経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』夏の特別企画・スペシャル対談の第一弾の後編です。対談のゲストは『カリスマ出口汪の人生を変える! 最強の「話し方」塾』の著者・予備校講師の出口汪さんです。仕事ができる人、魅力のある人は、やはりそれなりの「話し方」が身についているものです。話し方一つで人の印象は大きく変わります。人を説得する、人を引きつける、人から好印象を持たれる「ワンランク上の話し方」とは…? 今回も前編に続きビジネスパーソンの皆さんに向けて「話術の極意」をお伝えしたいと思います。鈴木 : 上手な話し方の第一歩は、他者意識を持つこと、そして論理的に話すこと。読者の皆さんもだいぶ整理できたかと思います。では、逆に他者意識を持たない「迷惑な話し方」というのは具体的にどのような話し方を指すのでしょうか?出口 : 例えば、前置きが長い話し方などです。本人にしてみれば、丁寧な話し方をしているつもりかもしれませんが、聞いている人にとっては、これほど迷惑な話し方はありません。もし、それが会議の場であるならば、長々と前置きしている人は、そこに出席している人全員の時間の合計を無駄にしていることになります。前置きは短くするべきです。また、頭に浮かぶ順序で話す人も迷惑な話し方の典型です。聞いている人は、話し手が何を話すのか、全く見当がつかなくなります。しかも、言葉は発せられたらすぐに、次々と消えていきます。相手(聞き手)が他者であるという意識を持って論理の順序で組み立てて話すことを心がけるべきです。鈴木 : 「出だしが重要」というのはとてもよく理解できます。私も日本FP(ファイナンシャルプランナー)協会の認定講座『FP会話塾』で、「出だし=頭サビ」の重要性について解説しています。話し方においては『結・起・承・転』の順序が大切だと。文章の世界では、『起承転結』が基本とされていますが、話し言葉で伝える際には『結』をまず最初に持ってくることが肝心なのだと思います。そして『結』の後に『起承転』、場合によっては『結・起承転・結』。こう解説すると、受講生の皆さんも納得して下さいます。出口 : それはわかりやすい表現ですね。確かに『結』を出だしに持ってくるというのは大切ですね。話の順序や組み立て方が上手になれば、自然と伝わりやすい話し方になっていくはずです。そこがクリア―できたならば、次は話のネタや内容です。私が予備校講師として数多くの講義を成立させることができたのは、さまざまな話(ネタ)のストックをためることができたからです。ストックが自分の中で蓄積されると、このストックを話せば上手くいくという自信も出て、堂々と落ち着いて話をすることができます。ぜひ、ストックノ―トを一冊持つことをおすすめします。そして、話のネタ=ストックは、三回話すと良いと思います。鈴木 : 数多くのストックを持つことで自信にもつながり、人前で話すときもあがらないようになってくるのでしょう。出口先生はめったにあがることなんてないのでしょうね。出口 : 今となっては、人前で話すことであがることはなくなりましたが、もともとは私自身もあがり性だったのです。人前に出るとしどろもどろになりました。鈴木 : それは意外です。どのようにして克服されたのですか?出口 : やはり経験値を上げることが大切です。プロの話し手でない限り、人前で話すときに緊張しない人なんてなかなかいません。あがるのは、(1)自信がない、(2)経験不足、のどちらかが原因です。鈴木 : 私も自分の講義の中で、あがる原因は三つあると説明しています。(1)結果に対するあがり(準備不足のため自信がない)、(2)状況に対するあがり(人前で話すことの経験が少なくて不安)、そして(3)は、(1)(2)が混在するあがり。やはり経験を積むことが大切ですよね。出口 : なるべく人前で発言したり話したりする機会を増やすこと。経験の量が満たせない場合は、質を高めることが必要です。だからこそ、打ち合せや会議の場では積極的に発言するように努めましょう。鈴木 : お話をうかがっていると、「話し方のプロ」である出口先生も、もともとはあがり性で、他者意識に欠けた「迷惑な話し方」をされていたのだなぁと、ある意味ホッとします(笑)。そうしたなかで「論理」が後天的に身につくものなのだということも、出口先生ご自身が実感されてきたわけですよね。出口 : そうなのです。「論理」というのは言葉の使い方の技術であり、「論理的な話し方」というのは、もともとの頭の良さとは関係なく、後から習得できる技術なのです。だからこそ、あらゆる人が身につけることができる武器になるわけです。ぜひ、その努力を惜しまないでほしいと思います。鈴木 : 努力という点では、出口先生もかなり一心不乱に邁進された時期があったのですか?出口 : 私の場合は、予備校講師になって2、3年目の頃だったと思います。まさに死に物狂いの時期でした。鈴木 : 他者を意識した「論理的な話し方」を身につける訓練というのは、今から始めても遅くないわけですよね。出口 : はい。後天的な技術なのですから。ですので、ビジネスパーソン(特に若い方々)にはその訓練を積んでもらいたいと思います。私たちは死ぬまで生涯会話をし続けます。無自覚なうちにしているかもしれない「迷惑な話し方」を少し見直してみてはいかがでしょうか?ちょっとした工夫、ほんの少し会話に論理という技術を持ち込むだけで、仕事の進み方も、人生の方向性もきっと大きく変貌するはすです。鈴木 : 感情語ではなく、互いに論理語で話すようになれば、会話のキャッチボールもスムーズになり、有意義な会話の時間が増えるのだと思います。と同時に、表層的な会話が減り、互いの理解度が高まって、真の人間関係が築きやすくなるのかもしれませんね。私も、日常から「論理的な話し方」を意識して過ごしたいと思います。出口 : ただ、時には親しい人との間での「感情語」や「愛撫語」も必要だと思いますよ!鈴木 : そうですね(笑)。上手にオン、オフと、言葉をコントロールしていければ会話そのものを楽しめるようになりますね。出口先生、今回は実践的なお話をありがとうございました!出口 : ありがとうございました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月19日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』夏の特別企画・スペシャル対談の第一弾(前編)です。対談のゲストは『カリスマ出口汪の人生を変える! 最強の「話し方」塾』の著者で、予備校講師の出口汪さんです。仕事のできる人、魅力あふれる人は、やはり好印象の「話し方」が身についているものです。話し方一つで人の印象は大きく変わります。人を説得する、人を引きつける、人から好印象を持たれる「ワンランク上の話し方」とは…? 今回はビジネスパーソンの皆さんに向けて「話し方のプロ」が伝授する”話術の極意”をご紹介したいと思います。鈴木 : 出口先生、お久しぶりです。12年ぶりの再会ですね。出口 : お久しぶりです。私がラジオ講座を担当していた頃以来ですね。私の(現代文)ラジオ講座の番組プロデューサーだったのが鈴木さんでした。当時は本当に多忙でしたし、毎日喋り続けていました。予備校の650人教室はすべて満杯、90分の講義を一日四回、六時間以上も喋り続け、その合間をぬって、ラジオ講座の収録に臨んでましたね。鈴木 : 一日に6時間以上も喋り続ける職業なんて、なかなかないですよね。出口 : そうですね。でも、それを続けてきたからこそ、私はあることを自覚するようになったのです。それは、私は『話し方のプロ』であるということです。鈴木 : 私が出口先生と出会った時には、すでに「話し方のプロ」という印象でした。昔から話すことがお得意だったのですか?出口 : いいえ、もともとは話をするのが苦手でした。私はどちらかと言うと、感覚的な人間でして、今でも家族や親しい人からは、何が言いたいのか分からない! と文句を言われます(笑)。きっと、私の頭の中にスイッチがあって、オンになれば論理的で伝わりやすい話し方となり、オフになれば感覚的でラフな話し方になるのだと思います。鈴木 : 私が出口先生と会話をするときは、常に明快かつ論理的でわかりやすいというイメージです。きっと、スイッチがオンになってらっしゃるのでしょうね。出口 : そうなのだと思います。本来、感覚人間である私が、「話し方のプロ」として一応生業を立てることができたのは、スイッチをオンにし、『論理』という武器で伝達する方法を持ったからなのだと思います。この方法は、訓練によって後天的に習得できるのです。鈴木 : 後天的…という事は、論理的な話術は誰にでも習得可能ということになりますよね。ズバリ、「論理的に話す」「論理語で話す」ために必要なこととは何ですか?出口 : まずは、”他者意識”をしっかり持つことです。それが上手な話し方の第一歩となります。出口 : 実際、他者意識を持つことができずに話している人は、私たちの周りにもたくさんいるのです。何を言ってるのかわからない、意味不明な話し方をしている人や、一方的に喋り続ける人、会話のキャッチボールが成立しない人etc…私はこういった話し方をする人のことを「迷惑な話し方」をする人と表現しています。鈴木 : 「迷惑な話し方」…なかなか本人は気づくことができないのでしょうね。実は、私も日本FP(ファイナンシャルプランナー)協会の認定講座「FP会話塾」で「好感度アップの話し方」について講義しているのですが、そこで最初に受講生の皆さんに教えているのがこの「他者意識」についてです。まず、「人の話を聞くことは疲れる」ことなのだと伝えています。聞き手は目(視覚)を使い、耳(聴覚)を使い、頭(理解力)を使いながら、話を聞く。これはとても疲れる作業です。話し手は、聞き手の状態を理解し、聞いてもらうための努力と意識を持つことが大切です。さらに、「コンテクスト=文脈」についても触れています。コンテクスト能力とは、聞き手側が、話し手の話す内容の文脈や背景を類推しながら理解する力のことを指します。日本人はこのコンテクスト能力が最も高いとされていますよね。その順番はアジア人>アラブ人>欧米人なのだそうです。つまり、日本人は聞き手としての能力が高いということです。それにより、話し手が「迷惑な話し方」をしていても、聞き手の能力によって、なんとなく会話が成立してしまう…。日本人が論理的に話すことが苦手な背景には、一方で、聞き手としての能力が高いという側面もあるのだと思います。出口 : よくわかります。思いやりは日本人の特性ですから、相手がいかに「迷惑な話し方」をしていても、それを理解してあげようとする姿勢が常にありますよね。どんなに話し手の話が抽象的で、他者意識に欠けた感覚的な話し方であっても、それほど不穏な空気にならない。ただ、そうは言っても、結局、話し手として、「感覚的な話し方=感情語での話し方か」ら抜け出せないままでは、話術はいっこうに上達しないのです。鈴木 : 出口先生が説く「論理」の基本はとてもわかりやすいですよね。同書では、「話し方」に必要な三つの論理が記されています。『イコールの関係』『対立関係』『因果関係』の三つです。これらの言葉の規則を知れば、「迷惑な話し方」から論理的な話し方へと変わっていくことでしょう。ぜひ読者の皆さんには、第一章「「3つの論理」を意識するだけで話し方はガラリと変わるー「伝わる話し方」に必要な論理の基本」をじっくりお読みいただき、最強の話し方を習得してほしいですね。(次回、後編へ続く)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月12日