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女優・安蘭けいによるソロ・コンサート『安蘭けいドラマティック・コンサート 愛の讃歌』が7月14日、Bunkamuraオーチャードホールにて開催される。ミュージカルを中心に、ジャズ、シャンソンなどの名曲を揃えて、ショーアップしたステージをお届けする豪華一回公演だ。堂々のタイトルに、当の本人は「かなり重みを感じる、ハードルの高い題名ですよね」と朗らかに一笑。およそ二千席のホールでの特別な一夜を、気負うことなく心から楽しみにしている様子がうかがえる。「この題名に負けないようなコンサートにしないといけないなと思っています。だんだんと気持ちが盛り上がって、やり終えた時には『私の人生、変わりました!』ってくらいの手応えを得られたらいいですね」【チケット情報はこちら】予定されているセットリストは、『サンセット大通り』など過去に演じた作品からのナンバーだけでなく、『エニシング・ゴーズ』『RENT』『エビータ』などの未体験の作品から、初めて挑む楽曲も多数含まれている。「構成・演出の原田諒さんから『こんな曲はどう?』と提案していただきました。私が意見を言い過ぎると、自分のやりたい曲ばかりに偏ってしまうので。宝塚時代から私のことを理解してくださっている原田さんに勧めてもらったほうが、いろんな自分を発見できていいのでは、と思ったんですね」また女性曲だけでなく、男装して歌うナンバーがあることも話題の的だ。さらに「全員、初共演です」という魅力の男性キャスト4人、良知真次、中河内雅貴、青柳塁斗、原田優一とのセッションにも期待がかかる。そしてスペシャルゲストには、今年の10、11月の舞台『スカーレット・ピンパーネル』で共演する石丸幹二が登場。贅沢この上ない布陣が、安蘭を強力にバックアップする。「石丸さんは王子様のようなイメージがあると思いますが、実は関西弁のとても気さくな方です(笑)。トークもお上手なので空気を一気に和やかにしてくれると思うし、何よりあの甘い歌声で、より重厚なコンサートにしてもらえそうです」宝塚歌劇団退団から7年。「歌声も音域もかなり変わってきている」ことを自覚し、女優としての成長、変化を「女性を演じることが、より自然になってきた」と受けとめている。安蘭けいのこれまでの歩みと、今後の飛躍の予感、その両方を感じ取れる貴重な時間となるに違いない。「退団後に出演したミュージカルは、女性の半生を描いたものなどメッセージ性の強い作品が多かったんですね。でも『エニシング・ゴーズ』みたいな底抜けに明るいイメージも、私の中には確実にあるんです(笑)。こんなカラーもあるのよ~ってところをお見せできたらいいな。一回だけのコンサートなので失敗は許されません(笑)。完全燃焼したいと思います」取材・文:上野紀子
2016年06月29日実力派ミュージカルスターによるガラコンサート『ブロードウェイ・ミュージカルライブ 2nd』が6月14日(火)・15日(水)、東京・EXシアター六本木にて上演される。2010年から上演を重ねる本コンサートの、今回は新シリーズとしてコンセプトバージョンを開催。シリーズ第一回目は「トニー賞VSアカデミー賞」と題してミュージカルナンバーのみならず、多くの人の心に残る映画音楽の名曲も含めた、豪華ラインナップが実現した。今回のこのコンサートに、日野真一郎が意外な選曲で初参加する。メンバー5人全員が音大卒である男性ヴォーカル・グループ“LE VELVETS(ル ヴェルヴェッツ)”に所属する日野は、メンバーに先駆けてミュージカル『ファントム』(14年)に出演。歌手、俳優として活躍が期待される次世代スターのひとりだ。「トニー賞VSアカデミー賞」チケット情報「普段は5人で活動しているので、このようにひとりで参加するのはプレッシャーもあります。でも確実に経験値は上がるはず。僕が一番最初にミュージカルの舞台に出てから、今はほかのメンバーもそれぞれミュージカルを経験するようになりました。その後にグループに戻って一緒に歌った時に、やっぱり違いがわかるんですよね。僕らはお互い、どう学んだか、いろいろ経験してきたことをシェアするので、ほかのメンバーが経験したことも、あたかも自分が経験したかのように感じられる。グループとしても個人としても、レベルが上がっているんじゃないかなと思えるんです」日野が今回ソロで披露する楽曲は、『レ・ミゼラブル』からファンテーヌが歌う名曲『夢やぶれて』と、映画『ミスター・アーサー』の主題歌であり、クリストファー・クロスの世界的ヒット曲で知られる『ニューヨーク・シティ・セレナーデ』だ。「『夢やぶれて』は以前から大好きな曲だったんですが、女性が絶望の思いのなかで歌い上げる曲というのもあって、自分で歌うことは避けていたんですね。でも今回思いがけず勧められて、これは歌う運命にあるんだなと(笑)。女性曲だけど、もし男性がこのような思いで歌ったらどうなるのか、僕なりの歌い方を今、探っているところです。『ニューヨーク~』のほうもリクエストをいただいて、これはぜひ本物を聴きたい!と思って、4月のクリストファー・クロスの来日公演を観てきました。自分でも今歌ってみて、素敵なメロディにどんどん心惹かれています」本コンサートならではのお披露目となるソロ曲とともに、悠未ひろとのデュエット曲『Somewhere』(『ウエストサイドストーリー』より)も予定している。宝塚歌劇団出身の長身スターである悠未と声を合わせてみて、「とても面白かった。新しいものが生まれそうです!」と手応えも上々。美麗テノールが誘う曲の新たな世界観をぜひ味わいたい。「ミュージカルや映画の名曲とともに、その曲を聴いた当時の思い出を振り返る…そんな素敵なコンサートになると思います」取材・文/上野紀子
2016年06月10日女優・上野樹里(30)の姉でシンガーソングライターの上野まな(33)が、31日放送のフジテレビ系情報番組『ノンストップ!』(毎週月~金9:50~11:25)に出演し、妹・樹里とロックバンド・トライセラトップスのボーカル兼ギター・和田唱(40)の結婚秘話を語った。樹里は初めて買ったCDがトライセラトップスの9thシングル「if」であるというほど同バンドのファンだったというが、まなは「(樹里は)音楽が好きで、(和田は)昔から自分の好きなバンドの一人だったのかなって」と発言。「大人になった時にそのバンドの方と再び出会い、『やっぱり私、この人たちの音楽が好き』って」と惹かれていったという。そして、2人の相性について「音楽をやっていてすごく刺激的。(樹里は)一般の方だと刺激が少なすぎて物足りなそう」「上野家はみんな口げんかが強く、負けん気は樹里が一番強い。年上の人だと引いてくれるというか、けんかにならずにすむと思うので、年上の方が合うと思っていた」と分析。さらに、「優しい一面とかっこいい芸術的な一面と持っているというのは妹と合いそう。いろいろ刺激的で、なおかつ優しくてけんかにならないお相手だったんじゃないか」と和田の魅力を語った。また、樹里の姑となる料理研究家の平野レミとの相性を聞かれると、「(樹里は)料理は好きで昔からいろんなものを作ったりしていたので料理上手だと思います。けっこう大ざっぱなところもありました」と共通点があると言い、「お似合いだなと思います」と話した。
2016年05月31日女優の上野樹里と、料理研究家でシャンソン歌手の平野レミを母に持つ「TRICERATOPS」のボーカル・和田唱が結婚したことが両事務所を通して発表された。上野さんのSNS上では早速、和田さんとのツーショットが披露され、ファンから祝福の声が上がっている。上野さんは、1986年5月25日生まれの兵庫県出身。2002年、NHK月曜ドラマ「生存 愛する娘のために」で女優デビューを果たすと、2003年のNHK朝の連続テレビ小説「てるてる家族」で三女を熱演。2004年には、主演映画『スウィングガールズ』が大ヒットを記録し、第28回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。一躍知名度を上げると、2006年には、フジテレビ系月9ドラマ「のだめカンタービレ」の野田恵を好演し、一気に人気爆発。その後も「ラスト・フレンズ」「素直になれなくて」など話題作に立て続けて出演し、2011年には「江~姫たちの戦国~」の江役で大河ドラマ初主演を務め上げ、実力派女優としてのキャリアを着実に積んでいる。2人は2015年秋からの交際を経て、5月26日(木)に入籍。両事務所からの発表では、連名で今回の結婚について「2人にとって、とても自然なことでした。そしてそのことにとても喜びを感じています」と心境をコメント。続けて「お互い支え合いながら 一歩一歩、前に進んでいこうと思っておりますので、皆様に温かく見守って頂けたら幸いです。ありがとうございます」と挨拶。また上野さんは、自身のインスタグラムでも結婚を報告。「ファンの皆さんのたくさんのお手紙やメッセージの中に、私のプライベートが充実しているのか、幸せな恋をしているのか、結婚しないで仕事をやって行くのか、などなど、ご心配とお気遣いをしてくださっていました。早く、皆さんに言いたくて言いたくて、やっと言えるタイミングが来て嬉しい限りです!」と、ファンへ報告できる喜びを噛み締め、「皆様、私は幸せです、そして、これから何事も、もっといいエネルギーでパワフルにがんばれそうですよ!」と幸せ宣言!そして「こんなに素敵なパートナーとこれから生きていけることは何よりの喜びです。そして、何事も超えていきます。どうぞよろしくお願い申し上げます」と、結婚への決意と想いを語った。また、和田さんとのツーショット写真を公開すると、ファンからは「のだめのときからかれこれ10年ファンです!おめでとうございます」「ぎゃぁー!!可愛い!!ステキな御夫婦本当におめでとうございます♪」「ツーショットありがとうございます!和田さんデレデレ!和田樹里ちゃんになったのですね!」と祝福の声が上がった。同居はこれからの予定で、挙式、披露宴は現時点で未定だという。(text:cinemacafe.net)
2016年05月26日女優の上野樹里(30)が26日、自身のインスタグラムを更新し、ロックバンド・トライセラトップスのボーカル兼ギター・和田唱(40)と結婚したことを発表した。上野は「この度、私は、和田唱さんと結婚しました!」と報告。「ファンの皆さんのたくさんのお手紙やメッセージの中に、私のプライベートが充実しているのか、幸せな恋をしているのか、結婚しないで仕事をやって行くのか、などなど、ご心配とお気遣いをしてくださっていました」と明かし、「早く、皆さんに言いたくて言いたくて、やっと言えるタイミングが来て嬉しい限りです!」とつづった。そして、「皆様、私は幸せです、そして、これから何事も、もっといいエネルギーでパワフルにがんばれそうですよ!」と幸せいっぱいにコメント。「人生は自分で設定して生まれて来るのかと思うほど、不思議と点と点が繋がり線になっていく経験をたくさんしました」と振り返り、「こんなに素敵なパートナーとこれから生きていける事は何よりの喜びです。そして、何事も超えていきます。どうぞよろしくお願い申し上げます」とつづった。両所属事務所も「2人は2015年秋からの交際をへまして、5月26日に入籍をいたしました」と発表。「同居はこれからの予定で、挙式、披露宴は現時点で未定」としている。
2016年05月26日新国立劇場で連続上演中のシリーズ“鄭義信三部作”、そのラストを飾る舞台『パーマ屋スミレ』が5月17日(火)に小劇場にて開幕する。劇作家・演出家の鄭義信が「激動の昭和の時代に翻弄された、庶民の姿を描きたい」として発表した三部作のうち、『パーマ屋~』は1960年代半ば、九州のとある炭鉱町を舞台に展開。そこで暮らす在日コリアンの炭鉱労働者の家族や彼らを取り巻く人々の、苦境に負けずに力強く生きる姿を、笑いと涙で鮮烈に綴った物語だ。理容室を営む須美役の南果歩、その姉・初美役の根岸季衣など、2012年の初演とほぼ同じキャストが揃うなか、須美の夫・成勲(ソンフン)役の千葉哲也、その弟・英勲(ヨンフン)役の村上淳が今回の再演に新加入。稽古場では、鄭の熱のこもった指揮のもと、激しくも温かい九州の方言が飛び交っていた。舞台『パーマ屋スミレ』チケット情報床屋椅子がひとつポツンと置かれた理容室、路地にある手押しポンプや共同便所など、稽古場に精密に建て込まれたセットから、1965年の炭鉱町の風情が存分に伝わってくる。理容室の座敷に祖父・洪吉(ホンギル)役の青山達三が横たわった状態で、鄭の合図で一幕の頭から立ち稽古が始まった。語り部となる中年の大吉(酒向芳)が登場し、空間を仰ぎ見ながら少年時代を懐かしむ。その穏やかな口調が引き出す郷愁に、早くもささやかな悲劇の匂いを感じて胸を突かれるが、少年大吉(森田甘路)のけたたましい登場とともに空気は一変。続々と生命力あふれるキャラクターが現れ、嵐のような勢いで観る者を巻き込んでいく。須美の妹夫婦(星野園美、森下能幸)がくりひろげる夫婦漫才調のやりとりに笑わされ、生活臭を漂わせた初美・根岸のたくましさ、不甲斐ない夫に怒声を飛ばす須美・南の気っ風の良さに圧倒される。負けじと声を張ってずる賢くかわす成勲の、千葉が見せる狡猾な表情も失笑せずにいられない。片足を引きずって歩く英勲だけは、村上が静かな笑みに諦観の色をにじませて独特の印象を残していた。ドラマの序盤、駆け抜けるような彼らのやりとりを鄭は楽しそうにみつめながら、「だんだんたっぷりと演じてしまっているから、もっと早く」とテンポの良さの重要性を強調。その一方で、根岸が三段落ちのようにして言葉をたたみ掛け、笑いを誘う場面では、「もっと三回目を長くねばって」と要求する。演出家が好む“くどい笑い”へのこだわりに応えるべく、根岸が何度もシーンを繰りかえし、周囲から爆笑を引き出していた。強烈な言葉の応酬、おおらかな仕種から感じとれるのは人間の底知れぬ強さ、突き抜けた朗らかさだ。だがその後に続く物語は、炭鉱事故で彼らの生活が打ち砕かれる様を厳しく映し出す。それでも鄭は、懸命に生きる人々の姿に必ず“笑い”をまとわせることを忘れない。『焼肉ドラゴン』、『たとえば野に咲く花のように』と続いて話題を集めた鄭義信の人間ドラマ、その最終章もやはり、胸をえぐる衝撃が待ち構えているに違いない。公演は5月17日(火)から6月5日(日)まで。前売りチケット発売中。取材・文:上野紀子
2016年05月06日佐々木蔵之介の主演舞台『BENT』が7月、世田谷パブリックシアターにて開幕する。【チケット情報はこちら】イギリス演劇の傑作と呼ばれる本作、その舞台となるのは1930年代のベルリンだ。ナチス強制収容所の過酷で絶望的な状況下においても、真実の愛を求め、人間としての誇りを失わずに生きた男たちの物語が展開する。これまでに刑務所(『ショーシャンクの空に』)や精神病棟(『マクベス』)といったタフなシチュエーションの舞台に挑んできた佐々木は、「またこういう芝居か…と」と苦笑を見せるが、すぐさま背筋を正して静かに意気を込めた。「でもやっぱり、自らこういった芝居を選んでいるのかな、ってことに最近気づきました。新しい世界への、演劇を信じる挑戦ですね」ナチスの迫害を受けた同性愛者の悲劇として知られる本作だが、「性別は関係なく、究極の中だからこそ見えてくる愛の物語」ととらえている。厳しい監視のもと、彼らは命をかけて、イマジネーションで愛を通じ合う。「台本を読んで、コレ、本当にお客さんにわかってもらえるのか!?自分がやることで伝わるのか!?と正直、思いました。でも前作の一人芝居『マクベス』で、多役を担う中でマクベス夫人も演じたんですが“色っぽかった”と言ってもらえたんですよ。僕がやっているのにそんなわけがない(笑)。でもそれはお客さんの想像力で、そんなふうに見てもらえたんだなと。ならば、『BENT』の男二人の関係も、極限状態の中でこの二人がどうやってお互いを抱きしめ、愛を感じているのか、きっと理解してもらえるんじゃないかと思うんです」佐々木が扮するマックスと愛し合うホルスト役は、「大好きな舞台俳優のひとり。板(舞台)の上で自分自身を解放できて、その役を生きることができる役者」と信頼を寄せる北村有起哉だ。さらにもう一人、芝居作りの強力な相棒となるのが、演出家の森新太郎である。「森さんと同じ劇団(演劇集団円)の橋爪功さんとご一緒した時に、『今度、森さんと舞台をやるんです』と話したら、『アイツ、しつこいぞ!』って何度も言うんですよ(笑)。だから稽古場では相当しつこいんだろうなと思って。でも僕はしつこい稽古は嫌いじゃない。勉強家で、演劇が本当に好きな人だと思いますね。演劇は時間をかけて作っていくのが一番大切だと思うので、森さんと組めることは幸せです」自らを追い込んでこそ、舞台に立つことができる。その覚悟をつねに感じさせてくれる役者、佐々木蔵之介の“演劇を信じる力”に共鳴したい。「人を愛し、愛される感覚が、極限状態だからこそ強烈に、衝撃的に突き刺さってくる。それを劇場で感じてほしいですね。“目の前で今、何かすごいことが起こっている!”と体感できるのが演劇の醍醐味。その、愛の核となるものが見られたらなと。皆さんと一緒に、僕もそれが見たいです」取材・文上野紀子衣裳協力Vlas Blommeスタイリスト勝見宜人(Koa Hole inc.)
2016年04月25日“心理スリラー・ミュージカル”という異色の魅力を持った舞台『ブラック メリーポピンズ』、その再演が5月、東京・世田谷パブリックシアターにて開幕する。韓国創作ミュージカルをもとに2014年に上演された日本版初演は、原作により深みを加えてシャープに仕上げた田村孝裕の上演台本、ミステリーの興奮を引き出す小野寺修二の振付などを演出の鈴木裕美が巧みにまとめ上げ、高い評価を得た注目の舞台。14年前に起った火事の記憶を失った4人の養子たち、失踪した家庭教師メリーの衝撃の事実が明かされていく物語だ。今回、再び総指揮をとる鈴木、メリー役の一路真輝、養子の兄弟を演じる小西遼生、上山竜治、良知真次ら初演メンバーが再集結するなかで、新加入となる妹アンナ役の中川翔子に熱い視線が集まっている。ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』チケット情報「チームワークでひとつの作品を作り上げる、その役として生きるということ自体が初めての世界で、とても新鮮です。ミュージカルは明るく楽しいというイメージがあったけど、これは孤独や哀しみ、心に負った傷とどう向き合うかといった作品。でもそれだけじゃなく、子供時代のシーンでは兄弟たちが笑顔で、幸せを噛み締める瞬間もあります。そのギャップがまた面白く、より哀しみが深まる繊細な舞台。すべてが学びの時間になりそうで、脳が『吸収したい!ゴクゴク飲みたい!』と言ってます(笑)!」(中川)長兄のハンス役を演じる小西遼生は「中川さんが入ることで、またゼロから作り上げようという新鮮な気持ちになれる。新たな原動力ですね」と妹に期待を寄せる。鈴木は「役は人と人との関係性からできてくるもの。“初演はこうだった”は禁止するところから始めます」と朗らかにひと言。それらの言葉を受けた中川からは「コミュニケーションが大事なんですね。脱・コミュニケーション下手!」と熱い誓いが飛び出した。「兄弟3人にとってはアンナを必死で助けようとする気持ちが大事なので、中川さんは“守ってあげたい妹”として気持ちが作りやすい。僕の想像ですが、中川さんはたぶん、とても自由に羽ばたく気がします。楽しみなのは、ほかのふたりの兄弟(上山、良知)がどういう変化を起こすのか。きっとすごく変わるんじゃないかな(笑)」(小西)「ソ・ユンミさんという才能ある作家が書いた、若いエネルギーにあふれたお話です。5人が演じるどの役も俳優の持つすべてを使わないとこなせない舞台。とにかく俳優を観ていただきたいですね」(鈴木)盤石のキャスト陣に迎えられる緊張はあれど、中川は「急にイケメン兄弟に囲まれて、まるで今の女子向けゲームでいきなりフィーバーモードみたいな感じですよね!?(笑)。素直に『お兄さん、教えて!』とぶつかっていきます!」と、持ち前の元気パワーで前進宣言。新たなアンサンブルで再生する心理スリラー・ミュージカル、期待の全容がまもなくお目見えする。東京公演は5月14日(土)から29日(日)まで。その後、兵庫、福岡、愛知でも公演。取材・文上野紀子
2016年04月20日演出家・蜷川幸雄がシェイクスピア戯曲37作品の上演を目指す“彩の国シェイクスピア・シリーズ”。その第32弾『尺には尺を』で、藤木直人が初のシェイクスピア舞台に挑むこととなった。昨年、蜷川の演出舞台『海辺のカフカ』に出演し、ロンドンやニューヨークほかを巡るワールドツアーを経験。長いツアーが終わる直前に、本作への出演が決まったという。「尺には尺を」チケット情報「ようやく『海辺~』が終わる……と思っていた時だったので、ツアー最終のソウル公演の千秋楽は「でも、まだ終わらないんだな…。半年後にはもうシェイクスピアの舞台に立っているの!?」という気持ちでした(笑)。お客様の前で演じるのは当然エネルギーがいるし、緊張感もありますけど、何よりも蜷川さんの前で演じるほうが緊張するんですよ(笑)。だから、またあの稽古場の緊張感を味わうのか…って思いましたね」喜劇であると同時に、衝撃的な展開から問題劇とも呼ばれる本作。藤木が演じるのは、侯爵(辻萬長)の代理でウィーンの統治を任された青年アンジェロだ。とくに性道徳について厳しく市井を取り締まるなか、アンジェロは不貞の罪を犯した貴族クローディオに死刑を宣告する。しかしクローディオの妹イザベラ(多部未華子)に恋をしてしまい……。「内容が気になってしまって」という藤木は、上演台本を渡される前に、戯曲を購入して読んでみたそうだ。「400年前の本であって、文化も大きく違い、独特な言い回し…。やっぱり難解というイメージがありました。しかも、その後に上がってきた上演台本が、内容は同じでも表現がことごとく違っていたんですよ(笑)。そこが翻訳劇の難しいところだなと。英語の台詞という正解があるのに、異文化である日本語に置き換えて上演するということ。でも、その挑戦を蜷川さんはずっと続けてきて、いろんな意見を言われながら闘ってきて、世界に認められた。『海辺~』のワールドツアーでは行く先々で熱狂的に迎え入れてもらったんですが、それは蜷川さんのやってきたことの証なんだなと感じましたね」前作と違い、今回は主演として稽古場の中心に立ち、蜷川の指揮を真っ向から受けとめる。「蜷川さんがどのような切り口で演出されるのか、その楽しみはあります。まあ、自分が出ない立場だったらその楽しみだけで済んだんですが(笑)。打たれ弱いんですよね」と苦笑いしつつ、覚悟は決めている。「蜷川さんが『この役を藤木がやってもいい』と言ってくださったのだから、応えるしかない。ハードルは限りなく高いし、逃げ出したくなるようなことが待っているでしょうけど、通過すべき時間なのかなと思います。あまり台詞を“独特で難解”と意識し過ぎず、自分の言葉として発せられるように頑張っていきたいと思います」公演は、5月25日(水)から6月11日(土)埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール、6月17日(金)から19日(日)まで福岡・北九州芸術劇場 大ホール、6月24日(金)から27日(月)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。チケットは発売中。取材・文:上野紀子
2016年04月11日中谷美紀の主演舞台『猟銃』が4月2日(土)、東京・渋谷のPARCO劇場にて開幕する。2011年に中谷が初舞台を踏み、絶賛を受けた作品の再演である。井上靖の恋愛短編小説を原作とした本作は、ある男性・三杉穣介の13年にわたる不倫愛を巡り、彼の妻みどり、愛人の彩子、そして愛人の娘である薔子の、三人の女性の三杉へ宛てた手紙によって構成されている。【チケット情報はこちら】舞台上では、カナダ人俳優のロドリーグ・プロトーが一言も発することなく身体表現のみで穣介の役を演じ、中谷がひとりで、三人の女性それぞれの手紙に綴られた真意を、巧みな衣装替えを見せながら体現。三人三様の圧巻の人物描写を成し遂げた初演舞台について「美紀さんのキャリアの中でも、日本の演劇界にとっても大きな出来事だったと思います」と語るのは、意気を上げて再演に臨むカナダ人演出家のフランソワ・ジラールだ。「1時間30分のテキストを暗記すること、まずはそれが大きなチャレンジだったでしょう。彼女はそこから大きく成長していきました。本当に人を惹きつける力を持った女優さんだと思います。それは美とかを超越して……もちろん表面も美しいんですが、魂が深いんですね。美紀さんは英語もフランス語も堪能で、考え方もすごく現代的。それと同時に、日本の伝統に対しても深いつながりを持っていて、そのことは彼女の作品すべてから感じられます。探求し続ける真のアーティストである美紀さんと一緒に、初演以上に記憶に残るパフォーマンスを伝えることを目指しています」再演に向けて、初演とは異なるさまざまなアプローチを試したという。実際の舞台では、演じる中谷の背面後方にプロトーが位置しているが、稽古場では両者が対面しての稽古が進められた。「お互いにとってより深く人物を理解するためにやっています。もちろん劇場に入ったらプロトーは後方に戻りますが、美紀さんは彼のパフォーマンスを鮮明に覚えているので、三人の女性が誰に対して手紙を書いているのかが、よりはっきりわかると思います。また、実際の動きは一回忘れて、両者ともに言葉のままに動くという稽古もやってみました。二人のつながりを育てるために。それは見えないもの、説明のできないものですけれど、そういった感覚が舞台上では魔法を生み出すと私は思います。結果的にふたりとも、以前とは変わりましたから」美術、音楽など作品自体は初演と同じでも、その日の観客のエネルギーはけして同じではない、とも強調する。衝撃の舞台デビューから4年。進化を止めない中谷美紀の魅力を再確認するとともに、作品を再発見する喜びもぜひ、生の空間で受けとめたい。「台本を再読して、あらためてハッと気づいたのが言葉の少なさでした。つまり、観客に考えさせる力を持ったテキストだということです。初演を観た方も、小説を知らない方も、ぜひ井上靖の傑作を発見しに来てください」舞台『猟銃』は4月24日(日)まで東京・PARCO劇場で上演。その後各地巡演。取材・文:上野紀子
2016年04月01日3月25日の開幕を前に、舞台『イニシュマン島のビリー』のゲネプロ(最終リハーサル)が東京・世田谷パブリックシアターにて行われた。イギリス演劇界の鬼才マーティン・マクドナーが、自らのルーツであるアイルランドを舞台にして描いたブラック・コメディの傑作である。翻訳戯曲の演出で多くの秀作を生み出してきた森新太郎が、自身3度目となるマクドナー作品を手掛けることも注目された話題の舞台だ。舞台『イニシュマン島のビリー』チケット情報黒を基調としたステージ上に現れるのは、アイルランドの小島・イニシュマン島の田舎にある殺風景な店や、うら寂しい夜の海岸など。殺伐とした空気感が、波の音や照明効果から伝わってくる。そこで暮らす生まれつき左手・左足が不自由な少年ビリー(古川雄輝)、美少女だが言動があまりに暴力的なヘレン(鈴木杏)、キャンディに執着しているヘレンの弟バートリー(柄本時生)。彼ら若者たちは、島の外に飛び出すことを願っている。方や、店を営みながら孤児のビリーを育ててきた老姉妹(平田敦子、峯村リエ)、ゴシップ集めを生きる糧としている老人(山西惇)と彼の90歳の母親(江波杏子)、男やもめ(小林正寛)、医師(藤木孝)ら大人たちは、島という小さな世界で思うままに感情をまき散らし、時にアイルランドに対するささやかな誇りに満たされて生きている。停滞していた彼らの日常は、「ハリウッドから撮影隊がやってきた」というゴシップ屋老人のトップニュースにより揺らぎ始める。ひとりとしてアクの弱い人間はいないマクドナーの登場人物たち、それぞれにピタリとハマった理想のキャスティングにまずは興奮させられる。荒びれた店にたたずむ平田、峯岸の老姉妹は、まったく似ていない風貌での滑稽なやりとりで失笑を誘いながら、ビリーに注ぐ愛情で強固なつながりを見せる。傑出していたのが山西の怪演だ。諍いを掘り起こし、人々を困惑させるのが大好物の“困った老人”を喜々と表出する様が、憎らしくも愛おしく、笑いを抑えられない。鈴木の思い切りのいい表現もいい。哀しみと鬱憤を詰め込んだ暴力、暴言の数々がなぜか見るものの頬を緩ませ、彼女のいらだちに共鳴させる。柄本は独自の個性を存分に発揮した役どころだが、とぼけ顔のバートリーの胸の内に起こった静かな反乱を丁寧に見せていた。ビリー役の古川はハンディキャップを表現しながら、序盤は傍若無人な周囲の人々を穏やかにみつめ、つましくたたずむ。その謎めいた存在が周りの騒音にあおられて徐々に血や肉をつけ、感情を吐露していく様が面白い。ビリーの野心、歓喜、葛藤、失望を繊細につむぎ出す好演を見せた。人々の心に巣くう寂寥感、そこから沸き起こる暴力をユーモアで描き切るマクドナーの世界観。その衝撃に魅せられた森が、生にもがく人間たちを深く温かい眼差しでみつめ、鮮やかに息づかせている。ラストに渡された余韻の意味をじっくりと考えたい、そんな舞台がまたひとつ誕生した。公演は4月10日(日)まで世田谷パブリックシアター、4月23日(土)・24日(日)に梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。取材・文:上野紀子
2016年03月28日一昨年の夏、PARCO劇場の伝説の舞台『ショーガール』が新キャスト、新演出でにぎやかに復活した。もとは福田陽一郎作・構成・演出、木の実ナナ&細川俊之出演で1974年から15年間にわたり上演された人気シリーズで、その元祖にインスパイアされた三谷幸喜が大いなるリスペクトを込めて再構築。三谷の絶対的な指名により誕生したのが川平慈英とシルビア・グラブの新コンビである。福田作品の持つ圧倒的な華はそのままに、小粋な笑いをふんだんに盛り込んだ三谷版『ショーガール』。大人の観客をおおいに満足させたステージが早くもこの3月、PARCO劇場に帰ってくる。舞台『ショーガール』チケット情報「前回、観に来てくださった中井貴一さんが「海外に行かなくても、こういうショーが渋谷で見られるんだ!」って言ってくださったんですよ。嬉しかった!やっぱり『ショーガール』=ロングランだから、一回こっきりじゃ許されない。そのブランドを継続していかなくてはいけないと思っています」(川平)「本編とショーで構成されたステージで、とくに歌と踊りの部分に関しては皆で一緒に作り上げた感がありましたね。作曲の荻野清子さんも含めて「もっとこうしたい」と4人で話し合ってね」(シルビア)本編と呼ばれる芝居部分は、川平扮する探偵のもとに謎の女が現れ、ある地味な女の身元調査を依頼することから始まるミステリー仕立てのラブコメディ。シルビアは謎の女と地味な女の二役を演じている。「地味な女!?うわ~三谷さん、やっぱり楽をさせてくれないな!と思いました(笑)」(シルビア)「派手だからね~…って人のこと言えない(笑)。僕の場合、ここ何年も要求されていなかった二の線を期待されましたね。ニヒルで、ハードボイルドで…という像を作り上げるのは相当大変でした」(川平)三谷がふたりを「ポジティブな見た目とは裏腹の、とてもネガティブな人たち。客観的に自分を見られる深さがある」と語っていたのは一昨年のこと。彼らの本質を突いたキャラクター設定に対して、シルビアは「人が思う以上に“気にしい”で、日本人の心を持っているんです」とうなづく。川平は「役者はだいたいネガティブでコンプレックスの塊ですよ。じゃないと向上心が生まれない」と笑いながら、さっそく「今回は楽器をやりたい!シルビアがベースで俺がギターね」と新たな野望を宣言した。シルビアも「前回、慈英がちょっとタップを踏んだから、今回は私も…。ショーをバージョンアップさせたいよね」と負けていない。ふたりの情熱がどのように進化した再演を生むのか、見届けたい。「三谷さんは単なる刷り直しが大嫌いな人。絶対に何か隠し球があると思いますよ!」(川平)公演は3月13日(日)から22日(火)まで。チケット発売中。取材・文上野紀子
2016年02月29日西田シャトナー伯作・演出によるムッシュ・モウソワール第2回“来日”公演『レッド・ジャケット』が5月、草月ホールにて上演される。ムッシュ・モウソワールとは西田が生み出した「妄想をテーマにした新しいフェイクコメディ」シリーズで、「フランスからやってきた日本語の堪能な妄想の紳士たちが、妄想力の限りを尽くして表現する」という設定のもとに繰り広げられるステージだ。「ライバルはシルク・ド・ソレイユですね」と飄々とつぶやくオラキオ伯に、平野良伯と宮下雄也伯が爆笑で応える。昨年の第1回来日公演から連続出演となる3人に、謎めくムッシュ・モウソワールの魅力、今作への思いを聞いた。ムッシュ・モウソワール第二回来日公演『レッド・ジャケット』チケット情報「5人の出演者が出ずっぱりの舞台で、細かなきっかけがたくさんあるので、ずっと集中していないとダメなんです。中身はすごく繊細なんだけど、それをパワフルに、ダイナミックに見せないといけない。最後に“なんかスゲーものを観たな!”と思ってほしいんだよね」(オラキオ伯)「そう、上演する演目のストーリーの面白さもあるんだけど、やっぱり5人の熱量ですよね。人が本気出してフルパワーで演じているところが、観ていて気持ちいいんじゃないかな」(平野伯)「試合みたいな舞台だよね。前回の最初の通し稽古で、あまりにも大変すぎて全員瞳孔が開いて酸欠になっていました(笑)。今回もそうなるんじゃないですかね」(宮下伯)シンプルな舞台上、俳優陣が次々に繰り出す全身を駆使した表現によって、観客のイマジネーションが刺激される。その場にいる全員が“妄想の共犯者”となって劇が進行していくスタイルは、西田の舞台作りの真骨頂だ。演劇の原点ともいえる面白さが注目され、第1回来日公演は連日大盛況。あまりの反響に「DVDで残したかった。まさかこんなに話題になるとは思わなかったから」とうなずき合う3人だが、すぐさま、「だけどムッシュ・モウソワールほど、生で観たほうがいい舞台はないと思います!」と頼もしく宣言した。「妄想がただの妄想で終わらず、現実社会にも影響してくるんです。現実の自分がその妄想を経たことで、成長していく。ただ楽しいだけで終わるのではなく、今回もそんなことを感じとれる作品にしなきゃいけないなと思っています」(オラキオ伯)「シャトナー伯はものすごい少年なんです(笑)。何にでもムキになるシャトナー伯に、僕らもムキになって返していく。そのエネルギーをお客さんに向けて放ちます。遊園地に来た気分で観ていただければ、きっと心がスッキリすると思いますよ」(宮下伯)「そう、子供がそのまま大きくなったような方なので、男性のお客さんのほうが観ていて“あ~わかる、わかる!”となるんじゃないかな。ぜひカップルで来ていただいて、観終わった後は舞台の勢いのままに愛の告白をされることをお勧めします(笑)」(平野伯)妄想を現実に変える力が潜む、噂の舞台。その威力をぜひ劇場で確かめたい。公演は5月11日(水)より草月ホールにて。チケット一般発売は3月12日(土)より。取材・文上野紀子
2016年02月23日『CATS』『オペラ座の怪人』を生んだアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲のミュージカル『Tell Me on a Sunday~サヨナラは日曜日に~』が6月、日本で初めて上演される。1982年にロンドン初演、その後ブロードウェイでもヒットを飛ばした本作は、愛と夢を求めてNYへやってきた英国女性の自立を描いた一人芝居。サラ・ブライトマンをはじめとする、世界の名だたる女優たちが演じてきた珠玉のソロ・ミュージカルだ。その日本初演に、女優活動20周年を迎えた濱田めぐみが挑むこととなった。ミュージカル『Tell Me on a Sunday~サヨナラは日曜日に~』チケット情報「まず最初に“ロイド=ウェバーさんの作品なんだ!”という点に心惹かれたんです。また、よく耳にしていた楽曲がこの作品のナンバーだったということもあり、やろう!と意気込んだんですが……。ん?これって一人芝居なんだ…、一人って大変じゃないの!?って後になって気づいて、焦り出しちゃって(笑)」主人公の女性エマを「普通に悩んで、恋愛して、失恋して、自分を見つめ直して、夢に向かってもう一度行こう!とする、本当に普通の女性」と分析し、自身にとっては「その普通がこれまでにないチャレンジ」と真摯に見据える。「今までは私、ケッタイな役を演じることが多かったじゃないですか(笑)。だから逆に新鮮だし、遠い役でもあるんです。舞台の上が私の日常だったから、普通のことを舞台上でやるというのは、私にとっては普通じゃないんですよ。とても共感するし、頭で理解はできるけれど、その状況をわかってもらえるように演じるのは大変なこと。ロイド・ウェバーさんの素敵な曲の流れに乗って、なんとかこの女性のリアリティを優しく、ふんわりと描きたいなと思っています。彼女が傷つきながら経験することによって、観客の皆さんも見ぬ振りをしていた自らの傷を認め、それをひとつ乗り越えていく。そんな流れになるといいな」演出・翻訳・訳詞を担うのは、濱田が「劇団四季時代からの仲間」と信頼を置く演出家、市川洋二郎だ。オリジナル戯曲が持つメッセージをダイレクトに伝えたい、その合意から共同作業がスタートしたという。「彼もいろいろと試してみたいものがあると思う。少人数のチームだからこそできる挑戦だと思います。曲負けしないようにしないと~!」とチャーミングな笑顔で奮起一発。いくつものグランド・ミュージカルで輝きを放ってきた濱田めぐみが、プライベート・ルームで素顔のつぶやきを繰り広げる。そんな愛おしい瞬間が詰まった作品に出会えそうだ。「観終わった後、明日への一歩を踏み出す勇気がわいて、さっぱりした気持ちになっていただけたら嬉しいですね。私にとっても、何かあった時に曲を歌ってみたいな…と思う、いつもそばに置いておきたい作品になるような気がします」公演は6月10日(金)から26日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて。チケットの一般発売は2月13日(土)午前10時より。チケットぴあではインターネット先行を実施中、2月3日(水)午後11時59分まで受付。取材・文上野紀子
2016年02月01日中谷美紀の初舞台として注目された『猟銃』(2011年初演)が今春、東京・PARCO劇場にて再演される。井上靖の短篇恋愛小説を原作とした舞台は、ある男性の13年にわたる不倫愛を、妻、愛人、愛人の娘の、三人の女性がしたためた手紙によって語り継いでいくものだ。中谷は年齢も外見も違う三役をひとりで担い、見事な変貌を見せて時にしなやかに、時に激しく、彼女たちの心の叫びを伝えていった。確かな存在感を示した圧巻の演技は高い評価を得て、その年の紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。映画監督であり、オペラやシルク・ドゥ・ソレイユの舞台なども手掛ける演出のフランソワ・ジラールも「これまで作ってきたすべての作品の中で、一番美しくパーフェクトな初日の夜でした」と初演での中谷を絶賛する。舞台『猟銃』チケット情報「初演では、あの時点でできる最大限のことを、これ以上何も残らない…というくらいに集中して演じました。ニュートラルな気持ちで、三人の女性をみつめる作業をしたと思います。衣装の着替えもすべて舞台上で行って…。再演にあたりもう一度あの作業をやると思うと、とても恐ろしい(笑)。心して臨まなければいけないなと思っています」(中谷)「映像は一度完成させたらその状態でキープされますが、演劇は戻ることができます。そこが演劇の美しいところですね。もう一度自らに問いかけ、違う角度、違うアイデアから作品を深く突き詰めていくことができる。井上靖さんはこの物語をとてもシンプルな構成で書いています。私はそれに添って派手な効果を施すことなく、テキストにあるエッセンスをお客様へ伝えていくだけです。それは素晴らしいパフォーマーがいて成り立つこと。また美紀さんとこの作品に挑めるのは、本当に喜ばしいことです」(ジラール)周囲を驚かせた初舞台の後、中谷は群像劇『ロスト・イン・ヨンカーズ』(13年)、二人芝居『メアリー・ステュアート』(15年)と話題作に出演し、舞台ならではの魅力と実力にいっそう磨きをかけていった。「ほかの俳優さんたちとご一緒させていただいたことで、あらためて『猟銃』を振り返ってみた時に、もっと言葉に厳密に取り組んでもよかったかな…という思いがありました。一つ一つの言葉をより大切に演じたい。言葉に含まれている背景を具体的に自分の中でイメージして、お客様に伝えられたらと思っています」(中谷)「美紀さんの中で4年間寝ていた三人の女性を起こしてみて、どう反応するかを見ていきたい。気づかぬところで人物たちが育っていて、前回見抜けなかった彼女たちの別の一面に気づけるかもしれません。美紀さんの新しいスキルも楽しみにしていますよ」(ジラール)男性の役を身体表現のみで演じるカナダ人のフィジカル・アクター、ロドリーグ・プロトーも初演に引き続いて合流。舞台女優・中谷美紀の出発点となった衝撃の舞台、そのさらなる完成形をぜひ見届けたい。東京公演は4月2日(土)から24日(日)まで。その後各地巡演。東京公演のチケット一般発売は1月23日(土)より。取材・文上野紀子
2016年01月22日上野「文化の杜」新構想実行委員会は、上野地区の文化施設を網羅した共通入場券「UENO WELCOME PASSPORT」を1万冊限定で発売する。販売および利用可能期間は2016年1月2日~5月31日。価格は2,000円。同パスポートの利用対象となるのは、東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館、上野動物園、下町風俗資料館、旧岩崎邸庭園、東京都美術館、東京藝術大学大学美術館の合計8施設。これらの施設で行われる常設展等に利用期間中各1回入場できるほか、東京文化会館、国立国会図書館国際子ども図書館、上野の森美術館の3館では、パスポート持参者に先着でポストカードを配布する。全施設を一般入場券で利用した場合の入場料は合計で最大4,400円となり、パスポートの利用で2,400円が値引きされる計算になる。また、このパスポートには、江戸時代に流行したイラストをヒントに言葉を連想して当てるなぞなぞ「判じ絵」を模したスタンプラリーも付属。5施設以上を回ると先着でスタンプラリーオリジナルプレゼント「立版古」が進呈される。
2015年12月18日岩松了作・演出、小泉今日子主演の舞台『家庭内失踪』が来年3月から4月にかけて、東京・本多劇場ほか全国各地にて上演される。倦怠期の歳の差夫婦の日常を描いた新作は、岩松の岸田國士戯曲賞受賞作『蒲団と達磨』(1989年)の後日潭ともいえる舞台とか。舞台『家庭内失踪』チケット情報「『蒲団~』は先妻の娘が結婚した日の、夫と若い後妻の話でした。今回はその先妻の娘が出戻ってくる。後妻は夫との性生活に耐え難いものを感じていたが、定年退職をむかえた夫が不能になった頃から妻の心にある思いが沸き上がり……という話を書きたいなと。なんか僕、夫婦の話を永遠に書いている気がします」。そう苦笑いする岩松の横で、小泉も期待の笑みを浮かべる。2000年の舞台『隠れる女』からいくつかの共同作業を重ねてきたふたりに、新作への思いを聞いた。「夫婦って、どこか嘘や矛盾が固まったものという気がして、汲めども尽くせぬものがあるんでしょう(笑)。今回は、小泉さんと風間杜夫さんが演じるメインの夫婦の話と、出戻ってくる娘夫婦の話。それに、妻には失踪したと思わせて、実は家の近所に住んで夫の帰りを待つ妻を見続けている…という謎の男を僕が演じるんですが、そういった人間たちがうごめいている、錯綜していく様子を描きたいと思っています」(岩松)小泉の役柄については「これまではキョンキョンに生活感のある役を書いてこなかったので、『あなた、お茶』みたいな妻の役も面白そうだなと」と岩松。小泉も「そう、今まではちょっと“夢の女”みたいな役が多かったですもんね」と頷く。「しかも後妻という微妙なシチュエーションがいいでしょ?」(岩松)「ちょっとヤラしい感じですよね。フフフ、楽しみ!」(小泉)。愉快な企みを共有するふたり、そんな雰囲気の楽しい掛け合いが続いた。「小泉さんは、女優として“できあがっていない良さ”があって、そこがいい。僕の芝居は軸がしっかりしている人は困るというか、浮遊していないとダメなんです」(岩松)「岩松さんの書く女の人自体が、ちょっと謎めいていて変わっていますよね。でも普通に生きている人は皆、そうだと思うんです。たとえば、相手と言葉を交わしていても、口から出ていることとまったく別の感情がお互いの頭の中で生まれている状況は、実生活であると思うんですね。舞台上で演じる時にそういった感覚になることはめったにないけど、岩松さんの芝居では起こり得るんです。すごく不思議で、面白い」(小泉)岩松は「とにかくヘンな話になると思いますよ」と強調しながらも「よくよく考えればヘンじゃない。日常生活とはヘンなものだから」。夫婦という形態の男女、それぞれの秘めた思惑が時に笑いを呼び、時に緊迫した空気を生む。独特の岩松ワールドの新展開に注目したい。公演は3月11日(金)から23日(水)まで東京・本多劇場にて。その後、大阪ほか全国を巡演。チケットぴあでは先行抽選を実施中。東京公演は12月13日(日)午後11時59分まで、大阪公演は12月14日(月)午前11時まで受付。取材・文上野紀子
2015年12月11日長塚圭史作・演出、古田新太主演の舞台『ツインズ』が12月6日(日)、東京・PARCO劇場にて開幕する。『LAST SHOW』(2005年)以来、実に10年ぶりの両者のタッグが話題のほか、多部未華子、りょう、石橋けい、葉山奨之、中山祐一朗、そして『SISTERS』(2008年)に続いての出演となる吉田鋼太郎と、魅力の顔が揃った注目作である。気になる長塚の新作について「圭史君の作品では『SISTERS』が最高傑作だと思っているんですが、あの系統ですね」と語る吉田に、稽古場にて話を聞いた。舞台『ツインズ』チケット情報「個々のシーンは過激なのに、作品の根底に流れるものは静けさなんです。そこが怖い。テンションの高い題材を、緩やかに、穏やかに書いていく。長塚圭史がまたひとつ成長したように感じました」時代は現代なのか、近い未来なのか。海辺の家に集まった人々の会話を追ううちに、彼らが家族であることがわかってくる。一見たわいもない言葉のやりとりにしばしば頬が緩むが、つねにじんわりと場を覆うのは妙な緊迫感だ。「ゆっくりと彼らは破滅に向かって動いている。そんな時間が取り囲んでいますよね。この海はかなり汚染が進んでいるのかもしれない。危険区域に近い海なのか……、そこはあえてはっきりさせていないんです。会話には謎が散りばめられていて、観る者にどうとらえますか?と投げかけ、本当の現実を見てほしい、目をそらしてはいけないのでは?と突きつけている気がします」吉田が演じるのは一家の長男であり、古田扮するハルキの兄リュウゾウだ。海に消えた妹のことを思い、海に還る日のことを夢見ている…、そんな不思議な一面をのぞかせる。「圭史君が俺に書く役には、いつも狂気の部分があるんですよ(笑)」立ち稽古はハルキを中心とした諍いのシーンから始まった。物が散乱している室内で、激しい言葉を重ねる古田がいる。吉田はそれをいさめるでもなく諦観の様子。ひょうひょうと割って入る中山は、普通のようでどこか不気味な存在だ。多部扮するハルキの娘イラは、傍若無人な父親のふるまいに呆れ、思いもかけない行動に出る。古田の怪演に爆笑した後、多部の動きにあっと息を飲んだ。空気の切り替わりが激しいこのシーンを、長塚は多方向からじっと見つめて「じゃあ、もう一度」。四度は繰り返しただろうか。「すぐに結果を求めず、じっくり確実に進めています。不協和音を抱える人たちのドラマだけれど、心地良く、美しい。長塚圭史の独特の世界をきっちりお見せしたいと思います」(吉田)不穏だけれど心地良い。矛盾をはらんだ寓話から受けとめるものは、現実を知る覚悟かもしれない。東京公演は12月6日(日)から30日(水)まで。その後、福岡・新潟・長野を巡演。取材・文上野紀子■吉田鋼太郎 TV出演情報12月4日(金)夜11:00~TBS「A-Studio」
2015年12月03日松坂屋上野店(東京都台東区上野)は12月2日~15日、同店本館地下1階・5階・7階にて、「冬に楽しむチーズフェア」を開催する。○チーズメニュー約30種類が勢ぞろいするチーズフェアクリスマス会や忘年会などパーティーシーンの増加もあり、チーズの需要がもっとも高まるのは12月だという。今回が初開催となる同フェアでは、チーズを使った和惣菜、中華惣菜やお寿司、パンなど、多彩なチーズメニュー約30種類が勢ぞろいする。メニューの一例は以下の通り。"揚出し豆腐×チーズ"の美濃吉「揚出し豆腐和風ぐらたん風」は、揚出し豆腐に赤みそ、ニンジン、南瓜、さらに白みそをオン。その上にチーズをトッピングして焼き上げている。1人前540円で、各日限定30。販売場所は、地下1階。"寿司×チーズ"の北辰鮨「手まりすし」は、明太子、サーモン、漬けまぐろ、えびかつ、オニオンスライスなどを使った手まりすし。1食540円で、販売場所は地下1階。"すき焼き×チーズ"の浅草今半「チーズ入りすき焼巾着弁当」は、揚げの巾着の中にすき焼きの具材とスライスチーズがイン。1,512円で、各日限定10。販売場所は地下1階。"中華春巻×チーズ"の赤坂飯店「チーズ入り春巻」は、ワインに合うよう具材をブラックペッパーで味付けしたチーズ入り中華春巻き。好みでチリソースをつけて楽しめる。価格は1本150円。販売場所は地下1階。"えびマヨ×クリームチーズ"の聘珍樓「クリームチーズ入りエビのマヨネーズあえ」は、えびマヨにクリームチーズを練り込み、コクのある味に仕上げたという。1パック810円で、各日限定30。販売場所は地下1階。"完熟トマト×麻婆豆腐味チーズ"のアルサスローレン「完熟トマトのフロマージュ」は、完熟トマトカンパーニュ生地に麻婆豆腐味のチーズを包み赤唐辛子をトッピング。価格は324円。販売場所は地下1階。※価格はすべて税込
2015年11月30日りそな銀行は24日、タリーズコーヒーを併設したコラボレーション拠点「CAFE&BANK」として東京の上野支店を一部リニューアルしオープンした。○タリーズコーヒー上野御徒町店内のiPadでりそなのお得な情報や各種金融情報を閲覧りそな銀行とタリーズコーヒー、それぞれを利用している顧客にとって快適で、利便性の高い空間を提供するという。タリーズコーヒー上野御徒町店内には、Free Wi-Fi サービス「tullys_Wi-Fi」が導入され、客席に設置されたiPadにより、りそな銀行のお得な情報や各種金融情報を自由に閲覧できる。りそな銀行では「ゆっくりとくつろぎながら、当行の売れ筋商品などお得な情報を見ることができる。先日、印鑑なしで口座が開設できる豊洲支店をオープンしたが、今後もいろいろなコンセプトでお客様に受け入れていただける店舗を検討していく」としている。店舗外観には、りそなグループのコミュニケーションキャラクター"りそにゃ"と、タリーズで人気のテディベア"ベアフル"が描かれており、顧客を出迎える。○店舗情報所在地:東京都台東区上野五丁目25番11号営業時間:(りそな銀行上野支店)窓口営業時間…平日/9時00分~17時00分、ATM営業時間…平日/7時00分~23時00分・土/7時00分~23時00分・日祝/8時00分~23時00分(タリーズコーヒー上野御徒町店)全日/7時00分~21時00分
2015年11月26日三重県伊賀市と伊賀上野NINJAフェスタ実行委員会は21日~23日の3日間、東京都台東区・上野恩賜公園 竹の台広場(噴水前広場)にて、3回目となる「伊賀上野NINJAフェスタin上野恩賜公園」を開催している。○伊賀忍者を介して、伊賀の知名度・観光地としての認知度をアップ江戸時代、徳川家康の信任が厚かった藤堂高虎。その江戸屋敷が「上野公園」(上野動物園~東照宮の間)にあった。高虎ゆかりの上野東照宮や寒松院、また高虎ほか藤堂家の墓所が上野動物園内にある。一方、伊賀市にある伊賀上野城も高虎の築城であり、現在その城址は「上野公園」と称する都市公園で、伊賀地域観光の中核となっている。平成25年12月8日、東京都台東区(上野観光連盟)と伊賀市(一般社団法人伊賀上野観光協会)は友好交流をより一層深くし、観光パートナーの関係を築くことによって両地域の観光振興を推進することに合意した。同イベントは一昨年、伊賀とゆかりの深い上野の地で、伊賀忍者を介して伊賀の知名度・観光地としての認知度アップをはかることを目的に開催。昨年度は3日間の開催で20万人の参加者数を数え、今回はさらに内容もスケールアップしての開催となるという。期間中は、来園者全員が楽しめるよう、忍者をテーマにしたステージイベントやアトラクションを多数実施。さらに、ご当地物産品の販売や多彩な飲食ブースも設けた総合イベントとなる。ステージは、「忍者ショー(伊賀流忍者特殊軍団 阿修羅)」「いが☆グリオショー(ご当地キャラ)」「忍者キッズダンスショー」「伊賀を知る○×クイズ」「忍者ダブルダッチショー」など。アトラクションは、「手裏剣打ち体験」「吹き矢体験」「忍者バーチャルゲーム」「忍者衣装レンタル」「伊賀焼体験」「組み紐体験」などを実施。伊賀市物産ブースは、「伊賀肉(伊賀牛)」「伊賀米」「伊賀焼」「伊賀酒」「伊賀の菜種油」「忍者グッズ」などが出店。伊賀上野の自然の中で育まれた農産物、畜産品、焼物など、数々の特産品・名産品を展示、販売する。開催日時は、11月21日~23日 10時~16時。会場は、上野恩賜公園 竹の台広場(噴水前広場)となる。
2015年11月21日イギリスを代表する喜劇作家、アラン・エイクボーンの傑作『とりあえず、お父さん』が12月3日、天王洲銀河劇場にて開幕する。グレッグとジニィの若いカップルと、シーラとフィリップの熟年夫婦。4人の登場人物による恋愛にちなんだ勘違いの騒動を、小粋な笑いの連続で描くシチュエーション・コメディだ。「僕が今までに触れてこなかった作風。新たなものに取り組んでいる感覚です」と語るグレッグ役の藤原竜也と、ジニィ役の本仮屋ユイカ、シーラ役の浅野ゆう子、フィリップ役の柄本明の個性豊かなキャスト陣に、稽古場にて本作への思いを聞いた。舞台『とりあえず、お父さん』チケット情報「演出の綾田俊樹さんが余計なものを削ぎ落とし、よりリアリティのある、ストレートな表現となる演出をつけてくれています。一見シンプルな作品に、4人がそれぞれ葛藤しながら取り組んでいますね」そう神妙に語った藤原に対し、本仮屋は「ジニィは登場シーンがバスローブ姿だったり、キスをしたり!男女のそういう生々しい演技をするのは初めてなので、チャレンジです!」と意欲十分。その勢いの良さに藤原は苦笑いを浮かべ、浅野は「生々しいって表現が…ハハハ!」と吹き出し、柄本もニヤリ。思わず笑みが伝染する和やかなチームワークだ。「会話劇は非常に惹かれるけれど、本当に難しい。皆さん、それぞれオトボケで面白いです。最終的に“女性というのは若くても歳をとっても、したたかだな~”と感じるお話ですね(笑)」(浅野)「“コメディ”って紹介されるのって、ものすごく不利だよね(笑)。戯曲自体がすでに面白いのに、それを三次元にするのはハードルが高い。一生懸命、探り続けていくしかないかな」(柄本)シーラとフィリップをジニィの両親だと思い込んで家を訪ねるグレッグ。その彼を、フィリップを訪ねてきた青年だと思って気楽に招き入れるシーラ。グレッグを、シーラの若い恋人と誤解するフィリップ。そして勘違いの発端でありながら、状況をごまかすために嘘を重ねるジニィ。立ち稽古では、ズレた言葉の掛け合いでそれぞれの思惑が勝手な方向へと弾け出す様子を、4人が力みなく、持ち味を生かして体現。ジニィとの結婚をフィリップに嘆願するグレッグ、その真面目ゆえの間が抜けた、緩い表現がなんとも秀逸で、藤原竜也の新たな一面に強力に惹きつけられる。可憐さの中に小悪魔な表情をのぞかせる本仮屋も、手だれの先輩陣に囲まれながらの瑞々しい演技が好印象だ。訥々と語ったかと思えばいきなりの激高を見せる柄本は、一瞬にして稽古場中を笑いで埋め尽くす。その怪演を、浅野はクールビューティーな横顔と優雅な立ち居ふるまいでがっちりと受けとめていた。緻密に構成された戯曲とともに四者四様の俳優の妙味が、年末、爽やかな笑いを存分に引き出してくれそうだ。公演は12月3日(木)から23日(水・祝)まで東京・天王洲 銀河劇場にて。その後全国を巡演。取材・文上野紀子
2015年11月20日JR上野駅中央改札外 ガレリア1F(東京都台東区)では11月21日~23日、「Station Zoo in 上野」にてチームラボによる「チームラボ お絵かきアニマルズ」が展示される。「チームラボ お絵かきアニマルズ」は、チームラボが進める教育プロジェクト「チームラボアイランド -学ぶ! 未来の遊園地-」の一環として展開しているデジタルインタラクティブアート。紙に自由に描いた動物の絵をスキャンすると、動物が立体となって、画面上の巨大なアートの中で動き出す。また、他の人が描いた動物とコミュニケーションを取ったり、人に触られることでさまざまなアクションをとったりもするとのこと。なお、「Station Zoo in 上野」の開館時間は10:00~17:00となる。
2015年11月20日現代アメリカ演劇を代表する劇作家デイヴィッド・マメットのふたり芝居『オレアナ』が11月6日(金)、東京・PARCO劇場にて開幕する。日本での3度目の上演にあたり、演出(栗山民也)と翻訳(小田島恒志)を一新。確かな存在感で高い評価を得ている実力派、田中哲司と、豊かな可能性を秘めて初舞台に挑む志田未来の新鮮な顔合わせが注目されている。物語の舞台は研究室という“密室”だ。大学教師のジョンと女子大生のキャロル、ふたりの会話はどこまでも噛み合わず、その不協和音は思わぬ事件へと発展していく。“セクシャル・ハラスメント”が社会問題として注視される契機となった作品だが、新演出を手掛ける栗山は「この作品においてセクハラは一番の問題ではない。なぜセクハラがマメットの気持ちを動かしたのか、それは言葉の持つ曖昧さにある」と語る。舞台『オレアナ』チケット情報「どこの段階からどこの段階がセクハラなのか、という定義は何もない。そんなつもりはなかったのに…という曖昧で無意識なものが作用して、大きな事件に膨れ上がるんです。ようは、冷戦後の90年代からの世界はある物事が起きてもそこにひとつの解答なんてない、という“不確定性の時代”に入っているんですね。世界のパワーバランスに変化が起きた。むしろセクハラよりも重要なのは、ディスコミュニケーションの問題ですね。ふたりの会話はいつまでたっても成立せず、最後まで組みしない。それまでの劇作家は、愛について、幸せについて語るために、ふたりが何かひとつの物事に向けてまっしぐらに進む様子を描いてきた。でもこのふたりは全然違うベクトルに向かっている。だからもし先輩の劇作家がいたなら“どちらかはっきりさせろ”と言うだろうね(笑)。だけどマメットは“この曖昧さ、不確定性こそ、現代である”という描き方をしたわけです」稽古場を覗くと、わずかに傾斜した舞台面に、不安定に机やソファが置かれたジョンの研究室のセットがあり、その中で田中と志田が対峙していた。田中をじっと凝視したままの志田と、まるでその視線から逃れるように落ち着きなく電話に応対している田中。なにげない幕開きの風景だが、そこかしこに一触即発の空気が張りつめているのがわかる。「志田さんは、演劇のことをまだよく知らないところが、逆にいい。全身で相手をグッと見る、不思議な強い集中力を持っていて、すごく純粋に役と向き合っています。田中さんは、居方が妙に芝居っぽくなく、柔らかい。。俳優の仕事は劇作家の残した言葉を今に具象化することで、その身体から歴史の記憶が見えてこないといけない。田中哲司は、それに近い身体を持っている俳優だなと感じます」緊迫の糸は最後まで緩むことはない。「“演劇は関係性の上で起こる、生きた衝撃の瞬間である”、それが作家のテーマだったんじゃないかな」と栗山。俳優にとっても、また観客にとってもまさしくパワープレイ。劇場でしか味わえない生々しい衝撃を受けとめたい。東京公演は11月6日(金)から29日(日)まで。その後、全国を巡演。取材・文上野紀子
2015年11月04日作曲家フランク・ワイルドホーンが生んだ名作『ジキル&ハイド』が来春、石丸幹二の主演で再び登場する。2001年の日本初演以来、鹿賀丈史が演じてきたタイトルロールを2012年に石丸が継承。新たな魅力をたずさえてバージョンアップした大ヒット・ミュージカルだ。 “人間の善と悪”をテーマとした悲劇において医師ジキル博士と悪の化身ハイド氏に扮する石丸は、「最初は、“鹿賀さんが積み上げてこられた作品の良さを引き継いでいかなくては”という重責に思いが揺れましたが、世界中で上演されている作品ですし、いろんな『ジキル&ハイド』があっていいんだ、という思いに至りましたね」と、穏やかな微笑みで前回公演を振り返った。ミュージカル『ジキル&ハイド』チケット情報「鹿賀さんはハイドを演じている時が非常に艶っぽくて、非常に魅力的だという話をよく耳にしていました。僕自身は、ジキルの部分で自分らしさを出していけたらと考えたんですね。なので、けっして単なる善人ではない、ハイドになる可能性の高い内面を持ったジキルを作り上げました。だからハイドになってしまったんだ……という意味づけをしっかりしたことで、人間の持つ闇の部分にエッジを立てた役作りができたのではと思っています。この作品は、非常に野心を持った男の生きざまを表現している物語だと思うんですね。悲劇ではありますが、とても人間臭い話だと。今回も、ご覧になる方がどこかで共感していただけるような、そんな舞台になればと願っています」前回の新スタートを強力に支えたふたりの歌姫、ハイドに翻弄される娼婦ルーシー役の濱田めぐみと、ジキルの婚約者エマ役の笹本玲奈も再集結し、豪華競演に期待がかかる。「時が人間を育てますから、共演するメンバーもこの間に多くの作品を経験して進化しているはず。どんな化学反応が起きるのか、楽しみですね。2012年とは違った解釈で、また新たな『ジキル&ハイド』をお見せしたいと思っています」これまで多くの観客が魅了された本作を石丸が今後長い時をかけ、熟成させていく過程を見届けたい。その願いに「体力の続く限りは(笑)。お客様に“またやってほしい”と思われる『ジキル&ハイド』を演じたいですね」と意欲十分の笑みが返ってきた。「人として味のある、心のひだの細かい役者でいたいんです。僕は、僕らしく」公演は3月5日(土)から20日(日・祝)まで東京国際フォーラム ホールC、3月25日(金)から27日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。チケットぴあではチケットのインターネット先行を実施中。取材・文上野紀子
2015年10月26日変化が目まぐるしい世の中でも、よい絵本は長く読まれています。そこで、100万部も売れている、0歳児からでも楽しめる絵本を10冊ご紹介します。どれも「これ、あった!」と思う絵本ばかりですよ。■1:『いない いない ばあ』(松谷みよ子文、瀬川康男絵、童心社)569万部いないいないばあの絵本は数あれど、この絵本に出てくる動物たちの『ばあ』の顔は強烈!どんな恥ずかしがり屋の人でも、子どもにこの本を読んであげるときは、思い切り『ばあ!』としてあげてくださいね。キャッキャと大喜びされること間違いなしです!■2:『ぐりとぐら』(なかがわりえこ文、やまわきゆりこ絵、福音館書店)472万部みんな大好き、ぐりとぐら!子どもたちの記憶にいつまでも残る、フライパンいっぱいの大きな『かすてら』の出てくるあの最強絵本の登場です。他にも、大きな鉄のフライパンや、きっとホウロウなんだろうな、と思わせる赤いフチの白い大きなボウルも萌えポイントです。■3:『ねないこ だれだ』(せなけいこ作、福音館書店)268万部せなけいこさんの描く絵は、かわいいけれど、ちょっとこわい。そんな魅力を最大に味わえるのが、この絵本。なかなか寝ない子、おうちにいませんか?「よなかはおばけのじかんだぞ、寝ないとおばけが……」トラウマにならない程度に、楽しく読んであげるといいかもしれません。■4:『しろくまちゃんのほっとけーき』(わかやまけん作、こぐま社)267万部昨今のパンケーキ人気に押されて、やや後退した感のあるホットケーキ。しかし、この絵本を読めば、「お母さんのホットケーキ、おいしかったな~」と、大人読者のメモリーも一気にフラッシュバックすることでしょう。なにげにレシピにもなるこの絵本、お手伝いをしたい年頃のお子さんと一緒にホットケーキをつくってみるのもいいですね。たまごのひとつやふたつ、落とすのはご愛嬌です。■5:『きんぎょがにげた』(五味太郎作、福音館書店)228万部金魚鉢から逃げ出した金魚の大冒険! ページをめくって、金魚の行方を追います。『どこかな?』といってあげると、子どもは喜んで指差すでしょう。探し絵絵本の決定版!■6:『からすのぱんやさん』(かこさとし作、偕成社)224万部数あるパン屋さん系の絵本のなかでも、これは元祖といえるのではないでしょうか。街のパン屋さんでもインテリアとしてこの絵本を置いている店が多い気がします。けっこう文字数は少なくないので、小さなお子さんにはパンのページを見せてあげるだけでもよいでしょう。なにせ、いろーんな種類のパンが描かれているので、一緒に『これなーに?』とあてっこしても楽しめます。■7:『しょうぼうじどうしゃじぷた』(わたなべしげお作、福音館書店)206万部車、特に消防自動車には、小さな男の子を引きつけてやまない魅力があります。ピカピカに磨き上げられた真っ赤な車体。普通の車にはついていないホースやハシゴも興味をそそります。何度も読んであげるうちに、意味もわからないのに文章を暗記してしまう子どももいるほど。『ちいさいけれど、すごくせいのうのいい』じぷたの活躍に、子どもは夢中になるでしょう。■8:『おふろでちゃぷちゃぷ』(松谷みよ子文、いわさきちひろ絵、童心社)186万部お風呂に入りたがらない子は多いものですが、この絵本では、お風呂好きのあひるに誘われ、小さな男の子が自分で服を脱いで、湯船に飛び込むまでが楽しく描かれています。子どものいる人は、最後のページの『あたまあらってきゅーぴーさん』をやってみたくなるはず。■9:『だるまさんが』(かがくいひろし作、ブロンズ新社)134万部2008年に登場した『だるまさん』三冊作の1冊目にあたるこの絵本、ぜひ赤ちゃんの頃から読んであげてください。歩けるようになるころになれば、頭を左右に揺らしながら、子どもが読んでーとこの本を持ってやってきますよ。■10:『ねずみくんのチョッキ』(なかえよしを文、上野紀子絵、ポプラ社)103万部小さな動物から大きな動物へ。同じことばのやりとりが繰り返されるうちにねずみくんの悲劇が起こります。しかし、「悲劇は喜劇でもあるのだ!」という驚きのオチに、子どもはいつか、人生の機微を知るでしょう。*子どもが生まれたことで、再会する絵本もあるでしょう。大人になって、ふと書店で手にとった懐かしい絵本もあるでしょう。深まる秋の夜長、絵本の魅力に浸りきってみてはいかがでしょうか。(文/Kinkiii)【参考】※株式会社トーハン編集部『ミリオンぶっく2015年版』トーハン
2015年10月17日稲垣吾郎主演、白井晃演出の舞台『No.9―不滅の旋律―』が10月10日、東京・赤坂ACTシアターにて開幕した(脚本・中島かずき、音楽・三宅純)。孤高の音楽家ベートーヴェンを主人公に描く、史実とフィクションを交えた一大人間ドラマである。最終リハーサル前に行われた記者会見には、ベートーヴェンに扮した稲垣が共演の大島優子、マイコ、高岡早紀の女優3人に囲まれて登壇。天才作曲家の風貌そのままの姿に、取材陣から感嘆の声が上がった。「ベートーヴェンは、普通の肉体では収まりきれないエネルギーを持った人間。あらゆる感情をマックスに持っていて、それが音楽となって現れるんです」と稲垣自身が語ったように、会見後には、破格の情熱をほとばしらせる人物となって舞台上に現れた。舞台『NO.9-不滅の旋律-』チケット情報物語は1800年のウィーンから始まる。音楽家として評判を得て、着実に成功へと踏み出したベートーヴェンだが、天才であるがゆえの傍若無人なふるまいは、奇人と呼ばれるほどだ。マリア(大島)は、ピアノ職人の姉ナネッテ(マイコ)の工房でベートーヴェンと出会い、その横柄な態度に憤慨する。フランス軍による侵攻、ナポレオン軍の敗退と揺らぐ政情の中で、難聴に苦しみながら音楽活動を続けるベートーヴェン。マリアは彼と衝突しながらもその才能に惹かれ、やがて有能な片腕となって献身的に支えていく。一杯のコーヒー豆の数に神経質なこだわりを見せ、気に入らない人間には指を差して「出て行け!」と怒鳴り散らすベートーヴェン。稲垣は大仰な仕種をしっくりと我が表現として身にまとい、芸術家ならではの尖った精神とともに人間臭い愛おしさも伝えてくる。兄に翻弄される弟たち(加藤和樹、施鐘泰)、恋人ヨゼフィーネ(高岡)、友人メルツェル(片桐仁)など、ベートーヴェンの周りでそれぞれに色濃い個性を放つ人物たち。その関わりのなかで、暴君だった亡き父ヨハン(田山涼成)の記憶と対峙するシーンが、ベートーヴェンの苦悩の根源を匂わせて強い印象を残す。マリア、ナネッテ、ヨゼフィーネの女性3人が示すベートーヴェンへの思い、距離感の違いも興味深い見どころだ。大島は、勝ち気で好奇心旺盛な少女から、思慮深く忍耐強い大人の女性へと成長を遂げるマリアを繊細に表現。初舞台にして安定の存在感を見せつけた。終盤、ベートーヴェンは甥の養育に固執して狂気の様相を見せる。稲垣は白髪まじりの長髪を振り乱して感情を爆発させ、息をのむほどにベートーヴェンその人となって観客を圧倒。舞台両袖に設置された3台のピアノによる贅沢な生演奏の応酬、アンサンブルによる力強い『第九』合唱が、天才作曲家の波瀾の半生にさらなる厚みを加えて興奮をあおる。ベートーヴェンへの敬愛を込めた白井の緻密な采配が生んだ傑作であると同時に、その情熱を一手に引き受け、見事に昇華させた稲垣吾郎の、代表作と呼べる舞台が誕生した。東京公演は10月25日(日)まで。その後、大阪、福岡でも公演。チケット発売中。取材・文上野紀子
2015年10月13日後藤ひろひと作、G2演出の舞台『ダブリンの鐘つきカビ人間』が10月3日、PARCO劇場にて開幕し、好評上演中だ。10年ぶりの再演となる今回は、主人公・カビ人間役の佐藤隆太、ヒロイン・おさえ役の上西星来(東京パフォーマンスドール)のほか、白洲迅、大塚千弘、小西遼生、篠井英介、村井國夫など個性豊かな実力派が集結し、笑いと恐怖のダーク・ファンタジーを構築。初日前日の記者会見では、佐藤が「まったくの別世界ではなく、見ていてどこか自分と置き換えられたり。そんなリアルと幻を行き来する、幅広い旅をしてもらえるんじゃないかなと。本気で笑えて本気で泣ける、極上のエンターテインメントだと思います」と堂々、宣言。その言葉通り、キャスト全員のエネルギーによって強力にファンタジーの世界へと誘われ、揺さぶられる、豪快な舞台が誕生した。舞台『ダブリンの鐘つきカビ人間』チケット情報旅行中の真奈美(大塚)と聡(白洲)は、道に迷ってたどり着いた山小屋の老人(吉野圭吾)に、不思議な物語を聞かされる。物語の世界へと引きずり込まれたふたりの前に、続々と現れる不思議な国の住人たち。謎めいたケルト音楽の響きと、全員による特徴的なダンスが心を惑わせるオープニングだ。誰もが嫌う醜い容姿となってしまったカビ人間、気持ちとは反対の言葉が出てしまう娘おさえなど、人々は皆、奇妙な病に罹って困惑している。伝説の剣があれば、その病を治すことができると知った真奈美と聡は、剣を探す旅に出るが…。カビ人間役の佐藤が見せるピュアな笑顔、快活な仕種には、物語の設定とは裏腹に強く惹かれずにいられない。作品の芯を担うにふさわしい華を持った役者である。チャーミングな表情と美声、さらに激しいアクションまでもこなす大塚と、整った容姿で三枚目の魅力を放つ白洲のコンビも爽やかだ。戦士のほか多役をこなす小西は、クールな表情にコミカルな味を潜ませて楽しい。若者たちのはつらつとした挑戦を支えながら独自の個性で観客を沸かすのは、吉野、篠井、村井の巧者たちだ。とくにシスター姿の篠井が、得意の女形の味わいを生かした魅力の適役となって光る。おさえ役の上西には、その可憐な風貌と言葉の毒のギャップを終始微笑ましく見ていたが、クライマックスでのひたむきな表現に胸を突かれた。俳優陣が色彩豊かに競演を見せる中、後藤が絶妙の間を狙って差し込む笑いにも感服。ふたつの時空をさまよう旅に引き込まれ、謎にときめき、せつない結末に胸締めつけられる。まさに極上のエンターテインメントだが、出色はその幕切れだ。冒険の興奮を断ち切る苦さと、不穏な余韻の妙な心地良さ。大人のファンタジーならではの味わいをぜひ体感してほしい。公演は10月25日(日)まで東京・PARCO劇場にて。その後全国を巡演。取材・文上野紀子
2015年10月07日後藤ひろひと作、G2演出による舞台『ダブリンの鐘つきカビ人間』がキャストを一新し、10年ぶりに再登場する。誰からも敬遠される醜い容姿を持つ男・カビ人間(佐藤隆太)や、気持ちと反対の言葉が出てしまう娘・おさえ(上西星来)など、不思議な病に冒された人々が織りなす笑いと冒険と感動のダーク・ファンタジーだ。10月3日の開幕を前に、豪華出演陣が揃った稽古場を訪れた。舞台『ダブリンの鐘つきカビ人間』チケット情報立ち稽古は、旅行中の真奈美(大塚千弘)と聡(白洲迅)が、山小屋の老人(吉野圭吾)の語る不思議な物語の世界へと引きずり込まれる冒頭シーンから始まった。小西遼生、篠井英介、村井國夫、マギーや後藤といった巧者たちが個性的なダンスで次々に現れると、物語の背景は奇妙な町へと移り変わる。賑やかな群衆シーンの稽古が何度も繰り返されるが、王様役の後藤がその都度違う笑いのネタを差し挟み、共演者やスタッフの爆笑を誘う。うなずきながらほくそ笑んでいるのは演出のG2だ。続いて舞台中央からカビ人間役の佐藤が爽やかに登場すると、途端に人々の表情は曇り始めて……。どこから見ても好青年の佐藤・カビ人間が、周囲から疎ましがられている様子を全員のダンスと語りで表現。謎を生み、興味をそそる幕開けである。集中しながらも、全員がのびのびと自由に芝居作りを楽しんでいる雰囲気が見てとれた。「もとは僕が小劇場で活動していた時に書いた作品なんです。今回はその空気をよくわかっている篠井さんがいてくれて嬉しい。一番信頼してます」と後藤。その言葉を受けて「この作品の混沌としたエネルギー、小劇場らしいハチャメチャさはすごくチャーミング」と絶賛する篠井。篠井が演じるのは敵役となる“シスター”だ。前回までの“神父”のキャラクターを、篠井自らが得意とする女性役に変更を提案。後藤も「素晴らしいアイデア!」と直ちに改訂に着手したという。新生『カビ人間』の根幹となるふたりに話しを聞いた。「小劇場出身の僕らってむやみなエネルギーがあるよね(笑)。とくにファンタジーは、お客様をねじ伏せるように納得させて、楽しませるパワーが必要なんです」(篠井)「そう。若い俳優さんたちは真面目で、どこか理詰めなところがあるからね。英介さんは笑わせるところとちゃんと押さえるところの区別をしっかりした上で、がむしゃらに演じてくれる。若者に見せるべき姿だと思いますよ」(後藤)主演を務める佐藤隆太について、後藤は「今までで一番美しいカビ人間。こんな素敵な男の子をなぜ嫌うの?となることが作品の本質。…って過去に演じた俳優さんに怒られそうだけど!(笑)」と期待を寄せる。芸達者たちが全力で挑む奇妙なファンタジーの世界、不思議体験の幕開きはもうすぐだ。「稽古場では絶対にコメディは出来上がらないんです。笑いは役者同士の呼吸じゃなく、役者とお客さんとの呼吸で生まれるものですからね。ぜひ劇場で、美しいミラクルを感じていただきたいと思います」(後藤)10月3日(土)から25日(日)まで東京・PARCO劇場にて。文:上野紀子
2015年10月02日松坂屋上野店(東京都台東区上野)は30日~10月9日、同店 食品フロアほっぺタウンにて「どんぶりNO.1グランプリ」を開催する。○定番丼からアイデア丼まで、全20種類が勢揃い同店 地下1階にある「上松丼亭」は、「浅草今半」「井泉」「鶏陣」といった有名店の"どんぶり"が気軽に食べられるイートインコーナーで、年間約5万食を販売する名物コーナーとなっている。同企画は、もっといろいろな"どんぶり"を楽しんでもらいたいとの思いから、秋の行楽シーズンに合わせて初開催するものとなる。期間中は、定番丼はもちろんのこと、旬の素材がぎゅっと詰まったアイデア丼まで、全20種類の多彩な"どんぶり"が勢ぞろいする。地下1階・1階 食品フロアで200円以上の購入者に投票用紙を渡し、人気投票によって、N0.1のどんぶりを決定。グランプリは10月14日に発表し、ランキング上位メニューは10月14日~27日まで、継続販売となる。ラインアップの一部は以下の通り。北辰鮨「海鮮ど~ん」は、まぐろ、うに、かに、ほたて、甘えびなど人気の海鮮ネタを載せた海鮮丼。価格は1,425円。ポール・ボキューズ「洋風親子丼」は、もも肉のローストチキンを使用し、シャリアビンソース仕立ての親子丼に仕上げた。価格は702円。聘珍樓「豚肉と茄子の甘味噌丼」は、秋の野菜、茄子と豚肉を甜麺醤で甘味噌味に仕上げた丼。価格は648円。美濃吉「吹き寄せどんぶり」は、たれで味付けしたご飯に、南瓜や銀杏、つくね、えびなど、彩りよく盛り付けた具沢山の丼。各日限定15食で、価格は993円。アルサスローレン「パンDEロコモコ丼」は、米粉パンの上にロコモコの具材を載せて丼に仕上げた。価格は464円。※価格はすべて税込
2015年09月29日