岩井俊二監督による初めての中国映画『チィファの手紙』。中国で絶大な人気を誇る岩井監督が写った、本作の日本語歌詞付き主題歌MVと中国版ポスターが解禁された。本作は、今年1月に公開された岩井監督の最新作『ラストレター』と同じく、自身の小説「ラストレター」を岩井監督自ら映画化した、もうひとつの“ラストレター”。中国を代表する女優のジョウ・シュンを主演に、共同プロデューサーにアジア映画界の巨匠ピーター・チャンを迎え、岩井監督が監督、プロデュースに留まらず、脚本、編集、音楽も手掛けた意欲作となっている。そんな本作の主題歌「姿」は、岩井監督、ギタリストの市川和則とアコースティックユニット「ikire」を組むシンガーソングライターのChimaが作曲を、作詞を台湾の人気ロックバンド「ソーダグリーン」のボーカル、ウー・チンフォンが担当し、ジョウがボーカルを務めた。解禁されたMVでは、明るい光が差し込む、埃が積もった古びた講堂のステージで、チャンがギター、岩井監督がピアノを伴奏する中、ジョウが歌い上げる姿が。予告編にはない本編映像も挿入されており、本作のドラマティックでエモーショナルな世界観を堪能できるものとなっている。一方、中国版ポスターは全部で6枚あり、風の強いどんよりとした海で、黒い服に身を包んだジョウとチャンと岩井監督が写っている。そのうちの1枚、岩井監督が写ったものは、手にカチンコを持つ岩井監督の姿がコマ送りのようになっており、岩井監督の『四月物語』で主演の松たか子が写ったポスターとまったく同じ構図。さらに、ジョウが写ったものは、ヘッドフォンをつけて瞳を閉じたジョウの横顔が切り取られており、『リリィ・シュシュのすべて』を思い起こさせるほか、岩井監督を先頭に、ジョウ、チャンが一列になって歩く1枚は『PiCNiC』を彷彿とさせるなど、岩井監督の過去作へのオマージュが盛り込まれたものとなっている。『チィファの手紙』は9月11日(金)より新宿バルト9ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:チィファの手紙 2020年9月11日より新宿バルトほか全国公開© 2018 BEIJING J.Q. SPRING PICTURES COMPANY LIMITED WE PICTURES LIMITED ROCKWELL EYES INC. ZHEJIANG DONGYANG XIAOYUZHOU MOVIE & MEDIA CO., LTD ALL Rights reserved.
2020年09月11日岩井俊二監督の新作映画『チィファの手紙』が公開になる。本作は岩井監督が中国で手がけた新作映画で、今年1月に公開された『ラストレター』と同じ原作を基にしている。これまでもひとつの作品を小説や連続シリーズ、映画など様々な分野で描いてきた岩井監督は、ふたつの作品をどう捉えているのだろうか?本作の主人公チィファは亡くなった姉チィナンの同窓会に出かけ、姉に間違えられ、学生時代に憧れていたイン・チャンと再会する。連絡先を交換したチィファは、夫にスマートフォンを破壊されてしまったことから、チャンと“手紙”でやりとりを始める。本作は岩井監督が中国に渡り完成させた作品だが、以前から「40代でアメリカで、50代で中国で映画を撮るのを目標にしていた」と語る。「これまでのキャリアの中で日本、アメリカ、カナダ、フランスで映画をつくってきて、『チャンオクの手紙』(ぺ・ドゥナを主演に迎えた短編)で韓国に行ったんですけど、香港や台湾で撮影したことはあっても中国で映画をつくったことはなかった。それは自分の中のひとつの目標になっていたんです。撮影する環境を少しずつ広げていっているので、ひとつアイデアを考えると、それぞれのプロデューサーと話をして、意見を聞いたりしながら、結果として一緒やろうとなったのが今回はたまたま日本と中国だったということです」『チィファの手紙』はピーター・チャンがプロデュースを担当し、ジョウ・シュンら中国人俳優が集結しているが、撮影監督は近年の岩井作品を担当している神戸千木が担当するなど連合チームが結成された。「撮影監督は変えないです。シェアしている情報が一番重要で、同じツールの箱を持っているようなもの。僕にとってはそこがとても重要で、良い画を撮ってもらえるからカメラマンを決めるわけではないんです。こちらの思っている良い画をお互いが理解できるかが重要で、そこにいたるまでも非常に時間をかけて理解してもらってきているので、そこは変えにくいですよね。3DCGとか美術、キャスティング、プロダクションは中国のチームで、衣装は日本から連れていって……連合チームですね」中国で撮影された『チィファの手紙』と日本で撮影された『ラストレター』は同じ原作が基になっている。しかし岩井監督は「実際につくってみたら同じものをつくっているという意識にはならなかった」と振り返る。「撮影って毎日、“ふたつとないもの”を撮っていくものなので、同じ芝居であっても1回目と2回目では違う。だからこちらも気をゆるめられないわけで、それを積み重ねていくことがやっぱり楽しいんですよね。だから最後の最後まで新鮮な気持ちでふたつの作品を終えることができたと思います」これまでも岩井監督は自身の作品を小説に書き、映画化し、時にドラマ版と映画版を制作するなど、ひとつのアイデアや世界を丁寧に繰り返し描いてきた。また岩井作品のファンも映画が公開されてから時間が経っても作品を繰り返し鑑賞し、上映会には多くの観客が集う。「個人的に楽しみたいだけだと思うんです」と笑顔を見せる岩井監督は「僕にとって作品を完成させて納品することは、言い方はちょっと悪いですけど“臨終”で、お客さんにとっては“誕生”だと思う」と語る。「だから、自分としてはできる限り、生き続けられるように、いろんな形にしてみたりするんでしょうね。ひと昔前だと『潮騒』って原作が何回もリメイクされていた時期があって、70年代ぐらいまではひとつの作品をいろんな人がつくって楽しむ文化があったと思うんですよ。毎年12月になると必ずどこかが『忠臣蔵』をつくってるみたいな、同じものを繰り返す文化があったはずで、それがなくなったのはすごくもったいない。映画の話をするときによくネタバレって言いますけど、もちろん初めて観る人にとってはわずらわしいので言わないでほしいだろうけど、実際には小説の映画化が多いわけで、小説を読んで大好きになった人が小説の話をもう一度楽しみたくて映画館に行くケースは多い。コミックのアニメ化もそうですけど、まったく新しいものを観にいくわけではなくて、だいたいのお話を知っているところで観るケースも多いわけですよね」『スワロウテイル』や『花とアリス』をいまも繰り返し観ている観客が多くいるように、『ラストレター』と『チィファの手紙』もこれから長い時間をかけて観客に出会い、繰り返し鑑賞されることになるだろう。「僕は漫画ファンなんですけど、好きな漫画は繰り返し読むわけで、もちろんお話はわかっているんですけど、お話はあくまで導線であって、そこに落ちているいろんな感情の変化とか衝撃的なシーンを繰り返し味わいたいんですよ。だから、そういう意味でいえば、良いコミックってしっかり味わえるもので、何度でも堪能できる。だから、映画も負けてはいられないというか、2時間観たらおしまいではなくて、お客さんが何度でも観たいと思えるようなものを僕も目指したいし、そういうもので映画館があふれていてほしいと思います」『チィファの手紙』9月11日(金) 新宿バルト9ほか全国ロードショー
2020年09月10日『理想の芸能人夫婦』や『芸能界のおしどり夫婦』など、夫婦に関する好感度ランキングで必ずといっていいほど目にする、お笑いタレントの藤井隆さんとタレントの乙葉さん夫妻。2005年に結婚した2人は、その後、夫婦そろってCMに出演するなどそのおしどり夫婦ぶりは誰もが知るところでしょう。また、2016年にはドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の最終話に、藤井隆さん演じる日野秀司の妻役として乙葉さんがサプライズ出演。「まさかの乙葉!」「リアル夫婦共演」とネット上で大きな反響を呼び、改めて2人の好感度の高さを知らしめました。しかし、藤井隆さんはバラエティ番組を中心によく見かけますが、乙葉さんは表舞台から遠ざかっている印象も。結婚後の乙葉さんの活動状況や、「理想的」との声を集める藤井隆さんとの夫婦生活などをご紹介します。乙葉、事務所移籍を報告2020年1月に、自身のブログでこれまで所属していたエンプロからノットカンパニーへの移籍を報告した乙葉さん。「これからも、精進して参りたいと思います」と今後の意気込みをつづっています。わたくし乙葉は、2019年12月31日をもちまして、所属しておりましたエンプロを離れ、今後はノットカンパニーから、活動することになりました。これからも、支えてくださる方々への感謝を胸に、精進して参りたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。乙葉オフィシャルブログーより引用乙葉、現在の活動状況インスタは開設している?事務所移籍後、乙葉さんはタレント、女優など現在も活動を続けています。インスタグラムは開設していないものの、現在の活動状況は乙葉さんのオフィシャルブログで知ることができ、今の姿も見ることができます。年齢を感じさせない美貌にファンからは「相変わらずきれい」「まったく変わらない」と驚きの声も。『癒し系タレント』として人気を博した、あのやわらかな笑みも健在です!このあと8時30分〜は『 #土曜はナニする ⁉️』宇賀さん&乙葉さんは今日も朝ごはん楽しみに✨和牛さんはすでに #イケメシ 意識しはじめてます #土ナニ #カンテレ #フジテレビ @natsumi_uga @wagyunomizuta @wagyukawanishi pic.twitter.com/iLbGKzzlaM — 【公式】土曜はナニする!? (@ktv_donani) June 12, 2020 ちなみに、デビュー直後の乙葉さんの貴重な写真がこちら。写真集『BOOB OTOHA』発売イベント時の乙葉。2000年撮影そして2018年に、JR東日本のイベントに登場した際の乙葉さんの姿がこちらです。見比べてみると、8年もの月日が経ったとは思えませんね!乙葉と藤井隆がドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で共演ネットではお祭り騒ぎに!前述した通り、2016年に乙葉さんは藤井隆さんとドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で共演し、当時、ネット上で大きな話題を呼びました。【放送前出せなかった最高フォト!】放送中のTwitterのタイムライン、「乙葉さん!!」で染まった瞬間ありましたね。最高で最強の2ショットでした。もう一度見たい!という方は是非TVerで!あぁ、ほっこりムズキュンする… #逃げ恥 #ムズキュン #tbs #タカスィ #乙葉 pic.twitter.com/9c7YzAubeE — 【公式】TBS「逃げるは恥だが役に立つ」 (@nigehaji_tbs) December 23, 2016 乙葉さんが出演することは事前に告知されていなかったため、放送直後はツイッターのタイムラインが「乙葉さん!」の投稿でうめつくされる事態に。乙葉さんは、藤井隆さん演じる日野秀司の妻役として出演し、リアル夫婦がドラマ内でも夫婦を演じる姿は、多くの視聴者をキュンとさせました。乙葉と藤井隆の共演CM多数!変わらぬ仲のよさに「理想的」の声ドラマとはいえ、藤井隆さんとの仲むつまじい姿を披露し「理想的」「キュンキュン」したとの声が寄せられた乙葉さん。その仲よし夫婦ぶりは有名で、2018年、結婚13周年を迎えた際には、自身のブログで藤井隆さんとの2ショットを公開したことがありました。ブログで、夫婦で共演した『養命酒』のCMを引き合いにだし、「養命酒を飲んで、いつまでも元気に過ごしましょう!!」と変わらぬ仲のよさをうかがわせています。結婚13周年!結婚記念日を家族でお祝いしました。夫婦で一緒に歩んだ13年。楽しく、頼もしい主人に毎日感謝でいっぱいです。養命酒飲んで、いつまでも元気に過ごしましょう!!乙葉オフィシャルブログーより引用また、藤井隆さんも結婚当初から乙葉さんへの思いは変わらないようで、2017年3月26日放送のバラエティ番組『おしゃれイズム』(日本テレビ系)に出演した際には、のろけとも思える発言をしたことも。嫁がかわいい。嫁の顔が大好き。嫁が本当に好き。おしゃれイズムーより引用性格はもちろんのこと「顔がかわいい」とべた褒めの藤井隆さん。そのため、ケンカになりそうな時も、乙葉さんの顔を見るだけで「なんか、いいや」と和んでしまうのだそうです。藤井隆は現在、ナニしてるの?乙葉の結婚生活に「ラブラブすぎ!」そんな相思相愛ぶりは夫婦で共演したCMからも伝わってきます。乙葉と藤井隆共演CMちなみに、2人の間には、2007年に第1子となる女の子が誕生しています。名前や写真など、子供に関するプライベートな情報は公開されていませんが、藤井隆さんいわく娘は乙葉さんに似ているのだそう。グラビアアイドルとしても人気を博した乙葉さんに似ているのならば、きっと美女に育つのでしょうね!夫婦円満、家族仲も順調な乙葉さんと藤井隆さん夫妻。これからも誰もが憧れる夫婦・家族として、お茶の間に癒しを届けてほしいですね。[文・構成/grape編集部]
2020年09月08日『チィファの手紙』『窮鼠はチーズの夢を見る』が、9月11日(金)から全国ロードショーされる。この度、YouTubeの岩井俊二映画祭チャンネルにて、新コンテンツ『この空の下』がスタートし、その第1弾として行定勲監督をゲストに迎えたスペシャル対談が9月8日(金)19時より4夜連続配信される。岩井監督の『チィファの手紙』、行定監督の『窮鼠はチーズの夢を見る』に先駆け、それぞれが作品に込めた想い、アフターコロナの時代の映画作りなどを大いに語り合う。さらに、岩井監督作『Love Letter』(助監督:行定勲)の撮影時のエピソードやプライベートなどが対談内容となる。9月8日(火)〜11日(金) 4夜連続 19時〜Youtube《岩井俊二映画祭チャンネル》にて配信月8日(火)19:00今年の行定作品と岩井作品/映画と配信/新しい映画のカタチ#029月9日(水)19:00ふたりはどんな夢を見るのか/撮影現場の記憶/それぞれの撮影現場とこれからの撮影現場#039月10日(木)19:00シナリオと現場の葛藤/コロナで変わる映画の見かた/コロナのない世界はファンタジー#049月11日(金)19:00コロナが変えた映画製作/変化する文化と映画/コロナ禍でもできることを『チィファの手紙』9月11日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー『窮鼠はチーズの夢を見る』9月11日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
2020年09月08日岩井俊二監督が自身の小説「ラストレター」を原作に、初めて中国でメガホンをとった映画『チィファの手紙』。この度、すれ違いの文通が始まるきっかけとなるシーンの本編映像がシネマカフェに到着した。本作は、松たか子、広瀬すず、神木隆之介、福山雅治らが共演し今年1月に公開された岩井監督『ラストレター』と同じく、岩井監督が自身の小説を原作に中国で描いたもうひとつの“ラストレター”。今回到着した本編シーンは、ある日、犬の散歩から帰ってきた従姉妹同士のムームーとサーランが、ポストに届いたムームーの亡き母チィナン宛の手紙を発見した後の場面。2人はその手紙を読み出すが、まるで母がいまも生きていて文通をしているかのような内容に困惑する。「この人、霊界と文通してる?」「知らないのかな? 亡くなったこと」とサーランは不思議がり、何か分かるかもしれないから、自身の母親でチィナンの妹・チィファに聞いてみようと言うが、ムームーは「それじゃ面白くない、返事書いてみない?」と無邪気な提案するのだった…。『ラストレター』ではムームーに当たる役を広瀬さんが、サーランに当たる役を森七菜が演じ、注目の若手女優の演技が話題になったが、岩井監督は『チィファの手紙』での少女たちの演技も絶賛。ムームーを演じるダン・アンシーは本作での透明感のある魅力が話題を呼び、また、サーランを演じるチャン・ツィフォンは『唐山大地震ー想い続けた32年ー』(10)で「金鶏百花映画祭」新人賞を受賞した実力派。物語を彩る中国の若き才能にも注目だ。『チィファの手紙』は9月11日(金)より新宿バルト9ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:チィファの手紙 2020年9月11日より新宿バルトほか全国公開© 2018 BEIJING J.Q. SPRING PICTURES COMPANY LIMITED WE PICTURES LIMITED ROCKWELL EYES INC. ZHEJIANG DONGYANG XIAOYUZHOU MOVIE & MEDIA CO., LTD ALL Rights reserved.
2020年09月06日岩井俊二監督が初めて中国でメガホンをとった『チィファの手紙』の公開日が9月11日(金)に決定。この度、本作の予告編と本ビジュアルがあわせて公開された。『チィファの手紙』は、1月に公開された岩井俊二監督最新作『ラストレター』と同じく、自身の小説『ラストレター』を原作に岩井監督が中国で描くもうひとつの“ラストレター”といえる作品。中国でも人気を誇る岩井監督のもとに、中国四大女優のひとりである主演のジョウ・シュンをはじめ、中国の豪華キャストが集結。岩井監督はプロデュース、脚本、編集、音楽も兼ね、プロデューサーにはアジア映画業界の巨匠ピーター・チャンが名を連ねている。2018年に中国で公開されると、中国映画として当週の興行ランキング1位を獲得した。中国のアカデミー賞とされる第55回金馬奨では、最優秀主演女優賞・助演女優賞・脚本賞の3部門でノミネートを達成している。この度解禁された予告編は、姉チィナンが亡くなり、その死を告げる ため参加した同窓会で、ジョウ・シュン演じるチィファが中学時代の憧れの相手チャンと再会するシーンから始まる。そして「中学時代に憧れの人がいたんです。でもその人、私の姉が好きで」と語るチィファとともに、「手紙」を通して浮かび上がるそれぞれの初恋の記憶が、 現代と過去ふたつの世代を繋いで描かれていく。また、同時に公開された本ビジュアルでは、ティザービジュアルと同様に記された「初恋、めぐるー」というコピーと共に、チィファの俯いた横顔が映された一枚。あどけなさの残る若き日の姉チィナンの横顔をとらえたティザービジュアルとは対照的に、チィファはどこか 切なげな表情を見せている。『チィファの手紙』9月11日(金)公開
2020年07月17日岩井俊二監督× 斎藤工×武井壮×樋口真嗣がタッグを組み、YouTubeにて配信された『8日で死んだ怪獣の12日の物語』。この度、のんを追加キャストに迎えた劇場版が、7月31日(金)より全国のミニシアター支援のために公開されることが決定した。本作品は、SNSにて樋口監督ら5人の監督が発動した「カプセル怪獣計画」の番外編となり、全編ほぼリモートで撮影された。主人公のサトウタクミを演じるのは、「BG~身辺警護人~」に出演中で、ミニシアターパークの活動などを通して積極的にミニシアターを支援している斎藤工。監督やプロデュースまでもこなすそのバイタリティをリモート撮影という特殊な状況下でも発揮し、主演を務める。そして、今回追加での出演が発表されたのんが演じるのは、通販で宇宙人を買ったという丸戸のん。「この役を演じられるのはのんしかいない」という岩井監督からのラブコールに応え、岩井組に初参加。サトウタクミの先輩オカモトソウを演じるのは武井壮。そして、『少女邂逅』『街の上で』など話題作への出演が続く穂志もえかがYouTuber“もえかす”を演じ、これまでとは違った一面を見せる。個性豊かな岩井組初参加の面々に加え、原案の樋口真嗣も登場し、フィクションなのにドキュメンタリーのようなちょっと不思議で優しい世界へと導く本作。世界中がいまも直面している新型コロナウイルスとの戦い。2020年のいまを切り取る本作からポスタービジュアルが解禁。人気の少ないコロナ禍の東京を背景に、何か言いたげな人間の表情が印象的なモノトーンのポスター。渋谷の街には岩井監督自ら造形した様々な怪獣も配置されており、作品の不思議な世界観が反映されている。なお、本作は、これまで多様な映画文化を支えてきたミニシアターを応援すべく、本作は売上の一部をミニシアター支援に充てる特別興行を予定している。斎藤さんは、「四月末、岩井監督の1通のお便りから密やかに始まったこのプロジェクトは、カプセル怪獣の如く日々変化と進化」を繰り返してきたと語り、「のんさん、武井壮さん、穂志もえかさん、更には"怪獣や星人"が参加して下さり、作品自体が第二形態へと大きく変貌を遂げました。他に類を見ないこの進化型怪獣(映画)の目的・ミッションは、人類の平和と、ミニシアターを中心とした映画館の救済です」と明言。岩井監督とも、斎藤さんとも初タッグとなるのんさんは「先輩俳優と後輩のやりとり、とても楽しかったです。怪獣の卵をネットで買って、未知の生き物に地球の未来を委ねる不思議な世界観。小さな白い怪獣が今にも動き出すんじゃないかと、ドキドキしました。どんな状況でも映画作りをする岩井監督の作品に参加できて感動しています。コロナ禍で気持ちがしぼみがちな中、私も大人しくしてるだけじゃダメだ、と勇気付けられました」と語る。また、ミニシアター支援についても「作品で応援できるということで、役者として一番嬉しい形だなと思います。みんなの大切な、映画の記憶が刻まれる場所が、残っていって欲しいと願います」と思いを口にした。そして、岩井監督もまた「コロナという、今世界中で猛威を振るっている世紀の災厄。誰もが対岸の火事ではいられないこの事態。我々エンターテインメントの世界も、真っ先に甚大な被害を被りました。僕は仕事を作る立場の側です。その責任の重さを今回ほど強く感じたことはなかった気がします。この作品を作ることそのものがコロナ禍にあって自分のできるせめてもの抵抗だった気がします。気の休まらない日々の中、この作品が誰かのせめてもの気休めになってくれたら。そんな想いです」と語っている。『8日で死んだ怪獣の12日の物語』は7月31日(金)より全国のミニシアターにて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2020年06月24日ビリー・アイリッシュと村上隆が奇跡のコラボレーション2020年5月25日(月)、ユニクロオンラインストアで、「ビリー・アイリッシュ×村上隆」アイテムの販売がスタートした。ユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」が、2人のアイコニックなモチーフを見事に表現。モチーフの配置や色づかいなど、細かいところまでこだわったデザインとなっている。WOMENのTシャツは6柄を用意。販売価格は各1,500円(税抜き)。UNISEXのキャップとUNISEXのハットはそれぞれ2色を展開。各1,990円(税抜き)で販売される。MEN Tシャツ6柄とKIDS Tシャツ6柄も用意している。全国のユニクロ店舗での販売開始日は6月5日(金)を予定。インスタグラムがきっかけで交友がスタート村上隆とビリー・アイリッシュは、インスタグラムを通じてメッセージをおくりあったことで交友がスタート。ミュージックビデオやアニメーションを共同制作するなどしている。村上隆は1962年生まれ。東京都出身。有限会社カイカイキキの代表を務める。日本を代表するアーティストの1人で、世界各国の美術館で個展を開催する他、映画・アニメーションの制作なども手がける。(画像はプレスリリースより)【参考】※ユニクロ プレスリリース
2020年05月29日国内で大ヒットを記録した岩井俊二監督最新作『ラストレター』と同じく、自身の小説「ラストレター」を原作に中国で描く『チィファの手紙』から、特報とティザービジュアルが解禁となった。今回解禁された特報では、ジョウ・シュン演じる主人公チィファが「中学時代に憧れの人がいたんです。でもその人、私の姉が好きで…」と、中学時代の初恋に想いを馳せる姿から始まる。回想シーンとともに織り成された映像では、一通の手紙から始まったふたつの世代を超えて綴られるラブストーリーが描かれており、過去そして現在で映し出される手紙のやりとりから、時を超えて胸を締め付けるような淡く切ない記憶が呼び起こされる。日本版『ラストレター』でも印象的だった、学校の図書室や階段でのシーンも垣間見える。柔らかく透明感あふれる映像に合わせ奏でられる、美しく切なげなチェロの旋律から、珠玉の物語を予感させる特報となっている。併せて解禁されたティザービジュアルでは、「初恋、めぐる―」という印象的なコピーとダン・アンシー演じる若き日の姉チィナンの横顔が映され、そのみずみずしい魅力に惹きつけられる1枚となっている。映像とビジュアルからは、“岩井美学”と称される幻想的でノスタルジックな色彩美を感じさせられ、初の中国映画にして、岩井監督ならではの唯一無二の世界観に期待が寄せられる。『チィファの手紙』は今秋、新宿バルト9ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2020年05月21日ユニクロ(UNIQLO)のグラフィックTシャツブランド「UT」が、ビリー・アイリッシュと村上隆によるコラボレーション「ビリー・アイリッシュ×村上隆」を、5月25日よりオンラインストアで先行発売、全国のユニクロ店舗では6月5日より発売する。キービジュアルにはビリー・アイリッシュのシンボル「ブローシュ(Blohsh)」と、村上隆のアイコンである「お花」を掛け合わせたブランディングロゴがあしらわれているコラボのきっかけはインスタグラム本年度のグラミー賞では史上最年少の18歳で主要4部門を制覇し、世界中で社会現象的な人気を集めるビリー・アイリッシュ。村上隆とはインスタグラム上でメッセージを送りあったことがきっかけで交友がスタートし楽曲「you should see me in a crown」のミュージックビデオを共同制作するまでに発展。ビリー・アイリッシュのアイディアを村上隆ならではの感性で具現化した全編フル・アニメーションの映像は、動画再生サイトで6900万回以上という驚異的な視聴数を獲得している。今回は、そんな世界中で話題の二人による貴重なコラボレートをUTで展開する。ユニクロUT「 ビリー ・アイリッシュ×村上隆」気になるアイテムラインナップは?ウィメンズTシャツ©2020 LASH Music, LLC©2020 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.この夢のようなコラボレーションでは、二人のアイコニックなモチーフが見事に融合したグラフィックや、ビリー・アイリッシュ自らディレクションしたオリジナルデザインまで幅広く展開される。ファンならずとも欲しくなる完成度の高さは、まさに“着られるアート”。アイテムラインアップは、メンズTシャツ(6柄 / 各1,500円)、ウィメンズTシャツ(6柄 / 各1,500円)、キッズTシャツ(6柄 / 各990円)、ユニセックスキャップ(2色 / 各1,990円)、ユニセックスハット(2色 / 1,990円)。ウィメンズTシャツ©2020 LASH Music, LLC©2020 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.メンズTシャツ©2020 LASH Music, LLC©2020 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.キッズTシャツ©2020 LASH Music, LLCユニセックスキャップ©2020 LASH Music, LLC©2020 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.限定ノベルティと村上隆が制作したビリー・アイリッシュ像ユニクロのオンラインサイトにて、本コラボレーションアイテムを2点以上購入の方には、オリジナルのノベルティのプレゼントも。キャッチーなデザインのキーホルダーは、コーディネートのポイントとしても活用できそうだ。ノベルティのキーホルダーノベルティは、数量に限りがあるため、なくなり次第終了となる。取り扱い店舗など、配布条件については、ユニクロのオンラインサイトを要確認。さらに、本コラボコレクションの発売を記念して、6月を目途にオープンするユニクロ原宿店には、村上隆が制作した3mもの巨大なビリー・アイリッシュ像が期間限定で登場。(原宿店のオープン日は緊急事態宣言等の状況に応じて変更になる可能性がある。詳細はユニクロのオンラインサイトを要確認。)本コレクションのために村上隆が特別に制作した高さ3mもの巨大なビリー・アイリッシュ像作品が着用しているのは、本コラボレーションのUT世界中を熱狂させる村上隆作品を間近で見ることができる貴重な機会。原宿を訪れた際には、ぜひチェックしてみて欲しい。「ビリー ・アイリッシュ×村上隆 」スペシャルサイト(www.uniqlo.com/billie-x-murakami/)も公開中。こちらもぜひ、チェックしてみて。>>この他のユニクロの記事はこちら
2020年05月19日ユニクロ(UNIQLO)のグラフィックTシャツブランド「UT」から、ビリー・アイリッシュと村上隆とのコラボレーションTシャツ「ビリー・アイリッシュ × 村上隆」が登場。2020年5月25日(月)よりオンライン先行発売したのち、6月5日(金)より全国のユニクロ店舗にて発売する。ビリー・アイリッシュ × 村上隆、夢のコラボ実現「UT」が新たにタッグを組むのは、「第62回グラミー賞」にて史上最年少18歳で主要4部門受賞を含む5冠の快挙を達成したビリー・アイリッシュ。そして、日本を代表する現代美術家である村上隆だ。2人はインスタグラム上でメッセージを送り合ったことがきっかけで交友がスタートし、後にその仲は、ビリー・アイリッシュのシングル「you should see me in a crown」のミュージックビデオを共同制作するまでに発展。日本では、2019年夏にその世界を体感できる展覧会も開催した。「UT」だから実現した夢のようなコラボレーションでは2人のアイコニックなモチーフを融合したグラフィックや、ビリー・アイリッシュ自らディレクションしたオリジナルデザインまでを幅広く展開する。メンズメンズTシャツで登場するのは、ビリー・アイリッシュのロゴの上に村上隆の象徴的なモチーフであるお花やきのこを描いたものや、ビリー・アイリッシュのアイコン「Blohsh」の中に村上隆のお花とスカルを敷き詰めたものなど。全6柄のラインナップのうち、バックにアルバムと収録楽曲のタイトルをランダムに配置したデザインは、ビリー・アイリッシュがディレクションしたもの。さらに、インパクトあるネームロゴは「UT」オリジナルで、今コレクションだからこそ手に入る貴重な1枚となっている。ウィメンズウィメンズTシャツも全6柄を展開。ミュージックビデオのキャラクターデザインを務めたmabaeが描いたビリー・アイリッシュのスケッチ画を使用した1枚は、ネオンイエローのカラーリングと相まってフューチャリスティックな印象だ。また、ビリー・アイリッシュのロゴの中にお花を埋め込んだポップなグラフィックも登場する。さらにウィメンズでもメンズ同様に、「UT」オリジナルのネームロゴをあしらったTシャツを展開する。ユニセックスユニセックスで楽しめるアイテムとして、キャップとハットをラインナップ。ブラックとベージュの2色で展開されるキャップは、ベージュにビリー・アイリッシュらしいグリーンで、ブラックにコントラストの効いたホワイトで、ブランディングロゴをあしらった。一方ハットには、Tシャツにも配した「UT」オリジナルのロゴをワンポイントとして添えている。キッズ「ビリー・アイリッシュ × 村上隆」ではキッズサイズも発売される。ビリー・アイリッシュが村上隆のお花畑にいるような遊び心あるコラージュや、「Blohsh」の顔に村上隆のお花が咲くプリントなど、ポップで可愛らしい全6柄を揃える。村上隆による巨大ビリー・アイリッシュ像がユニクロ 原宿店に出現2020年6月を目途にオープンするユニクロ 原宿店には、コラボレーションUTを着用した高さ3mの巨大なビリー・アイリッシュ像が期間限定で登場。これは、今回のコレクションのために村上隆が特別に制作したものだ。なお、オンラインサイトにてコラボレーション商品を2点以上購入した人を対象に、オリジナルキーホルダーを1点プレゼント。数量限定、なくなり次第終了となるので気になる人は早めにチェックを。【詳細】ビリー・アイリッシュ × 村上隆先行発売日:2020年5月25日(月)先行取り扱い:ユニクロ公式オンラインストア一般発売日:2020年6月5日(金)一般取り扱い:全国のユニクロ店舗※一部店舗は、臨時休業ならびに営業時間を変更する場合あり。詳細はオンラインサイトを確認。■価格MEN Tシャツ 6柄 1,500円+税WOMEN Tシャツ 6柄 1,500円+税KIDS Tシャツ 6柄 990円+税UNISEX キャップ 2色 1,990円+税UNISEX ハット 2色 1,990円+税
2020年05月18日文:池上彰(ぴあアプリ版連載「池上彰の 映画で世界がわかる!」から)新型コロナウイルスの感染が拡大するにつれて、新規の映画上映が次々に延期になっています。このコーナーで取り上げようと考えている映画もいつ上映されるか見通しが立たなくなっています。こうした状態は、とりわけ各地のミニシアターに深刻な影響を与えています。上映を自粛しているからです。しかし、こんな状態が続いたら、ただでさえ経営基盤が弱いミニシアターは深刻です。いずれコロナ禍は収束するでしょうが、収束したら映画館がなくなっていた、なんてことになったら大変です。たとえばドイツのメルケル首相は、3月18日の国民へのメッセージの冒頭で「何百万人もの人たちが働きに出ることができず、子どもたちは学校や保育所に行くことができませんし、劇場・映画館・商店は閉まっています」と語りかけています。「劇場・映画館・商店」の順番です。日本の政治家とは優先順位が大きく異なると思いませんか。さらに3月23日にはドイツの文化メディア担当大臣が、「アーティストは、いま生きるために必要不可欠な存在である」と言って生活支援金を支給すると声明しました(「ハフィントンポスト4月17日」)。そう。生きるために必要不可欠なのです。映画だって、不要不急の産業ではないのです。たしかに“不急"ではないこともあるでしょうが、けっして"不要"ではないのです。連日コロナのニュースばかりを見聞きしていると、心がすさんできます。悪夢にうなされる人も増えているそうです。こういう悪夢は"コロナ悪夢"と呼ぶのだそうです。日本全体がウツ状態になっている気がします。こんな状態が続くと、人間性が失われていくのではないでしょうか。"自粛警察"のような行動を取る人が出て来ると、まるで戦時中にお上に従わない人を"非国民"と呼んだ、そんな空気の復活を感じて怖くなります。人間が人間であるためには、笑ったり、泣いたり、怒ったり、という人間的な感情の発露が絶対に必要だと思うのです。それができないとき、人間は“緩慢な死”に向かうのではないでしょうか。笑いは免疫力を高めるという調査結果もあります。映画館存続のためにいまできること映画館が営業できなくなっていることに危機感を抱いている人たちは、とりわけミニシアターを存続させるためのクラウドファンディングを始めています。心強いことです。いま映画を観ることができなくても、観られるようになったときに観られる鑑賞券を事前に販売するという取り組みもあります。こうした行動に協力し、なんとか映画の火を消さないようにしたいと思います。連休が明けてから、感染者が少ない県では、感染防止対策を取り、観客席の間を空けて、一度に入場できる客を減らしながら開館するシアターも出て来ました。マスクをかけ、飛沫感染にならないように映画の反応は控えめにしながら、ささやかな人間性回復を図る。それをやってみましょう。私も、いつ上映が始まるかわからない映画が多い中で、上映日が決まったときに備えて、映画の解説を書き溜めておきます。プロフィール池上 彰(いけがみ・あきら)1950年長野県生まれ。ジャーナリスト、名城大学教授。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。記者やキャスターをへて、2005年に退職。以後、フリーランスのジャーナリストとして各種メディアで活躍するほか、東京工業大学などの大学教授を歴任。著書は『伝える力』『世界を変えた10冊の本』など多数。
2020年05月18日松田聖子、斉藤由貴、近藤真彦、Kinki Kids……。時代を代表するアイドルたちの大ヒット曲をはじめ、数々の名曲を世に送り出した作詞家・松本隆(70)が今年、作詞家活動50周年を迎えた。その独特な世界を生み出す原動力は何か。“彼をよく知る人の証言”から迫ります。■太田裕美(65)「佇まいは、見るからに文学青年。情景。心理描写も秀逸です」「初対面のとき、開口一番『えっ、こんな若い人?』と口走ったくらい、当時の松本さんは見るからに文学青年という佇まいでした」松本隆との出会いをこう振り返るのは、多くの名曲を贈られている太田裕美。代表曲『木綿のハンカチーフ』も松本による作詞だ。「遠距離恋愛の経験はないけれど、歌詞の世界を素直に歌おうと思いました。松本さんが書いてくれた楽曲は、『エレガンス』というアルバムの収録曲である『ピッツァ・ハウス22時』や『煉瓦荘』など、とにかく情景と心理描写が秀逸です。『さらばシベリア鉄道』も作曲の大滝詠一さん(享年65)が『はじめて自分の名前がオリコンに載った』と喜んでくださったので、自分のことよりもうれしく思ったことを覚えています。私ほど松本さんから素晴らしい詞をいただいている歌手はいないのでは。これからも太田に書きたいと思っていただけるよう歌い続けていきたいです」■若松宗雄(音楽プロデューサー)「文学性の高い世界観に娯楽が加わった」「太田裕美さんに提供した詞を聴いたときから、彼のことはすごいなと思っていました。聖子にも書いてもらいたくて『アルバムでもいいので』とお願いしたのが始まりです」振り返るのはかつてCBS・ソニーレコードで松田聖子(57)を発掘した名プロデューサー・若松宗雄氏。松本隆とタッグを組み、数々の名曲を世に送り出した。「初めて出来上がった『白い貝のブローチ』を聖子が歌った瞬間、生理的な心地よさというか“快感”に近いものを感じ、やはり聖子の声質とぴたりと合う!と感嘆しました」松本の詞については、「伝説的なバンド『はっぴいえんど』で実績を重ね、松田聖子で結実・成功した」と若松氏は続ける。「松本さんは、音楽性・文学性の高いニューミュージック界の旗手。それがトップアイドルの詞を描くことで娯楽性も高まり、大きな成功を収めたのでしょう」若松氏はあのユーミン(松任谷由実・66)、でさえリテークをお願いしたこともあったが、松本には皆無だった。「方向性はすべて彼にまかせました。情景描写が秀逸で、彼の語彙力が詞の奥深さにつながっている。私は聖子には音楽性と文学性を持たせたいと思っていたのですが、それを以心伝心で感じ取ってくれました」作曲は大滝詠一、細野晴臣(72)、財津和夫(72)、松任谷由実といった才能豊かなアーティストが交代で担当。「誰も異論を唱えようのない才能あふれる仲間たちも巻き込んでくれた。大村雅朗くんというアレンジャーに恵まれたことも大きかった。今思えば、時代を代表する才能が集結していましたが、松本さんとしては、『後世に残そうと意図せずして、一時代を作った』というところではないでしょうか」「女性自身」2020年3月17日号 掲載
2020年03月19日松田聖子、斉藤由貴、近藤真彦、Kinki Kids……。時代を代表するアイドルたちの大ヒット曲をはじめ、数々の名曲を世に送り出した作詞家・松本隆(70)が今年、作詞家活動50周年を迎えた。その独特な世界を生み出す原動力は何か。“彼をよく知る人の証言”から迫ります。「知的で精悍、文学者のような印象でした。マスコミにはほとんど出ていないころだったので、想像するしかない存在でしたが、期待を裏切らず。『これが松本隆か!』と納得しました(笑)」最初の出会いをそう振り返るのは’00年、松本隆が作詞とプロデュースを手がけ、45歳で再デビューを果たしたシンガーのクミコ(65)。それまで高橋クミコとして銀座の名店「銀巴里」で歌うなど地道な音楽活動をしていたが、改名し、再デビュー。その経緯は「奇跡的」といえるものだった。「CDが売れず、次のアルバムを出すことも危うい状況でした。打開策として『音楽プロデューサーについてもらったほうがいいのでは?』と思い立ったレコード会社のディレクターが、ダメ元で松本さんに私のCDを送ったんです」(クミコ・以下同)当時の松本隆事務所にはそうした売り込みの作品がうずたかく積まれていた。そしてある日、ふらりと事務所を訪れた松本が「廃棄」コーナーのいちばん上に置かれたクミコのCDに目を留める。「チンドン屋さんをバックにした妙なジャケットで、『なに?この人』って思ったらしいです。ご縁としかいいようがありません」当時の松本は充電期間。それまで書けなかった「生と性と死」を書き残しておきたいという時期だったことも幸いしたが、「私が松本さんの偉業をほとんど知らないねぇちゃんだったことも新鮮だったのでは」とクミコは語る。そして小さなライフハウスでシャンソンを歌うクミコを見て「僕の詞に合うと思う」とあっさりコラボレーションが決定。松本がレコーディングに立ち会い、久し振りにドラムスティックも握った。「僕が5センチくらい深いことを書いたら、クミコは勝手に5メートル掘り下げてしまう」と松本が言うとおり、クミコが見事に歌い上げ、完成したのが’00年に発売したアルバム『AURA(アウラ)』だ。「不倫をしている女性や、緊縛画のモデルなど、書かれているのは裏街道を生きる女性の詞ばかり。アイドルの方にはとても歌えない詞で、『おおっ、こんなきわどい詞がきちゃった』と。45歳の人間がじっくり歌えるものを作ってくださったんだなと光栄でした」当時のアドバイスで印象的な言葉がある。それは「クミコさん、人は売れようと思わないと売れないよ」というもの。「私が売れることにあまり関心を持っていないのを松本さんは見抜いて、業を煮やしたんでしょうね。『よい神社があるから』と、ヒットのご祈願に連れていっていただいたりもしました」クミコは、26歳で夭逝した松本の実妹とほぼ同年齢。「作品に死の世界が投影されるのは妹さんへの思いなのでしょうね。それを私のアルバムにも込めているのかもしれません」それから17年、「いつかまたもう1枚やろう」と約束していた松本が全作詞を担当。つんく♂や村松崇継といった気鋭のソングライターたちが曲をつける企画が実現した。それがアルバム『デラシネ deracine』だ。「あえて松本さんが組んだことのないアーティストにばかり依頼した作品で、『まさかこの方が作ってくれるとは』という驚きがありました。松本隆さんの詞に、若い才能のある方の曲がついて私が表現できるなんてラッキーでした」たまに食事に行き、とりとめのない話をするが、会話はタメ口。「まったく大御所風ではなく偉ぶらない人なので、最初からそうなっちゃっているんです。いまさら敬語になると松本さんも困ると思うので(笑)。失礼ながら、このままなんでしょうね」「女性自身」2020年3月17日号 掲載
2020年03月19日松田聖子、斉藤由貴、近藤真彦、Kinki Kids……。時代を代表するアイドルたちの大ヒット曲をはじめ、数々の名曲を世に送り出した作詞家・松本隆(70)が今年、作詞家活動50周年を迎えた。その独特な世界を生み出す原動力は何か。“彼をよく知る人の証言”から迫ります。「『ポケットいっぱいの秘密』の歌詞をもらったとき、すごく面白い曲だなと思いました。ウィットがあるというか、女のコと男のコの姿が見えるようで、こういうことが自分の身に起こったら恥ずかしいなって。軽快でハッピーな曲だったので、印象深いですね」そう話すのは、自身も今年デビュー50周年を迎えたアグネス・チャン(64)。松本隆がはじめてアイドルに詞を提供したのがこの曲で、当時、松本は「魂を売った」といわれたこともあったそうだが、アグネスはこう語る。「松本先生からうかがったのですが、あるテレビ番組で、養護学校の子どもたちがみんなでこの曲を歌っているのを聴いたんですって。先生はすごく感動して『作ってよかった』と思ったそうです。すべての年代、子どもたちに好かれる歌だというのはすごいですよね。このエピソードが、私が後に関わることになったユニセフの活動と、どこかでつながっているような気もします」(アグネス・以下同)当時はちょうど時代の転換期。“結婚したら家に入る”という古い価値観から抜け出し、“結婚しても働き続ける”という選択をする女性も増えつつあるころだった。「私もアイドルだけを続けていてはいけないとカナダに留学したのですが、日本に戻ったときに先生が復帰作として『アゲイン』という曲を書いてくださった。留学から帰ってきた女性を受け止めてくれますか?という意味の歌詞で、私へのメッセージを込めて書いてくれたんですよね。詩を書いてくれるたびに、どうして私がいま考えていることがわかるの?という驚きとうれしさがあるんです」そんなアグネスは現在、三男が大学院を卒業し、ついに子育てが終了したという。「子育てが終わった私に、先生がどんな詞を書いてくれるのか。想像するだけで楽しみなので、書いてくれないかなあ。今年は私のデビュー50周年を記念してコンサートをやるので、先生にもぜひ来てほしいです。それにしても50年もの間、先生ほど充実した人生を送った人もいないですよね。先生だけが充実していたのではなく、先生の詞がたくさんの人の人生を支え、感動を与えて、充実させた。偉大なアーティストです」「女性自身」2020年3月17日号 掲載
2020年03月18日時代を代表するトップスターのヒット曲を次々と手がけ、旋風を巻き起こした希代の作詞家・松本隆(70)。松田聖子(57)も近藤真彦(55)も薬師丸ひろ子(55)も、彼らがデビューするや否や、その姿を見つけ、「詞を書きたい」と願った。そして「縁はないかな」と思っていても、その後、不思議とオファーが舞い込むのだという。今年、作詞家生活50周年を迎える松本がインタビューに応じてくれた。「聖子ちゃんはCMでデビュー曲を聴いて、声だけで『いいなぁ』と感じた。薬師丸ひろ子さんは映画『野生の証明』で、父親役の高倉健さんに『お父さ〜ん』って駆け寄るシーンを見てね。マッチはドラマ『3年B組金八先生』だったな」(松本・以下同)松本は松田聖子をトップアイドルに押し上げた立役者としても知られる。当時、CBS・ソニーレコードのディレクターだった若松宗雄氏から、アルバム収録曲へのオファーが舞い込んだときのことを「テストされたのかな?」と振り返る。最初に手がけた『白い貝のブローチ』が評価されて、6曲目のシングル『白いパラソル』から本格的に松田聖子を担当することに。自身の人脈でもある、松任谷由実(66)、細野晴臣(72)、大瀧詠一(享年65)ら一流アーティストを作曲家陣として迎えた功績も大きい。「聖子ちゃんとはピークのころはほぼ毎日会っていた。いろいろ話をしているからもう改めて取材する必要がなかった。できあがった詞を彼女が見て、『どうして私の思っていることがわかるの?』っていつも驚かれていたんです」“前髪を1ミリ切りすぎたら、恋人に会うのが怖い”“恋人が時計をちらりと見ると、泣きそうな気分になる”といった少女の繊細な気持ちを描いた歌が多く、この歌詞を男性がつづっていることに驚いたファンも多かった。「『こんな感じかな?』って、適当でした(笑)。会っているときに腕時計を露骨に見ると相手が傷つくかも、と思ったのは僕の経験。『おじさんが書いていてすみません』という気持ちでした」聖子の楽曲作りでタッグを組んだ松任谷由実とは、薬師丸ひろ子の傑作『Woman“Wの悲劇”より』も生み出した。「きれいな不倫の歌を書きたいなと思ったんだけど、『死んでしまった人を歌っているのでは?』と質問されることが多かった。表現って極めれば極めるほど霊界に近づいてしまうんだよね。薬師丸さんの作品では、学業で休んでいた後の復帰作となった『探偵物語』も僕はかなりいいと思う」そうして、もうひとり忘れてならないのは「この人は僕の母親にいちばん近い」と松本がいう斉藤由貴(53)。「僕を甘くみていて、強くてへこたれない人」と評する。「僕、へこたれない人が好きで。斉藤さんもそうだよね。才能があるからクドカン(宮藤官九郎・49)や是枝(裕和・57)監督などからも評価されている。そういう人は何があっても、いなくならない」そういえば、幾多のスキャンダルに負けず、芸能界に君臨し続ける松田聖子もそんな存在だ。そして、「僕の歌で大ヒットした人は、一生歌えるの」とさらりとつぶやく松本ーー。確かに、聖子、薬師丸、斉藤はそれぞれ進学、結婚、子育てといった転機を乗り越え、今も歌い続けている。「今の時代、一度休んでも、また歌いたくなったら出てくればいい。そうするとみんな受け入れるから。僕の歌は貯金のようなもので、彼女たちは預けていた財産をいつでも引き出すことができる。そんな感覚でもいいと思う」廃れることのない松本ソングの数々は、さらに50年後、100年たったときにはどうなっているだろうか。「それは時代が決めること。でも、きっと古くはならないと思う。僕はそれを見届けることができないけれど、希望的観測としては、古典になっていくんじゃないかな」「女性自身」2020年3月17日号 掲載
2020年03月18日時代を代表するアイドルたちの大ヒット曲をはじめ、数々の名曲を世に送り出した作詞家・松本隆(70)が今年、作詞家活動50周年を迎えた。「聖子ちゃんはCMでデビュー曲を聴いて、声だけで『いいなぁ』と感じた。薬師丸ひろ子さんは映画『野生の証明』で、父親役の高倉健さんに『お父さ〜ん』って駆け寄るシーンを見てね。マッチはドラマ『3年B組金八先生』だったな」(松本・以下同)松田聖子(57)も近藤真彦(55)も薬師丸ひろ子(55)も、彼らがデビューするや否や、その姿を見つけ、「詞を書きたい」と願った。そして「縁はないかな」と思っていても、その後、不思議とオファーが舞い込むのだという。そんな松本が「彼女のファン」と公言するのが、綾瀬はるか(34)。『マーガレット』という曲を贈り、レコーディングで初対面を果たしたときのこと。「あのときは僕が緊張してしまってあまり話せなかった。その後、対談したときも緊張していてからかわれるくらいで(笑)。彼女は天然のふりをしているけど、あれは演技で、本当はとても賢い人」もうひとり、松本がその才能にほれ込み、長年プロデュースしている歌姫がクミコ(65)。’00年以降、全作の歌詞を手がけた2枚のアルバムを制作している。「普通なら仕事を引き受けないタイミングだったけれど、彼女の実力にほれました。クミコさんみたいに45歳になって売れた人は、アイドルと違ってブームも何もないから一生歌えるんです」また、松本の歌謡界デビュー作といわれる名曲、『ポケットいっぱいの秘密』を提供したのはアグネス・チャン(64)。「彼女は跳ねるように歌うグルーブが特別で、詞を書きたいと思っていたらオファーがあった」そう当時を振り返る松本。この曲の歌詞には、実は、今話題の“縦読み”で、「あ・ぐ・ね・す」という言葉が隠れているというから、気になった方はぜひ確認してみてほしい。太田裕美の大ヒット曲『木綿のハンカチーフ』は、時代を超えて幾人ものシンガーにカバーされている名曲中の名曲。「太田さんに提供した曲はヒットしたもの以外にも、素晴らしい曲がいっぱい。特にアルバム『心が風邪をひいた日』は多くの人に聴いてほしい」「女性自身」2020年3月17日号 掲載
2020年03月17日公開中の『ラストレター』と同じく、岩井俊二監督が自身の小説を原作に、中国で描くもうひとつの“ラストレター”『チィファの手紙』が日本公開されることが決定した。亡くなった姉・チーナン宛に届いた同窓会の招待状。妹のチィファは、姉の死を知らせるために同窓会に参加するが、姉の同級生に姉本人と勘違いされた上に、初恋相手の先輩・チュアンと再会する。姉ではないことを言い出せぬまま姉のふりをして始めた文通が、あの頃の初恋の思い出を照らし出す――。本作は、岩井監督が初めて中国でメガホンをとった映画。2018年11月9日より中国で公開され、中国映画としてはその週の興行ランキング1位を獲得、北米、オーストラリアほか各国でも称賛を浴び、中国のアカデミー賞とされる「第55回金馬奨」で最優秀主演女優賞、助演女優賞、脚本賞の3部門にノミネートされた。岩井監督は、プロデュース・脚本・編集・音楽も兼ね、撮影監督は『ラストレター』でも撮影を務めた神戸千木、プロデューサーにはアジア映画業界の巨匠ピーター・チャンが務めた。岩井監督は「僕自身初めての中国映画であるということ。みずからの原案を複数の国で撮影するということ。なかなか挑戦的なプロジェクトで実現に相当な時間もかかりましたが、無事完走出来て、改めて振り返るとすべてが忘れ難い思い出です」と撮影をふり返っている。キャストには、姉を亡くしたチィファ役にアジア映画賞の女優賞を総なめにし、中国四大女優と称されるジョウ・シュン。初恋相手・チュアン役は、日中合作映画『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』にも出演したチン・ハオが演じている。『チィファの手紙』は秋、全国にて公開予定。(cinemacafe.net)■関連作品:ラストレター 2020年1月17日より全国東宝系にて公開ⓒ2020「ラストレター」製作委員会
2020年01月27日繊細で美しく、そしてユニーク。唯一無二の世界観で魅了する、稀代の映像作家・岩井俊二。黒木華主演作『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016年)から3年ぶりとなる最新作『ラストレター』が1月17日(金)から公開される。世界中に熱烈なファンを持つ岩井監督。その支持の度合いは、“好き”というよりも“崇拝”の方がしっくりくるかもしれない。岩井監督の手掛ける作品は、なぜそんなにも人の心を捉えるのだろうか?描くのは、境界線上にいる人物岩井作品では、しばしば“ノーマル”と“アブノーマル”の境界線上にいる人物が描かれる。普通とは相容れない自分に気づきながらも、完全にあちら側でたくましく生きる人種にもなりきれていない。だから大抵の場合に孤独だし、前にも後ろにも進めずにいる傍観者のような存在だ。アブノーマルは“ドロップアウト”とも言い換えが可能で、例えば『リップヴァンウィンクルの花嫁』で黒木華が演じた主人公の七海。結婚後すぐ家を追い出された七海は行き場を失い、綾野剛ふんする「なんでも屋」の安藤によってそれまで接点のなかった世界に足を踏み入れていく。この世の中に頼る者のいない心細さと、それでも“普通”の範疇にいられない異邦人感。孤独と葛藤の狭間で揺らぐ人物が、様々な経験をして少しずつ成長する姿を活写する岩井作品。そんな登場人物たちから目が離せないのは、彼らの姿に自分のカケラを見出すからかもしれない。ありえなさそうで、ありえる?リアルかつダークファンタジーに彩られた世界観また岩井作品が他の人間ドラマと一線を画すのは、そのユニークな世界観にある。現実にはありえなさそうでありえるかもしれない、リアルと虚構のボーダーラインを行き来する設定も多く、時としてダークファンタジー的なスリルと退廃に彩られる。例えば岩井監督の初劇場公開作品『undo』(1994年)は、“強迫性緊縛症”という神経症にかかった山口智子演じる妻が、何かを縛らないといられなくなることで夫婦の穏やかな生活が蝕まれていく異色の短編だ。また岩井作品の中でも人気の高い『スワロウテイル』(1996年)は、世界で一番強い“円”を求めてイェンタウンに集まってきた移民たちの物語。アートディレクター・種田陽平による無国籍な美術と、シンガーソングライター・Charaふんするグリコの官能的な歌が醸し出す独特の世界観はまさに唯一無二。そしてカナダを舞台に英語でつむいだ『ヴァンパイア』(2012年)は、高校教師サイモンが自殺希望の少女たちから血を手に入れようとする吸血鬼映画で、最後は純愛へとなだれこむというなんとも奇抜な恋愛ストーリー仕立てとなっている。こうして軽くあらすじに触れただけでも、監督がつむぐ物語が非凡かつバラエティに富んでいて、なおかつその世界に強烈な魅力があるのがお分かりいただけるだろう。ダークサイドを浄化するロマンティックかつピュアで清い“岩井美学”岩井作品についてロマンティックでクラシカルな印象を持つ人は多いかもしれない。確かに“クラシック音楽”を効果的に使用し、“手紙”をキーアイテムとするなど古典的要素も目立つ。加えて『花とアリス』(2004年)で描かれたように、子どもから大人への過渡期にいる少女たちは清らかで瑞々しく、彼女たちを照らす光や取り巻く自然の風景がうっとりするほど美しいなど、監督の映像には洗練された美しさというべき“岩井美学”が息づいている。その一方で、愛する者を亡くした“喪失感”や “絶望”そして“裏切り”など、人間の心の暗部に潜む負の感情や、格差やいじめなど本人だけではどうにもならない極限状況に伴う“人間の残酷さ”がモチーフとなることも。そのダークサイドの色調は作品に影を落とすが、終幕後に深い余韻を残しながらもある種の清々しさを感じさせてくれるのは、 “岩井美学”が醸し出すピュアな透明感のおかげなのではないだろうか。岩井作品のベスト盤最新作『ラストレター』岩井監督による最新作『ラストレター』は、最後の手紙に込められた“初恋の記憶”をつづった珠玉のラブストーリーだ。姉・美咲を亡くした主人公・裕里(松たか子)と、その初恋の相手・鏡史郎(福山雅治)、そして美咲の娘・鮎美(広瀬すず)の三者の間で手紙が交差することで、淡い初恋の思い出が鮮やかに甦る。「手紙を書く」という所作に絵画的な美しさを感じ、「手紙を読む」佇まいが好きだという岩井監督。『ラストレター』製作へのきっかけとなったのは、2017年に発表された監督初となる韓国ショートフィルム『チャンオクの手紙』。手紙が重要な役割を果たすこの物語をさらに発展させることを思いついた監督は、同じく手紙が鍵となる『Love Letter』(1995年)を意識しつつ、まず原作本となった小説を書き上げたのだという。また本作では『Love Letter』では踏み込まなかった、人の心の闇にまで触れている。鏡史郎は売れない小説家で、美咲の死の真相をたどる過程で、彼は自分自身を顧みなければならない状況に追い込まれる。その闇は観る者の胸にも鋭く刺さるが、だからこそ鏡史郎の再生への歩みがしみじみと心に染みるのだ。今回の撮影は、監督の故郷である仙台でほぼ行われている。これは物語の底辺に監督のヒストリー的要素が息づいているため、必然的に仙台が舞台となったのだという。映画が映す学生時代は可能性に満ち、清らかな水辺の風景や緑映える盛夏の風景と相まってキラキラと輝いて見える。青春への強い憧憬を感じさせるその美しい映像の数々に目を奪われることだろう。また現代パートに登場する姉の娘・鮎美と妹の娘・颯香(森七菜)の瑞々しさも尊いばかり。少女たちが夏休みを経て成長していく姿にも注目して欲しい。これまで岩井作品が描いてきた様々なモチーフが盛り込まれた最新作『ラストレター』。本作をプロデュースした川村元気氏によると、目指したのは岩井作品のベスト盤なのだとか。今回、松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、神木隆之介、福山雅治ら超豪華キャストも集結。さらなる進化を遂げた岩井ワールドがつむぐ、最高にロマンティックな恋物語に酔いしれよう。《text:足立美由紀》(text:Miyuki Adachi)■関連作品:ラストレター 2020年1月17日より全国東宝系にて公開ⓒ2020「ラストレター」製作委員会
2020年01月17日三浦文彰、26歳。難関のハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールに史上最年少の16歳で優勝し、注目を集めて10年。3年前の大河ドラマ『真田丸』のテーマ音楽演奏ではお茶の間の人気もがっちりと掴んだ。2020年2~3月の東芝グランドコンサートで、サントゥ=マティアス・ロウヴァリ指揮エーテボリ交響楽団と、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を弾く。【チケット情報はこちら】「どの協奏曲を弾きたいか聞かれたら毎回必ずこの曲を挙げているのですが、なかなか採用されません。今回はそれが通って、ツアーで5回も弾くことができるのはすごくうれしいですね。演奏するたびに毎回見え方が違って、曲の深さがわかってくる。僕にとってはとても大事な曲です」1955年に初演された作品。三浦が師事したパヴェル・ヴェルニコフは、初演時のヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフの門下なので、いわば直伝で多くのことを学んだ。「一番は音のイメージです。強いだけじゃない、強くて重たいんだ、とか。それを言葉だけではなく、弾いて教えてくれました。あとは、ロシア文学を読めと。とくにこの曲の場合、ただ無意識に弾いていると運動会っぽくなっちゃうところがあるので。勘違いされやすいところかなと思うんですけど、ショスタコーヴィチは、人の声、叫びというか、金属的なカンカンした音ではない、木質の響きが必要です」すでに2019年10月に、来日公演と同じ顔合わせで、オーケストラの本拠エーテボリで共演してきた。「とてもいいオーケストラ。みんな本当によく聴いていて、ちゃんとアンサンブルができる。それに、彼らの感じているショスタコーヴィチというのがはっきりとあって、楽章ごとのキャラクターが際立っています。僕が何か仕掛けても、はっきりリアクションがあるので、やりがいがありました。(旧ソ連出身の)ネーメ・ヤルヴィが20年以上首席指揮者だったので、ロシア音楽の伝統も持っているのでしょうね。指揮者のサントゥも、その彼らがのびのび弾けるように振っている。すごく自然な音楽づくりだし、一緒にやっていて面白かったです。気が合うなと思いました。イージー・ゴーイングな性格で、打ち合わせでペちゃくちゃしゃべるのではなく、まずオケとやってみようよという感じ。僕もそのほうが好きなので」首席指揮者ロウヴァリは34歳。世代も近く、酒席もともにしてすっかり意気投合した様子。「日本でもどこか連れて行けと言われているので、考えなきゃ(笑)。メインのシベリウスの交響曲第2番もきっとすごくいいと思います。彼はフィンランド出身で、もちろんシベリウスを愛している男ですし、彼らはちょうどシベリウスの全曲録音を始めたところですから。プログラム全体が、大編成だし、聴きごたえ十分のコンサートだと思います」取材・文宮本明
2020年01月14日現代の音楽シーンを象徴する“作曲家・ピアニスト” 加古隆と彼が信頼するメンバーによって構成される“加古クァルテット”のツアーがいよいよ大団円を迎える(12月23日:大阪市中央公会堂/12月29日:紀尾井ホール)。「クリスマス・スペシャルコンサート」と題された大阪公演では、クリスマスに因んで加古が作曲した『アヴェ・マリア』が披露されるほか、2003年の名作『白い巨塔』が久々に演奏されるなど、クリスマス気分を盛り上げつつ、『パリは燃えているか』など、お約束の名曲が楽しめる素敵な夕べになりそうだ。一方、年も押し詰まった29日の東京、紀尾井ホールコンサートは、今回2019年ツアーのグランドフィナーレ。こちらは、何と言っても『永遠と心理のテーマ』&『エヴェレストの風となれ』の2曲の初演が注目される。稀代のメロディメーカー加古隆の生み出す新たな名旋律や如何に。もちろんこちらの公演でも、お約束の名作がふんだんに聞けることは言うまでもない。2019年のフィナーレを、素敵なアンサンブルとともに過ごす喜びを味わいたい。
2019年12月16日ジャーナリストの池上彰氏が6日、都内のホテルで行われた「第67回菊池寛賞」の贈呈式に出席し、高校時代にラグビー部に所属していたことを明かした。今年は、ラグビーワールドカップで活躍した日本代表チームが受賞。選考顧問を務める池上氏は「こんなにも日本にラグビーファンがいたのかとビックリする状態になりまして、『実は昔やってたんだ』とカミングアウトする人たちがにわかに出てきましたね」と、社会現象の影響を振り返った。そして、「実は私も、高校時代にラグビー部にちょっとおりまして。補欠の上にタックルの練習をしてるうちに腰を痛めてしまって、結局ダメになったってことをずっと悲しい歴史として封印してきたんですが、今回の活躍を見て『実は私も…』とカミングアウトして、みんなからビックリされるということがありました」と、自身もその1人だったことを明かした。また、「テレビを見ていて『これはノックオンと言って…』とか、思わず解説したいという欲求を満たされることができて、大変楽しかったなと思っております」とご満悦の様子。さらに、「なんと言っても日本代表チームというのは多様性ですよね。日本国籍を持ってなくても日本チームなんだよということで一丸になれば、これだけのことができるんだと、これからの日本をあり方というのを本当に体現しているのではないかと思いました。私たちを勇気づけてくれましたし、日本のこれからのゆく道というのを示してくださったような気がします」と賛辞を送った。「第67回菊池寛賞」には、ラグビー日本代表のほか、NHK Eテレの子供向け番組『おかあさんといっしょ』、作家の浅田次郎氏、バレリーナの吉田都氏、『[証言録]海軍反省会』を結実させた海軍史研究家の戸高一成とPHP研究所が選ばれた。
2019年12月07日ポーター(PORTER)とアーティスト・村上隆のコラボレーションバッグから、新色のブラックが12月6日より順次発売される。© 2019 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.1983年に発表されて以来、ポーターの代名詞となっている「TANKER」シリーズをベースに、村上隆の代表的なアート“お花“を随所にあしらったコラボレーションバッグ。「セージグリーン」に続き、待望の「ブラック」が登場する。全型共通して“お花”のぬいぐるみを装着できる仕様や、外装の一部パーツには刺繍加工、内装生地と付属の巾着にも“お花”をプリントした特別な仕上がり。「TANKER」のディテールを踏襲しつつ、金具類は上品な光沢を出すため一つ一つを吊るしながら丁寧にメッキ加工を施したパーツを採用。ファスナーは入念に磨きをかけたYKKの高級ファスナー“エクセラ”を使用したコラボレーションアイテムならではの違いを演出している。© 2019 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.「リュックサック」(12万円)、「2WAYヘルメットバッグ」(11万円)、「ウエストバッグ」(8万円)がラインアップ。すべてに「お花」をプリントしたポーター製の巾着ポーチが付属する。コラボレーションバッグは数量限定につき、在庫がなくなり次第終了。取り扱いは、12月6日より、PORTER(OMOTESANDO・MARUNOUCHI・OSAKA)、PORTER EXCHANGE、PORTER STAND(品川駅店・東京駅店・京都店)、吉田カバンオフィシャルオンラインストア()にて。販売方法の詳細はオフィシャルサイト()をチェック。またTonari no Zingaroでは12月7日より発売となる。
2019年12月05日岩井俊二監督×主演・松たか子がタッグを組んだ映画『ラストレター』の公開を記念して、過去作を放送・配信する「岩井俊二映画祭」が開催決定。岩井監督編集の特別映像も到着した。今回の映画祭は、岩井俊二監督の過去作(監督・脚本・プロデュース・出演作品)を、日本映画専門チャンネル、WOWOWシネマ、KDDI(auスマートパスプレミアム・ビデオパス)、ひかりTV、日本映画NET、GYAO!にて順次オンエアするというもの。『ラストレター』でもその世界観が感じられるという中山美穂と豊川悦司が出演する『Love Letter』(’95)をはじめ、松さん初主演映画となった『四月物語』(’98)、岩井監督が原作から脚本・監督・音楽・撮影・編集・プロデュースと1人6役を務め、全編英語で綴られた『ヴァンパイア』(’11)。北川悦吏子が『ハルフウェイ』以来となる岩井監督とのタッグを組んだ、中山美穂×向井理主演『新しい靴を買わなくちゃ』(’12)。市原隼人、蒼井優、大沢たかお、高橋一生らが出演するカルト的人気を誇る青春映画『リリイ・シュシュのすべて』(’01)。そして黒木華主演、綾野剛、Coccoらも出演する『リップヴァンウィンクルの花嫁』(’16)などがラインアップされている。さらに、本企画のために岩井監督自身が過去作品で構成したマッシュアップ映像を制作。今回このショートバージョンの映像が公開された。「岩井俊二映画祭」は日本映画専門チャンネル、WOWOW、KDDI(auスマートパスプレミアム・ビデオパス)、ひかりTV、日本映画NET、GYAO!にて開催。『ラストレター』は2020年1月17日(金)より全国東宝系にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:ラストレター 2020年1月17日より全国東宝系にて公開ⓒ2020「ラストレター」製作委員会
2019年12月03日ペロタン東京で初開催となる村上隆の個展「スーパーフラットドラえもん」が、2019年11月19日(火)から2020年1月25日(土)まで開催される。「スーパーフラット」は、2000年から2001年に日本とアメリカで開催された村上隆キュレーションによる展覧会。後にシリーズ化され、世界各都市で開催されてきた。今回開催される「スーパーフラットドラえもん」では、藤子・F・不二雄の代表作品「ドラえもん」が美術史に落とし込まれた絵画作品14点を、日本国内で初めて展示する。村上の創作の根底にある江戸時代の奇想系画家たちの絵画や、マンガ・アニメといった二次元。概念が発展した先にあるサブカルチャーとハイカルチャー、ファインアートと広告の表現。村上は、そういった分類分けは本質的に意味がなく、等価であるという表現の平等性を訴えかけている。そういった村上の“フラット”な姿勢は、2017年に開催された「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」の作品に表れている。メインビジュアルにもなった作品は、抽象表現主義だけではなく、異時同図法やヌード表現など、美術史的な仕込みがたくさん存在する。このアートワークがきっかけとなり、2018年のユニクロとのコラボレーションや本展に繋がっていくこととなる。村上の色鮮やかな作品から、”フラット”な表現を感じてみて。【詳細】スーパーフラットドラえもん会期:2019年11月19日(火)~2020年1月25日(土)場所:ペロタン東京住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階開館時間:11:00~19:00休館日:日、月、祝日TEL:03-6721-0687
2019年11月21日新海誠監督の『天気の子』ヒロインの声優に抜擢され、今後、最も活躍が期待されるネクストブレイク女優・森七菜が、自身も出演する岩井俊二監督最新作『ラストレター』の主題歌「カエルノウタ」で歌手としてデビューすることが決定。その歌声を聴かせる特報も到着した。本作に、岸辺野颯香/遠野裕里(回想)役の二役で出演している森七菜。2016年に大分県でスカウトされ、今年7月に公開された映画『天気の子』のヒロイン・天野陽菜役に抜擢され注目を浴び、現在も『地獄少女』『最初の晩餐』が公開中。来春スタートのNHK連続テレビ小説「エール」にも出演が決定している最注目女優のひとりだ。本作の主題歌「カエルノウタ」は、作詞を岩井俊二、作曲を劇中音楽を務める小林武史が担当。森さんが主題歌を歌うことになった経緯について、企画・プロデュース担当の川村元気氏は下記のように語っている。「『スワロウテイル』におけるYEN TOWN BAND、『リリイ・シュシュのすべて』から生まれたリリイ・シュシュ、岩井俊二監督作品から、いつも素晴らしい音楽が生まれてきた。では『ラストレター』からはどんな音楽が生まれるのか。岩井俊二、小林武史と話し合いを続けた。たくさんのアーティストが主題歌の候補としてあがるなか、答えが目の前にあることに気づいた。『試しに』と歌ってもらった森七菜の歌声には、少年と少女の間をたゆたうような瑞々しさと、誰にも真似できない力強さがあった。その声に惹きつけられて、岩井俊二がおとぎ話のような歌詞を書き、小林武史が映画の世界観を投影したメロディをつけた。エンドロールにこの主題歌が流れたときに、ついに”岩井俊二監督作品”が完成したのだと感じた」。さらに、森さん本人は、「こんなに素敵な、私が大好きな作品で、さらに岩井俊二監督、小林武史さんに作っていただいた唄を歌うことが、非常に重大な事だと感じました。歌詞、メロディともに一瞬一瞬聴き逃せなく、全部余すことなく歌わないと、と心掛けました」とコメント。「歌うことは楽しいですが、まだまだ未熟なので、ひとつの映画を作るような、お芝居をするような感覚で歌いました」と女優らしさも覗かせる。また、小林氏は「今回、映画のエンドロールの使いどころも、透明感のある森さんの声にピッタリなので、トータルとしてうまく色々な要素がつながることになる」と明かし、「レコーディングを一回一回重ねるごとに成長してくるんです。最初から表現しようとする気持ちがあり、やっぱり女優さんなんだなと思いました」とコメント。岩井監督も「やはり根に女優というものがあるので、『上手く歌おう』というよりも、『表現しよう』というアプローチが、撮影現場で役者としてやっていたアプローチに共通するものがあるんだな」と語り、「すごく丁寧に、文学的に表現していて、とても感心しました」と絶賛を送っている。森さんにとっては、これが歌手デビュー作品。なお、シングル「カエルノウタ」のカップリングには小泉今日子の「あなたに会えてよかった」、荒井由実の「返事はいらない」のカバーが収録される。『ラストレター』は2020年1月17日(金)より全国にて公開。主題歌「カエルノウタ」および『ラストレター』オリジナルサウンドトラックは2020年1月15日(水)よりリリース。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ラストレター 2020年1月17日より全国東宝系にて公開ⓒ2020「ラストレター」製作委員会
2019年11月21日このたび「ハライチ」の岩井勇気さんの初めての連載エッセイがまとまり、『僕の人生には事件が起きない』という一冊に。「ネタとか書いてるからいけそうだなって雰囲気だけでオファーしてみたけど違ったな、とか編集さんに思われてるんじゃないですか」インタビューののっけから期待を裏切らない毒気。さすが岩井さん。だが、お笑いで独特の言語センスを披露してきた岩井さんの書いたモノなら読んでみたい、と思っていた人は多いはず。ありふれた人生も、角度を変えれば面白さが見えてくる。中身は主に身辺雑記。初めてのひとり暮らしで選んだメゾネットタイプのアパート回りのこと、コーヒーマシン購入までのエピソード、歯医者の予約を入れては忘れ続けた失敗談……。事件と呼ぶほどの出来事ではないのに、岩井さんのレンズで見ると、ちょっと風変わりな日常に早変わり。思わずニヤリとしてしまう。たとえば、組み立て式の棚についての回。自分で組み立てるのがちょっと面倒くさいな、までは誰もが思う。だが、岩井さんの筆にかかると、面倒さ加減は倍々に膨れあがり、そのボヤき文がまるで面白いラジオトークのように思えてくる。「だってみんな、何か組み立てたり配線つなげたりしていると、『ああっ!もう!』ってなるでしょう?そういうあるあるを書いたものは多いですね。当たり前すぎず、あるあるになってなくてぽかんとするようなものでもなく、『見落としてたけどあるね、それ』みたいなのを見つけるのが好きだし、得意です」ハライチのネタを見るかのような文章芸も披露している。趣味の麻雀で“上がったら死ぬ”と言われているほどのめずらしい手で勝ってしまったときのこと。岩井さんは帰り道から死ぬかもしれないという妄想に取り憑かれるのだが、〈窒息死〉はともかく、〈メゾネ死〉〈かぐわ死〉〈スースー死〉って何だ……。あんかけラーメンの汁を水筒に入れて外出したエピソードにも、意表を突かれる。交差点で水筒から飲んでいるのがお茶ではなくあんかけラーメンの汁という背徳感を綴り、「人の思い込みの裏をかくのは、ネタでも好きですね。ダイエットが続かないとかいう人に、『これ、すっごく体軽くなるし、すっとやせるし、オレの周りのミュージシャンとかみんなやってるんです』とヤバそうに引っ張ってきて、『玄米なんですけど』と落とすとか。そういうネタもわりとやります」融通の利かないファミレスのシステムや通販で届く段ボールとの格闘など、日常の不条理への抵抗も、岩井さん十八番のモチーフだ。「僕、あれこれその場で言いますけど、ケンカしているつもりはないんです。もやもやしたままだと疲れるから、解決しようと思っているだけで。感情として怒ってはいない。だから感情のままにしゃべるのではなく、理屈を組み立てて訴えようとする。ただ正義がこちらにあると思うと、どんなに強く出てもいいと思っているところはあるので、そこはまあ……(苦笑)」だが、それが正論だから、読んでいても胸がすく。「エッセイってフランス語のエセーからきていて、随想という意味らしいですね。明確なオチがなくてだらだらしてて。オレ、フランスが合っているのかも。フランス映画も“そして人生は続く”みたいなエンディングが多いし、この本のタイトルもフランス映画みたいだし、フランスでも売ってほしいなあ」ボケてるのかマジメなのか、とにかく楽しい岩井ワールド。ファンもそうでない人も、本書で触れてみて。『僕の人生には事件が起きない』各エッセイに添えられている挿絵は岩井さん作。「“上手い人がさらっと描いた風”に、めちゃくちゃ力入れて描きました」。新潮社1200円いわい・ゆうき1986年、埼玉県生まれ。幼稚園からの幼なじみ・澤部佑と2005年にお笑いコンビ「ハライチ」を結成。ボケとネタ作りを担当。好きなものはアニメと猫。『自慢したい人がいます~拝啓 ひねくれ3様~』(テレビ東京系)、『ハライチのターン!』(TBSラジオ)などで活躍。※『anan』2019年11月6日号より。写真・土佐麻理子(岩井さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2019年11月05日松たか子主演、川村元気が企画・プロデュースを担い、岩井俊二が監督を務める映画『ラストレター』。この度、『Love Letter』(‘95)で繊細な演技力と圧倒的な存在感で人々を魅了した中山美穂と豊川悦司が、再び2人揃って岩井監督作品に出演することが明らかになった。これまで数々の名作を世に送り出してきた岩井監督。本作は、20年以上ものキャリアの中で巧みにその時代を切り取りながら様々な愛の形を表現し、いずれも熱狂的なファンを生み出してきた岩井監督が、初めて出身地である宮城を舞台に、手紙の行き違いをきっかけに始まったふたつの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描くオリジナルストーリー。主演の松さんのほかにも、広瀬すず、福山雅治、神木隆之介と豪華俳優陣が集結した本作だが、今回新キャストとして、各映画賞を総なめにし、世界でも絶賛された『Love Letter』に出演した中山さんと豊川さんの参加が決定。豊川さんが松さん演じる裕里の姉・未咲の元恋人・阿藤を、阿藤の同居人・サカエを中山さんが演じ、未咲の過去に絡む、本作において非常に重要なパートを担う。中山さんは『Love Letter』以降、岩井俊二プロデュース作品『新しい靴を買わなくちゃ』(’12)でタッグを組んで以来となるが、岩井作品へ出演するのは、中山さん、豊川さん共に24年ぶり、2人の共演も映画作品では24年ぶりとなる。「お元気ですか?」の名ゼリフがブームになった『Love Letter』公開から約四半世紀。今回の出演は、岩井監督からのオファーで実現。2人共に、岩井監督から声をかけてもらったことに喜び、二つ返事で出演を快諾したという。中山さんは「いつかまた豊川さんとの共演はもちろんのこと、岩井監督作品に出演できたらいいなと思っていたので、今回声をかけていただき、とても嬉しかったです」と今回の参加を喜び、「豊川さんとは、今回共演シーンは少ないのですが、それでも今までの二人の歴史があるので、短い共演シーンの中でも積み重ねてきた何かがスクリーンには映っているのではないかと思います」とコメント。また、豊川さんも「中山さんとまたこうして二人で出演できてとても嬉しい」と喜び、「中山さんは、冷凍保存されてきたみたいで(笑)、全然変わっていないです。もう少しご一緒にお芝居をしたかったです。それは、また次回に。20年後といわず来年くらいにでもご一緒したいですね」と中山さんとの再共演を願った。そして岩井監督は、2人との撮影をふり返り「撮影は夏の盛りの仙台でしたが、なにかそこが冬の小樽で外は雪が降ってるような気分になりました。『ラストレター』と『ラブレター』が地続きの同じ世界の物語に一瞬思えました」と語っている。ほかにも、裕里の父母役として鈴木慶一、木内みどりが出演する。『ラストレター』は2020年1月17日(金)より全国東宝系にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:ラストレター 2020年1月17日より全国東宝系にて公開ⓒ2020「ラストレター」製作委員会
2019年10月30日――朝5時ごろ、目を覚ました恵俊彰(54)はテレビをつけると、チャンネルをニュース番組にあわせ、一般紙2紙とスポーツ紙1紙に目を通す。気になるニュースがあったら、いつの間にか起きていた妻(52)に声をかける。「ねぇ、この事件ってどう思う」4人の子どもの通学の準備に忙しい妻は、しばし手を止めて、夫の質問に答えてくれる。8時過ぎにはTBSに入り、10時25分から始まる『ひるおび!』の放送に備える。もう、こんな生活を10年続けてきた。「これほど長く情報番組のMCを任せてもらえたのも、妻のおかげでしょうね」「ひるおび!」放送後の打ち合わせを終えて、本誌のインタビューに応じた恵は、相好を崩してそう断言する。いまでこそ、午前の部(11時〜11時55分)と午後の部(11時55分〜13時55分)を合わせた平均視聴率で7年半連続トップを誇る『ひるおび!』。しかし、番組開始当初は波乱含みだった――。「当時、日本のお昼の番組といえば『笑っていいとも!』(フジテレビ系)でしたから、裏番組を引き受けるというのは、玉砕覚悟の“赤紙”を受け取る気持ちでした」迷いはあったが、芸能界の先輩たちが背中を押してくれた。「関口宏さんからは『なんか面白そうだと思うことは、やったほうがいい』、島田紳助さんからは『(低迷していた)横浜ベイスターズの監督をやるようなもん。だけど、監督をやっているということで目立つのは、得やないか』と言ってくれました(笑)」第1回の放送では、安倍晋三官房副長官(当時)を大物ゲストとして引っ張り出したが、視聴率はわずか3%。その後も2〜3%と低迷が続いた。大きな転機は’11年の東日本大震災の報道だ。ドラマやバラエティ番組は自粛されたが、報道を扱う『ひるおび!』は通常どおり続いた。「未曾有の大惨事に自分がどう向き合って生放送をやればいいのか迷いがあったんです。それで妻に『どんな顔してテレビに出ればいいんだろう?』と話したら、『お願いだから、日本中の不幸を背負ったみたいな顔をしてテレビに出るのはやめてね』って言ってくれたんです。それで“あっ”と気づいた。特別な感情ではなく、今、起きていることを、とにかくちゃんと伝えることが仕事なんだと」恵の真摯な姿に、視聴者が信頼を寄せ、徐々に視聴率が上がっていった。これまでも妻の一言に助けられることがあったという。「僕はサラリーマン経験がなく、芸能界しか知らない偏った人間です。だから、世の中の人が何に興味があるのか、どう思うのか、わからなくなるときがある。たとえば、誰かと誰かが対立しているようなニュースがありますよね。そのときに、奥さんに『どちらのほうが悪い人だと思う?』って聞くようにしている。妻は、僕にとって“世の中を映す鏡”なんです」
2019年10月16日お笑いコンビ・ハライチの澤部佑と岩井勇気が、10日深夜に放送されたラジオ番組『ハライチのターン!』(TBSラジオ/毎週木曜24:00~25:00)で、岩井のエッセイ集『僕の人生には事件が起きない』が『王様のブランチ』(TBS系/毎週土曜9:30~)でランキング1位になったことについて言及した。同番組のブックコーナー・文芸書ランキングで1位になった岩井のエッセイ集。この放送を見ていたという岩井だが、自分の著書が1位になると知らなかったそうで「文芸書ランキングに入っていると思わないから、まず。『あ、俺の本じゃん!』ってなった(笑)」と振り返った。また、相方の澤部佑もこの放送をたまたま見ており、「1位が岩井勇気って出てきたから、笑っちゃったよ、本当に」とも。岩井は「スタジオのニッチェさんが『岩井!?』って(笑)」と思い返し、一方の澤部も「ニッチェ姉さん仲良いでしょ? 喜んでくれてたね」と振り返っていた。さらに、澤部が「これから特集が組まれることもあるの? そしたら“ブラン娘”が来るじゃん。『岩井さん、読みました、いや~面白いです~』って」と言うと、岩井は「そしたら俺、“先生”として対応するから」と話していた。
2019年10月15日