高齢者の5人に1人が認知症になる、という時代も近い。将来の認知症への不安と、どう付き合えばよいのか――。「父の日記には『電車を乗り間違えた』『講演の途中で話すことがわからなくなった』といった記述がだんだんと増えていきました。認知症の専門医である自分が、認知症かもしれない……という恐怖や心配は、父の心にあったと思います」そう語るのは、認知症専門医の長谷川和夫さん(92)を父に持つ、南高まりさん(59)。長谷川さんは、聖マリアンナ医科大学名誉教授で、認知症研究の第一人者。当たり前のように使われていた「痴呆症」という呼称を改めることに尽力し、認知症診断の物差しとなる「長谷川式簡易知能評価スケール」を開発した人物だ。そんな長谷川さんが『僕も認知症なんです』と明かし、世間を驚かせたのは’17年10月のこと。以後も長谷川さんは、進行していく症状を受け入れながら、認知症にまつわるさまざまな情報を発信し続けている。長谷川さんの活動をサポートしている長女のまりさんは、“父の記憶に残せるように”と、『父と娘の認知症日記』(中央法規出版)を今年1月に出版。長谷川さんの日記や写真を基に、60年の歩みをまりさんの視点で綴っている。長谷川さんが認知症になって気づいたことは、“認知症になったからといって、すべてがわからなくなってしまうわけではない。症状やメンタリティには波がある”ということ。「症状が進んでいくことへの苦しみや葛藤はやはりあったようです。『きついなぁ』と口にすることもありました。以前、父が外来で診ていたアルツハイマー病の牧師さんのことを話してくれたことがあって。その方はよくオルガンを演奏しておられたのですが、亡くなったあとに『僕にはメロディーがない、和音がない。共鳴がない。帰ってきてくれ、僕の心よ、全ての思いの源よ。』(※一部抜粋)と書かれた五線紙が見つかったのです」闘病中の苦しみと絶望がにじみ出た牧師さんのメモを見た長谷川さんは、「僕は患者さんの脳の状態を研究してきたけれど、本人の心の中を見たのはこれが初めて」と涙があふれたそうだ。ケアする側にもされる側にとっても必要なのは、安易に「声をかけあう」のではなく、「心を支えあう」関係性を築くこと。そう長谷川さんが説くのは、自身が地域のつながりに助けられたからだ。「父は認知症になる以前から、近所の『カムイ』という珈琲店に行くのが楽しみで、私もよく一緒に行きました。店主は父のことをよく理解してくださっているので、ひとりでも安心してくつろげる場所だそうなんです。そして40年以上父が通ってきた理髪店の『トリム』さんは、父がひとりで行けなくなると送迎までしてくださって。認知症になってから『支えてください』とお願いするよりも、当たり前の生活ができているころからつながりをつくっておくということが大事なんだと思います」サポートしてもらえる絆さえあれば、認知症であっても地域で生活できることを証明した長谷川さん。しかし、その環境づくりこそが大きな課題でもある。「父はいつも、『人はみんな生きてきた道のりがあって、その人しか持っていない関わりがある。だから、その関わりを大事にして絆をつくってほしい』と言っています」さまざまな人に支えられながら、穏やかな日々を過ごしていた長谷川さんだが、昨夏に体調を崩し、妻・瑞子さんとともに老人ホームに入居。体調は落ち着いているというが、コロナ禍のため、面会が許されるのは15分のみだ。「父はおそらく、ちょっと前のことや、先の予定なども把握しづらくなってきていて。『僕が今持っている物は時間だけ。だから“今”を一生懸命生きるんだよ』と口にしています。だから私は会ったときに必ず、『今やりたいことはある?』といったような、明るい話題を振るようにしていますね」「女性自身」2021年4月6日号 掲載
2021年03月29日健常と認知症の間の状態であり、“認知症グレーゾーン”ともいわれる「軽度認知障害(MCI)」。その初期のサインを見逃さなければ、“回復”も見込めるという。「もしかして認知症?」と不安になったあなた。チェックテストで診断し、現状を知ることから始めよう――。50歳を過ぎたあたりから、「会話中に人や物の名前がスッと出てこない」という人は多いのではないだろうか。「『ど忘れ』は50代、60代になりますと、誰でも起こってくるものです。頭のなかに記憶は残っているのに、どうしても名前がうまく思い出せず、もどかしいといった感じです。ところが、人や物の名前だけでなく、時系列を間違えて混乱する場面が増えてきたら注意が必要です」そう語るのは、『認知症グレーゾーン』(青春新書)の著者で、「メモリークリニックお茶の水」の朝田隆院長。認知症の患者数は年々増加傾向にあり、2040年には高齢者の4人に1人が、認知症を発症するとも予測されている。また、“巣ごもり”が長引くと認知機能が低下するといったデータも出てきている。「ど忘れ」は認知症の前段階、MCIの初期症状のシグナルかもしれないので、「年のせい」と、そのままにしておくのは危険という。「MCIを“認知症グレーゾーン”と呼んでいます。MCIが始まってから本格的な認知症に移行するまで平均7年。進行には個人差がありますが、始まって1年後には12%、4年後には半数が認知症を発症するともいわれています。認知症はある日突然発症するのではなく、約20年前から脳の変性が始まっています。いったん認知症になると回復するのは困難ですが、認知症グレーゾーンの段階で適切に対応すれば、4人に1人は元の状態に回復します。大切なのは認知症グレーゾーンのシグナルに気づくこと。生活のさまざまな場面で出てくるので見逃さないようにしましょう」(朝田先生・以下同)認知症では、脳の側頭葉で記憶をつかさどる“海馬”と呼ばれる部分が萎縮するが、海馬の萎縮が始まる前に前頭葉の機能が低下するケースがあるという。前頭葉は“脳の司令部”であり、やる気を生み出す中枢で、感情をコントロールする役割もある。イライラして怒りっぽくなる、パニックになって右往左往して自力で冷静さを取り戻すことが難しい、といったことがあると、それも認知症グレーゾーンのシグナルになる。また、女性の場合は、身だしなみに変化が出たら要注意!「毎日、丁寧にお化粧をしていた人が『マスクで顔が隠れるからいいや』と言ってだんだん雑になり手を抜くようになることもあります。『面倒だ』と言って先延ばしした出来事を忘れる。また、『物を取られたらどうしよう』と猜疑心が強くなり、財布や鍵などの置き場所を変えるケースが出てきます。ところが翌日、そのしまった場所を忘れてしまって、家中探し回る、といった出来事も、グレーゾーンのシグナルです」行動の変化にいち早く気がついて、認知症グレーゾーンの初期のうちに対策を立てれば、海馬の萎縮を事前に防いで、元に戻る可能性が高まるという。「認知症になったとしてもいつまでも自分らしく生活することはできますし、グレーゾーンの時期に一念発起すれば元に戻ることができます。大事なのは『新しいことにチャレンジする好奇心を持つこと』と『運動習慣』の2つ。できれば、40~50代の健康なうちから習慣づけておくといいでしょう」「女性自身」2021年3月16日号 掲載
2021年03月08日さまざまな病気やケガなどで治療をする患者を、サポートする看護師という職業。心身の不調で不安な日々を送る患者にとって、看護師の存在は頼りになる大きな存在でしょう。看護師をしている、ぱれちに(paretiny)さんは、ある看護師が看護学生だった時の忘れられない出来事を投稿。内容が反響を呼んでいます。『反応がなくても…』実習で、認知症患者の看護を担当することになった、看護学生の女性。その患者は声かけに対しても無反応でしたが、女性は毎日話しかけるようにしていたそうです。実習の最終日、女性がお別れの挨拶をすると、なんと患者の目から大粒の涙があふれたといいます。反応がなくても、いつも優しく寄り添い、話しかけてくれた人のことをちゃんと分かっていたのでしょう。読者からは感動の声が相次ぎました。・同じような経験があります。思い出して涙があふれました。・いい話。反応がなくても自分が誰だか分からなくても、ちゃんと感情はあるんだよね。・私も実習は、人として大切なことを患者さんから学んだ素敵な時間でした。初心を忘れるべからずですね。さまざまな患者との触れ合いの中で、看護師もまた、かけがえのない経験をもらっているのかもしれません。看護師の忘れられない出来事に、多くの人が心を打たれました。[文・構成/grape編集部]
2021年02月09日家族同然のペットが、普段と異なる行動を見せると、飼い主としては心配になるものです。牧野なおき(@ingaoho)さんがTwitterに投稿した、飼い猫にまつわるエピソードをご紹介します。夜に鳴く猫を、動物病院に連れて行くと…まるで人間の赤ちゃんが泣くように、よく『夜鳴き』をしていたという、飼い猫の『ふーちゃん』。心配になった飼い主さんは、動物病院へ連れて行き、獣医師に診てもらいました。飼い主さんが「老化による認知症ではないでしょうか?」と問いかけると、獣医師は…。「ネコチャン、相当高齢にならないと認知症にならないんで、甘えてるだけですね」ぼく「ネコチャン最近夜泣きするんですけど、老化による認知症ではないでしょうか」獣医「ネコチャン相当高齢にならないと認知症にならないんで、甘えてるだけですね」ぼく「そっか〜」点滴されてるねこ「シャーッ」— 牧野なおき (@ingaoho) January 2, 2021 甘えてるだけかーい!獣医師の言葉に安堵する飼い主さんのそばで、点滴を受けるふーちゃんは、威勢よく鳴くのでした…。ハッピーなオチに対し、ネット上では「かわいくて笑う」「うちも同じで、猫はさびしがってるだけといわれた」「勉強になります」といった声が上がっています。ふーちゃんに何ごともなくてよかったですね。きっと飼い主さんは、これまで以上に愛猫をかわいがることでしょう!飼い主さんは、ネット上で人気な猫たちの写真展『ねこ休み展 冬 2021』に、ふーちゃんの写真などを出展予定です。気になる人はチェックしてみてくださいね。猫の『ふーちゃん』Twitterアカウント:@foochan0711『ねこ休み展 冬 2021』[文・構成/grape編集部]
2021年01月04日「80代になると、認知症の罹患率は2割を超えるというデータが出ています。いざ、そのときに備えるのが、認知症保険です」こう話すのは、今月発売の『NEWよい保険・悪い保険』(徳間書店)共同監修などで知られる保険のプロ、長尾義弘さん(ファイナンシャルプランナー)。年齢階級別の認知症有病率(厚生労働省/認知症対策総合研究事業)によると、なんと女性は80代後半で43.9%が認知症を患うとされている。「正確に言うと、認知症は病名ではなく、記憶力や判断能力など、日常生活に支障をきたし、以前の能力レベルと比較して、明らかな低下が見られる状態のことを指します」(長尾さん・以下同)いま注目の認知症保険とは、介護保険の補償範囲を狭め、より安価にした商品。認知症と診断されたときに一時金が支払われるのが、基本タイプだ。’16年の太陽生命「ひまわり認知症治療保険」が累計販売38万件という大ヒット。これをきっかけに、大手を含め、多くの保険会社が同様の保険を発売した。各社が競い合っているため、この4年で、内容が進化。各社それぞれに保障内容に違いが出始めている。そこで今回、長尾さんが各社の商品を徹底比較。いま入るべき認知症保険ベスト3をランキングしてもらった。【第1位】太陽生命「ひまわり認知症予防保険(スマ保険)」「2年前に、太陽生命が商品をリニューアル。この保険の最大の特徴は、生存給付金特約を付加した場合、2年ごとに予防給付金を受け取れること。これを重視して第1位としました。この保険には、対面とネットの2種類があり、条件、保険料がかなり違います。今回はネット(スマ保険)が対象です」長尾さんの試算では、女性が40歳で加入した場合、月額保険料は2,739円。これで2年ごとに予防給付金1万円が受け取れ、もし認知症と診断されたときは一時金100万円が支払われる。「認知症というのは、本人も周囲もなかなか気が付かずに進行するもの。正常な状態と認知症の中間にMCI(軽度認知障害)と呼ばれる状態が存在し、この時期に治療を開始すれば、16〜41%の人が回復されます。60歳を過ぎたら、2年に1回の予防給付金をこのMCIを早期発見するスクリーニング検査のために使えば、この保険の価値が非常に高くなると思います」【第2位】SOMPOひまわり生命「笑顔をまもる認知症保険」「まずこの保険は、引受基準緩和型のため、60歳を過ぎて持病のある人でも簡単な告知で加入できるのがおすすめのポイントです。基本プランで、軽度認知障害と認知症、骨折治療や災害死亡を保障しています。認知症予備群であるMCIに対しても基準一時金の5%が受け取れることも評価できます」肝心なポイントだが、認知症保険で保険金が下りる時点で、本人はすでに認知症なので、そのお金を有効に使うことはできないかもしれない。つまり介護する人にお金を残すことが目的となる。ただ軽度認知障害のときなら、まだ本人の意思でそのお金の活用が可能。そこがこの保険のポイントだという。「その後、認知症と診断されたら、残りの金額を受け取れます。一時金のみの保険ですが、介護一時金や介護年金特約を組み合わせることも可能です」【第3位】朝日生命「あんしん介護認知症保険」「この保険の特徴は、要介護1で保険料免除になり、所定の状態になれば、介護一時金が支払われること。要介護になってからの保険料の免除は大きな安心につながります。じつは、ほとんどの認知症保険は女性のほうが保険料が高く設定されています。これは女性のほうが長生きで、しかも認知症になるリスクが高いことからです。その保険料が要介護1になると、免除になるというのは、女性にとってやさしい保険なのでおすすめです」他社と比べて、一時金補償額が大きいことも評価できる。ここまで紹介した保険は生命保険会社が発売しているもの。一方で、損害保険で、認知症の人の事故などに備える方法もある。「’07年、愛知県のJR線で91歳の認知症の男性が線路に侵入し、電車にはねられる悲しい事故がありました。このとき、JR東海は高齢の妻と別居の長男に高額な損害賠償訴訟を起こしたことを覚えている人も多いでしょう」離れて暮らす両親が起こした事故の補償にも備えられるのが、個人賠償責任保険型のあいおいニッセイ同和損保「まるごとマモル」だ。「基本的に普通の個人賠償責任保険は同居の家族しか補償されませんが、この保険は別居の家族も補償の対象になります」厚労省の推計では、’25年には、認知症患者数は700万人を超えるとされる。転ばぬ先のつえ、認知症保険で備えてみよう!「女性自身」2020年12月29日号 掲載
2020年12月18日2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるという推計(’17年・厚生労働省)もあるなど、社会問題化している認知症。発症したくないと脳トレに励む人もいるだろう。だが“栄養番長”として知られる医師の姫野友美先生は、「脳の健康は、脳トレだけでは守れない」と話す。「大切なのは、脳に必要な栄養をしっかり取って、不必要なものは体内に入れないこと。『腸脳相関』といって、腸と脳は密接に影響し合っていることが知られています。脳の健康を考えるなら、腸内環境の改善から始めるのが効果的なのです」(姫野先生・以下同)なかでも、糖質の取りすぎによる体の“糖化”が、体はもちろん、脳にも重大な影響を及ぼすという。「糖化による“コゲ”だけでも問題ですが、“酸化”の“サビ”と結びつくとさらに厄介です。糖やタンパク質が糖化・酸化のダブルパンチで、老化と密接に関わる『終末糖化産物』に変性すると、もはや簡単には修復できません」そのうえ、コゲつき、サビて、もろくなった器官には、“カビ”も発生しやすい。これらコゲ・サビ・カビが、一生消えないシミになり、老化を加速させる。認知症になる脳には、シミがたくさんあるというから、恐ろしい限りだ。また、認知症は“第3の糖尿病”ともいわれる。体質的な1型糖尿病、生活習慣病の2型糖尿病は、糖をエネルギーに変えるインスリンの作用が不足することで血糖値がコントロールできずに発症する。ブドウ糖をエネルギー源とする脳で、同じようにインスリンが効かなくなると、脳のエネルギーが不足して認知症を発症する。糖尿病の人は、そうでない人より、血管性認知症に約2.5倍、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすいという報告もある(糖尿病情報センター)。糖尿病で高血糖が続くと認知症を招きやすくなるのだ。食生活がこのリスクを高めていると姫野先生は指摘する。だが、年々私たちの健康志向は高まっており、高カロリー食や脂っこいものを控えるなど努めている人も少なくない。「“健康志向”はよいことですが、世間で『体によい』といわれる情報が、必ずしも医学的に正しいといえないことも多いのです。たとえば『毎日ヨーグルトを食べる』とよく聞きます。ですが、ヨーグルトに含まれる乳タンパクの一種は、腸の粘膜に炎症を起こしやすく、かえって腸内環境を悪化させてしまうこともあります」腸粘膜が傷つくと、有害物質も体内に吸収されてしまう。それが脳に侵入して認知症を誘発することがあるという。「腸内環境改善には、食物繊維や豆乳ヨーグルト、キムチなどの漬け物、納豆やみそなどの発酵食品を活用して多種類の腸内細菌を取り、バランスを整えることが大切です」「女性自身」2020年12月1日・8日合併号 掲載
2020年11月28日お笑いコンビ『EXIT』のりんたろー。さんが、2020年9月17日にTwitterを更新。介護に悩む人の心を軽くするコメントに、称賛の声が寄せられています。りんたろー。、泣きながら電話をかける祖母に…8年間、老人ホームで介護のアルバイトをしていていた、りんたろー。さん。祖母は老人ホームを利用しているといいます。ある日、今日が何日の何曜日なのか分からなくなってしまった祖母が、泣きながら母親に電話をかけてきたことがあったようです。焦る母親ですが、りんたろー。さんは、認知力が低下してしまった祖母にこのように声掛けをするのだとか。おばあちゃんが何日の何曜日かわからなくて泣きながら電話をかけてくると母が大騒ぎ「僕もわからないよ」「そのうち思い出すよ」「そんなに曜日が重要?」「職員さんが教えてくれるよ」僕は適当に言葉をかけます!介護って良い意味で適当さが重要一緒に落ちたら共倒れ!認知と共に楽しく生きよう!— りんたろー from EXIT (@rinnxofficial) September 17, 2020 「僕は適当に言葉をかけます!」と、介護には適当さも必要と明かすりんたろー。さん。きっと、肩に力を入れすぎないことは、認知力が低下した祖母にも、その介護をする母親にとっても、いい関係を保つことに繋がるのでしょう。ネット上では、たくさんの称賛の声が寄せられていました。・自分だって曜日と日にちが分からなくなることがある。そんなの重要じゃないって考えたい。・適当さがないと支える家族もつぶれてしまう。本当にその通りだと思います。・りんたろー。さんの言葉に救われました。ありがとうございます。認知症が進むと話が通じなかったり、すぐに忘れてしまったりして支える家族はどうしてもイライラしがち。ですが、「認知と共に楽しく生きよう!」というりんたろー。さんの言葉は多くの人を励ましたに違いありません。[文・構成/grape編集部]
2020年09月19日人生100年時代、大きな社会問題の一つである認知症患者の増加。その予防法の研究に当たる専門のドクター自身は、認知症リスクを下げるために、いったいどんなことに気をつけて生活しているのだろうーー。医療技術の進歩や生活環境が向上していることで、日本人の平均寿命は延び続けている。厚生労働省が7月末に発表した最新の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性で87.45歳と過去最高を更新。“人生100年時代”にまた一歩近づいた。「いっぽうで、認知症患者の増加も深刻な問題となっています。20年後には高齢者のじつに4人に1人が認知症、または予備群の軽度認知障害(MCI)になっているという予測もあります。健康寿命を延ばすためにも、認知症の予防がとても重要になってきます」そう語るのは、『医師が認知症予防のためにやっていること。』(日経BP)の著者で、聖路加国際大学臨床教授の遠藤英俊先生だ。遠藤先生は35年にわたって認知症研究に携わり、今年3月に長年勤めた国立長寿医療研究センターを退職、定年後から“チャレンジ”していることがあるという。「それまで忙しく働いていたのが、急に暇になるとガクンと老け込み、将来的に認知症になるリスクが高まってしまいます。私は定年後に仕事のペースを見直して、日曜日から火曜日は休み、水曜日から土曜日まではいくつかの病院で診察をしています。仕事を減らすことでできた時間を活用して、これまでできなかったゴルフなど趣味の時間に充てています。さらに私は『1年以内にゴルフのスコアで100を切る』といったように具体的な目標を設定しています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で休んだ時期もありましたが、料理教室に通い始め、ティラミスやローストビーフが作れるようになったんですよ」(遠藤先生・以下同)認知症のスペシャリストである遠藤先生自身が、趣味などを満喫することを通じて、同時に認知症予防の効果が期待できる習慣を取り入れているという。そこで今回、遠藤先生自身が認知症予防のために実践している効果的な健康管理の方法を詳しく解説してもらった。■血圧の薬はきちんと飲む高血圧(収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg)と診断されたら降圧剤を服用するが、さまざまな種類がある。「ARB(アンジオテンシン2受容体拮抗薬)というタイプの薬が、最も認知症リスクを下げるという調査結果が出ており、私も服用しています」■たばこはいっさい吸わない喫煙者は非喫煙者と比べて1.5〜2倍も認知機能が低下しやすいことがわかっている。喫煙により血管は収縮し、血流が低下する。「末梢にある細胞に酸素と栄養が届けられなくなり、神経細胞がダメージを受けることで認知症発症のリスクが高まるといわれています」■難聴になったら補聴器をつける意外と見過ごされがちなのが難聴(聴力の低下)だという。「聴力の低下によって脳に情報が入りにくくなります。聞こえづらくなったらきちんと補聴器を使うようにして、ふだんから大音量の音楽をヘッドホンで聴きすぎないように、耳をいたわることも大切です」■40〜50代はメタボ対策、60代以降は小太りを目指す肥満や代謝異常のある人は、脳の老化が早く進行してしまうという研究結果がある。しかし、過度なダイエットはタンパク質をはじめとした栄養素の不足を招くことに。「食事量と運動量が同時に減ると、筋力が減ったサルコペニアの状態を招きます。60代以降は少し太めくらいの体形がちょうどよいでしょう」また、健康診断で気になる項目があれば、放置してはダメ。「高血圧症と診断されたらまず食事を見直すとともに、運動によって血圧を下げる努力が必要になりますが、改善しない場合は降圧剤を使います。また、女性は閉経を迎えるころから代謝が悪くなり太る人も出てきます。太りすぎ、またやせすぎに気をつけましょう」「女性自身」2020年9月8日 掲載
2020年09月17日人生100年時代、大きな社会問題の一つである認知症患者の増加。その予防法の研究に当たる専門のドクター自身は、認知症リスクを下げるために、いったいどんなことに気をつけて生活しているのだろうーー。医療技術の進歩や生活環境が向上していることで、日本人の平均寿命は延び続けている。厚生労働省が7月末に発表した最新の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性で87.45歳と過去最高を更新。“人生100年時代”にまた一歩近づいた。「いっぽうで、認知症患者の増加も深刻な問題となっています。20年後には高齢者のじつに4人に1人が認知症、または予備群の軽度認知障害(MCI)になっているという予測もあります。健康寿命を延ばすためにも、認知症の予防がとても重要になってきます」そう語るのは、『医師が認知症予防のためにやっていること。』(日経BP)の著者で、聖路加国際大学臨床教授の遠藤英俊先生だ。遠藤先生は35年にわたって認知症研究に携わり、今年3月に長年勤めた国立長寿医療研究センターを退職、定年後から“チャレンジ”していることがあるという。「それまで忙しく働いていたのが、急に暇になるとガクンと老け込み、将来的に認知症になるリスクが高まってしまいます。私は定年後に仕事のペースを見直して、日曜日から火曜日は休み、水曜日から土曜日まではいくつかの病院で診察をしています。仕事を減らすことでできた時間を活用して、これまでできなかったゴルフなど趣味の時間に充てています。さらに私は『1年以内にゴルフのスコアで100を切る』といったように具体的な目標を設定しています」(遠藤先生・以下同)認知症のスペシャリストである遠藤先生自身が、趣味などを満喫することを通じて、同時に認知症予防の効果が期待できる習慣を取り入れているという。そこで今回、遠藤先生自身が認知症予防のために実践している習慣や趣味について解説してもらった。■凝った料理に挑戦する料理は食材の選択から調理法、時間配分、食器選びまで複雑な手順が必要で、脳を活性化させるという。「私はイタリア料理の教室に通っていて、最近はローストビーフを作りました。巣ごもりで通えないときは自宅で積極的に料理を作り、妻とも会話が増えました」■元気な犬を飼う犬を飼うことは、毎日の世話が伴う。「犬のために毎日の散歩が欠かせなくなるので、外に出て歩くことが日課になります。元気な犬を飼うと犬に引っ張られて早歩きになるというメリットも」。幸せホルモンが出て心の安定にも一役買うそうだ。■仕事は減らすが、ゼロにはしない社会的孤立により、認知症のリスクは1.6倍にも高まる。「人間の脳は、しゃべることで神経細胞が活性化します。アルバイトでもボランティアでもいいので、外に出る機会を増やすと、身なりを整えるなど緊張感が生まれて、これも脳の活性化に一役買います」■地域での付き合いを増やす一人暮らしでも地域に溶け込めば社会的孤立を防ぐことができる。「私も定年後から地域に溶け込もうと料理教室に通っています。趣味のサークル、マンションの総会などを活用しましょう」3密に注意しながらではあるが、地域の催しに参加することから始めよう。■マージャン、将棋など頭を使うゲームをするゲームも認知症予防の効果に期待ができ、マージャン、オセロ、囲碁、将棋など頭を使うものは特にお勧めという。「私もこの年になってマージャンを始めました。思考力や集中力を高めて脳を活性化するほかに、何人かで交流しながら行うことで孤立も防ぎます」■歌ってのどを鍛える懐かしい歌を歌って昔を思い出すことは、認知症予防にもつながるという。「声を出すとのどの機能が鍛えられるため、誤嚥防止にも効果が。私もときどき歌っています」いまはカラオケに行くのが難しい部分もあるが、家の中でも好きな歌を口ずさんでみよう。子育てや仕事で忙しいときはいいが“卒業”すると、かえって生活リズムが崩れて、抑うつ状態になってしまう人もいる。「定年退職後、家に閉じこもりがちになる男性が多いのですが、女性でも中には人付き合いが苦手という人もいます。趣味やサークルなどでアクティブに活動している人であればいいのですが、会話が少なくなると認知症のリスクが高まってしまいます。無理に人付き合いをしようとしなくても、外に出かけて他人と会話をする機会を増やすことから始めましょう。私も定年後に仕事のペースを落として、やりたいこと、新しいことにチャレンジしています」認知症を防ぐためにも、今から一つずつ、楽しく続けてみよう。「女性自身」2020年9月8日 掲載
2020年09月17日人生100年時代、大きな社会問題の一つである認知症患者の増加。その予防法の研究に当たる専門のドクター自身は、認知症リスクを下げるために、いったいどんなことに気をつけて生活しているのだろうーー。医療技術の進歩や生活環境が向上していることで、日本人の平均寿命は延び続けている。厚生労働省が7月末に発表した最新の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性で87.45歳と過去最高を更新。“人生100年時代”にまた一歩近づいた。「いっぽうで、認知症患者の増加も深刻な問題となっています。20年後には高齢者のじつに4人に1人が認知症、または予備群の軽度認知障害(MCI)になっているという予測もあります。健康寿命を延ばすためにも、認知症の予防がとても重要になってきます」そう語るのは、『医師が認知症予防のためにやっていること。』(日経BP)の著者で、聖路加国際大学臨床教授の遠藤英俊先生だ。遠藤先生は35年にわたって認知症研究に携わり、今年3月に長年勤めた国立長寿医療研究センターを退職、定年後から“チャレンジ”していることがあるという。「それまで忙しく働いていたのが、急に暇になるとガクンと老け込み、将来的に認知症になるリスクが高まってしまいます。私は定年後に仕事のペースを見直して、日曜日から火曜日は休み、水曜日から土曜日まではいくつかの病院で診察をしています。仕事を減らすことでできた時間を活用して、これまでできなかったゴルフなど趣味の時間に充てています。さらに私は『1年以内にゴルフのスコアで100を切る』といったように具体的な目標を設定しています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で休んだ時期もありましたが、料理教室に通い始め、ティラミスやローストビーフが作れるようになったんですよ」(遠藤先生・以下同)認知症のスペシャリストである遠藤先生自身が、趣味などを満喫することを通じて、同時に認知症予防の効果が期待できる習慣を取り入れているという。そこで今回、遠藤先生自身が認知症予防のために実践している効果的なリラックスの仕方を詳しく解説してもらった。■「面倒くさい」「飽きた」はタブーにネガティブな口グセは危険なサイン。「認知機能が低下してくると、体が動かない、ゴルフのスコアが計算できない、などといったことから周囲に引け目を感じてしまい運動をやめてしまう傾向があります。家族でもこうした口グセが出てきたら注意が必要です」■昔の出来事を思い出す過去の出来事を思い出すのはネガティブなことではない。「私は’02年に愛知県名古屋市の昭和日常博物館と共同で『地域回想法』を開発しました。懐かしい話題を語り合う回想法スクールへの参加によって、認知機能の低下が抑えられたという結果が得られています」■ぬるめのお風呂に30分つかる就寝前にぬるめのお風呂につかってリラックスを心がけよう。「1日の疲れをとるだけではなく、お風呂から出て体温が下がってきたころに眠れる効果があります。寝る前はスマホは見ないで十分な睡眠を取るように」コロナ禍で在宅時間が増えるなか、生活が不規則になり、不調を訴える人が増えている。「つい夜遅くまでテレビやスマホを見ていませんか?じつは睡眠不足は脳にとって大敵です」30〜50代はお弁当作りなどで早起きの女性が多い。認知症の中でも約7割と最も多くの患者数を占める「アルツハイマー型認知症」は、脳内アミロイドβと呼ばれるタンパク質がたまり、神経細胞の破壊につながることで起こる。睡眠不足はアミロイドβがたまってしまう原因になる可能性もあるという。「6〜8時間の睡眠を確保し、規則正しい生活を心がけましょう。就寝前にはぬるめのお風呂につかると体温が下がってきたところで入眠することができます」「女性自身」2020年9月8日 掲載
2020年09月16日人生100年時代、大きな社会問題の一つである認知症患者の増加。その予防法の研究に当たる専門のドクター自身は、認知症リスクを下げるために、いったいどんなことに気をつけて生活しているのだろうーー。医療技術の進歩や生活環境が向上していることで、日本人の平均寿命は延び続けている。厚生労働省が7月末に発表した最新の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性で87.45歳と過去最高を更新。“人生100年時代”にまた一歩近づいた。「いっぽうで、認知症患者の増加も深刻な問題となっています。20年後には高齢者のじつに4人に1人が認知症、または予備群の軽度認知障害(MCI)になっているという予測もあります。健康寿命を延ばすためにも、認知症の予防がとても重要になってきます」そう語るのは、『医師が認知症予防のためにやっていること。』(日経BP)の著者で、聖路加国際大学臨床教授の遠藤英俊先生だ。遠藤先生は35年にわたって認知症研究に携わり、今年3月に長年勤めた国立長寿医療研究センターを退職、定年後から“チャレンジ”していることがあるという。「それまで忙しく働いていたのが、急に暇になるとガクンと老け込み、将来的に認知症になるリスクが高まってしまいます。私は定年後に仕事のペースを見直して、日曜日から火曜日は休み、水曜日から土曜日まではいくつかの病院で診察をしています。仕事を減らすことでできた時間を活用して、これまでできなかったゴルフなど趣味の時間に充てています。さらに私は『1年以内にゴルフのスコアで100を切る』といったように具体的な目標を設定しています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で休んだ時期もありましたが、料理教室に通い始め、ティラミスやローストビーフが作れるようになったんですよ」(遠藤先生・以下同)認知症のスペシャリストである遠藤先生自身が、趣味などを満喫することを通じて、同時に認知症予防の効果が期待できる習慣を取り入れているという。そこで今回、遠藤先生自身が認知症予防のために実践している効果的な食事方法を詳しく解説してもらった。■週2〜3回はカレーを食べる香辛料の一つであるターメリックに含まれる「クルクミン」というポリフェノールの認知症予防効果の注目度が高まっている。「ただし、カレーは高カロリー食なので、食べすぎるとメタボになってしまう危険性もあります。週2〜3回を目安に食べましょう」■フルーツ、魚、いも類、卵は毎日食べる福岡県久山町の町民約1,000人を15年間追跡した九州大学の調査では、認知症リスクが低い人が多めに食べていた食材は、大豆製品、牛乳、乳製品、緑黄色・淡色野菜、海藻類など。「果物、魚、いも類、卵もプラスして、多様な食材をまんべんなく食べましょう」■シークヮーサーのドリンクを飲むかんきつ類に含まれる「ノビレチン」には高い抗酸化作用が期待できる。「東北大学の研究では、毎日かんきつ類を食べる人は、週2回の人と比べ認知症リスクが14%低下していました。ノビレチンが豊富なかんきつ類はシークヮーサー。私はジュースで飲んでいます」■米と酒の取りすぎに注意するごはんを食べすぎるとほかの食品が食べられなくなるので控えめに。「久山町の研究では、減らすとよい食事に米と酒が挙げられました。適量のお酒は会話の潤滑油になりますが、飲みすぎには気をつけて」遠藤先生も年齢とともに食事の量を減らしているそうだ。■週2回は肉類を食べる年齢とともに筋肉の量は減り、筋力が衰えてくる。サルコペニアの状態のままでいると、足腰が弱って転倒しやすくなる。「下肢の筋トレを行い60代半ばからはタンパク質を意識して取るように心がけましょう。私は週2回は肉を食べるようにしています」■赤ワインを毎日2〜3杯楽しむ「フランスのボルドー大学の研究で、赤ワインに含まれるポリフェノールには高い抗酸化作用があり、動脈硬化や高血圧を予防するほか、認知症の発症を抑えるという報告があります」ただし飲みすぎには注意。1日にグラス2〜3杯を目安にしよう。「ポリフェノールには抗酸化作用、抗炎症作用が認められていて、これが認知症予防に効果があるのではないかと考えられています。クルクミンはカレーに使われる香辛料のターメリックに含まれています。40〜50代のうちからクルクミンを含む食事、カレーを食べると認知症の発症を防ぐ可能性があるということです」ポリフェノールを含む赤ワインも適量を楽しむならOK。ジュースなら、ノビレチンが含まれるかんきつ類がいいそうだ。複数の調査から、多様な食材をまんべんなく食べている人は認知症リスクが低くなることがわかってきている。「女性自身」2020年9月8日 掲載
2020年09月16日人生100年時代、大きな社会問題の一つである認知症患者の増加。その予防法の研究に当たる専門のドクター自身は、認知症リスクを下げるために、いったいどんなことに気をつけて生活しているのだろうーー。医療技術の進歩や生活環境が向上していることで、日本人の平均寿命は延び続けている。厚生労働省が7月末に発表した最新の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性で87.45歳と過去最高を更新。“人生100年時代”にまた一歩近づいた。「いっぽうで、認知症患者の増加も深刻な問題となっています。20年後には高齢者のじつに4人に1人が認知症、または予備群の軽度認知障害(MCI)になっているという予測もあります。健康寿命を延ばすためにも、認知症の予防がとても重要になってきます」そう語るのは、『医師が認知症予防のためにやっていること。』(日経BP)の著者で、聖路加国際大学臨床教授の遠藤英俊先生だ。遠藤先生は35年にわたって認知症研究に携わり、今年3月に長年勤めた国立長寿医療研究センターを退職、定年後から“チャレンジ”していることがあるという。「それまで忙しく働いていたのが、急に暇になるとガクンと老け込み、将来的に認知症になるリスクが高まってしまいます。私は定年後に仕事のペースを見直して、日曜日から火曜日は休み、水曜日から土曜日まではいくつかの病院で診察をしています。仕事を減らすことでできた時間を活用して、これまでできなかったゴルフなど趣味の時間に充てています。さらに私は『1年以内にゴルフのスコアで100を切る』といったように具体的な目標を設定しています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で休んだ時期もありましたが、料理教室に通い始め、ティラミスやローストビーフが作れるようになったんですよ」(遠藤先生・以下同)認知症のスペシャリストである遠藤先生自身が、趣味などを満喫することを通じて、同時に認知症予防の効果が期待できる習慣を取り入れているという。そこで今回、遠藤先生自身が認知症予防のために実践している効果的な運動方法を詳しく解説してもらった。認知症予防につながる効果が論文で明確に報告されているのは、ウオーキング、ジョギング、エアロビクスなどの有酸素運動だ。「海外の論文で認知症を発症していない高齢者4615人を5年間追跡調査したところ、歩行よりも強い有酸素運動を週3回行っていた人たちは、行っていない人たちに比べてMCI、アルツハイマー型認知症、すべての認知症を発症するリスクがいずれも低いことがわかりました」■週3回、30分間の早歩きをする運動習慣がなかった人は、夕方以降の涼しい時間帯に、30分の早歩きを週3回トライしてみよう。「足踏みしながら計算する『コグニサイズ』は家の中でできるので夏場はお勧めです。足踏みしながら数を数え、ももはできるだけ高く上げるのがポイントです」■ダンスとゴルフで適度な運動仲間と一緒にコースを歩き、スコアや距離を計算しながら打つゴルフは頭も使えて一石二鳥。「また、社交ダンスは音楽に合わせて体を動かす有酸素運動。異性と接触することで、ときめきが生まれて若々しさを保つこともできますよ」■自宅での“座りすぎ”に気をつける新型コロナや熱中症を避けるために巣ごもり生活が続くが、屋内で座ってばかりいると運動不足に。「家の中で、踏み台を上り下りするだけでも効果があります。私は、ジムに通えない時期は家の中にランニングマシンを置き、走りました」認知症の中でも約7割と最も多くの患者数を占める「アルツハイマー型認知症」は、脳内アミロイドβと呼ばれるタンパク質がたまり、神経細胞の破壊につながることで起こる。筋肉を動かすことで心拍数が増加。脳の酸素摂取量や血流が増すことで、アミロイドβの蓄積を防げるといわれている。「これまで運動習慣がなかった人はまず週3回、30分の早歩きを目標にすることをお勧めします」「女性自身」2020年9月8日 掲載
2020年09月16日“脳トレドリル”はたくさんあるけど、解いているだけで疲れちゃう……。でも、「瞬読」は見るだけで「右脳」がフル回転、簡単に認知機能を上げられる方法なんですーー。「体は意識して鍛えることができますが、頭の中はなかなか難しい。脳を鍛えるためには、多くの情報を『インプット』し、その情報を自分自身の知識として『アウトプット』することが重要になります。『瞬読』は、その最善のトレーニング方法。しかも、1日2〜3分、バラバラに並べられた文字を見るだけです!」そう語るのは、一般社団法人「瞬読協会」代表理事の山中恵美子さん(48)。「SSゼミナール」「APマスターズ」など全国で30校以上の学習塾を経営する株式会社ワイイーエスの社長も務めている。山中さんが出版した『1冊3分で読めて、99%忘れない読書術瞬読』(SBクリエイティブ)は、10万部の大ヒットを記録している。では、この「瞬読」とは、いったいなんなのだろうか。「高い理解度を保ったまま、短時間で本を読めるようになるためのメソッドを瞬読と呼んでいます。マスターすれば、ほんとうに1冊を3分で読むことができるようになります。しかし、これは“速読”とは違うのです。瞬読をするメリットは、“右脳の潜在能力”を引き出すことができる点にあります。これによって『記憶力』や『問題処理能力』の向上をはじめ、『創造力』なども高められるのです」空間把握や、芸術性、ひらめきをつかさどる右脳。アーティストなどは右脳を使うことに秀でているとされるが、ふつうの主婦にとっても右脳を鍛えることには大きな意味があるという。「右脳を鍛えることで、暗記力や集中力が高まる。すると、“直感”が冴えてくるんです。私たち人間は一日中、判断や決断をして生きています。あれかこれどちらを食べるか、あの人とこの人どちらに話しかけようか……というふうに。そしてその判断の基準は、直感にもとづいていることがほとんどです。右脳がしっかり鍛えられていて直感が冴えている人は、決断を迫られたときに、正しい選択ができるようになる。つまり瞬読のトレーニングは、即時的な判断が求められる場面で大きな力を発揮するのです」瞬読のメリットは、それだけではない。「瞬読のミソは、『インプット』と『アウトプット』。人間の頭は、アウトプットしたことはなかなか忘れないようになっています。テレビをただ見る(インプット)より、その番組についての話を友達とする(アウトプット)ほうが、番組の内容もはっきりと覚えられますよね。これを繰り返すことで、認知機能の向上にも一役買うのです。人の名前が覚えづらくなったという人もいると思いますが、このトレーニングを積めばもの忘れなども改善するはずです」では、具体的な瞬読のトレーニング法とは。『1冊3分で読めて、99%忘れない読書術瞬読』にはバラバラに並べられた文字の問題が掲載されている。そのバラバラに並べられた文字から元の言葉を類推し、頭にイメージを思い浮かべたあと、口に出してみる。「一見バラバラに並べられた文字ですが、並べ替えるとひとつの単語や文になっています。元の単語を類推して、そのイメージを思い浮かべてください。そして口に出して『アウトプット』しましょう」3秒ほど見ても答えが出なかったら、次の問題に移ってしまおう。答えは出せなくても、ちゃんとトレーニングになっていると山中さんは語る。「実は、この問題を解いている間、ふだん使っていない右脳がものすごく動いているんです。毎日これを見ていたら、柔軟運動を続ければ体が柔らかくなるように、パッと見ただけで答えが何なのかわかるようになります。まずは1日2〜3分、この問題を見るクセをつけましょう」「女性自身」2020年8月11日 掲載
2020年08月07日「認知症と診断されたからといって、オレの中で何かが変わったということはありません。いきなりすべてわからなくなったわけでもないし、オレはオレのまま。いつもどおりの毎日が続いているような感じなんですけどね」そう語るのは、本誌連載「ゆるゆる人生相談」でおなじみの漫画家でタレントの蛭子能収さん(72)。あの蛭子さんが認知症にーー。7月9日に放送された『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、記憶力が著しく衰えたことから専門医を受診した蛭子さんは、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している軽度の認知症であることを告げられた。「物忘れがひどかったけど、年のせいかなと思っていたら、認知症と言われたことは、ショックと言えばショックかもしれません。ボケたらおしまいというイメージがあったし、何もできなくなると思っていたけど、オレ自身は普通に暮らしているし、認知症はそんなに怖いものじゃないと思いました。だから街を歩いていても『おう蛭子さん、認知症になったんだったね』とか明るく声をかけてもらっても、オレは全然、構わないんですけど……」と蛭子さんは語るが、認知症の公表には、家族に迷惑をかけたくないという思いもあった。とくにレビー小体病は、アルツハイマー病に次いで、認知症の主な原因になる病気で「レビー小体」という特殊なタンパク質が大脳に蓄積して、神経細胞を破壊。認知症の症状が進む。その特色は初期の段階で「幻視」があることだ。蛭子さんのマネージャーがこう証言する。「洗濯カゴの衣類を見て、奥さんが倒れていると思って叫んだり、デパートの売場の中を電車が走っていると言いだしたりと、少し前から幻視があったようです。また、日常生活でも、とくに朝や、夕方から晩にかけては混乱がはげしくなり、1人で入浴すると、髪を3回も4回も洗ってしまうことがあるようで、奥さんの介護が不可欠なときもあります。認知症の進行を遅らせるためにも、今後もできる範囲で仕事をしていきたいと蛭子本人も語っています。また周囲に認知症であることを理解してもらうことで、家族の負担が少しでも軽減できると思い、認知症であることをあえて公表しました」献身的に支える奥さんに対する感謝の言葉も蛭子流だ。「いろいろやってくれるんですよ、すごくありがたいと思っています。料理も手早くササッとやるし、うまい料理は……食パンですね!」すかさず隣にいたマネージャーが「それはダメです!せめてフレンチトーストにしてください!!」とダメ出しする。ボケているのか、狙っているのか、わからない切り返しは以前と変わらない。認知症であろうがなかろうが、蛭子さんは、蛭子さんだった!「女性自身」2020年8月18日・ 8月25日合併号 掲載
2020年08月04日「物忘れがひどかったけど、年のせいかなと思っていたら、認知症と言われたことは、ショックと言えばショックかもしれません。ボケたらおしまいというイメージがあったし、何もできなくなると思っていたけど、オレ自身は普通に暮らしているし、認知症はそんなに怖いものじゃないと思いました。だから街を歩いていても『おう蛭子さん、認知症になったんだったね』とか明るく声をかけてもらっても、オレは全然、構わないんですけど……」そう語るのは、本誌連載「ゆるゆる人生相談」でおなじみの漫画家でタレントの蛭子能収さん(72)。あの蛭子さんが認知症にーー。7月9日に放送された『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、記憶力が著しく衰えたことから専門医を受診した蛭子さんは、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している軽度の認知症であることを告げられた。レビー小体病は、アルツハイマー病に次いで、認知症の主な原因になる病気で「レビー小体」という特殊なタンパク質が大脳に蓄積して、神経細胞を破壊。認知症の症状が進む。「いつか本当に何もわからなくなってしまうかもしれないと考えると、すごく怖くなってしまいます。でも、認知症になっても、仕事はできると思いますよ。今までも総理大臣の名前は覚えていないけど、競艇選手の名前は今でもしっかり頭に入っているように、好きなことは覚えているけど、興味がないことは流してきました。だから、正直、認知症になった実感はありません。オレにしてみれば、みんなが面白がってくれたら楽しいし、体が元気だから、働けるうちは、働きたいですね。仕事でもあまり気を使わないで、これまでどおり付き合ってくれたらうれしいですね」漫画家、タレントと同じように、肩書として「認知症」がついたようなものだと語る蛭子さんに多くのエールが寄せられた。とくにタレントの有吉弘行(46)は、7月12日のラジオ番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系)でも「本人がよければ復帰して元気にやってほしい」と語り、また、マツコ・デラックスとの番組『マツコ&有吉かりそめ天国』(テレビ朝日系)でも、「アルツハイマーになったらテレビ出ちゃいけないのか、仕事しちゃいけないのか、何にもできないのかということになるもんね。一生懸命やってほしい」とコメント。「有吉さんは、テレビの世界での昔からの仲間。オレを気にかけてくれていることは、マネージャーから聞いて知っています。芸能界は、注目されないとどんどんヘコんで(落ち目になって)いきますが、有吉さんは毒舌だけど、オレが認知症になる前からオレを取り上げて、無料で宣伝してくれます。きっとオレのことが好きなんでしょうね。本当は会ってお礼をしたほうがいいでしょうけど、オレは話すのが苦手だから。有吉さんが勝手に話してくれて、オレは黙ってるだけでいいんなら別に会ってもいいですけど……、(マネージャーを見て)やっぱり『また会いたいな』ということにしてください」頭をポリポリしながら笑顔を見せる蛭子さん。’25年には65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれ、認知症の人が当たり前にいる社会が目の前にある昨今。蛭子さんが働き続ける姿は、認知症の人やその家族に勇気を与えるかもしれない。「漫画家仲間の根本敬さんは『これからは100号とか大きな絵を描いてみたら』とアドバイスをしてくれました。面倒くさいということはないけど、絵を描くよりも、ギャラがよくて、楽に稼げるテレビの仕事がしたいです」認知症であろうがなかろうが、蛭子さんは、蛭子さんだった!「女性自身」2020年8月18日・ 8月25日合併号 掲載
2020年08月04日漫画家やタレントとして活躍する蛭子能収(えびす・よしかず)さんが、医療番組『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で軽度の『認知症』と診断されました。蛭子さんは、2020年7月10日にTwitterを更新し、「認知症以外は健康体そのもので、毎日元気に過ごしています」というコメントとともに、笑顔の動画を投稿。昨晩、テレ東さんの番組『主治医が見つかる診療所』で放送されましたように、認知症になりました。でも毎日元気に過ごしています。認知症以外は、人間ドックでも健康体です。フォロワーさん、応援してくださるみなさん、これからもよろしくお願い致します。 pic.twitter.com/fhvBlj5kVi — 蛭子能収(YoshikazuEbisu) (@ebisu_jp) July 10, 2020 ネット上では「身体を大切になさってください」「何があってもずっと応援しています」といったコメントが寄せられています。蛭子能収の『認知症』診断に、マツコ・デラックスが言及同月17日に放送されたトーク番組『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)では、収録日の前日に蛭子さんの報道があったことを受け、出演者である有吉弘行さんとマツコ・デラックスさんの間で話題に。2人は、同番組にもたびたび出演していた蛭子さんの認知症診断に、驚きを隠せない様子を見せます。有吉さんが「ご本人とご家族がいいのであれば、番組に出てもらうのは難しいのかな?笑えないのかな」というと、マツコさんは…。じゃあ例えばだよ。そういう風に、認知症になっちゃった人は、今までみたいなことができないのかっていうのも変じゃない。マツコ&有吉 かりそめ天国ーより引用マツコさんは「急に態度を変えるのも変。今まで通りできないの?」と続けます。すると、有吉さんは「蛭子さんは茶目っ気のある人だから、わざとツッコませる形に動きそうじゃん」と、自身の考えを明かします。それに対しマツコさんは、蛭子さんの印象を交えながら、こう語りました。あと、ちゃんとそれをやっても悲壮感が出ない稀有な人だと思うんだよね、蛭子さんって。マツコ&有吉 かりそめ天国ーより引用マツコさんは蛭子さんの持つやわらかな、ゆとりのある雰囲気について指摘しました。さらに「またご一緒したいな」という有吉さんに、マツコさんも「私たちには今までの感謝もある」とうなずきます。2人のトークに対し、視聴者からはさまざまな反響が上がりました。・「急に態度を変えるのは変」という視点はすごく大事だと思う。・難しい問題だと思う。でも、共演者やスタッフ側が避けるのではなく受け止める姿勢を持っているのは、だいぶ大きいんじゃないかな。・マツコさんや有吉さんが、こういったセンシティブな話題を扱う時に人を傷付けないような言葉選びをできるのは、さすがだと思う。品のよさを感じた。症状や進行の速度は人によって異なるため、仕事が可能な状況かどうか一概にはいえませんが、仕事仲間である共演者からの「また一緒にできれば嬉しい」というエールは、励みになるでしょう。マツコさんや有吉さんの想いが、蛭子さん本人にも届いているといいですね。[文・構成/grape編集部]
2020年07月18日病は人から大切なものを奪っていきます。心身の健康だけでなく、時には記憶まで消してしまうことも。しかし、家族への愛が病を超えて、奇跡を起こすこともあるとか。フォロワーから募集した話を漫画化しているババレオ(babareo2)さんは、ある女性の祖母のエピソードを漫画に描きました。『じぃじとばぁば』認知症の祖母は家族の顔も分からなくなっていたはず。ですが、末期病棟に入院した祖父の顔を見ると、記憶を取り戻しました。そして葬儀の時も、記憶のある状態で見送ることができたのです。愛ゆえの奇跡に多くの人が感動し、「おじいちゃんにさびしさや悲しみを感じさせずに送ったんだね」「夫婦の絆に泣いた」などのコメントを寄せました。心揺さぶられるエピソードですね。ババレオさんは、ブログも更新中。Instagramより早く漫画が投稿されるので、気になる人はこちらもあわせてご覧ください。ブログ:世にも奇妙ななんかの話[文・構成/grape編集部]
2020年07月09日「今、日本に認知症の人は460万人以上、予備群である軽度認知症(MCI)までを含めると860万人以上いるといわれています。これから自粛生活が徐々に解除されても、外出を控える生活はまだ続くでしょう。そうなると、新たな発症者や、重症化する人が想像を超えて増えるのではないか、ということを危惧しています」と警鐘を鳴らすのは、諏訪中央病院名誉院長で作家の鎌田實さん。巣ごもり生活が長く続き、人と会わない・接触しないことで、高齢者に限らず、まだ認知症とは関係のない中高年層も、認知機能が低下していく可能性があるという。「今のような日常生活において、まず気をつけなければいけないのが食事。なかでも、野菜をとることがとても大事です。認知症を進行させるのは“慢性炎症(くすぶるような不調)”といわれていますが、野菜のもつ“抗酸化力”が、それを予防してくれるのです。β-カロテンやリコピンといった、赤・黄・緑の色素を、毎日できるだけたくさん食べるよう心がけるべきです」そこで、71歳にして現役活動中の鎌田さんがみずから実践している“認知症予防のための食習慣”を紹介。その効果についても解説していただいた。【食習慣1】卵は1日に2〜3個、食べる「卵には、認知機能の維持によいとされるコリンが含まれています。このコリンが、記憶や脳を動かすために重要なアセチルコリンという神経伝達物質の材料になるのです。そしてこの時期は特に、タンパク質をしっかりとって筋肉の貯金をすることも必要ですから、タンパク質の多い卵を食べることで、認知機能と筋肉を維持しましょう」(鎌田さん・以下同)〈おすすめ〉ゆで卵のウーロン茶漬け「僕はつねに、殻をむいたゆで卵を6個ほど保存容器に入れて、ウーロン茶と少量のめんつゆに漬けています。見た目が味つけ卵みたいになるので(笑)、塩などはつけずにそのまま1日2〜3個、食べます」【食習慣2】発酵食品は複数種を組み合わせる「腸内環境は認知症と強い関連性がある、と論文にもありますが、腸内環境を整えるために発酵食品は欠かせません。ポイントは“乳酸菌+納豆菌”など、異なる種類を多種多様にとること。そして、今週は水戸納豆を食べたから来週は北海道の納豆……と、菌のタイプが違う多産地のものを食べることで、善玉菌が活性化します」【食習慣3】ビールを上手に利用する「ビールに含まれているホップの苦味成分、イソα酸がアルツハイマー型認知症を予防するという研究があります。この成分は老廃物を取り除く免疫細胞を活性化するそうです。ノンアルコールビールでもOK。ただし、飲みすぎには注意してください」〈おすすめ〉おつまみは「ピーカンナッツ」「ピーカンナッツには、抗酸化力の高い脂質が多く含まれています。だいたい5粒ぐらいが適量です。ほかにも、殻つきのピーナッツだったら20粒ぐらい。その場合、殻を割って茶色の薄皮はむかずそのまま食べると、ポリフェノールも一緒にとれます」【食習慣4】チョコレートは高カカオのものを「チョコレートに含まれるカカオポリフェノールには、活性酸素を除去し、老化や慢性炎症を防ぐ効果があります。できれば、カカオ含有率が70%以上のチョコを1日25g。おやつとして食べていただくと、リラックス効果も得られ、認知症予防には間違いなくいい。僕はいつも、ブラックコーヒーと一緒につまんでいます」鎌田さんの人生観は、PPH(ピンピンひらり)だそう。「死ぬギリギリまで“ピンピン”していたい。そして、みんなに『サンキュー、グッバイ』がちゃんと言えて、“ひらり”といけたらいいなと思っています。85歳まで生きるとしたら、85歳まで、冬はスキー、月に1度はレストランに行って好きなものを食べる……みなさんもぜひ、食事や運動といった生活習慣を見直して、ピンピンひらりの生活を楽しく過ごしていただきたいですね」「女性自身」2020年6月9日号 掲載
2020年06月15日「今、日本に認知症の人は460万人以上、予備群である軽度認知症(MCI)までを含めると860万人以上いるといわれています。これから自粛生活が徐々に解除されても、外出を控える生活はまだ続くでしょう。そうなると、新たな発症者や、重症化する人が想像を超えて増えるのではないか、ということを危惧しています」と警鐘を鳴らすのは、諏訪中央病院名誉院長で作家の鎌田實さん。巣ごもり生活が長く続き、人と会わない・接触しないことで、高齢者に限らず、まだ認知症とは関係のない中高年層も、認知機能が低下していく可能性があるという。「今のような日常生活において、まず気をつけなければいけないのが食事。なかでも、野菜をとることがとても大事です。認知症を進行させるのは“慢性炎症(くすぶるような不調)”といわれていますが、野菜のもつ“抗酸化力”が、それを予防してくれるのです。β-カロテンやリコピンといった、赤・黄・緑の色素を、毎日できるだけたくさん食べるよう心がけるべきです」そこで、71歳にして現役活動中の鎌田さんがみずから実践している“認知症予防のための食習慣”を紹介。その効果についても解説していただいた。【食習慣1】野菜はジュースとみそ汁でとる「厚生労働省は、野菜を1日350g以上食べるよう推奨しています。これをジュースにしたら必要量の約7割はとれるので、残りは、冷蔵庫にある野菜を使って具だくさんみそ汁を作ります。おすすめの具は、かぼちゃ・ブロッコリー・トマト・にんじん・きのこ・玉ねぎなど。基本はそのときにある野菜でかまいません。野菜には抗酸化力の高いポリフェノールが含まれていて、脳の神経細胞を保護し、認知機能の低下を抑えてくれる。腸にもいいので、免疫力もアップします」(鎌田さん・以下同)〈おすすめ〉鎌田流野菜ジュース「鎌田流の野菜ジュースは、小松菜やほうれん草などの野菜と、りんごやバナナなどの果物、牛乳かヨーグルトを合わせ、仕上げにえごま油を小さじ1杯」【食習慣2】青魚を週に2回は食べる「青魚(サバ、サンマ、イワシなど)には、EPAやDHAといった『オメガ3脂肪酸』が多く含まれていて、抗酸化力そのものが強い。なおかつ、悪玉LDLコレステロールを減らし、動脈硬化も防いでくれます。それによって血管も若々しくなるから、脳血管性の認知症も起きにくくなるのです。週に2回以上は、刺身か缶詰を食べましょう」〈おすすめ〉サバ缶けんちん汁「鍋に400ccの水を入れ、大根、にんじん、ごぼう、こんにゃくを切って煮る。ここにサバの水煮缶1缶を汁ごと加えて、みそを小さじ2杯。最後に刻んだねぎを入れて完成。根菜類は冷凍食品でもOKです」【食習慣3】えごま油をさっとかける「えごま油に多く含まれる成分α-リノレン酸は、体内に入るとDHAやEPAに変わり、脳の神経細胞を活性化させます。僕はサラダやほうれん草のおひたし、豆腐やみそ汁にもえごま油を小さじ1杯かけています。ほかにも、白身魚の刺身にえごま油と黒こしょう、レモンを搾ってカルパッチョにするのもおいしい。認知症予防の万能調味料です」鎌田さんの人生観は、PPH(ピンピンひらり)だそう。「死ぬギリギリまで“ピンピン”していたい。そして、みんなに『サンキュー、グッバイ』がちゃんと言えて、“ひらり”といけたらいいなと思っています。85歳まで生きるとしたら、85歳まで、冬はスキー、月に1度はレストランに行って好きなものを食べる……みなさんもぜひ、食事や運動といった生活習慣を見直して、ピンピンひらりの生活を楽しく過ごしていただきたいですね」「女性自身」2020年6月9日号 掲載
2020年06月15日ただでさえスマホに依存しがちなのに、巣ごもり生活が続くいま、“スマホ認知症”のリスクが忍び寄っているという。年齢層は、認知症には早い30代から中高年。特に、家事に多忙な女性は要注意だーー。「暇さえあればスマホを触り、“写メ”をメモ代わりにしたり、出かけるときに地図アプリを使うなど、スマホに頼る生活を送っていませんか?こうした行為が、もの忘れや精神的な落ち込みなど認知症に似た症状を招いています」そう話すのは、脳神経外科医でおくむらメモリークリニック院長の奥村歩先生。外出自粛の巣ごもり中、日に何度もネットニュースを確認するなど、スマホを触る時間が長くなってはいないだろうか。奥村先生のクリニックの「もの忘れ外来」には、全国から毎日100人以上の患者が来院するが、その年齢層は、10年前とは様変わりしているという。「以前は高齢者がメインでしたが、最近は患者さんの約半数が30〜60代で、認知症発症には早い年代。訴えを聞いていると、スマホなどIT機器に頼りすぎている人が多いことに気づきました。特徴的なのは、もの忘れのほか、うっかりミスが多発したり、イライラや落ち込みが激しくなるといった傾向。私はこれを『スマホ認知症』と呼んでいます」(奥村先生・以下同)人間の記憶のプロセスは、大まかに「(1)入力、(2)分類・保持、(3)検索・取り出し」の3つに分かれる。スマホ認知症では、このうち(2)と(3)に問題が起きているそう。「脳を図書館にたとえましょう。(1)は新刊の入荷、(2)は新刊の分類と保管、(3)は本の検索と貸し出しです。スマホ認知症では、(1)で入荷される新刊の量が多すぎ、(2)の分類が追いつかず、(3)で本の検索ができない状態。記憶があっても、その取り出しができなくなる。これが、もの忘れの原因です」さらに冒頭で述べたように、自分で考える前にすぐに“ググる”など、本来自分の脳が行っていたことをスマホ任せにしていると脳の考える機能がさびついていき、思考力や集中力の低下につながる。そのため、家事の段取りがうまくできなくなり、ミスを繰り返して戸惑う女性も多いという。「とくに女性は、家事に仕事、親の介護など、同時進行で複数のタスクを進めていて、ただでさえ脳がお疲れの状態。潜在的に脳疲労のある女性ほどスマホ認知症になりやすいといえるでしょう」スマホ認知症から脱するには、「ぼんやりすること」がカギになるという。「近年の研究で、ぼんやりしている時間にも脳の『デフォルトモード・ネットワーク』という機能が働いており、脳のメンテナンスや、集中・休息の切り替えをしていることなどがわかってきました。脳が休憩すべき時間にスマホを触っていると、この機能が正常に働かなくなり、イライラや不調をもたらすようになります。どうしてもスマホに手が伸びる場合は、代わりに床の拭き掃除や編み物など、無心になって一定のリズムで行える家事や趣味をすると、脳がぼんやりしているときと近い状態になります。日ごろからスマホに頼りすぎず、自分の脳で考える習慣も大切です」スマホに翻弄されることのないよう、つき合い方を見直そう。「女性自身」2020年5月12・19日合併号 掲載
2020年05月06日「超悪玉コレステロール」がたまると、動脈硬化だけでなく、がんや認知症、脳梗塞、心筋梗塞のリスクも高まるという。菓子パン、スナック菓子、インスタント食品など、危険食品は身の回りにあるものばかり。取りすぎないようご用心ーー。「コレステロールは、私たちの体の細胞壁やホルモンの材料となるなど、生きるうえで必要不可欠なものです。ところが、誤った食生活によって悪影響をうけると、血管壁に蓄積して動脈硬化の原因となり、逆に体に悪影響を与えてしまうこともあるのです」こう話すのは内科医で動脈硬化に詳しい池谷敏郎先生。偏った食生活はコレステロールの“暴走”を起こすという。「コレステロールは体内でLDLコレステロールとして血管壁に運ばれます。このLDLコレステロールが酸化されて変性するとマクロファージという免疫細胞に取り込まれて処理され、血管壁にたまり、プラークというコブになってしまいます。これが動脈硬化です。LDLコレステロールが悪玉コレステロールと呼ばれるゆえんです。ちなみに、LDLコレステロールには大型、小型サイズとあるのですが、小型のものほど血管壁に取り込まれやすく、活性酸素による酸化もされやすいため、小型のLDLコレステロールは超悪玉コレステロールとよばれています」(池谷先生・以下同)LDLコレステロールが酸化すると次のような問題も。「LDLコレステロールが酸化した途端、体内で“異物”として認識されます。すると、私たちの健康のバランスをとろうとしてくれるマクロファージが“異物”を食べて処理してくれるのですが、このときに起こる現象が“炎症”です。炎症は、血管の老化や動脈硬化だけでなく、肌荒れやアレルギー疾患の悪化にもつながります。さらに、がん認知症、脳梗塞、心筋梗塞などの疾患のリスクも上げます」体内での炎症を起こりやすくする一因が、オメガ6系脂肪酸(リノール酸)を多く含む食品だ。オメガ6系脂肪酸の過剰摂取によって、炎症が引き起こされやすくなるというのだ。逆に、オメガ3系脂肪酸を多く取ることによって炎症にブレーキがかかるという。つまり、過剰な炎症をふせぐためにはオメガ6系と3系の脂肪酸のバランスが重要だ。オメガ6系脂肪酸は、サラダ油、キャノーラ油、ベニバナ油など、揚げ物に使われる油に多く含まれる。オメガ3系脂肪酸は、魚油やえごま油、アマニ油などが該当する。「体内の炎症を抑えるためには、オメガ6系脂肪酸を減らし、オメガ3系脂肪酸の摂取量を多くすることです。しかし、現代の食生活では、オメガ6系脂肪酸を過剰に摂取する傾向があります。脂質の摂取は必要なのですが、摂取する脂肪酸の種類については、もっと注意をしてほしいものです」揚げ物や天ぷら、炒め物、ドレッシング、豚肉や鶏肉の脂肪部分など、オメガ6系脂肪酸の油を使った食品は、私たちの周りにあふれている。「家庭で調理して食べる分には極端な量にはならないと思うのですが、外食や弁当、スーパーやコンビニで売られているお総菜などにはオメガ6系脂肪酸を多く含む油が使われていることが多いため、外食やコンビニ弁当が多いという人は要注意です」「女性自身」2020年3月17日号 掲載
2020年03月08日年々、教育界における注目度が上がっている「非認知能力」。読者のみなさんも、何度となく見聞きしているでしょう。しかし、研究者によって非認知能力に対する見解はさまざま。今回は、幼稚園教諭の経験もあり、著書『非認知能力を育てるあそびのレシピ 0歳〜5歳児のあと伸びする力を高める』(講談社)で注目を集める、玉川大学教育学部教授の大豆生田啓友先生に非認知能力に対する見解を聞きました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)非認知能力だけが重要ではないことに要注意「認知能力」とは、読み書きや計算のようにテストなどで測ることができる、いわば目に見える力のことです。それに対して、「非認知能力」は、「非認知」というだけにテストなどでは測りにくい、目に見えづらい力といえます。それに含まれるものは本当にさまざまですが、社会性や情動性、意志力、自己肯定感、なにかをやり抜く忍耐力、コミュニケーション能力、他者に対する思いやり、自分をコントロールする自己制御など、主に「心」や「社会性」にまつわる力です。非認知能力が注目されるようになった大きなきっかけは、アメリカの経済学者であるジェームズ・ヘックマンが行った子どもたちの追跡調査でした。その追跡調査の結果、幼児期に質の高い教育を受けた子どもとそうではない子どもでは、大人になってからの経済力などに大きな差が生まれたことがわかったのです。そして、大人になって経済力や社会的地位が高くなった人は、幼児期に非認知能力を高めるような教育を受けていた。ただ、誤解してはならないのは、「非認知能力が重要」だからといって「認知能力が重要ではない」というわけではないこと。そのどちらも大切な力ですから、しっかり伸ばしてあげるべきでしょう。時代の変化によって、非認知能力を獲得する機会が激減また、非認知能力が注目を集めることとなった背景には、先のヘックマンの研究の他に、時代の変化が挙げられます。本来、非認知能力とはなにか特別なものなどではなく、むかしであれば子どもの普段の遊びやあたりまえの子育てのなかで勝手に育っていたものです。かつての子どもたちは、豊かな自然のなかで元気にたくさん遊び、異年齢の子どもたち、あるいは異世代の大人とも触れ合う機会が数多くあり、多様で具体的な体験を通した経験を積み重ねていました。すると、遊びのなかでうまくいかないことがあっても、熱中して続けるうちにうまくいくといった経験を通じて、困難を乗り越えるために必要な意志力や忍耐力、やり抜く力を獲得することができた。また、他人とかかわるなかで人間関係の問題にぶつかったら、なんとか折り合いをつけるようなコミュニケーション能力や思いやり、自己制御といった力を得ることもできました。そのようにして、非認知能力を自然に獲得していたわけです。ですから、これまでは非認知能力が特段にフォーカスされることがなかっただけのことです。でも、むかしとは時代が大きく変化していますよね。まず、習い事などに忙しいいまの子どもは、単純に遊ぶ時間自体が減っています。そのため、遊びを通じて非認知能力を得る機会が激減している。また、いまの親は子どもになるべく喧嘩をさせないようにしています。本来なら、子ども同士でおもちゃを取り合うようないざこざは、社会性を身につける絶好の機会です。いざこざのなかで、子どもは自分の気持ちを相手にぶつけてその反応を見たり、相手に譲ったりといった経験を通じて成長していくのですからね。ところが、いまは親のクレームを恐れ、幼稚園や保育所でも子どもの喧嘩をなるべく未然に防ぐようにしてしまっている。これでは、なかなか子どもの社会性は育ちません。重要となる、子どもの興味関心に親がつき合う姿勢わたしは、2019年に妻との共著で『非認知能力を育てるあそびのレシピ 0歳〜5歳児のあと伸びする力を高める』(講談社)という本を出版しました。じつはこの本は、「こういう時代であっても、多くの親たちが何気なくやっていることが大事」というメッセージを込めたものでもあるのです。先にお伝えしたように、非認知能力は特別なものではありません。非認知能力というたいそうな名前がついているがために、特別なことをしなければ育たないと考える人もいるかもしれませんが、そうではないのです。では、なにをすればいいのか?それは、大人からしっかりと受け止められる経験を子どもにさせること、そして、子どもの興味関心を大人が大切にするということです。非認知能力の多くは、「主体性」にかかわるものです。人間は、好きなことに対してであれば、主体的に取り組むことができます。みなさんも、大好きなアーティストのコンサートチケットを手に入れるためなら、多少の困難があっても手に入れようと頑張るでしょう?それは、見方を変えれば、困難を乗り越える力を発揮しているともいえます。子どもだって同様です。親子で散歩に出かけたときに、子どもが落ち葉のことが気になって拾いはじめたら、一緒に拾ってあげればいい。家のなかで何度もソファに昇り降りする遊びを面白がっているのなら、「ソファがへたっちゃうでしょ!」なんて叱らずに遊ばせてあげればいい。そういう親の姿勢が、子どもの非認知能力を育てていくのです。また、子どもの興味関心は、子どもに非認知能力が育っているかどうかのひとつの目安にもなります。非認知能力はそもそも測ることが難しい力ですから、本来、「これができていれば非認知能力が育っている」といった明確な基準はありません。ただ、非認知能力の多くは、先に述べたように興味関心、主体性から生まれてくるもの。ですから、子どもが目を輝かせて強い興味を示すような世界を持っているようなら、ひとまずは安心していいでしょう。■ 玉川大学教育学部教授・大豆生田啓友先生 インタビュー一覧第1回:非認知能力は育っているか?子どもが「目をキラキラさせる世界」があれば安心です第2回:かわいい子には“いたずら”をさせよ!?「自由に遊んでいいよ」で子どもは学ぶ(※近日公開)第3回:親が先回りしたら「自己決定力」は育たない。幼くても決断力を伸ばせる声かけのコツ(※近日公開)第4回:イヤイヤ期に「悩まない、苦しまない」。子育ては“ほどほど”がちょうどいい(※近日公開)『非認知能力を育てるあそびのレシピ 0歳〜5歳児のあと伸びする力を高める』大豆生田啓友・大豆生田千夏 著/講談社(2019)【プロフィール】大豆生田啓友(おおまめうだ・ひろとも)玉川大学教育学部教授。青山学院大学大学院文学研究科教育学専攻修了後、青山学院幼稚園教諭等を経て、現職。専門は乳幼児教育学・保育学で、現在、日本保育学会副会長。メディア出演も数多い。著書は、『子育てを元気にする絵本』(エイデル研究所)、『非認知能力を育てる あそびのレシピ 0~5歳児のあと伸びする力を高める』(講談社)、『日本が誇る!ていねいな保育 0・1・2歳児のクラスの現場から』(小学館)、『マンガでわかる! 保育っていいね』(ひかりのくに)、『子どもの姿ベースの指導計画』(フレーベル館)、『あそびから生まれる動的環境デザイン』(学研みらい)、『21世紀型保育の探求-倉橋惣三を旅する』(フレーベル館)、『子育てを元気にすることば』(エイデル研究所)他、多数。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月30日「医学の進歩で、これまで難治性といわれていた病気も、改善されるケースが出てきています。認知症に関しては未知の部分がいまだ多くありますが、生活習慣の改善によって予防できることがわかっています」こう話すのは、アンチエイジング医療の第一人者で、お茶の水健康長寿クリニック院長の白澤卓二先生だ。認知症は大きく分けて、脳梗塞など血管障害によって脳細胞神経が死滅することで起こる脳血管性認知症と、脳に蓄積したアミロイドβが脳神経細胞を壊すアルツハイマー型認知症の2つがある。このうち約8割はアルツハイマー型認知症。このアルツハイマー型こそ、生活習慣の改善が予防につながる部分が大きいという。「認知症の原因となるアミロイドβは、発症の20〜30年前から蓄積し始めるとされています。予防対策は早ければ早いほどよいと思いますが、40歳を過ぎたくらいから意識をし始めるとよいでしょう。そういう意味でも、年末年始はそれまでの生活習慣を見直すのによい機会ですね」そこで白澤先生が、認知症にまつわる2択クイズを出題。健康寿命を目指すための知識を取り入れて、2020年をもっとイキイキ過ごそう!【Q1】はきものを新調。脳にやさしいのは?薄手の靴下 or ふわふわのスリッパ正解は、薄手の靴下。「足と脳の関係は深く、足の裏や指からの刺激は脳を活性化させます。靴は足裏の感覚を鈍らせますが、スリッパも同様。夏ははだしで、床が冷たい冬は薄手の靴下をはいて、足裏が床をつかむ感覚を感じると、脳の血流も促進され、反応がよくなります」(白澤先生・以下同)【Q2】若返りホルモンを分泌させるのは?スクワットなどの筋トレ or パズルなどで脳トレ正解は、スクワットなどの筋トレ。「筋トレをすると若返りホルモンと呼ばれるマイオカインが分泌されることがわかっています。マイオカインには『記憶力を高める』『うつ症状を改善する』といった働きもあります。体を動かすことは全身の血流を改善し、認知機能を高める効果もあります」【Q3】認知症予防に役立つのは?ヨガ or 太極拳正解は、太極拳。「脳の活性化だけでなく、転倒防止にも効果的なのが太極拳。転倒は体のバランスが衰えることが大きな原因です。太極拳はバランスをとるための体幹が鍛えられます。ヨガに比べ、動きが多く、体内に取り込む酸素も多い太極拳のほうがおすすめです」【Q4】認知症予防につながるメニューは?緑黄色野菜がたっぷりのサラダ or 根菜類がたっぷりの煮物正解は、緑黄色野菜がたっぷりのサラダ。「緑黄色野菜にはフィトケミカル、β-カロテン、ビタミンCなど、抗酸化作用を高める成分が含まれます。サラダはその栄養素を壊すことなく取ることができます。煮物は砂糖や醤油で味付けが濃いことがあるので注意。サラダもドレッシングは控えめに」健康管理にこの習慣を加えて、脳の老化を防いでいこう。「女性自身」2020年1月1日・7日・14日号 掲載
2020年01月07日「厚生労働省によると、’25年には約700万人が認知症になると推計されています。“5人に1人”が認知症という時代に突入するにあたって注目されているのが『個人賠償責任保険』なんです」そう話すのは、介護に詳しいファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さん。認知症に備える保険といえば、認知症と診断されたときに一時金が出るものや、徘徊中でのケガなどに対して給付金が支払われる生命保険が一般的。一方で、「個人賠償責任保険」は、他人にケガをさせたり、物を壊すなどしたりして、法的な賠償責任を負った場合などに補償される保険のことだ。「他人の物を自分の物と思い込んで盗んで壊した、水を止めるのを忘れ下の階に漏れてしまった、無免許であることを忘れて運転したことで事故を起こしてしまった、突然暴れだしヘルパーさんなどを傷つけてしまった……などなど、認知症の人が起こす事故のリスクは挙げればキリがありません。もし損害賠償請求が生じたとき、『個人賠償責任保険』に入っていれば、カバーできるのです」’07年、愛知県大府市にあるJR東海・大府駅で、要介護度4の認知症男性(当時91歳)が、線路内に立ち入って死亡した鉄道事故が起きた。JR東海は、要介護1の妻(当時85歳)と、離れて暮らす長男に対して損害賠償約720万円を求める裁判を起こし、二審では妻に約360万円の支払いが命じられることに。’16年最高裁で「監督義務者は不在」と判断され、家族への賠償は棄却されたものの、この裁判で明確になったのは、裁判で“監督責任があった”と見なされれば、離れて暮らしていても、あるいは介護施設に入っていたとしても、認知症の家族が起こした事故の責任を取らされる可能性があるということだ。「個人賠償責任保険は、単品ではほとんど発売されておらず、自動車保険や自転車保険、そして火災保険などの特約としてついていることがほとんどです。補償額は1億円程度のものが多いのですが、自動車保険には無制限のものもあります。共済、クレジットカードの任意加入サービスなどでも同様の補償を行っている場合が多いので、もし重複して複数の保険に入っていたことがわかった場合は、補償額が高く、示談交渉サービス付きのタイプを残すことが、見直すときのポイントになります」基本的に一人入っていれば、同居する家族や別居の未婚の子までカバーできる。「大府市の事故の後、多くの保険会社で補償内容が改定されました。親が認知症などで法的責任を取れないために賠償責任を負ってしまった別居する子も補償の対象に加えたり、線路立ち入りによる損害は対象外だったものが補償の対象になったりするようになりました」
2019年11月28日完治は難しいと思われている認知症も、ごく初期に起こる異変に気づけば、発症を防ぐことができる。家族の異変が気になったら、そして自分の行動に違和感を覚えたら、まずは自己診断。認知症の“始まり”を察知し、なるべく早く対処法を考えよう。15年以上も無事故・無違反の優良運転手だった夫(78)の様子が最近、変だと思うようになったのは妻のA子さん(76)。ガレージに車を入れるときに、こするようになっただけでなく、“もの忘れ”も増えてきたという。「最近、高齢ドライバーによる事故のニュースを見るたびに、いつかお父さんも事故を起こすのではと気が気ではありません。本人は『自分は大丈夫』と言って聞かないのでどうやって運転をやめさせたらいいのか……」(A子さん)日本では65歳以上の高齢者の7人に1人が認知症といわれ、アルツハイマー型へ移行する可能性が高いMCI(軽度認知障害)も含めるとその割合は4人に1人となる。日本認知症学会の専門医でおくむらメモリークリニック(岐阜県)の奥村歩院長が解説する。「認知症は発症すると完治は望めないまでも、初期のうちに見つかれば進行を遅らせて、日常生活も普通に送ることができます。しかし、病院に検査を受けに来ようとするのは、すでにもの忘れが目立ち、日常生活に支障をきたすようになってから。それでは遅すぎます。初期のちょっとした異変に気づいて対策を講じることが、認知症の発症を食い止める、または進行を遅らせる第一歩なのです」(奥村院長・以下同)奥村院長が今まで延べ3万人超の人を診てきたなかで、認知症の“初期の初期”に現れやすい「ちょっとした異変」が次のとおり。「もの忘れ」だけではないので、注意が必要という。□ペットボトルの蓋が回せない□瓶ビール、ジュースの栓が開けられない□靴ひも、ネクタイが結べない□引き戸は開けられるが、ドアノブが回せない□エアコンやテレビなど、リモコンの操作が困難になる□車を車庫に入れるとき、ぶつけるようになる□散歩をしながら、簡単な暗算ができない□電話をかけながらメモを取り、伝言を伝えるのが苦手になる□料理の段取りが下手になり、味が単調になる□カラオケで歌いながら、リズムに合わせて手をたたけない□化粧が雑になり、身だしなみもだらしなくなる□朝起きて今日何をするのか、スケジュールがわからない□ゲートボールなど、趣味のサークルに出かけなくなる□毎週、見ていたテレビドラマを見なくなる□薬の飲み忘れや飲みすぎなどの管理ができなくなる□メガネや携帯電話をなくす□昔の出来事は覚えていても、最近の出来事は覚えていない□同じことを何度も言ったり聞いたりする□買い物に行ったのに何を買おうとしていたのか忘れる□たいしたことでなくても、すぐにカーッとなる初期の初期であれば、生活習慣病を改善するなど、食生活に気をつけて運動を習慣づければ、認知症の発症を遅らせる、あるいは食い止めることができるという。まずは、自分自身や家族の行動を見守ることから始めてみよう。
2019年09月25日認知症で判断能力が失われたと判断されたら、銀行口座は凍結される。それに備えるための後見人制度は、実はかなり面倒なシロモノ。そこで注目されている制度が「家族信託」なのです!2025年には、認知症になる人が700万人にもなるという(厚生労働省調べ)。認知症の本人に代わって、家族が銀行から預金を引き出そうとしてもストップがかかり、生活費や介護などのお金は家族が肩代わりすることになる。「キャッシュカードの暗証番号を知っていれば、ひとまずお金の出し入れはできますが、本人から事前に了承を得ていなければなりません。しかし、通常50万円以上のまとまったお金を引き出そうとすると窓口に行かなければならず、そこで本人の同意が確認できないと、銀行の口座は凍結されてしまい、お金は引き出せなくなります。定期預金の解約をしたくても、できなくなります」そう注意をうながすのは、相続・終活コンサルタントの明石久美さん。口座が凍結されると、生活費などのお金を家族が本人に代わって支払うことになるため、負担した家族の生活が行き詰ってしまう−−。そんな事態を防ぐ方法の1つとして最近注目を集めているのが、’07年に信託法が改正されて、個人でも利用しやすくなった「家族信託」だ。認知症による資産の凍結から財産を守る制度は、「法定後見」「任意後見」の成年後見制度と、「家族信託」の3つがある。「成年後見制度は、判断能力が低下したときに4親等内の親族や市区町村長からの申し立てにより、家庭裁判所が後見人を選ぶ『法定後見』と、本人の判断能力があるうちに、あらかじめ選んだ後見人と公正証書で契約をしておき、判断能力が低下したときにスタートする『任意後見』があります。一方、『家族信託』は、本人の判断能力が低下する前に、信頼できる家族に財産の管理や処分をしてもらう制度です」(明石さん・以下同)財産のなかで、家族信託を使って管理したい財産を「信託財産」といい、主に現金、不動産、未上場株式の3つが対象になる。財産を預けたい親が「委託者」になり、財産を預かり管理や処分をする子どもが「受託者」、財産から得られる利益を受け取れる親、またはほかの家族が「受益者」となり、委託者と受託者が書面を交わす。成年後見制度と違って、家庭裁判所に提出する書類がないので、財産の管理がしやすい。家族信託契約書を作成してもらう専門家への報酬はかかるが、後見がスタートしてから本人が亡くなるまで毎月、数万円かかる後見人や後見監督人への報酬の支払いが必要ない、といったメリットがある。認知症になっても自分や家族が安心して暮らせるように、さらに、死んだ後も自分の財産を自分の思いどおりに親族に渡すことができるように、家族信託を選択する人が増えてきたという。そこで、家族信託を使ったほうが、メリットが大きいケースを紹介してもらった。【ケース1】将来、自分が認知症になるかもしれない夫に先立たれ、一人暮らしのA子さん。「今は元気でも、少しずつ物忘れが増えてきて将来が心配」というときこそ、家族信託が役に立つ。「この場合、母のA子さんは委託者、娘さんが受託者、A子さんが受益者になります。信託財産はいま住んでいる自宅と現金1,000万円という契約にしました。仮にお母さんが介護施設に入り、実家が空き家になったら、娘さんは自宅を売却して、介護費用に充てるといった契約内容にすることもできます」A子さんが他界したとき、口座が凍結されて葬儀費用が出せずに困ることがないように、契約で葬儀費用などの支払いができるように決めておくこともできる。親から財産を委託された子どもは、何にいくら使ったのか記録することが義務づけられるが、家庭裁判所への報告義務はない。不正使用がないように専門家やきょうだい・親戚を監督人に指定して、チェックする仕組みにしたり、親が委託者の子どもに月々の報酬を払いたいと思えば、契約に盛り込んだりすることもできる。「法定後見、任意後見でも自宅の売却や介護施設への入居の手続きはできますが、家庭裁判所や後見監督人の許可などが必要です。ですから、空き家になったら賃貸にしてほしい、賃貸物件を売ってほしいなどと本人が元気なときに言っていたとしても、難しいのが実情です。家族信託では、行ってもらいたいことを事前に決めておけば、たとえ認知症になったとしても、その契約を行うことができるのが特徴です」このように、自分の死後の財産の行く先を事前決定しておくことができる便利な制度だが、気をつけたい点もある。自宅など信託財産にした不動産は、受託者の名義に変更する必要がある。手続きを司法書士へ依頼するため、報酬や登録免許税などの諸費用が必要になってくる。成年後見制度のように、成年後見人や監督人に毎月支払うコストはないが、契約書を作成する専門家への手数料が意外とかかる。手数料の相場は信託する財産の1%といわれているが、高額な手数料を取る専門家もいる。また、信託財産は相続財産ではなくなるため、信託財産と相続財産の割合や内容によっては、親族間トラブルにもなりかねない。両方の対策を同時に考えてくれる相続に詳しい専門家を選ぶことが大切だ。「死後のこと」を含めてどうしたいのか、法定相続人になる家族で話し合うと、後のトラブルを防ぐことができる。大事な財産と家族を守るために検討してみよう。
2019年08月22日治療が難しい認知症。正確な予防法をあぶりだすために、町の住民ほぼ全員の生活を長年追いかけた、画期的な調査がある。認知症発症の有無から見えてきたものとは——。「日ごろから、バランスのいい食事や適度な運動をすることを心がけ、積極的に社会参加することなどは、認知症発症リスクを下げるために有効かもしれません。久山町研究を含むさまざまな疫学調査データから示されています」そう話すのは、九州大学大学院医学研究院教授で医学博士の二宮利治先生。“久山町研究”は、福岡市の北部に位置する糟屋郡久山町(人口約8,900人)の住民を対象に、’61年から長年継続している生活習慣病の大規模な疫学調査だ。脳卒中や高血圧、糖尿病といった生活習慣病の調査に加え、’85年からは、65歳以上の住民を対象とした認知症の調査も開始した。6〜7年ごとに追跡調査を行い、日ごろの食事や生活習慣が認知症の発症とどのような関連があるかを調べているのだ。「久山町研究の特徴は、町ぐるみで調査に協力してくれているということ。そのため、65歳以上の住民における認知症の調査の受診率は90%以上と非常に高く、さらに、調査にご協力いただいた99%の方の健康状態を毎年追跡しています」このように精度の高い認知症の疫学調査は、世界でほかに例がなく、注目を集めている。久山町研究の成績を基にした推計によると、’25年には日本で認知症患者が約700万人にのぼり、65歳以上の5人に1人が認知症になるという。とはいえ、いまだ特効薬もなく、未解明な部分が多い認知症。そこで今回、久山町研究の研究責任者である二宮先生に、現在までの調査結果から得られた認知症の予防法を聞いた。■糖尿病にならないようにする「認知症には、いくつか種類があります。久山町で主に研究しているのは、脳梗塞や脳出血などによって発症する血管性認知症と、脳の側頭葉などが萎縮して起こるアルツハイマー型認知症の2種類。’88年および’02年の久山町の健診を受診された、65歳以上の住民を10年間追跡しました。その結果、’88年の対象者に比べ’02年の対象者では、アルツハイマー型認知症の発症率は倍増していました。血管性認知症の発症率は、高血圧治療の普及により大きな変化はありませんでした」アルツハイマー型が急増している要因の一つとして、近年、解明されつつあるのが“糖尿病”との関係だ。「糖尿病患者は、糖尿病でない人と比べて、アルツハイマー型認知症および血管性認知症の発症リスクが約2.1倍高いことがわかりました。つまり、糖尿病は、認知症発症のリスク要因であると考えられます」ということは、糖尿病の予防になる食生活を心がけることは、認知症を予防するうえで大切であるといえるだろう。■一汁三菜の和食スタイルが大事久山町研究では、認知症になりにくい食事パターンも検討している。その結果、糖尿病を予防する食事法とも類似していた。「’88年の久山町の健診で食事調査を受けた、認知症のない60〜79歳の住民1,006人を17年間追跡調査し、食事パターンが認知症発症に及ぼす影響を検討しました。すると、大豆・緑黄色野菜・海藻類・魚・卵・牛乳や乳製品・果実などをよく摂取する食事をしている人のほうが、認知症になりにくいことがわかったのです」牛乳・乳製品を例に挙げると、摂取量が1日あたり44グラム以下の人たちと比べて、97〜197グラム(約牛乳瓶1本分)摂取する人のほうが、血管性、アルツハイマー型ともに発症率が低かったという。九州大学農学研究院との共同研究では、鶏の胸肉に含まれる“イミダゾールペプチド”という成分に記憶力を改善させ、認知症に予防的に働く可能性があることなどもわかってきている。「注意してほしいのは、『これを食べていたら認知症を予防できる』という夢のような食材はないということです」二宮先生が推奨するのは、大豆を使ったお味噌汁などの汁物が一品と、主食の米、魚や肉などの主菜に加え、野菜などの副菜が2品つくバランスのいい“一汁三菜”の伝統的な和食スタイルだ。久山町研究に協力している中村学園短期大学准教授の内田和宏さんが、一日分の理想的な一汁三菜レシピを教えてくれた。【朝食】麦ごはん…白米、押し麦味噌汁…かぼちゃ、しめじいり豆腐…木綿豆腐、にんじん、葉ねぎ、サクラエビ、しらす干し、糸みつばコールスローサラダ…キャベツ、とうもろこし、ヨーグルト、ミニトマトいり豆腐や味噌汁で、大豆を摂取。サラダで緑黄色野菜を、ドレッシングにヨーグルトを使って乳製品もしっかり補給している点がポイント。白米をとってはいけないということではないが、少なめのほうがいい。【昼食】麦ごはん…白米、押し麦鶏肉の味噌焼き…鶏肉、じゃがいも、ブロッコリー五目あえ…にんじん、しいたけ、ほうれん草、絹さや、木綿豆腐きんぴらごぼう…ごぼう、にんじん、ごまリンゴそれぞれの料理にブロッコリー、ほうれん草、にんじんなど緑黄色野菜を含む。大豆、鶏肉のタンパク質は筋力や骨を形成するのに必須なので、しっかりとったほうがいい。足腰の強さを保つことは認知症予防に必須。【夕食】麦ごはん…白米、押し麦味噌汁…オクラ、ぶなしめじアジのエスカベッシュ(マリネの一種)…アジ、にんじん、たまねぎ、きゅうりエビとヤングコーンの炒めもの…エビ、ヤングコーン、さやいんげんトマトのマヨネーズグラタン…トマトアジ、エビといった魚でタンパク質をとるのもいい。アジなど青魚が豊富に含むEPAには血液をサラサラにして血行をよくし、脳機能維持効果がある。緑黄色野菜とトマトやきのこ類と、野菜を豊富に含むのがいい。認知症リスクを減らす一日のメニュー。さっそく実践してみよう。
2019年08月14日成長、発達、認知――。教育関係の記事ではあたりまえのように使われる言葉ですが、その厳密な意味となると答えられない人も多いでしょう。お話を聞いたのは、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている、静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生。それらの言葉の意味に加えて、幼児教育の世界で流行語となっている「非認知能力(非認知的スキル)」という言葉がはらむ問題についても持論を語ってくれました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)成長、発達、認知という言葉の意味とは?成長、発達、認知という言葉のうち、その意味合いからも混同されるのが成長と発達ではないでしょうか。子どもの成長、発達といった場合、一般の会話においては大きなちがいはありません。でも、アカデミックな意味でいうと両者にはちがいがあります。「成長」とは、「数値」でわかる身体の量的な変化です。つまり、子どもでいえば身長が伸びたり体重が増えたりした場合に、「成長した」というのです。そして、「発達」とは「働き」や「質」に焦点をあてた心身の変化です。たとえば、「子どもが手指で柔らかいものを上手につまめるようになる」という動作の「器用さ」の変化や、そして「頭のなかで言葉や数や論理を理解する」というような、見た目だけではわからない心理的変化も「発達」に含まれます。この発達の過程において、生涯にわたってドラマチックな変化を見せるのが「認知の発達」です。「認知」とはごく簡単にいえば「ものごとがわかる」ということです。一般に認知能力というと、文字を書く、計算する……といった「学力」と同じ意味だと、非常に狭い意味でとらえられがちです。しかし、認知は人間のあらゆる「知覚」「運動」「学習」「判断」「記憶」などに関わります。たとえば、生活習慣の獲得。子どもが服を上手に着られるようになったなら、そこには、方向や位置関係がわかる……という空間認知や、見て触った情報をもとに動作を実行するという認知の発達がみられるのです。友だちとの付き合いにおいても、表情を認知し、視点を動かして相手の気持ちを察し、出来事のつながりから因果関係を推理し、行動の社会的な結果を予測して意思決定をする……といった認知の過程がたくさん含まれているのです。生活習慣から社会生活、おしゃべりから数の理解、砂場の遊びからスポーツの試合まで、子どもの頭のなかでは認知的な営みが忙しく繰り広げられているのです。子どもの教育から少し話はそれますが、この「認知」に関する言葉で、個人的に残念に思っているのが、2004年末に日本で「痴呆症」に代わるものとして「認知症」という名称が採用されたということです。「認知症」という名前は、そのままの意味でとらえると、「わかる病気」ということになってしまいます。当時、厚労省が行ったアンケートでも、ほとんどの有識者が「認知障がいという名称が適切」と答えていました。「認知」を「歩行」に置き換えて考えてみましょう。歩行器で歩く人も、車椅子を使う人も「歩行障がい」があるわけです。が、それを「歩行症」と呼んだらおかしいですよね。「うまく認知できないこと」は、本来なら「認知障がい」と呼びたいところです。「でも、厚労省側が『少しでも字数が少ないほうがいい」と判断して『認知症』という言葉に決まったんですよ」と、その検討会の座長を務めた医師の長谷川和夫先生から、直接お聞きしたことがあります。こうして「認知症」という名称が生まれて15年がたったいま、「うちのおじいちゃん、『ニンチ』になっちゃって……」といったふうに、ずさんに略されて使われるのを耳にします。認知という言葉が真逆の意味で使われるのです。わたしは「みんなの認知症情報学会」で、認知症や発達障がいの当事者の方々のお話を聞く機会があるのですが、そのなかのひとりの女性が「わたし自身の認知の特徴について正確に説明しようとしても、ニンチという言葉は、得体の知れない深海魚か怪物のように思われ、人の誤解を解くのは大変です」とお話しくださったことが忘れられません。「認知症」のように、名前と意味の関係をあいまいにした言葉は、誤解に悩む人を増やしてしまうのです。「社会情動的能力」を「非認知能力」と呼ぶべきではない「認知」の意味への誤解を広げている名称がもうひとつあります。現在の教育界で頻繁に聞かれる「非認知能力(非認知的スキル)」がそれです。米国の経済学者のヘックマン(J.J.Heckman)の著書『子どもたちに公平なチャンスを与える(”Giving Kids a Fair Chance”)』邦訳『幼児教育の経済学』(東洋経済新報社)のなかに「非認知能力」は登場します。ヘックマンは米国の公教育が、子どもたちを到達度テストの点数で評価し、「学力優位の教育に偏っている現状」を批判しています。多くの人が社会で成功し、経済格差を解消するためにも、到達度テスト(認知テスト)では測れない、意欲や長期計画を実行する能力、他人と協働するのに必要な社会的・感情的制御という「非認知能力」を伸ばす教育が重要である。そして幼児期こそ「非認知能力」を育む最適期なので、幼児教育にかかる費用を、社会が家庭へ「事前に分配」すれば、効率的に社会的格差が解消される――。と、幼児教育への社会的投資を促しました。わたしは、この結論には賛成です。経済階層や家庭環境のちがいにかかわらず、どの子どもにも適切な幼児教育の機会が与えられるように社会システムを作ること。そして、学業のみならず、社会性や情動コントロールの能力を育む「幅広い領域の教育」の恩恵をすべての子どもが得られるように、社会が幼児期にお金と手間をかければ、子どもが年を取るまで望ましい効果が得られ、人生も社会全体も豊かになる……というヴィジョン。これは、わたしが30年以上前から、テレビ幼児教育番組のコンテンツ開発の仕事をしながら思い描いてきた理想と重なります。しかしながら問題は、社会性や情動コントロールの能力を「非・認知能力」と名づけ、学業に関わる能力だけを「認知能力」と名づけたことでした。わたしは、その意味する「事柄」ではなく、「名称」を問題視しています。ヘックマンは当初、「(研究者が)数値で量的に認知しやすい能力」と、「(研究者が)数値では認知しにくい能力」とを区別するつもりで、認知能力と非認知能力と命名したようですが、そんな名称では「子どもの頭のなかの認知能力」と区別がつきませんし、実際、混同されています。社会性や情動コントロールの能力のなかには膨大な認知過程があるにもかかわらず、それを「非認知」と呼べば、一般の人は「人付き合いや、我慢ができることなどに、認知は入っていないのだな」と誤ってとらえてしまうでしょう。そもそも、「非(Non-)」が頭について、「認知『じゃないもの』が大事だ」……という造語の仕方が誤解のもとです。大事な事柄は、否定ではなく肯定で、端的に表現すべきでした。ヘックマンは学業の能力(彼のいう認知能力)と社会情動性の能力(彼のいう非認知能力)の両立を重視したはずですが、教育者の間では「非認知能力」あるいは「非認知スキル(Non-cognitive skills)」という名称のみが流行語になり、両者のバランスは崩れていきました。さらに「非」という接頭辞が、続く「認知能力」を排除するか、または時間的に後回しにする解釈へと迷走させています。「<我慢ができて、友だちと仲良く協力し合い、自分の感情をコントロールする力>は非認知能力であり、これが育ったあとに認知能力を伸ばせばよいのです」と、幼児教育の現場で語られるのを聞きましたが、これは、ふたつの能力を同時に重視するヘックマンの論旨に反します。また、赤ちゃんのときからの「顔や声のパタンを見わける認知能力」がベースにあってこそ、特定の大人への愛着が深まり、観察と模倣の学習も進み、社会情動的能力が発達するのだという、心理学の知見ともかみ合いません。学術的な知見と「つじつま」が合わないまま、「非認知能力」という名称は、一般の人々の「認知」への理解をゆがめているのです。幼児期にこそ「認識の枠組み」を与えたい2011年の東日本大震災のとき、米国の『TIME』誌は、被災者の写真とともに「“Gaman”=ガマン」という言葉を「日本人独特の精神性」を象徴するものとして紹介していました。米国人のヘックマンが想定した「忍耐力や情動の抑制のレベル」をはるかに越えるマグニチュードの「被災者の我慢」に、米国のジャーナリストは驚いたのです。幼児教育の現場はもちろん、日常の現実やアニメでも「我慢強い子」のモデルを多く目にする日本は、「他者と協働するための社会性」への期待が重過ぎるほどです。ですから「非認知能力」と呼ばれる「社会・情動性」の教育の旗を振らなくても、日本の幼児教育の先生方はすでにそれをたっぷりと教育なさっていると思います。が、近年の「非認知能力」という流行語の副作用として「認知能力」が狭く解釈され、「文字や数を学ぶ認知能力は、小学校から伸ばす」とみなされ、幼児の幅広い認知能力が論じにくくなったのは問題です。他方、小学校はといえば、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学)を代表するプログラミング教育に加えて、英語の教科化で忙しく、6歳からの知識学習はどんどん増やされています。6歳を境に幼児教育と小学校の教育の内容には、崖のようなギャップがあります。それを不安に思う親は、非認知能力重視をうたう幼稚園に子どもを通わせつつ、さらに国語、算数、英語の「学業の先取り」を助ける塾へも通わせ、ダブルスクールの行き来で親子はヘトヘト。楽しいはずの幼児期がこのような疲労感で終わっては、「意欲」を育むどころではありません。そこで思い出すのは、わたしが2004年にハンガリーの保育園を訪ねたときの驚きです。保育士が「さあ、論理で遊びましょう!」と、3歳から6歳の子どもたちを集め、おもちゃや絵本、ボールなどを使って、仲間わけの論理遊びをはじめました。子どもたちは、異年齢同士で相談しながら、おもちゃを選び、ボールを転がして「考える遊び」を楽しんでいたのです。「考えること」は運動であり、友だちとのコミュニケーションであり、答えを探すための忍耐も遊びの内でした。ブダペストの明るい教室には、「子どもの思考」への洞察と、「考える遊び」を開発する技術があり、芸術的なバランスがあることに、わたしは心打たれました。ブダペストの小学校も見学しましたが、幼児教育から滑らかにつながり、校長は「幼児から児童への認知発達を考え、自分で論理的に考えられるように、遊びや学びを開発しているんですよ」とお話しくださいました。論理、社会性、物語、数学、運動、音楽などが、一体となった教育は、面白い幼児教育番組を見ているような印象を残しました。1973年にはじまった幼児教育番組『ひらけ!ポンキッキ』(フジテレビ)は、ガチャピンとムックが有名ですが、東 洋、永野重史、新田倫義、藤永 保という4人の発達心理学者が監修して、幼児期の認知発達を支援する目的でつくられました。わたしは1984年から1988年まで心理学スタッフとして制作に携わりました。放送がはじまった頃は、批判の電話がたくさんあったそうです。「幼児期はココロを育てる情操教育が重要なのに、『ポンキッキ』は知識の詰め込みの早期教育でけしからん」という批判です。「知性と情意性、どっちを重視するのか?」という、能力を分割する議論は、むかしもいまも変わらず繰り返されるんですね。『ポンキッキ』の監修者は、「幼児が主体的に情報を処理する能力を育て……質の良い知的構造の形成と深化を目指す」という理念を掲げ、論理概念すらも面白いアニメで見せ、社会性や情動性をテーマにした歌やダンスも開発しました。いま、わたしは『しまじろうのわお!』(テレビ東京)という幼児教育番組の監修者として、ピーマンの悲しみの理解から、転んでも立ち上がる意欲の歌、ジュースの量を比べる遊びまで、幼児の生活全体を対象に、『認識の枠組み』を与える映像を開発しようと、制作仲間と議論を重ねています。ハンガリーの「社会的な論理遊び」、そして「生活のなかで考える面白さ」を伝える『ポンキッキ』、こうした「認知と情意性の発達を丸ごと支援する教育」を、いろいろなメディアで増やしたいものです。大人のかたも、子ども時代の記憶を思い出して、「3歳のわたしが面白かったことは?大好きな人のなにを真似たのかな?」とご自分の発達を振り返ってみませんか?「認知=ものごとがわかること」について考えはじめると、高齢者になるという発達も面白くなるように思います。■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月12日「お互い、もう介護される年齢に近づいているわね」という話から始まった“認知症介護対談”。年を重ね歴史のある母娘でも、母が認知症になればその関係は変わってくる。いままで見せなかった弱さを見せるようになったヤマザキマリさん(52)の母は、これまで着ていた鎧を脱いで穏やかに。阿川佐和子さん(65)の母は家族のかせから逃れて、自由になった。母娘が向き合って、その距離がぐっと近くなった介護の時間はとても豊かなものだった――。阿川「うちはいま、認知症の母(91)をきょうだいとお手伝いの方とローテーションを組んで、在宅介護しています。その合間にショートステイで外泊サービスを利用しているんです」マリ「私の母(86)は北海道の実家の近くに住む妹が、在宅介護をサポートしてくれていました。それが、認知症に加え、パーキンソン病も併発して……。足元がおぼつかなくなり、今年1月、部屋で倒れているところを妹に発見されて、入院しました」阿川「高齢者専門の施設なの?」マリ「専門ではないですが、認知症患者が多い病院なんです。我が強い母ですから、同室の人と合うわけがないと思っていたのに、4人部屋で和気藹々と過ごしています。お互い、会話はまったく成立していないんですけど、ワイワイ楽しそうでした」小説家、エッセイストの阿川佐和子さんの母親は、昭和2年生まれで、現在は91歳。父は作家の阿川弘之さん(’15年没、享年94)。外では温厚だが、家庭内では絶対君主で、専業主婦だった母親は振り回されていたという。漫画家のヤマザキマリさんの母親は、昭和8年生まれの86歳。北海道に渡り、札幌交響楽団のビオラ奏者として、2人の娘を女手一つで育て上げた。親の介護が始まったのは、阿川さんが57歳、ヤマザキさんが49歳のときだった――。マリ「佐和子さんは、どうやって親の認知症がわかったんですか?」阿川「8~9年くらい前かな。あるとき、長年、実家で働いてくれた家政婦さんが電話で『こんなこと、私から申し上げるのも何ですが、奥さまがヘンです』って。もともとトボけてるからなあって言ったら『そういう問題じゃありません』って、ピシッと言われたんですね。それで“ついに来たか”と」マリ「母は、80歳を過ぎたあたりから、物忘れが目立ってきたんです。でも、犬の散歩も欠かさず、毎日、元気そうでした」阿川「うちも日常の家事には支障がなかったけど、同じことを繰り返し話したりして“ん?”っていうことが少しずつ……」マリ「あるとき、北海道の実家に帰ると、母が外に立って青ざめた顔で『変な外人さんがうちに来ちゃって!』って。あわてて家に入ると、外国人が出ている料理番組が放映されていて、それを見て、うちの台所に外国人が来たのだと勘違いしたようなんです。そうした症状が増えて、ようやくレビー小体型認知症(症状の1つに幻覚がある)だと診断されました」阿川「うちの母は、いまだに、自分でできることはいっぱいあるんです。お医者さんに行って、勝手にパソコンをのぞいたとき“アルツハイマー”という文字を見て、『誰のこと?』って聞いたりね」マリ「本人も認知症だって認めたくないですよね。母も『一過性のもの』『疲れているだけ』と抵抗していましたから」阿川「いままで、自分を見守ってくれていた親が、だんだん壊れていく姿は、子どもとしてもつらいもの。だから、初期のころは特に必死になるよね」現在でも、認知症の症状は少しずつ進んできているが、母たちは平和で穏やかな日々を過ごしている。阿川さんは、父を’15年に亡くしたが、母は、夫の死をどこまで理解できているのかわからないという。ヤマザキさんの母は、人生を支えてきた楽器演奏から離れて久しいが――。マリ「この間も病院に行くと、母が遠くに歩いている看護師さんを見て『今、コンサートホールの支配人を呼ぶから、挨拶しなさい』って言うんです。私もその“妄想”に付き合って『今日は何を演奏するの?』と聞くと、『プログラムを読んでいないの!』って怒られたり(笑)。母は元気なころ、コンサートのプロデュースもしていたんです」阿川「そういう物語には、乗っかるほうが楽しいよね。うちの母は、なぜかいないはずの赤ん坊の話をするんです。『赤ん坊どうしたの?』って聞かれると『さっき帰った』『ちゃんと寝かせているの』『うん、2階で寝てる』って、話を合わせたりして」マリ「認知症になっても、あえて否定するのもよくないし、羞恥心や感情面の尊重も大事ですよね」阿川「特に排せつに関してはね。以前、母が部屋で頭から布団をかぶっていたんです。どうしたのかと思って布団をめくると、片足だけ私のストッキングをはいているの」マリ「どういうことですか?」阿川「聞いても『んー』と言って答えないの。多分、自分の下着を汚してしまって、それが恥ずかしいと思ってはき替えようとしたのに、どうしていいのかわからなかったと思うんです。それで私のクローゼットから着替えを探したけど、パンツではなく、靴下の引出しを開けてしまったのだと」マリ「親の排せつの失敗は、娘もついつい情けない気持ちになったりするけど……」阿川「考えてみたら、隠すこと自体がカワイイじゃんて思うようになりました」マリ「認知症になって、とても自由に生きられている部分もありますからね」阿川「うちは圧倒的に父が強かったんです。絶対君主的で、それによって家族が振り回されていました。でも母は、『なんでそんなに言うことを聞けるの?』って思うくらい従順だったんです。だから私は、きっと7歳年上の父が早く死ぬだろうし、そうしたら母を旅行に連れていったりして、家庭の束縛から解放してあげようって、ずっと思っていたんです。それなのに、母が先にボケてしまって、悔しかったですよ」マリ「それは無念」阿川「でもね、ボケてみると、100%不幸だとはいえない。むしろ母は自己主張が強くなりましたよ。入院中だった父が『お前の作ったちらし寿司が食べたい』と言いだしたときも、さらっと『あーちらし寿司ですね、そこの百貨店に売っていますよ』って」マリ「素晴らしい!」阿川「いま、母はとても自由に愉快に生きているんです。私が『ねえ、母さん、ご飯作ってよー』って言うと『んー、明日』って先延ばし。マリちゃんのお母さんは、女手一つでずっと闘っていらしたわけでしょ?」マリ「闘魂そのままというイメージを持っていたんですが……。もともと物を書くのが好きな人で、日記帳を渡していたんですね。ところが、認知症に加えパーキンソン病も併発しているから、手が震えてうまく文字が書けない。それであるとき、母の部屋から、書こうと思ったのに、何度も何度も途中で諦めてしまっている書き損じの紙の束が出てきて……。それを隠していたんですね。手にしたときは、もう涙が止まりませんでした」阿川「切ないねえ」マリ「前の母とは違うんだと改めて感じて、喪失感を覚えました。いかに母が私の心の大きな支えになっていたかって痛感して……。50歳にして、初めて精神的自立を余儀なくされた焦りも(笑)。でも、認知症になって、肩肘張らず、強がらず、いまの母は穏やかです」阿川「よかったねえ」マリ「いままでの母なら『会いたい』なんて言わないタイプだったのに、お見舞いに行くと『今度はいつ来るの?』なんて聞いてくるんです。“なんだ、この弱々しい母は”って感じてしまうけど、『1人で娘2人を育て、世間と闘ってきたけど、ようやく甲冑を脱げたんだ』と、いまの姿が本当の母なんだと思えるようになりました」
2019年06月29日読者世代にとって「認知症」「軽度認知障害(MCI)」に関することは、常に身近な関心事。しかし、これまで関心はあれど、切実に問題に向き合う必要がなかった人も多いはず。ここでは「ある日突然、親の異変に気づいてしまったら……」を、本誌・海野幸記者(仮名・48。広島県出身で現在は東京都在住)の体験をもとにレポート。「そのときどう対処すればいいのか?」について考えてみました――。「あれ?母が、何かおかしい」初めて私がそう感じたのは、昨年12月。74歳の誕生日を記念して、久しぶりに母親と温泉旅行に出かけたときのことだった。記憶にあるしっかり者の母と、目の前の母の様子にギャップを感じること数度。ふだん離れて暮らしているからこそ、感じ取ることができた変化だったかもしれない。74歳という年齢。「もしかして認知症?」と気になりだしたら不安が止まらなくなった。帰省のたびに「耳が遠くなったな。見た目が老けてきたな」と、加齢による変化は確認していたけれど、行動やふるまいに「おかしい」を実感することはあまりなかった。90歳で亡くなった祖母も、最後の数年は認知症だったが、母はまだ74歳。「まだまだ親は元気」と悠長に構えていたぶん、初めて頭をかすめた「認知症」の3文字に動揺するばかりだった。「さて、どうしよう……」そんな不安に直面した私がまずしたことは、認知症に関しての知識を得ることだった。祖母の介護は父と母がしていたし、そのとき私はすでに東京で暮らしていたので介護経験はなく、認知症の実態をほとんど知らない。そこで、本やインターネットで情報を収集し、母親に感じた「何か変」を、一つひとつ照会していくことにした。すると、母の症状は認知症とはなんだか違うようだった。記憶自体がすっぽり抜け落ちているわけでもなければ、散歩へ出かけて迷子になるようなこともない。調べていくうちに、『軽度認知障害(MCI)』という言葉を見つけた。MCIとは、もの忘れのような記憶障害は出るものの、症状はまだ軽い「認知症の一歩手前」の状態を指すそうだ。母はこれに当てはまるのでは?そんな気がしてきた。’12年時点で、日本の65歳以上の認知症推定人口は約462万人、MCIは約400万人といわれている。確かなのは、認知症であれ、MCIであれ、早めに専門医を受診したほうがいいということ。そしてMCIについては、適切な取り組みにより認知機能の維持が可能であるとのことだった。「早期受診が急務」ということはわかったけれど、母を病院へどのようにして連れていけばいいのか。その難問を解決すべく、認知症やMCIに関する電話相談などを行っている「認知症の人と家族の会東京都支部」へ向かい、代表の大野教子さん、副代表の松下より子さんにアドバイスをもらうことにした。「認知症には『自分が自分でなくなっていくのでは?』というネガティブな印象があるため、病院へ連れて行くのに苦労されているご家族からの相談は多いです」(大野さん)やはりこれは、多くの人が悩む問題のようだ。自らも介護経験があるお2人が教えてくれたのは、“今後の介護のキーパーソンになる人物が、無理やり病院に連れて行くのはNG”ということ。「『娘までもが私の敵か!』という意識になり、信頼関係がなくなってしまいます。将来的に介護の主役となる方は、最初の段階で病院へ行こうと強くすすめる立場でないほうがいいのかも。お父さんやごきょうだいがいれば連れて行ってもらうのも一つの手です」(大野さん)キーワードは“信頼関係”。たとえば、健康診断などと本人に嘘を言って連れて行くのも、信頼を損なう恐れがあるので気をつけたほうがいいとのこと。そして、配偶者の存在は特に重要だという。「夫婦は当然、相手を大事に思う気持ちが強いもの。元気なほうが『最近、調子がよくないんだが、一緒に病院に行かないか?』と誘って一緒に行くという成功例はよく聞きます」(松下さん)なるほど。「父を説得してみる」のはいいかもしれない。ともあれ、お2人に相談し、胸のうちを話したことで、何より心がすっきりした。こうした電話相談などのサービスを積極的に利用するのはいいことだと実感できた。そして、今月某日――。「お医者さんにMCIと言われたよ」と、母から連絡がきた。「家族の会」で話を聞いた後、父に相談したところ、父も母の変化に心当たりがあったそうだ。そこで、私が専門医を探し、父が母を誘って2人で受診することになった。その結果。母はMCIと診断された。当初、母は落ち込んでいた様子だったそうだが、私がすぐに帰省して「MCIは改善が期待できる」と説明し、「一緒に向き合っていこう」と話したことで、前向きな姿勢も見せてくれるようになった。今後についてだが、まずは通院での治療を継続することが重要なのは言うまでもない。そのうえで、担当医の説明や取材で得た情報を参考にして、取り組むべき課題を簡単にまとめてみた。【1】“地域の人とつながる”こと【2】“孤立を避ける”こと【3】“ワクワクさせる”こと1については、幸い実家のある地域は交流が盛んなので、父と協力しながら、さらに積極的に関係を深めていこうということになった。2については、父と2人暮らしではあるものの、仕事を辞め、家に1人でいることが多いので、定期的に東京に遊びに来てもらうことにした。3に関しては、そもそも母が何に興味を持っているのかを知らなかったので、それを知ることから始めようと思う。そうして母にいろいろ聞いてみると、東京で行ってみたいところがたくさんあるようだ。ならば、そこへ一緒に行けばいい。その打ち合わせをするにも連絡が必要なので、結果、これまでより電話をする回数が増えた。これからは母だけでなく、父も含めてワクワクしてもらえることを考え、提案していこうと思う。「もしかして認知症?」という疑問を感じたときは不安でいっぱいだったが、考えてみると“再び家族に戻る”いい機会をもらったということなのかもしれない。とにかく、「あのとき、ああすればよかった」と後悔しないように、自分にできる限りのことをする。気づけば、そんな覚悟ができていたのだった。
2019年02月27日