京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は11月24日、細胞シートを簡便に多数積層化する手法を確立したと発表した。同成果は同大医学部附属病院心臓血管外科(当時)の松尾武彦氏(現同大学医学研究科 客員研究員、神戸市立医療センター中央市民病院医長)、CiRAの山下潤 教授、同大学医学部附属病院心臓血管外科(当時)の坂田隆造 元教授(現神戸市立医療センター中央市民病院院長)、同大学再生医科学研究所の田畑泰彦 教授らの研究グループによるもの。11月20日に英科学誌「Scientific Reports」で公開された。研究では、マウスES細胞から作製した心筋・血管などを含む心臓組織シートをゼラチンハイドロゲル粒子を挿み込みながら15枚積層化し、厚さ約1mmにすることに成功。また、ラット心筋梗塞モデルに心臓組織シートを5枚積層化したものを移植したところ、移植後12週間にわたり血管形成を伴った厚い心臓組織として生着すると同時に梗塞部の心機能を回復させていることが認められたという。今回の研究で確立された手法はほかの臓器や組織にも応用可能で、3次元の高次組織形成を容易にするものとなる。今後は、ヒトiPS細胞からも同様の積層化シートを形成すること、ブタなどヒトに近い動物モデルを含め有効性や安全性を確認することなどを行っていく。また、同研究グループは将来的には積層化したヒト心臓組織シートを製品化し、重症心不全治療に広く用いることを目指すとしている。
2015年11月25日東京大学は9月11日、ヒトiPS細胞から肝細胞および胆管上皮細胞を簡便かつ効率的に作製する方法を開発したと発表した。同成果は同大学分子細胞生物学研究所の木戸丈友助教と宮島篤教授らの研究グループによるもので、9月10日に米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。近年、ヒトiPS細胞から肝細胞を誘導する試みが活発に行われているが、iPS細胞から肝細胞を誘導するには、さまざまなサイトカインによる多段階かつ長期間の分化誘導を必要とすること、また、全てのiPS細胞を均一な成熟肝細胞に分化させることが困難であるといった問題があった。今回の研究では、新たに肝前駆細胞のマーカーとしてCarboxypeptidase M(CPM)とうい物質を同定し、ヒトiPS細胞から肝細胞への分化誘導系からCPMの発現を指標にして自動磁気分離装置によって、簡便に効率よくヒトiPS細胞由来の肝前駆細胞を分取することに成功した。この肝前駆細胞は、肝細胞と胆管上皮細胞への分化能を維持したまま増幅することが可能だという。また、成熟肝細胞の性質を長期に渡って維持することから、薬物の毒性試験、新規薬物の探索、細胞治療などへの利用が期待できる。同研究グループが開発したヒトiPS細胞由来成熟肝細胞調製法は、迅速かつ低コストで肝細胞の大量調製を可能にするだけでなく、B型およびC型肝炎ウイルスやマラリアが感染する可能性もあるため、感染機構研究のツールとしての可能性もあるとしている。
2015年09月11日美味しいものを食べて、ぐっすり眠れるようになる――そんな夢のような食品が将来、発売されるかもしれません。その名も睡眠改善機能食品。従来の健康食品との違いや、どのような経緯で開発されているのかについて、調べてみました。健康食品に明確な定義はない「健康食品」という言葉を一度は聞いたことがあるかと思いますが、これがどのような食品を定義するか、みなさんはご存知ですか?厚生労働省のホームページによると、「健康食品と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しているものです」とあります。つまり、明確な定義もなければ、特定の効能や効果を備えている義務があるわけでもないということですね。これを初めて知ったときは、なんだか不思議な感覚を覚えました。睡眠を改善すると謳った健康食品も多いようですが、それも科学的に効果が証明されているものではないそうです。睡眠改善機能食品とは?そこで近年は、安全でかつ効果が実証されている健康食品をつくろうという動きも出てきたそうです。その1つが生物系特定産業技術研究支援センターの助成による研究で確立された、睡眠改善機能食品を評価する技術です。この技術によって、睡眠効果をもつ物質12種類と覚醒効果をもつ物質4種類が発見されたそうです。日本では睡眠に対して悩みをもつ人が年々増えており、それが健康被害だけでなく、事故を引き起こす原因にもなっているため、睡眠改善機能食品の開発は社会問題解決の一助になるとも考えられています。QOLの向上に発見された物質のなかでも、カロテノイド色素のクロシンとビフェニル化合物のホノキオールは特に睡眠効果が顕著にみられるそうです。実際に、この2種類の物質をマウスに投与したところ、クロシンはヒスタミン神経系に作用し、ホノキオールはGABAᴀ受容体が関与しているということがわかったそうです。どちらも明確にマウスの睡眠量を増加させました。今後は、睡眠改善機能食品として私たち人間のQOL(生活の質)の向上や事故の減少に役立てられることが期待されています。食品なので、味のほうにも期待したいところですね!Photo by Gabriel S. Delgado C.
2015年03月01日睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンは、海外では健康食品もあるほどですが、実は身近な食品からも摂取できるって知ってましたか?また、実は朝の散歩もメラトニンの分泌を促すそうです。今回は、聖マリアンナ医科大学麻酔学教室講師・内田和秀先生のお話を紹介します!カイワレダイコンなど野菜類に多くのメラトニンが!メラトニンの健康食品は、安全で自然な睡眠が得られることで、米国でブームになりました。しかし、中毒患者が新聞報道されるなど、安全性が疑問視されています。そこで、錠剤の服用に不安を感じる人におすすめしたいのが、食品からメラトニンをとる方法です。メラトニンを多く含むのはカイワレダイコンやシュンギク、アシタバなどの野菜だといいます。とはいえ、メラトニンを多く含む食品も、錠剤と比較するとメラトニン含有量はきわめて微量で、多量に食べたとしても効果はなかなか期待できません。メラトニンの前駆体、トリプトファンを含む食品ならたくさんあり!そこで、メラトニンを食べなくても代用できる方法があります。それは、メラトニン生合成の前駆物質、すなわち私たちの体内で、日常メラトニンがつくられるときの「材料」であるトリプトファンを食品から摂取する方法です。メラトニンに比べて多量に食品に含まれています。しかも、トリプトファンを摂取することにより、体内のメラトニン量が増加することが、実験で証明されているそうです。トリプトファンとは、必須アミノ酸の1つ。トリプトファンを比較的多く含む食品には、ふ、クルミ、ゴマ、落花生、ゆば、カジキ、カツオ、カツオ節、サンマ、タラコ、ブリ、トリレバー、チーズ、ノリ、ココアなどがあります。これらも、普段の食生活に取り入れることはそんなに難しくなさそうです。快眠のためにバランスの良い食生活を心がけましょう。午前中の散歩は夜間のメラトニン分泌を促す食品以外で快眠に有効な方法が、午前中の散歩です。午前中の散歩は、体内のメラトニン分泌に影響を及ぼします。なぜなら、午前中に散歩して太陽にあたると、目の網膜から神経連絡された信号が、メラトニンの合成器官である脳の「松果体」に運ばれ、メラトニン合成を強く抑制するからです。これにより、日中のメラトニン分泌が低下し、夜間のメラトニン分泌が上昇します。一部のホテルなどで時差ボケ対策として用いられている光療法は、この原理に基づくものです。なお、夜間、入眠直前まで強い光にあたるのは、メラトニンの分泌を低下させる原因になりますから、寝室は暗くしておくのが良いでしょう。散歩の効用は、メラトニン分泌の抑制のみならず、適度な運動の確保と食欲増進にも貢献し、しかも気分転換といった精神的効果も期待できるので、ぜひ日常生活に取り入れましょう。Photo by Francisco Osorio
2014年11月08日「食品添加物」というと「カラダに悪い」などのネガティブなイメージがあります。しかし、具体的にどのようにカラダに悪いのかを説明できる人は少ないでしょう。では、食品添加物とは一体なんなのでしょうか?添加物を摂らない生活なんて不可能?食品添加物は食品を作るときに加工・保存する目的で使われるものです。厚生労働省では、安全性について基準を設けており、その基準をクリアしたもののみ使用を認めています。食べものを手軽に、安く、おいしく食べるために、食品添加物は必要であるとも言えるでしょう。決してカラダに良いわけではないですが、なかったら不便な面もあって困ります。だから、私たちが食品添加物について気をつけるべきなのは「摂りすぎていないかどうか」なのではないでしょうか。「聞いたことがない」ものが多い食品添加物加工された食品の表示ラベルを見ると、原材料名が書かれています。そこに「聞いたことないぞ」と思うものが先頭に書かれていたら、摂りすぎについて考えてみるべきでしょう。最初に表示されているものは、その食品に一番多く含まれているものです。料理に詳しくない人でも、料理酒やみりん、ゼラチン、ベーキングパウダーくらいは耳にしたことがあるでしょう。もちろん、そういったものは添加物ではありません。しかし、乳化剤、酸味料、リン酸など、耳慣れない表記があったら、それが添加物である可能性が高いと言えます。自然界にあるものは「腐る」のが当たり前「腐りにくい」「味が変化しない」ものは添加物が多く入っています。そういう食品は、賞味期限はたっぷりあるし、いつ食べてもおいしいもの。しかし、自然界にあるものはすぐに「腐っていく」のが当たり前です。以前、あるテレビ番組で加工食品のマーガリンを使ったマウス実験を見たことがあります。とてもおいしそうなマーガリンでしたが、ねずみは一切口をつけません。つまり、ねずみさえ口にしないマーガリンを、私たちは毎日のように口にしているのです。それって、ちょっと怖い気がしませんか?だからといって、「加工品はすべてNG」「私、飲み物は水しか飲まないから」「コンビニ弁当とか無理だから」なんていう、めんどくさい女にはなりたくない……。じゃあ、いったいどうすればいいのでしょうか?脱・添加物はマイボトルから自炊が好きな人なら、なおさら目指したい「脱・添加物生活」。それは、ちょっとした工夫で達成できるはずです。仕事に恋に忙しくしていると、外食続きになってしまうこともありますよね。そんなときは、食事の内容に気を配りつつ、手軽にできる健康法があります。たとえば「マイボトルを持ち歩く」というのはいかがでしょう?コンビニやスーパーで手に入るドリンクには、添加物が含まれているものが意外と多いです。そこで、ドリンクを手作りして持ち歩けば安全だし、経済的にも安上がりです。保温性の高いステンレスマグなら、6時間くらいは熱を持続できるので、外が寒くても体は温まります。ただ、冷たいものならなんでもいけるマイボトルも、温かい飲み物は長時間持ち歩くと「味が変化する」とも言われ、特に紅茶などは味が落ちてしまうこともあるようです。適しているのは、ほうじ茶や麦茶、ハーブティーやコーヒーなど。1回分のコストは、飲むものにもよりますが20円~50円程度です。まずは飲み物から「食品添加物」を意識した生活を始めてみては、いかがでしょうか。毎日口にするものだからこそ、ちょっと考えてみましょう!※参考: 厚生労働省Photo by Pinterest
2014年10月24日(画像はプレスリリースより)ダイアナから新ダイエット食品ダイエットをする上で、食事はとても大切です。でも美味しくないダイエット食品では続かないことがほとんど……。そんな悩みを解決してくれる新商品が発売されます。5月15日、プロポーションづくりで定評のあるダイアナは、新商品「ナインニュートクリームシチュー味」を発売すると発表しました。本商品はモンドセレクションの「ダイエットならび健康製品カテゴリー」において優秀品質銀賞を受賞したとのこと。味とダイエット機能が両立した、今までにないダイエット食品が登場しました。ナインニュートクリームシチュー味ダイアナが掲げるプロポーションづくりのコンセプトのひとつが「継続は命」。本商品の味はモンドセレクションのお墨付き。クリーミーでコクのある旨みは審査員であるミシュランスターシェフ達の舌をもうならせる美味しさです。また、しっかりした味わいに仕上がっているため、主食を食べることなく満足でき、自然と長く続けられます。また、本商品はタンパク質の他9品目もの食材が含まれており、機能食品としても優れています。世界が認めた「ナインニュートクリームシチュー味」。ダイエットに悩んでいるのなら、こちらの商品を手に取ってみてはいかがでしょうか。【参考】・ダイアナ プレスリリース
2014年05月17日東京農工大学(農工大)は3月13日、多孔質粒子を一段階で簡便に作製できる粒子作製技術を開発したと発表した。同成果は、同大大学院 工学研究院 応用化学部門の村上義彦准教授、高見拓博士課程らによるもの。詳細は、米国化学会の「Langmuir」電子版に掲載された。経肺投与のための薬物送達システム(DDS)は、薬物(もしくは薬物キャリア)を吸入して肺へ薬物を送達する手法である。経肺投与DDSは、表面積が大きく毛細血管が豊富に存在する肺胞を利用するため、薬物の吸収効率が高いのに加え、特に肺疾患に対しては、患部に薬物を直接送達することができるため治療効果が高い、痛みを伴わないなどの特徴から、有望な投薬方法としての発展が期待されている。経肺投与DDSに適した薬物キャリアの条件としては、粒子径が1~5μm程度、粒子密度が低い、粒子表面の分子修飾が容易などを満たす必要がある。しかし、これらの条件を満たす粒子の調製は難しく、経肺投与DDSの発展を妨げる大きな一因となっていた。研究グループでは、疎水性高分子と高分子乳化剤を溶解した有機溶媒と水を混合する簡便なプロセスによる、表面に高分子が導入された機能性高分子粒子の製造方法の開発に取り組んできた。その研究過程において、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子を詳細に検討することにより、多孔質粒子が一段階で簡便に得られることを発見した。この粒子の形成は、o/wエマルションの油滴の中にw/oエマルションが自発的に形成する自己乳化現象に起因すると考えられる。今回得られた多孔質粒子の密度は非常に低いため、肺の気道に送達される薬物キャリアとして適している。さらに、高分子乳化剤によって粒子表面の分子修飾が容易であることからも、従来の経肺投与DDS用薬物キャリアの問題点を解決することができる。一般に、疎水性高分子と乳化剤を溶解した有機溶媒と水を混合しても、表面が滑らかな粒子しか形成されない。従来の報告では、粒子を調製する際には、毎分1万5000~3万回転という非常に速い撹拌速度が検討されていた。それらの従来の研究に対し、今回の研究では毎分8000回転という比較的遅い撹拌を用いて試したところ、粒子の表面に穴が多く生じる現象の発見、解明に至ったという。今回の成果は、従来の方法よりも機能性粒子を低コスト、低エネルギーで作製する技術としての発展が期待される。さらに、粒子を利用するバイオ・医療材料、電子材料、光学・分子デバイスといった幅広い研究領域への波及効果も高いと考えられる。特に、医療領域においては、従来は調製が困難だった経肺投与DDSに適した薬物キャリアとして最適な条件が簡便に得られるようになる。他の投薬ルートとして比較しても、経肺投与DDSは非常に魅力的である。また、強い鎮痛剤を経口投与できない患者にも適応可能な技術として確立できれば、末期癌の痛みの治療や、薬を飲み込むことができない患者への手術前後の鎮痛剤投与なども可能となる。研究グループでは、同技術が経肺投与DDSの発展に大きく寄与するものと期待されるとコメントしている。
2014年03月18日「栄養機能食品」と書かれた食品を、コンビニやドラッグストアで見かけことがあると思います。手軽に栄養補給ができ、お菓子として食べられるようなおいしいものも多いです。ですが、この「栄養」が何を指しているかご存じでしょうか?これは食品衛生法(飲食による危害の発生を防止するための法律)で、「ミネラル、ビタミンの補給を主な目的として定められた基準に従ってその栄養成分について機能の表示をしている食品」と定義されています。つまり、対象となる栄養素をミネラルやビタミンに限定していることが特徴です。また、その量については絶対量ではなく、上限値と下限値を設定しています。写真の「クリーム玄米ブラン」を見ると、「カルシウム」と「鉄」について「個包装1袋あたりカルシウム238mg、鉄2.5mg」と書かれています。今回のカルシウムと鉄についての栄養機能食品としての量的基準は、・カルシウム……210mg~600mg・鉄……2.25mg~10mgとなり、その基準値を満たしているため栄養機能食品という表示ができるというわけです。足りなくても多すぎても駄目で、仮にカルシウムが601mg以上入っていたとしても、「栄養機能食品」と表記することはできません。ただし、栄養機能食品については別の特徴もあります。それは、・カロリーや糖質(糖類)についての量的規制があるわけではない・特定保健用食品(以下、トクホ)のように消費者庁の許認可等は必要なく、数値設定をクリアしてさえいれば表示が可能となるということです。栄養機能食品といった言葉を見ると、なんとなく「カロリーや糖質(糖類)を抑え、普段足りないとされる栄養素を補える」といったイメージを持ちがちですが、実のところはそうとも言えません。写真の「クリーム玄米ブラン」を見てみると、1商品中にはカロリー370kcal、糖質34gが含まれています。これは、おつまみとしても食べられているクラッカー「リッツチーズサンド ハンディパック」(カロリー390kcal、糖質39g)とさほど変わりません。「身体にいいものだからたくさん食べないと」と思っていたら、実はカロリーのとり過ぎにつながっていた、という事態にもなりかねません。こういった「栄養機能食品」を利用する場合にはしっかり栄養表示まで確認し、カロリーや糖質などの量も換算して、上手に利用することを心掛けたいものです。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年12月06日日清食品ホールディングスおよび日清食品は3日、サンヨー食品および太平食品工業に対して、サンヨー食品の一部製品について、特許権侵害訴訟を大阪地方裁判所に提起した。同訴訟において、同社は特許権の侵害行為の差止と2億6,652万円の損害賠償を請求している。同社によれば、従来の即席麺は製造効率を高めるため、麺にウエーブを付けざるを得ず、そのため、そばやうどんなど、本来、真っすぐであるべき麺にもウエーブが付いていた。しかしながら、本件特許にかかる「ストレート麺製法」は、湯戻し時に麺同士がきれいにほぐれ、喫食時に真っすぐになる即席麺の大量生産を可能とし、滑らかな麺の「のどごし感」を味わえる革新的な製造技術であるとしている。同社はかねてからサンヨー食品と交渉を続けてきたが、残念ながら解決には至らず、やむを得ず提訴することとなったものであると説明している。なお、この訴訟提起による同社の業績に与える影響は軽微であるとのこと。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年12月04日