【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第74回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】最近、亡くなった父と話がしたいと思うことが多くなりました。子どもの頃、私は父と仲が良く、学校や友達、進路のことまで日常のあれこれを父に話していました。父からのアドバイスはどれも参考になり、振り返ると、そのときの心の支えであったとも思います。しかし、大学進学や就職をする中で、それまで聞かされていた父の話が、必ずしも正しい内容でなかったり、偏見のある内容であることに気づいて。父から心が離れ、それから相談したり腹を割って話したりすることもなく、父は亡くなってしまいました。それから3年。一転して、父ならどうアドバイスするだろう、自分の気持ちを聞いてほしい、と思うことが増え、大人になってから父と素直に接することができなかったことに後悔するようになりました。父なき今、どうすることもできないことは分かっています。ただ、このやるせない気持ちと折り合いをつける方法はないものでしょうか。(58歳・女性・主婦)【回答】私も、去年の春に父を送りました。だからと言うわけではないのですが、あなたさまの寂しさ、後悔、なんとも言えないやるせないお気持ちが我がことに重なり、沁みてきました。本当に、この寂しさたるや、どんな言葉を使ってもあらわしきれないものがありますね。私たちはそれがあまりに苦しいので、少しでも楽になる「折り合いをつける方法」を探してしまいますが、私は、そんなのないと思っているんですよ。もう二度と会えない人を思い出し、あれこれ考えてしまうことは、たしかにどうしようもなく辛いです。考えれば考えるほど会いたくなるのに、会いたくなった端からもう二度と会えないという現実を突きつけられる。でも、それが故人を「悼む」ということなのではないかと思うようになりました。「悼む」というのは、なにも死を悲しみ嘆くばかりではありません。その人の残した言葉を思い出し、その人の一瞬一瞬の表情を懐かしみ、その人の生きてきた時間を丸ごと慈しむ。その人がここに存在していたということを、決して忘れないでいつづける。それが「悼む」ということだと思います。だから私たちは、積極的に悼んでいるのです。あなたさまが覚えていなくて、誰があなたさましか知らないお父さまを覚えているでしょう。いつまでも忘れず、繰り返し想うこと。それが残された私たちにできることなのではないでしょうか。そしていつか、私たちも誰かに悼まれる時が来るのです。すべては回り、巡り、流れていきます。それを止めることは、誰にもできない。「折り合いをつける方法」を探して、もがき苦しむより、流れに身をまかせてみようではありませんか。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年04月30日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第73回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】一昨年に定年を迎え、同じ会社でそのまま嘱託で働いています。仕事内容は定年前と同じで、社内の様々なデータを分析し、レポートをまとめることです。嘱託になる前は、そのときの上司に「役立っているよ」と言ってもらえたこともあり、少しは自分が会社にいる価値はあるのかな、と思えていました。でも、最近、レポートを渡しても反応が全く返ってこなくて……。本当に役に立っているのか心配でたまりません。改善した方が良いところを聞いても返事はなく、自分に作業依頼する人も減ってきたように思います。自分の作る資料に不足があるのか、自分には頼みにくいのか、そもそも資料は必要ないのか。考えれば考えるほど、嘱託という立場もあってか、自分の会社での存在価値に自信がなくなります。職場にもう私の居場所はないのでしょうか。(62歳・女性・会社員)【回答】悩ましいご状況ですね。さぞかし、日々鬱々したご気分でおられることだろうと心配です。定年前同様にさまざまなデータを分析し、まとめていらっしゃるお仕事に対して、最近周りの反応が思わしくないと。それで自分の存在価値に自信がなくなり、居場所まで危ういと。では、ここに1本の大樹があると想像してください。天高く伸び、大きく枝を張った大樹です。その大樹の周りには、幾人もの人が小屋をつくって住み着いていました。住人Aは常々こう言っています。「この大樹のおかげで私たちは強い日差しをよけて快適に生活できるのだ」。しかし、住人Bはこう言います。「本当に迷惑な大樹だ。こいつがあるせいで私の畑に日が当たらない」。そして、住人Cは「え、大樹なんてあったかい?魚釣りが本業の私には、あってもなくても関係ないね」と言っています。そんなさまざまな声を聞きながら、今日も大樹はすっくと天に向かって伸び、しっかりと大地に根を張っています。粛々と水を吸い上げ、葉を茂らせ、二酸化炭素を吸って、酸素を放出しています。さあ、大樹の存在価値を決めるのは、Aさん?Bさん?それとも、Cさん?みんな自分の都合で勝手なことを言っているように見えるのですが、それらの言葉を鵜呑みにして大丈夫でしょうか。仏教的な考え方の中に、「直観」を真実とするという考え方があります。「直観」とは、自分の身体もってして知ることで、数値・言葉・道具・計算などに寄らず、どんな理由をつけても変わらない真実だそうです。つまり、「もう私の居場所はないのか」との問いに答えがあるとしたら、「自分が自分の身体でどう感じているか」がすべてだということです。ぜひ今一度すべての雑音を排除して、ご自分の奥にあるシンプルな「感覚」を見直してごらんになってみてください。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年04月23日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第72回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】1月に夫をがんで亡くしました。本人が望んでいた通りの在宅での看取り。希望を叶えられたのはよかったと思っているのですが、それでも他にもっと何かしてあげられることがあったのではとの後悔もあり、まだまだ気持ちの整理はついていません。そんな中、同居する娘(次女)の振る舞いが気持ちの余裕をどんどん奪ってきます。娘は強迫性障害がひどく、一日に何度もシャワーを浴びないと、落ち着いていることができません。それを責めるべきではないとわかっていますが、一緒に暮らしていると、どうしても目についてしまいます。また、平気で嘘をつくことも多々あり、それがさらに私の心を苛立たせます。ただでさえ、悲しく辛いときに苛立たせる娘の振る舞い。気持ちを整えるにはどうしたらいいでしょうか。(61歳・女性・主婦)【回答】夫さまを看取られたとのこと。大仕事をなさいましたね。まだまだ日も浅いですから、お気持ちが千々に乱れることもおありでしょう。無理もありません。私たちには“時間薬”という強い味方がついていてくれますが、気持ちが整ってくるまでには、2年くらいの月日が必要と気長にかまえていてくださった方がよいように思います。大切な人を失った悲しみを癒すには、そのくらいの時間をかける必要があるということです。そんな中にあって、娘さんの行動がいちいち目についてしまうというのも、これまた無理もないこと。私たちは、それぞれに“許容のコップ”を持っていて、それには上限があると思うのです。心身ともに快調で、物事も万事うまくいっているような時には、コップの容量に余裕があります。だから少々のことは、大目に見られるのです。でも、身体の調子が悪い時や、今回のように大切な人を看取られたばかりなどという時には、コップは既にいっぱいいっぱいです。そうなれば、ちょっとの刺激で、たとえ普段は気にならないようなことであったとしても、コップは溢れ出してしまうでしょう。娘さんが悪いわけでも、ましてやあなたが悪いわけでもない。今、そういう状況にあるというだけです。一番手っ取り早い対策は、コップを溢れさせる原因から物理的距離を置くということです。今回の場合で言えば、娘さんとの距離をとるということですね。でも、一緒に暮らしていらっしゃるのですから、物理的な距離を置くことはそう簡単ではないでしょう。わかります。では、せめて、心の距離はとってみようではありませんか。「どうしても目に付く」という状況になったとき、私たちはそれをコントロール不能な状況と考えがちですが、「どうしても目に付く」のではなく「自分が積極的に見てしまっている」のだ、ということが案外あるのです。つまり、自分が見ているのですから、事象の軸は自分にあり、コントロール可能だということです。ぜひそこに気づいていただきたい。自分の心を守るバリアをしっかりイメージしていただいて、3回に1回でいいので、娘さんの行動から目を離してみてください。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年04月16日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「これから先、足腰が立たなくなって寝たきりになって、子どもたちに迷惑をかけるようになると思うと不安。3年前に妻が亡くなりましたが、生きていくのがつらい。どうすればいいでしょうか……」(木枯無粋さん・65・自営業・京都府)【A】「未来も過去もみないで、目の前にある仕事をやるだけ」(蛭子能収)こんな本気の悩みを、オレなんかに打ち明けること自体がダメだと思いますけどね。(マネジャー〈以下、マ〉「ギャラが出るのでしっかり仕事してください!」)すみません……、オレは働いて生活費を稼がないといけないんですよね。ただ、オレは漫画家とかタレントをやっていますが「これから先」なんて考えたことが一度もありません。行く末を考えたらどっちも不安だらけですからね。未来も過去もみないで、目の前にある仕事をやるだけ。あまり先のことを考えないほうがいいと思いますけどね。競艇でも、終わったレースを引きずったり、次のレースを考えたりしないで、目の前のレースだけに集中します。この人も、今だけに集中すればいいと思いますよ。(マ「そういえば最近、僕は競馬で負け込んでいるんですが、どうすればいいですか?」)いくら目の前のレースに集中しても勝てないオレに聞くこと自体、まったくダメだと思いますけどね。「女性自身」2021年4月20日号 掲載
2021年04月12日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第71回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】長い間、夫との不仲で苦しんでいますが、離婚出来ませんでした。子育てや仕事で考えないようにしてきましたが、今は、リタイアして毎日、夫と二人暮らしです。夫は、いわゆる古い男尊女卑の考えが根強くあり、何度も話し合いましたが、折り合いはつかず、もう40年以上我慢しています。これからの人生考えると本当に真っ暗で出家したいとも考えます。どうにか心穏やかに生きる道はないのでしようか。(69歳・女性・無職)【回答】40年以上も我慢を続けてこられたのですね。なんと大変な人生を送ってこられたことか、拝読しながら胸が痛みました。これからを考えると真っ暗ですか。困りましたね。なんとか心穏やかに生きる道はないか、お探しになるのも無理はないと思います。離婚したいと思いつつ、そうはできない理由がおありだったのでしょう。煮え湯を飲むような思いも、きっとなさったことでしょう。でも、結局、離婚しないでここまでやってこられた。人生100年とはいえ、もう半分以上も我慢で過ぎてしまったのですから、もうそろそろご自分の思い通りに行動したとて、罰は当たらないと思いますがいかがでしょう。とはいえ、思い通りにできないから困ってしまう。夫と離れて暮らしたいけれど、経済的に立ち行かないということもあるでしょう。夫とは離れたいけれど、子供や孫とは離れたくないということもあるでしょう。すべてが自分の思い通りにはいかないのが世の常です。おのずと、塩梅を見て折り合いをつけるということになりますね。夫さまと折り合いをつけろというのではありませんよ、自分が自分と折り合いをつけるということです。自分が自分と折り合いをつけるには、覚悟が必要です。「これでいいんだ」「どんなことがあってもこうしよう」と腹をくくる覚悟です。私たちは道に行き詰まるとすべてを他人のせいにしてあきらめてしまうクセがあるようですが、そこから先の道がどうなるかは、実のところ自分の覚悟ひとつなのです。やるかやらないかを決める覚悟。決めた道が大失敗であったとしても責任を持つ覚悟。日々明るく幸せに過ごしてやる!という覚悟。その覚悟さえしっかりしていれば、道はおのずと開けて行くような気がします。「これからの人生真っ暗だから出家したい」のではなく「もっと自分を高めたいから出家したい」とのご覚悟でしたら、いつでもご相談くださいね。心から応援させていただきますから。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年04月09日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「夫が交通事故でケガ、私も体調を崩して病院通い、娘は就職先が決まらない。わが家だけ不幸ばかり起こります。幸せそうに暮らしているほかの家が妬ましいです……」(インガル・スーさん・49・主婦・兵庫県)【A】「幸せとは、なんてことないフツーの生活のこと」(蛭子能収)オレは競艇で負け続けたときは、帰りにパチンコ店に行っていました。ウジウジした気持ちを切り替えるためですが、意外と競艇で負けた日のほうが、パチンコでは勝っていた気がします。ギャンブルで失ったツキは、ギャンブルで取り戻すしかありません!(マネージャー〈以下、マ〉「真面目に回答しないと仕事がなくなりますよ!」)あっ、すみません……。大変そうですが、不幸なことは生きていれば必ずありますよ。たまたまそれが重なっただけ。もし不幸がずっと続いたら、その体験を本や漫画にすれば売れると思いますよ。(マ「蛭子さんは以前、真面目な番組で、幸せはと聞かれて「オッパイと競艇」と答えてヒンシュクを買っていました」)あれ、そうやったけ?たぶん、家に帰ってきたら女房がいて、たまに自分がやりたいことができるフツーな生活が幸せだと言いたかったんですけどね。(マ「やっぱりクズだと噂されました」)そんな悪い評判でも、逆にオレの評価を高めてくれることがあるんですよ。「女性自身」2021年4月13日号 掲載
2021年04月05日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第70回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】「親の老い」がなかなか受け入れられません。母はこれまで記憶の衰えなど感じさせず、元気に生活をしていました。ただ、90歳を過ぎてから急に物忘れが増え、危なっかしい行動を何度もするように。母も自分に老いが迫っているのを感じているのか、何か失敗するたびに落ち込んで泣いています。私は母が落ち込んだ時は、「こんな元気な90歳、周りにいないよ!」と元気づけ、毎回、失敗しないようにどうするかを伝えるようにしています。母もそのときは「わかった」と答えてくれます。ただ、何度言ってもやることはなく、同じことの繰り返しで、もう小さい子どもに接している気分です。こういうのが「老いる」ということかもしれませんが、それがやるせなくて仕方がありません。親の老いをスッと受け入れる方法はあるのでしょうか。【回答】時に厳しく、時に優しく、なんでも知っていて頼りになり、いつでも守ってくれたお母さん。いついつまでも、あの頃のお母さんのままでいて欲しい。本当にそうですね。私も、そう思います。物忘れが増え、危なっかしく行動する親の姿をスッと受け入れることは、なかなかできません。なぜ、親の老いを受け入れることは、こんなにも難しいのでしょう。思うに、親の老いた姿の先に、無意識のうちに、自分の老いを見ているからではないでしょうか。私たちは、いずれ誰もが老いて死にます。きっとどなたさまも「そんなことあたりまえじゃないか」とおっしゃるでしょう。でも、実際にその老いや死を、自分のこととして腹に落としているかというと、そうではないようなのです。だってみなさんその時になると「まさかこうなるとは!」とおっしゃるのですから。つまり、日頃私たちは「老い」や「死」を封印して過ごしているのです。でも、親の老いた姿を見ることでその封印が破られ、人間が根本的に抱えている「なんで人は老いるんだろう」「なんで人は死ぬのに生まれてくるんだろう」という思い(これをスピリチュアルペインと言います)に気づかされてしまうから、心がザワつくのではないでしょうか。となりますと、スッと受け入れる方法は、おいそれとはありません。あえてご提案するとすれば、「なんで?」ではなく、「こういうもんなんだ」と思うようにすること。考えてもどうしようもないことを、どうしようもないままにしておく胆力を持つことなのです。やるせなくなってきたら、無理をしてでも「こういうもんなんだ」と声に出して言ってみてください。少しは心のザワザワが、静まるかもしれません。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年04月02日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「腎臓を患い、透析をしている夫。病気や治療が大変だろうけど、自己中で感謝の一言もない。『ありがとう』でも言ってくれたらいいのに。もう夫の世話をしたくありません」(郡山こりゃまさん・54・主婦・福島県)【A】「『ありがとう』を口癖にして言い続ければ、いつか気持ちは伝わる」(蛭子能収)どうしたらいいんやろ……(マネージャー〈以下、マ〉「蛭子さんも昔は『ありがとう』とは言わなかったですよ」)そうやった。でも、認知症になってから「ありがとう」と自然に言うように……どうしたんやっけ?(マ「奥さんが『ありがとうは?』とずっと言い続けたことも大きいと思います」)じゃあ、夫に「『ありがとう』と言ってください」と言い続ければいいと思いますよ。「ありがとう」なんて気持ちがこもっていなくても別にいいんですよ。たとえば有吉(弘行)さんも、オレが認知症になったことを気にかけてくれたようなので「ありがとう」。東野(幸治)さんも、病気のオレをテレビに出してくれて「ありがとう」。オレの女房も、いろいろ面倒かけて「ありがとう、ありがとう」。こうやって練習のように言い続けていれば口癖になって、いつか気持ちが伝わりますよ。(マ「蛭子さん、オレにも言ってください」)あ〜はいはい、ありがとう、ありがとう!こう言っておけば、みんなが笑ってくれるんですよ。「女性自身」2021年4月6日号 掲載
2021年03月29日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第69回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】22歳になる娘は高校生のときに、友人関係に悩んで不登校になりました。病院に通い、担任の先生とも相談を重ねながら、当時はなんとか高校を卒業し、地元の私立大学に入学。私は大学に入れば、環境も友達も変わり、少しずつ変わっていけるかと思いました。しかし、状況はなかなか改善しませんでした。娘は家族と普通に会話しますし、一緒なら外出もできます。ただ、大学に行ったり、就職活動することはできません。私たちも病院に連れていく以外、見守ることしかできていません。私たち親が死んだときに一人っ子の娘はひとりで生きていけるのか。先の見えない悩みが頭から離れません。(50歳・女性・会社員)【回答】ご心配ですね。ご心労いかばかりか。大切なひとり娘さんですもの、目の中に入れても痛くないほど可愛がり、愛情を注いでいらっしゃることでしょう。ましてや、娘さんは人間関係の禍に巻き込まれた被害者でいらっしゃる。なんとお可哀想なことか。「私たち親が死んだとき、娘がひとりで生きていけるか」とのご心配も、痛いほどわかります。でも、お二人がいなくなったら、娘さんは、きっとひとりで生きてゆけますよ。見守ることしかできないとおっしゃっておいでですが、日々の食事はどうしていらっしゃいますか。掃除洗濯は?入浴や空調、なんだかんだと光熱費もかかるでしょう?想像いたしますに、すべて問題なく整えて差し上げていらっしゃるのではないでしょうか。娘さんにとって、お家は極めて安全な「繭」ですね。そこに潜り込んでいれば、お父さんお母さんに可哀想だとかばってもらえ、たっぷりと愛情を注いでもらえ、何不自由なく暮らしていけるのです。そんな「繭」から、どうして出るものですか。そうなれば娘さんは、無意識のうちに「繭」に居続ける理由を積極的につくります。だから、状況は改善するわけがありません。そして、あなたさまは、「繭」に籠り続ける娘さんを心配しつつも、娘さんが「繭」に居続けてくれていることに、心のどこかでほっとなさっている……。現在の困った状況は、同時に、安定した状況でもあるという、絶妙なバランスを保っているのではないでしょうか。ごめんなさい。あくまでも数行のご相談の文章から、勝手に想像したに過ぎません。どうかお気を悪くしないでくださいね。もうすぐ春です。良い気候になりますから、思い切って窓を開けて外の空気を入れましょう。膠着して澱んだ気を換えなければ変化は始まりません。明るい明日が、待っていますように。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年03月26日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「銀座のクラブ通いをする国会議員。新型コロナ対応もそうですが、政治家に裏切られた気分です。もっとしっかりしていれば日本はよくなるはず。蛭子さんからも言ってほしい!」(笹ダンゴさん・42・パート・島根県)【A】「政治家なんて信用できないからいくつになっても稼いでいたい」(蛭子能収)オレは銀座には行ったことがありませんね。(マネージャー〈以下、マ〉「プロデューサーに連れられて、毎週、銀座の高級クラブに行っていた時期があります」)あっ、そうやった。番組のプロデューサーが銀座好きで、収録が終わった後、よく誘われていました。オレはレギュラーだったから断れなかったけど、楽しい思い出はまったくありません。その銀座好きのプロデューサーは、オレのこと「蛭子大先生」と呼んでいたのに、すぐに「蛭子さん」になりました。しばらくすると「蛭子!」に呼び捨てになって最後には「おい親父!」と呼び方が変わっていました。でも政治家なんて、みんなあのプロデューサーみたいなものですよ。政治にはあまり期待しないほうがいいように思えてしまいます。(マ「蛭子さんは政治や国が信用できないから何歳になっても働きたいんですよね」)政治家って定年がないんでしたっけ?それやったら「認知症党」でも作って、政治家になるのもいいですね。まっさきに、賭け麻雀などのギャンブルを解禁します。「女性自身」2021年3月23日・30日合併号 掲載
2021年03月22日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第68回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】義母のお金の管理に困っています。私たちと一緒に暮らす義母は年金をお小遣いにしています。義母のお金なので、その使い道を私たちが口出しすることはないのですが、お金の管理はとても杜撰で……。しょっちゅう「お金がなくなった」と言って家中を探し回るんです。私もそれにつきあうことになるのですが、ほとんどはいつもの場所にしまわなかったり、置き場所を変えたりといった甘い管理が原因。毎回同じことの繰り返しで、最近は「今日もかぁ」と辟易しています。ただ、義母は他人にお金を管理されるのがどうしても嫌なようで、私たちが話を持ち掛けても断固として拒否します。こういった時、義母も私たちも納得できる折り合いのつけ方はあるのでしょうか(58歳・女性・主婦)。【回答】お金の問題って、厄介ですよね。義理のご関係だとなおさらでしょう。ところで、ご相談を拝読して、私、看護師なものですから、ちょっと心配になったのは認知症のことです。お義母さま、そのへんは大丈夫そうですか。お金の管理が甘いとか杜撰だとかの問題ではなく、認知機能がうまく働いていないという場合にもこういったことがよく起こります。お金に関していえば、「お財布の中が小銭だらけ」などというのも要注意現象。端数に合わせて小銭を出すことがうまくできなくなり、ついついお札で支払ってしまうので、お財布の中に釣銭の小銭ばかりがたまってしまうという現象です。「しょっちゅう家中を探し回る」ことに加えて、そういったこともあるようなら、すこし注意して見てさしあげたほうがよろしいかもしれません。あらあら、老婆心、大変失礼いたしました。さて、お義母さまも、ご家族さまも、双方が納得できる折り合いのつけ方、ですね。う〜ん。お金を置く場所を決めてつくったところで、そこに置かないから探し回ることになっているのですものね。それはダメ。かといって、こちらが管理するというのもお気に召さない。どうしたものでしょう。医療・介護の現場では、こういった場合、「注意する側」と「注意される側」、「管理する側」と「管理される側」といった対立にならないように、チームとなる働きかけを試みることがあります。いうなれば、お義母さまの「お金管理チーム」の設立ですね。一緒に困って、一緒に考えて、一緒に管理するというスタンスです。きれい事ですまないのは重々承知しておりますが、ご参考までに。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年03月19日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第67回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】転職に踏み切れないでいます。私は今の会社に勤めて5年目。1年前には営業部への異動がありました。ただ、この部署が万年人手不足の状態で、給料は変わらないのに残業ばかりが増えています。会社もそれは認識しており、上からは「そろそろ補充する」とは聞かされるのですが、2年間で2人がやめているのにも関わらず、一向に新しい人が入ってくる気配はなく……。このままなら転職したいと考えています。一方で、会社には私を会社に誘ってくれた恩人がおり、新人の頃には期待して海外研修も1年間行かせてくれるなど、とてもお世話になっているので、裏切るような形になってしまうと思うと、どうしても一歩踏み切れないでもいます。こんな時、恩人の方との関係を保ちながら、最後の一歩を踏み出す方法はあるのでしょうか(28歳・男性・会社員)。【回答】ありません。あっちもこっちもまるく収まる方法なんて、そうそうありませんよ。私たちには、知らず知らずのうちに天秤にかけて判断していることが、なんと多いことでしょう。たとえば、スーパーに行って果物を選ぶ。リンゴとミカン。どちらがフレッシュか。コスパがいいか。甘そうか。目的地まで行く交通手段を選ぶ。電車とバス。どちらが空いているか。時間がかからないか。安いか。そんなふうに、さまざまなことを天秤にかけて判断しているのです。だから得意なはずなのですけれど、ときどき進むに進めず引くに引けずという膠着状態になってしまうのはなぜでしょうか。そんなときはたいてい、天秤にのせるものを間違っているような気がします。天秤にかけて比べることが可能なのは、あくまでも同質のものです。つまり、リンゴとミカンなら天秤にのせて比較検討することができますけれど、リンゴと電車を天秤にのせて「どっちがいいか」と考えても決められないってことです。そうしてみると、「給料が変わらないのに残業ばかり」「人員の補充がない」という労働環境と、「海外研修に行かせてもらった」という恩師への御恩は、同時に天秤にのせても比べることのできない異質のものでしょう。だから、にっちもさっちもいかなくなっているのではないでしょうか。天秤の片方に「恩」をのせたとき、もう片方にのるのは「義理」では?恩師に今の状況とあなたの考えを真摯にお話しさせていただいて、義理を通しましょう。そして、労働環境については、他社と比較して検討されてはいかがでしょうか。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年03月12日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「ケンカばかりの両親を見ていて、結婚って何?と。他人同士が一緒に暮らす意味がわかりません。夫婦ってなんですか?なぜ、蛭子さんは結婚したのか理由を教えてください」(ロビンさん・17・学生・群馬県)【A】「結婚なんてうまくいくわけがないと思っていたほうがいい」(蛭子能収)結婚をした理由なんて覚えていませんね。(マネージャー〈以下、マ〉「前の奥さんを亡くされて、1人で寝るのが寂しいからだったと思いますよ」)あっそうでしたっけ?まあでも、結婚なんてなんとなくするもの。みんなも理由がよくわからないけど一緒になっていると思いますよ。ただケンカを見せられるのが嫌だったら「私の前でしないで」と意思を伝えたほうがいいし、どっちかに暴力があったらすぐに警察に行ったほうがいいですよ。でも、どの家庭にも問題がありますよ。変な期待しないで結婚なんてうまくいくわけがないと思っていたほうがいいと思いますよ。(マ「よくギャンブルに行って夫婦ゲンカしていましたよね」)昔はギャンブルと女房を選べと言われたら、確実にギャンブルでしたが、でも最近は女房だけです。(マ「奥さんのどういうところが好きですか?」)えーっと……、パッと答えられないのはマズいですね、ほかの人と比べたら段違いにいいんですが……なんやろ?誰か教えてください!「女性自身」2021年3月16日号 掲載
2021年03月08日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第66回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】最近、友人が自暴自棄になっていて心配です。彼女は昨年、休学をして1年ほどヨーロッパのある国に留学する予定だったのですが、コロナ禍でそれが急遽中止に。突然、目標を失ってしまい、無気力な生活が続いていたようです。その影響か、久しぶりに連絡を取ると、「大学院にいる意味も見いだせないからやめようと思っている」と相談してきました。すでに退学用の書類も揃えており、彼女は退学する気満々なのですが、就職先などは決まっておらず、やめてすることもあまり考えていないようで……。コロナ禍で求人も少なくなっている中、私はできれば辞めてほしくないと思っています。こういう時、どういう言葉を友人にかけるのが正解なのでしょうか(23歳・女性・学生)。【回答】ほっておいておやりなさいな。正解の言葉なんてないですよ。それより、なんであなたは「辞めてほしくない」と思うのかしら?世の中すっかり変わりましたから、大学院出の学歴があっても、仕事にありつけるとは限りません。私が大学生だった40年前には、そりゃまだ「三高(高学歴・高収入・高身長)」なんてのがもてはやされていましたから、大学院出という学歴は役に立ったかもしれませんが、今は違うでしょう?大学院は、学問を追究し研究を重ねて極めたいことがある探求者が行くところで、その情熱を失った者がいても時間とお金の無駄使いというデメリットしかありません。「就職先も決まっておらず、大学院をやめてすることも考えていない……」大いにけっこう。鬱々と意味を見出せない大学院に居続けるより、なにがあるかわからない大海原に漕ぎ出したほうがよっぽどいいと思います。己のことを思い返すと、23歳くらいの時って、なんだかあらかた人生が決まってしまったような気分になっていたように思います。あなたはそんなことないですか?ところがどっこい、人生はそのあとに逆転、逆転、大逆転です。無限の可能性が待っています。これ、本当よ。だから、ちっちゃくならずに、どどーんと大きくかまえていて欲しい。人生ね、コロナ禍に限らず、いろんなことがあるものです。いちいち自暴自棄になっているヒマなんてない。彼女もいつか必ずそのことに気づくはず。友人としてできることは、その彼女の底力を信じること。信じ切ること。どこまでも彼女の選択をリスペクトすること。安っぽい言葉をかけるよりずっと覚悟のいることだから、頑張って!【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年03月05日歌舞伎俳優の市川海老蔵が2月25日、東京・東銀座の歌舞伎座で取材に応じ、3月5日から全国14ヶ所で上演する「市川海老蔵 古典への誘(いざな)い」への意気込みを語った。「伝統芸能を分かりやすく、多角的に味わっていただきたい」と海老蔵が企画した本公演。河竹黙阿弥の七五調の名せりふに彩られた世話物の人気狂言『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』にて、海老蔵が5年ぶりに弁天小僧を演じる。耳心地の良い音楽、色彩豊かな衣裳など、物語だけではない見どころ満載の人気演目だ。さまざまなフィールドで活躍を続ける海老蔵だが「土台は古典」と断言し、先代から受け継ぐレガシーに対し、厚い敬意と思い入れ。弁天小僧は若い娘に化けた男性という役どころで、「変化(へんげ)物に惹かれますね。『えっ』って純粋な驚きもありますし、動じず太々しい男の姿は美しいなと」。弁天小僧といえば「知らざあ言って聞かせやしょう」の名台詞でも知られ、「自宅で練習しているせいもあって、(息子の)勸玄も真似している」と目を細めた。また、劇中でともに躍動する日本駄右衛門、南郷力丸ら盗賊たちは「自分流の生き方を貫いている。彼らの姿からエネルギーのエッセンスを感じもらえれば」と魅力を熱弁。「どんな女性が出てくるか楽しみにしてもらえれば。最近、背がちょっと伸びたので、いかに小柄に見せられるか……」と笑いを交え、見どころをアピールした。「コロナ禍で稽古がしづらいのも、古典をやるチャンスが増えている理由。昨年9月、10月に続き『古典への誘い』に挑むにあたり、「世の中と同じで、当時の緊張感に比べると、少しゆるみが出てしまう可能性も。そこは不安材料なので、緊張感を持ち続けたい」と背筋を伸ばし、「(昨年の公演で)絆と仲間意識、そして助け合う気持ちを手に入れた。どの公演もつぶさず、感染者も出さずに、歌舞伎を待ち望んでいた皆さんに還元できたことで、信頼も得た」と誇らしげ。一方で「来てくださるお客さまを減らさざるをえない状況もあり、現実的にもっと考えないといけない」と鋭く指摘した。取材・文・撮影:内田涼公演情報市川海老蔵 古典への誘(いざな)い出演:市川海老蔵 / 市川男女蔵 / 中村児太郎 / 大谷廣松 / 市川九團次 / 片岡市蔵 / 市川右團次演目:一、『舞妓の花宴(しらびょうしのはなのえん)』長唄囃子連中二世藤間勘祖振付二、河竹黙阿弥 作『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』一幕二場浜松屋見世先の場稲瀬川勢揃いの場企画:市川海老蔵制作:株式会社3Top制作協力:全栄企画株式会社/株式会社ちあふる協力:松竹株式会社【石川公演】2021年3月5日(金)・6日(土)会場:石川県こまつ芸術劇場うらら 大ホール2021年3月7日(日)会場:金沢歌劇座【富山公演】2021年3月8日(月)会場: オーバード・ホール【神奈川公演】2021年3月10日(水)会場:神奈川県民ホール 大ホール【山梨公演】2021年3月12日(金)会場:YCC県民文化ホール 大ホール(山梨県県立県民文化ホール)【長野県】2021年3月13日(土)会場:まつもと市民芸術館 主ホール【神奈川公演】2021年3月14日(日)会場:相模女子大学グリーンホール 大ホール【東京公演】2021年3月16日(火)会場:文京シビックホール 大ホール【埼玉公演】2021年3月17日(水)会場:大宮ソニックシティ 大ホール【山口公演】2021年3月19日(金)会場:防府市公会堂【福岡公演】2021年3月20日(土)会場:北九州芸術劇場 大ホール【大分公演】2021年3月21日(日)会場:iichiko総合文化センター【宮崎公演】2021年3月23日(火)会場:宮崎市民文化ホール 大ホール【鹿児島公演】2021年3月24日(水)会場:川商ホール(鹿児島市民文化ホール)
2021年03月02日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「52歳の夫の部屋は雑誌や本などで足の踏み場もない状態。『掃除して』というとキレる始末。こんなだらしなくて自分では何もしない夫と、どう接したらいいですか?」(月コロッケさん・45・契約社員・埼玉県)【A】「オレの書いた映画の台本で『鬼滅の刃』超えを狙いたい」(蛭子能収)オレもこの夫と同じで、よく女房に怒られていました。でも「掃除して」と強く迫られても、自分にとっては居心地が悪いわけでもないのでいまいちピンときません。ただ女房に「ゴキブリが出る」とか「臭いがする」とか具体的に言われたときだけは片付けた気がしますよ。あとは「捨てられても困るものはないよね」と言って掃除して、後でお金を払ってもらえばいいですよ。(マネージャー〈以下、マ〉「事務所を掃除していたら、蛭子さんが昔書いた映画の台本『その扉をあけるな』が出てきました」)雀荘でマージャンをしている男が破滅していくんでしたっけ?(マ「地下125階の地獄に落ちていく話。ぜひ、その幻の台本を映画化してください」)たぶんあれやったら『鬼……なんとか』よりおもしろいと思いますよ。(マ「『鬼滅の刃』は興行収入370憶円以上ですよ!」)監督は面倒くさいから、誰かに映画にしてもらって、もうけたらオレの部屋を誰かに掃除してもらおうかな。(マ「自分では何もしないんですね」)「女性自身」2021年3月9日号 掲載
2021年03月01日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第65回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】“元父親”のこれからの世話をどうするか悩んでいます。父は15年以上前に母と離婚していて、すでに還暦を迎えました。離婚後はずっと一人で生活しているようで、今後、新たなパートナーと一緒になる雰囲気もありません。私は離婚してからも父と定期的に会っており、嫌いなわけではないので、今の姿を見ていると「父はこれから孤独な生活を送るのではないか」と心配になります。一方、だからといって私が今後の父の世話を見ると、父ばかりが苦労せずに甘い蜜ばかりを吸い、今まで私と妹を一人で育てた母が損しているようで、母にとても申し訳ない気もして……。まだ先の話ではあるのですが、どういう選択肢を取ればいいのか答えが見つかりません。そもそも、父と母、両者が納得できる方法はあるのでしょうか。(27歳・男性・会社員)【回答】子としてのお立場、そしてご心情、伝わってくるものがあります。まだまだお若いのに、ここまで考えが及んでいらして敬服いたしました。立派にお育ちになりましたね。さて、最初に思いましたことは、「離婚は親の問題、親の身勝手」ということです。もちろんご両親さまにもやむにやまれぬ理由があってのことだったとは思いますが、離婚はやはり親の都合です。子どもは言わばまき込まれてしまっただけ。だから、「今まで私と妹を一人で育てた母が損しているようで、母にとても申し訳ない」と気に病む必要はまったくないと思うのです。そこまであなたが責任を負う必要はありません。どんなことでもそうですが、「これからどうしようか」と考えるとき、まず主軸になるのは「自分はどうしたいのか」でしょう。自分の気持ち。自分の希望。自分の願い。それ以外にしっかりとした原動力となり得るものはないのです。無理や我慢をして「自分はどうしたいのか」に矛盾する行動を取ったとしても、そこにはろくなものが生まれてきません。あなたは今「父ばかりが苦労せずに甘い蜜を吸う」とか、「母が損している」とか、なんだか「軸」が自分以外の人にいってしまっていますね。それらのことは、自分の気持ちが決まってから、配慮すればいいことではないかしら。お父さまとお母さま、共にご納得いただける方法は、あなたの「軸」を真ん中にして成り立つものだと思うのです。だから、まずはごちゃごちゃとしたしがらみをひとつひとつ払って、純粋に「自分はどうしたいのか」だけを考えてみてください。そこに答えがあると思います。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年02月26日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「母が通う介護施設の送迎車に〈ボートレースファンからの贈り物〉とステッカーが。蛭子さんを思い出して気持ちがほっこりしました。これからも競艇がんばってください!」(ひで~おさん・52・会社員・東京都)【A】「介護する家族には少しでも気持ちの温まることを見つけてほしい」(蛭子能収)これは悩み事なんですかね?(マネージャー〈以下、マ〉「介護する人は大変だけど、競艇の売り上げで寄贈された送迎車を見て蛭子さんを思い出してほほ笑ましくなったんじゃないですか」)介護する家族は大変みたいですから、少しでも気持ちが温まることが見つけられたらいいですよね。オレも競艇からプレゼントが欲しいですね。ずいぶん前ですが、オレが競艇で5万円勝ったときに一緒に行った人へご祝儀を5,000円あげたことがあるんです。でも、その後のレースでオレが負け続けて一文無しになったときに、ご祝儀をあげた人がかわいそうだと思って「お茶でも飲もう」とおごってくれたことがありました。それも競艇ファンからのプレゼントですが、そのお茶代は、もともとはオレのお金なのにと複雑な気持ちになりました。贈り物として、これまで負けた1億円が取り戻せれば、今、ぼんやりしている頭もスッキリすると思うんですけどね。(マ「どうせまた競艇で負けるからやめてくださいね」)……すごく気持ちがヒンヤリしました!「女性自身」2021年3月2日号 掲載
2021年02月21日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第64回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】たび重なる闘病生活に疲れてしまいました。最近、甲状腺がんとの診断を受けました。がん宣告はこれで3回目。1度目は12年前の卵巣がん、2度目は昨年の乳がんで、3度目がこの甲状腺がんです。生涯のうち2人に1人ががんを患うと言われるこの時代。なってしまうのは特別なことじゃないと思いますし、子どもの成長を見届けたいとの思いで、手術や長期治療を続けてきました。幸いにもその間、日常生活に大きな支障はなく、12年前の卵巣がんについては完治のお墨付きをもらうこともできています。でも、3度目ともなると、どうしても「なぜこう何度も……」という思いを鎮めることができなくて。まだまだやりたいことがあるし、子どものサポートはしたいと思いつつも、疲れてしまって気持ちを上向きにすることができません。どうしたら改めて前を向くことができるようになるでしょうか。(58歳・女性・会社員)【回答】前を向く方法……このような大変なご状況を抱えて、それでも前を向く方法……すぐには思いつけません。どんな言葉も、ここまでを生きてこられたあなたの前では、薄っぺらなものになってしまいます。子どもさんの成長を見届けたいという一念で、果敢に治療を続けてこられた。正にその意志の力が病を押さえ込み、命を燃やし続けさせてきたのだと思います。本当に、心からリスペクトします。でも、3度目のがん宣告を受けた今、前を向けなくなっていらっしゃる。そりゃそうでしょう。そりゃそうですよ。なにかあなたにお伝えできる言葉がないか必死で探しましたが、どんな言葉も力不足でダメです。なので、私が常々感じていることをお話しさせていただこうと思います。私は看護師なのですが、これまでにいろいろ見させていただいて「わかった!」と思っていることがあります。それは、「死ぬときは決まっている」ということです。実は生まれた時から、○○年○○日までと、命の限りは決まっている。どんなに元気でもその時がくれば死ぬし、どんな大病を抱えていてもその時がくるまでは死なない。そういうものなのだなと、わかったように思っているのです。その日がいつなのかは、たかだか人間の私ごときにはわかるわけもありませんが、そのかわり、心配も無用です。「事故に合わないように」とか「病気にならないように」とか、心配しなくていい。だって、生きるところまで生きることが決まっているのですからね。あとは、もらったその時間をどう使うかだけです。なんだか乱暴な話になってしまってすみません。あなたの日々が安寧でありますように、朝に夕に祈ります。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年02月19日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「離婚後、心機一転、上京して契約社員をしていましたが、コロナ禍で契約解除に。いまだ仕事もなく、孤独に生きています。この先どうやって生きていけばいいかわかりません」(ファンタジスタ森さん・37・無職・東京都)【A】「『ひとりぼっちを笑うな』と言ったものの、やっぱり孤独は嫌」(蛭子能収)生きていれば絶対いいことがあると思うんですよね。(マネージャー〈以下、マ〉「7年前に『ひとりぼっちを笑うな』を出版してから、蛭子さんはひとりでも大丈夫というイメージを持っている人がいます」)でも、オレは、やっぱり孤独は嫌です。本当に寂しいですからね。(マ「前妻を亡くされて、再婚までは本当に孤独でしたね」)競艇やマージャンをしても全然おもしろくない。勝っても負けても共有する人がいないのはむなしいだけ。でも、好きでもない友達を無理やりつくって、その人が毎日いるようになったらホント困ります。(マ「蛭子さんは耐えられなくて『女性自身』のお見合い企画をやってもらって今の奥さんと知り合ったんですよ」)あっ、そうやった。だから、ひとりぼっちという自分をちょっと上から(俯瞰して)見ながら、いつか、なにも遠慮せずに話し合える相手が現れると思っていればなんとかなりますよ。それにしても『女性自身』もたまにはいいことするんですね。「女性自身」2021年2月23日号 掲載
2021年02月15日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第63回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】がんと診断されて心が不安定な姉との付き合い方がわかりません。私の姉は3年前にステージ4の乳がんが見つかりました。現在は通院治療を受けており、独身で視力がほとんどないこともあって、80歳近い両親が世話をしています。元々、姉と両親は仲が悪いのですが、がんの診断を受けてからというもの、姉は両親に向かって「自分が病気になったのは両親や先祖のせいだ」と、罵倒を繰り返すようになりました。もちろん、今の姉の状態を考えれば、不安と無力感でやるせない気持ちでいっぱいになっているのは理解できます。でも、私が何度、両親と姉の間に入ってその場を収めても、すぐに罵詈雑言が飛んでくるため、今では私も親も親戚もお手上げ状態です。家族全員が少しでも穏やかな日々を過ごせるようにするにはどうしたらよいでしょうか。(55歳・女性・会社員)【回答】「今では私も親も親戚もお手上げ状態」というご状況、なんと申し上げてよいのか……。ご家族全員が穏やかにお過ごしになれるときが一日も早く訪れますように、心からお祈りいたします。お聞きする限り、お姉さまのご病気は決して楽観できるご状態ではないでしょう。たぶんお姉さまには、ご自身の「死」の影が見えているのではないかと想像します。キューブラー・ロスという学者は、人は自分の死を受け入れるまでに5つの段階を通過すると説きました。第1段階は、否定。第2段階は、怒り。第3段階は、取引。第4段階は、抑うつ。第5段階は、受容。この説に当てはめて考えてみると、お姉さまは今、第2段階の怒りに呑み込まれていらっしゃって、甘えられるご家族にそれをぶつけていらっしゃるのかもしれません。罵詈雑言の裏には、「死」への不安が隠れているのかもしれません。とはいえ、だからすべてを許さなければいけない、というわけではありません。すべてを許してくれそうに見えるお釈迦様も、「もし罵る者に罵りを、怒るものに怒りを、言い争うものに言い争いを返したならば、その人は相手からの食事を受け取り、同じものを食べたことになる。わたしはあなたが差し出すものを受け取らない。あなたの言葉は、あなただけのものになる。そのまま持って帰るがよい。」(『サンユッタ・ニカーヤ』)といって悪態をついた人を突き放したといわれています。良かれと思ってかける情けが、かえって相手のゆく道をふさぐという場合もあります。介護や福祉の制度を活用して、一度、思い切ってお姉さまとの距離を置いてみるというのもひとつの手かもしれません。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年02月12日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「母は蛭子さんと同じ認知症で、いつも財布を隠しては『盗まれた!』と大騒ぎに。ボケる前とは違ってこんなにお金に意地汚ない人だとは思いませんでした。どうすればいいですか?」(カラフルマートさん・52・パート・千葉県)【A】「オレがいろいろ忘れていくさまは、おもしろがりながら見てほしい」(蛭子能収)あれ?オレは認知症でしたっけ?(マネージャー〈以下、マ〉「……無言」)そんなオレに相談しますかね?(マ「不安だからそんな行動するのでしょうね」)不安ですか……。俺もべつに病気になりたくてなっているわけじゃないから、お母さんも同じだと思うんですよね。いろいろ忘れていくのは怖いですからね。まあ、「本性を見ちゃった!」とか、おもしろがりながら気持ちを和らげてあげたらどうですか?(マ「蛭子さん、珍しくいいこと言っていますね」)でも不安になるのは、そんなに悪いことばかりではありませんよ。この前、競艇に行ったんですが、最初のレースで、1着1号艇、2着6号艇を予想しましたが胸騒ぎがして、舟券を買う直前に2号艇も押さえておいたら、それが来て100円が1万8,630円になる万舟に!すごくうれしかったです。でも、勝ったお金がなくなったんですよね、もしかして盗まれた?(マ「その後のレースで全部負けたんですよ!」)あそっか!「女性自身」2021年2月16日号 掲載
2021年02月08日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第62回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】上司に子育てと仕事の両立を理解してもらえなくて困っています。私には1歳になる息子がいます。今の部署には妊娠する前から所属していて、当時は産休と育休も取得。上司である部長は女性で、私と同じママでもあるので、仕事と子育ての両立で大変な部分も理解してもらえると思っていました。ただ、現場に復帰してみると、上司は子どもや家庭の事情など関係なしに、残業になる仕事を急に振ってくることが多くて……。上司には率直に相談もしましたが、改善される気配はなく、上司ばかりが子どものお迎えで定時に上がり、私は遅刻を繰り返す日々です。今の仕事が好きなので、仕事をやめたいとは思っていません。でも、早くも両立することの難しさを痛感して、今後どうしていけばいいのか途方に暮れています。(30歳・女性・会社員)【回答】子育てと仕事の両立。これは私たちが抱える永遠のテーマといっても過言ではなさそうです。さて、お子さんは1歳とのこと。かわいい盛りでしょう。でも、まだまだ手がかかりますね。たしか、育児休業であれば延長もできたと記憶していますが、なんらかの理由で延長されなかったのでしょうね。それで、職場復帰してみると、急な残業ですか。保育園のお迎えの時間は厳格ですから、本当に困りますよね。つらいなあ。子どもに手がかかる時期は、そう長くはありません。雇用主様には子育てへの配慮を、是非ともしてほしいものです。でも、一方で、仕事には厳しさがつきものだということも忘れてはいけないような気がします。どんな人も、さまざまな事情を抱えながら仕事に従事しているはずです。こちらの事情ばかりをゴリ押しするのは、大人としてフェアじゃない気がするのです。大切なのは、自分自身と折り合いをつけることかな、と思います。子どもはかわいいけれど、ずっと頑張ってきたキャリアをゼロに戻したくない。好きな仕事は辞めたくないけれど、子育ても大事だとわかっている。そりゃ、ベストは、理解のある職場で定時に退社でき、子育てもキャリアも両方手に入れられることですが、そうはいかないのですよ。世の中は自分の思い通りには回ってくれないのです。そういうものなのです。だから、自分の中で折り合いをつけていくしかない。そのとき、「上司が……」とか、「職場が……」とか「ダンナが……」と舞台の上に第三者をあげて考えない。なぜなら、他人はコントロールできない最たるものだからです。「今後どうするか」の答えを見つけるには、「今後どうしたいのか」を自分に聞いてみること。まずは、舞台の上にご自分だけでしっかり立って、考えてごらんになってみてはいかがでしょう。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年02月05日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「定年後、ブラブラしていましたが、暇つぶしにと四コマ漫画を作っています。絵は得意ですが漫画となると難しくて苦労しています。おもしろい作品の描き方をご指南ください」(ごきさん・68・無職・栃木県)【A】「不可解に見える漫画を描くと、誰かが深読みしてくれる」(蛭子能収)もう漫画を描いていないから忘れてしまいました。(マネージャー〈以下、マ〉「いやいや『サンデー毎日』で四コマ漫画を描いていますよ!」)あ、そうだった!オレはほかの四コマ漫画とは違うように「起承転結」をつけずにオチがなかったり、結末で意味のない絵を入れたりして“なんじゃこれは?”という漫画を描こうとしています。不可解だと言われても、ニコニコしていれば「なんとなくいいですね」と勝手に思ってくれますよ。でも、まだまだ漫画で稼がないといけないから、あまりまねはしないでください。というのも、寂しいことにスポーツ紙で三十数年続いた競艇のレース予想の連載が終わってしまいました。(マ「元気になったら、もっと仕事をしましょう!」)こんなことを言うマネージャーをオレの女房は「すごく優しい人」とほめますが、絶対に裏があって腹黒いことを考えているとオレは考えています。(マ「なるほど、そんなドス黒い発想も四コマ漫画には大事な要素ですね」)……ま、いっか!「女性自身」2021年2月9日号 掲載
2021年02月01日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第61回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】意力や気力の抜けた先輩社員を見ていて、将来が不安になりました。私が勤める会社には“窓際族”に該当するような年配社員の方が多いです。毎日、パソコンに向かってはいるものの、しているのはいつもネットサーフィン。少し時間が経つと、他部署と関わるような業務もないのに席を何度も立ち始めるようにもなり、どうしても仕事をもう少し積極的にしてほしいと思ってしまいます。ただ、そんな様子を見ていると、将来、自分が“窓際族”になる可能性も感じるようになって……。はたしてこの人たちと同じ年齢なった時、主要なポストに就いて、部下のお手本となるような働きが自分はできているのか不安を抱くようになりました。ずっとモチベーションを維持して働くにはどうすればよいのでしょうか。(28歳・男性・会社員)【回答】ずいぶんと熱心に年配社員さまのことを観察なさっていらっしゃるご様子に感心いたしました。もしかすると、年配社員さまのお世話があなたさまの業務なのでしょうか。そうであれば、「仕事をもう少し積極的にしてほしい」とさぞかしお気を揉まれることでしょうね。ご心労お察しいたします。ただね、他人様をコントロールすることは原則できません。もっとこうしてほしいと思っても、そうはしてもらえないのが、世の中の理です。ですから、あなたさまがどんなに気を揉んでも、年配社員さまの働き方は残念ながら変わらないでしょう。さて、万一、あなたさまの業務が年配社員さまのお世話ではない場合ですが、この場合「仕事をもう少し積極的にしてほしい」は、びっくりするくらい大きなお世話といえましょう。そんなことをお考えになっているヒマがあったら、もっとご自分のお仕事にしっかり集中なさったほうがよろしいでしょう。いらん観察して、いらんこと考えて、挙句の果てに将来自分が“窓際族”になる可能性を感じて不安になってしまうとは……本末転倒ですよ。モチベーションを維持して働くにはどうすればよいかは、至極簡単です。他人がネットサーフィンしてようが、席を何度も立とうが、そんなことに影響されないあなた自身の目標を持つことです。あなたのモチベーションは、あなたのものですからね。潰すのもあなただし、維持するのもあなたです。拝読いたしますに、当座、将来主要なポストに就いて、部下の手本となるような働きをするのが目標でいらっしゃるのかしら。そうであれば、それを目指して脇目もふらずご自分のお仕事に没頭し、精進されるがよろしいでしょう。他人がどのような働き方をしていようが、かまったこっちゃありません。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年01月29日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「酒もギャンブルもしませんが、貯金がほとんどありません。息子は高校受験でまだまだ金がかかります。コロナ禍で稼ぎも少なくなるし、将来を考えると不安で夜も眠れません」(とんがりさん・51・会社員・埼玉県)【A】「お金の不安は一生消えない」(蛭子能収)眠れないのは大変ですね、ウフフ。余計なことを考えないほうがいいと思いますよ。オレも金に関しては苦労してきましたが、あまり先のことを考えずに目の前の仕事をしました。(マネージャー〈以下、マ〉「蛭子さんは、今でも“金を稼がなくっちゃ”という思いがすごくありますよね」)オレ、とにかく金を稼げなくなったら終わりだと思っているし、お金の不安は一生消えることはありませんよ。今だけを考えていればいいと思いますけどね。(マ「この相談者は、蛭子さんが賭け麻雀で逮捕された当時の年齢と一緒です!」)えっ、そうなの?オレはそのころ、何していたんやろ?(マ「3カ月ぐらいテレビの仕事は謹慎しました」)あっそうやっけ?漫画の仕事はあったような気がしますけど……。(マ「謹慎期間中にラスベガスに行ってギャンブルをしていました。本当に不謹慎ですよ」)あ、そうやった。でも、オレにとってギャンブルは金を増やすのが目的です。謹慎中でもしっかり稼ぎに行っていたんですね。「女性自身」2021年2月2日号 掲載
2021年01月25日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第60回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】大学卒業後、長男がしっかり働いてくれるか心配です。来年、大学4年になる長男は働くことに全く興味がないようで、入学してからアルバイトをしたのはコンビニで一度だけ。それも、コロナウイルスの感染リスクがあるからと、半年も経たないうちにやめてしまいました。さらに今年は就活もあるというのに去年の夏からオンラインインターンの一つも受ける様子はなく、スーツは持ってないわ、就活サイトにも登録しないわで、就職する気が全く感じられません。「一生働かないまま過ごしたい」と言う始末です。このまま実家暮らしのニートになってしまわないでしょうか。(54歳・女性・薬剤師)【回答】心中、お察しいたします。私も息子のことで似たような心配をしたことを思い出しました。さて、あなたは、心配のあまり日々ご子息にお小言を言っているのでしょうか。もしそうであれば、お気の毒に。あなたが、ではなくて、ご子息が、ですよ。私たちは相手を見るときに、どうしても自分のフレームを通して見てしまうのですね。「スーツは持ってないわ」「就活サイトにも登録しないわ」と嘆いていらっしゃいますが、スーツを持っていたら、就活サイトに登録したら、就職できますか?そうすれば何とかなると思っているのは、あなたの経験からつくりあげたフレームを通して見た虚構の世界です。実際には、スーツ着たって、就活サイトに登録したって、どうなるかわかりゃしません。しかも、私、ご子息のおっしゃる「一生働かないまま過ごしたい」には、心から同意します。私もそんな儚い夢を抱いていた時期がありました。でも、人生にはもっと面白いことがあると気付いて、それを実現するために動かざるを得なくなりました。結果、“働く”ということになったのです。私も“働く”こと自体に興味なんてありませんでしたよ。母として心配すべきは、ご子息が働くことに興味がないことではなく、楽しいことを見つけられていないことではないかしら。とはいえ、ご子息はまだ20数年しか生きていないのですから、これからです。人生100年の時代。楽しいことを見つける時間は、まだまだたっぷりあります。こう考えてみると母親なんて、所詮なにもできないものですね。渾身の力を振り絞ってお小言を言ったとて、なんの効果もありゃしません。だったら、ご子息をリスペクトしちゃったほうがいいかも。「男子家を出ずれば七人の敵あり」、ということわざがあります。(女子だって同じですが。ご子息は敷居を跨いでもいらっしゃいませんが。)だとすれば、せめて母までもが敵にならないようにしようではありませんか。まったく、お互い、苦労が絶えませんね。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年01月22日大反響の「ゆるゆる人生相談」を一挙108本収録した、世界一ゆるい自己啓発本『笑われる勇気』(光文社・900円+税)も発売中の“世界一ゆるい70代”となった蛭子能収さん(73)が、読者からの相談に答える!昨年7月、蛭子さんは、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している初期の認知症であることを公表した。【Q】「洋式トイレで立ってする夫をなんとかしたい。座ってすると残尿感があるといいますけど、飛沫を掃除するのは私。座って用を済ませてほしい。どうすればいいですか?」(ルイポーさん・39・主婦・愛知県)【A】「『座って用を済ませてほしい』と夫にきちんと言うべき」(蛭子能収)オレの家も洋式トイレですが、立ってすることが半分くらいです。やっぱり大きいほうは座ったほうがいいと思います。(マネージャー〈以下マ〉「当たり前です。小のほうだとトイレの周りに飛び散るのが嫌だという相談です」)小を立ってするときも、オレは汚していないと思います。(マ「奥さんが掃除しているんですよ」)でも何も言われたことがありませんよ。自分が嫌なことは、オレに相談しないで、きちんと相手に言うべきでは。それで怒るようなら別れたほうがいいと思いますけどね。オレは、外出先のトイレの便座は使いたくありません。誰かのうんこが付いている気がしてすごく苦手なんです。案外清潔なのに、オレの汗で作った塩大福を誰かに食べさせる企画がありました。汚ないと誤解されているんですよね。(マ「漫画家の根本敬さんが蛭子さんを「40年の付き合いで口臭も嫌な体臭の記憶も無。小学生みたいな匂いだな」とつぶやいていました」)そんなこと言われたオレは、どうすればいいんですか?「女性自身」2021年1月19日・26日合併号 掲載
2021年01月18日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第59回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】私は入社してから33年、ずっと同じ仕事に携わってきました。その仕事にはやりがいを感じていて、会社で自分の存在意義も感じていました。そんな中、2年前に会社の配置変えがあって、初めて別の業務を担当することになったんです。ただ、会社からのサポートが期待したほどなかったこともあって、その仕事に私はどうしても馴染むことができなくて。先月、会社に退職届を出しました。入社してから35年、定年まではあと2年でした。もちろん、会社の同僚や家族には「あと2年の辛抱だよ」「新しい仕事を見つけるのは難しい」「今の会社で何が不満なの?」と反対されました。私にもコロナの影響で職を失う人や収入がない人が多くいる中、後ろめたさや将来に対する不安があったことは確かです。ただ、それでも辞めたかったんです。新しい作業には満足できず、やりがいのあった作業からは離れて、どうしても自分の存在価値が感じられなかったんです。私は間違った選択をしてしまったのでしょうか。(58歳・女性・会社員)【回答】「辞めたくなかった」「辞めて失敗した」と、一番思っていらっしゃるのはあなたのようですね。配置変えされてからの業務に、なじめなかった。そういうこともあるでしょう。それで、退職を決断された。うん。それもありですよね。35年勤めていたとか、定年まであと2年だったとか、同僚や家族が反対したとか、いつだって相反する見方はできるものです。大事なのは、あなたがなじめないと判断して、辞めると決断したということ。よくご決断されましたね。自分の存在価値を感じることができないような場所から離れたことに、間違いはなかったと思いませんか。変化には、大なり小なり痛みがつきものではないかしら。物事に陰陽がある限り、“良いことばかり”もなければ、“悪いことばかり”もない。どうしたって少々の後悔を伴いながらの、新しいスタートになるような気がします。さて、せっかく新しい道の前に立ったのに、いつまで後ろを振り向いているおつもりでしょうか。私たちに与えられた時間には限りがあります。そして、時間が過ぎるのは本当に早い。おお、もったいない、もったいない。間違った選択だったのだろうかなんて悩んでいるその時間と労力を、これからどうやって楽しんで生きていくかを考えることにお使いになった方がよっぽど健全です。だって、いくら悩んだって巻き戻しはできないのですから。あなたは、間違った選択なんてしていないですよ。あなたの人生の中で、あなたが決めたことは、すべてベストチョイス。「間違った選択はしていない」と、あなたが決めればいいのです。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年01月15日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談<第58回>数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】私は保育士で、今は保護者を支援する立場にいます。年々、対応に難しさを感じる保護者は増えており、試行錯誤の毎日です。そうした中、最近、保護者からきつい一言を言われました。その保護者はなかなか子どもの爪を切ってきませんでした。保育士は子どもの爪を切るのは禁じられています。そこで、私は担当と一緒に2カ月近く「寝ている時に切ってはいかがでしょうか」などと、色々な声掛けをしてきました。ただ、それでも切っていただくことはできず、本人や周囲の子を傷つけてしまう恐れもあるため、次に私は「お忙しいところ申し訳ないのですが、○○ちゃん自身もお友だちも傷をつけてしまうといけないので、切っていただけないでしょうか」とお伝えしました。すると翌日、突然、周囲にほかの保護者もいる中、『私が忙しさにかまけて、何もしてないように言って!出来ないから出来ないんです!私の心に寄りそってない!』と言われてしまったんです。その言葉に私は唖然としてしまって……。今まで保護者の心に寄りそうように心掛けてきましたが、もう訳がわからなくなりました。玉置先生、心に寄りそうとはどういうことでしょうか?(47歳・女性・保育士)【回答】大変でしたね。保護者さんの心に寄りそうように努めていらしたのに、どこでボタンを掛け違ってしまったのでしょうか。ご相談いただいたので、私からひとつの可能性をご提示しますね。“答え”ではないですよ。今回のことをあなたがお考えになるための“材料”です。あなたが保護者さんにかけた言葉、「寝ているときに切ってはいかが」は“方法”の提示。「傷つけてしまうといけないので、切って」は“評価”。ここに、相手の心に寄りそう要素は残念ながらひとつもありません。保護者さんは、あなたに寄りそってもらっているとは微塵も感じていなかったかもしれませんね。保護者さんの心に寄りそうなら、まずは保護者さんの話を聴くことです。たとえば、5分でいいから二人きりになれる場所を確保して、座ってもらって、できればお茶を用意して、「お疲れさまです。毎日どうですか?」と。眠れているか、食べられているか、楽しめているか、とにかく保護者さんを話題の中心にする。特に保護者さんの“感情”を真ん中に置いて話をする。その中から、子どもの爪を切れない理由を一緒に探す。どうやったら切れるのか方法を一緒に考える。問題を抱えている方は、ものすごく敏感で鋭いセンサーを持っています。だから、こちらに少しでも上から目線の気持ちがあれば、すぐにバレてしまいます。人の心に寄りそうとは、自分の心の中をつまびらかに知ることである。私はこんなふうに考えていますが、いかがでしょうか。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、ニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2021年01月08日