松本幸四郎が主演するミュージカル『ラ・マンチャの男』の製作発表が4月2日、都内にて行われた。この作品は幸四郎が26歳の時から43年にわたって演じ続けている、まさに彼のライフワークと呼べるもの。共演は娘の松たか子、松本紀保ら。『ラ・マンチャの男』チケット情報はこちら『ラ・マンチャの男』はセルバンテスによる有名な小説『ドン・キホーテ』をもとにした作品。この小説は自らが伝説の騎士だという妄想に陥った男の遍歴の旅を描くものだが、ミュージカルではこれに作者・セルバンテスが投獄された史実を絡め多重構造で綴っていく。1965年にブロードウェイで初演された作品で、日本では1969年の初演以降、松本幸四郎(初演当時は市川染五郎)が主演を務めており、1970年には幸四郎はブロードウェイで海外の役者の中で約2か月にわたって主役のドン・キホーテを演じるなど、数々の伝説を残している。さらに今回、8月19日の幸四郎の古希の誕生日には上演回数1200回を達成する。そのことを幸四郎は「ありがたいこと」と話し、「初演の頃は日本では1年に2・3本ミュージカルの上演があるくらいだった。今は毎月、どこかの劇場でミュージカルをやっている」としみじみ。さらに「この作品のテーマは、人間にとって大事なことはあるべき姿のために戦うことだ、というもの。昨今の日本は厳しい状況だが、毎日命がけで努力している方々、あるべき姿のために戦っている皆様に今回の『ラ・マンチャ』を捧げたい。ひとりでも多くの方に安らぎと勇気と希望と夢を届けたい」と熱っぽく語った。またドン・キホーテが姫と慕うアルドンサ役は、次女・松たか子が扮する。この役を演じてちょうど10年目になる松は「毎回課題があり、向き合うことの多い役ですが、今までで一番の緊張感を持って演じたい」とコメント。また久しぶりにアントニア役として戻ってくる長女の松本紀保も「夢を持って生きるということの意味を問いかけてくれる作品」とこのミュージカルの魅力を語った。また、会見後半には、俳優・川原和久との交際が報道された紀保に関する質問も。幸四郎は「紀保は、私が(『ラ・マンチャの男』で)ブロードウェイに行った翌年に生まれたので、ドン・キホーテから名付けたんです。その紀保がいい“相棒”を見つけまして……」と嬉しそうに話す一幕もあった。公演は5月5日(土・祝)から28日(月)まで福岡・博多座、8月3日(金)から25日(土)に東京・帝国劇場にて。チケットは福岡公演が発売中、東京公演が5月26日(土)に一般発売開始。
2012年04月03日新橋演舞場の『三月大歌舞伎』夜の部で上演される『佐倉義民伝』で、松本幸四郎が主人公の木内宗吾を4年ぶりに演じる。3月2日(金)の初日に先立ち、3月1日、公演期間中に劇場ロビーで行われる宗吾霊堂の出開帳(でかいちょう)法要と幸四郎の囲み取材が行われた。『三月大歌舞伎』チケット情報木内宗吾は、暴政に苦しむ庶民のために、自らの命を懸けて四代将軍徳川家綱に直訴し、今なお語り継がれる実在の人物。また、今年は木内宗吾が宗吾霊として祀られてから360年という節目の年にあたる。本作では、幸四郎に加え、息子の市川染五郎が徳川家綱、孫の松本金太郎が宗吾長男彦七を演じる。高麗屋3代の出演も話題だ。会見で幸四郎は「木内宗吾は、村民たちのために命をかけて働いた素晴らしい方。心から皆のために尽くした方ですので、心して演じないと嘘になってしまう」と尊敬の念を込めて語り、「こういう役がやれるような役者になるために、今まで俳優の道を歩んできたような気がします。『英雄のいない世の中は悲惨だけれども、英雄を欲する世の中はもっと悲惨だ』とよく言われます。宗吾様は人々のために自分の命を捨てた。英雄というと偉そうに聞こえるかもしれませんが、きっとチャーミングで素敵な方だったいたのでしょう。人間として心が和む素敵なことだと思います」と語った。また、今年で70歳を迎える幸四郎。息子の染五郎、孫の金太郎と3代で同じ舞台に立つ事について「奇跡に近い」と話し、「これはお金では買えることではないし、やろうと思ってできることでもありません。自分がこれまでやってきたことが良かったかな、と思う瞬間です。我々の仕事はそう甘くはなくて、なかなかうまくはいきません。でも間違い、つまずき、失敗があり、つらくても苦しくても悲しくても、それが人生だと思っています」としみじみと語っていた。公演は同劇場にて3月26日(月)まで開催。チケットは発売中。
2012年03月02日大阪松竹座「二月花形歌舞伎」の製作発表が1月17日都内で行われ、出演者の市川染五郎、片岡愛之助、中村獅童が出席した。「二月花形歌舞伎」の公演情報次代の歌舞伎を担う人気花形役者による、古典の名作から新作歌舞伎まで、多彩な演目を揃える今回の舞台。3人は口々に本公演にかける意気込みを熱く語った。染五郎「今回の公演は四演目ございますが、全てに愛之助さん、獅童さんと共に出演いたします。昼の部はほぼ新作、夜の部は古典の名作、上演が途絶えていた作品と、かなりアグレッシブな作品の気がいたします。アグレッシブなエネルギーに乗っかりまして、それをパワーアップさせて、舞台上で暴れることが出来ればと思っています。『大當り伏見の富くじ』は、十年以上前からこの作品がやりたいと思っておりまして、それがやっと実現することにすごく興奮を覚えております。“歌舞伎でやったことのないことをやる、やったことのあるものはあえてやらない”ということを目標に徹底した喜劇を作りたいと思っています。2月は話題の舞台が多いですけれども、どこよりも目立つ公演を目指したいと思います」愛之助「一つ目の『慶安の狼』では野中小弥太というお役ですけども、獅童さん演じる丸橋忠弥とその時代を生き抜いていく二人の青春群像劇で、熱く演じたいと思います。『富くじ』では、傳七という侠客を、かっこよく演じたいと思います。そして夜の部の『すし屋』の権太は浅草で勤めさせて頂いて二度目でございますが、二度目というのは怖いものでございまして、うちの伯父の仁左衛門に手取り足取り教わりました。初心に返って勤めたいと思います。そして『研辰』は、初役の九市郎でございます。二月は染五郎さんが仰ったように、話題の舞台がたくさん開いておりますので負けないように、また外の寒さにも負けないように熱い舞台を繰り広げたいと思いますので、どうぞ千秋楽までよろしくお願いいたします」獅童「昼の部はまず、新国劇の作品であった丸橋忠弥を勤めさせて頂きます。『富くじ』は黒住平馬という役を勤めますが、どうやら禿げてる人で、カツラをかぶっている人という…途中でかつらがとれたり、とんでもない芝居になりそうです(笑)。大阪ですので、笑いにも厳しいですし、関西の芝居ですので、気をひきしめて劇場の皆様に楽しんでいただける芝居になれば、と思っています。『すし屋』では梶原平三をやらせて頂きますが、これは三度目でございます。『研辰』も皆で色々と相談しながら、野田版とは違った魅力の作品になればなと思います。こういった普段やらない演目ですとか、歴史上に残るといった公演で大役を勤めさせて頂くのは嬉しいことで、ゼロから作り上げていくということは大変な反面、喜びもありますし、わくわくする気持ちもあります。エネルギーと熱意と情熱とで、良い芝居を作りたいと思います」同世代の3人とあって、終始笑顔の絶えない会見。カメラマンの求めに応じ、照れながらもポーズを決め互いにツッコみあう様子に、3人の息の合った姿が垣間見えた。公演は2月2日(木)から26日(日)まで。
2012年01月20日染五郎38歳、松緑36歳、そして海老蔵34歳。歌舞伎の家に生まれ、伝統を受け継いで互いに切磋琢磨してきた3人が、12月の東京・日生劇場で強力タッグを組んだ姿を見せている。「七世松本幸四郎襲名百年」と銘打たれた本公演は、明治・大正・昭和と偉大な足跡を遺した名優の記念興行。そのひ孫に当たる3人の顔合わせの妙はもちろん、若手中心の勢いに溢れた舞台からは、歌舞伎の道を黙々と進む彼らの、曽祖父への決意表明のようなものが改めて伝わってくる。12月7日に幕を開けた場内は、30代ならではの3人がぶつかり合う様子に早くも熱気で包まれていた。『日生劇場十二月歌舞伎公演』チケット情報演目は昼が『碁盤忠信』と『茨木』、夜が『錣引』に『口上』を挟んで『勧進帳』。『碁盤忠信』は七世が明治44年に襲名披露で上演して以来、なんと100年ぶりの復活。こんなところにも伝統と進取の融合を図る染五郎らの想いが込められているようだ。伝説に基づいた本作は、源義経の忠臣・佐藤忠信(染五郎)が舅の小柴入道浄雲(松本錦吾)の裏切りに遭い、手近にあった碁盤を振りかざして応戦する場面が最大の見どころ。桜が咲き乱れる中、大鉄棒を持った横川覚範(海老蔵)が登場し、忠信と荒事の立回りを繰り広げる終盤は、若手らしい勢いに溢れて爽快のひと言。一方の『茨木』は、渡辺綱(海老蔵)に片腕を切られた鬼の茨木童子(松緑)が、綱の伯母・真柴に化けて腕を取り戻しにやってくるという物語。松緑は優しげな老婆のたたずまいから、たちまち鬼の本性を現す一瞬にゾクリとさせる妖気を絡ませて魅せる。夜の部では、各々のニンに合った役どころの『勧進帳』が楽しい。海老蔵の豪快で茶目っ気のある武蔵坊弁慶、松緑の思慮深く端正な富樫左衛門、そして染五郎のどこかこの世を超越したかのような風情の源義経と、三者三様の魅力が味わえる。花道を飛び六方で引っ込む海老蔵の勇壮さは、まさに弁慶役者の面目躍如。思わず客席から歓声が上がるのが、海老蔵という役者を観る楽しさだろう。その他、平家の宝を巡る悪七兵衛景清(染五郎)と三保谷四郎国俊(松緑)の一騎打ちが様式美を伝える『錣引』、黒紋付の染五郎と松緑、海老蔵が並んで述べる『口上』など、どれもここでしか観られないものばかり。昼夜通して荒事の多いラインナップとなったが、本来、荒事は江戸市民の災いを払う神性も担って演じられてきたとか。ならば本公演を観ることで、来年の息災を願うのも一興だろう。12月25日(日)まで日生劇場で上演。チケットは発売中。取材・文佐藤さくら
2011年12月08日歌舞伎をはじめ、日本初のオペラや翻訳劇にも出演した近代の名優、七世松本幸四郎が襲名してから今年でちょうど100年目となる。これを記念して、七世幸四郎の曾孫である市川染五郎、尾上松緑、市川海老蔵の3人が中心となり、七世幸四郎ゆかりの作品を上演する『日生劇場十二月歌舞伎公演』が12月7日(水)、同劇場にて開幕する。『日生劇場十二月歌舞伎公演』チケット情報染五郎は、100年ぶりの復活上演となる『碁盤忠信』で佐藤忠信役を務める。「七代目幸四郎というと、曽祖父ではありますが私にとっては伝説の名優です。『碁盤忠信』は100年前、曽祖父が襲名披露で演じた演目です。僅かに残る台本と向き合い、衣裳や音楽など荒事の新作を作るつもりで取り組みたいと思っています」と語った。また、個人的な思いとして「それぞれが自分の役割をしっかり務め、その結果、『誰がよかったですか』とお客さまに判定していただく、対決という感じで務めてみたいと思っています。私たち3人は一生この世界で同時代を生きていくわけですから歌舞伎の灯を消さないよう、力を合わせて頑張っていきたいです」と話した。茨木童子の伝説を題材にした舞踊劇の大曲『茨木』に挑む松緑は、「(『茨木』は)これを第一歩に生涯かけて務め続けられればと思っています。初役ですのでコクとまではいかないと思いますが、何とか墨絵の重厚感みたいなものが出せればと思っています」と気合の入ったコメントを寄せた。また、夜の部に3人揃って出演する『勧進帳』について「親戚3人で一年の締めくくりとしてやれることが楽しみですね」と話し、共演するふたりについても「染五郎さんとは気心が知れていて、今後ふたりで継承していきたい演目が多くあります。海老蔵さんとも互いの息はよくわかっているつもりです」と語った。海老蔵は近代随一と言われた七世の弁慶役について「今回は曽祖父が生涯におよそ1600回以上務めたとされる『勧進帳』の弁慶を務めさせていただきます。この作品自体、祖先の七代目團十郎が作ったものですので、やはり市川家のひとりとして、気を引き締めて務めていかなければなりません」と心境を語った。また「3人とも将来は歌舞伎界を支えていかねばならない立場。この公演をきっかけに改めて(歌舞伎と)真摯に向き合い、しのぎをけずり、芸道精進していきたいですね」と話していた。公演は東京・日生劇場にて12月25日(日)まで上演。チケットは発売中。なおチケットぴあでは、花道シートと厳選レストランでの食事がセットになった企画チケット及び、平日限定の筋書付チケットを発売中。
2011年11月30日