小芝風花主演で現在放送中のドラマ「大奥」。この度、本作で松平定信を演じている「Snow Man」の宮舘涼太主演で贈るスピンオフドラマ「大奥~定信の恋~」の配信が決定した。主人公・五十宮倫子(小芝さん)は、第十代将軍・徳川家治(亀梨和也)との政略結婚を強いられるが、大奥で過ごす中で家治の真意に触れ、様々な困難が立ちふさがるも、夫婦として乗り越えていく「大奥」。宮舘さんが単独初主演を果たす本作「大奥~定信の恋~」は、完全オリジナルストーリー。田安宗武の息子で白河藩藩主の定信は、徳川将軍家の血を引く家治のいとこだが、幼い頃に養子に出された過去が。そしていまもなお、自分が幕政の実権を握りたいという野望を持つ。倫子のことも慕っており、政を田沼意次(安田顕)に任せてばかりで、側室を設けて倫子を悲しませる家治よりも、自分の方が倫子にふさわしいと思っている。第八代将軍・徳川吉宗(伊武雅刀)の孫であり、将軍家の血筋を引くれっきとした後継者でありながら、定信がなぜ徳川の姓を奪われ、城を出るに至ったのか。城の外で何を思い、何に迷われていたのか。そして、初恋の相手でもある倫子に対する胸に秘めた思い。そこには、定信だけが知る秘密の物語がある。「大奥」が約4年半ぶり、3度目のドラマ出演、かつ初の連続ドラマレギュラー出演となった宮舘さん。今回のスピンオフドラマについて「本編の『大奥』では描かれていない定信の野望や、人々に対する愛の表現が描かれています。松平定信がどういう人物なのか、何を思っているのか、ぜひご覧いただきたいです。僕自身、初の単独主演ということでたくさんの思いを定信に込めました。ご覧いただいた皆様の気持ちが動いていただけたら幸いです」とメッセージを寄せている。「大奥~定信の恋~」は3月28日(木)22時54分~FODにて配信開始。「大奥」は毎週木曜日22時~フジテレビにて放送中。(シネマカフェ編集部)
2024年03月21日亀梨和也が10代将軍・家治、小芝風花が家治の正室・倫子を演じる「大奥」の4話が2月8日に放送。松平定信が家治に倫子への過去の想いを明かすシーンに「苦しい」や「ホント好き」などの声が上がっている。江戸中期・徳川家治の治世を舞台にした本作は、愛をテーマにした大奥史上最も切ないラブストーリー。御台所となった倫子を小芝風花、第10代将軍・徳川家治を亀梨和也、倫子の付き人で京から一緒に来たお品を西野七瀬、家治の側室になったお知保を森川葵、大奥総取締役・松島の局を栗山千明、家治の秘密を握る田沼意次を安田顕、松平定信を宮舘涼太が演じている。※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。お知保(森川葵)が家治(亀梨和也)の側室になったことを知り、動揺する倫子(小芝風花)。田沼意次(安田顕)に強要されて側室を持つに至った経緯を知らない倫子は、心中穏やかではない。そんな折、増上寺代参が行われることに。松島の局(栗山千明)は「忙しい上様、御台様に代わって、奥女中たちが代参を務める」と切り出すが、倫子は御台所の大事な公務であるとし、自分も共に参ると発する。松島は御台様が出向くなど前例がないことだと反論するが、家治は倫子に「頼んだ」と言い、代参を認めるのだった。倫子がお品を伴って無事に参拝を終えると、猿吉(本多力)が倫子の好物である白みそ煎餅を持って現れる。それは、お品が葉山貞之助(小関裕太)に頼み、特別に作ってもらったものだった。倫子が茶屋で休んでいると、松平定信(宮舘涼太)が声をかけてきて――というのが4話の展開。その後、実は定信が倫子の幼なじみであることが発覚。お品も交流があり、ふたりで町を見学できるよう気を利かせる。その後、家治の元を訪ねた定信は、倫子が初恋の人であると告白。そんな定信の告白シーンに、SNSでは「どれだけ倫子様のことを想っているのかが伝わってきて苦しい…」や「健気に初恋抱え続けてる定信公ホント好きやわ~」、「ウルウルした目で初恋だからって伝えた後にあれ、ご存知かと。の温度差すごかったなぁ…」などの声が。また、家治の父親が実は家重ではなく、密通相手とされる男を田沼が目の前で殺していたという秘密に、「女性陣より男性陣の方がドロドロなのでは?」や「上様の秘密が明かされて苦しんでる姿をみるのが辛い」、「家治のトラウマシーン、予想以上にエグかったなぁ」などの声が上がっている。【第5話あらすじ】倫子は家治が側室のお知保へ御渡りしたことに、つらい思いを募らせる。幸せそうなお知保に倫子はうつむくことしかできない。そんな中、家治はオランダ商館長を江戸城に招く折、もてなしに琴を披露したいと告げる。多くの者が名乗り出る中、「御台はどうだ」と促す家治にも倫子はうつむいたまま。結局お知保が名乗りをあげ、琴の演奏はお知保に任されることになる。一方、お品が猿吉に倫子が優しすぎると愚痴をこぼしていると、貞之助(小関裕太)が通りかかり、お品にもっとゆっくり話がしたいと蔵の鍵を渡す。倫子を家治から遠ざけようとする松島。そして、暗い過去を持つ家治を脅して政治の実権を握ろうとする田沼意次のたくらみは続き、田沼は倫子のかつての思い人であった久我信道(鈴木仁)を武家伝奏に就任させる。信道の姿に動揺する倫子。家治も信道が倫子の手紙の相手だと気づくが、家治は知り合いならこの後ふたりで話すが良いと口にする。そして倫子と話す機会を得た信道は、倫子に彼女の母親が病に伏せっていることを告げ、一緒に京に帰らないかと言い――。「大奥」は毎週木曜22時~フジテレビ系にて放送中。(シネマカフェ編集部)
2024年02月09日JR西日本グループ 富山ターミナルビル株式会社では、富山駅北口の西日本旅客鉄道株式会社の用地における暫定的な利活用を実施する「牛島パークフロント」における遊具エリア「ごっこぱーく」を2023年11月6日(月)に開園いたします。また「ごっこぱーく」については株式会社岡部らと共同で、みんなで未来のインクルーシブを共創するあそび空間を目指します。11月3日(金・祝)~5日(日)のプレオープン期間「ごっこぱーく」入園料無料!【「ごっこぱーく」とは】「ごっこぱーく」とは富山駅北口に開園する小学生以下を対象とした遊具、広場等を兼ね備えた有料の遊具エリアです。子どもたちが遊ぶ場所が少なかった富山駅周辺における新たなファミリーで過ごす場として、エリアの新たな魅力となる施設を目指します。開園日:2023年11月6日(月)プレオープン日:2023年11月3日(金・祝)~11月5日(日)「ごっこぱーく」は2023年11月3日(金・祝)~11月5日(日)の3日間、プレオープンいたします。期間中は富山駅周辺で「MACHIMEGURI TOYAMA」をはじめとする様々なイベントが実施されます。その中で、富山ターミナルビル株式会社も参画するトヤマチ∞ミライ ユナイテッドが富山駅北口で開催するイベント「こどもまんなか広場」の企画に協力するため、プレオープンの3日間は「ごっこぱーく」の入園料を無料といたします。また、牛島パークフロント内のもう一つのエリアであるキッチンカー/マルシェエリアを「青空まーけっとぷれいす えききたBOCCO」として「ごっこぱーく」プレオープン時より、運用を開始。各日3台のキッチンカーがやってきます。○プレオープンの概要時間:10:00~16:00運用:期間中は45分毎の完全入れ替え制といたします。(毎時00分に入園開始、45分に退園)その他の運用やルールについてはHPでお知らせいたします。【ごっこぱーくの遊具について】1. アルペンスライダー大勢で一緒に遊べる複合遊具。幅広のテント滑り台は、友達と一緒に滑ることが可能です。ネットクライムは競争しながら登ったり、縁に座って揺れを楽しむこともできます。2. いもむしトンネル1人になりたいときや落ち着きたいときはトンネルの中にこもってリラックス。たくさんの音に敏感な子の避難場所にもなります。3. ぽっこりカメポンカラフルでやわらかいゴムチップの小山は、とびとびや跳び箱のようにして遊べる一方、小さな子でも登れる築山になったりと、能力に応じた遊び方が可能です。4. ぴょんぴょんあみぽりん一緒に飛び跳ねる子どもたちの影響がダイレクトに伝わるネットのトランポリンは、自分より小さい子を気遣ったり、同時にジャンプしてみたり、活発な交流を生み出します。5. おあしすベンチ見守りや休憩ができる十分な数のベンチがあることで、保護者にとっても安心して過ごすことができる空間になります。※その他たくさんのスポットあり。詳細は出典元のプレスリリースをご確認ください。【ごっこぱーくの概要】開園日:2023年11月6日(11月3日~11月5日は無料開放)入園料:子ども…1時間当たり税込500円お子様本人の障害者手帳をご提示で入園料半額(税込250円)※小学生以下対象お子様1名につき1名の保護者必須となります。※団体でのご利用は別途対応いたします。営業時間:10:00~16:00(秋季)冬季や雨天時は休業を予定しております。日照、天候により時間を変更、閉園する場合がございます。所在地:富山県富山市明輪町59-1面積:牛島パークフロント…1,627m2ごっこぱーく…843m2事業主体:富山ターミナルビル株式会社(出典元の情報/画像より一部抜粋)(最新情報や詳細は公式サイトをご確認ください)※出典:プレスリリース
2023年10月31日パーソナリティ障害とは出典 : パーソナリティ障害とは、一般の人と比べて著しく偏った考え方や行動パターンのために家庭生活や社会生活、職業生活に支障をきたした状態を指します。どんな人にでも性格の偏りはあるものですが、その偏りによって二次障害が現れたり、日常生活に支障が生じることではじめて「障害」と判断されます。米国精神医学会によって作成される『精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)』では、パーソナリティ障害は以下のように説明されています。パーソナリティ障害とは、その人が属する文化から期待されるものから著しく偏り、広範でかつ柔軟性がなく、青年期または成人期早期に始まり、長期にわたり変わることなく、苦痛または障害を引き起こす内的経験および行動の持続的様式である。出典:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル(医学書院.2014)以上のように「苦痛または障害を引き起こす」という特徴により定義されるパーソナリティ障害ですが、周囲から見てパーソナリティ障害であるかどうかを見分けることは極めて困難であるとされており、パーソナリティ障害は理解のされにくい病気と言われています。パーソナリティ障害に対する理解を深める前に、「そもそもパーソナリティって何?」という疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。人間は誰でも、考え方や行動のパターンに何かしらの特徴・偏りを持っていて、そうした「その人らしさ」といえるような特徴を“パーソナリティ”と呼びます。「人付き合いの好きな人」「自己中心的な人」「神経質な人」「怒りっぽい人」などさまざまなパーソナリティがあります。今日の精神医学・心理学の分野では、パーソナリティは「性格」と「気質」という2つの要素が合わさったものと考えられています。「性格」はパーソナリティの心理社会的側面を、「気質」は遺伝的・器質的素因といった生物学的な側面を意味します。アメリカの精神科医ロバート・クロニンジャーは、性格を形作るものとして「自己思考」「強調」「自己超越」という3つの要素を、気質を形作るものとして「新奇性探求」「損害回避」「報酬依存」「固執」という4つの要素があると考え、合計7つの要素からなるパーソナリティ理論を提唱しました。この理論は、前者の3つの要素は体験からの学習として得られ、後者の4つは生まれつき備わっている要素なのではないかということを示唆しています。参考:岡田 尊司『パーソナリティ障害がわかる本』ちくま文庫(2014)p.22, 23以前は、パーソナリティ障害は英語名である“Personality Disorder”を直訳する形で「人格障害」と呼ばれていました。しかし、日本語の「人格」という言葉は人としての道徳観や良心の有無といった意味合いを含むため、「人格障害」という呼び名を用いることは当事者に対する否定的なイメージや偏見につながりかねない、と考えられるようになりました。現在は使われる頻度も減少しているようです。本記事では、それぞれ異なった特徴を持つパーソナリティ障害のタイプ別分類、各種パーソナリティ障害の概要やパーソナリティ障害の原因といった基本情報に加えて、パーソナリティ障害と発達障害との関連、具体的な治療法、周囲の接し方などについて、わかりやすく解説します。参考:パーソナリティ障害|厚生労働省参考:パーソナリティ障害(境界性/自己愛性)について|すぎうらメンタルクリニックパーソナリティ障害の分類出典 : 現在、精神科医療の現場で広く用いられている診断基準である『DSM-5』では、パーソナリティ障害は10のタイプに分類され、それぞれの特徴・傾向をもとにA・B・C群という3つのグループに分けられています。Upload By 発達障害のキホンそれぞれのタイプの詳しい症状などについては、関連記事を参照してください。A群:奇妙で風変わりに見えるA群は「オッド・タイプ」という別名を持ち、非現実的な考え方にとらわれやすいという特徴があります。統合失調症や妄想性障害といった精神疾患とのつながりが指摘されています。A群には以下の3タイプがあてはまります。・猜疑性パーソナリティ障害/妄想性パーソナリティ障害・シゾイドパーソナリティ障害/スキゾイドパーソナリティ障害・統合失調型パーソナリティ障害B群:演技的で情緒的に見えるB群は「ドラマチック・タイプ」とも呼ばれ、感情的かつ衝動的なのが特徴です。そのため、周囲を巻き込んで迷惑をかけることが多いタイプであるといえます。B群には以下の4タイプがあてはまります。・反社会性パーソナリティ障害・境界性パーソナリティ障害・演技性パーソナリティ障害・自己愛性パーソナリティ障害C群:不安または恐怖を感じるC群は「アンクシャス・タイプ」と呼ばれることもあります。不安・恐怖心などが強く、自己主張は控えめなのが特徴です。自己本位というより他社本位なタイプといえるでしょう。A群には以下の3タイプがあてはまります。・回避性パーソナリティ障害・依存性パーソナリティ障害・強迫性パーソナリティ障害新たな種類のパーソナリティ障害上で挙げた10種類のパーソナリティ障害に加え、近年では「循環病質」という病前性格、すなわち疾患を発症する以前の性格をベースとしたパーソナリティ障害も増えていると言われています。この種類のパーソナリティ障害には、普段は社交的・活動的だが激しい気分変動が起きるという特徴があります。この種類には以下の2つのタイプが当てはまります。・サイクロイド・パーソナリティ障害・サイクロタイパル・パーソナリティ障害以上、DSM-5に従ってパーソナリティ障害の3つのグループと10の下位分類、そしてDSM-5にはない、新たな種類のパーソナリティ障害について紹介しましたが、世界保健機関(WHO)により作成される疾病分類であるICD-10など、他の診断マニュアルにおいては分類のしかたや下位分類の名称が違うこともあります。参考:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル(医学書院.2014)パーソナリティ障害(人格障害)|慶應義塾大学病院複数のパーソナリティ障害が重なり合うこともある出典 : パーソナリティ障害は10のタイプに分類されていますが、実際のところ、パーソナリティの特徴が明確に見られる「典型例」といえるような患者さんばかりではなく、複数のパーソナリティの傾向を同時に持ち合わせている人もいるため、どのパーソナリティ障害なのかを見極めることが困難な場合もあります。もともと何らかのパーソナリティの偏りを持っていた人が、その偏りが原因で問題を抱えるようになった結果、二次的に新たなパーソナリティ障害の傾向を示すようになることもあります。なかには3~4つのパーソナリティ障害を併発する人もおり、そのようなケースではその人がもともと持っていたパーソナリティを特定することが重要となります。パーソナリティ障害のなかには、重複しやすいタイプがあると言われています。例えば、・境界性パーソナリティ障害・演技性パーソナリティ障害・自己愛性パーソナリティ障害・反社会性パーソナリティ障害といったパーソナリティ障害は「対人関係に支障をきたす」「自己中心的な考え方をする」「反社会的な行動をとる」など共通した特徴を持っており、相互に重複の可能性が指摘されています。さらに、自己愛性パーソナリティ障害と強迫性パーソナリティ障害が重なるケースも指摘されているようです。参考:牛島定信『図解 やさしくわかるパーソナリティ障害 正しい理解と付き合い方』ナツメ社 (2011)参考:パーソナリティ障害|厚生労働省パーソナリティ障害の原因出典 : パーソナリティ障害は、誰でもなる可能性があるといわれています。しかし、パーソナリティ障害の原因に関して、現時点では十分なことは明らかになっていません。それでも、さまざまな研究が進められていて、生物学的な特性や発達期の経験がパーソナリティ障害の発症に関与することなどが指摘されています。例えば、衝動的な行動パターンには脳内の神経物質の関与が認められること、幼少期の辛い経験が発症に影響を及ぼすといった研究結果が報告されています。パーソナリティ障害の原因に関する研究でしばしば用いられるのが遺伝的要因と環境的要因という分類です。遺伝的要因とは遺伝子による影響だけを指し、それ以外の要因はすべて環境的要因として捉える考え方です。すなわち、環境要因のなかには生まれ育った環境、親との関係、病気やケガ、社会的影響などすべてが含まれます。遺伝的要因が関与する割合については、双生児による研究を通して推定されることが多いです。ある疾患の遺伝率を求める場合、一卵性双生児と二卵性双生児で、一人がその疾患にかかっているとき、もう一人の兄弟がその疾患にかかる割合(一致率)を調べます。遺伝性が高い疾患では、二卵性に比べて一卵性双生児での一致率がとても高くなります。一方で、遺伝率が低い疾患だと、一卵性双生児と二卵性双生児との間で一致率にあまり差は見られません。このような方法を用いた研究によれば、パーソナリティ障害の遺伝率は50~60%ほどという結果もあるようです。このことから、程度遺伝的要因はパーソナリティ障害に関連するが、それだけではない環境要因も影響すると言われています。参考・出典:岡田 尊司『パーソナリティ障害がわかる本』ちくま文庫(2014)p.82子どもの性格の形成に関して、親との関係は大きな影響を与えるといわれています。そのため親子関係の変化する各段階におけるなんらかのつまづきによって偏ったパーソナリティが形成されて行く可能性も少なくないと考えられます。例えば、乳児期に適切な世話や愛情を受けることができないと、安定した愛着が構築されず、外界や他者に対して不安や恐怖を抱くなるようになってしまう可能性があることが専門家によって指摘されています。しかし、その可能性は様々にあるパーソナリティ障害の要因の一つにすぎません。また、どのような要因があるにせよ、原因探しが必ずしも治療の手助けになるわけではありません。時をさかのぼって過去をやり直すことができない以上、原因は原因として客観的に受け止め、「現実の問題に対して対応していく方法」について考えていくことが大切なのではないでしょうか。参考:パーソナリティ障害|厚生労働省参考:牛島定信『図解 やさしくわかるパーソナリティ障害』ナツメ社 (2011)参考:岡田 尊司『パーソナリティ障害がわかる本』ちくま文庫(2014)パーソナリティ障害と関連するその他の障害出典 : パーソナリティ障害には、合併しやすい障害や疾患があると言われています。また、その他にも症状が似ている障害の存在も指摘されています。本章では、前半で合併しやすい障害・疾患について、後半で症状の似たものについて紹介します。それぞれの障害・疾患について詳しく知りたい方は、関連記事をご参照ください。■うつ病気分障害の一つであるうつ病は、パーソナリティ障害と合併しやすいといわれています。■双極性障害双極性障害はうつ病と同じく気分障害の一つであり、気分が高まる「躁(そう)状態」と気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。サイクロイド・パーソナリティ障害、サイクロタイパル・パーソナリティ障害の場合、双極性障害へと進展するケースが指摘されています。■統合失調症幻覚や幻聴、気分の落ち込みがある統合失調症。妄想性パーソナリティ障害、スキゾイド・パーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害から進展することがあるといわれています。■不安障害不安が異常に高まってしまう疾患である不安障害はパーソナリティ障害と合併することがあります。不安障害とはどのような疾患なのか|せせらぎメンタルクリニック■強迫性障害自己愛性パーソナリティ障害に合併しやすいといわれています。■摂食障害摂食障害の症状の中でも、「過食」は境界性パーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害に合併しやすいようです。摂食障害|厚生労働省■アルコール依存・薬物依存アルコールや薬物への依存症状は、反社会性パーソナリティ障害と合併しやすいといわれています。参考・出典:岡田 尊司『パーソナリティ障害がわかる本』ちくま文庫(2014)p.82■妄想性障害妄想性障害は、妄想性パーソナリティ障害や妄想型統合失調症と症状が似ています。妄想性障害(パラノイア)とはどういう病気なのか|せせらぎメンタルクリニック妄想性障害のほかにも、発達障害はパーソナリティ障害と似た特徴・傾向がみられることがあります。パーソナリティ障害と発達障害との関係については、次章で解説します。パーソナリティ障害と発達障害の関係は?出典 : 発達障害とは脳機能に先天性の障害があるために、幼児期から発達に何らかの遅れや困難が生じることを指します。その症状は、通常低年齢の発達期において発現することが多いといわれています。他者と考え方や感じ方か違う、自己中心的になりやすい、衝動的な言動がみられるといった特徴・傾向は、パーソナリティ障害・発達障害の両方でみられることがあるため、見分けるのは容易ではありません。また、発達障害のある子どもは、学校でいじめを受けたり、勉強についていけなくて周囲に叱責されたりと、自尊感情が損なわれやすい傾向があります。そのために自我がうまく育たず、他者と友好関係を築くのが苦手になり、しだいにパーソナリティに偏りが生まれてしまう場合もあるようです。上記のように、発達障害をベースとして二次的にパーソナリティ障害と同様の症状が現れている場合には、発達障害の治療と並行してパーソナリティ障害への対応に準じた対応策が必要とされます。パーソナリティ障害かもと思ったら?相談先は?出典 : パーソナリティ障害であるかどうかを、当事者本人が自覚したり、周囲の家族や友人が判断することはきわめて難しいといわれています。身近な人に抑うつ症状や衝動行為をしていて、それが心配になるレベルである場合には、精神科か心療内科に受診して専門医の診断を仰ぐことが好ましいでしょう。すぐには診断は出ませんが、それでも相談したり、強い症状をある程度治療によって抑えることができる場合もあります。精神的に安定した状況を取り戻し、ほかの障害の併発を防ぐためにも、できるだけ早期の受診が望まれます。はじめから医療機関に行くことに対して抵抗を感じる場合は、精神保健福祉センター・保健センター・地域活動支援センターなどといった地域の相談窓口を利用してもよいでしょう(名称は地域によって異なることがあります)。地域にある相談先|厚生労働省全国の保健福祉センター一覧|厚生労働省パーソナリティ障害の診断の流れと診断基準出典 : 前章でも述べた通り、パーソナリティ障害の疑いがある場合は精神科もしくは心療内科を受診するとよいでしょう。基本的に、初診でパーソナリティ障害の判断がつくことはあまりありません。初診時の面接では現在困っていること・悩んでいること・気分の状態などについて聞かれることが多いようです。医師は、面接を繰り返す中で、気持ちや考え方に変化がないかなどを確認しながら診断を進めていきます。また、患者さんは過去の出来事や幼少期の親子関係などについて聞かれることもあります。患者さんの話だけでは性格や気質を捉えきれないと医師が判断した場合には、心理テストを行い、その結果を判断材料とすることもあります。問診や心理テストの結果を分析し、DSM-5、あるいはWHO(世界保健機関)が作成する疾患の分類であるICD-10の診断基準に照らし合わせながら最終的な診断が下されます。DSM-5では、パーソナリティ障害の全般的基準は以下のようにまとめられています。A. その人の属する文化から期待されるものから著しく偏った、内的体験および行動の持続的様式。この様式は以下の領域の2つ(またはそれ以上)の領域に現れる。(1)認知(すなわち、自己、他者、および出来事を知覚し解釈する仕方)(2)感情性(すなわち、情動反応の範囲、強さ、不安定性、および適切さ)(3)対人関係機能(4)衝動の制御B. その持続的様式は柔軟性がなく、個人的および社会的状況の幅広い範囲に広がっている。C. その持続的様式が、臨床的に意味のある著しい苦痛または、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。D. その様式は安定し、長時間続いており、その始まりは少なくとも青年期または成人期早期にまでさかのぼることができる。E. その持続的様式は、他の精神疾患の表れ、またはその結果ではうまく説明されない。F. その様式は安定し、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:頭部外傷)の直接的な生理的作用によるものではない。引用:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル(医学書院.2014)この診断基準に当てはまる場合、さらに10タイプある下位カテゴリーそれぞれの診断基準に照らして、慎重に診断されます。パーソナリティ障害の経過と治療法出典 : パーソナリティ障害は自然に治るものではありませんが、症状や困難性は、適切な治療を受けることで改善させることができます。しかしながら、すべての人に有効な決定的な療法は見つかっておらず、同じ治療法でも人によって効果は異なります。根本的な治療法は精神療法、対症療法としては薬物療法が用いられるのが基本ですが、さまざまな治療法を組み合わせながら、その人に合った方法で治療が進められます。より具体的には、以下のような治療法が代表的といわれています。■個人精神療法医師や心理技術者といった治療者が患者さんとの面接を通して患者さんのパーソナリティ障害に対する理解を促したり、認知や思考・行動パターンの偏りや問題点の改善を目指していく根本的な治療です。面接は、治療者と患者さんの1対1で1週間に1~2回、30分~1時間程度行われるのが一般的なようです。この治療法では、患者さんと治療者の間に信頼関係があることが前提条件になります。■集団精神療法その名の通り、集団で行うことが特徴の治療法です。患者さん、治療者に加え、ほかの患者さんも交えたグループで話し合いをしたり、共同作業を行ったりという活動の中で生まれる患者さん同士の相互効果を治療に生かします。同様の障害を持つ人と交流することで、障害を客観的に理解したり、「人の振り見て我が振り直せ」効果を期待することができます。■家族療法家族療法では、患者さん本人のみならず、家族に対しても治療を行います。患者さんと家族との関係性を捉え、そこに存在する問題の解決を目指す治療法です。家庭における家族一人ひとりの役割を見直し、正常化することで、患者さんの精神的な安定をはかります。具体的には、治療者が家族と面接を行ったり、家族内での問題への対処法に関する助言や指導を行ったりします。パーソナリティ障害を根本から治す薬は現在のところありません。薬による治療はあくまで対症療法になりますが、強い不安や緊張、抑うつなどといった精神症状を一時的に和らげる目的で投薬治療を行うことがあります。認知行動療法とは、患者さんの認知のしかたの「ゆがみ」の改善をはかる治療法です。患者さんに自分を客観的に観察してもらい、認知のゆがみがいつ、何をきっかけに起きたのかを記録し、そのゆがみについて自覚してもらいます。そのうえで、そうしたゆがみを改善するための認知のしかたや行動の取り方を、ロールプレイングなどを通して実践的に身につけていきます。参考:牛島定信『図解 やさしくわかるパーソナリティ障害』ナツメ社 (2011)パーソナリティ障害のある人に対する、周囲の接し方は?出典 : パーソナリティ障害は、本人にとっても周囲にとっても理解しにくい障害であり、本人に対する接し方においてもさまざまな配慮が求められます。家族が医師の話を聞きながら適切な対応をとっていくことが大切です。家族がパーソナリティ障害の患者さんと向き合い、支えていくうえで最初のステップとなるのが、パーソナリティ障害について正しく理解することです。程度に差はあれど誰もが持っている「考え方の偏り」によって社会活動に支障が生じるパーソナリティ障害は、誰にでも起こりうる障害であるといえます。「治療には時間がかかる」「本人には自覚が乏しいこともある」「治療においては周囲のサポートが重要」といった特徴について理解しておくことで、治療が進みやすくなります。本人が医療機関の受診を拒むケースも少なくありません。患者さんが、自分が抱えるトラブルの原因は自分ではなく周囲にあると捉えていることも多いです。そうした状況下で周囲によって受診を強くすすめられると、「どうして自分が病院に行かないといけないんだ!」とますますかたくなになってしまう可能性もあります。家族は、本人が医療機関を受診する前から「病気」や「障害」と決めつけるようなことはせず、「あなたの悩みを軽減・解消するために行ってみない?」といった促し方をしてみましょう。受診について切り出すタイミングに関しては、患者さんの気持ちが安定していて、落ち着いて会話ができる状態が好ましいでしょう。パーソナリティ障害の人のなかには、家の中にひきこもり、社会活動に参加を拒む人もいます。患者さんがひきこもるのには、さまざまな理由が考えられます。例としては、自分が他者に受け入れてもらえるか・どう評価されるのかということを過剰に心配してそとの社会との関わりを避けるケースや、もともと人付き合いが嫌いもしくは苦手で、対人関係のストレスを避けるケース、仕事上の失敗などが原因で自信を失い社会に戻ることを拒むケース、外の世界に興味・関心が持てなくて外に出る気持ちが起こらないケースなどが挙げられます。患者さんがひきこもっているとき、家族が無理に外へ連れ出すのは好ましくないとされています。その人がひきこもっているのにはそれなりの理由があるはずなので、その気持ちを尊重し、理解しようとする姿勢を示すほうが解決につながりやすいでしょう。社会での対人関係やコミュニケーションをとることに対する不安からひきこもり状態になっているときには、ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)を受けることが状況の改善につながることもあります。パーソナリティ障害の人のなかには、激しい怒りなどの感情とともに、暴力を振ったり暴言を吐いたりする人がいます。こうした暴力や暴言も衝動行為の一つで、自分の感情をうまくコントロールできないために直接的な行動によって発散している状態です。親や交際相手、自分の子どもなど、身近な人ほど対象になりやすいです。パーソナリティ障害の人が粗暴な言動をしたとき、周囲の人は極力冷静に対応することが求められます。家族まで感情的になって同じように暴力や暴言で対抗してしまうと、患者さんはさらに動揺し、不安を強め、精神が不安定になり、さらに衝動的になるという悪循環に陥ってしまう可能性があります。解決を目指すうえでは、容易なことではないとは思いますが、専門家との連携をとりながら、患者さんをつねにあたたかく見守っていく姿勢をくずさないようにすることが重要です。患者さんを安心させることで衝動行為の抑制をはかりましょう。まとめ出典 : 人はみなそれぞれ異なる性格を持っています。それぞれ異なる考え方を持っています。ただ、同じような傾向の性格を持っていたとしても、その性格の偏りによって家庭生活や社会生活、職業生活に支障をきたしてしまう場合は、パーソナリティ障害と判断されます。治療に際しても、一人ひとりの症状や考え方の違いに応じて、異なった対応が必要になります。専門の医師による治療やアドバイスを受けながら、患者さん本人や周囲の人たちもその症状を理解し、焦らずじっくりと対応していくことが大切です。
2017年05月28日境界性パーソナリティ障害とは?出典 : 境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder:BPD)は、対人関係や自己に対するイメージなどの広い範囲において、激しく考え方や感情が変化していく特性がある障害です。境界性パーソナリティ障害の多くは思春期から青年期・成人早期に起こる感情と行動の失調状態です。時間はかかりますが適切な治療を行うことによって自分自身を取り戻していくことができるといわれています。現在さまざまなパーソナリティ障害が確認されており、境界性パーソナリティ障害はその中の一つとして存在しています。パーソナリティ障害とは、思考、感情、人とのかかわり方、衝動の制御の4つのうちの少なくとも2つにおいて、柔軟性がない状態をいいます。このようなパーソナリティ障害がある人は、考え方や行動パターンに著しい偏りがあるため他者と摩擦が生じ、日常生活や仕事・学校の場面でトラブルをおこしてしまうことがあります。境界性パーソナリティ障害は他人から見捨てられてしまうのでないかという不安と、自分が何者でどう振る舞えば良いのか分からない自己イメージの不安定さがトラブルの背景にあるといわれています。境界性という名前は、“強いイライラ感”が症状として現れる神経症と、“現実が冷静に認識できない”認知障害をもつ統合失調症、2つの精神疾患の境界にあると、かつて考えられていたことに由来し命名されています。現代社会の中では境界線がはっきりしないことは数多く存在しています。例えば自分と他人との境界や男と女の境界、子どもと大人との境界など、あらゆるボーダーラインがあります。境界性パーソナリティ障害がある方はその境界が分かりにくく、社会にうまく適応できないという生きづらさを抱えています。境界性パーソナリティ障害を発症している方々の中での男女割合は女性が75%と多く、主に女性が発症しやすい傾向があることが分かっています。出典:日本精神医学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(医学書院,2014)参考:岡田尊司/著『境界性パーソナリティ障害』(幻冬舎新書,2009)境界性パーソナリティ障害の主な特性とは?出典 : 境界性パーソナリティ障害の主な特性として代表的なものは、自己イメージの混乱と見捨てられるかもしれないという強迫観念があることです。この3つの特性からくる不安と恐怖の感情がもととなり、さまざまな症状に発展していきます。境界性パーソナリティ障害がある人は、「自分がどんな人か分からない…」というように自己イメージがはっきりしない状態であるため、他人の影響を受けやすかったり、他人と自分を区別できなかったりすることがあります。自己イメージは自己同一性(アイデンティティ)とも言われ、自分・他人から見ても一貫している自己を持っていることをいいます。自己イメージが安定していると、自分が社会にとって意味があり、自分の中に生きているという実感が生まれます。それによって過剰に不安になることや人に流されることが減ってきます。しかし境界性パーソナリティ障害がある人は自己イメージが混乱しているため、例えば一面的な評価を自分の全人格に対する評価として過剰に受け取ってしまうことが多くなります。その度にひどく落ち込んでしまったり、同じ人からの評価にも関わらず、褒められたときはその人のことを好意的に思う一方で、問題などを軽く指摘されただけでその人に敵意を示し激しい怒りを感じたりします。このような対人関係を続けることで過度なストレスを感じるようになり混乱や落ち込んだ状態が慢性化し、さらに自分を見失うという悪循環に陥ってしまいます。境界性パーソナリティ障害がある人は、自身が信頼をおいている相手に依存する特性がみられます。常に根底には自分が見捨てられてしまうのではないかという「見捨てられ不安」というものを感じています。幼い頃に両親の離婚によって家族や愛着のある場所などから離れることに強い不安を抱いたり、虐待などにより愛情を失う体験をしたことが背景になっている場合もあります。「また同じ思いはしたくない」という潜在的な意識によって見捨てられ不安は招かれ、信頼できる相手に対して疑い、見捨てられるのではないかという不安を抱いています。その見捨てられ不安から例えばメールを送ってもすぐに返ってこなかったり、自分が期待している反応が返ってこなかったりする場合、「嫌われたのではないか?」、「見放されたのではないか?」と強い恐怖を感じ相手から離れまいとしがみつこうします。そして見捨てられ不安から逃れたり、相手の興味を自分に引きつけたりするためにギャンブルや過食、過量の飲酒・服薬、自傷行為や自殺をほのめかす行動を起こしてしまうのです。境界性パーソナリティ障害がある人は自己イメージの混乱や見捨てられることに不安や恐怖を常に感じていることから、感情の波が激しく変動し、自分でコントロールすることができなくなります。激しい怒りやひどい落ち込みや空虚感を感じることから、それを解消しようと暴力や暴言を吐いたり、リストカットなどの自傷行為や大量の薬物摂取、大量の飲酒、過食などに走りやすくなります。これらを繰り返すことで日常化していくと、薬物依存やアルコール依存などに発展していくこともあります。さらに強いストレスにさらされ続けると一時的な記憶喪失になる解離性症状が表出する場合もあります。境界性パーソナリティ障害が発症する原因ときっかけって?出典 : 境界性パーソナリティ障害の原因はさまざまな説があり、定まっていません。原因は本人の生物学的な気質要因と環境的要因の相互作用によって生じるという考え方が有力です。脳の機能の中には衝動を抑えたり、怒りや不安をコントロールしたり、ストレスに対する感情をコントロールしたりする部位があります。境界性パーソナリティ障害がある人は、何らかの原因によってそれらの部位に特徴があるために、衝動性、怒り、不安、ストレスなどを感じやすくなっているのだと考えられています。・前頭前皮質:行動をコントロールし、合理的判断に関係する部位です。なんらかのストレスによりこの部分の活動が低下すると、扁桃体の活動を抑えることができず、感情や行動をコントロールできなくなると考えられています。・扁桃体(へんとうたい):怒りや不安といった感情をつかさどっている部位です。境界性パーソナリティ障害がある人は扁桃体が平均より小さいという研究があります。扁桃体の特定の部位が、感情的な刺激に対して過剰に反応するという研究があります。・視床下部/下垂体:ストレスに対する反応に関係する部位です。ちょっとしたトラブルにもイライラや落ち込みを感じる人とあまり動じない人がいますが、それはこの部位の反応の個人差が一因と考えられています。境界性パーソナリティ障害がある人は過剰にストレスを感じ、精神的なショックを受けて落ち込んでしまったり、心が傷ついたりするのは、この部位に関連があると考えられます。・セロトニン系:脳内にある神経細胞間の神経細胞伝達物質のひとつです。セロトニンがうまくはたらかないと、不安やうつの気分が強くなったり、衝動性が抑えられなかったりすることがわかっています。環境的要因には養育環境が大きく関係しているという説があります。過去に心的外傷体験(心が傷ついた体験)や不認証体験(自分を認めてもらえなかった体験)があり、数年後に似たような体験が再現されることによって、境界性パーソナリティ障害の症状が表出するということがあります。心的外傷体験や不認証体験とは、極端な例だと親が子どもに対する虐待やネグレクト(育児放棄)などが挙げられます。または親の離婚や死別によるショックなどもあります。これはあくまで極端な例ですが、他にも、子どもへの愛情不足や褒める・認めるといった共感の不足、過保護や過干渉によるストレスなども子どもにとっては負担になっていることがあります。そのような体験がベースにあり、ちょっとした友人関係や恋人関係の出来事がきっかけで、見捨てられ不安などの症状が発生します。参考:林直樹/監修『よくわかる境界性パーソナリティ障害』|(主婦の友社,2011)参考:岡田尊司/著『境界性パーソナリティ障害』|(幻冬舎新書,2009)境界性パーソナリティ障害の診断基準出典 : 境界性パーソナリティ障害の診断基準について説明していきます。診断基準は医療機関によって異なりますが、主に世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)やアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づいて臨床的に診断が下されます。ここでは『DSM-5』による診断基準を説明していきます。『DSM-5』では以下から5項目以上が認められれば境界性パーソナリティ障害である可能性が高いという基準になっています。対人関係、自己像、感情などの不安定性及び著しい衝動性の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる、以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。(1) 現実に、または想像の中で、見捨てられることを避けようとするなりふり構わない努力(注:基準5で取り上げられる自殺行為または、自傷行為は含めないこと)(2) 理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係の様式(3) 同一性の混乱:著明で持続的に不安定な自己像または自己意識(4) 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、過食)(注:基準5で取り上げられる自殺行為または自傷行為は含めないこと)(5) 自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し(6) 顕著な気分反応性による感情の不安定性(例:通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い不快気分、いらただしさ、または不安)(7) 慢性的な空虚感(8) 不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかを繰り返す)(9) 一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離症状日本精神医学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(医学書院,2014)p.654より引用境界性パーソナリティ障害と併発する合併症出典 : 境界性パーソナリティ障害はその障害の特性上、うつ病などと合併しやすく、発達障害などと併発している場合もあります。また境界性パーソナリティ障害と似ている自己愛性パーソナリティ障害についても紹介していきます。■うつ病などと合併することがある境界性パーソナリティ障害がある人がうつ病を経験する割合は90%に近いという報告もあるくらい、最も合併することが多い病気です。うつ病は抑うつ気分が続き、何もやる気がしなかったり、すべて自分が悪いと責めてしまい、死にたい気持ちになったりする症状があります。境界性パーソナリティ障害の症状と共通点も多く、対人関係のトラブルが頻繁に起こることで抑うつな感情をもたらします。境界性パーソナリティ障害とうつ病が合併すると自己破壊への衝動が増し、死にたい気持ち(希死念慮)が増すと言われています。自己破壊的な行為はたとえば、過剰な自己非難や絶望感から自傷行為を行ったり自殺を考えたりすることです。またうつ病に限らず、境界性パーソナリティ障害の自己破壊的行動への衝動が高まることによって、アルコール依存症、薬物依存症や気分障害、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、パニック障害などを引き起こすこともあります。■ADHDとの合併の可能性がある境界性パーソナリティ障害がある人はADHDを小児期または同時に発症している可能性があると、近年の研究によりいわれるようになりました。イギリスのある研究では、境界性パーソナリティ障害がある人でADHDの発症率は小児41.5%、成人16.1%と高いことが分かりました。境界性パーソナリティ障害の発症は、必要な親からの共感が得られなかったことが原因の一つではないかという仮説があります。ADHDがある人は、その特性から、社会関係や対人コミュニケーションに困難さが生じる場合があるほか、親が育てづらさを感じて親子の関係がうまくいかなかったり、体の感覚が過敏で子どもがだっこを嫌がったりして必要なコミュニケーションをとる機会を持ちにくかったりする場合があります。こうした、親子や対人関係上の困難さが積み重なることによって、子どもが十分に共感を受け取ったと感じられないなどが原因で境界性パーソナリティ障害へと発展することもあり得ます。また発達障害の中には境界性パーソナリティ障害と似た症状が現れるものもあるため、臨床現場では障害同士の鑑別が難しいとも言われています。■自己愛性パーソナリティ障害との合併が混在することがある自己愛性パーソナリティ障害とは、自分に対して誇大なイメージを抱き、注目や称賛を求める一方で、他者からのマイナスな評価に対して過敏に傷つきやすく、他者に対する共感性の薄さが特徴的な障害です。境界性パーソナリティ障害は、自己中心的で対人関係の問題から情緒不安定をまねくことなどから自己愛性パーソナリティ障害と共通点が多くあります。また原因も自己愛の未成熟が関わってくることから診療の現場では、この2つの障害の区別は難しいとされています。この2つの障害の違いはどこにあるのでしょうか。境界性パーソナリティ障害が自己否定を繰り返し、考え続けることで情緒不安定が生じる傾向にあります。それに対して自己愛性パーソナリティ障害は、理想と現実のギャップを受け止められず、自己防衛のために誇大化した言動を繰り返し、自信があるようにうかがえるという点に特徴があります。そもそもパーソナリティ障害はそれぞれ独立して存在するのではなく、重複している共通の症状があるため、複数のパーソナリティ障害が併存しやすくなっています。ですので境界性パーソナリティ障害に限らず、他のパーソナリティ障害が合併していることがあったり、判断が難しかったりする場合があります。参考:『Attention-deficit hyperactivity disorder as a potentially aggravating factor in borderline personality disorder』|BJPsych参考:林直樹/監修『よくわかる境界性パーソナリティ障害』|(主婦の友社,2011)境界性パーソナリティ障害かも?と思った時の相談先と医療機関出典 : パーソナリティ障害の診断は難しいものです。もしご自身やご家族に境界性パーソナリティ障害の疑いを感じた場合は、一人で悩む前にまずは専門機関に相談することをおすすめします。医療機関での受診先は精神科、心療内科などになります。「もしかして境界性パーソナリティ障害かも・・・?でも、医療機関を受けるほどのことでもないような気がする・・・」そのような場合は、各都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センター、または各市区町村に設置されている保健所・保健センターの相談窓口へ相談してみてください。もちろん、本人だけではなく家族が電話などで相談することもできます。次のリンクは全国の精神保健福祉センターの一覧になりますので、参考にしてみてください。参考:全国の精神保健福祉センター一覧l厚生労働省また、本人が会社勤めの場合や高校や大学に通っている場合、学校や企業専属のカウンセラーに相談することもおすすめです。企業や学校のカウンセラーは、その人が所属している組織の内情にも通じているため、より適切なアドバイスをもらうことができる可能性が高いです。また、連携している医療機関を紹介してもらえる場合もあります。境界性パーソナリティ障害の治療ってどんなものがあるの?出典 : 境界性パーソナリティ障害の治療法は、主に精神療法と薬物療法があります。精神療法は即効性はありませんが、医師や専門家と一緒に本人の物事に対する考え方や感じ方などを見直していく治療法になります。これから紹介するのは境界性パーソナリティ障害に有効といわれている精神療法の2つの代表例です。■認知行動療法(CBT):認知行動療法とは、何か困ったことにぶつかったときに、本来持っていた心の力を取り戻し、さらに強くすることで困難を乗り越えていけるような心の力を育てる方法として、いまもっとも注目を集めている精神療法です。具体的には、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのかを客観的に観察し、自動思考という考えのクセを把握します。そして、そういった状況に直面した際に、どのように考え、対処していけばいいかを考え、考え方をコントロールしていく治療法です。参考:認知療法・認知行動療法マニュアルl日本認知療法学会■弁証法的行動療法(DBT):弁証法的行動療法とは、マーシャ・M・リネハンによって開発された、境界性パーソナリティ障害に効果的といわれている、行動療法を中心とした心理療法です。以下の4つの治療法を組み合わせることで、考え方のクセに気付かせ、バランスの良い考え方や反応ができるようにすることが目的です。・苦悩耐性スキル....自身の感情の波が激しくなっているときに、問題がさらに悪化しないように、状況を改善するタイミングを待つためのスキルを身につけます。・マインドフルネススキル....ありのままの自分を受け入れるスキルを身につけます。・感情調整スキル....自身の感情を理解し、調節することのできるスキルを身につけます。・対人関係スキル....感情調整を行いながら、適切な対人関係を築くスキルを身につけます。しかし、欧米を中心に発達した治療法であり、日本で受けられる場所はまだ限られています。また、薬物療法と心理療法以外にも、重度の境界性パーソナリティ障害と診断されたときに入院療法が適応される場合があります。・薬物乱用、自殺、自傷行為を繰り返すとき・重度の妄想により日常生活を送ることが難しいとき・社会から離れた場所で本人に休息が必要と判断されたとき・家族などの周囲の人が疲れてしまったときこれらの場合は入院をし、カウンセリングなど様々な治療法を組み合わせて治療していきます。参考:林直樹/監修『よくわかる境界性パーソナリティ障害』|(主婦の友社,2011)境界性パーソナリティ障害に根本的に作用する薬は残念ながらありません。そのため衝動性や感情の不安定さといった症状を改善するために薬が処方されます。主に気分の落ち込み、不安、現実認識の低下に対する薬が処方されます。BPDの薬物療法の第一選択は,中等量の非定型抗精神薬であり,抑うつ, 不安に対してはセロトニン選択性再取り込み阻害薬SSRIぐらいに抑えるべきであるというのがガイドラインにおける薬物療法の基本である。牛島定信『境界性パーソナリティ障害の治療ガイドライン』(2010)抗うつ薬は抑うつ症状を改善するほか、衝動性や感情の不安定、激しい怒りの抑制のために処方されます。薬には副作用もありますし、人によって薬が合わないこともあります。低年齢の子どもの場合はより慎重に進めるべきという専門家もいます。主治医の先生と信頼関係を築き、よく相談した上で納得して治療を進めることをおすすめします。境界性パーソナリティ障害がある人にどう接したらいい?出典 : 境界性パーソナリティ障害がある方は身近な人に見捨てられることへの不安を強く抱いています。治療を行っていくにあたって、本人のなかでは葛藤や変化が訪れます。また治療も長期にわたって行われるために、効果がなかなか現れないことに対する苛立ちや不安感を抱くかもしれません。そんなときに寄り添うことができるのは医師ではなく、本人の家族や周囲の人たちです。その人たちが安全基地としての役割を担うことによって本人が治療に挑みやすい環境をつくることができます。あなたの居場所はここにある、いつもそばにいると安心させる協力的な姿勢と環境づくりが大切です。境界性パーソナリティ障害がある方は、感情や言動の変化が激しいために家族や周囲の人が振り回されてしまったり、本人からの強い物言いによって責任を感じてしまったりすることがあります。本人に対してどう接していいかわからず悩み、周囲の人がうつ病などになってしまうケースもあります。そのようにならないためには、本人に振り回されすぎないことが大切です。拒絶せず、過保護にもせず、程よい距離感をもって本人の言動を観察してみてください。境界性パーソナリティ障害がある人を支えることは難しく共倒れしてしまう危険性がありますので、本人に振り回されないように意識してみてください。また本人の言動の一つひとつは、本人に責任がある姿勢を貫いてください。境界性パーソナリティ障害の原因のうちの環境要因として家族の環境がありますが、たとえこれまでの関わりに何らかの問題があったとしても、その結果何を感じて、何を行うかは本人次第です。家族や周囲の人が責任を感じすぎてしまうと、本人は自分の問題の責任を家族に押しつけてしまい兼ねません。そうではなく「それはあなたの問題です。」と一線を引いたり、家族で抱えこまずに専門家に相談し支援を受けたりすることが重要です。上記と矛盾してしまうかもしれませんが、家族・周囲の人などとのかかわりの積み重ねによって、本人が負担を感じていることがあります。しかし具体的にどのようなかかわりが負担になっていたのかは、関係性の当事者たちには分からないことがあります。そのようなときには家族なども一緒に治療を受ける方が良い場合もあります。治療を受ける程ではなくても、本人とのかかわり方や自分を見直すよい機会になります。長年築いてきた関係を改善するには時間がかかります。一気に問題を解決しようとは考えずに、焦らず少しずつでも変わっていくことを意識してみてください。しかし本人の回復に貢献するために、家族や周囲の人自身が無理矢理変わらなければならないということではありません。「できないことはできない」と言うことも、現実的な一人の人として本人とかかわっていくためには大切なことです。本人にとって身近な家族などは、激しい感情をぶつけやすい人でもあります。そのために本人に対して怒りや嫌悪感を感じ、ときには拒絶してしまうこともあります。しかし拒絶してしまっては本人にとっての安全基地であることも、かかわり方をお互いに変えていくこともできず、根本的な治療を行うことはできなくなります。ですので、定期的に他の人に相談して助言をもらうことは重要です。周囲に安心して相談できる相手がいない場合は、心理カウンセラーなど専門家のサポートを求めることも考えましょう。参考:林直樹/監修『よくわかる境界性パーソナリティ障害』|(主婦の友社,2011)まとめ出典 : 境界性パーソナリティ障害の症状は多岐にわたって存在し、本人をはじめ周囲の人たちも悩まされます。しかし決して個人の性格の問題ではありません。本人が過去の体験を自分の糧となるように消化できていなかったり、現在またこれまでの環境が合わなかったりといったことが積み重なっています。その積み重なっている経験が考え方をつくり、そこから言動が生まれています。これらは適切な治療を受けることによって、少しずつではありますが変えていくことができます。境界性パーソナリティ障害がある人を支えることは大変なことだと思います。ですが、本人も自身の言動や思考をコントロールできず苦しんでいます。本人や家族だけで解決しようとするのではなく、専門家の支援も受けながら、お互いに適切な距離を取りつつ、また一方で支え合いながら付き合っていくことが大切です。
2017年05月23日