子どもにはいい保育園に通わせてあげたいーー。これは多くの親の願いですが、保育が多様化する中、「どんな基準で選んだらいい?」と悩む親は多いようです。そこで長年保育士として現場に携わって来た大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に専門家ならではの視点で「いい保育園」「ダメな保育園」の見極め方を教えてもらいました。これから保活を始めるママパパたちの参考になりそうです!「いい保育園」を見抜く十か条いったい、「いい保育園」とはどんな保育園なのでしょうか。長年保育の現場に携わってきた大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生は、保育園を選ぶ目安として厚生労働省が公表している『よい保育施設の選び方 十か条』をすすめます。 厚生労働省は「よい保育施設の選び方 十か条」一まずは情報収集を二事前に見学を三見た目だけで決めないで四部屋の中まで入って見て五子どもたちの様子を見て六保育する人の様子を見て七施設の様子を見て八保育の方針を聞いて九預けはじめてからもチェックを十不満や疑問は率直に 「厚労省が提示するこの十か条は、専門家から見ても過不足なくチェックポイントがまとまっていると思います」 乳児ではなく、ある程度子どもの好みや性格が分かるような年齢になっている場合は、子どものタイプにも配慮した方がよさそうです。 「大事なのは、園の方針と保護者の思い、そして子ども自身の性格や特徴が一致しているかです。子どもの性格を考えて選ぶことです。『園の方針』はホームページで公開されているところも多いですから、いろいろ比べて検討してください」と小崎先生は話します。 例えば保護者が「自然の中でのびのびと育てたい」と考え、外遊び中心の園を選んでも、子どもの性格がその方針に合っていないと、入園後にあまり馴染めないかもしれません。 もちろん、遠いといった物理的な問題や、地域によっては待機児童問題でなかなか希望通りの園に通えないこともあります。自治体によってはたくさんの希望を書くこともできますから、この十か条を参考に検討してみてはいかがでしょうか。 専門家おすすめ!第三者評価が見られるサイト園選びで小崎先生がおすすめするのは、社会福祉施設情報が集約されているWAM NET(ワム ネット)。独立行政法人「福祉医療機構」が運営しているサイトです。ここに第三者評価の結果を公表している保育所もあります。」 〈第三者評価の検索方法〉「子ども・家庭」→「福祉サービス評価情報」→「福祉サービス第三者評価・地域密着型サービス外部評価・運営推進会議等による評価情報」→「施設名で検索」 適切な運営管理ができているかどうかの見極めのひとつが「評価」です。保育所は第三者評価の公表を義務付けられていませんが、「意識の高いところは、サービスや質の向上を意識するために第三者評価を公表している」と小崎先生は言います。 「ここにはすごくていねいに保育の取り組みや内容が書かれています。いいことばかり公表されているわけではありませんから、参考になります。ここまで調べる保護者の方は少ないかもしれませんが、気になる園があるなら、公表しているかどうか調べてみてください。公表されている中身も参考になると思います」 こんな保育園には気を付けて!専門家の視点から「これだけはNG」と感じるチェックポイントも教えてもらいました。 これはNG1!保育士が条件付きで叱っている小崎先生が全体にNGとするのは「保育士が威圧的であるところ」「暴力的なところ」「条件を出して叱るところ」です。威圧的や暴力的な態度は言語道断ですが、「条件を出して叱る」は意外な落とし穴のようです。 「早くお着替えが終わらないとおやつなしですよ」「ごはん食べないならお昼寝しませんよ」 こうしたやりとりは、ともすれば家庭のやりとりでもやりがちですが、こうした声がけはNG。保育現場でこうした場面を見たら、要注意だそうです。 「叱ることは止むを得ない場合もありますが、条件を出して叱る保育士は専門家として不適切です。これは子どもにとって、言葉の暴力なんです。見学者がいるとなかなか普段の状況は見られないかもしれないですが、逆に見学者がいるのにそういう一面が見えてしまった場合は注意が必要だと思います」 これはNG2!「なんとなくいやかも」という直感があった見学した時に感じた「なんとなくいや」という感覚。言葉で表現しにくい直感も、大事にした方がいいと小崎先生は言います。 「臭いが気になる、雰囲気がいや、なんとなく暗いといった第一印象の直感ってありますよね。そういう感覚も実は大事なんです」 その直感が「ダメな園」の見極めポイントと繋がっていることも。例えば・・・・庭の手入れが不行き届き・あいさつがぞんざいになっている・トイレが臭う・殺伐としている・古いプリントがいつまでも貼られている・掲示や壁面の装飾が古くなってぼろぼろになっているなどです。 これはNG3!大人の目線の高さに物が置いてある環境へ配慮することは保育の基本です。万が一に備えて、安全な環境を作っているかという視点でも要チェックです。例えば……・高いところにカセットデッキがある・消火器を子どもの頭上のあたりでぶら下げているなどです。 「大人の目線の高さに重い物を置いていないか、という点も見ておいた方がいいです。地震で万が一落下した時、下に子どもがいたら大けがにつながります。『神は細部に宿る』という言葉がありますが、一時が万事。そういう細かいところの配慮に子どもへの配慮が表れていることがあるんです」と数多くの保育現場を知る小崎先生は指摘します。 休みやサービス、料金の条件もチェック ママパパが必要としているサービスの有無や休み、料金などの条件面も事前確認が必要です。自治体によっても差があるため、将来の校区も含め、長期的な視点で住む場所を決める段階から下調べするのがベストです。 「自治体によって保育料もサービスも違います。千葉県流山市では駅から保育所を送迎バスでつなぐサービスがあります。こういうサービスも調べておいた方がいいでしょう」 保育所によって休みも違います。お盆や年末年始の休みも確認しておきたいところ。園のサービス内容によっては持ち物にも大きな違いがあるようです。 「最近では紙おむつのサブスク『手ぶら登園』を導入している園や、ベッドのようなものを貸し出している園もあります。反対に布おむつを使っている園もある。行事への取り組み方も園の特徴が出ると思います。和太鼓や金管楽器をやっているところもあるし、全くやっていないところもある。どれもどちらがいいというのではなく、親がどう子どもを育てたいかという方針になります。もし可能なら保護者会などの取り組みも調べておいた方がいいですね。保育所より比較的保護者会の活動がさかんなのが幼稚園型認定子ども園といわれます。中には『働いている人にはしんどい』と言われるところもあるみたいです。『お父さんの会』がある園もあります。これらが有意義で楽しいと思う人もいるだろうし、苦痛だと思う人もいる。その辺はよく検討してもらいたいです」と小崎先生は言います。 保育園選びはパパも積極的に!子育て観を確かめる機会に保育園選びは、さまざまなチェックポイントに加え、親自身の子育て観が大きく関わってきます。とはいえ、多様化する保育施設。置かれた環境も規模もサービスもさまざまです。都市部の保育施設では園庭のない施設もあります。こういう複雑化した保育園選びには「パパも積極的に参加を」と小崎先生は呼び掛けます。 「この問題を全部ママに任せるというのは無理がありますね。やっぱり一緒に考えて、複数の視点で見て相談するというのが大事なんです。1人ではチェックしきれなかったり、感じ方が違ったりしますから」 こうした会話の積み重ねが、夫婦2人の子育て観を確かめ合う機会にもなりそうです。 「常識的なことを除くと、保育には絶対的な正解/不正解はないと思っています。それぞれの園なりの方針や想いがあるので、最終的には親の思いを話し合って考えて欲しいなと思います。2人でどういう子どもに育てたいか。話し合ういい機会と捉えるといいでしょう」 取材・文/大楽眞衣子監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授 小崎恭弘 著者:ライター 大楽眞衣子
2023年04月24日この4月から法改正に伴いパパの育児休暇が大きく変わりました。父親育児支援専門家であり、3回の育休取得経験者である大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に、育休の取り方や育休中のポイントを解説していただきました。 パパの産休、育休とは「パパの産休」という新しい言葉を知っていますか。パパのための産後育休のことです。これまで産休というと出産したママだけのものでしたが、この春、育児・介護休業法が大きく改正され、パパも産後に育休が取れるようになりました(今年10月から)。この新しい制度は、ママの産後うつの抑止にもなり、パパ自身の成長の機会にもなるとして期待が寄せられています。 そのほか、育休制度も変わります。企業から育休取得を打診する、育休取得のレパートリーを柔軟化できるなど、大幅改正されました。 今回の改正の特徴は、「フレキシブルに取れる」ということ。例えばパパの産後育休では、産後8週間以内に4週間まで2回に分割して取得することが可能です。しかも休業の2週間前からの申し出でOKとされています。そして、労使協定が結ばれていれば、一定の条件のもと、休業中に仕事をすることも可能です。育休制度改正のポイント育休改正は2022年4月から段階的にスタートします。 2022年4月から企業は育休を取得しやすい環境を整備し、対象の従業員に制度を個別周知して取得の意向を確認することが義務化 2022年10月から・育休を分割して2回取得可能に・育休開始日を柔軟化・特別な事情がある場合は再取得可能に・「産後パパ育休」の新設 2023年4月から大企業の育休取得状況の公表が義務化 「産後パパ育休」って?育休改正のひとつとして、2022年10月からはじまる「産後パパ育休」の特徴は次のとおりです。・パパも「産休」がもらえる・産後8週間以内に4週間まで取得可能・休業の2週間前までの申し出でOK・2回に分割して取得することが可能・労使協定を結んでいれば、休業中に働いてもOK「パパの産休は『ママや赤ちゃんのために』と言われることが多いですが、パパのための育休だということを忘れないでいただきたい。パパが自分の人生を豊かにするための休暇なんです」と小崎先生は話します。 出典:「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 P2「育児休業の分割取得」(厚生労働省)産休育休の取り方のポイントとてもフレキシブルな「パパの産休」ですが、自由の幅が大きいだけに「どのタイミングで取ればいいかな」と迷ってしまう家庭もあるかもしれません。 厚生労働省は次のような例を挙げています。 小崎先生は次のような取り方もおすすめしています。 【パパの産後育休】・第2子以降の場合は出産後すぐ上の子がいる場合は上の子どものお世話があるので、入院中も含め、パパが子育てを担当します。退院後のママが心身の回復に集中できるメリットも。 ・退院後/里帰りから戻ってきてすぐ新しい生活が始まるタイミングは、何かと忙しくなります。いろいろなことに配慮が必要な新生児育児を産後のママと一緒に過ごします。ママの食事作り、買い物、掃除などのサポートも。 【パパの育休】・保育所に入る前後保育所に入る準備期間と慣らし保育期間中はより大人の手が必要です。慣らし保育はできるだけ子どもに負担がかからないよう、ていねいにゆっくり進めたいので、育休をとってゆとりを持ちます。 ・ママの育休のタイミングに合わせて2人で交代して育休を取ることもいいですが、あえて一緒に取って「家族の時間」を過ごすのもおすすめです。 いつ申請すればいい?パパの産後育休の申し出期限については「2週間前まで」、育児休暇の申し出期限は「1カ月前まで」となっています。でも実際に職場で2週間前に申し出てもいいものなのでしょうか。小崎先生に尋ねました。 「例えば今日申請したら2週間後には休んでいいということになります。これは与えられた権利なのですが、企業側からするとやっぱり人の手配や業務の担当の問題もあって大変になることもあるでしょう。産後育休から職場に戻ってきた時、お互いが気持ちよく戻れるような手はずを整えておいた方がいいのではないでしょうか。社会人としてのマナーです。いつ頃生まれるかは予め分かっていますから、分かっている段階で上司や同僚と話し合ったらいいのではないでしょうか。無論、緊急時もありますから仕方のない時もありますが」と小崎先生。 また、労使協定が結ばれていれば、休業中に仕事できるという制度を「うまく活用して」とアドバイスします。 「この制度を使って、『週1回、木曜日は仕事します』『在宅で火曜日の午前中はミーティングに参加します』といったように、お互い無理のない形での関係性や連絡を取ることができるといいかなと思います」 育休を取る=他者と共に生きる覚悟を持つこと新しくなった育休制度。これからは社会の空気も変わってくるかもしれません。でも「育休を取ると出世に響くから」と二の足を踏んでいる人もいるようです。そんなパパについて、小崎先生はこう言います。「ちょっと厳しいことを言うようですが、ひと月くらいの育休を“出世できない理由”にするのだとしたら、その先も出世できる人材じゃないって思うんです」 その上で、育児休暇は人生の学びの期間でもあると言います。 「育休というと休みだと思って昼間からビール飲もうとするパパもいます(笑)。資格を取ろうと勉強しようとする人もいる。どれも自由ですし否定はしませんが、子どもをよく見てほしいと思います。育休を取ることは、他者と共に生きる覚悟を持つこと。豊かに生きることです。人生の学びの期間でもある。子どもを育てることを存分に味わってほしい。それが僕の想いです」 取材・文/大楽眞衣子監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授 小崎恭弘兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。著者:ライター 大楽眞衣子社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。
2022年04月29日子どもにはいい保育園に通わせてあげたいーー。これは多くの親の願いですが、保育が多様化する中、「どんな基準で選んだらいい?」と悩む親は多いようです。そこで長年保育士として現場に携わって来た大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に専門家ならではの視点で「いい保育園」「ダメな保育園」の見極め方を教えてもらいました。これから保活を始めるママパパたちの参考になりそうです!「いい保育園」を見抜く十か条いったい、「いい保育園」とはどんな保育園なのでしょうか。長年保育の現場に携わってきた大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生は、保育園を選ぶ目安として厚生労働省が公表している『よい保育施設の選び方 十か条』をすすめます。 厚生労働省は「よい保育施設の選び方 十か条」一まずは情報収集を二事前に見学を三見た目だけで決めないで四部屋の中まで入って見て五子どもたちの様子を見て六保育する人の様子を見て七施設の様子を見て八保育の方針を聞いて九預けはじめてからもチェックを十不満や疑問は率直に 「厚労省が提示するこの十か条は、専門家から見ても過不足なくチェックポイントがまとまっていると思います」 乳児ではなく、ある程度子どもの好みや性格が分かるような年齢になっている場合は、子どものタイプにも配慮した方がよさそうです。 「大事なのは、園の方針と保護者の思い、そして子ども自身の性格や特徴が一致しているかです。子どもの性格を考えて選ぶことです。『園の方針』はホームページで公開されているところも多いですから、いろいろ比べて検討してください」と小崎先生は話します。 例えば保護者が「自然の中でのびのびと育てたい」と考え、外遊び中心の園を選んでも、子どもの性格がその方針に合っていないと、入園後にあまり馴染めないかもしれません。 もちろん、遠いといった物理的な問題や、地域によっては待機児童問題でなかなか希望通りの園に通えないこともあります。自治体によってはたくさんの希望を書くこともできますから、この十か条を参考に検討してみてはいかがでしょうか。 専門家おすすめ!第三者評価が見られるサイト園選びで小崎先生がおすすめするのは、社会福祉施設情報が集約されているWAM NET(ワム ネット)。独立行政法人「福祉医療機構」が運営しているサイトです。ここに第三者評価の結果を公表している保育所もあります。」 〈第三者評価の検索方法〉「子ども・家庭」→「福祉サービス評価情報」→「福祉サービス第三者評価・地域密着型サービス外部評価・運営推進会議等による評価情報」→「施設名で検索」 適切な運営管理ができているかどうかの見極めのひとつが「評価」です。保育所は第三者評価の公表を義務付けられていませんが、「意識の高いところは、サービスや質の向上を意識するために第三者評価を公表している」と小崎先生は言います。 「ここにはすごくていねいに保育の取り組みや内容が書かれています。いいことばかり公表されているわけではありませんから、参考になります。ここまで調べる保護者の方は少ないかもしれませんが、気になる園があるなら、公表しているかどうか調べてみてください。公表されている中身も参考になると思います」 こんな保育園には気を付けて!専門家の視点から「これだけはNG」と感じるチェックポイントも教えてもらいました。 これはNG1!保育士が条件付きで叱っている小崎先生が全体にNGとするのは「保育士が威圧的であるところ」「暴力的なところ」「条件を出して叱るところ」です。威圧的や暴力的な態度は言語道断ですが、「条件を出して叱る」は意外な落とし穴のようです。 「早くお着替えが終わらないとおやつなしですよ」「ごはん食べないならお昼寝しませんよ」 こうしたやりとりは、ともすれば家庭のやりとりでもやりがちですが、こうした声がけはNG。保育現場でこうした場面を見たら、要注意だそうです。 「叱ることは止むを得ない場合もありますが、条件を出して叱る保育士は専門家として不適切です。これは子どもにとって、言葉の暴力なんです。見学者がいるとなかなか普段の状況は見られないかもしれないですが、逆に見学者がいるのにそういう一面が見えてしまった場合は注意が必要だと思います」 これはNG2!「なんとなくいやかも」という直感があった見学した時に感じた「なんとなくいや」という感覚。言葉で表現しにくい直感も、大事にした方がいいと小崎先生は言います。 「臭いが気になる、雰囲気がいや、なんとなく暗いといった第一印象の直感ってありますよね。そういう感覚も実は大事なんです」 その直感が「ダメな園」の見極めポイントと繋がっていることも。例えば・・・・庭の手入れが不行き届き・あいさつがぞんざいになっている・トイレが臭う・殺伐としている・古いプリントがいつまでも貼られている・掲示や壁面の装飾が古くなってぼろぼろになっているなどです。 これはNG3!大人の目線の高さに物が置いてある環境へ配慮することは保育の基本です。万が一に備えて、安全な環境を作っているかという視点でも要チェックです。例えば……・高いところにカセットデッキがある・消火器を子どもの頭上のあたりでぶら下げているなどです。 「大人の目線の高さに重い物を置いていないか、という点も見ておいた方がいいです。地震で万が一落下した時、下に子どもがいたら大けがにつながります。『神は細部に宿る』という言葉がありますが、一時が万事。そういう細かいところの配慮に子どもへの配慮が表れていることがあるんです」と数多くの保育現場を知る小崎先生は指摘します。 休みやサービス、料金の条件もチェック ママパパが必要としているサービスの有無や休み、料金などの条件面も事前確認が必要です。自治体によっても差があるため、将来の校区も含め、長期的な視点で住む場所を決める段階から下調べするのがベストです。 「自治体によって保育料もサービスも違います。千葉県流山市では駅から保育所を送迎バスでつなぐサービスがあります。こういうサービスも調べておいた方がいいでしょう」 保育所によって休みも違います。お盆や年末年始の休みも確認しておきたいところ。園のサービス内容によっては持ち物にも大きな違いがあるようです。 「最近では紙おむつのサブスク『手ぶら登園』を導入している園や、ベッドのようなものを貸し出している園もあります。反対に布おむつを使っている園もある。行事への取り組み方も園の特徴が出ると思います。和太鼓や金管楽器をやっているところもあるし、全くやっていないところもある。どれもどちらがいいというのではなく、親がどう子どもを育てたいかという方針になります。もし可能なら保護者会などの取り組みも調べておいた方がいいですね。保育所より比較的保護者会の活動がさかんなのが幼稚園型認定子ども園といわれます。中には『働いている人にはしんどい』と言われるところもあるみたいです。『お父さんの会』がある園もあります。これらが有意義で楽しいと思う人もいるだろうし、苦痛だと思う人もいる。その辺はよく検討してもらいたいです」と小崎先生は言います。 保育園選びはパパも積極的に!子育て観を確かめる機会に保育園選びは、さまざまなチェックポイントに加え、親自身の子育て観が大きく関わってきます。とはいえ、多様化する保育施設。置かれた環境も規模もサービスもさまざまです。都市部の保育施設では園庭のない施設もあります。こういう複雑化した保育園選びには「パパも積極的に参加を」と小崎先生は呼び掛けます。 「この問題を全部ママに任せるというのは無理がありますね。やっぱり一緒に考えて、複数の視点で見て相談するというのが大事なんです。1人ではチェックしきれなかったり、感じ方が違ったりしますから」 こうした会話の積み重ねが、夫婦2人の子育て観を確かめ合う機会にもなりそうです。 「常識的なことを除くと、保育には絶対的な正解/不正解はないと思っています。それぞれの園なりの方針や想いがあるので、最終的には親の思いを話し合って考えて欲しいなと思います。2人でどういう子どもに育てたいか。話し合ういい機会と捉えるといいでしょう」 取材・文/大楽眞衣子監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授 小崎恭弘 著者:ライター 大楽眞衣子
2022年04月28日「今のパパの多くは、育児に積極的に関わりたいと思っている」と話すのは、大阪教育大学教育学部教授の小崎恭弘先生。たしかに昔に比べると、男性の育児参加は当たり前のようになりつつあります。とはいえ、パパの育児に満足しているママばかりではないのも現実……。やりがちなパパのNG育児とその原因を、父親の育児参加のスペシャリストである小崎先生に伺いました。 NG1:子どもとお出かけするとき、いつまでも支度はママ任せ休みの日にパパが子どもとお出かけしてくれるのはうれしいけど、その支度は「ママ、よろしく!」って……。水筒、着替え、おむつ、おやつ、ごみ袋、遊び道具、ハンカチ、ウェットティッシュなど準備はたくさん! お任せできればその間にほかの家事ができるのに、なんでいつまでも自分でやってくれないの? 小崎先生:「パパが外出に必要なものがわからないから支度をママ任せにして、勝手に自分は遊び担当!と決めているのでしょう。 自分が出演したとあるTV番組でのことですが。パパに、近所の公園に行くための支度を一人でやってもらったんです。そしたら、『今から家出するんですか?』くらい大きい荷物を抱えてきてね(笑)。それくらいパパはわかってない。でも育児や家事は、やりながら経験値を積んでいくしかないので、ママはパパに何を用意すればいいか細かく教えてあげてほしい。そしてパパは自分でやってみる。でも、それがどうしても面倒であれば、パパは遊ぶ担当、準備はママ担当と、完全に役割分担として割り切るのも一つの手だと思います」 NG2:家事育児が残っている夜、ソファで寝転ぶ「仕事で疲れた」と、帰宅後、速攻でソファに寝転ぶ夫……。私だっていま、育休中ですが、日中は育児と家事でヘトヘト! 寝かしつけている間に、食器洗いなど残った家事をしておいてくれたらいいのに……。 小崎先生:「パパに問いたいのは、育児は疲れないと思っているんですか、ということですね。日中、パパが仕事をしていたように、ママも家事・育児をしていたんです。授乳したり離乳食を作ったりお昼寝をさせたり、外へ連れていったり、自分の時間が全くないママもいます。そういったことを想像して理解しましょう。残っている家事があれば、一緒に終わらせる。そして全部終わらせてから一緒にソファで寝転びましょう。 だけど、やってほしい家事をパパが察するのは難しいということは、ママにも理解してほしい。だって十中八九、パパは残った家事に気づいてないから(苦笑)。だから、ママから『食器を洗っておいて』『洗濯物を畳んでくれる?』という具体的な指示をパパに伝えて、家事や育児を2人でシェアしましょう」 NG3:寝かしつけ前にハイテンションな遊びをする寝かしつけ前に、テンションの高い遊びをすると興奮して寝かしつけるのが大変に! かわいいわが子と遊びたいのはわかるけど、邪魔をされるとイラっとします。寝かしつけの大変さをわかってほしい……。 小崎先生:「生活リズムや明日の心配より、かわいいわが子を前に『今、遊びたい!』という感覚なのかもしれません。ママとの育児経験値の差が原因でしょう。育児への責任感も少し薄い場合もあるかもしれません。1度、寝かしつけを1から全部パパに任してしまって、寝かしつけという育児の流れ、見通しを持ってもらうといいと思います。 だけど、仕事が終わってやっと子どもに会えてうれしい、子どもと触れ合いたい、遊びたいというパパの気持ちは認めてあげてほしい(笑)。生活のリズムは大切だけど、そのルールにガチガチになるのもしんどいですよね。普段は生活リズムを守ってもらって、金曜日の夜は少しハイテンションな遊びをしてもOKというような、柔軟性のあるルールにすると、ママも気持ち的にラクになると思います」 どうしてこうなっちゃう? パパとママの育児の差「今のパパたちはやる気はあるんです。でも、見えている家事・育児の範囲が狭く、これまで部分的にしか関わっていないから、やっていないことが多い。その間にママはどんどん経験値を積んでいるので、差が開いてしまうのです」 パパとママの意識の差、経験値の差は埋まるのでしょうか。 「ママには経験値の差を理解してもらい、面倒でも、子どもを育てるようにパパを育ててほしいと思います。パパに任せられることが増えれば、ママの負担はラクになります。ママがやったほうが早いし的確なことが多いと思うけど、まだまだ育児は長く続きますよ(笑)。短期的にとらえず、長いスパンで考えてみましょう。育児や家事を細かく伝えて、パパの視野を広げるほうが得策だと思います」 さらに、お互いに「家族を作る」という意識を持つことが大切だと小崎先生は言います。 「育児や家事の共有は大切ですが、すべてを平等に分担するというよりは、なるべくそれぞれの得意なことをやれるように、役割分担やルールを決めていくといいでしょう。そのためには、意識のズレを感じたときに話し合う、言いにくいことも言う、言われても怒ったりしない。そうやって、トラブルがあればその度に話し合って解決することが大切です。お互いに“夫婦になる” “家族を作る”という意識を持ってコミュニケーションをとれるといいですね」 取材・文/早田佳代監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授 小崎恭弘兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。著者:ライター 早田佳代編集プロダクション勤務を経て、フリーの編集・ライターに。不妊治療、妊娠・出産、健康、ダイエットなどの企画を中心に活動中。取材先などで得た情報を、よりわかりやすく伝えることがモットー。
2022年03月28日こんにちは。コラムニストの鈴木かつよしです。筆者には既に結婚して子どももいる長女より15歳も年下で、今まだ中学生の男の子がいます。娘のときも自分なりに頑張って育児に携わったつもりではあるのですが、息子に関しては「娘のとき以上に父親の自分が責任をもって子育てにかかわった方がいいのだろうなあ」と感じる今日このごろです。ではなぜそう感じるのでしょうか?それは、よく言われる「社会性や我慢のようなものは父親が教えるべきだ」といった理由からではありません。男の子特有の感性を、「身近にいる人間では男親である自分がいちばんよくわかってやれるのではないか」という理由からです。“男の子のプロ”を自認する保育学者の小崎恭弘先生の論説を参考にしながら、このことについて考えてみたいと思います。みなさんもご一緒に考えてみませんか?●男の子は“自分が興味をもった目の前にあるもの”が全て“習い事”や“お稽古事”が長続きするのは女の子でしょうか?男の子でしょうか?もちろん簡単に一般化することはできませんが、筆者の印象としては女の子の方が長続きするケースが多いようにみえます。男の子の場合、親がいくら押しつけてもそれが本人の興味とマッチしたものでなければ「暖簾に腕押し」です。一方で、ピアノの音色を本能的に「自分の音だ」と感じた男の子は、女の子にはあまり見られないような集中力でピアノにハマって行く傾向があるようにみえます。また、たまたまテレビで観た“ウルトラ・ヒーロー”の魅力に憑りつかれてしまった男の子なら、親に買ってもらったヒーロー図鑑や怪獣図鑑で数百種類に及ぶヒーローや怪獣の特徴をつぶさに説明できるようになったりします。つまり、男の子の場合は“自分が興味をもった、目の前にあるもの”が全て なのです。それ以外の物事は男の子にとってはどうでもよく、他人がどうだったとかこうだったとかいう話には一切関心がありません。“男の子の育児の専門家”として数多くの著書がある、保育士で大阪教育大学教育学部准教授の小崎恭弘先生は、男の子のこういった特徴について『男の子はオタク』であると表現されています。筆者が息子の子育てに関して妻まかせではなく自分が相応の責任感をもってあたらなければいけないと思う理由はまさに、男の子のこういった“オタク性”というか“マニアックさ”のようなものを理解したうえでかからないと、小崎先生も複数の著書の中で指摘しているように男の子が本来もっている“良さ”をつぶしてしまうのではないか と考えるからなのです。●早熟な子ばかりではないので、“男の子の純粋さ”を大切に育てるべきいま中学2年生の筆者の息子は、体が丈夫で弁が立ち要領もよかった15歳年上の姉と違い、先天性の身体的ハンディキャップを幾つか背負って生まれてきたこともあって、何事にも“奥手”な子です。スポーツやダンスのような“体を動かすこと”で身を立てるといった選択肢は最初からありませんでした。口下手でもあるため“コミュ力”はきわめて低く、不器用で“省エネ運転”ができない性格です。興味の対象は言いようによっては「幼い」感じで、動物全般や特撮映画などの分野に並外れた関心と探求心を示しますが、恋愛や人間関係、将来設計のようなものには一切興味がありません。つまり、好きなことは好きだけれど、興味のないことはあくまでも「どうでもいい」。前出の小崎先生はこういった言いようによっては“純粋”で“ストレート”なところも男の子に固有の性向 だとおっしゃっています。ただ、中2ともなると友達は必ずしも息子のような感じではなく、いつまでも好きなことばかりにうつつをぬかしているのは非現実的で、将来の安定を手に入れるための現実的努力にもうそろそろ時間を費やすべきだと考える子も少なくはないようです。そのように早熟で合理的なお子さんは素晴らしく、筆者などは羨ましいです。でも、うちの息子はその域に達するまでまだまだ何年も(もしかすると何十年も)かかりそうです。このように幼稚な息子が将来的に社会生活を営めるような技術やコミュ力を身につけようと思ったら、今目の前にある“興味のあること”をとことん追求することで、それに伴って派生する事柄についても学んで行くという方法をとるしかないのではありませんでしょうか。実は小崎先生も多くの著書の中で同様の趣旨のことをおっしゃっていて、男の子のオタク性と純粋さを理解し、尊重し、そのオタク道を究めながらどうしても習得せざるを得ない“他のこと”も学んで行くというのが、男の子が大人へと成長して行くうえでの正しいあり方ではないかと主張しているのです。その際に、男の子というものを肌で理解することができる父親が男の子の子育てには積極的に携わるべき だというのが筆者の考え方であり、著書を読む限り小崎先生の考え方でもあるように思うのです。●人と関わる力(コミュ力)は男の子の場合、得意分野を基にして磨いて行った方がいい今、世の中の風潮がどちらかというと“コミュ力最重視”になるなかで、男の子をもつパパやママは「うちの息子はコミュ力が低いので、大丈夫だろうか?」といった不安をお持ちだろうと思います。筆者もそうなので、よくわかります。でも、もともとコミュ力などに価値観をもっていない男の子たちにとっては、親がいくら心配したところでそんなことは“どこ吹く風”です。男の子がコミュ力というか“人と関わる力”を高めようと思ったなら、逆にいったんコミュニケーションなどといったものへの価値観を捨て去って、自分の得意分野を徹底的に磨くことから入った方がいいのではないか と思います。好きなこと以外には一切関心のない男の子に対して筆者が考えるパパがとるべき姿勢は、具体的に申し上げるならば、こういった感じです。(1)自分の好きなことを追究したいのであれば、多少は好きでないことも勉強する必要があることを説明してあげる。例えば動物の生態についてもっと深く追究したいのであれば外国語で書かれた研究論文を原語で読めなければ話にならないのだから、英語をはじめとする外国語も最低限は勉強する必要があることを教える。(2)また、自分の関心事について奥義をきわめるのであれば、その道の達人や先輩たちから助言をいただくことも必要です。そのためには最低限の礼儀や挨拶も必要。別に損得勘定で礼節を大事にするのではなく、マナーが身についていれば比較的苦労なく先達の協力がもらえることを教えてあげるといいでしょう。(3)今息子が好きでやっていることは別に将来の成功のためにやっているわけではないということを、まずパパが理解してあげること。そのうえで他の子や兄弟姉妹との比較ではなく、昨日の息子より一歩でも成長していたなら褒めてあげる こと。これらの点については小崎恭弘先生もその著書『思春期男子の育て方』の中で、“将来のこと”と“比較”が男の子に向き合う際のパパのNGワード・NG行動であるということを、明言されています。----------パパのみなさん、いかがでしょうか。これからも男の子の子育てを基本ママ任せになさいますか?今までよりはもうちょっとパパが子育てにかかわらなければいけないなとお思いになったのではないでしょうか。男の子は本質的に、“given”の部分から疑ってかかるところがあります。アインシュタインやホーキング博士のような偉大な研究者が男の子から出るのは、男子特有のこういった性向に由来する部分もあるのではないかと筆者は思っています。だとすれば、息子さんを孤立させずに一度“given”を疑って一緒に考えてあげるのは、パパの役目です。このコラムを読んでくださったパパのみなさんには、少しだけそんなことを意識していただけたならと願ってやみません。【参考文献】・『思春期男子の育て方』小崎恭弘・著・『うちの息子ってヘンですか? 男子育児のしんどさが解消される本』小崎恭弘・著・『図解 ウチの男子とパパの「??」がスッキリする本(“我が家の男たち”にお困りママへの処方箋)』小崎恭弘・著●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)●モデル/前田彩(桃花ちゃん)
2017年09月05日優しいけれど自己主張もできて、積極的で…。親というものは欲張りですが、完璧な子どもはいません。おとなしい子のママの悩みに小崎恭弘さんが答えますQ.優しい息子ばかりが我慢しているみたいで複雑4歳の息子には、「おもちゃは順番に使う」「嫌なことがあっても人をたたかない」など厳しくしつけてきました。でも最近、お友達と遊んでいると息子ばかり我慢していることが目に付き、「たたかれたらやり返しなさい」と言ってしまいます。「そんなことできない」と泣く息子に対して、ただの自己主張ができない子なのかと思ってしまうように。私が息子に言っていることは間違っていますか?[東京都・ススママ]illustrationATFT GRAPHICS.A.嫌なことは嫌と伝える表現方法を教えましょうこういう悩みを抱えているお母さんは意外と多いようですね。間違っているとは言いませんが、子育てに対する姿勢がブレていませんか?急激な方向転換は子どもを戸惑わせるだけですよ。どんな子どもに育ってほしいのかをいま一度確認してみてください。最近の子育てを見ていると、子どもに完璧を求め過ぎる傾向があるように感じます。子どもにしてみたら、優しい子になりなさいと言われる一方で、やられたらやり返す強い子になりなさいとも言われるわけです。もちろん周りの状況によって親の姿勢が変わるのは仕方がないし、この世の中は優しさだけで生きていくのは難しい。かといって強さだけで生きるのもしんどい。大事なのは、優しさと強さのバランスを考えて育てることです。「やられて嫌なことがあったら、自分の口で言わないと伝わらないよ」と言って、自分の気持ちを伝える適切な表現方法や手段を教えてあげたり、「ママと一緒に言いに行こうね」と優しく促してあげてください。そうして友達と仲良くやっていく方法をお母さんと考えながら、コミュニケーションのスキルを育てていってほしいなと思います。
2017年02月02日【ママからのご相談】こんにちは、3児の母で、上の2人が女の子、末っ子が待望の男の子で現在1歳6か月のかわいい時期です。初めての男子なのでとても新鮮で、ついつい息子には甘くなってしまいます。旦那がちょっとしたことで息子に「それはダメだよ」と注意しただけで、「まだ1歳なんだから仕方ないでしょ!」と軽くキレてしまうことも(笑)。男の子を産んでみて初めて、ムスコンママ&マザコン息子にならないか、我ながら心配になることが増えました。今から心がけるべきことはありますか?●A. 息子さんはご家族みんなの宝。ママの“家庭内独占”が始まったら危ないかも……?こんにちは、ムスコンママにならないよう、気を付けているつもりのライター・月極姫です。個人差はありますが、『エディプスコンプレックス 』という言葉が示すように、異性の子どもに特別な感情を抱いてしまうのはある程度仕方がないかもしれませんね。私見ですが、今はとびきりかわいい時期。イチャイチャ、チュッチュするのは別に構わないのではないでしょうか?私もしてます(笑)。しかし少し気になるのは、旦那様がちょっと息子さんをたしなめただけでキレてしまうという点。たしなめ方の詳細がわからないので何とも言えませんが、一緒に暮らしている以上、家族みんなで息子さんの基本的なしつけをしたり、危険なことを教えたりしていくのは当然の流れです。「息子のことは私が全部やる!」といったある種の独占状態 になっているならば、ママさんの負担も大きくなって余計にイライラしますし、少しだけ息子さんへの接し方を見直してみるのもいいかもしれませんね。ムスコンママになりやすい人の傾向とともに、ならないための心構えを見てみましょう。●(1)夫婦関係の不満を放置するなムスコンママに限らず、子どもに依存してしまうママさんの多くは夫婦関係において何らかの寂しさ を抱えています。“脳科学おばあちゃん”として有名な久保田カヨ子さんは、旦那様も教育職で忙しく、育児のほとんどを自力で行われていたそうですが、その状態を「亭主元気で留守がいい」と割り切って育児を楽しんでいたそうです。そんなメンタルの強さがあれば、旦那様が多少忙しくても苦にならないのですが、根が依存的で寂しがり屋のママさんの場合は厳しいものがあります。そういうタイプの方は、無理せず最初から「一緒に育児していきましょうね」と歩み寄ることが大事になってきます。旦那様との関係を良好に保ち、女性としての不満を心にため込むことのないよう、夫婦生活も維持していくことが必要です。夫への不満の矛先が、息子さんへの異常愛に姿を変えてしまう ケースが非常に多いからです。●(2)“母子一体”は乳児期までと心得よ出産から乳児期までは、多くのママさんが心から母子の一体感を実感しながら幸せな育児をされていたのではないでしょうか。岐阜大学医学准教授の高岡健さんは、子どもの愛着形成が成されるのは3歳くらいまでが大切であり、その後は子ども自身の関心と行動範囲が徐々に外に向いていくと述べられています。つまり3歳以降は子どもの成長度をよくよく観察し、自立に向けて少しずつ応援していくのが王道というわけです。もちろん基本的なしつけ、能力開発、善悪や危険を教える教育はまだまだ続きますが、「何をして遊びたいか」「誰と遊びたいか」「何を学びたいか」「どうありたいか」は子どもの自由。徐々に、息子さん自身の個性を尊重して解き放つ時期 が近づきます。一方で、自分自身の寂しさや世の中への不信感が原因で息子離れできない人も多いものです。たとえばママさん自身が幼いころにいじめられた体験があって、そのトラウマが未だに解消できていない場合。「自分の子もいじめられるかもしれない」「世の中は意地悪な子であふれている」という歪んだ世界観から、過剰に息子さんを囲い込み、他者との交流を制限し、ひどい場合は年頃の息子さんの異性との交流を邪魔するようになります。しかし、息子さんの人生はママさんの人生とは別物 です。母子一体の時期は、間もなく終了するのです。やれるだけのことをやってあげた後は、息子さんのためにも解放してあげる覚悟を持ちましょう。●(3)かわいい子には失敗させよう「発表会では全員に主役を」「運動会では全員に一等を」。「わが子に敗北感を与えたくない」という保護者のエゴがまかり通って、一時期は実際に全員主役の発表会、全員が1位の運動会を行った幼稚園、学校もあったようです。失敗や悔しい経験を経て来なかった人はいません。むしろ男子には、とくに「悔しい」「負けた」「どうして自分は劣っているんだろう?」という思いを幼いうちにどんどんさせるべき です。たとえ他者との比較に苦しむことがあったとしても、家庭の中でしっかり認められていれば大丈夫。失敗経験・敗北経験が乏しいまま大人になってしまう方が、その後の人生を考えるとよほど残酷だと思いませんか?勘違いしがちですが、悔しいのはあなたではなく息子さんです。そして、息子さんには「悔しさ」「痛み」「敗北感」を経験して、そこから這い上がる道のりを考える権利があるので、それを奪ってはいけません。スポーツ、勉強、趣味活動など何においても、息子さんの悔しさを肩代わりして地団太を踏み始めたり、息子さんを負かした相手や指導者を責め始めたら、ムスコンママ予備軍かもしれません。●(4)出産と育児に依存するな男女問題研究家の山崎世美子さんは、『ムスコンママになりやすい大きな条件は専業主婦です』と述べられていますが、もちろんお仕事をしているママさんでも、働き方によっては息子さんと密着傾向になることが可能です。いずれにしても、息子さんと2人きりの時間が長すぎる と他のことに目がいかなくなり、育児が全てになってしまいます。視野が狭くなり、出産や育児にしか価値を見出せなくなることもまた、ムスコンママになりやすい条件といえるのかもしれません。しかし逆に言えば、専業主婦の方ほど、お子さんが成長するにつれご自分の時間も増え、豊かな“自分の世界”を持てる有利な立場にあるのです。これを生かさない手はありません。やるべきことをやったなら、あとは趣味や学び、旦那様との2人だけの時間、楽しい大人どうしの集まりに没頭してよいのです。そう思うと、これからの人生が楽しみになってきますね。●「過保護」と「放置」は表裏一体の心の病ムスコンママの背景には、「自分の中の空虚な部分を息子の存在で埋めて欲しい 」という病んだ心理があります。この心理状態が“過保護”という形で現れたらムスコンママということになり、逆に、産むだけ産んで妊娠中~周産期の恍惚感が過ぎたら放ったらかしの“育児放棄”という形で現れることもあります。お子さんをもうける前に、また出産前に、できるだけママさんの精神状態を整えておくことはとても重要です。あらゆる人間関係が自立している者同士でないとうまくいかないように、親もまた自立した状態で子どもに接するべきなのです。これはこれから結婚される方、将来出産を希望する方が、たった今から心がけておいて損はないことだと思います。渇望感や劣等感、寂しさでいっぱいの状態で出産育児にあたることがないよう、独身のころから自分の毎日を充実させ、年齢相応の自立した精神を育んでおくのが健全な育児のための準備となるでしょう。【参考文献】・『男の子の本当に響く叱り方ほめ方』小崎恭弘・著・『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』久保田カヨ子・著●ライター/月極姫(フリーライター)●モデル/倉本麻貴(和くん)
2016年10月13日