に暴力を振るったのではないかという話が持ち上がる。それぞれの主張は食い違い、小さな出来事は次第に大きくなっていく。本作は可能な限り、事前に情報を入れずに真っさらな気持ちで観た方が楽しめるため、具体的な内容については触れないが、作品は大きく複数のブロックに分かれており、ある一定期間で起こる出来事をそれぞれのブロックで異なる視点、語り口で描いていく構造になっている。興味深いのは、それぞれのブロックで物語を語るリズム、映像のルック、カメラの動きが驚くほど異なっていることだ。(劇中で明示されるわけではないが便宜上、本稿ではこのブロックを一章、二章、それ以降の章を終盤の章と記載する)。「最初に一章と二章の脚本を読んだ時に“これは自分には書けないな”と思ったんです。坂元裕二、恐るべき才能だと思いましたね。何かが起きそう、という不穏な感じがずっと続いていて、それだけで物語が進んでいく」その結果、本作の一章と二章はこれまでの是枝作品にはない語りのリズム、カット数、アングルが選択されている。「たぶん、脚本がそのようなリズムを求めていたんだと思います。だからそこは自分なりの脚本に対するアプローチのしかたで、一章・二章のリズムと終盤の章のリズムを変えるということは意識していました。それに一章と二章はセリフも、キャラクターの輪郭も、際立ち方も自分がこれまでにつくってきたものとはまったく違う。そこは面白かったです。僕は自分自身の作家性というか、そういうものがあまり好きではないので、消せるものなら消したいと思っていますから、そういう意味では一章と二章は自分の作家性とかどうでもよくて、この脚本をどうしたら面白くなるか、その目線で見たときにいろんなことがクリアになった。結果としてこの脚本の良さを自分なりには引き出せたつもりです」そして訪れる終盤の章を是枝監督は「ここは自分にしか撮れないな、と思えた」と語る。「だから、来たるべき終盤の章のことを視野に入れると、一章と二章のもつ特殊性というか、不穏なトーンにあまり乗っかり過ぎてしまうと断絶が起こってしまうので、そこは気をつけました。演出的にはすべての章がシームレスにつながっていないといけないわけで、一章と二章は確かに面白いんだけど、面白がりすぎてはいけない。その“ギリギリ”を攻めたという感じです。章によって視点が違って、キャラクターの見え方が違ってもいいんですけど、それをやりすぎてしまうと映画がバラけてしまう。そこは丁寧にやったつもりです」俳優の“動き/運動”を描き出す先に言っておくと本作は複数のブロックに分かれてはいるが、章が進んでいくことで“提示されていた謎が解ける”わけではないし、“章によってキャラクターの見え方が違う”というほど単純な内容ではない。確かにこれらの章は異なるトーンとリズムで構成されている。物語が進んでいくと新しい情報がもたらされることもある。しかし、これらはひとつの世界で起こっている。むしろ“このような事態が別々ではなく同じ世界で発生していること”が重要なのだ。「撮影監督の近藤(龍人)さんと最初に話したのは“一章、二章、終盤の章の映像のトーンをどれぐらい変えるか?”ということで、カメラワークも含めて章によって変えていこうという話になりました。サイズをシネスコにしたのは近藤さんからの提案です。“視界を狭めたい”という意図でした。全体が見えていない形にしたいのでシネスコでやってみたい、と」さらに本作ではロケ地の選定、登場する部屋の装飾などプロダクションデザインの完成度の高さに驚かされる。本作ではある一定期間の出来事を複数のブロックでそれぞれ描くため、シーンによっては同じ場所が視点を変えて繰り返し描かれることになるが、本作ではそれに耐えうるロケ地、セット、美術が揃った。「この映画は一歩間違うとすごく観念的な話になってしまうので、あの町とそこで暮らす人と風景はちゃんとリアルに描かないといけないと思っていました。あの場所から少年たちがどのように浮上するのか、という話なので。だから、今回の映画で一番最初におさえたスタッフは後藤一郎くんといって『万引き家族』で見えない花火を見上げるシーンを撮った家を見つけてくれた人でした。この映画はロケ場所がすごく大事で、さらにコロナ禍で学校を舞台に撮影するのもかなり難しい。でも、彼が苦労してロケ地を見つけてきてくれて、地域の方々の全面的な協力体制を敷いてくれて、環境を整えてくれたので撮ることができた。そこは一郎くんの力が本当に大きいですし、美術の三ツ松(けいこ氏。日本を代表するプロダクションデザイナーのひとり)さんとチームの力も本当に大きかった。その点ではそれぞれのスタッフが、最高のレベルの仕事をしたなというのが今回の僕の実感です」さらに異なるトーンと語りをもつ複数のブロックをさらにシームレスにつなぐものがある。それは俳優の“動き/運動”だ。本作では、これまでの是枝作品よりもさらに丁寧に俳優の動きが描き出される。俳優の運動によってキャラクターが立ち上がる、確実に“そこにいる”と感じられる。「安藤サクラという役者をどう評価するかは人によっていろいろだと思います。感情の表出のしかたの瞬発力や集中力が高いのは『万引き家族』でも感じたことですが、改めて思ったのは、彼女は身体能力が高い、ということ。綾瀬はるかも高いけど、彼女とは違った身体能力の高さが安藤サクラにはある。そこはこの映画でちゃんと撮ろうと思っていました。そのことで“動かない田中裕子”との対比になる。ふたりが揃うことで対比が生まれ、緊張感のある瞬間が生まれる。動いていたものが止まる瞬間、止まっていたものが動き出す瞬間……そこは撮っていて本当に面白かったですね」それは劇中に登場する子どもたちも同様だ。彼らは大人ほど多くを語れるわけではない。時には想いを秘めている。しかし、彼らが駆け出す、跳ねる、どこかをゆっくりと覗き込む……すべての運動=アクションがどんなセリフよりも雄弁にキャラクターを表現するのだ。「子どもたちを動かすことは徹底的にやろうと思っていました。セリフが魅力的なことはわかっていたし、あのふたり(黒川想矢、柊木陽太)が優れた俳優であることもわかっていたから、リハーサルの段階から動きながらセリフを言ってもらって、どのセリフも”何かの動きのついで”に言ってほしいといいました。劇中のグリコ(じゃんけんグリコ:じゃんけんをして勝った方が階段などを進んでいく遊び)のシーンもリハーサルの段階からやっていたんですけど、最初は本読みをして表に出てやってもらったら、グリコをやり終わってからセリフを言うんです。で、セリフを言い終わったらグリコに戻る(笑)。だから、『いや、そうじゃなくてセリフとグリコは同時にやっていいんだよ』って言ったら、柊くんはその直後からできるようになった。それはすごいことで、大人でもなかなかできなくて、やりたがらない役者もたくさんいるんです。想矢も最初はセリフに集中したいのか、なかなか馴染まなかったけど、柊木くんとリハーサルをやるうちにどんどんほぐれていった。どうやって(意識を)散らしていくのか、ということをリハーサルでやっていったので、結果的にふたりのシーンはとても動的なものになりましたし、撮影ではなるべく座って喋るシーンもなくしたので、撮影の後半ではふたりも楽しそうにしていましたね」信頼できる脚本家と、信頼できるセリフを得た是枝監督は本作で新たな語り口、リズム、映像のルックを得た。そして、これまで以上に俳優の運動を丁寧に描き出している。映画『怪物』は、もしかしたら是枝監督が初めて手がける“アクション映画”なのかもしれない。「近藤さんのカメラと、この脚本をもらって作りながら学べたことがすごく大きかった。これを経験して次に自分が脚本を書く時に俺、変わるぞと思っていますし、変わるだろうなと。それぐらい坂元さんの脚本づくりには影響を受けました。だから次をまた楽しみにしていてください」『怪物』公開中
2023年06月07日映画『リバー、流れないでよ』が、2023年6月23日(金)より全国で順次公開される。上田誠率いる劇団ヨーロッパ企画のタイムループコメディ映画『夜は短し歩けよ乙女』『四畳半タイムマシンブルース』の脚本や、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』日本語吹替版脚本を手掛ける上田誠。映画『リバー、流れないでよ』は、そんな上田が率いる劇団ヨーロッパ企画制作によるタイムループコメディだ。物語の舞台となるのは、京の奥座敷と呼ばれる貴船。劇中では、繰り返す2分間のループから抜け出せなくなってしまった人々の混乱が描かれる。登場人物ミコト…藤谷理子京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」で働く仲居。別館裏の貴船川のほとりに佇んでいたところを女将に呼ばて仕事へと戻る。しかしその2分後、なぜか再び先ほどと同じく貴船川を前に佇んでいる。タク…鳥越裕貴料理人見習い。番頭…永野宗典料理長…角田貴志エイジ…酒井善史ノミヤ…諏訪雅クスミ…石田剛太スギヤマ…中川晴樹漁師…土佐和成チノ…早織ヒサメ…久保史緒里(乃木坂46)キミ…本上まなみオバタ…近藤芳正海外映画祭に出品なお、映画『リバー、流れないでよ』は、第27回FANTASIA映画祭CHEVAL NOIR コンペティションと、第22回ヌーシャテル国際ファンタステック映画祭に出品される。映画『リバー、流れないでよ』あらすじ京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」で働く仲居のミコトは、別館裏の貴船川のほとりに佇んでいた。女将に呼ばれ仕事へと戻ったが、その2分後、なぜか再び先ほどと同じく貴船川を前にしている。しかも「ループ」しているのは、ミコトだけではないようだ。ずっと熱くならない熱燗、なくならない〆の雑炊、永遠に出られない風呂場……番頭や仲居、料理人、宿泊客たちもみな異変を感じ始めていた。2分経つと時間が巻き戻り、全員元にいた場所に戻ってしまう。そして、それぞれの“記憶”だけは引き継がれ、連続している。そのループから抜け出したい人、とどまりたい人……それぞれの感情は乱れ始め、それに合わせるように雪が降ったりやんだり、貴船の世界線が少しずつバグを起こす。力を合わせ原因究明に臨む皆を見つつ、ミコトは一人複雑な思いを抱えていた―――。【作品詳細】映画『リバー、流れないでよ』公開日:2023年6月23日(金)出演者:藤谷理子、永野宗典、角田貴志、酒井善史、諏訪雅、石田剛太、中川晴樹、土佐和成、鳥越裕貴、早織、久保史緒里、本上まなみ、近藤芳正原案:上田誠脚本:上田誠監督:山口淳太編集:山口淳太主題歌:くるり「Smile」(Victor Entertainment / SPEEDSTAR RECORDS)
2023年06月01日現地時間5月27日夜、フランスで開催されていた第76回カンヌ国際映画祭の授賞式にて、映画『Perfect Days』で主演を務めた役所広司が男優賞に輝いた。日本の俳優の受賞は、2004年の『誰も知らない』の柳楽優弥以来2人目で、さらにエキュメニカル審査員賞も受賞し、作品としてはW受賞となった。エキュメニカル審査員賞は、キリスト教徒の映画製作者、映画批評家らによって1974年に創設されたもので、日本人の監督作では過去に青山真治監督の『EUREKA(ユリイカ)』が2000年、河瀬直美監督の『光』が2014年、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が2021年に受賞しており、邦画としては4作品目となる。併せて、役所広司本人、さらに会場で感動の表情を浮かべていた監督のヴィム・ヴェンダース、そしてカンヌで一緒にプレミア上映に立ち会ったキャストからコメントが到着した。■役所広司日々を丁寧に静かに重ねるように生きる。この平山という男を演じるのは、大きな挑戦でした。ヴィム・ヴェンダースという偉大な監督には、フィクションの存在であるこの男にとても大きなリスペクトがありました。それが私を導き、平山という男をこの世界に生み出した気がします。このような賞をいただいてとても光栄です。日本の、世界の、映画が少しでも、もっと素晴らしいものになるようにこれからも努力を重ねていきたいと思います。日本でもみなさんに、「平山」という男をご紹介できる日が楽しみです。■ヴィム・ヴェンダースこれ以上の言葉を私は見つけることができない。“役所広司は、監督をする者にとって最高の俳優である”彼こそが俳優である。それも最高の俳優だ。彼こそが平山であり、『PERFECT DAYS』というこの映画の心臓であり、魂なのだ。この映画を通じて私たちはゆっくりと平山の視線や生き方を受け入れていく。彼の目を通してこの世界をみつめる。そうすることで彼が選びとった人のために生きるというその姿に癒しを感じるようになる。他の俳優でも平山を「演じる」ことはできるだろう。けれど役所広司は平山そのものになった。穏やかさ、謙虚さ、大きな心。同じようなひとに対してだけでなくすべてのひとに対しても。自然に対してもそれをもつ。とくに木々には静かで美しい感情を抱いている。カンヌの劇場から泣いて帰る人がいるとしたら、それはこの偉大な俳優が彼らを旅に連れ出したのだ。彼らの魂に、より良く生きることとは何か。満たされた生き方はどういうものか。そういう考えに火をともしたのだ。こんなことを成し遂げる俳優は世界にそうはいない。私は彼と一緒に映画をつくれたことをとても幸せに思う。この賞は、私と、そしてカンヌに集まったチームの全員が待ち望み、そして夢にみたものである。■中野有紗受賞、本当におめでとうございます。役所さんの演技、作品に取り組む姿勢は私の心に強く響きました。役所さんの存在の素晴らしさが更に世界に伝わったような気がして、自分の事のように嬉しく感じています。その様な受賞作品に、私も出演させて頂けた事を心より光栄に思って居ります。本当におめでとうございました。■アオイヤマダ受賞おめでとうございます。人それぞれの日常や居場所が主人公であり、それこそが平和ということ。与えられた時間を精一杯生きること。そして、決して一人では生きられないこと。私はこの作品に携わらせて頂き、改めて意識することができました。ヴィムさんがみつめる日本には、私たちが気がつくことができない、新芽のような美しさがあります。素晴らしい機会を下さったこと、本当に感謝しております。■田中泯嬉しい!役所さんの受賞が自分のことのように嬉しい。そうして『PERFECT DAYS』を受け入れたフランス、カンヌにヤッホーだ。この作品に関わった全ての人の心の内に秘められていたことがこの結果だった、と僕は信じます。ヴェンダース監督がそんな人々の先頭で喜びに浸っているに違いない。役所さんが体現した平山さんは、自分のテンポとメロディーで生きたい人々の本当の例題となるでしょう。言葉少ない役所さんは、ずっと踊っていた!<作品情報>『PERFECT DAYS』原題:『PERFECT DAYS』/上映時間:124分/製作:日本/日本配給予定【スタッフ】監督:ヴィム・ヴェンダース脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬エグゼクティブ・プロデューサー:役所広司プロデュース:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬【キャスト】役所広司、柄本時生、中野有紗アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり田中泯、三浦友和 ほか(C)2023 MASTER MIND Ltd.『PERFECT DAYS』トレーラー
2023年05月29日先ごろ開催されたアカデミー賞でポール・メスカルが主演男優賞の候補になったのをはじめ、英国アカデミー賞、カンヌ映画祭など多くの映画祭・映画賞で絶賛を集めた映画『aftersun/アフターサン』がいよいよ26日(金)から公開になる。本作は主人公の女性が、20年前の夏に父と訪れたリゾート旅行を振り返る様を描いた作品で、大きな事件が起こるわけでも、劇的な展開があるわけでもないが、観る者の心と記憶を刺激する描写がふんだんに盛り込まれ、映画的な魅力が細部にまでつまっている。本作はなぜ、ここまで観客を魅了するのか? 監督と脚本を手がけたシャーロット・ウェルズに話を聞いた。ウェルズ監督はスコットランド出身で、ニューヨークを拠点に活動する映画監督。大学院で映画制作を学び、いくつかの短編を手がけた後、初の長編作品にこのプロジェクトを選んだ。主人公の女性ソフィは、ホームビデオの映像を観ている。あの夏、11歳だったソフィは父に連れられてトルコのリゾート地に出かけた。いつもは離れて暮らしている父との日々。ビデオに記録された空はどこまでも青く、ふたりは朝から晩まで遊んで、穏やかに時間が過ぎていく。しかし、ソフィはビデオ映像にうつる父の知らなかった一面を見つけ出していく。本作では劇中で父の知られざる一面が劇的に描かれることはない。しかし、観客は11歳のソフィの目を通して父との日々を眺めているうちに、父の抱えているものに少しずつ気づいていく。「多くの映画監督は“ストーリーを伝えるための劇の構造”を選びがちですよね。でも私は、観る人ともっと深いつながりが持てる作品をつくりたいと思っています。ですからこれまでも余計なものは可能な限り排除して、本当に必要なものだけを残すというやり方で映画をつくってきました。本作でもすべてを説明するのではなく、作品の中に余白を残すことで観客にメッセージを読み取ってもらいたいと思いました」監督が語る通り、本作では過剰な説明やセリフは登場しない。カメラの動き、俳優の表情や気配、父と娘の空気感の変化……“映画の言語”を駆使して物語が綴られる。「大学院で映画を学んだのですが、最初にやるレッスンは“映画の音を消してもストーリーがちゃんと伝わるか?”でした。そのことはいつも意識しています。脚本を書く上ではストーリーを前に進めたり、新しい情報を伝えるようなセリフもありますが、私の書くセリフは日常の中にある”とりとめのない言葉”が多いですし、創作する過程ではフォーム(構造)を通じてストーリーを伝えることを大切にしています。それに無駄なセリフを排除して、静寂な時間をつくることで、別の要素を映画の中に入れることができるんです。カメラワークや、音がスクリーンの画とシンクロしていたり、ズレていたり……しっかりとビジュアルで語ることで、そういった別の要素が強まる可能性もつねに意識しています」そこで重要になったのが、フィルムでの撮影だ。本作は“かつて父と娘が旅行中に撮影したハンディビデオの映像を、成長した娘が見る”という設定だが、撮影は全編35ミリフィルムで行われた。「撮影監督のグレゴリー・オークのこだわりでもあったのですが、35ミリフィルムで撮影することは本作を語る上では欠かすことのできない要素でした。デジタル撮影にはない質感が35ミリにはあり、本作が描く記憶のぼんやりとした感じ、ソフトな質感を表現するためにはフィルムが必要だったのです。デジタル撮影だとあまりにもクッキリとし過ぎてしまうのです。フィルムで撮影することで、古い写真や使い捨てカメラで撮った写真の感覚を表現できると思いましたし、フィルムのルックを用いることで観客が“あの時代”を意識せずにさかのぼれると思いました」なぜ、『aftersun/アフターサン』は多くの観客を魅了し続けるのか?さらに本作では編集と構成(どの順番でシーンを語っていくか?)に長い時間が費やされたという。この物語では父と娘はひとつのリゾート地で何日も過ごしている。脚本上では「時間の経過を表現するために、1日のはじまりは必ず同じシーンからはじまるようにしていた」そうだが、完成した映画では時間の経過が曖昧に感じられるようにシーンが構成され、時おり成長した現在のソフィの場面が挟み込まれる。時間が単純に一直線に進んでいくのではなく、過去を振り返る時に誰もが体験する“おそらくこの順番で出来事が起こったはずだけど、一部だけ記憶の順番が曖昧”という感覚を本作は編集によって実現しているのだ。「撮影監督のグレゴリーと、編集を担当したブレア・マックレンドンとは同じ大学院で、短編も一緒につくってきました。私たちは創作のテイストも似ているし、目指している部分が同じなんです。ですから、撮影を終えて、編集前に自分とブレアのために“編集用の脚本”を用意したのですが、結果的には一度も開くことはありませんでした。ブレアは物語が時系列的に一直線に進んでいくことを好まないので、時間が経過して次の日がやってくる“境界線”をうまくボカすような編集をしてくれました。基本的には朝が来て、夜になり……と進んでいくのですが、時折、ソフィが同年代の子どもたちとプールに入るシーンや、彼女が男の子と遊ぶ場面を違う流れの中に上手に盛り込んでいくことで、記憶のもつ“順番が曖昧な感じ”を表現することができたと思います。これはブレアのおかげですね」さらに本作ではシーンの並びを精緻に検討して構成することで、観客が少しずつ父の知らなかった一面に気づいていくことに成功している。人は映画を観ている時、その映画がまだ上映中であっても、数分前に観ていたシーンの印象が変わることがある。映画の前半で楽しそうな人として登場したキャラクターが、あるシーンで得られる情報によって“さっき観たあのシーンの彼は楽しそうにしていたわけではないのだ”と気づくことがある。記憶は人の中で固定されるものではない。記憶はたえず変化し、更新されていく。「そのことはすごく意識しましたし、本作はそのような構造の作品だと思います。この映画を観てくださる方は、最初は父と娘の楽しいバケーションを観ていると思っています。しかし、それがどんどん変化していく、それらが積み重なることで、結末には観客がある感覚を抱くことになる。でも、それは人生そのものがそうだと言えますし、“振り返る”という行為もそうですよね。過去を振り返る時、当時はとても楽しい思い出だったのに、何年か経ってから振り返ると、別の感情が湧き上がってくる。あの時の楽しさを思い出したいけれど、今の感情とぶつかり合ってしまう。そういうことが誰にでもあると思いますし、そのこともこの映画では表現したかったのです」この映画が世界中の多くの観客を魅了しているのは、父と娘の関係を上手に描いたからでも、親子の普遍的なドラマを描いたからでもない。曖昧な記憶が変化/更新される中で、新たな一面を発見し、当時の記憶と現在の感情がぶつかり合う……誰もが一度は経験する感覚を見事に描き出したことが本作の最大の魅力だろう。監督が目指した通り、本作は単に物語やキャラクターを提示するだけでなく、観客と“深いつながり”をもつことに成功したのだ。「公開される前は、私と同じような体験をした方や、似たような体験をした観客だけにこの映画を理解してもらえると思っていました。父と娘の関係だったり、父の抱えている問題が観客に響くだろうと予想していたのです。しかし、映画が公開され、そうではないことが証明されました。この映画はそれ以上の広がりをもって受け入れられました。それは本当にうれしいことですし、今後も自分の信念を貫いて創作を続けていきたいと思っています」誰もが過去を振り返る。楽しかった思い出、つらい記憶、あの日のあの人の印象……しかし、それらは自分が時を経て、経験を重ねることで変化していく。人は何度も過去を振り返り、そのたびに新しい過去に出会う。あの時はわからなかった父の気持ちがわかるようになる。新たに父と出会うことができるのだ。これから多くの人がふとしたきっかけで、映画『aftersun/アフターサン』を振り返ることになるだろう。そのたびに、観客の記憶の中に、あの日のリゾート地の父と娘が、思ってもみなかった新しい姿で出現するはずだ。『aftersun/アフターサン』5月26日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開(C)Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
2023年05月24日