かけはし芸術文化振興財団は、YMOをはじめ多くの作品などにシンセサイザープログラマーとして参加した松武秀樹氏によるトークセミナー「松武秀樹とシンセサイザー」を開催する。日程は2月20日と3月26日の2回(ともに18:30~20:00)。会場は東京都・渋谷のトート音楽院渋谷 セシャトホール。受講料は各2,000円(定員40名、事前申し込み制)。同セミナーは、松武秀樹氏が自身の音楽人生をつづった著書「松武秀樹とシンセサイザー」の出版を機に開催されるもの。1回目(2月20日)は「松武秀樹の音楽人生」と題し、本の内容を題材にさらに深く掘り下げ、シンセサイザープログラマーとしての職業観や多くのシンセサイザーとのかかわり方、ライブの裏話などを中心とした講義になるという。また、2回目(3月26日)は「松武秀樹が語る~シンセサイザープログラマー昨日・今日・明日」をテーマとした内容とのことだ。セミナー参加希望者は、かけはし芸術文化振興財団のWebページより申し込む。定員は40名(定員になり次第、締め切り)。なお、松武秀樹氏は1951年、神奈川県生まれ。20歳から冨田勲氏のアシスタントとして、当時日本に数台しかなかった"モーグ・シンセサイザー"による音楽スタッフを経験。独立後の1978年、矢野顕子のアルバム「ト・キ・メ・キ」のニューヨーク・レコーディングにおいてデジタル・シーケンサーを使用。坂本龍一のソロ第1作「千のナイフ」への参加をきっかけに、1978年~1982年にかけてシンセサイザープログラマーとしてYMO作品に参加。1981年には自身のユニット「LOGIC SYSTEM」を結成し、現在までに15枚のアルバムを発表。2011年より「RMXLOGIX(with special tracks)のリリースに合わせて、エレクトロニック・ミュージックにフォーカスを当てた新レーベル<MOTION±(モーション・プラス/マイナス)>を始動。2012年5月には第2弾「RMXROGIX Vol.2(with SPECIAL TRACKS)」をリリース。2015年に自らのヒストリー「松武秀樹とシンセサイザー」を出版。
2016年02月05日PFUのイメージビジネスグループ 統括部長の松本秀樹氏と、プロトラブズ合同会社社長兼米Proto Labs, Inc.役員のトーマス・パン氏による対談。後編となる今回は、世界最軽量・最小※のモバイルスキャナ「ScanSnap iX100」のソフト面での活用法や、PFUのコミュニケーション戦略についてお届けする。※ バッテリー・Wi-Fi搭載A4シートフィードスキャナにおいて、PFU調べ(2014年4月1日現在)○スキャナの"生態系"をつくる松本秀樹氏(以下松本氏):PCで使う場合、iX100でスキャンした後にクイックメニューが開くのですが、ここからMicrosoft OfficeやEvernote、Dropboxといったアプリケーションやサービスと簡単に連携することができます。また、名刺管理ソフトも同梱されていますので、名刺に書かれている名前や役職といった情報をテキスト化して整理することもできます。トーマス・パン氏(以下パン氏):自動化によって、ビジネスシーンではもちろん、そうでないユーザーにも使いやすくなっていると思います。スキャナ単体ではなく、どんなアプリケーションとつなげるかで、便利さがまったく変わりますね。松本氏:はい。ですから、スマートデバイスのアプリケーションベンダーさんには、カメラ機能と同じように連携してもらうことに注力してもらっています。さまざまなパートナーシップを組んでいくことで、ScanSnapを取り巻く「エコシステム(生態系)」を形にすることが狙いです。パン氏:そういった戦略は以前からおありだったのでしょうか?松本氏:一つ前のモデルからありましたが、iX100からスマートフォンやタブレットのアプリを意識するようになりました。パン氏:しかし、アプリと連携と言っても、スマホの使い方そのものがめまぐるしく変化している昨今です。例えば、開発期間のうちにポピュラーなアプリの使い方が変わっていることもあると思うのですが、どうされているのでしょうか?松本氏:われわれは独自規格のインターフェースを使っていますので、開発の段階から、アプリケーションベンダーさんに、SDK(ソフトウェア開発キット)を提供しております。開発キットを設計思想に含みつつ、サードパーティに働きかけをしているというわけです。○時間を縮めるスキャナパン氏:iX100の機能についてご説明いただきましたが、仕事で頻繁にスキャンの必要があり、かつ移動が多いようなビジネスユースを想定されているのでしょうか。松本氏:フリーランスや個人事業主の方に、積極的に導入していただいていますね。赤入れをしてすぐにデータを送って確認を取るといったことが容易にできますから。昔はFAXを使っていたと思いますが、より鮮明に、瞬時にデータをやり取りすることができるので、非常に重宝がられています。パン氏:そう考えると、このスキャナは「時間を売っている」とも言えますよね。自分の時間の節約と考えると、その対価は十分に感じるのでしょう。松本氏:マスコミの記者さんやヘビーブロガーといった、自分のワークスタイルを進化させるという考えをお持ちの方に利用していただき、その方々に口コミで広げていただいています。パン氏:事前にユーザーさんのブログなどを拝見したのですが、コメントが非常にポジティブなんですよね。プロダクトの力とそういったプロモーション戦略が合わさって、追随を許さないマーケットを構築されたのだと思いました。松本氏:平成27年度の税制改正大綱により、3万円以上の領収書でもデジタル化できるなど国税関係書類のスキャナ保存制度が規制緩和される見通しとなっています。今後は、会計ベンダーさんとともにスキャナを使った業務効率化を提案していこうと動いております。パン氏:ぜひ次回の確定申告で使わせていただきたいと思っています(笑)○アナログとデジタルのコミュニティパン氏:これだけ長くデジタル化が続いた世の中でも、紙が減るどころか増え続けている状況です。セキュリティを考えると紙の方が流出しにくいとも言われていますし、まだまだ紙が消えることはないのでしょう。松本氏:学校でも生徒は学習の基礎として、まず手書きから教わりますよね。アナログな紙とペンはまだまだ残る。だからこそ、それをどこかでデジタルと融合させることが求められると思っています。パン氏:そうすると、スキャナの活用はまだまだ増えていくということでしょうか。松本氏:例えば、シニアの方が自分の思い出の写真をデジタル化して自分史を作ったり、自治体が昔の紙データをデジタル化して機関誌を発行するなど、さまざまな場面で活用されています。われわれとしては、単に装置を提供して終わるのではなく、ユーザーがどんな使い方をしているのかを意識して、ScanSnapを使ったパソコン教室を開催したり、子どもが描いた絵をスキャンして遊べるイベントを行ったりしています。パン氏:まさに「スキャナを取り巻くコミュニティ作り」ですね。聞いていて感動を覚える戦略です。優れた製品を提供し、その製品を巡る環境から次々と新たなビジネスを生んでいく。非常に素晴らしいビジネスモデルだと感じました。
2015年04月30日野田秀樹作・演出作品『エッグ』パリ公演(国立シャイヨー劇場にて)が3月8日、大盛況のうちに閉幕。いよいよ3月26日(木)より大阪・シアターBRAVA!で凱旋公演が行われる。NODA・MAP第19回公演『エッグ』チケット情報妻夫木聡、深津絵里、仲村トオルらの豪華キャスト陣、椎名林檎による心にささる音楽、スピーディーに変化する舞台装置、そして予測不可能な結末……。2012年の初演時、そして今年2月の東京公演で観客に大絶賛を浴びた作品が初演時と同じ主要キャストで挑んだパリ公演。セリフは日本語、フランス語字幕をつけ、また映像場面にはフランス人俳優によるフランス語ナレーションを流すなどの工夫も。キャストの3人が「笑い声や反応から、パリの観客との距離感がすごく近く感じられたことが感動的でした」(妻夫木)、「お客様の反応が変化していく感じが日本と同じだったことに驚いたのと同時に、とても嬉しかったです」(深津)、「言葉で話してもわからないことでも、芝居を見せることで相互理解ができる、共通言語のようなものになりえることを感じています」(仲村)とその手応えを口にするほど、終演後も熱気は続き、大きな拍手に包まれた。作・演出の野田も「パリの反応はとても良かったと思います。パリ公演が始まる前は不安で、題材の難解さが伝わるのかなど、お芝居が終わってもまだまだ不安でいっぱいでした。シャイヨ―劇場の芸術監督ディディエ・デシャン氏が、2度あることは3度あるということわざを用い、エッグに続き、パリでの3度目となる公演のチャンスを楽しみにしています。と言ってくれたので、その言葉にとても救われました」と語るほど現地での好評を肌に感じた本作品が戻ってくる。凱旋公演は3月26日(木)から4月8日(水)まで大阪・シアターBRAVA!、4月16日(木)から19日(日)まで福岡・北九州芸術劇場大ホールで行われる。チケットは両公演ともに完売していたが、このほど大阪公演で追加販売が決定。チケットは3月15日(日)午前10時より発売。
2015年03月13日2013年5月27日に急逝した吉村秀樹率いるロックバンド「bloodthirsty butchers」とのコラボレーションに端を発した企画を、『生きてるものはいないのか』『シャニダールの花』を手がける奇才・石井岳龍監督が映画化した『ソレダケ/that’s it』が、吉村さんの命日となる5月27日(水)に公開することが決定。この度、石井監督とは3度目のタッグになる染谷将太が主演を務め、敵役にドラマや映画に引っ張りだこの綾野剛が演じることが明らかになった。戸籍を奪われ、アンダーグランド暮らしから抜け出せずにもがいている大黒砂真(染谷将太)。この底辺から抜け出す最後の手段として、裏社会の調達屋、恵比寿大吉のコインロッカーを破壊し金の入った財布を奪うが、予期せずハードディスクを発見する。その中には家出人、ホームレス、破産者、風俗嬢たち、地下な人々のビジネス売買用個人情報がぎっしり詰まっていた。大黒はハードディスクを隠すが、恵比寿に追われあえなく監禁される。しかし、そこには風俗嬢、南無阿弥が拘束され横たわっていた。大黒と阿弥は何とか脱出し都会の片隅に身を寄せ、ダークサイドに生きる知人、猪神楽彦に助けを請うが、闇の追っ手が2人を再び監禁、謎の極悪ギャングのボスによる拷問の中で、大黒の過去にまつわる宿命の謎が明かされる。もがき苦しんでも決して抜け出すことができなかった負のループが導いた先で、大黒は、彼を束縛する宿命との対決を決意する…。吉村亡き後監督が仕上げた作品で、その後、吉村さんの存在と「bloodthirsty butchers」(以下、ブッチャーズ)の音楽から着想を得た石井監督は、その遺志を受け継ぎ、まったく新たな物語に取り組んだ本作。「ブッチャーズ」の持つ激しさ=他者を攻撃するような表層的な激しさとは異なる「攻撃的な諦念/無常」から導き出される、人間の意地が爆発する「底辺の叛逆」の物語だ。主演に若き日本映画界の扇動者・染谷さん、『シャニダールの花』以来2度目の石井組となる綾野さんを始め、本格女優としての確実な一歩を踏み出した元「E-girls」の水野絵梨奈、映画とロックのアウトサイダー渋川清彦、インディペンデント映画の番人・村上淳ら個性派俳優陣が集結。濃くて、危なくて、激しい、情熱とアクションが交差する青春ドラマに仕上がった。以下、キャスト&スタッフのコメント●染谷将太ひたすら叫び、嘆き、走り、殴られ、撃ち合い、血塗れになり、また走りました。俺の知ってる石井さん、そして俺の知らない石井さんの現場を体感、体現してきました。様々な想いを含み、この映画の中にそれは確かに鼓動を打っています。この映画でロックして、久々に爆裂してください。●水野絵梨奈それぞれがそれぞれのやり方で生きているその生き様を見て頂けると嬉しいです。とても切なく苦しい中で、強さがとても悲しいほど美しく見えてくると思います。染谷さん演じる大黒の心の叫びが痛いほど突き刺さってきます。石井監督の世界感そして思いの詰まった音楽とともに楽しんでいただけたら嬉しいです。●渋川清彦炎天下、全力疾走、長台詞。なかなかハードでしたが、これぞ石井監督の世界と思い、自分を預けワクワクドキドキしてました。この作品に参加出来て幸せです。石井岳龍全開をくらえ!!●村上淳映画を問い続ける、監督。それは真摯に。PUNKS NOT DEAD。カタチを変え不死鳥のごとく。石井監督の作品に関われることは、最高に光栄です。●綾野剛石井岳龍監督にしか表現できないファンタジックかつエキセントリックな世界へようこそ。さあ、皆様、どうぞ遠慮なく狂い咲いてください。●石井岳龍監督吉村秀樹と素晴らし過ぎる俳優たちの熱さが、くすぶり続けていたアッシのロック魂に火をつけた。映画館にふさわしく、ノスタルジーではない「今、この瞬間」のロック映画を創りたかった。負け犬が反撃し、愛は暴走する。まだ何も終わってはいないし、何も始まっていない。死ぬにはまだ早い、勝手にしやがれ!!『ソレダケ/that’s it』は5月27日(水)よりシネマート新宿にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年03月05日野田秀樹作・演出による、NODA・MAP第19回公演『エッグ』が公演中だ。本作は、好評を博した2012年初演作の再演。公演初日前の2月2日、ゲネプロが行われた。NODA・MAP第19回公演『エッグ』チケット情報野田作品らしく、時空間がマジカルに錯綜する本作。ドラマの発端は、改修工事中の劇場で、劇場案内係(野田秀樹)がみつけた、歌人で作家の寺山修司の未発表戯曲だ。これを、案内係と愛人関係にあるという劇場の芸術監督(野田の2役)が手に入れたことから、舞台上で、戯曲に綴られていた世界が展開する。それは、天才アスリート・安倍比羅夫(妻夫木聡)やベテランアスリート・粒来幸吉(仲村トオル)や平川(大倉孝二)ら、卵を用いた架空のスポーツ “エッグ”に情熱を傾ける男達と、彼らのチームのオーナー(秋山菜津子)、消田監督(橋爪功)、人気シンガーソングライター・苺イチエ(深津絵里)、苺の振付師・お床山(藤井隆)らの物語だ。軽妙でエッジの利いた野田の台詞、どこか切ない椎名林檎の音楽、カーテンやロッカーを効果的に用いた堀尾幸男の美術、洗練されたひびのこづえの衣裳、そして、初演以来変わらない個性豊かな豪華俳優陣の熱演によって、舞台はカラフルに躍動。彼らを通して、20世紀の大衆を熱狂させた“音楽”と“スポーツ”が、美しく輝かしい人生の応援歌であると同時に、洗脳や根性論やナショナリズムと隣り合わせであるという事実も、あぶり出される。物語はそれだけでは終わらない。芸術監督が「読み違えていた」と言い出すことから、ドラマの途中で何度も新たな情報が加わり、変更が施される。それは、人間の先入観への皮肉であり、また、改ざんが行われ続ける歴史への痛烈な眼差しでもある。真実が時に恣意的に歪められ、あるいは忘れられ、新たな神話が形成されていく中、人類は同じ過ちを、そうと気づかずに犯してきた。だが、忘れてはならないこともある、という作者の声が聞こえてくるようだ。「いつもデジャブ~」と歌う苺の声も意味深に響く。そうこうするうち、時代は、(本作初演ではまだ決定していなかった)2020年の東京五輪を見据えた現代、1965年の東京五輪、そして1940年の幻の東京五輪と遡りながら、ある葬り去られた過去へと到達するのだった……。粒来幸吉=円谷幸吉、安倍比羅夫=「裸足のアベベ」ことアベベ・ビキラなど、実在する人物を想わせる名を散りばめながら、野田は近代史の闇に迫る。その近代は、世界の知と富と権力が一部の人間に集中し、不都合な真実には蓋をして進み続けようとする現代と地続きだ。寺山の未発表戯曲の存在を含め、この劇はフィクションだが、だからこそ、そこには幾多の真実が煌めいている。本作は東京公演後の3月、パリ国立シャイヨー劇場で日本の劇団として33年ぶりに公演を行う。33年前に上演された作品は奇しくも寺山修司の『奴婢訓』だという。フランス公演後は3月26日(木)から4月8日(水)まで大阪・シアターBRAVA!、4月16日(木)から19日(日)まで福岡・北九州芸術劇場 大ホールでも上演。取材・文:高橋彩子
2015年02月09日「和田秀樹こころと体のクリニック」(東京都文京区)はこのほど、坑加齢医学・予防医学の世界的権威であるクロード・ショーシャ博士と提携し、日本初の育毛プログラム「トータル・ヘア・マネジメント」の提供を開始した。男性ホルモンの中の「DHT」という物質が、抜け毛や前立腺肥大の原因であることが解明され、それをブロックする薬が開発されてきた。しかし、DHTには活力や性欲をつかさどる作用があることもわかり、それを抑えすぎると、性欲低下、活力低下、ED(勃起障害)などの副作用が生じることがあるという。実際に、アメリカの食品医薬品局(FDA)は、副作用がある薬品としてリストアップするように勧告している。ショーシャ博士は、この副作用を、ホルモン状態のチェックと「テストステロン」投与で解決できることを発見し、ヘアマネジメントプログラムを開発した。現在、博士の母国であるフランスはもちろん、アメリカ、イタリア、中国、香港、台湾など世界17カ国で提供されており、王族・貴族、セレブ、スポーツ選手などから高い支持を受けているという。同プログラムは、ホルモン状態や前立腺の状態、脂質状態、全血検査などを通じて患者の体質を科学的に解析。DHTを抑えすぎずに男性機能をあげるとされるテストステロンを投与し、さらに栄養学的・皮膚科学的アプローチで発毛環境を整えていくという。結果として育毛だけではなく、若返りや男性機能のアップをも実現してくれるとのこと。また、薄毛の原因の90%は男性ホルモンが原因とされるが、残りの10%の多くはストレスなどの心因とされている。来院した患者には最初にカウンセリングを行い、どちらが原因なのかを判断するという。
2014年12月12日野田秀樹がオール韓国人キャストとともに上演する舞台『半神』が韓国・ソウルの明洞芸術劇場で公演中だ。出演者急病のため予定されていた初日は延期となったが、9月20日に無事開幕。10月5日(日)まで全16公演を行う。舞台『半神』チケット情報シャム双生児の姉妹をめぐる物語。野田が漫画家・萩尾望都と共作し1986年に初演、野田が主宰した劇団夢の遊眠社の代表作のひとつとして知られている作品だ。野田が韓国人俳優とともに舞台に取り組むのは、2005年の『赤鬼』韓国バージョン以来となる。初日公演を終えた野田は以下のコメント寄せている。主演女優の盲腸炎のために、初日が8日延びました。久しぶりに“生みの苦しみ”を味わうこととなり、同時に、初日がこんなにも待ち遠しいことも珍しかったです。芝居をする人間にとって、「初日」がないということは、「無」に等しい。「その一日」がないだけで、それまでやってきたことが、何でもなかった事になってしまう。その虚ろな八日間を経ての初日でした。この「虚ろさ」は経験したものにしかわからないだろうなと思います。そして迎えたソウルの初日の観客席には、若いお客さんも目立ち、初めてお客さんが沸いた瞬間は、誰よりもほっとしている「私」がおりました。こうして、30年前の作品が、時を越え「海峡」を越えて上演できることが、いかに幸せなことか、「初日」が遠かっただけに余計感じさせてもらいました。韓国の俳優の身体性の高さもあって、とてもいい芝居になった感触です。時も場所も違うのですが、1999年に初めて、タイの役者さんたちと『赤鬼』を作り上げた時に近い感じがしています。物を作ることは、やっぱり、ただ技術だけの問題ではない。創造への“情熱”が昇華した時に、人の心を動かすことがある。そんな芝居になっていると思いました。もちろん、まだ初日が開いたばかりなので、これから、どう成長していく芝居なのか、不透明ではありますが、「いい芝居」であることを確信することになった初日です。野田秀樹同舞台は韓国公演に続いて東京でも上演。10月24日(金)から31日(金)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて。チケット発売中。
2014年09月30日野田秀樹の舞台『半神』が15年ぶりに復活する。東京芸術劇場と韓国の明洞芸術劇場の共同制作によるもので、野田の演出、韓国人俳優のオールキャストで9月にソウル、10月に東京での上演が予定されている。野田と漫画家・萩尾望都が共同で戯曲化し、1986年に初演された『半神』は劇団夢の遊眠社の代表作のひとつとして知られる人気の舞台。シャム双生児の姉妹を軸にさまざまな世界が交錯していくストーリーだ。今回、ソウルで行われたオーディションには400人を越す応募が集まったという。最終的に選定された12人の出演陣のうち、双子の姉・シュラ役を演じるのは日韓合作舞台『焼肉ドラゴン』で三女役を演じた実力派舞台女優チュ・イニョン。片や、妹・マリア役に抜擢されたのは韓国ミュージカル界の新鋭チョン・ソンミン。タイプの異なる魅力を持つふたりに、日韓共同制作となる本作への思いを聞いた。『半神』 チケット情報2005年にソウルで野田が演出、出演した『赤鬼』韓国バージョンを、当時学生として観たというイニョンと、今回のオーディションで野田秀樹の名を初めて知ったというソンミン。ふたりが口を揃えてまず語ったのは、今回のオーディションの特異性だった。そもそも韓国ではストレートプレイのオーディションは珍しく、とくに主役級のキャスティングはほぼ演出家からの指名で決まる。ところが……。「私が“死ぬまでに一度でも共演できたら幸せ”と思っていた大先輩たちが来ているんですよ!普通オーディションではセリフを読んだりするんですが、野田さんは“波”や“強風”といったテーマでパフォーマンスを要求されて。それを大先輩たちが身体を投げ打って一生懸命やっていらっしゃる。先輩方があまりに上手なので、もう私はダメだわ…と思いました(笑)」(イニョン)「私はミュージカルをやってきたので、オーディションでは知り合いが誰もいなくてひとりぼっち。開き直って思いっきりやろう!と自分を奮い立たせました(笑)。イニョンさんのお話のように、大ベテランの方々が私のような人間と同じ状況で懸命に演じてらっしゃるのを見て、オーディションの現場だけでも多くのことを学びましたね」(ソンミン)結果、「早く出演者の皆に会いたい。舞台上でどう息を合わせていくのか気になります」とふたりが待ちわびるほどの、韓国演劇界の人気者が集結。出自もキャリアも異なる個性派の面々が、同じスタートラインに立って野田ワールドに飛び込む。双子役を演じる、選ばれし女優ふたりの挑戦を見届けたい。「重い主題がとても軽やかに書かれている作品。冗談のように、お遊びのように、深い話をポンッと投げ入れる面白さに惹かれますね。私も観客の皆さんも、想像もできない体験をすると思います」(イニョン)。「生について、存在についての負い目といったものが語られているので、私も最初は深刻な物語だと思っていました。でも始まりからとても愉快!好奇心を持ってご覧いただきたいですね」(ソンミン)10月24日(金)から東京芸術劇場 プレイハウスにて。一般発売直前先行は8月1日(金)午後6時より受付。文:上野紀子
2014年08月01日最新作であるNODA・MAP第18回公演『MIWA』に続き、今度は、野田秀樹の初期作品が上演されることになった。これは、野田が芸術監督を務める東京芸術劇場の企画で、野田の優れた旧作を気鋭の演出家に託すシリーズの第2弾にあたる。松尾スズキが演出した『農業少女』以来4年ぶりとなる今回は、演目にひとり芝居『障子の国のティンカーベル』が選ばれた。演出は野田と親交の深いイタリア出身のマルチェロ・マーニが手がけ、毬谷友子と奥村佳恵の出演によりダブルキャストで上演する。演出家とキャストに話を訊いた。『障子の国~』は、1984年に刊行された野田の書籍に収められながらも、作者本人の演出では一度も上演されていない。数ある野田作品の中でも珍しい戯曲だ。描かれるのは、『ピーターパン』に登場する妖精ティンカーベルのその後の物語。日本へと旅してきた彼女の口から、ピーターに対する想いが語られていく。「以前から演じたいと思っていた戯曲でした」と毬谷は言う。「最後のページに“一九八一年正月の三日間を返上し、殴り書く”と記されていますが、そうとは思えないほど深い奥行きがあるし、一方で言葉遊びや、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさに満ちている。“天才・野田秀樹”が現実にとらわれず、まさにピーターパンのようにピュアな心で書きたいものを書いた、そんな印象です」。野田から「彼ならアイデアも豊富だし、演出家として適任」という信頼を得て登板することになったマーニは言う。「力強く、複雑で、感動的。戯曲を読んだときは、若い頃の気持ちを思い出して、泣いてしまったほど。人形を使う場面もあるし、歌もふんだんに盛り込まれている。私はフィジカル・シアター(=身体性を活かした演劇表現)出身なので、様々なムーヴメントを取り入れたいと思います」。奥村は、昨年開催されたマーニのワークショップで才能と個性が認められ、今回の出演につながった。「ワークショップでは毎日、うちひしがれては気をとり直しての繰り返しでした。たとえ複雑な作品であっても、演じる側は、ちゃんと分かった上で舞台に立たなければいけないと思うんです。半端じゃない気迫で臨むつもりです」と熱い意気込みを語る。「歌とダンスの素養がある友子と、活き活きとボーイッシュな佳恵。それぞれの持ち味を活かした2バージョンになると思う」とマーニは言う。想像力に富む戯曲が複眼的なアプローチでどう色づくのか、見比べる楽しみを味わいたい。2月13日(木)から東京芸術劇場 シアターイーストにて上演。11月16日(土)の一般発売に先がけ、チケットぴあではインターネット先行抽選「いち早プレリザーブ」を10月26日(土)午前11時より受付スタート。
2013年10月25日日本の演劇界を牽引するふたり、野田秀樹と三谷幸喜が初タッグを組んだ舞台『おのれナポレオン』が4月9日(火)、東京芸術劇場で初日の幕を開ける。三谷が劇作と演出を手掛け、野田は自身が書いた作品以外ではほぼ初めて俳優として出演する話題作。さらに共演者の顔ぶれも豪華だ。天海祐希、山本耕史、内野聖陽ら主役級の俳優が集結。開幕に先立ち、6日と7日にプレビュー公演が行われた。「おのれナポレオン」チケット情報病死か毒殺か?英雄ナポレオンの死の謎を、三谷が独自の解釈を加えた歴史ミステリーとして描いている。絶海の孤島セントヘレナ島に幽閉され、退屈で窮屈な毎日を送るナポレオン(野田)。彼は愛人・アルヴィーヌ(天海)とその夫で副官のシャルル・モントロン(山本)らと一緒に、読書やピアノ、お芝居ごっこをして有り余る時間を浪費して過ごしている。身の回りの世話は従僕マルシャン(浅利陽介)の仕事だ。主治医のアントンマルキ(今井朋彦)は、監視役の島の総督ハドソン・ロウ(内野)に、ナポレオンを“皇帝”として扱ってほしいと頼むが、ロウは“捕虜”だといって取り合わない。そんな中、ある事件をキッカケに何者かによるナポレオン殺害の企みが発覚し……。物語はナポレオンの死後、20年近い歳月を経たパリで、その死に疑問をもったセントヘレナ出身の医学生が関係者をひとりずつ訪問する形で始まる。彼らがナポレオンとの思い出話を語りだすと、いつしか当時の姿に変わり、一瞬のうちにパリから島へと時空を超える。ワンシチュエーションものが得意な三谷には珍しく、時間と空間が大きく広がりをもった設定になっている。また、通常とは異なるステージの形状にも注目したい。客席が舞台の左右にも設けられ、四角いステージを三方から取り囲む形になっている。そのためセットはごくシンプルに、椅子とベッド、それにナポレオンが好きだったというチェスなど、最低限の装置だけ。その分俳優の芝居に委ねられるところは大きいが、そこは演技巧者の面々だけに、三谷の期待に充分応えていたと言えよう。野田は子どものような無邪気さで舞台を走り回っていたかと思えば、天海とのラブシーンでは男の一面を見せたりと、振り幅の広さを存分に発揮。天才と言われた一方、エキセントリックな性格のナポレオンを体現していた。愛人役の天海は野田との息もぴったりで、コミカルな演技で笑いを誘いながらも愛情と打算に揺れる女心を好演。内野は野田ナポレオンを虐待する役だが、単純に憎んでいるだけではない複雑な心情をみせていた。緻密に描かれた人間関係とエピソードの数々は、やがて明らかになるナポレオンの一世一代の企みへと繋がっていく。それは、三谷が物語の中に仕込んだ壮大な仕掛けにほかならない。公演は5月12日(日)まで。なお、5月9日(木)19:00の公演の模様を全国の公共劇場および映画館にて生中継配信する。
2013年04月09日三谷幸喜作・演出、野田秀樹主演。日本の演劇界をリードする2大ビッグネームが、来年4月、ひとつの舞台で力を合わせることになった。1955年生まれの野田は、1976年に劇団夢の遊眠社を旗揚げ。以降、NODA・MAPを主宰する現在まで、考える面白さに満ちた演劇ならではの表現を追求し、国内のみならず海外でも多くの成果を残している。一方、1961年生まれの三谷は、1983年に結成した東京サンシャインボーイズの主宰者として、笑いにこだわった舞台で人気を博す。シチュエーション・コメディという欧米ではポピュラーだったジャンルを日本に定着させた功績は大きい。ふたりが同じ作品に関わったのは、三谷脚本によるNHK大河ドラマ『新選組!』に野田が勝海舟役で出演した2004年の一度だけで、両者のホームグラウンドともいうべき舞台でのコラボレーションは、今回が初めて。そもそも野田が自作以外の舞台に本格的に出演すること自体、異例のケースだ。三谷が書き下ろす作品のタイトルは、『おのれナポレオン』。近年、ゴッホ、石川啄木、夏目漱石など実在した人物の知られざる一面を描くことの多い作者が、今回は、ナポレオン・ボナパルト(1769~1821)を題材に選んだ。フランス革命の精神を継承して出世した身ながら、皇帝として強大な権力をふるって反発を買い、最後には追放され、51歳でこの世を去った“英雄”ナポレオン。まさに乱高下したといっていいその人生は、「私の辞書に不可能という言葉はない」との発言や、1日3時間しか睡眠しなかったという伝説など、エピソードにあふれている。果たして、三谷の筆は、硬軟自在に変貌する知性的な演技と高い身体性を併せ持つ野田を擁して、どこに向かうのか、興味は尽きない。ほかに、天海祐希、山本耕史、浅利陽介、今井朋彦、内野聖陽をキャストに迎え、2013年4・5月、野田が芸術監督を務める東京芸術劇場のプレイハウスにて上演。チケットは1月26日(土)一般発売開始予定。
2012年11月03日本年1月5日より、NY、ロンドン、香港を巡る『THE BEE』ワールドツアーを行ってきた野田秀樹がついに帰国。2月24日(金)から東京・水天宮ピットにて行われる〈English Version〉〈Japanese Version〉の連続上演を前に、2月22日、都内にて両バージョンのキャスト6名と共に記者発表会を開いた。『THE BEE』公演情報『THE BEE』とは、同時多発テロに衝撃を受けた野田が、筒井康隆の短編小説『毟(むし)りあい』を題材に創作した舞台(共同脚本:コリン・ティーバン)。妻子を誘拐されたサラリーマンが、自らも犯人の妻子を人質にとり、犯人との心理戦を繰り広げるという衝撃作だ。2006年にロンドンで初演され、翌年にはロンドンバージョンと日本バージョンを東京で上演。“報復の連鎖”という本作のテーマと、現実の世界情勢とがリンクし、大きなセンセーションを巻き起こした。この度のワールドツアーを実現させたのは、「9.11事件から10年後のニューヨークで『THE BEE』を上演したい」という野田の強い思い。現地では高い評価を受け、野田は「この芝居が持っている、世界共通で抱えている問題に対し、興味を持ってもらえたことは大きな手ごたえ」とワールドツアーを振り返った。そして凱旋公演となる〈English~〉でサラリーマン・井戸役を演じるのは、英国の実力派女優キャサリン・ハンター。すでに野田作品には欠かせない存在であり、野田との舞台づくりを「私のキャリアにおけるハイライト」とまで言い切る。そして〈Japanese~〉で井戸に監禁される犯人の妻役を演じるのは、宮沢りえ。「野田さんを信じているので、何も不安はありません。この作品から自分の想像を超えるような自分に出会いたい」と、本作にかける熱い思いを語った。ほかに〈English~〉にはグリン・プリチャードとマルチェロ・マーニが、〈Japanese~〉には池田成志とコンドルズの近藤良平が参加。野田は、両バージョンに異なる役柄で出演する。また〈Japanese~〉はNODA・MAP番外公演として、国内ツアーも実施。東京のあと、大阪、北九州、松本、静岡の計5か所を巡る。NODA・MAPとしては初の試みであり、「自分が見失っていることというのは、必ず(地方など)そういったところで発見できるもの。だから今回のような企画をやれることは非常に幸せ」と、野田自身20年ぶりとなるツアーに大きな期待を寄せていた。取材・野上瑠美子ジャパンツアーのチケットは2月25日(土)10:00より一般発売する。なお、チケットぴあでは東京公演と大阪公演の先行抽選の申し込みを2月23日(木)11:00まで受付。
2012年02月22日劇作家で俳優の野田秀樹が、脚本と演出を手がけた舞台『THE BEE』で自身初のワールドツアーを敢行。現地時間の1月5日、ツアー初日となる米・ニューヨーク公演が開幕した。『THE BEE』チケット情報『THE BEE』は筒井康隆の短編小説『毟りあい』を題材とした、際限のない復讐劇を描いたもの。9.11から続く“報復の連鎖”を目の当たりにした野田が、世界に通じるテーマだと確信し舞台化。2006年に英・ロンドンで初演後、翌年には日本でも上演され数々の演劇賞を総なめし話題となった。今回のワールドツアーは、9.11から10年を経たニューヨークで上演したいという野田の希望で実現。野田も出演した初日の舞台は満員御礼となり、カーテンコールでは観客の温かい拍手に包まれた。終演後、野田は「前日のドレスリハーサル(通し稽古)が、思っていたような出来にはならなかったので、突然、自信を無くしてしまったんだよね。それで、昨日の夜は眠れませんでした。初日の芝居は非常に良い出来だったので、いままでやってきたことが間違いなかったと確信できました。あとは、ニューヨークのお客さんが今日の観客たちの評判を聞き、この作品を観にきて、どんな反応をしてくれるのかが楽しみですね」と語った。ニューヨーク公演は1月15日(日)まで。その後、ロンドン、香港と回り、東京・水天宮ピット大スタジオにて2月24日(金)から3月11日(日)まで上演。なお、東京公演のチケットは1月14日(土)より発売。チケットぴあでは1月13日(金)まで先行販売中。また、宮沢りえら日本人キャストによる“ジャパンツアー”も4月から6月にかけて東京、大阪、北九州、松本、静岡で上演する。
2012年01月10日歌手の西城秀樹が9月22日(水)、東京・港区のシネマート六本木で行われた映画『メッセージそして、愛が残る』(ジル・ブルドス監督)のトークショー付き試写会に出席した。自分の死期を悟った主人公の男が、残された時間を大切に生きようとして疎遠だった家族との絆を取り戻していく姿を描く物語。2003年6月に脳梗塞を発症し乗り越えた経験を持つ西城さんが、愛することや生きることの大切さを伝える本作に共鳴し、来場したもので「この映画、本当に深いです。2回観まして1回目はショックを受けて落ち込んだ。でも2回目には、基本は生きている間をどう生きるかを描いた温かい映画だと思った」としみじみ。もし主人公のように死期が分かったら?との質問には「怖いから嫌だけど、分かったら腹をキメて人生にどう素晴らしいものを残せるか考えます」。自身が大病を経験して変化したことについては、「家族への愛情をもっと出していこう、思い出を作ろうと思うようになった。家族が先で、仕事がある。いまは家族と過ごしている時間がこの上なく楽しい。それがあるから仕事ができる。そう気付いたときから女房には頭が上がりませんね」。取材陣から家族には感激ですか?と突っ込まれると、「秀樹カンゲキ、って言わせたいんでしょうが」と苦笑いしつつ「カンゲキというよりありがとう、です。例えば食事を作ってくれるのも、当たり前とは思わない。他人と暮らしているわけですから」と語った。『メッセージそして、愛が残る』は9月25日(土)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:メッセージそして、愛が残る 2010年9月25日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開© 2008 FIDELITE FILMS - AFTERWARDS PRODUCTION INC - AKKORD FILM PRODUKTION - WILD BUNCH - M6 FILMS■関連記事:香山リカが夫婦愛講座永く愛されるコツは「求め過ぎない」香山リカトークショー付き『メッセージ』カップル限定試写会に15組30名様ご招待ロマン・デュリスが大人の苦悩を演じ上げる!『メッセージ』予告編を独占先行配信
2010年09月22日