年末調整で、1月1日から12月31日までの1年間に支払った国民年金保険料は、社会保険料控除として所得控除の対象になります。そのため、勤務先から年末調整の時期になると渡される、給与所得者の保険料控除申告書へ記入し、控除証明書などを添付することで、1年間に支払った国民年金の全額を所得控除することができます。一般に、会社員や公務員などのように、厚生年金保険へ加入している方であれば、直接、国民年金保険料を支払うことはありませんが、実のところ、子供をはじめとした生計を同一にしている方の国民年金を代わりに支払ったとしても、控除の対象になります。そこで本記事では、年末調整と国民年金の関係性を中心に、絶対に押さえておきたいポイントをまとめて紹介します。そもそも社会保険料控除とは何か社会保険料控除について、国税庁のWEBサイトでは、以下のように記述しています。納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができます。これを社会保険料控除といいます。控除できる金額は、その年に実際に支払った金額又は給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。出典:国税庁No.1130 社会保険料控除ざっくりポイントをまとめますと、自分や配偶者、子供、両親など、生計を同一にしている方が負担しなければならない社会保険料を支払った場合は、支払った金額の全額を所得控除できるとしています。なお、社会保険料控除の対象となるものには、雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料といった給料から天引きされる社会保険料をはじめ、国民年金、国民健康保険料(税)、国民年金基金や厚生年金基金の掛金などがあります。大切なポイントは、社会保険料控除の適用を受けられる方は、社会保険料を納めなければならない本人のみに限定されていない部分です。そのため、たとえば、20歳以上の大学生や短大生などといった学生が納めなければならない国民年金を親が代わりに支払った場合、その支払った国民年金について、親が年末調整で社会保険料控除を受けられることを意味します。年末調整で支払った国民年金の控除を受けるためには国税庁平成30年分給与所得者の保険料控除申告書年末調整で支払った国民年金の控除を受けるためには、給与所得者の保険料控除申告書(上記イメージ図の赤枠部分)に必要事項を記入し、併せて、毎年秋ごろになりますと、日本年金機構より郵送される社会保険料(国民年金保険料)控除証明書を添付することで適用が受けられます。具体的な書き方の一例として、以下の前提条件で国民年金を支払った場合をイメージ図と共に紹介しておきます。平成30年の1月1日から12月31日までの1年間において、国税太郎さんは、国税一郎さん(20歳以上の大学生)の国民年金を代わりに納付した平成30年1月から3月までの1ヶ月あたりの国民年金は、月額16,490円平成30年4月から12月までの1ヶ月あたりの国民年金は、月額16,340円これだけ記入すれば完了となりますので、とても簡単に手続きが行えます。もしも、国民年金の控除証明書が年末調整に間に合わない場合は国民年金を支払ったのにも関わらず、時として、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書を紛失してしまった場合や破棄してしまったなどの理由で年末調整の際に、控除証明書の添付が間に合わない場合があるかもしれません。このような場合は、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書でなくても、実際に国民年金を納めた時の控えなど、支払ったことを証明する書類を添付しても差し支えありません。(この方法を活用する場合は、控えの写しを手元に残しておきましょう)国民年金の保険料及び国民年金基金の掛金に係る社会保険料控除の適用については、その保険料又は掛金の金額を証する書類を、確定申告書又は年末調整の際に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」に添付するか、これらの申告書を提出する際に提示する必要があります。出典:国税庁No.1130 社会保険料控除1年間に支払った国民年金について、社会保険料控除の適用を受けるためには、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書が必要とは書かれておらず、保険料又は掛金の金額を証する書類と書かれています。なお、筆者自身も過去に社会保険料(国民年金保険料)控除証明書に代えて、国民年金を支払った際に受け取った控えを添付して控除の適用を受けたことがありますが、何ら問題はありませんでしたので、極度の心配をする必要はないでしょう。確定申告でも社会保険料控除は適用できる国民年金の控除証明書が、年末調整に間に合わない場合のほか、すでに年末調整が終わった後に社会保険料控除の適用ができることに気が付いた場合は、翌年2月16日から3月15日までの確定申告期間中に確定申告をすることで控除の適用も可能です。会社員や公務員といった普段から確定申告をしない方にとってみますと、確定申告をすることは、時間と手間がかかってしまい面倒だと思われるかもしれませんが、社会保険料控除は、支払った全額が所得控除の対象となるため、節税効果は高めです。ちなみに、確定申告で社会保険料控除の適用を受けますと、所得税の還付に加え、翌年、給料から天引きされる住民税の金額にも好影響を及ぼすことになるため、控除が適用できる場合は、率先して忘れずに手続きされることをおすすめします。国民年金は、あくまでも納めた年の控除対象になる国民年金を納めることによって、社会保険料控除の対象になることがわかりましたが、これは、あくまでも、実際に国民年金を納めた年の控除対象になるため、未納や免除期間分の国民年金は、社会保険料控除の対象外となります。たとえば、先の例で、国税太郎さんは、国税一郎さんが納めるべき平成30年の国民年金を実際に納めたからこそ、社会保険料控除の対象となっていることを意味しており、これが未納である場合や学生納付の特例を活用した免除申請を受けた場合は、社会保険料控除の対象外となるわけです。逆に言えば、平成29年分の国民年金が未納の状態であったものの、平成30年中に未納の国民年金を納めた場合は、平成30年中に支払った国民年金の全額について社会保険料控除の対象となることになります。同じく、免除申請を受けていた国民年金を実際に納めた場合も同様の取り扱いとなります。Q1生計を一にしている子供の国民年金保険料を過去3年分まとめて支払いましたが、その支払った全額を私の本年分の社会保険料控除の対象としてよいでしょうか。A1本年中に支払ったものであれば、過去の年分のものであっても本年分の社会保険料控除の対象になります。出典:国税庁No.1130 社会保険料控除国民年金は、未納や免除分も含めて、支払った年の社会保険料控除になるため、年末調整や確定申告で控除の適用を忘れないように心掛けておきたいものです。夫婦のいずれかが自営業者で、事業所得が少ない場合は節税になることも夫婦共働き世帯が多い現在において、夫婦のいずれかが自営業者で、もう一方は会社員や公務員といったケースも考えられます。仮に、このような場合で事業の所得(儲け)が少ない場合や赤字の場合は、会社員や公務員である方へ国民年金を支払った社会保険料控除を適用した方が、世帯にとって有利になる場合も十分に予測できます。仮に、このような特殊な事情がある場合は、一度、専門家を通じて再確認されてみるのをおすすめします。まとめ年末調整と国民年金の関係性を中心に解説を進めてきましたが、絶対に押さえておきたいポイントは、以下の通りです。1月1日から12月31日までの1年間に支払った国民年金は、社会保険料控除の対象支払った国民年金は、本人だけではなく、配偶者や子供など生計同一の方が負担するべきものであれば、年末調整や確定申告で控除が可能国民年金は、あくまでも納めた年の控除対象になるため、過去に未納や免除を受けたものを納めることで控除金額が増加し、納めるべき税金が少なくなる夫婦のいずれかが自営業者で、事業所得が少ない場合は節税になることもあるため、社会保険料控除の適用が適切か再確認する押さえておきたいポイントは、決して難しいものではありませんので、いま一度確認していただきまして、今後に活かしてもらえればと思います。
2018年12月28日年末調整で生命保険料控除の適用を受けるためには、毎年秋ごろになると、加入している保険会社から郵送で送られてくる生命保険料控除証明書を添付し、給与所得者の保険料控除申告書と呼ばれる書類に必要事項を記入して勤務先に提出する必要があります。通常、生命保険料控除は、基本的に何かしらの生命保険に加入している方が適用を受けることができる所得控除であり、多くの方にとって馴染み深いものであると思われますが、筆者の実務経験上、賢く活用できていない場合も多く目にします。そこで本記事では、年末調整で生命保険料控除を賢く適用するためのポイントを紹介し、併せて、夫婦共働きに多いもったいない事例も紹介します。生命保険料控除の基本的なポイント年末調整で生命保険料控除を賢く適用するためのポイントを知るためには、まず、生命保険料控除の基本的なポイントを知っておくことが大切です。ここで紹介する生命保険料控除の基本的なポイントは、すでに多くの皆さまがご存知のことも多いと思いますが、再確認といった意味合いも含めて目通しいただければと思います。生命保険料控除は、新制度と旧制度の2つに分けられる生命保険料控除は、保険契約をした時期が、平成24年1月1日以後なのか、平成23年12月31日以前なのかによって、新制度なのか旧制度なのかに分けられ、生命保険料控除の金額が異なる特徴があります。新制度(平成24年1月1日以後の保険契約)旧制度(平成23年12月31日以前の保険契約)新制度の生命保険料控除は3種類、旧制度の生命保険料控除は2種類新制度の生命保険料控除は、大きく、一般用、介護医療用、個人年金用といった3種類に分けられ、旧制度の生命保険料控除は、大きく一般用と個人年金用の2種類に分けられる特徴があります。また、1つの種類ごとに、先に紹介した計算式にあてはめた生命保険料控除が適用されることになるため、新制度では、最大で120,000円の生命保険料控除が適用でき、旧制度では、最大で100,000円の生命保険料控除が適用できます。ちなみに、支払った生命保険料が、どちらの制度で、どの生命保険料控除の対象となるかわからないといった方もおられると思いますが、こちらにつきましては、保険会社などから送られてくる生命保険料控除証明書に必ず記載されておりますので、それを見ることによって確認することができます。以下、制度の確認の仕方になります。損保ジャパン日本興亜ひまわり生命生命保険料控除証明書【見本】生命保険料控除証明書は、それぞれの保険会社によって書式が異なりますが、旧制度と新制度といった文言が必ず記載されているほか、一般用、介護医療用、個人年金用といった文言も必ず記載されています。上記イメージ図の場合ですと、旧制度の欄に支払った保険料の金額が記載されているため、旧制度の対象となる生命保険契約であることがわかります。また、一般用という文言が記載されていることから、この保険契約は旧制度で一般用の生命保険料控除が対象になると判断することができます。仮に、上記の保険契約のみである場合、1年間に支払った保険料は、282,850円(申告額)となるため、以下の表にあてはめますと、生命保険料控除は、50,000円となります。旧制度(平成23年12月31日以前の保険契約)生命保険料控除を適用するための給与所得者の保険料控除申告書の書き方冒頭でもお伝えしましたように、年末調整で生命保険料控除の適用を受けるためには、保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書を添付し、給与所得者の保険料控除申告書と呼ばれる書類に必要事項を記入して勤務先に提出する必要があります。ここでは、一例として、先に紹介した生命保険料控除証明書を実際に、給与所得者の保険料控除申告書へ記入したものを流れに沿って紹介します。給与所得者の保険料控除申告書と生命保険料控除証明書を用意するはじめに、勤務先から渡された給与所得者の保険料控除申告書と加入している保険会社から届いたすべての生命保険料控除証明書を用意します。紹介する例は、1枚のみですが、すべての生命保険料控除証明書を用意しておきましょう。生命保険料控除証明書を見ながら給与所得者の保険料控除申告書へ記入する赤枠の部分が、生命保険料控除の適用を受けるために記入する欄となります。向日葵太郎さんの加入している生命保険は、旧制度の一般用に該当しますので、一般の生命保険料の欄に記入します。なお、保険会社等の名称や保険等の種類は、生命保険料控除証明書に記載されておりますので、その通りに記入することで足ります。生命保険料控除の計算式も記載されているため、すでに紹介した新制度なのか旧制度なのかを確認し、一般用、介護医療用、個人年金用を確認できれば、後は、それぞれの欄に同じように記入することで作成が簡単にできます。実務上、夫婦共働きに多いもったいない事例を紹介生命保険料控除は、多くの皆さまにとって馴染み深い所得控除ですが、その一方で、賢く生命保険料控除を適用できていないケースが見受けられます。ここでは、筆者個人の実務経験によるものとなりますが、平成30年中に実際にあった相談事例の中から、生命保険料控除を賢く適用できていなかった2つの事例を紹介させていただきます。①保険契約者の名義のまま生命保険料控除を適用していたやはり今年もありました、というのが筆者の率直な感想なのですが、筆者は、独立系FPという職業柄、ライフプランニングの相談などでお客様の源泉徴収票や加入している保険証券の内容を見ることがあります。この時、これらの情報から生命保険料控除を賢く適用できていないことが簡単に確認できるのですが、受け取った生命保険料控除証明書を保険契約者の名義のまま適用することによって、世帯全体で節税できていない場合が多く見受けられます。たとえば、2人の子供に対する学資保険に加入していて、それぞれ1年間で150,000円ずつ学資保険料を支払っていたとします。(わかりやすくするために、学資保険のみに加入しているものとします)この時、夫婦共働きで、かつ、保険契約者が夫、いずれの学資保険も新制度であった場合の生命保険料控除は、以下のように適用している場合が多く見受けられます。仮に、夫婦共働きである場合、せっかく妻も生命保険料控除を適用できるのにも関わらず、保険契約者でなければならないと勘違いしていて、賢く生命保険料控除を適用できないのは、非常にもったいないことです。なお、夫が支払った学資保険の生命保険料控除について、妻も適用を受けられる根拠は、以下、国税庁が回答している通りです。【照会要旨】当社の従業員Aは、妻Bが契約者となっている生命保険の保険料を支払ったとして、妻B名義の生命保険料控除証明書を添付した保険料控除申告書を提出してきました。当社で年末調整を行う際に、その保険料を生命保険料控除の対象としてよいでしょうか。なお、その生命保険の被保険者及び満期保険金の受取人はB、死亡保険金の受取人はAとなっています。【回答要旨】Aがその保険料を支払ったことを明らかにした場合は、生命保険料控除の対象として差し支えありません。生命保険料控除は、居住者が一定の生命保険契約等に係る保険料又は掛金を支払った場合に総所得金額等から控除することができます(所得税法第76条第1項)。この生命保険契約等については、その保険金等の受取人の全てがその保険料等の払込みをする者又はその配偶者その他の親族(個人年金保険契約等である場合は、払込みをする者又はその配偶者)でなければなりませんが、必ずしも払込みをする者が保険契約者である必要はありません(所得税法第76条第5項、第8項)。したがって、保険契約者が保険料を支払うのが通例ですが、契約者の夫であるAが支払ったことを明らかにした場合には、Aの生命保険料控除の対象となります。出典:国税庁 妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除通常、1つの保険契約に対して1つの生命保険料控除証明書が発行されるため、2人の子供の学資保険に対する生命保険料控除もそれぞれ1枚ずつになります。したがって、以下のように割り振りして生命保険料控除を適用したとしても、国税庁は差し支えないとしています。世帯全体で加入している生命保険を賢く割り振りすることによって、節税対策となることに加え、配偶者は、保険契約者でなくても生命保険料控除が適用できる点も押さえておきたいポイントと言えます。新制度と旧制度のどちらも対象になっているのにも関わらず、新制度のみ適用新制度と旧制度では、生命保険料控除の対象金額が異なりますが、新制度では、1年間に100,000円を超えて生命保険料を支払った場合、一律50,000円の生命保険料控除が適用でき、旧制度では、1年間に80,000円を超えて生命保険料を支払った場合、一律40,000円の生命保険料控除が適用されます。仮に、新制度と旧制度でいずれも100,000円を超えて生命保険料を支払った場合は、合わせて90,000円(新制度40,000円+旧制度50,000円)とはならず、いずれか大きい方の生命保険料控除が適用されます。そのため、このような場合ですと、旧制度の生命保険料控除は確実に適用されるようにしておく必要があるのですが、実際の相談事例において、なぜか、旧制度の生命保険料控除を適用せずに、新制度のみを適用しているケースがありました。仮に、旧制度の一般用や個人年金用の生命保険料控除が適用できる場合には、新制度よりも優先して適用するように心掛けておきたいものです。まとめ年末調整で生命保険料控除を賢く適用するためのポイントについて、実際にあった相談事例を紹介しながらポイントを解説させていただきました。生命保険料控除は、実際に適用される所得控除の上限金額が大きいとは言えないものの、さまざまな種類の生命保険に加入している方が多いことを踏まえますと、賢く適用するための工夫は、極めて大切になります。夫婦共働きの場合や多くの種類の生命保険へ加入されている方は、本記事をきっかけに、一度、ご自身が適用している生命保険料控除が無駄なく適用されているのか確認されてみることをおすすめします。
2018年12月27日配偶者控除や配偶者特別控除は、1月1日から12月31日までの1年間において、配偶者の収入(所得)が一定金額の範囲内であれば、適用することができる税金の軽減制度です。平成30年4月より、この配偶者控除や配偶者特別控除の範囲が広がったことに伴い、これまでよりも多くの方が、控除の対象になることが予測され、併せて、年末調整において、新たに給与所得者の配偶者控除等申告書と呼ばれる書類を記入し、勤務先に提出する必要が生じました。そこで本記事では、年末調整で配偶者控除や配偶者特別控除を適用するために必要な基本的な部分を解説し、併せて、給与所得者の配偶者控除等申告書の書き方についても紹介していきます。配偶者控除・配偶者特別控除とは配偶者控除および配偶者特別控除とは、夫や妻を扶養している場合に適用することができる所得控除にあたり、所得税や住民税を軽減させることができる制度のことを言います。ただし、配偶者控除または配偶者特別控除の適用を受けるためには、本人の収入金額(所得金額)と配偶者の収入金額(所得金額)のいずれも一定の条件にあてはまっていなければならなくなりました。国税庁平成 30 年分以降の配偶者控除及び配偶者特別控除の取扱いについて上記表を参考に、仮に、本人および配偶者の収入が給料のみの方で、配偶者控除または配偶者特別控除の適用を受ける条件をまとめますと以下のようになります。本人の1年間の年収(給与)が1,220万円以下であること配偶者の年収(給与)が201.6万円未満であること上記2つの条件をどちらも満たしていることで、配偶者控除または配偶者特別控除のいずれかが適用できることになります。くどいようですが、上記は、本人および配偶者が給与収入のみである場合を前提としているため、たとえば、株式投資などによる配当所得がある場合やその他の所得がある場合におきましては、精査確認が必要となりますので、専門家にあたる税理士や税務署へ尋ねるようにして下さい。年末調整で配偶者控除や配偶者特別控除を適用するための方法ここからは、多くの皆さまが気になる年末調整で配偶者控除や配偶者特別控除を適用するための方法をいくつかの具体例をあげて紹介していきたいと思います。配偶者控除が適用できる具体例まずは、配偶者控除が適用できる具体例について、以下の前提条件のもと、具体的な流れと共に紹介していきます。平成30年中における国税太郎さんの給与収入は800万円とします平成30年中における国税花子さん(太郎さんの配偶者)の給与収入は140万円とします花子さんの年齢は、70歳未満であるものとします住所・生年月日・マイナンバーは仮のものです配偶者控除を適用する方は、国税太郎さんをご自身に置き換えて考えていくと、よりイメージがわきやすくなると思います。給与所得者の配偶者控除等申告書へ必要事項を記入する給与所得者の配偶者控除等申告書へ氏名、住所、配偶者の氏名、配偶者のマイナンバーなど必要事項を記入しておきます。国税太郎さんの収入と所得を記入する1年間の収入800万円を収入金額等の欄へ記入し、給与所得者の配偶者控除等申告書の裏面に記載されている3.所得の区分を下に、所得金額を計算します。800万円×90%-120万円=600万円(給与所得)配偶者控除の適用を受けるための判定をする国税太郎さんは、給与所得が600万円で、他の所得がないため、本年中の合計所得金額の見積額に600万円と記入し、Aの欄にレ点チェックを入れ、併せて、右欄の区分IにAと記載します。国税花子さんの収入と所得を記入する1年間の収入140万円を収入金額等の欄へ記入し、給与所得者の配偶者控除等申告書の裏面に記載されている3.所得の区分を下に、所得金額を計算します。140万円-65万円=75万円(花子さんの給与所得)配偶者控除の適用を受けるための判定をする国税花子さんは、給与所得が75万円で、他の所得がないため、配偶者の本年中の合計所得金額の見積額に75万円と記入します。花子さんは、年齢が70歳未満ですので、②にあてはまることから、②へチェックを入れ、併せて、右欄の区分Ⅱに②と記載します。国税太郎さんと国税花子さんの判定から配偶者控除金額を確認する国税太郎さんは、区分IのA(青色枠)で、国税花子さんは、区分Ⅱの②(ピンク枠)でしたので、これらが交わる金額が配偶者控除の金額となります。この判定の結果、国税太郎さんは、38万円の配偶者控除の適用が可能だとわかります。以下、給与所得者の配偶者控除等申告書を記入後の完成イメージとなります。配偶者特別控除が適用できる具体例今度は、配偶者特別控除が適用できる具体例について、以下の前提条件の下、具体的な流れと共に紹介していきます。平成30年中における国税太郎さんの給与収入は800万円とします平成30年中における国税花子さん(太郎さんの配偶者)の給与収入は170万円とします花子さんの年齢は、70歳未満であるものとします住所・生年月日・マイナンバーは仮のものです先に紹介した配偶者控除と同じ流れの部分については省略させていただきまして、異なる部分のみを紹介していきますので、あらかじめご留意下さい。国税花子さんの収入と所得を記入する1年間の収入170万円を収入金額等の欄へ記入し、給与所得者の配偶者控除等申告書の裏面に記載されている3.所得の区分をもとに、所得金額を計算します。①:(A)÷4(千円未満切捨て)=(B)⇒②:(B)×2.4=(C)上記計算式にあてはめて計算します。170万円÷4(千円未満切捨て)=42.5万円5万円×2.4=102万円(花子さんの給与所得)配偶者控除の適用を受けるための判定をする国税花子さんは、給与所得が102万円で、他の所得がないため、配偶者の本年中の合計所得金額の見積額に102万円と記入します。花子さんの本年中の合計所得金額は、102万円ですので、④にあてはまることから、④へチェックを入れ、併せて、右欄の区分Ⅱに④と記載します。国税太郎さんと国税花子さんの判定から配偶者控除金額を確認する国税太郎さんは、区分IのA(青色枠)で、国税花子さんは、区分Ⅱの④(ピンク枠)となりますが、花子さんの本年中の合計所得金額は、102万円ですので、④の内、100万円超105万円以下の欄に該当します。これらが交わる金額が、配偶者特別控除の金額となりますが、判定の結果、国税太郎さんは、21万円の配偶者特別控除の適用が可能だとわかります。配偶者特別控除の適用は、配偶者の収入に特に注意が必要配偶者控除や配偶者特別控除が適用できる場合と給与所得者の配偶者控除等申告書の書き方について紹介をさせていただきましたが、配偶者特別控除の適用を受ける場合には、配偶者の収入に特に注意が必要です。これは、配偶者特別控除の金額は、配偶者の収入によって段階的に異なっているところにあるためです。たとえば、先の例において、国税花子さんの年収は170万円であるものとして配偶者特別控除を計算し、その結果、国税太郎さんは、21万円の配偶者特別控除の適用を受けられることがわかりました。仮に、国税花子さんの年収が170万円ではなく、176万円だった場合は、どうでしょう?年収がたった6万円しか変わらないだけで、配偶者特別控除の金額が異なっていることがわかります。この部分が極めて重要であり、配偶者の1年間の収入金額が正確でなければ、実際に適用した配偶者特別控除の金額と本来適用になる配偶者特別控除の金額に差異が生じてしまうことになります。このようなことになってしまいますと、結果として修正申告などのやり直しが必要になってくるため、かえって時間や手間がかかってしまいます。そのため、特に、配偶者特別控除を適用する場合におきましては、配偶者の1年間の収入が確定している状態で適用をすることが望ましく、12月の給与や賞与の計算が完了した後の1年間の正確な収入金額を下に計算するのが良いと筆者は感じています。まとめ年末調整で配偶者控除や配偶者特別控除を適用するのは簡単ですが、本人と配偶者の判定が必要になるため、少々の手間がかかるのは確かです。配偶者控除の適用を受ける側であれば、いわゆる高所得者でなければ特別の問題が生じることはありませんが、対象となる配偶者に収入がある場合は、金額や所得の種類を詳しく精査する必要性が生じます。そのため、配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受ける方は、配偶者の収入や所得に注意して適用を受けるように心掛けておくようにしたいものです。
2018年12月27日年末調整で扶養控除の適用を受けるためには、勤務先から渡される給与所得者の扶養控除等(異動)申告書へ扶養している方の年齢やマイナンバーを記入する必要があります。通常、扶養控除が適用できる一般的なケースには、子供が高校生や大学生などで扶養していることに加え、年金生活の両親を扶養している場合などが多いと思われますが、何よりも、どのような場合に扶養控除が適用できるのか、ポイントをしっかりと押さえておくことが大切です。そこで本記事では、扶養控除の基本的なポイントの紹介をはじめ、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方や扶養控除が適用できるケースも広く紹介していきます。扶養控除とは?国税庁のWEBサイトでは、扶養控除について、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられますと記載しています。ここで言う控除対象扶養親族とは、その年の12月31日時点で以下、5つの要件にすべてあてはまっている人のことを言います。配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること納税者と生計を一にしていること年間の合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと年齢がその年の12月31日時点で、年齢が16歳以上であること上記の内容をざっくりまとめますと、収入がない家族(親族)や収入の少ない家族(親族)を扶養している場合で、年齢が16歳以上であれば、扶養控除の対象になるといったことになります。なお、0歳から15歳までの子供を育てている方は、子供を扶養控除の対象にすることはできませんが、その代わりとして、児童手当が支給される仕組みになっています。扶養控除は、年齢や同居の有無によって所得控除の金額が異なる扶養控除は、その年の12月31日時点での年齢が16歳以上の方で、先に紹介した要件に当てはまる方が対象となりますが、年齢や同居の有無によって所得控除の金額が異なる特徴があります。平成30年12月現在の法令に基づき筆者作成おもなポイントとして、19歳以上23歳未満といった大学生、短大生、専門学校生に多い年齢の方を扶養している場合は、扶養控除の金額が大きくなっていることに加え、70歳以上の両親や祖父母を扶養している場合も扶養控除の金額が大きいところにあります。通常、大学生、短大生、専門学校生は、教育費が多くかかる年ごろであり、70歳以上ですと、医療や介護にかかるお金が多くなるとも考えられ、このような方々を扶養している方には、厚みのある優遇がなされていると見ることもできます。また、ご自身と血のつながった両親や祖父母は、直系尊属にあたるため、同居をして扶養している場合は、同居していない場合に比べて厚みのある優遇がなされていることもわかります。扶養控除を適用するための給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方扶養控除の基本的なポイントについてお伝えしたところで、ここでは、扶養控除を適用するための給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方について紹介していきます。なお、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記載にあたっての家族構成は、以下の表の通りとします。なお、生年月日は記入省略、住所やマイナンバーの記入は仮のものとし、国税太郎さんは、家族全員を扶養しているものとします。※国税庁 給与所得者の扶養控除等申告書(入力用)より筆者作成国税花子さんは、配偶者にあたるため、源泉控除対象配偶者の欄に記入します。国税一郎さん、国税二郎さん、国税カネさんは、いずれも扶養控除の対象となるため、控除対象扶養親族欄にそれぞれ記入します。なお、一郎さんは19歳のため、特定扶養親族、二郎さんは18歳のため、一般扶養親族(その他)、カネさんは、80歳で国税太郎さんと血のつながった母親であるほか、同居している理由から、直系尊属同居老親になるため、同居老親等にそれぞれレ点を記入します。今回の例では、所得金額はいずれも0円で住所もすべて同じであることから、イメージ図のように記入します。国税三郎さんは、扶養控除の対象外ですが、住民税に関する事項欄への記入が必要となりますので、氏名、マイナンバー、住所等を他の方と同じように記入します。これで作成は完了です。参考:国税太郎さんの配偶者控除と扶養控除は合わせていくら?こちらは参考情報となりますが、国税太郎さんが1年間に適用できる配偶者控除と扶養控除を合わせた金額は、以下の表の通りとなります。扶養控除が適用できる特殊なケースを3つ紹介本記事の最後に、知っておくと得になるかもしれない扶養控除が適用できる特殊なケースを3つ紹介していきたいと思います。筆者個人の相談経験や実務経験で対応したものもいくつか紹介していきますが、知っておくといつかは役に立つかもしれませんので、参考までに目通しいただければと思います。扶養親族が死亡した場合もその年は扶養控除の対象になるこちらは、両親や祖父母を扶養している方に多い事例となりますが、仮に、扶養している両親や祖父母が年の途中で死亡した場合、扶養控除が適用できる12月31日前のことであるため、扶養控除の対象外と思っている方もおられます。しかし、扶養親族が死亡した場合は、死亡の時の現況で判断するため、死亡した時に扶養していた場合は、死亡した方をその年の扶養控除の対象にできる決まりになっています。たとえば、先の例で、国税カネさんが平成30年中に死亡した場合、国税太郎さんは、国税カネさんを扶養の対象とした扶養控除が適用できることを意味しています。遺族年金の支給を受けている年金受給者は、扶養控除の対象となるこちらは、本年、筆者のところへ相談に来たお客様の実際にあった事例となりますが、基本的に65歳以上で遺族年金の支給を受けている年金受給者は、扶養控除の対象となります。遺族年金は、所得税法上、非課税の扱いとなっており、100万円であったとしても200万円であったとしても、金額を問わず、収入とはみなしません。また、65歳以上の遺族年金の支給を受けている年金受給者は、ご自身が受け取る国民年金が仮に満額の支給を受けていたとしても、計算上、所得が0円となります。そのため、65歳以上で遺族年金の支給を受けている年金受給者は、扶養控除の対象となりますので、ご自身の将来の知識として知っておくほか、両親などはどうなのか再確認されてみることをおすすめします。別居の両親などへの仕送りは、形として証拠を残しましょうこちらも、本年、筆者のところへ相談に来たお客様の実際にあった事例となりますが、別居している母親に対して仕送りを行っており、扶養控除の適用を受けられているのを源泉徴収票から確認することができました。珍しいケースだなと率直に感じましたが、別居の両親などへ定期的に仕送りをする場合は、必ず、その仕送りがわかるように、たとえば、銀行口座からの振込のように形として証拠を残しておくことが極めて重要です。こちらに関しましては、別居の両親に仕送りをしたからといって、必ず扶養控除の対象になるとは限らず、場合によっては、贈与の問題にも発展しかねませんので、専門家である税理士や税務署などへ尋ねてみることをおすすめします。まとめ扶養控除の基本的なポイントの紹介をはじめ、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方や扶養控除が適用できるケースも広く紹介させていただきました。扶養控除は、たとえば、会社員の子供が1年の途中で失業して無職になった場合やこれまで別生計であった両親と同居するようになったなど、特殊な事情が発生した場合は、適用できる可能性があります。そのため、いつもと違って特殊な事情が生じた場合は、扶養控除が適用できるのか確認されてみることがとても大切になります。
2018年12月26日サラリーマンは年末調整書類の「給与所得者の保険料控除申請書」を毎年記入し、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を添付して提出している方が多くいらっしゃいますが、その書類を提出するとどういう効果があっていくら得するのか正確にご存じの方は少ないのではないかと思います。これから、「生命保険料控除」がどういう制度で、どのような効果があるのかをご紹介します。長期間積み重ねると数十万単位で税金の負担が軽減される生命保険料控除のことをよく知り、税制上の優遇制度をしっかり利用しましょう。生命保険料控除ってどういうもの?生命保険料控除とは、払い込んだ保険料に対して一定の金額が生命保険契約者の所得から差し引かれる制度です。所得が低くなることで、所得税、住民税の負担が軽減されます。生命保険料控除は国税庁が定める所得控除の一つです。他には、医療費控除、社会保険料控除、配偶者控除など全部で20項目があります。新制度と旧制度生命保険料控除には新制度と旧制度があり、対象となる保険契約が違っています。生命保険料控除の新制度は「平成24年1月1日以後に契約した生命保険等」が対象になり、旧制度は平成23年12月31日以前の契約が対象です。以下は対象となる保険の区分です。生命保険料控除の対象区分は、新制度には一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除、旧制度には一般生命保険料控除、個人年金保険料控除があります。新制度では介護医療保険料控除が新たに加わっています。社会的に介護のニーズが高まり、社会保障に頼らず介護に備えて保険料を負担する方に対して税制上の優遇が受けられるようになりました。その他にも控除額が変更になっているので、次項で新制度と旧制度の控除額をご紹介します。新制度と旧制度の所得税控除額生命保険料控除の控除額は、その年の1月1日から12月31日までに払い込んだ年間払込保険料で決まります。新制度の所得税控除額は以下の式で計算します。新制度(平成24年1月1日以降)の契約で、毎月1万円の保険料を支払っている場合は、年間の支払保険料が12万円です。年間の支払保険料は8万円を超えているので、所得から4万円控除されます。その4万円に所得に応じた税率(5~45%)をかけた金額分の税金が軽減されます。旧制度の所得税控除額は以下の式で計算します。旧契約(平成23年12月31日以前の契約)で、毎月1万円の保険料を支払っている場合は、年間の保険料が12万です。年間の保険料は10万円を超えているので、所得から5万円控除されます。その5万円に所得に応じた税率(5~45%)をかけた金額分の税金が軽減されます。新契約と旧契約の双方について生命保険料控除を適用する場合は、新契約と旧契約の控除額を合計(最高4万円)した金額が控除額です。また、新制度には3つの控除(一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除)、旧制度には2つの控除(一般生命保険料控除、個人年金保険料控除)がありますが、それぞれで控除が受けられます。一般生命保険だけでなく、個人年金や介護保険に加入している方は税金の負担がより軽減されます。新制度で3つの控除を受けた場合の所得税の限度額は12万円、2つの控除を受けた場合の所得税の限度額は8万円、1つの控除を受けた場合の所得税の限度額は4万円です。旧制度で2つの控除を受けた場合の所得税の限度額は10万円、1つの控除を受けた場合の所得税の限度額は5万円です。毎年戻ってくるお金は微々たるものかもしれませんが、生命保険は10年以上の長期契約がほとんどです。生命保険に加入されているのであれば、年末調整時や確定申告時に生命保険料控除を申請することで、長期的に考えて数十万のお金が戻って来る場合があります。面倒でも生命保険料控除の申告は行ってください。新制度と旧制度の住民税控除額生命保険料控除は住民税でも利用できます。下表は新制度での住民税の控除額です。下表は旧制度での住民税の控除額です。これらの税率に住民税の税率10%(一律)をかけた金額が実際に負担が軽減される税金の金額です。例えば、新制度で年間10万円の保険料を支払っている方は控除額が2.8万円です。この金額に住民税の税率10%をかけた金額である2,800円の税金の負担が軽減されます。新制度で3つの控除を受けた場合の住民税の限度額は7万円、2つの控除を受けた場合の限度額は5.6万円、1つの控除を受けた場合の限度額は2.8万円です。旧制度で2つの控除を受けた場合の住民税の限度額は7万円、1つの控除を受けた場合の所得税の限度額は3.5万円です。生命保険料控除手続きここからは、生命保険料控除の手続きをご紹介します。生命保険料控除の手続きはサラリーマンと自営業で異なっています。サラリーマンサラリーマンの生命保険料控除は、年末調整の時に「給与所得者の保険料控除申告書」に毎年10月~11月に保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を付けて提出することで手続きが完了します。年末調整で生命保険料控除手続きができなかった場合は、確定申告で手続きができます。5年間さかのぼって還付の申告ができるので5年以内の手続きが済んでいない方はまだ間に合いますので申告されてください。自営業自営業の生命保険料控除は確定申告(毎年2月16日~3月15日)で手続きできます。サラリーマン同様、毎年10月~11月に保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を添付して確定申告します。平成28年から確定申告にはマイナンバーが必要ですので、確定申告を行う際にはマイナンバーをご用意ください。生命保険料控除でどれくらい負担が軽減されるの?ここでは生命保険料控除で実際どれくらい税金の負担が軽減されるのかをご紹介します。実際軽減される所得税所得税の税率は5~45%と所得により異なっています。生命保険料控除額に下表の税率をかけた金額が生命保険料控除で軽減される所得税です。例えば、新制度で年間10万円の保険料を支払っている方は控除額が4万円です(前項「新制度と旧制度の控除額」表参照)。この4万円に対してご自身の所得が「330万円を超え695万円以下」の場合は税率20%をかけた金額である「8,000円」が生命保険料控除で軽減される所得税です。サラリーマンは年末調整後にこの金額が還付されます。ご注意いただきたいのは、年末調整では還付されるだけでなく、扶養家族が減った場合や賞与が高額になった場合に「不足金額の徴収」が行われる点です。実際軽減される住民税住民税の税率は一律10%です。前項「新制度と旧制度の住民税控除額」で紹介した住民税の控除額に10%をかけた金額が実際に負担が軽減される税金の金額です。例えば、新制度で年間10万円の保険料を支払っている方は控除額が2.8万円です。この金額に住民税の税率10%をかけた金額である2,800円の税金の負担が軽減されます。生命保険料控除で軽減される実際の金額年収が330万円~695万円以下の方が新制度で年間10万円の保険料を支払っている場合は、所得税で8,000円、住民税で2,800円、一年間で合計10,800円の税金負担が軽減されます。これが30年続くと32.4万円です。生命保険は長期間契約が続きます。生命保険料控除は面倒でも毎年申請し、税制上の優遇を受けてください。まとめこれまで「生命保険料控除ってどういうもの?」「生命保険料控除手続き」「生命保険料控除でどれくらい負担が軽減されるの?」をみてきました。一年間の節税効果は少ない金額であっても、長期間生命保険に加入することで小さな金額が積み重なり、数十万円になることがわかりました。生命保険料控除の手続きは難しくないので、サラリーマンの方は年末調整で、自営業の方は確定申告で忘れずに生命保険料控除を申請してください。
2018年12月22日ふるさと納税は、都道府県や市区町村に対して寄附を行った場合に、納めるべき所得税や住民税を減らすことができる制度にあたり、所得税法上では、寄附金控除として所得控除の対象になります。実際のところ、総務省が公開しているふるさと納税のポータルサイトを見ていきますと、一見、税額控除のように感じている方も多いと思いますが、こちらにつきましては、国税庁のWEBサイトや実際に確定申告書をe-taxで作成するとその理由が明白です。そこで本記事では、国税庁が公開している様々な情報を下に、源泉徴収票から実際に確定申告書を作成して、ふるさと納税が、所得税法上、所得控除である理由を検証した結果を紹介していきます。ふるさと納税をした寄附金が、所得税法上、所得控除である理由ふるさと納税をした寄附金が、所得税法上、所得控除である理由は、以下、国税庁が公開しているWEBサイトの寄附金控除について、解説を見ることで確認ができます。国や地方公共団体、特定の公共法人などに寄附をした場合は、確定申告を行うことで、所得税及び復興特別所得税が還付される場合があります。個人が特定寄附金を支出したときは、寄附金控除として所得金額から差し引かれます。個人が支出した政治活動に関する寄附金のうち政党若しくは政治資金団体に対する寄附金又は個人が支出した認定NPO法人等若しくは公益社団法人等に対する寄附金については、1寄附金控除(所得控除)の適用を受けるか、2寄附金特別控除(税額控除)の適用を受けるか、どちらか有利な方を選ぶことができます。出典:国税庁 寄附金を支出したとき 個人が支出した寄附金の控除上記の解説をまとめますと、寄附をした先が、政党・政治資金団体・認定NPO法人等・公益社団法人等であれば、所得控除と税額控除の内、納税負担が軽くなる方を選択しても良いとしています。ふるさと納税の場合は、寄附をした先が、都道府県や市区町村といった地方自治体にあたり、政党・政治資金団体・認定NPO法人等・公益社団法人等にあてはまらないため、税額控除は適用できず、所得控除されることになるというわけです。ふるさと納税が、税額控除として見られる理由も実はあるふるさと納税をした寄附金は、所得税法上、所得控除になることをお伝えしましたが、国税庁のWEBサイトでは、参考情報として、住民税の税額控除についても触れています。個人住民税における寄附金税額控除について都道府県・市区町村や住所地の都道府県共同募金会・日本赤十字社支部に対する寄附金、住所地の都道府県・市区町村が条例で指定した寄附金を支出した場合は、住民税(翌年度)において寄附金税額控除を受けることができます。この寄附金税額控除を受けるには、原則として所得税及び復興特別所得税の確定申告又は住所地の市区町村に簡易な申告書による申告を行っていただく必要があります。出典:国税庁 寄附金を支出したとき 特定寄附金とはふるさと納税は、都道府県や市区町村に対する寄附であることは、すでにお伝えした通りですが、上記の参考情報を見ますと、都道府県・市区町村に対して寄附をした場合で、確定申告など必要な手続きを行った場合、翌年度に納める住民税から直接減額される寄附金税額控除が受けられるとしています。このような理由から、ふるさと納税は、実のところ所得控除と税額控除が入り混じっており、少々複雑でわかりづらい仕組みになっていると考えることができます。ここまでの解説のポイントを以下へまとめます。ふるさと納税を行った寄附金は、所得税法上、所得控除の対象ふるさと納税を行った寄附金は、個人住民税の寄附金税制において税額控除の対象つまり、所得税や住民税といった税金の種類によって、ふるさと納税の寄附金は、取り扱いのされ方が変わることを意味します。源泉徴収票から実際に確定申告書を作成して検証ここからは、実際に国税庁がサンプルとして公開している源泉徴収票を下に、ふるさと納税をしたものと仮定し、e-taxを利用して確定申告を行ったものとしてポイントを紹介していきます。国税庁 平成30年 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引上記の源泉徴収票を下に、国税太郎さんが、平成30年中にふるさと納税を7万円寄附したものとし、確定申告書をe-taxを利用して作成していくものとします。源泉徴収票の支払金額と確定申告書の収入金額等の給与の金額が合致しています。また、源泉徴収票の給与所得控除後の金額と確定申告書の所得金額も合致していることが確認できます。源泉徴収票の所得控除の額の合計額と確定申告書の(16)が合致しています。また、ふるさと納税を70,000円行ったことによって、所得控除として68,000円の寄附金控除の適用がされていることが確認できます。ふるさと納税を行って寄附金控除の適用を受けた結果、国税太郎さんが納めるべき所得税は、161,600円であることが確認できます。ただし、住宅ローン控除が140,000円あるため、直接差し引いた21,600円が納めるべき所得税となり、これに2.1%を乗じた金額453円を加えた22,053円が納めなければならない税金ということになります。国税太郎さんは、すでに所得税と復興特別所得税を合わせて28,900円納めているのですが、ふるさと納税を行ったことによって、本来納めるべき税金は、22,053円で済むことになりました。つまり、28,900円から22,053円を差し引いた6,847円が本来納めるべき税金よりも多く納めていることになるため、この金額が還付(戻ってくる)お金となります。手引きが公開されているため、確定申告書をe-taxで作成するのは簡単ふるさと納税の寄附金控除を確定申告で適用することに対して、抵抗がある方は、とても多いと思いますが、実のところ、会社員や公務員のように普段、確定申告と馴染みが無い方であったとしても、手順通りに行うことで、誰でも簡単に確定申告書が作成できる手引き(マニュアル)が公開されています。こちらにつきましては、同サイト内で公開している別の記事で紹介しておりますので、併せて読み進めてみることをおすすめします。確定申告が無理そうな方は、ワンストップ特例制度の活用を検討しましょうふるさと納税の節税効果を受けるには、すでに紹介した確定申告を行うほかにも、ワンストップ特例制度を活用するといった方法もあります。ワンストップ特例制度とは、基本的に確定申告が不要となっている会社員や公務員などのように、給与の支給を受けている方が制度の対象で、この制度を活用しますと、確定申告を行わなくとも、先に紹介した個人住民税における寄附金税額控除を受けることができます。ただし、ワンストップ特例を活用するには、ふるさと納税をする地方自治体に対して特例の適用に関する申請書を提出する必要があるほか、その年の1月1日から12月31日までの1年間を通じて、5つ以下の都道府県や市区町村に対して行った場合に活用できるなどの条件があります。なお、ふるさと納税の節税効果は、確定申告を行ったとしても、ワンストップ特例制度を活用したとしても、節税効果は同じになるため、特に、会社員や公務員の皆さまは、どちらの方法も確認した上で、活用しやすい方を選ぶのが望ましいでしょう。まとめふるさと納税を行った寄附金は、所得税法上では所得控除となり、個人住民税の寄附金税制においては税額控除となることがわかりました。所得控除・税額控除のいずれにしましても、ふるさと納税の節税について、確定申告をした場合もワンストップ特例制度を活用した場合も効果が同じところが大きなポイントになります。ただし、所得税の還付金や住民税の税額控除される金額は、確定申告を行った場合とワンストップ特例制度を活用した場合では、金額が異なるため、どのように異なるのか、比較したものを確認しておくことも大切です。この辺の比較シミュレーションも公開しておりますので、本記事と併せて、以下、記事を読んでみることを強くおすすめします。
2018年12月05日住まいを購入する際には、住宅ローンを組む人が大半です。そして、住宅ローンには控除があります。住宅ローン控除とは、年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価のうちの少ない方の金額の1%が10年間に渡り所得税の額から控除されるというものです。控除は入居した年分の所得税から適用されます。申請には要件がありますので、すべての条件を満たしていないと控除が受けられません。売買契約が終わってから、要件から外れている物件だと分かり、慌てる人もいます。どんな場合だと控除が受けられないのか、チェックポイント3つをご紹介いたします。■ 1. 床面積は何平米か?住宅ローンは控除が適用されるのは、延床面積、または専有面積が50平米以上、240平米以下までです。IYO / PIXTA(ピクスタ)少しでもここから外れてしまうと控除は受けられません。物件を購入するときは、あらかじめ何平米あるのかをチェックしましょう。面積は登記事項証明書に記載されている広さで判断します。吉野秀宏 / PIXTA(ピクスタ)店舗や事務所と併用の住居の場合は、床面積の1/2以上は居住用であることも要件に加わってきますので、図面等で確認をしましょう。マンションの場合は、要注意です。購入するときにもらう、物件資料に記載されている面積と、登記事項証明書に記載されている面積が異なるケースが多いからです。面積の違いは、面積の測り方の違いにより起こります。freeangle / PIXTA(ピクスタ)床面積の表示方法は「内のり面積」と「壁芯面積」によるものがあります。「内のり面積は」は、壁の内側から水平方向の壁の内側までを測り、「壁芯面積」は、壁の中心から水平方向の壁の中心までを測ります。登記事項証明書に記載されている面積は、内のり面積です。■ 2. 築何年の物件か?耐用年数を超えている物件は、住宅ローン控除にならないので気を付けましょう。木造は20年、それ以外の鉄筋コンクリートは25年となっています。ABC / PIXTA(ピクスタ)自分が購入しようとする物件がどちらに当てはまるかわからない人は、建物の登記事項証明書の「構造」欄に記載されていますので確認を。中古マンションを購入して、リノベーションを考えている人は要注意です。ABC / PIXTA(ピクスタ)安いからといって、あまりに古い物件を購入すると住宅ローンが使えないばかりか、固定資産税評価額が下がるため、あまり融資してもらえなくなります。■ 3. 「居住開始期間」と「税制優遇措置」を確認!居住開始時期と居住期間も控除を受けるための要件になっています。住宅取得の日から6か月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで居住し続けていることが必要となります。xiangtao / PIXTA(ピクスタ)また、ほかの税制優遇措置を受けていると控除が受けられない場合があります。この特別控除を受ける年分の合計所得金額が3,000万円(給与収入で3,230万円)を超える、買い換えの人は、居住年の前後2年間の計5年、以前住んでいた自宅の売却について「3,000万円特別控除」や「居住用財産の買換え特例」の適用を受けていると控除が受けられません。■ まとめこの他にも、「取得する不動産は自己の居住用である」「ローン返済方法は10年以上である」「連帯保証人は住宅ローンを受けられない」「親族から個人的な借入れをしてない」など、基本的な条件も確認しましょう。Naoaki / PIXTA(ピクスタ)中古住宅の場合は、親族などから購入したり、贈与で取得したりすると要件から外れます。チェックポイントが多すぎて分からない人は、銀行や不動産会社だけでなく、ファイナンシャルプランナー、税理士などの専門家に相談してみるものよいでしょう。多面的に住宅購入を検討することをオススメします。【参考】※国税庁マイホームの取得や増改築などしたとき
2018年10月28日住宅ローン控除の歴史は、1972年に導入された住宅取得控除までさかのぼります。一方の住まい給付金は、平成26年から始まった新しい制度です。どちらも住宅購入者には嬉しい制度です。これらの制度を最大限に活用するために、制度の内容をおさらいしましょう。■ 住まい給付金と住宅ローン控除の違いGraphs / PIXTA(ピクスタ)住宅ローン減税は、控除金額を所得税から差し引く制度です。控除金額は、ローン残高をもとに計算するため、融資金額が少ない収入が低い人は、収入が多い人に対し、節税効果が少なくなります。2019年に消費税率の引き上げが予定されています。それにより、同じ住宅なのに、購入金額は消費税率上昇分だけ高くなり、低収入の人にとっては、金銭的負担が増えます。負担軽減させるためにできたのが、住まい給付金です。目的が違う2つの税制優遇制度は、条件さえ満たせば、同時に受けることができるのです。■ 住宅ローン控除とは?ABC / PIXTA(ピクスタ)住宅ローン控除は、年末のローン残高の1%を所得税から控除する制度です。10年間継続して控除を受けることができるため、節税効果も大きくなります。所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税から一部控除することも可能です。控除を受けるには…取得する不動産は自己の居住用であるローン返済方法は10年以上である連帯保証人はなくローンを借り入れた本人であること住宅取得の日から6か月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで居住し続けていること親族から個人的な借入れをしてない床面積の合計は50平米以上240平米以下である床面積の1/2以上は居住用であるその年の所得金額が3,000万円以下居住した年の前後にほかの税金の優遇措置を受けていない耐用年数を超えていない。または超えた場合耐震基準を満たす親族などから購入していない贈与で取得していないというすべての要件を満たす必要があります。■ 住まい給付金とは?住まい給付金とは、消費税率引上げによる金銭的負担を緩和するために創設された制度です。給付額は、収入額によって異なります。給付金額は「給付基礎額×登記上の持分割合」により算出します。給付基礎額は、市区町村発行の個人住民税の課税証明書により決定します。すまい給付金を受け取るためには、給付申請書を作成し、確認書類を添付して申請することが必要です。新築住宅の場合ABC / PIXTA(ピクスタ)床面積が50平米以上(床面積は登記事項証明書に記載してある平米数)住宅ローンを利用している場合は、新築なら、検査を受けている住宅(住宅瑕疵担保責任保険へ加入した住宅または住宅性能表示制度を利用した住宅など)住宅ローンの利用がない場合は、新築なら、施工中に検査を受けていることに加え、フラット35Sと同等の基準を満たす住宅中古住宅の場合TATSU / PIXTA(ピクスタ)床面積が50平米以上(床面積は登記事項証明書に記載してある平米数)売主が宅地建物取引業者である中古住宅。売り主が個人の場合は、消費税が課税されないので除外既存住宅売買瑕疵保険への加入など、売買時に検査を受けている住宅ローンの利用がない場合、年齢が50才以上の者が取得する住宅が対象。年齢は、引き渡しになった年の12月31日時点の年齢で判別する消費税が10%になったときは、収入額の目安が650万円以下(都道府県民税の所得割額が13.30万円以下)の要件が追加される予定■ 制度を受けるときの注意点は?ふじよ / PIXTA(ピクスタ)住宅ローン控除も住まい給付金も、受けるための要件が細かく規定されているので、契約前に購入しようとする物件が適用になるかをチェックすることが大切です。また現在のところ、平成26年4月1日以降、平成31年6月までに入居完了した住宅が対象となっています。住まい給付金は収入が一定以下であることが要件となります。消費税が8%のとき収入額の目安は510万円以上、10%のときは775万円以上の人は、住まい給付金の給付対象外となるので自分の課税所得を確認しておきましょう。これらのことに注意して、上手に物件選びを行い、両方の制度を利用しましょう。【参考】※住まい給付金国土交通省
2018年10月13日■乳幼児医療費助成とは?子どもにかかる医療費を、自治体が助成してくれる制度。各自治体が運営している制度なので、名称や助成内容などはさまざま。詳細は、住民票がある市区町村の役所やHPで確認を!■乳幼児医療費助成もらえる金額は?助成額は、自治体によって違う。たとえば、かかった医療費全額を助成する自治体もあれば一部の場合もあるし、助成の対象年齢も乳幼児に限らず、中学生まで対象にしている自治体も増えている。■乳幼児医療費助成もらえる人は?国民健康保険や会社の健康保険など、健康保険制度に加入し、乳幼児医療費助成の加入手続きをした人。加入の手続きが遅れた場合、さかのぼって助成が受けられるかも自治体によって異なる。■乳幼児医療費助成 手続きの概要①住んでいる市区町村の助成内容・手続き方法を確認する自分が住んでいる市区町村の助成内容や手続きの方法を、役所の窓口や自治体のHPで確認しておく。市区町村の境目に住んでいて、他自治体の医療機関を使う可能性がある人は、「他自治体の医療機関を受診した場合」もチェックしておく。②赤ちゃんの健康保険に加入手続きし、健康保険証を受け取る赤ちゃんが入る健康保険に加入手続きをする。加入の手続きをする際に、「いつごろ健康保険証が届くのか?」の目安を確認しておくと、乳幼児医療費助成の申請タイミングの参考になる。扶養者が国民健康保険の場合は、出生届を出した後で、乳幼児医療費助成の手続きができるのが一般的。③役所で手続き後、乳幼児医療証を受け取る赤ちゃんの健康保険証を持参して役所で助成を受ける手続きをする。健康保険証が届いていない場合でも、手続きできる自治体もある。手続き後、しばらくすると乳幼児医療証が届くので、これを医療機関の窓口に提示することで助成が受けられる。■乳幼児医療費助成 DATA※この記事は2018年4月末現在の法令・情報に基づいて書いています
2018年07月01日■医療費控除とは?1年間に10万円を超える医療費がかかった場合、確定申告をすることで、支払った税金の一部を戻してくれる制度。■医療費控除でもらえる金額は、いくら?戻ってくるお金 = 医療費控除額 − 所得税率たとえば医療費合計額が60万円で所得が320万円の場合なら、確定申告をすることで、税金がおよそ1万6000円程度(※)戻ってくる。※医療費60万円 − 出産育児一時金 − 足切り額10万円= 医療費控除額面8万円医療費控除額面8万円 × 所得税率10% =戻ってくる税金8千円住民税率10%=戻ってくる税金8千円■医療費控除を受けられる人は、どんな人?家族全員で1年間の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%の金額)を超え支払い、確定申告をした人。■医療費控除 手続きの概要●還付申告だけなら1年中受け付けている確定申告というと2月中旬~3月中旬のイメージがあるが、(医療費の)還付申告は、1年中受付している。対象となるのは、申告する前の年1年(1月1日~12月31日)なので、たとえば2017年の分の確定申告(医療費の還付申告)であれば、税務署が混む前に提出すれば、相談窓口も込みあわないので、確定申告初心者にはオススメ。■コラム「保険金等で補てんされる金額」について知っておこう◆医療費控除で間違えやすいのは、「保険金等で補填される金額」。じつは、私も初産の確定申告時に間違えて、税務署の方に指摘され、とても焦った記憶がある。この話を簡単に言えば、「公的制度や民間の保険会社からもらったお金は、医療費から差し引いて計算しなければならない」ということ。「差し引く必要がある費用」と、「差し引く必要のない費用」を下記の表にまとめた。ちなみに私は「出産育児一時金」を差し引くのを知らず、金額が40万円くらい違っていた(激汗)。私のように慌てないよう、ご注意を!●「保険金等で補てんされる金額」差し引く必要があるもの、ないもの■医療費控除 DATA※この記事は2018年4月末現在の法令・情報に基づいて書いています
2018年07月01日4月から「診療報酬」が改定され、病院の窓口で支払う医療費が変わる。医療報酬とは、診察や検査、薬などの料金や、それに伴う手数料などを決めているもので、2年に1度見直される。 今回の改定のうち、家庭に影響が大きそうなポイントは、おもに2つ。1つ目は、「初診は大病院ではなく『かかりつけ医』で受ける」体制を、さらに推進している点。2つ目は、「看護・介護から看取りまでを在宅で行う」よう推進する見直しだ。 4月からの「診療報酬」改定を踏まえ、医療費をどう節約したらいいのかを荻原さんが教えてくれた。 【1】信頼できる「かかりつけ医」を見つける 「『有名な病院のほうが安心』などと、安易に大病院を受診すると、初診料の5,000円加算と合わせ、窓口で1万円近く請求されることもあります。重篤な病気が疑われる場合も、まず『かかりつけ医』に相談し、専門病院を紹介してもらいましょう。また、経済的にも体にも負担が重い“はしご受診”は避けましょう」 【2】薬は病院に近いほど安い 「薬そのものの値段は、どこでもらっても同じ。しかし、薬をそろえるなど施設を維持するための『調剤技術料』は、薬局により異なります。今回はこれも見直され、病院の敷地内にある“門内薬局”は院内処方と同程度の100円に、病院近くにある大手チェーンの“門前薬局”は150円に引き下げられました」 【3】薬の多い人は、薬剤師に相談して減薬してもらう 「複数の病院にかかり6種類以上の薬を飲む方は、薬剤師に減薬の相談をしてみましょう。2種類以上減薬できると『服用薬剤調整支援料』が加算されますが、薬が減る分、節約効果は長く続くはずです」 【4】病院受診は時間内に 「休日や夜間の診察は割高です。初診の場合、休日だと2,500円、深夜だと4,800円が加算されます。支払いは、3割負担の方なら休日750円、深夜1,440円の加算ですが、そもそも時間内に受診すれば払わなくてすむお金です」 【5】高額療養費制度を利用する 「高額療養費の利用を勧めてくれる病院も増えていますが、すべてというわけではありません。払戻し制度があることを覚えておきましょう」 高齢者がいる家庭では、訪問診療も行う「かかりつけ医」を持つと安心。また、看取りまで担う介護福祉施設の情報も集めておこう。
2018年02月23日妻が夫の扶養に入っていたものの働きに出ようとすると、税制や社会保険などの "壁"が存在するといわれている。2018年から配偶者控除が改正されることになったが、ママたちの働き方はどうなるのだろうか?●配偶者控除はどうなる?たとえば、配偶者のいる人は配偶者の給与収入が年収103万円以下であれば、収入にかかわらず、所得から38万円の控除が受けられた。ところが、2018年からは所得900万円を超える高所得者の場合は配偶者控除の減額や、ゼロになるなど、配偶者控除が縮小された(所得が900万円を超えない家庭の場合はこれまで通り)。一方、「配偶者特別控除」(注1)が適応される配偶者の収入制限は201万円(所得123万円)まで拡大。税制上は妻の就業調整につながる壁はなくなった。しかし、2016年の社会保険の加入要件改訂により、従業員501名以上の企業ではパートでも年収106万円以上は社会保険に入ることになる「106万円の壁」がある。また、妻の収入が130万円を超えると、夫の社会保険の扶養から抜けなければいけない「130万円の壁」も存在する。●夫の職業・収入別の働き方シミュレーション夫の職業や収入によってそれぞれの壁の影響は異なるものの、妻はどういった働き方をすると、家庭にとって"お得"になるのだろうか。ファイナンシャルプランナーの小谷晴美さんに、簡単なシミュレーションをしてもらった。(1)妻がパート勤務。年収103万円の壁が残るケース妻の年収が103万円を超えも世帯の手取が減少に転じることはない。しかし、一部企業では配偶者手当(家族手当等)の支給条件として、「配偶者の所得38万円以下(パート収入103万円以下)」としている場合がある。「配偶者手当の金額が、月1万5000円とすれば年間18万円。103万円を超えた時点で年間約18万円もらえなくなるということに」配偶者手当の支給条件は会社によって異なるので、各自、夫の勤務先の会社への確認が必要だ。(2)妻がパート勤務。年収106万円で社会保険に加入する場合配偶者特別控除の拡大により、単純に考えると、妻の年収が105万円超から201万円までは控除が受けられるので手取りが増えることになる。しかし、従業員数501名以上の企業に勤務する場合、年収106万円になると社会保険料が発生するため、世帯手取りは減少に転じてしまう。手取りを回復させるには、妻はおおよそ年収123万円まで働く必要がある。「ただし、106万円でセーブすると、収入として足りなくなる場合も。結局、子どもが大きくなってからのことを考えて、壁を越えて働こうというママが増えている印象です」(3)妻がパート勤務。年収130万円で社会保険に加入する場合(2)と同様、妻の年収が105万円超から201万円までは、配偶者特別控除の適用によって、変更前に比べて手取りが増加する。しかし、妻の年収が130万円になると、夫の社会保険の扶養から外れるため、世帯の手取りは減少してしまう(「130万円の壁」はこれまで通り)。「このケースで手取りが回復するのは、150万円強働いた場合です。つまり130万円~150万円強までが手取が減少に転じるゾーンになります」(4)夫が会社員で、妻が個人事業主の場合妻がプチ起業などで個人事業主になっている場合、協会けんぽでは扶養の基準を収入ではなく「所得」(注2)で判断することになる。所得130万円未満であれば、社会保険上の扶養に入ることができる。そのため所得が130万円以上になると世帯手取は減少する。なお、扶養の認定基準は保険者により異なるので、夫の勤め先の健康保険組合に尋ねよう。(5)夫が個人事業主の場合妻がいくら働こうと、何の壁もない。むしろ妻が社会保険に入ったほうが、世帯所得が増えるケースが多い。「大切なのは、何を優先するか。例えば、パートで働きながら、『年間〇万円を超えないように、年末は休む』などとしていると、大切な仕事を任せてもらえないかもしれません」せっかく働いた分を社会保険料でもっていかれたり、手当がカットされたりするというのは、悔しいもの。でも、長期的にキャリアアップを考えるなら、「壁」にとらわれず、「未来への投資」と思うことも必要かも。(取材・文:田幸和歌子編集:ノオト)注1:配偶者特別控除とは、配偶者控除が受けられない場合であっても、配偶者の所得に応じて、一定額の所得控除が受けられる制度。注2:所得とは売上から必要経費を引いたもの。※図版はいずれも小谷さん提供
2018年02月20日年末調整・確定申告の時期になると気になるのが、控除による節税方法や関連するお得な制度です。住宅関連の中では「住宅ローン控除」がよく知られた制度ですが、ほかにも意外と知られていないお得な制度や控除があるようです。住宅購入やリフォームを検討している人は、対象となる制度や条件などをチェックしてみましょう。(1)中古住宅の購入でも利用できる「住宅ローン控除」住宅関連の制度でも多くの人が利用している「住宅ローン控除」は、住宅ローンを借入れて住宅を取得する場合に、取得者の金利負担の軽減を図るための制度です。一定の要件を満たした場合、年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%が10年間に渡り所得税の額から控除され、10年間で最大400万円(長期優良住宅の場合は最大500万円)が控除されます。所得税から控除しきれない場合は住民税から一部控除されます。また、中古住宅の場合でも新築の場合の要件に加え、耐久年数もしくは耐震基準といった中古特有の条件をクリアすれば、10年間で最大200万円(長期優良住宅などの場合は最大300万円)の控除を受けることができます。(2)夫婦共働きなら住宅ローン控除が夫婦で受けられる「ペアローン」「ペアローン」は共働き夫婦がそれぞれの名義で住宅ローンを組む場合に、二人とも住宅ローン控除を受けることのできるローン制度で、互いに相手の連帯保証人となります。住宅ローン控除が一人ずつ受けられることは大きなメリットですが、それぞれローンを組むため、契約時などの事務手数料は2倍かかってしまいます。また、夫婦の一方が仕事を辞めるなどした場合には、返済自体が厳しくなる可能性もあるため計画的に組みたいところです。(3)目安年収510万円以下の人が対象の「すまい給付金」「すまい給付金」は、消費税率引上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設した制度です。取得する住宅の床面積が50平米以上などの条件をクリアした場合、消費税率8%の2017年12月現在だと、収入額510万円以下の人を対象に最大30万円(消費税率が10%になった場合は収入額が775万円以下の人を対象に最大30万円)が給付されます。収入額によって給付される額は異なり、例えば、消費税率8%の場合、収入額425万円以下だと最大の30万円、425万円超え475万円以下だと20万円、475万円超え510万円以下だと10万円が給付されます。※収入額はあくまで目安のため、給与所得者のいわゆる「額面収入」ではなく、市区町村が発行する課税証明書に記載される都道府県民税の所得割額に基づき決定されます。(4)工事費用の10%の控除を受けられる「住宅特定改修特別税額控除」「住宅特定改修特別税額控除」は、一定の省エネ改修工事、バリアフリー改修工事または三世代同居対応改修工事を行った場合に、標準的な工事費用の額の10%相当額が、その年分の所得税額から控除されるというものです。それぞれ工事限度額(それに応じた控除限度額)が設定されており、対象となる工事も指定されています。また、バリアフリー改修工事では申請できる特定の個人の条件も設定されています。(5)断熱改修やエコキュートの導入には「住宅省エネリノベーション促進事業費補助金」「住宅省エネリノベーション促進事業費補助金」とは、住宅の省エネ化を図るリノベーションを促進するために、省エネ性能が高い高性能建材(ガラス、窓、断熱材)を用いた断熱改修などを支援する国の制度によって交付される補助金です。省エネ性能が高い高性能建材では、一戸あたり補助対象費用の1/3以内もしくは150万円のいずれが低い金額、戸建て住宅での家庭用蓄電などの蓄電システムでは、定額5万円/kWhもしくは補助対象費用の1/3または50万円のいずれか低い金額、エコキュートなどの高効率給湯機の導入では、補助対象費用の1/3以内もしくは15万円のいずれが低い金額が補助金額の上限となります。ここまで、住宅関連のお得な制度と控除を紹介してきましたが、知っていると知らないとでは、支払わなければならない金額がだいぶ変わってくるようです。事前に情報を確認し、賢い住宅購入・リフォームを実現しましょう。
2017年12月27日安倍内閣と与党・自民党が、2018年度の税制改正で、所得控除の見直しを図る方向であることがわかった。これにより、来年4月から年収800万円以上のサラリーマンを狙い撃ちにした“増税”がおこなわれるという。 「年収ベースで800万円を超える世代というと、一般的に勤続年数の長い40代以上が多いと思われます。源泉徴収の対象となるサラリーマン約4,800万人のうち、約430万人、およそ“10人に1人”が該当します」 こう話すのは、国の税制に詳しい経済評論家の加谷珪一さんだ。では、どのように増税されるのか。 「全納税者が対象の『基礎控除』は、課税対象となる収入から現状で『38万円』分を差し引く制度です。今回の改正では、これが『50万円』に引き上げられる見通しです。これにより、サラリーマン、自営業、年金受給者すべてがいったん“減税”となります。しかし現状で『65万~220万円』と年収によって幅のあるサラリーマン向けの『給与所得控除』の額が、どの年収層でも軒並み引き下げられ“増税”となるんです。この結果、サラリーマンは年収800万円ほど境に“減税額”を“増税額”が上回ります」(加谷さん・以下同) これにより、加谷さんの試算では「年収900万円のサラリーマン」は「年間3万7,000円の増税」となる一方、「年収900万円の自営業者」は逆に「年間3万円の減税」となる。 「『高収入の自営業者』には医師や弁護士が多い。自営業者を軒並み『減税』することで、医師会や弁護士会などに“いい顔”をして、後の選挙対策につなげたいという意図が感じられます」 さらに、年金から一定金額が控除される「公的年金等控除」も見直される。年金収入や年金以外の収入が年間1,000万円以上ある年金受給者は、控除額が縮小される見込みだ。 では、なぜ年収800万円以上の層が狙い撃ちされるのか。加谷さんは次のように語る。 「すべてのサラリーマンを増税の対象にすると、反発が大きいので高所得者に限った。つまり、いちばん税金を取りやすい層から、取るんです」 ’19年10月に消費税は10%に増税される予定だ。これに伴い導入される軽減税率の減収分6000億円のうち、1,000億円を今回の所得税改革で穴埋めするというが……。 「増税を高額所得のサラリーマンに限定したことで、1,000億円には到底届きそうにありません。今後、さらなる増税が予想されます」 今回は対象外だったあなたも、明日はわが身かも。
2017年12月14日「来年から、配偶者控除・配偶者特別控除が改定されます。配偶者控除とは、夫婦どちらかの年収が103万円以下である場合、世帯主の年収から38万円が控除され、そのぶん税金が軽くなる制度です。改定後は『“103万円の壁”がなくなり、新たに“150万円の壁”が現れる』といわれることが多いですが、社会保険加入の問題もあり、それほど単純ではありません」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。来年から、満額控除が受けられる年収上限が103万円から150万円に。その変更点は、『最大控除は、妻の年収が105万円未満→150万円以下に』、『控除ゼロは、妻の年収が141万円以上→201万円超に』、『夫の年収が1,220万円超だと、配偶者控除がゼロに』の3つ。損をしないために、主婦がどのように働くべきかをタイプ別に荻原さんが解説してくれた。 【タイプA】夫の年収が1,120万円超の場合 「夫が高所得の場合、来年から配偶者控除がゼロになる家庭もあり、負担が増えます。たとえば控除額が38万円から、来年以降ゼロになる場合は、所得税と住民税を合わせて約16万円増税になります」(荻原さん・以下同) 【タイプB】夫の年収が1,120万円以下、自身が職場の社会保険に加入(第2号被保険者)の場合 「収入を増やせば、手取りも増えます。思い切り働きましょう。たとえば、妻の年収が150万円、夫の年収が600万円の場合、これまでは配偶者控除・配偶者特別控除の適用外でした。来年は38万円が控除され、夫は7万円の減税となります」 【タイプC】夫の年収が1,120万円以下、夫の社会保険に扶養(第3号被保険者)、勤め先が従業員数501人以上の大企業と一部の中小企業(労使が合意した中小企業は職場の社会保険に加入可能)、長時間は働けない場合 「育児や介護などで長時間は働けないという方は、夫の社会保険に扶養のまま、働くのがいいでしょう。年収106万円を超えないようにご注意を。税制上”103万円の壁”はもうありませんが、家族手当を妻の年収103万円以下で支給する企業はあります。夫の勤め先に確認しましょう」 【タイプD】夫の年収が1,120万円以下、夫の社会保険に扶養(第3号被保険者)、勤め先が従業員数501人以上の大企業と一部の中小企業(労使が合意した中小企業は職場の社会保険に加入可能)、もっと稼ぎたい場合 「社会保険に加入して、しっかり働きましょう。ただ、保険料や税金を考えて、年収125万円を目指すといいでしょう。来年以降は、妻の年収が201万円以下だと夫の配偶者特別控除が増えるので、夫の手取りも増えます」 【タイプE】夫の年収が1,120万円以下、夫の社会保険に扶養(第3号被保険者)、勤め先が従業員数501人以下の企業、収入は控えめでいい場合 「夫の社会保険扶養のまま働き、年収130万円を超えないように注意しましょう。また、タイプCの方と同様、夫の勤め先の家族手当規定を確認してください。年収103万円以下の妻に家族手当を支給する企業だと、103万円を超えないほうが得になるケースも」 【タイプF】夫の年収が1,120万円以下、夫の社会保険に扶養(第3号被保険者)、勤め先が従業員数501人以下の企業、ガンガン働きたい場合 「国民健康保険に加入し、年収の目標は160万円です(社会保険に加入できる企業もあります)。タイプDの方と同様、妻の年収が201万円以下だと、配偶者特別控除が増えるので、夫の手取りが増えます」 【タイプG】夫の年収が1,120万円以下、国民健康保険&国民年金に加入(第1号被保険者)の場合 「タイプGの方には”壁”はありません。もっと働いて収入を増やしましょう。できれば、社会保険を備えた企業に転職すると、保険料負担も減り、保障も手厚くなるのでおすすめです」 このように、今後の働き方は総合的な判断が必要となってくる。 「これらの改定に加え、今後はさらに納税者全員にかかる『基礎控除』や、会社員の経費といわれる『給与所得控除』を見直すようです。家計に直結する問題ですから、注視しておきましょう」
2017年11月17日「来年から、配偶者控除・配偶者特別控除が改定されます。配偶者控除とは、夫婦どちらかの年収が103万円以下である場合、世帯主の年収から38万円が控除され、そのぶん税金が軽くなる制度です。改定後は『“103万円の壁”がなくなり、新たに“150万円の壁”が現れる』といわれることが多いですが、社会保険加入の問題もあり、それほど単純ではありません」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。来年から、満額控除が受けられる年収上限が103万円から150万円に。その変更点を、荻原さんが解説してくれた(夫がおもな稼ぎ手で、妻がパートで働くことを想定し説明。男女が入れ替わっても同様)。 【1】最大控除は、妻の年収が105万円未満→150万円以下に 「配偶者控除・配偶者特別控除では、最大38万円が夫の収入から控除されます。これまでは、妻が年収103万円以下だと配偶者控除が適用され、103万円を超えても105万円未満なら、配偶者特別控除によって最大の38万円が控除されていました。来年からは、妻の年収が150万円以下なら、夫は38万円の控除が受けられます」(荻原さん・以下同) 【2】控除ゼロは、妻の年収が141万円以上→201万円超に 「これまでは、妻の年収が103万円を超えると控除額が段階的に引き下げられ、年収が141万円以上でゼロになりました。来年からは、妻の年収が150万円を超えると控除額の引き下げが始まり、201万円を超えるとゼロになります」 【3】夫の年収が1,220万円超だと、配偶者控除がゼロに 「これまでは夫の年収が1,220万円以上かつ妻が年収103万円を超えた場合、配偶者特別控除は適用外でした。来年からは、年収が1,220万円超の夫は、妻の収入がゼロでも配偶者控除を受けられなくなります。つまり、高所得者は負担が増えるということです。また、夫の年収が1,120万円を超えると、配偶者特別控除が減額されます」 これら配偶者控除・配偶者特別控除は、夫の税金を減らすものだが、妻の収入が103万円を超えると、妻自身にも税金がかかる。 「とはいえ、税金はそこまで負担になる額ではありません。問題は“103万円の壁”と呼ばれる社会保険です。以前から年収が130万円以上になると、国民健康保険(以下・国保)・国民年金から職場の社会保険への加入が義務だった。 さらに’16年10月からは、従業員501人以上の企業で働く年収106万円以上の方に、職場の社会保険加入が義務化。“106万円の壁”も現れたのです。特に会社員の妻は、夫の社会保険の扶養であれば、保険料負担がありません。年収が106万円を超え職場の社会保険に加入すると年約16万円〜、130万円を超え国保・国民年金加入なら年約27万円〜の保険料がかかり、多く働いても加入前より手取りが減る“働き損”が発生します」
2017年11月17日医療技術を取り入れた化粧品2017年6月13日、株式会社ココカラファインは自社のプライベートブランド「VIVCO(ヴィヴコ)」をリニューアル発売した。このブランドは九州大学の後藤教授が開発したS/O高浸透技術を採用している。このS/O高浸透技術は薬効成分を肌から浸透させる医療技術。この技術により、これまで注射等で薬剤を注入しなければならなかった患者の負担を軽減させることができたのだ。どこがリニューアルするの?これまではヒアルロン酸とビタミンCをS/O化して配合していたのだが、「もっと高機能なエイジングケア化粧品が欲しい」というユーザーの声に応えて、今回のリニューアルでエイジング成分であるヘスペリジンもS/O化して配合することになった。高機能で低価格がウリの同商品であったが今回は製造工程を見直すことで、これまでよりの容量が増えたのにお手頃価格を実現。また、「売り場で商品がどこにあるかわからない」という声に応えてパッケージも変更に。今回から配合される美肌成分「サトザクラエキス」をイメージしてパッケージデザインを桜色に変更した。さらに、これまで14品目あったラインナップを5品目に厳選。豊富なラインナップは細かく使いこなせる人には嬉しいが、多くの人はどれを使ったらいいのか悩んでしまうだろう。5品目程度なら自分に必要なアイテムを選びやすい。リニューアルによってさらにパワーアップして使いやすくなった同化粧品をあなたのお手入れに加えてみてはいかがだろうか。(画像はプレスリリースより)【参考】※株式会社ココカラファインプレスリリース
2017年06月20日・一発でガツンと大きくトクする! 家計を元気にする税金のイロハ ・贈与税の裏事情でトクをする!? 親もママも税金対策できる “住宅購入” のコツ ・住宅ローン控除を利用できる人、利用できない人 ・聞きづらい財産の話はどう話す? 30代で知らないと損をする「親の相続」問題点 ・教育資金はおトクに贈与してもらう! パパ・ママが「親のお金」をうまく生かす方法 の続きです税金の制度が大きく変化している中、ぜひガツンと大きな節約をしてもらいたいと考えた、本連載も最終回を迎える。最後は、税金の制度の中で、ママにとってはもっとも身近な税金、「ふるさと納税」と「医療費控除」の新制度について説明したい。これらは「家計を元気にする」おトクな節税の第一歩。この税金のおトクを知ることについて、税理士の湊 義和(みなと よしかず)さんは、「税金に親しむキッカケにしてみては?」と話す。■使わなかったら損! 「ふるさと納税」「ふるさと納税」とは、応援したい地方自治体へ寄付することによって、所得税が還付(戻ってくること)されたり、また住民税が軽減されたりする制度のこと。2015年度から、控除(本来支払う税金から差し引いて計算すること)の限度額が2倍になり、2015年4月1日以後の寄付から、確定申告が必要ない使い勝手の良い制度になった。Q. 年収500万円の夫が、K市に3万円のふるさと納税をしました。夫の税金はどうなりますか?A. 税金が2万8千円安くなります。(所得税率は20.42%、住民税は10%で試算)多くの人にとって興味があるのは「税金がいくら安くなるか?」であって、「税金が安くなるメカニズム」ではないだろう。ゆえに、 税金が安くなるメカニズム は、本記事の最後を参照してほしい。■「ふるさと納税ワンストップ制度」が使える人ふるさと納税で覚えておきたいのは、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」だ。これは、2015年4月1日以後の「ふるさと納税」について、次の条件を満たした場合、確定申告不要になるという制度だ。ふるさと納税ワンストップ制度を利用した場合、自分が住んでいる市区町村の住民税が減額される。この場合は、所得税は、年末調整で計算が終わっているので、本来、確定申告をして所得税からも控除される分も含めて、住民税から減額となる。●ふるさと納税ワンストップ制度が使える人1)確定申告が不要である給与所得者であること(年末調整だけで済む人のこと)ちなみに、「医療費控除」で確定申告を行う場合には、「ワンストップ制度」は利用できない。すでに申請していても無効となるので、忘れずに確定申告で「寄付金控除」の対応を! 2)「ふるさと納税」をした県や市などへ確定申告不要制度を活用したい旨の申請を行うこと。3)その年の12月31日までに「ふるさと納税」をおこなった自治体の数が5か所以内であること。出典:『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』(湊 義和著/中央経済社刊) ■「医療費控除」の新しい制度がスタート!さて。本連載も、いよいよ最後の項目。今回は、税金のおトクとしてもっとも有名な医療費控除の新ニュースをお伝えしよう。2017年1月1日から、市販薬の購入についての新しい制度がスタートした。その名は、「セルフメディケーション税制」。セルフメディケーション税制とは、適切な健康への取り組みをしている人が、「対象の市販薬」を年間1万2000円以上購入した場合に、税金が安くなる制度だ。この制度を利用するには、定期健康診断を受けるなど、適切な自分管理が必要となる。また、対象とされる薬は、「バファリン®」など、誰もが購入する機会があるごく一般的な市販薬だ。「セルフメディケーション税制は、『自分の健康は、自分で守るという意識』の起爆剤になるかもしれませんよね」(湊さん)いままでは、医療費控除は、「最低額は10万円もしくは所得の5%を超えた場合」が対象。それが、たとえば、年間の医療費が10万円未満で医療費控除がダメでも、「対象の市販薬を年間1万2000円超で買った場合」には、セルフメディケーション税制が使える。この制度は、従来の医療費控除と選択制で、次の2つを満たしている時に利用できる。●セルフメディケーション税制を使うポイント1)特定健康診断、予防接種、定期健康診断、健康審査、がん検診を行っていること参考サイト:厚生労働省「 セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について 」2)厚生労働省が定める市販薬を購入する参考サイト:厚生労働省「 セルフメディケーション税制対象医薬品 品目一覧(全体版) 」(PDF)■税金優遇の「要件」は、主婦が知っておくべき必須情報全6本に渡りお送りした「知っている人だけトクする税金術 2017」もこれで終わりだ。この連載を書きながら、「法律は、生き物のようだなぁ」と思った。たとえば、植物が自然と光の方向を向くように、法律も、日本が行くべき方向に向かって、どんどん変化していく。文中に何度も書いたけれども、税金の優遇を受けるためには、国が示す「要件」を満たしていないとならない。つまり、税金で家計を元気にするためには、主婦が、この「要件」を知っておく必要があるということだ。税金の知識は、家計を元気にするのに、「一発でガツンと効く」のだから、難しいと敬遠して知らないのはもったいない!「税法を毎年チェックしていくことで、私たち達が歩む道が見えてくるのではないか?」 そんな気持ちから本連載には、「2017」と付け加えることにした。今後も、定期的に「家計を元気にする」税法をチェックしていきたい。この記事は2017年1月の取材に基づいて書いています。■今回取材にご協力いただいた湊 義和さんの著書『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』湊 義和 / 中央経済社 ¥1,600(税別)湊 義和さんプロフィール中小企業を応援する政府系金融機関のサラリーマンから一念発起して税理士になった経歴の持主。とかく難解な税金の世界の水先案内人として、一般の方の税金相談から独立開業、二代目の事業承継などさまざまな相談に乗るのが生きがい。趣味は最近少し人気が回復してきたスキー。【プチ知識】ふるさと納税で税金が安くなるメカニズム年収500万円(※)の人が、30,000円のふるさと納税をした場合、28,000円の税金が安くなる。(※所得税率は20.42%、住民税は10%で試算)税金が安くなるメカニズムは、図にすると下記の如くになる。それぞれをみていこう。1)所得税所得税では、K市へのふるさと納税は、K市への寄付金として取り扱う。この場合、K市へ寄付した金額のうち2000円(A)を超える金額が所得から控除されるため、所得税としては、次の金額が軽減される。(30,000円 − 2,000円) × 20.42% = 5,718円(B)2)住民税住民税では、以下の2段階で、税金が軽減される。▼第1段階K市への寄付金のうち2,000円を超えた金額の10%が控除される。(30,000円 − 2,000円) × 10% = 2,800円(C)▼第2段階K市への寄付金のうち2,000円を超えた金額に以下の割合を掛けた金額が控除される。(30,000円 − 2,000円) × (1 − 所得税率 − 住民税率)ただし、夫の住民税所得割額の2割が上限だ。(30,000円 − 2,000円) × (1 − 20,42% − 10%) = 19,482円(D)
2017年04月15日・一発でガツンと大きくトクする! 家計を元気にする税金のイロハ ・贈与税の裏事情でトクをする!? 親もママも税金対策できる “住宅購入” のコツ の続きです。税金の制度が、すごい勢いで変化している、いま。30代にとってもそれを知っているのと、知らないのでは大きな差が出てくる。今回は、30代にとって一番身近で大きな「税金のおトク」分野である「住宅ローン控除」(住宅借入金等特別控除)について、税理士の湊 義和(みなと よしかず)さんにお話を伺った。■「住宅ローン控除制度」を使えなかった30代は、マイホーム購入の適齢期といわれている。住宅ローンを組むときに知っておいて欲しいのが、住宅ローン控除の知識である。じつは、筆者である私自身は、「住宅ローン控除」を使えていない。だから、自戒の念も込めて、「住宅ローン控除の知識は必須だよ!」ということをお伝えしたい(まったく説得力に欠けると思うが…笑)。■なぜ「住宅ローン控除」を使えなかったか?私は、恋に落ちたように家を購入した。一目ぼれをし、内覧させてもらった15分で購入を決定した。私ひとりで決めたので、夫が物件を見たのは、売買契約と住宅ローンの実行が終わってからだ。賛同してくれた夫の太っ腹ぶりにいまでも感謝している。住宅ローン控除を受けるには、国が提示する「要件」を満たしていなければならない。私が恋に落ちた家は、「購入する物件の要件」を満たしていなかった。つまりマイホームを購入しようと思ったら、住宅ローン控除の概要と、控除を受けるための要件は知っておくべきなのだ。■住宅ローン控除制度の概要住宅ローン控除とは、購入した年から10年間、毎年末の住宅ローン残高の1%が、所得税や住民税から控除される制度である。住宅の種類に応じて借入限度額が異なっている。税金控除額 = 住宅ローンの年末残高 × 1%(控除率)●住宅ローン控除一覧表出典:『 家計を元気にする 税金活用術 』(湊 義和 著/中央経済社刊)※認定住宅とは、認定長期有料住宅及び認定低炭素住宅をいうQ. 「住宅ローン控除」は、どれくらい家計を元気にしますか?A. たとえば年収600万円の人が3,000万円の住宅ローンを組んだ場合。所得税と住民税を合わせて、28万円を軽減できます。同様の効果を10年間受けることができます。所得税と住民税を合わせて、年間28万円(月額換算すれば、2万円強)もの税金が軽減できる。どれほど大きなおトクか、イメージが沸いただろうか?■「住宅ローン控除」を利用するための要件とは?前述したとおり、このおトクを使うためには国が提示した「要件」を満たしていなければいけない。押さえておきたい「要件」は、次の2つだ。【その1】住宅ローン控除を利用できる人次のとおりとなる。1. その年の合計所得金額が3,000万円以下の人2. 居住年及び居住年の前後2年以内に、ほかの居住用財産に関する課税の特例を受けていない人(これは自宅を買い換える場合に注意すべき要件となる)【その2】購入する物件次のとおりとなる。1. 床面積が50m²以上(登記簿面積)であり、床面積の2分の1以上の部分をもっぱら自宅として使用していること2. 中古住宅の場合には、取得の日前20年(マンションなどの耐火建築物の場合には25年)以内に建築されたもの3. 及び 2. 以外で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであること(平成17年4月1日以後に取得をした場合に限る)4. 取得の時に生計を一にしており、その取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のあるものなどからの取得でないこと<参考サイト>国税庁「 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除) 」ちなみにわが家は、購入時点で築20年超だったので、要件2.(中古住宅の場合には、取得の日前20年)を満たしていなかった。家を購入したあとに「住宅ローン控除が使えない物件である」と判明したときは、やっぱり悔しかった(もちろんそれがわかったところで購入したことには変わりないのだが…)。次回は、「聞きづらい財産の話はどう話す? 30代で知らないと損をする「親の相続」問題点」 です。この記事は2017年1月の取材に基づいて書いています。■今回取材にご協力いただいた湊 義和さんの著書『 家計を元気にする 税金活用術 「節税」から「活用」へ 』湊 義和 / 中央経済社 ¥1,600(税別)湊 義和さんプロフィール中小企業を応援する政府系金融機関のサラリーマンから一念発起して税理士になった経歴の持主。とかく難解な税金の世界の水先案内人として、一般の方の税金相談から独立開業、二代目の事業承継などさまざまな相談に乗るのが生きがい。趣味は最近少し人気が回復してきたスキー。
2017年04月12日最近、テレビCMなどで「実費型医療保険」という言葉を耳にする機会が増えた。実費型医療保険は「実際にかかった医療費」を保障する保険。保険料は安く、合理的に見えるが、本当に安心でお得な商品なのだろうか? そこで、実費型医療保険のメリットとデメリットについて、代表的な実費型医療保険であるソニー損保の「Zippi(ジッピ)」を例に、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた。 【1】入院治療費の3割を保障 「受け取る保険金は、入院治療費の3割負担分です。通院治療費は対象に含まれません。保険金は、医療費の領収書にある『診療報酬点数』を基に計算されます。自己負担の上限額を超えると払い戻しなどが受けられる『高額療養費制度』を利用した方も、70歳以上で自己負担が2割や1割の方も、保険金は3割相当額で変わりません。ただし、保険金には、1カ月に20万円まで支給などの上限があります」 【2】保障対象は公的健康保険の範囲 「差額ベッド代や、先進医療などの保険外診療は対象外です。別途オプションに加入すると、保障対象が広がります」 【3】5年定期保険 「保険料は従来型より比較的安めに設定されています。ただ5年定期ですから、更新のたびに保険料は上がります。たとえば20歳女性の保険料月額は975円ですが、50歳になると2,052円に、60歳では3,305円、65歳では4,871円と、中年以降は急激に値上がりします」 実費型医療保険は、損害保険会社が提供している。なので、火災保険や自動車保険で被害額に応じた保険金が支払われるのと同様に、“実際にかかった医療費”が保障される。いっぽう、入院日額を設定する従来型は、生命保険会社が提供している。医療費を含めた生活全般を支えることが目的だ。 「両者を比較すると、損害保険会社は保障を限定する分、保険料は安く抑えられます。ある意味、合理的な考え方だといえるでしょう。とはいえ、先述のように中年以降は保険料負担が重くなりがちです。医療保険は月々の保険料だけに注目せず、解約までに払う保険料総額を、電卓をたたいて計算することも大切です」
2017年03月20日■乳幼児医療費助成とは?子どもにかかる医療費を、自治体が助成してくれる制度。なので、名称や助成内容などはさまざま。詳細は、住民票がある市区町村の役所に確認を!■乳幼児医療費助成制度でもらえる金額は、いくら?助成額は、自治体によって異なる。たとえば、かかった医療費全額を助成する自治体もあれば一部の場合もあるし、助成の対象年齢も乳幼児に限らず、中学生まで対象にしている自治体もある。■乳幼児医療費助成制度でもらえる人は、どんな人?国民健康保険や会社の健康保険など、公的医療保険に加入し、乳幼児医療費助成の加入手続きをした人。加入の手続きが遅れた場合、さかのぼって助成が受けられるかも自治体によって異なる。■乳幼児医療費助成制度の手続きの概要①住んでいる市区町村の助成内容・手続き方法を確認する自分が住んでいる市区町村の助成内容や手続きの方法を、役所の窓口や自治体のWEBサイトで確認しておく。市区町村の境目に住んでいて、他自治体の医療機関を使う可能性がある人は、「他自治体の医療機関を受診した場合」もチェックしておく。②赤ちゃんの健康保険に加入手続きし、健康保険証を受け取る赤ちゃんが入る健康保険に加入手続きをする。加入の手続きをする際に、「いつごろ健康保険証が届くのか?」の目安を確認しておくと、乳幼児医療費助成の申請タイミングの参考になる。③役所で手続き後、乳幼児医療証を受け取る赤ちゃんの健康保険証を持参して役所で助成を受ける手続きをする。健康保険証が届いていない場合でも、手続きできる自治体もある。手続き後、しばらくすると乳幼児医療証が届くので、これを医療機関の窓口に提示することで助成が受けられる。■乳幼児医療費助成 DATA※この記事は2016年11月末現在の法令・情報に基づいて書いています。(監修:ファイナンシャルプランナー 畠中雅子/文:楢戸ひかる)
2017年01月10日■医療費控除とは?1年間に10万円を超える医療費がかかった場合、確定申告をすることで、支払った税金の一部を戻してくれる制度。■医療費控除によって、戻ってくる金額は、いくら?戻ってくるお金 = 医療費控除額 − 所得税率たとえば医療費合計額が60万円で所得が320万円の場合なら、確定申告をすることで、税金がおよそ8千円程度(※)戻ってくる。※医療費60万円 − 出産育児一時金 − 足切り額10万円 = 医療費控除額面8万円 × 所得税率10% = 戻ってくるお金8千円■医療費控除によって、お金が戻ってくる人は、どんな人?家族全員で1年間の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%の金額)を超えて医療費を支払い、確定申告をした人。■医療費控除の手続きの概要還付申告だけなら1年中受け付けている。確定申告というと2月中旬~3月中旬のイメージがあるが、(医療費の)還付申告は、1年中受付している。対象となるのは、申告する前の年1年(1月1日~12月31日)なので、たとえば2017年の分の確定申告(医療費の還付申告)であれば、税務署が混む前の2018年の1月中に提出すれば、相談窓口も込みあわないので、確定申告初心者にはオススメ。■コラム:「保険金等で補てんされる金額」について知っておこう医療費控除で間違えやすいのは、「保険金等で補填される金額」。実は、私も初産(16年前)の確定申告時に間違えて、税務署の方に指摘され、とても焦った記憶がある。この話を簡単に言えば、「公的制度や民間の保険会社からもらったお金は、医療費から差し引いて計算しなければならない」ということ。「差し引く必要がある費用」と、「差し引く必要のない費用」を下記の表にまとめた。ちなみに私は「出産育児一時金」を差し引くのを知らず、金額が40万円くらい違っていた(激汗)。私のように慌てないよう、ご注意を!●「保険金等で補てんされる金額」として差し引く必要があるもの、ないもの。(エキサイト編集部で作成)■医療費控除 DATA※この記事は2016年11月末現在の法令・情報に基づいて書いています。(監修:ファイナンシャルプランナー 畠中雅子/文:楢戸ひかる)
2017年01月10日年賀状に、お正月の準備、そしてそして大掃除……。クリスマスが終わったと思ったら、まだやらなければいけないことはいっぱい。12月は主婦にとって、ママにとって「なんて忙しいの!」と声をあげたくなる時期ですね。そんな慌ただしい12月は、政治も大忙しです。今年は特に、この年の瀬も押し迫って、ロシアのプーチン大統領が来日(それも初来日!)。そして26日には、安倍総理がハワイの真珠湾を訪問。来年1月に任期満了となるアメリカのオバマ大統領と最後の日米首脳会談を行うことになっています。ビール税に住宅ローン減税、いったいどうなる?今年は特に、政治の話題が年末まで事欠かないのですが、例年でも翌年度の国家予算の編成作業があるので、結構大変なのです。予算編成の前に税制の改正についても決めなくてはならなりません。ビールやエコカー、住宅ローンの減税はどうなるのかなど、日々の生活にも関わるだけに、チラチラと気になっている人も多いのではないかと思います。103万円の壁だった配偶者控除が150万円にさて、今回注目の税制改正は、やはり「配偶者控除」についてでしょう。これまで妻の年収が103万円以下であれば適用されていた夫の所得から38万円を控除する「配偶者控除」の、妻の年収要件が拡大されることになったのです。具体的には妻の年収要件を150万円以下まで拡大、その後は段階的に控除額を減らしながらも適用され、201万円を超えると控除の対象から外されることになります。 また、夫の年収も、これまでは制限がなく、妻の年収だけが条件とされてきましたが、今回の改正により、38万円の控除を受けられるのは夫の年収が1120万円以下の場合ということになります。その後、段階的に減らされて1220万円を超える夫の年収があった場合は、妻の年収が150万円以下でも控除は受けられなくなります。配偶者控除は年収をコントロール、果たしてその結果は?今回の改正のポイントは二つ。一つは、配偶者控除適用の年収要件を拡大することで、妻のパートなどの収入を少し増やすことができるようになるということ。もう一つは、夫の年収要件を設けることで、拡大する控除の財源が不足しないようにしようということです。 配偶者控除については、不要論と必要論が激しく対立しています。子育てや家事、介護などで働きたくても働けないという人も多い中、専業主婦という選択を否定するかのようにもとれるため、配偶者控除には一定の意義があるという考え方もあります。一方、子育てや家事、介護があっても、出来る範囲で働く(働いてもらう)ためには、年収をコントロールすることになる配偶者控除は不要であるという意見もあります。 今回の改正は、妻の年収は拡大しつつ、制度は残すという、いわば「折衷案」ともとれる内容となりました。人口減少社会の中で、労働力不足や税収不足の現実を考えると、誰もが納税者となる制度は大事かもしれません。世帯単位で考える日本の税制も、未来永劫今のままでいいというわけでもないでしょう。とはいえ、子育てや介護などで十分に働く環境がない人も多いし、そもそも子育てと仕事の両立はそう簡単なことではないのです。そういうことを幅広く考えながら、どんな社会を作っていくのか、そのために必要な税制は何かを、これからは真剣に考えていく必要がありそうですね。
2016年12月27日DeNAが運営する医療・健康情報WEBメディア「WELQ(ウェルク)」が11月29日の夜に全ての記事を非公開としました。背景には、不確かな情報を元にした医療・健康系の記事を大量に公開していたことに対する批判が集まったことがあります。問題は、都の福祉保健局がDeNA担当者を呼び出す事態にまで発展しています。本件ではどのような点が具体的に問題とされたのか考えてみましょう。*画像はイメージです:■認められた効果・効能等以外を表示してはいけないWELQでは、医学的根拠が必ずしもないにもかかわらず、効果や効能を謳う内容が掲載されていました。薬機法68条は、1項で「何人も」虚偽又は誇大な記事を広告・記述・流布してはならないとし、2項で「医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事」の広告等も禁止しています。医薬品の販売をしているわけではないから問題ないのでは?と考える方もいるかもしれませんが、禁止されている主体は「誰でも」であり、また禁じられるのは「広告」に限りません。したがって、ウェブ記事であってもこれに当たることになるのです。なお、記事には「ようです」といった形で結論を断定していないものも多かったようなのですが、記事全体としてみれば効果・効能等を表示しているとみなすことができるのであれば、これに抵触する可能性があります。 ■他の記事からの盗用はいけないまた、記事はインターネット上にある記事をほとんど丸々コピーして、語尾だけ変えるといったことをしているようですが、この点は著作権法に抵触しています。インターネット上に公開されているからといって、それを勝手に使って良いかというと、当然そのようなことはありません。私的使用は許されますが、インターネット上に公開することは公衆送信権という権利を侵害するため、許されません。そのため、侵害にならないためには、適切な「引用」といえることが必要です。裁判実務上、引用された部分が明確であること(明瞭区別性)、引用する側が「主」で,引用される側が「従」といえる関係にあること(主従関係性)が重視されています。語尾だけ変えた記事は、このいずれも満たしていないため、適切な「引用」とはいえませんので、この点も問題といえます。なお、しばしば「無断利用」といわれたりしますが、適切な「引用」は事前・事後に許可を求めることは不要なので、「無断」かどうかという点は問題になりません。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【画像】イメージです*studiostoks / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月02日来年度の税制改正向け、自民党税制調査会は11月21日に総会を開き、「配偶者控除」制度を含めて本格的な議論をスタートさせました。これまでの経緯としては、「配偶者控除」制度が撤廃されるかどうかに注目が集まっていましたが、結果として撤廃されることはなく、配偶者控除の対象となる年収の上限が引き上げられるに留まる結果となりそうです。具体的には、現在、配偶者の給与収入が年間で103万円以下の場合に所得税が軽減されるルールとなっていますが、この上限額が103万円から130万円、もしくは150万円へと引き上げられることになりそうです。もし150万円に引き上げられた場合、実はこの改正で損をしてしまう人がいるというのはご存知でしょうか?Q.「配偶者控除の上限が150万円」に変わったら誰が困る?*画像はイメージです:.「夫の年収が1,120万円以上」の場合、税金の負担額が増えます。今回の改正では配偶者控除の上限額ばかりが注目されがちですが、実はその一方で夫の所得(年収から経費を差し引いた額)が「900万円」(年収1,120万円)を超える場合、その世帯は配偶者控除の対象から除外される方向で議論が進められているのです。所得900万円というのはかなりの富裕層ではありますが、彼らにとっては今回の税制改正で実質増税になってしまう可能性が非常に高いといえます。これまでパートなどで扶養の範囲内ギリギリで働いていた主婦の方々にとっては、わずかばかりの恩恵を受ける改正となりそうですが、一方で所得900万円以上の富裕層にとっては配偶者控除から除外され、支払う税金が多くなってしまう結果となりそうですね。 *取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】イメージです*mits / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月23日パートの就労意欲を奪っているのでは?という意見もある現在の「配偶者控除」制度ですが、11月16日、この原因とされている夫婦の一方(主に主婦の妻が対象)の年収上限「103万円の壁」を変えるべく、自民党税制調査会が見直しの議論を本格化したとの報道がありました。これまでも廃止案や配偶者控除に変わって「夫婦控除」を導入するなど、様々な議論が交わされてきましたが、今回の見直し議論によって、「年収要件を103万円から130万円、もしくは150万円にする」ことで一旦は落ち着きそうな気配です。ではこの年収要件が変わることによって、我々の生活にどのような影響があるのでしょうか?130万円、150万円それぞれのケースで見ていきましょう。*画像はイメージです:.配偶者控除の年収上限が「103万円」から「150万円」に引き上げられるとどうなる?A.妻の年収が150万円の場合、妻の「所得税負担が年間約2万3,500円」、加えて「社会保険料が年間約27万円」増える配偶者控除の対象が150万円に引き上げられても、夫が会社員の場合、妻の年収が130万円を超えると妻自身がこのように社会保険料を支払う必要があります。結局、「年収130万円」が「就労の壁」となる可能性が高くなります。一方、財務省案として、夫の合計所得が約900万円(年収1,120万円)を超える世帯は対象外になる案も出ています。夫の年収が1,121万円の世帯は、配偶者控除が一挙にゼロになると、夫は年間約7万6,000円(月約6,400円)の所得税が増えることになります。 Q.配偶者控除の年収上限が「103万円」から「130万円」に引き上げられるとどうなる?A.妻の年収が130万円の場合、「所得税の壁」と「社会保険料の壁」が同じ額になる「年収130万円」は元々「会社員の妻が社会保険料を自分で支払う年収の壁」なので、「所得税の壁」と「社会保険料の壁」が同じ額になることになります。夫の年収が一定以上だと、配偶者控除38万円を一挙に無くしてしまうのではなく、「年収150万円」なら夫の年収1,120万円から配偶者控除額38万円から徐々に減り始め、1,220万円で配偶者控除がゼロになります。「年収130万円」なら夫の年収1,320万円から配偶者控除額38万円から徐々に減り始め、1,420万円で配偶者控除がゼロになる仕組みが検討されています。一方、配偶者の年収上限が「130万円」の場合でも、夫の合計所得が約1,100万円(年収1,320万円)を超える世帯は対象外になる案も出ています。夫の年収が1,321万円の世帯の場合、配偶者控除38万円が一挙にゼロになると夫は年間約8万7,400円(月約7,300円)の所得税が増えることとなります。*上記の所得税の計算は扶養控除、生命保険料控除、医療費控除などは考慮しておりません。 *取材・文:拝野洋子/はいのようこ(社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー 。はいの事務所代表。大手地方銀行入行後、税理士事務所などに勤務し助成金支給申請、損保代理店業務、行政書士補助等を経験。その後電話年金相談員、労働施策アドバイザーなどを経て、主に個人向けマネー記事等を執筆。『All About』で出産育児・給付金ガイド、『ココライン』にて子育て・お金アドバイザー、ほか『Woman money』 、『マネーの達人』などに執筆。Yahoo!Kazok「妊娠出産手続き得するお金チェックリスト」、ダイヤモンド・ザイなどの雑誌で監修。HP「気軽に相談!人と保険とお金の情報テラス」、ブログ「家計にやさしい年金保険講座」)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2016年11月20日医療は日進月歩。その進歩はニュースになりやすい一方で…出典 : 医療は日進月歩です。他の領域に比べて、新しい発見や新開発の治療法の情報がニュースになりやすいのは、医療領域の一つの特徴であると言えるでしょう。けれども本人やご家族は、その新しいニュースを見聞きする度に一喜一憂することになります。また、ニュースで報じられるような新しい治療法は、受けられる機関がとても限られています。本当に新しいニュースを追い続ける必要は果たしてあるのでしょうか。医療で採用される新しい診断法、治療法などは、とても慎重に、何度もその有効性と安全性が確かめられてから、一般的な医療機関に採用され、また日本では健康保険が適用され、安価に利用できるようになります。この数年でも発達障害に含まれる障害に対して、新しく正式に適応が承認されたお薬がいくつかあります。その一方で、ニュースになった多くの新しい発見や治療薬は、まだまだ開発のごく初期段階に留まっているものがほとんどです。その後の研究の中で、実はあまり有効ではないことがわかったり、思ったより安全ではなかったりすることがしばしばあります。自閉スペクトラム症の領域では、これまでにも数多くの薬剤が颯爽と登場しては消えていくという経過を繰り返しています。こうした新しい診断法や治療法に期待することは悪いことでありません。また新たな方法の開発を担当するような医療機関に通院している方には、ぜひその研究に協力していただいて、新しい支援の道を開くことを助けていただきたいという思いもあります。けれどもそれはむしろボランティア、社会貢献という位置づけです。残念ながら本人やご家族に利益をもたらすとは限らない、それが研究途上の新しい医学的手法なのです。サプリメントを使っても良い?判断の基準は安全性・コスト・併用可能性出典 : もう一つ、残念ながら現在の日本の状況では、医学による厳密な効果や安全性の検討を受けない、あるいはあえてそうした検討を避けて、宣伝されたり使われたりする物質や薬物も少なくありません。医師の処方箋を必要としない多くのサプリメントや薬物などが、発達障害への有効性を謳って、あるいはより巧妙にそれをほのめかして宣伝されていたりします。診察室でそうした物質を使ってみてもよいか、相談されることもしばしばあります。自分の場合にはこのようなとき、それがかなり安全であることがはっきりしていて、家計の負担になるほど高価ではなく、標準的な他の支援を受けることを妨げないのであれば、それを使ってみることを検討してもよいのではないか、とお伝えしています。このうち、安全であることを確かめるのは実はなかなかやっかいです。物質そのものは安全そうであっても、製造過程で混じり物がないかどうか、そもそも能書き通りの物質が含まれているのか、それを確かめるのはなかなか難しいことも多いのです。またこうした有効性と安全性の検証を経ていない治療法というのは、実はお薬に限りません。心理社会的介入と呼ばれるような薬物以外の様々な支援の中でも、しっかり研究が進められているものと、確からしい証拠がほとんど見つからないものが、世の中で入り混じっています。このときにも判断の原則は、安全性、価格や時間などのコスト、標準的な支援との併用可能性ということになります。貴重な時間やお金、気力や体力を上手に使っていくためにも、筋のよい情報を収集することが必要ですね。迷ったときは、主治医に相談を。これからも上手に医療と付き合って出典 : 全ての医師がこうした、標準的な医療以外の支援に詳しいわけではありませんが、迷ったときに主治医に相談してみるのは、悪くないかもしれません。そして主治医がまったくそれを知らなかったら…、それはその方法についてほとんど研究が進んでいない証拠かもしれません。さてここまで10回の連載では、医療による支援そのものの詳しい説明ではなく、どのようなスタンスで医療とつきあってゆくと物事がうまく進みやすいのか、できる限り踏み込んで書いてみました。実は自分のスタンスは必ずしも平均的な医師とは重ならないところもあるかもしれず、そこはたいへん申し訳ないのですが、皆様の今後の医療サービスの利用に際して、少しでもご参考にしていただけたらとても嬉しく思います。
2016年10月21日発達障害のある人のため、医療機関ができること出典 : 年現在、多くの地域で、発達障害の診療に携わっている医療機関は著しく不足しています。医療従事者、それを利用する他領域の支援者、時には本人やご家族も、限られた地域の医療資源をできるだけ効率よく活用することを考える必要があります。発達障害のある本人や家族には様々なサポートが必要です。その中には医療機関が提供できる、提供しているものもたくさんあります。その代表的なものを挙げてみます。Upload By 吉川徹けれどもこの中で、どうしても医療機関でなければ提供できない支援というのは、実はあまり多くありません。そして、医療以外でも提供できる支援は、実は他の領域の支援者の方が、有利であったり、得意であったりすることも多いのです。医療でなければできない発達障害支援は何か出典 : 医療でなければ提供できない支援の一つは「診断」です。一方で、広く診断といったときに、その人に発達障害の特性があるのかどうか、発達障害の特性を考慮に入れた支援が有効であるのかどうかという「見立て」は、必ずしも医療機関のみでなされているわけではありません。むしろ本来はこうした見立ては、保健、教育、福祉などの領域でも必要になってきますし、仮に医学的診断を後に受けるとしても、それより前から見たての作業が始まっていることが望まれます。また、「見立て」に限られた時間しか充てられない医療機関に比べて、生活を共にする時間が長い人は、そもそもとても有利でもあるのです。ここは医師の間でも見解が分かれるところなのですが、自分は発達障害のある人すべてが、医療による診断を受ける必要は必ずしもないと考えています。ただし見立てや診断において、どうしても医療機関が必要になる場面があります。それは、・患者の困りごとが、発達障害以外の他の疾患から起こっている可能性を見極め、排除する必要がある場合・患者の困りごとの背景にある疾患を診断する必要がある場合上記の2点です。特に生物学的な検査が必要である場合、医療抜きにこれを行うことはほぼ不可能です。発達障害によく似た状態を示す疾患はたくさんありますし、また発達障害のある人には、脆弱X症候群やダウン症など様々な障害が背景にあることも少なくないのです。このため、何らかの点で典型的ではない、他の際だった特徴のある人の場合、医療機関を受診しておくメリットは大きくなります。そして診断書の発行も医療機関の重要な役割であり、優先度の高い仕事です。一般に医師は診断書の発行を面倒がる傾向があるのですが、これはどうしても医師免許が必要であり、医師が(好まずとも)独占している業務なので、嫌がらずにやらないといけないと自分に言い聞かせています。そしてもう一つ、どうしても医療でないとできない業務は、処方箋の必要な薬物を使うことです。これは当然ですが、では処方箋のいらないお薬、サプリメントはどうか、ということになります。しかし、これらの中に現時点で効果と安全性が実証されているものは、ほぼありません。医師と相談せずに使うことは更におすすめしにくいので、できればそこも医師と相談できると手堅いでしょう。結局、どうしても医療でないとできない主な支援は、診断、特に診断書の発行と薬物療法ということになります。医療でも出来る支援には、他に幾つもありますが、その優先度は低くなります。医療機関が不足している地域では、医療資源はまず診断と投薬のために活用する、その姿勢が求められています。医師の側もその業務を独占している以上、優先的にそれを提供する義務があると言えるでしょう。医療の強みは、卓越した経験と専門性にある出典 : それでは診断や薬物療法以外には、医療のアドバンテージはないのでしょうか。医師の立場からすると「それはある」と言いたくなるのですが、実際にはどうでしょうか。一つには、医師、特に発達障害を専門とする医師は、他の領域の支援者と比べても桁違いに多くの事例に接しているということがあります。一人の専門の医師が同時に診療している発達障害の患者さんは、数百人から時には千人を越えることがあります。医師人生の中で会ってきた患者は数千人ということも珍しくありません。そして多数例の報告に基づいた研究論文がたくさんあるのも医療領域の大きな特徴です。また多くの医師は、ライフステージをまたいで、患者さんに関わり続けています。幼児期早期に受診した子どもが成人し、時には老年期まで診療することがあります。自分一人でそれを見届けることができなくても、連綿と書き綴られたカルテから、比較的若い医師でも目の前の患者の若い頃の姿を確かめることができるのです。多数の患者に関わる医師は、残念ながら養育者や他の領域の支援者に比べると「その子自身」の専門家になれる機会は限られます。そのかわり「自閉スペクトラム症」の専門家、「注意欠如多動症」の専門家などには、なりやすい立場です。多くの例に長く関わっているからこそ、行いやすい見立てや助言があります。それは例えば、・将来を見越して今優先すべき支援の領域を考えること・本人や家族のリソースの配分を考えること・進路の決定などの場面でのアドバイスです。このように医療による支援のなかには、医療でないとできないこと、医療でもできること、そして医療が得意なことと苦手なことがあります。皆さんにはこうした医療による支援の特性をうまく理解して頂いて、上手につきあっていただきたいと思います。
2016年10月03日こんにちは、齋藤惠です。このサイトをご覧のママさんの中にも、現在、配偶者控除を受けている方が多いのではないでしょうか。しかし、今後はその制度が廃止され、新たな制度が導入される可能性が出てきました!一体何が変わり、私たちにどう影響してくるのでしょうか?●そもそも、配偶者控除とは?2016年10月現在の配偶者控除は、以下の4つの条件に当てはまると受けられます。**********・配偶者がいること・納税者と生計が一緒であること・年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)・青色申告者または白色申告者ではないこと**********これらをクリアすれば対象となり、別名「103万円の壁 」などと呼ばれていますね。主に専業主婦(主夫)やパート・アルバイトの方がこの控除を受け、労働時間や収入などを調整することで家計をやりくりしていると思います。●夫婦控除で103万円の壁がなくなる!?一方で、政府が検討中と言われている案が、上記の配偶者控除をなくし、103万円の壁を取り払い、共働きの夫婦であれば妻が所得金額などの制限なしに一定の控除を受けられる というものです。詳細は未発表なので、断定的なことは言えない新制度案ですが、現段階では「夫婦控除」と呼ばれ、早ければ2017年1月にも動き出す見通しとのことです。●夫婦控除のメリットは?現在の配偶者控除は「103万円の壁」がネックと言われており、時間的にはまだまだ働ける状態にもかかわらず、仕事をセーブしなければいけない人たちもいました。働きすぎて年収が103万円を超えれば、配偶者控除が受けられなくなり所得税がかかってくるからです。しかし、夫婦控除が実施されれば、どれだけ働いても一定の控除を受けることができる ので、今まで余力があった人は働きたいだけ働くことが可能です。●忘れちゃいけない130万円の壁どんどん働けばそれだけ収入アップが見込めそうな夫婦控除ですが、扶養範囲で暮らしている方にとって、もう一つ忘れてはいけない制度があります。それは、健康保険や国民年金などの社会保険に関わる「130万円の壁」(2016年10月から改正予定)です。こちらは先ほどの所得税に関わる「103万円の壁」とは別物なので、混同しないようにしてください。働く意欲がある人でも、どんなに夫婦控除があるといったところで、社会保険の方で扶養から外れてしまっては、やはり今まで払わなくて済んだ保険料の納付義務を負ってしまいます。また、カッコ書きの通りこの「130万円の壁」も、2016年10月の法改正によって一部該当する人は「106万円の壁」に変更 となります。●今こそ働き方を見直すとき!働くことが自分にとってメリットなのか?デメリットなのか?制度の改正によって、ますますややこしくなった気配がありますね。「いつの間にか損をしていた!」というような事態にならないためにも、もう一度、今の労働条件と家計のバランスが合っているのかを見直してみましょう。自治体に問い合わせてみたり、勤め先に確認してみたりといったことなら気軽にできると思います。・夫婦控除があっても130万円(106万円)以内で働くのか?・保険料を払ってでも、収入アップを目指してどんどん働くのか?2017年に夫婦控除がスタートしたとき、あなたなら、どんな選択をしますか?【参考リンク】・配偶者控除 所得税 | 国税庁 ()●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)●モデル/神山みき(れんくん)
2016年10月03日発達障害のある人が利用できる医療機関の不足は、なぜ起こっているのか出典 : 発達ナビで、新たに医療についての連載をさせていただくことになりました。児童精神科医の吉川徹です。現在は愛知県の障害児者専門病院に勤務しています。皆さんもおそらくはよくご存知のように、発達障害がある子どもや大人が利用できる医療機関は、ほとんどの地域でひどく不足しています。これは一体なぜなのでしょうか。一つにはいわゆる「発達障害」に属する障害、中でも自閉スペクトラム症と注意欠如多動症という障害のある人の数がとても多いことがあります。今までに子どもの心の医療に対象になってきた疾患、あるいは大人の精神医療の対象になってきた疾患と比べても、それを上回る数になっています。国際的に認められたかなり手堅い方法で調べたとき、地域の子どもの中で自閉スペクトラム症と診断できる子どもは一般的に1〜2%程度いると言われています。ところが最近厚生労働省の研究班が報告した数字では、地域によっては小学1年生の子どものうち、5%以上が自閉スペクトラム症の診断を受けているとされていました。また注意欠如多動症(ADHD)も元々とても数の多い障害で、3〜5%以上の子どもがその診断を受ける可能性があるとされています。これは、例えば知的障害を持つ人の数や統合失調症を患う人の数などと比べても、数倍にも及ぶ大きな数字なのです。発達障害の医療にまつわる困難の大半は、この患者数の極端な多さに起因しています。例えて言えば、もともと満員だった電車に今までの3倍の乗客が押し寄せていて、しかもレールが一本しかないので、増発もままならない、そんな状況が日本中で起こっているのです。診療ニーズの拡大に追いつけない原因には、医療機関としての構造的な問題がある出典 : こうした障害は比較的短い期間で広く認知されるようになり、診療のニーズが急速に拡大しました。これに応えるために、厚生労働省でも子どもの心の診療ができる医師の養成のための検討会を開催したり、モデル事業や研修を実施したりしています。平成28年度からは、地域のかかりつけ医を対象とした研修も全国規模で始まろうとしています。専門の医師が集まる学会などでも養成のための取り組みが続けられています。しかし現時点でもニーズの急増に対応できる新たな医師の養成や医療機関の整備は、充分に追いついているとは言えない状況です。まず医療による支援そのものが、他の領域に比べて極めて高コストな構造になっており、専門家の養成や維持には社会に大きな負担がかかることから、供給できる医療の内容や医師の数そのものに厳密な制限がかかっています。そして専門医は促成栽培が難しく、一人一人を手取り足取り教えていく必要があります。そのためそもそも教える立場の医師の数が増えないと、養成できる若手の数も制限されてしまうのです。また、子どもの心の診療自体、構造的に赤字体質であり、なかなか若い医師にとって魅力のある領域になりにくいなど、様々な背景があるのです。本来あるべき支援と、医療信仰とのあいだに存在するギャップ出典 : 残念ながら現在の医療の水準では、種々の発達障害の根本的な治療法は見つかっていません。逆に言えば、根治するために必ず医療を受診しなければならない、という状況ではないのです。これほどの数の多い、発達障害がある子ども達、大人達の支援は、本来は普段の生活の場所、そこから近いところで提供されなければなりません。医療のような日常の暮らしと切り離された場所での対応には、はじめから限界があります。一方で、本人やご家族、他の領域の支援者からはときに医療に対して、万能的、魔術的な期待が寄せられます。また逆に医療領域の支援者には、他の領域の支援者に対する根強い不信があることがあり、良心的な医療者ほどその不信を隠さず、必ず医療機関にかかっておくべきだと主張することもあります。この背景には、そもそも現在の発達障害の概念の多くは医療から出発しており、黎明期である1960年代〜70年代には医療以外の支援が極めて乏しかったこと、現在でも他の領域の支援で支えきれなかったこじれたケースが医療機関を受診する場合が多いことなど、様々な理由があるのですが、現在の視点から見るとそれは不幸なことであると思います。診断の前から支援を行う姿勢が必要。では、本当に「医療は役立たず」なのか?出典 : 例えばいわゆる「学習障害」の場合などでは、地域の一般的な子どもの学力のデータも、多数派の子どもに勉強を教えるノウハウすらも一般的な医療機関にはありません。しかし、最近の診断基準(DSM-5)では、学習障害(限局性学習症)の診断は、何らかの学習の困難に対して、それを対象とした「介入が提供されているにもかかわらず」6ヶ月以上困難が持続している場合に行われるとされています。文部科学省の通知でも診断の前から支援を行うという姿勢がはっきり打ち出されているにも関わらず、なぜか医療機関の受診が支援の前提のように語られることがあるのです。「クリニックからクラスへ」というスローガンにはかなりの説得力がありますね。さて、それでは「医療は役立たずなのか」と問われると、医師の立場としてはやはり「そうではない」と答えたくなります。この連載では医療そのものについての情報よりも、発達障害のあるご本人、ご家族がどのように医療とつきあっていけば、医療のサービスを最大限有効に活用できるのか、そうした観点から考えていきたいと思います。
2016年09月29日