Microsoftは2015年4月22日(現地時間)に、Windows 10テクニカルプレビュー ビルド10061をリリースしたばかりだが、開発者向けカンファレンス「Build 2015」直前だったせいか、その後もビルド10064やビルド10102のスクリーンショットがインターネット上に流出していた(いずれも真偽のほどは不明)。さらにBuild 2015直前の4月28日には、Windows Updateサーバー上にビルド10074のESD(Electronic Software Delivery)ファイル情報がネット上で公開され、dism.exeなどを用いてISO形式のインストールメディアを作成するユーザーが現れたようである。そして、4月29日から開催中の「Build 2015」を受け、ビルド10074を公開した。○UX関連の改善が多いInsider PreviewWindows 10テクニカルプレビュー使用中のユーザーは高速および低速リングを選択している環境でWindows Update経由のアップデートが可能だ。一方でWindows Insider Program参加者向けには、以前から用意していたISOファイルのダウンロードページを更新し、ビルド10074の日本語版としてx64版やx86版を入手できる。当初からBuild 2015開催中に新たなビルドをリリースすると予測していたものの、初日のタイミングを選ぶのは予想外だった。なお、本ビルドを持って「テクニカルプレビュー」から「Insider Preview」にプレビュー名を改称している。これはより多くのユーザーがプレビュー版を使っても(ある程度は)安全であることを意味しているのだろう。なお、本稿のタイトルはそのままだが、記事内の呼称をInsider Previewに変更するので、あらかじめご了承頂きたい。それではMicrosoftのOSG(Operating Systems Group)Data and Fundamentalsチームでジェネラルマネージャーを勤めるGabriel Aul氏のブログ記事に沿って、ビルド10074の新機能を確認する。最初に目に付くのはUX(ユーザーエクスペリエンス)の改善だ。例えばWindows 8.xのライブタイルは下から上方向にスクロールするアニメーション効果を備えていたが、ビルド10074は箱が転がるようにタイルの内容が切り替わるアニメーション効果に切り替わっている。Aul氏は「パフォーマンスと安定性の向上も加わった」と述べているが、パフォーマンスに関しては特に感じる部分は少ないものの、不意の操作でアプリケーションが落ちるようなケースは体感レベルで減った様に感じた。High(高)DPIディスプレイへの対応もWindows 8.x同様に続けられている。例えばDPIが異なる2つのディスプレイが並んだ状態でも、正しいDPIスケーリングが行われるそうだ。今回はアプリケーション側ではなく、後回しになっていたWindows 10 Insider PreviewのHigh DPI対応と捉えるといいだろう。Build 2015でもPC/Tablet/Phone担当CVPのJoe Belfiore氏が述べていたように、Aeroグラスを一時的に復活させたのも注目ポイントの1つ。Aul氏が「Aeroグラスに関する多くのフィードバックを受け、本ビルドで試すことにした」と公式ブログで述べているように、スタートメニューとタスクバーに"ぼかし効果"を加えている。必ずしもこの効果は決定ではなく、通常の透明効果に戻すことも検討中だ。Aul氏は「Windowsフィードバック」経由での意見を広く求めている。デスクトップモードとタブレットモードの連続性も改善した。具体的にはタブレットモードでアプリケーションを閉じた際、デスクトップの代わりにスタートメニューが全画面表示になる仕組みが加わっている。さらに検索ボックスが縦方向に最大化し、検索や音声アシスタントシステムである「Cortana(コルタナ)」の利便性が向上する仕組みだ。もちろん現時点で日本語環境はCortanaを使用できないが、Windows 8.xで迷走したタブレット環境に1つの答えを出そうとしているのだろう。本ビルドでは、[Alt]+[Tab]キーで起動するタスクビュー機能(Windows 10における正式名称は不明)にも手を加えた。もっともサムネイル拡大や閉じるボタンの有効化は以前のビルドで実現していたが、今回はスナップアシスト(アプリケーションをスナップした際に残りの領域にタスクビューを表示する機能)のサムネイル画面に<×(閉じる)>ボタンを加えている。筆者もスナップアシストやスナップフィル(アプリケーションをスナップした際に自動リサイズする機能)を使いこなせていないが、かゆいところに手が届くような改善といえよう。既にビルド10074をインストールした方ならお気付きのとおり、イベントサウンドを一新したのも特徴的だ。これまでビルド9841から始まり、多くのビルドに触れてきたが、ようやく新しいOSに移行するのだ、気分を持つことができた。そのような雰囲気でWin32のダイアログが現れるとヤボったい印象を持ってしまうが、新しいイベントサウンドは聞き手を刺激しないような曲調に変更されているため、気分も新たにWinodws 10を使えることだろう。○標準アプリケーションも共に進化Cortanaも視覚的な改良や幅広い音声質問に対応するようになったが、現時点では日本語に対応していないため、今回は割愛。それ以外の変更点として目に付くのは、「音楽のプレビュー」「ビデオのプレビュー」のマイナーバージョンアップだ。まず前者を起動するとメッセージ周りはすべて日本語化し、完全なフルスクリーン再生に対応している。以前のバージョンでも<Go Full screen>ボタンを用意していたが、あくまでもアプリケーション内の最大化だったが、今回はデスクトップ全体の最大化だ。タブレットで音楽再生しながら、別の作業を行うときに選択したい。一方の「ビデオのプレビュー」はダウンロード時の進捗状況や、ダウンロードコンテンツを再生するデバイス管理オプションが加わったという。残念ながら筆者の環境では確認できなかったがAul氏の説明によれば、新Windowsストアで購入したコンテンツは3つまでのデバイスで何度でも再生可能だという。もっとも新Windowsストアはレンタルと購入、2種類の購入形式を用意しているため、この説明は購入時と思われる。また、Microsoftはダウンロード可能なデバイス数の増減も計画しているようだ。「Xbox」もGDC(Game Developers Conference)2015で発表した新UIや新機能の1部を搭載している。プレイ中のゲーム映像を録画するゲームDVR機能や友人に"いいね"を付ける機能などは本バージョン(4.4.23002.00000)でも確認できた。残念ながらXbox Oneを所有していないため、本体との連動機能は確認できなかったものの、完成を目指してアップデートを繰り返していくのだろう。Aul氏の記事にはない変更点もいくつか存在することを確認した。一部のユーザーには根強い人気を持つ「ソリティア」はWindowsストアからダウンロードせずとも「Microsoft Solitaire Collection Preview」が楽しめる。基本的には以前の「Microsoft Solitaire Collection」と同等だが、新たなチャレンジやテーマを順次追加するようだ。タスクバーに目を向けると、無線LANアイコンのデザインを変更したことに気付くはずだ。Windows Phone 8.1の同アイコンデザインに類似しているため、同じリソースを用いているのだろう。同じくタスクバーの電源アイコンを押すと、バッテリー情報がアクションセンターと同じXAMLベースに切り替わっていることも確認できた。ここからバッテリーの消耗を軽減する「バッテリーセーバー」や画面の明るさを調整できる。「設定」はすべての項目を確認していないが、サブカテゴリーからトップカテゴリーに戻るためのアイコンが左上に加わった。さらに矢印アイコンなどUIデザインも若干の変更が確認できる。以前からビルドが更新するたびに全項目をチェックしていた筆者としては、実にありがたい機能だ。冒頭で述べたように"テクニカルプレビュー"から「Insider Preview」に改称したビルド10074は、多くのユーザーがいち早くWindows 10を体感できるビルドとなるはずだ。それでも不安定な部分は多く、バグも数多く潜んでいる。そのため仕事などに使用するメインPCへのインストールは避け、サブPCなどOSの再インストールを厭わない環境で試すことをお勧めしたい。阿久津良和(Cactus)
2015年04月30日●新ブラウザ名称「Microsoft Edge」以外にも新たな情報がMicrosoftの開発者向けカンファレンス「Build 2015」が現地4月29日から始まった。「Build」は2011年から始まった、最新の技術や次期製品を紹介する重要なイベントである。本レポートでは、新しいWebブラウザの正式名称が「Microsoft Edge」に決まったことなど、Windows 10とその周辺に絞って情報を整理する。初日の基調講演では、Microsoftの方向性やMicrosoft Azureのマイルストーン、MacやLinuxを含むマルチプラットフォームのコード最適化エディター「Visual Studio Code」の公開、Office 365といった製品情報を順番に紹介。前回のBuild 2014と比べ、駆け足でアピールを行っている印象を受けたのは、それだけ取り扱う製品やサービスが多いからだろう。○10億台のデバイスにWindows 10を日本時間の4月30日午前2時を回ったあたりに登壇したOperating Systems担当EVPのTerry Myerson氏は、今後2~3年の間にWindows 10搭載デバイスを10億台まで増やすことを目標にしていることを明らかにした。もちろんここにはPC以外にもモバイルやIoTなど、あらゆるデバイスが含まれている。近々リリースするWindows 10 SDKにおいて、Windowsプラットフォームとその周辺機能を統合するコードを追加することと、次に紹介する4つのポイントを説明した。1つめは「Web」。Webサイトでイベントが発生すると、Windows 10の通知機能を用いて更新を知らせる。そのデモンストレーションとして、各ジャンルの最新音楽をストリーミング再生する「22tracks」からの通知を披露し、Windows 10の新たな可能性を見せた。2つめは「.NET&Win32」。新しいWindowsストアにWin32アプリケーションの登録が可能になるという。従来もエントリー自体は可能だったが、あくまでもWebサイトなどにナビゲーションするリンクを張れるだけだった。この変更に伴ってアプリケーション内購入やアフィリエイトプログラムなどを新たにサポートする。Windowsストアに関しては新たに「Windows Store for Business」を用意。ただし、Microsoft AzureのActive Directoryを経由するため、多くのエンドユーザーにはあまり関係ない話だ。3つめの「Android Java/C++」と4つめの「iOS Objective C」は似通った内容のため、併せて紹介しよう。2014年冬にMicrosoftはVisual Studioによるクロスプラットフォーム開発を発表したが、Windows環境とVisual StudioだけでiOS用アプリケーションをビルドするのは不可能だった。だが、新SDKではこれらの言語に対応し、AndroidやiOSのアプリケーションをWindows 10上で実行することを可能にしている。すでにMicrosoftは数カ所のコード変更で、Windows Phoneにキャンディークラッシュを移植したことを明らかにした。ソフトウェア開発者に対して、どの程度の負担が発生するのかまでは語られなかったものの、新SDKの存在はWindowsストアの拡充を推し進める起爆剤になり得るだろう。●新機能「Windowsスポットライト」と「Continuum」スピーカーがPC/Tablet/Phone担当CVPのJoe Belfiore氏に変わると、Windows 10の具体的な話が始まった。ちなみにキーノートに登場したWindows 10はスピーカーによって使用するビルドが異なり、筆者が目にした限りではビルド10071、10072、10075、10105の4種類を確認した。我々が使用可能なWindows 10 Technical Previewビルド 10061にはない新しい機能として、Belfiore氏は「ロック画面」を紹介。時間の経過とともに切り替わる画像に対して、ユーザーが「好き/嫌い」の判別をすることで、表示画像を最適化していくという。Bingのトップページを想像するとわかりやすいだろう。さらにアプリケーションのインストールや機能の試用をうながすメッセージが加わった。たとえば、音声アシスタントシステムの「Cortana」を利用していないユーザーには、同機能の試用をうながすメッセージが現れるといった具合だ。Belfiore氏は「Windowsスポットライト」との名称で本機能を紹介している。○Windows 10のWebブラウザ、正式名称は「Microsoft Edge」に注目はProject Spartanの正式名称が「Microsoft Edge」になった点だ。機能的な説明はあまり行われなかったが、「IEBlog」によれば、5月5日と6日に開催する「Microsoft Edge Web Summit」や「Microsoft Ignite」で詳しく説明するという。Windows PhoneをHDMIディスプレイやBluetoothキーボードと接続して、デスクトップPCのように使用する「Continuum」も興味深い機能だ。「Productivity Mode(生産モード)」に切り替えると、スタートメニューがWindows Phoneのメイン画面のように映し出され、Excelワークシートの整理やPowerPointプレゼンテーションファイルの編集が可能になるという。目新しいアイデアではないが、多様なシナリオに対応するという観点から見れば、有用な機能になりそうだ。阿久津良和(Cactus)
2015年04月30日自宅や会社で複数のPCを使っているとき、ネットワーク共有機能は欠かせない。多少のネットワーク知識を必要とするため、今回は、Windows 8.1の共有フォルダーを利用するために必要な情報を紹介する。○ネットワーク上のPCを確認するネットワーク関連の話題は、PCにまつわる技術のなかでも難しい部類に入り、敬遠されがちだ。しかし、複数のPCを効率的に動かしつつ、1台のPCから情報を参照するのであれば、必要不可欠な機能となる。そこで最初に確認すべきは、ネットワーク内にどのようなPCが存在するかだ。こちらはGUIとCUI、2つの方法がある。本来ならネットワーク内の全PCが並び立つが、実行タイミングによっては、いくつかのPCが現れないケースも少なくない。これは「ネットワーク探索」による情報収集を終えていないからだ。ネットワーク探索は、NetBIOSによるコンピューターブラウザーサービス、UPnP、SSDP(Simple Service Discovery Protocol)探索などを通じて情報収集を行う。よって、PCを起動した直後などは、情報を収集し終えていないケースもある。○「ネットワーク探索」を確認する何らかの理由でネットワーク探索が無効になっている場合は、上図の手順で有効にしておこう。なお、ネットワーク探索が使用するプロトコルは「セキュリティが強化されたWindowsファイアウォール(wf.msc)」で確認可能だ。下図は「受信の規制」のグループを「ネットワーク探索」でフィルタリングしたものだが、前述したNetBIOS(NB)などが並んでいることが見て取れるはずだ。さらに最初のエクスプローラーを詳細表示に切り替え、列として「探索方法」を有効にすると、ネットワーク探索がどのように各PCを検出しているか確認することが可能だ。下図ではNetBIOSの他にWSD(Web Service on Devices)を用いているケースが見つかる。WSDはWeb経由でデバイス管理を行うルーターやプリンターなどに用いられるが、Windows 7をインストールしたPCやWindows 8.1 PCもWSD経由で探索しているため、多様な方法で互いの存在を探索・認識していることが分かるだろう。○マスターブラウザの確認方法なお、NetBIOSは各PCの登録を行う「マスターブラウザー」と呼ばれるサーバーが存在し、そこで生成したブラウズリストを元に、各PCはネットワーク上のPCを判断している。そのため、マスターブラウザーは常に稼働しているPCが担うべきだが、クライアント/サーバーOSが混合する場合、上位のOSへ役割が移ってしまう。NetBIOS自体は枯れた技術のため、残念ながらWindows Vista以降はメンテナンスされておらず、マスターブラウザーを直接見付けるコマンドは用意されなくなった。前述した「net view」コマンドなどで各PC名を確認し、「nbtstat -a {PC名}」と実行して「..__MSBROWSE__.<01< グループ 登録済」と示された場合、そのPCがマスターブラウザーだ。阿久津良和(Cactus)
2015年04月30日海外のITニュース系サイトでは、AMDのCEOがWindows 10のリリース時期を「7月末」と明かしたことが話題になっている。だが、OEMパートナーへRTM(製造工程版)を渡すタイミングなどを逆算していくと、7月第1~2週には完成させなければならない。つまりWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10064のリリース日から数えて11週程度しか開発期間は残されていないのである。コントロールパネルから「設定」への完全移行は完了するのか、音声アシスタントシステム「Cortana」の日本語対応は間に合うのか。そんな思案を抱えつつ、今回はビルド10064の注目ポイントを解説する。○仮想デスクトップ"仮想デスクトップ"というアイディアは目新しいものではない。1980年代にはパロアルト研究所で実験が始まり、その後登場する各OSに大きな影響を与えていた。2001年11月にリリースしたWindows XPでも、「Virtual Desktop Manager」というMicrosoft PowerToys XPという機能セットで実現していたため、経験したことのある方も少なくないだろう。Windows 10は、その仮想デスクトップを標準機能として搭載してきた。ビルド10061は軽微な改善にとどまっているものの、タスクビューボタンのデザイン変更や、サムネイルにウィンドウアイコンや閉じるボタンを追加。今までのWindows 10テクニカルプレビューで仮想デスクトップを使ってきたユーザーには、"使える"印象を持つのではないだろうか。また、ハードウェアリソースが許す範囲で仮想デスクトップを際限なく作成可能になった。前回述べたようにダークテーマの採用などデザイン面強化が著しいビルド10064だが、タイトルバーの配色が変更したこと気付いた方もおられるだろう。ビルド10049のデスクトップアプリはタイトルバーが青灰色だったものの、本ビルドでWindows Appと同じ配色にそろえている。また、全画面表示のスタートメニューと同じく、各所にアニメーション効果を加えているのも変更点の1つ。例えば無線LANのフライアウトを表示する際は画面下部から刷り上がるような効果が加わっている。あくまでも個人的な意見だがアニメーション効果はリッチなUIに欠かせないながらも、好き嫌いが分かられる部分だ。完成までにはアニメーション効果のオン/オフを切り替えるGUI項目の搭載を期待したい。そういえば以前は隠し機能(レジストリエントリを編集することで有効になる)だった「日付と時刻」も新しくなった。長年見慣れたWin32ベースではなくXAMLベースで描画し、<その他の時計>から呼び出すWindows app「アラーム&クロック」で他国の時間も確認できる。ただ、下図をご覧になると分かるように日時表記が絶対時間から相対時間に変更されているため、ひと目で分からないの厳しいだろう。本件に関しては筆者もWindows Feedbackを送ったので、その結果は今後のビルドで確認する。「設定」に目を向けると、いくつかの変更点を確認できた。まず「システム\バッテリー節約機能」は本ビルドから加わった新カテゴリーだ。現在のバッテリー残量とバッテリー節約機能のオン/オフを選択できる。「バックグラウンド動作を制限することで~」というメッセージが記載されているものの、その具体的なロジックは現時点で確認できていないため、分かり次第読者にご報告したい。「システム\タブレットモード」にはサインイン直後の動作を選択する「When I sign in」が加わり、「今すぐタブレットモードを入力してください」「デスクトップに移動してください」「以前ではモードを保持します」(いずれも原文ママ)の3項目から選択可能。表示UIを英語に切り替えて確認した限りでは、"タブレットモード"、"デスクトップモード"、"最終状態を引き継ぐ"が選択できると考えればよい。また、「タブレットモードの時にタスクバー上のアプリのアイコンを非表示にします」も新項目の1つ。こちらは文字どおりの動作なので、下図をご覧になれば一目瞭然だ。スワイプ操作によるタスク切り替えよりも、タスク上のボタンをタップして切り替えたい方向けに加わった機能だが、このようにユーザー側で動作を選択できるのは多様なユーザースタイルに対応するよい改善と言えよう。コントロールパネルの各アプレットを「設定」に移行しつつあるが、ようやく「パーソナル設定」も移行した(Win32ベースの「個人設定」も残っているため、正しくは新規追加と述べるべきか)。サブ項目名として並ぶ「背景」「色」「ロック画面」「テーマ」かdらも分かるように、個人設定に関する主な設定項目が「パーソナル設定」に集められている。「パーソナル設定\色」は背景画像を前提にした自動配色や、タスクバーなどに対する配色の有無、スタートメニューの透過効果の有無を切り替える設定項目が並ぶ。後者2つはコントロールパネルのアプレットでは設定できない新項目だ。「パーソナル設定\ロック画面」はWindows 8.1の同名設定と基本的には同じ構成である。ただし、整合性を取るためアラームやカメラに関する設定項目は削られていた。なお、「パーソナル設定\テーマ」は残念ながら開発途中らしく、「個人設定」を呼び出すリンクの用意にとどまっている。このようにビルド10064はドラスティックな変更を加えず、機能のブラッシュアップやバグフィックスが中心だ。冒頭で述べたとおり2015年7月末にリリースするのであれば、残るテクニカルプレビューのリリースタイミングもあと2回程度になるだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年04月27日Windows 8.1は、ファイルシステムのNTFSが持つ透過的圧縮機能と、ZIP形式を疑似フォルダーとして使用するという、2つの圧縮・展開(伸張/解凍)機能を備えている。前者はWindows NT 3.51時代から、後者はWindows XP時代からサポートしてきた。今回はNTFS圧縮機能に関するTipsを紹介しよう。○NTFS圧縮とは前回紹介した「圧縮フォルダー」は他者との共有などに使えるが、今回の「NTFS圧縮」はPC管理を主軸においている。そもそも圧縮とは、冗長部分を符号化するアルゴリズムを用いて、実際のデータ量を縮小する技術だ。NTFS圧縮も、基盤にあるのはMS-DOS時代の圧縮機能であるDoubleSpaceであり、現在に至るまで多くの改良が加わっている。NTFS圧縮の欠点と言われるのがパフォーマンスの低下だ。圧縮・展開時は、CPUやI/Oといったハードウェアリソースを消費するため、通常のファイル/フォルダー操作に比べてオーバーヘッドが発生するのは事実である。だが、これを欠点としていたのは10年以上も前の話で、現在の高性能化したPCであれば神経質になる必要はまったくない。既に終えたプロジェクトに関する資料やファイルなどをNTFS圧縮し、必要に応じてインデックス検索で参照するといったソリューションを想定すれば、NTFS圧縮の利便性を理解してもらえるのではないだろうか。○圧縮したファイルが解除される?NTFS圧縮の操作方法は第27回で述べているので、そちらを参照してほしい。今回紹介したいのは自動化だ。本来であれば、NTFS圧縮を施したファイル/フォルダーは、コピー・移動先のフォルダー状態によって結果が異なる。移動先が圧縮済みフォルダーの場合、圧縮状態を維持するが、そうでない場合は圧縮状態を解除する仕組みだ。このルールはFAT32など異なるファイルシステム間にも適用される。だが、移動元のフォルダーがシンボリックリンクで作成している場合、追加したファイル/フォルダーは適用外。このようにNTFS圧縮は簡単に解除されることが多いため、一定時間ごとに特定のフォルダー全体を圧縮するタスクを作成するのが簡単なのだ。○タスクを作成するWindows NT時代からWindows 8.1の現在に至るまで、NTFS圧縮を制御するのが「compact」コマンドである。圧縮状態の表示や変更が可能なコマンドだが、今回使用するのは、圧縮を有効にするオプション「/C」、サブフォルダーまでを対象にするオプション「/S」、エラー発生時も処理を続けるオプション「/I」の3つ。今回は操作ステップを減らすため、コマンドプロンプトの記述だけ紹介する。「schtasks /create /tn "Compact_Folder1" /tr "compact.exe /c /s C:\Users\kaz\Documents\Delivered* /i" /sc daily /st 17:00:00」と実行してみてほしい。これで毎日17時に「C:\Users\kaz\Documents\Delivered」フォルダー下はすべて自動圧縮される。そのため、パスはご自身の環境に応じた変更が必要だ。schtasks /create /tn "Compact_Folder1" /tr "compact.exe /c /s C:\Users\kaz\Documents\Delivered\* /i" /sc daily /st 17:00:00※上記の入力内容において、パスは環境に応じて変更する。また、ユーザーがサインインしていない(かつPCはシャットダウンしていない)状態でもタスクを自動実行する場合は、タスクスケジューラを起動し、「ユーザーがログオンしているかどうかに関わらず実行する」を選択するとよい。阿久津良和(Cactus)
2015年04月25日2015年4月22日(現地時間。以下同様)、MicrosoftはWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10061をリリースしたことを公式ブログで明らかにした。前回のビルド10049が3月30日にリリースしたことを踏まえると約1カ月ぶり。MicrosoftのOSG(Operating Systems Group)Data and Fundamentalsチームでジェネラルマネージャーを勤めるGabriel Aul氏が当初確約した"月イチ"リリースに間に合う形となった。まずはビルド10061に関する変更点を詳しく述べていこう。○新「メール」「カレンダー」はGoogleやiCloudサービスも利用可能ビルド10061の対象は高速リングを選択しているWindows 10 Technical Preview使用ユーザー。いつもどおり「設定」の「保守と管理\Windows Update」から更新する形となる。個人的には4月29日から開催する開発者向けカンファレンス「Build 2015」開催直前、もしくは直後に新ビルドをリリースすると推測していたため、今回のリリースは予想外だった。振り返ってみれば、ネット上に流出したビルド10051は4月4日前後、ビルド10056は4月10日前後。ビルド10064も4月20日前後にスクリーンショットの流出が話題になったが、昨日関係者に取材したところ、4月第4週の時点で社内使用しているバージョンが今回リリースしたビルド10061であることと、NeoWinが掲載したスクリーンショット記事の両者を踏まえると、開発チームも今夏リリースに向けて突き進んでいるのだろう。さて、ビルド10049以降の変更点で顕著なのが、新しいWindows Appとして「メール」「カレンダー」を刷新した点である。正直に述べれば、Windows 8が搭載した同種のWindowsストアアプリは決して使い勝手のよい、と言える物ではなかった。この点に関してはMicrosoftに同情すべき点もある。標準アプリケーションの品質を高めると、ソフトウェアベンダーの参入を妨げる結果につながるからだ。ちょうどWindows 8はWindowsストアというアプリストアを立ち上げたばかりで、市場の拡大を狙っていた背景から必要最小限の機能に抑えたのだろう。その提供スタイルは本アプリケーションにも引き継がれている。デザイン面は刷新したが、3ペイン構成は従来同様。ただし、3本線の"ハンバーガー"ボタンで左ペインの折りたたみが可能だ。また、Windows appはウィンドウサイズを自由に変更できるため、操作に慣れたら折りたたんだ状態で使用した方がシンプルで使いやすいだろう。さらに「メール」には、新たなジェスチャーとしてスワイプ操作が加わっている。送受信したメールを左方向にスワイプすると削除、右方向にスワイプするとフラグの付与が可能になる仕組みだ。なお、マウス操作時はドラッグ&ドロップになるため、その際は右クリック時に現れるコンテキストメニューからアクションを選択する。メール作成に関してはWord風のツールバーが加わり、文書校正機能も直接利用可能になった点だ。Outlook的なメール作成を必要としてきたユーザーとっては利便性が高まっている。使用できるアカウントもOffice365(Exchange)やOutlook.com、Gmail、iCloudと現在主流の各サービスを利用可能。プロトコルとしてはIMAP、POP3が選択できる。一方の「カレンダー」も目を見張る箇所があった。それはGoogleアカウントのサポートである。こちらの説明にあるとおり、Googleは2013年1月にEAS(Exchange ActiveSync)接続のサポートを終了しているため、Windowsストアアプリの「カレンダー」で、Googleカレンダーに登録した予定を表示するのは不可能だった。だが、新たな「カレンダー」は「メール」と同じくGoogleアカウントやiCloudアカウントをサポートしているため、各サービスで登録した予定の管理が行えるのである。その他のアプリケーションもわずかながら変更が加わっているので、一緒に紹介しよう。「天気」のメイン画面は従来のアプリケーションと同じだが、新たにいくつかのタブが加わっている。現時点で使用できるのは「ニュース」のみだが、欧米で既に使用可能だった気象レーダーのオーバーレイ表示などを行う「地図」は興味深い。なお、「過去の気象データ」や「お気に入り」はWindowsストアアプリ版でも表示・利用できるが、ビルド10061の「天気」では準備中となっていた。これは同様のデータや表示方法を用いるのではなく、何らかの新しい仕組みを加えるためではないかと推測する。このタブを用いたデザインは「天気」だけではなく、「ニュース」など他のアプリケーションにも反映されていた。ソフトウェア開発者側はUIデザインの変更を強いられるかもしれないが、ユーザー側からすればユーザビリティが向上したと認識して構わないだろう。○サイズが可変するスタートメニュー次はデスクトップに目を向けてみよう。Windows 10のアイコンが従来のリアルデザインからフラットデザインに変更することは周知のとおりだが、本ビルドの「ごみ箱」アイコンはさらにリアルアイコンへ戻っている。これが何を意味するのは浅薄な筆者には予想もできないが、もともとフラットデザインのアイコンを評価する声が聞こえてこなかったことを踏まえると、さらなる方針転換を行う可能性も少なくない。スタートメニューも大きく変化した。透過効果を維持しつつ新たに黒色を基調としたテーマを適用。加えてサイズ変更も可能になっている。横方法には1,920×1,080ピクセルの解像度で2段階、縦方向は1ピクセル単位で変更する仕組みだ。実際に試してみると、縦横で変更方法が異なるのは違和感を覚えるため、サイズ変更ロジックに関しては今後も何らかの改善が加わるだろう。スタート画面の右上にある<スタートメニューを展開>ボタンで最大化表示に切り替えた場合、Windows 8.1のスタート画面に似たアニメーション効果も加わった。また、下図をご覧になると分かるように、電源ボタンの位置が右上から左下に移動したのも変更点の1つ。名称が"仕事率"になっているのはご愛敬だ。このダークテーマはタスクバーやアクションセンターにも適用し、本ビルドでは以前のテーマに変更する仕組みはGUI上には用意していない。一見すると視認性が低下したように感じるかもしれないが、「設定」に加わった「パーソナル設定\色」の「タスクバーとスタートメニュー上の色を表示します」をオン/オフすることで、スタートメニュー、タスクバー、アクションセンターの3カ所に対するテーマ適用を切り替えられるので安心してほしい。なお、「設定」に加わった新項目は次回ご紹介する。デスクトップモードとタブレットモードを切り替えた場合、コンテキストメニュー項目の間隔が変わる仕組みは以前のビルドで加わったが、同様の改善が通知領域にも加わった。具体的には、アクションセンターから各モードを切り替えるとアイコンの間隔が自動的に広がる。これはタッチ操作時に異なるアイコンを触れてしまうなどの誤操作を避けるためだろう。その他のタブレットモードに加わった変更点は次回紹介するとして、最後にビルド10061に残っている既知の問題を紹介しておこう。一部のデスクトップアプリがスタートメニューから起動しないため、Aul氏は検索機能でアプリケーションを起動し、タスクバーへピン留めする回避策を勧めている。さらに新WindowsストアやProject Spartanはビルドアップデート後にタスクバーからピン留めが外れるため、Aul氏は再度ピン留めしてほしいと公式ブログで述べていた。また、冒頭で紹介した「メール」「カレンダー」も文字入力が重なるバグが明らかになっているが、既にバグを修正したビルド17.4016.42291.0が新Windowストアでリリース済みのため、手動で更新することをお勧めする。この他にもサインイン/サインアウト時にマウスカーソルの描画が乱れる問題や、「ミュージック プレビュー」が正しく動作しない問題、Project Spartanのアドレスボックスでテキストを選択する際にハイライト表示が無効になる問題が明らかになっているが、いずれもWindowsストアの更新やWindows Update経由で修正する予定だ。阿久津良和(Cactus)
2015年04月24日Windows 8.1は、ファイルシステムのNTFSが持つ透過的圧縮機能と、ZIP形式を疑似フォルダーとして使用するという、2つの圧縮・展開(伸張/解凍)機能を備えている。前者はWindows NT 3.51時代から、後者はWindows XP時代からサポートしてきた。この圧縮フォルダー機能に関するTipsを紹介しよう。○圧縮(ZIPファイル)フォルダーとはZIP形式は複数のファイルやフォルダーをまとめるアーカイブ機能、および圧縮機能を兼備し、1989年にPhil Katz氏が開発したファイル形式である。当時流行していたパソコン通信や、その後に登場するインターネットなど、送受信データを軽減するための処理が重要視され、ZIP形式のほかにも多くの圧縮形式が登場した。日本では奥村晴彦氏/吉崎栄泰氏が1988年に開発したLHA(LZH)形式が既に普及していたが、ウイルス対策ソフトがアーカイブ内のファイルを正しく検疫できないことが2000年代半ばに明らかにされてからは、普及もとどまり、現在は見かけることも少なくなってきている。ZIP形式を標準機能としてサポートしたWindows XPは、圧縮・展開の概念を分かりやすくするため、擬似的なフォルダーアイコンを用いて「圧縮フォルダー」を提供している。現在のWindows 8.1もそれを踏襲し、標準的な圧縮機能として使えるようになった。○GUIから圧縮フォルダーを実行するWindows 8.1における圧縮フォルダーの作成方法は、コンテキストメニューの「送る」か、リボン操作の2つに限られる。注意してほしいのが、格納するファイル/フォルダーの構成だ。今回は例として「Target」フォルダーをそのまま圧縮フォルダー化しているが、「フォルダー名\格納内容~」と、圧縮フォルダー名と格納フォルダー名が重なる冗長な状態になってしまう。これを避けるためには、まず対象フォルダーを開き、その上ですべてのファイル/フォルダーを選択してから「送る」やリボン操作を実行しよう。なおWindows 8.1は、コマンドラインから圧縮フォルダーを制御する機能は標準搭載していない(CAB形式を作成する「makecab」はある)。次期WindowsのWindows 10が搭載するであろうPowerShell v5は、「Compress-Archive」や「Expand-Archive」といったコマンドレットがサポートされる予定だ。○GUIから圧縮フォルダーを展開するZIPファイルを展開するときも、複数の手段を選択できる。もっとも簡単なのは、圧縮フォルダーを通常の「フォルダー」として扱う以下の方法だ。疑似フォルダー内には格納したファイルやフォルダーが並ぶため、そこから必要なものだけをデスクトップなどにドラッグ&ドロップで展開する。コンテキストメニューの「すべて展開」からは、ウィザード形式で展開先のパス選択が可能になる。前述したドラッグ&ドロップ操作と比べると圧縮フォルダー内から一部のファイルだけを展開するといった操作ができないため、必要に応じて選択してほしい。最後は圧縮フォルダー選択時のみ現れる「展開」タブからの操作だ。ギャラリーから展開先を選択できるが、コンテキストメニューと同じ理由で筆者はドラッグ&ドロップ操作をおすすめしたい。圧縮フォルダーに関して注意したいのが、パスワードの付与だ。Windows Vista以降、パスワード付き圧縮フォルダーの作成機能は省略されているため、展開には「7-Zip」など他のアプリケーションが必要となる。セキュリティ的な理由でパスワードを付与する場合は、別の手段を選択するとよい。阿久津良和(Cactus)
2015年04月24日2015年1月21日(以下すべて現地時間)に開催した「Windows 10: The Next Chapter」でMicrosoftは、Windows 10とともにWindows appの「フォト」「ビデオ」「ミュージック」を刷新すると説明した。そして、3月31日に「Music Preview」「Video Preview」というプレビュー版を新Windowsストア(ストア ベータ)で公開した。今回はこの2つのアプリケーションについて言及したい。ちなみに「メール」「カレンダー」の新バージョンは流出中のBuild 10051で確認できるため、もうすぐ我々も試すことができるだろう。○必要最小限の機能にまとめた「Music Preview」Music Previewを起動すると簡素なウィンドウが現れる。Music Previewで使用できるのは、個人の音楽コレクションに関する操作と再生リストの作成のみ。以前の「Xbox Music」でオンライン購入した楽曲は自動同期せず、ローカルデバイスに保存したコンテンツの再生にとどまっている。上図のようにWindows appの基本UIデザインは、左側にツールボタンが並び、アクションコントロールはアプリバーが開いたような形状だ(マウスポインターが移動した際はアクションコントロールが非表示になる)。Music Previewで参照できる楽曲は既定の「%USERPROFILE%\Music」フォルダーのみだが、ユーザーは必要に応じて監視フォルダーを追加できる。楽曲の再生中に<Now playing<ボタンを押すと、メイン部分にジャケットや楽曲名が現れる。<Go Full screen<ボタンを押すと、タイトルバー以外をすべて非表示にするフルスクリーンモードで楽曲を楽しめる仕組みだ。なお、コンパクトモードも後日追加される予定なので、作業をしながら楽曲を楽しめそうだ。気になるのは音楽CDからのリッピング機能である。Windows 10 Technical Previewは、Windows Media Player 12を搭載しているが、こちらはWindows 7以降バージョンアップしていない。さらにMicrosoftはデスクトップアプリからWindows appへの移行を宣言しているため、新バージョンが出る可能性も乏しい。WMP 12をそのままにユーザーの移行をうながすのであれば、リッピング機能やDLNAサーバーとの連動など、新「Music」に搭載すべき機能は多い。○コンテンツ管理をストアに集約「Video Preview」もプレビュー版だけあって、使用できる機能は限られているが、Music Preview同様にローカルコンテンツ(ファイル)の視聴に加えて、Xbox Videoで購入したコンテンツもサポート。あるデバイスで途中まで視聴したコンテンツの続きを、別のデバイスに引き継いで視聴できる機能も搭載している。筆者は、AVI/MP4形式の他にMKV(Matroska Video)やMTS(AVCHD)、TS(MPEG-2)形式ファイルで試してみたが、いずれも問題なく再生できた。現時点では再生機能のみで必要最小限のアプリケーションという印象だが、今後は映画やTV番組のオンライン購入や対応デバイスの管理といった機能を加えるという。そこで気になるのが、新Windowsストアに加わった「映画とテレビ」タブだ。Microsoftは3月に「映画とテレビ」タブを加えたが、4月9日からストア内のページでビデオのレンタルや購入を可能にした。この対象範囲は米国やカナダと並んで日本も対象に加わっている。だが、よく見るとコンテンツはWindowsストアアプリの「ビデオ」から購入できるものとまったく同じだ。SD動画レンタルは411円、HD動画レンタルは511円と価格も同様である。さらに新Windowsストアは「音楽」タブを今後数週間のうちに追加すると述べていることから、Windows 10におけるコンテンツ購入をアプリケーションベースから「ストア」へ移行・集約させるつもりなのだろう。もともとこれらのコンテンツサービスや、Xbox VideoやXbox MusicをWindowsプラットフォームに取り組んだものだけに、Windows 8.x時代は歪な印象を受けるものだった。今夏リリースのWindows 10で、ビデオオンデマンドやストリーミング、ダウンロードサービスは一つの完成形を迎えることになるだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年04月20日Windows 8.1をインストールしたPCは必ず、"コンピューター名(ホスト名)"が必要だ。一般的にコンピューター名は、ネットワーク接続したデバイスが互いを識別するために使用する。前回はコンピューター名を確認する方法をいくつか紹介したので、今回はコンピューター名を「変更」する操作を取り上げよう。○コンピューター名に使える文字の範囲とはコンピューター名はネットワーク上での識別に用いられるため、使用できる文字列に一定の制限がある。具体的には「< < ; : " * + = \ | ? ,」といった記号類は使用できず、英数文字に限られる。IETF(The Internet Engineering Task Force)による技術仕様書であるRFC 952に沿うと「_(アンダースコア)」の使用も避けるべきだが、Windows環境では使用可能だ。大文字・小文字は基本的に無視され、使用制限は存在しない。また、コマンドラインからの参照性を高めるため、あまり長くない文字列(Microsoftは15文字以下を推奨)を使用するのが通例だ。なお、コンピューター名として付ける名称に制限はないため、神話や漫画の登場人物、星々の名称など好みと覚えやすさで付けていこう。○コンピューター名を変更するそれではコンピューター名の変更手順を紹介する。前回の「確認」と同様に、「システム」からコンピューター名の確認・変更は可能だが、ダイアログベースの操作は「システムのプロパティ」から実行するため、直接ダイアログを呼び出した方が簡単だ。コンピューター名を変更したら、PCを再起動する必要がある。これはコンピューター名の変更作業が、レジストリエントリ各所に影響を及ぼすためだ。特別な理由がなければ、ダイアログなどの指示に従って、すぐにPCを再起動してほしい。下図に示したようにコンピューター名の変更が完了した。確認方法については前回を参照のこと。その他にもモダンUIベースであれば、「PC設定の変更」からコンピューター名の変更が可能だ。ただし、こちらもPCの再起動を必要とする。○コマンドラインからコンピューター名を変更するコマンドプロンプトからコンピューター名を変更する方法もあるが、少々複雑だ。以前のWindowsであれば、ドメインの参加などローカル/リモートPCの操作に用いる「netdom.exe」コマンドが使用できたが、Windows Vista以降はnetdom.exeコマンドが搭載されなくなった。Windows 8.1でコンピューター名をコマンドラインから変更するには、「wmic.exe」コマンドを使用する。こちらはWMI(Windows Management Instrumentation)という、基盤アーキテクチャを操作するために用意されたコマンドだ。こちらもサブコマンドを組み合わせて使うが、詳細は割愛して入力コマンドだけを紹介しておく。「wmic computersystem where name="%computername%" call rename name="{新PC名}"」を実行すると、コンピューター名を変更できる。wmic.exeは管理者向けツールのため、簡素なメッセージしか現れないが、「ReturnValue(戻り値)」が「0」であれば、正しく実行できたことになる。そのまま「shutdown.exe」コマンドなどを使ってPCを再起動すれば操作完了だ。阿久津良和(Cactus)
2015年04月18日Windows 8.1をインストールしたPCは必ず、"コンピューター名(ホスト名)"が必要だ。一般的にコンピューター名は、ネットワーク接続したデバイスが互いを識別するために使用する。今回はこのコンピューター名の確認方法を紹介していく。○Windowsとコンピューター名Windows 8.1をプリインストールしたPCの場合、通常は初回起動時にコンピューター名の入力を求めてくる。ただし、PCベンダーのポリシーやOSのバージョンよって異なり、必ずしもユーザーがコンピューター名を付けるとは限らない。上図はWindows 8.1 Updateのインストールプロセスと、Windows 10 Technical Previewの「システム」だ。前者はインストール中にコンピューター名の入力を求めるが、後者はそのようなプロセスを踏まず、「WIN-{ランダムな11桁の英数字}」を自動的に付与する。このように、インストーラーの構成やPCベンダーのポリシーによって、コンピューター名の指定は異なるのだ。○コンピューター名を確認するWindows 8.1におけるコンピューター名の確認方法は多岐にわたる。GUI操作の場合は、「システム」や「システムのプロパティ」で確認可能だ。なお、システムのプロパティダイアログは、「sysdm.cpl」ではなく「SystemPropertiesComputerName.exe」を実行してもよい。モダンUIベースでコンピューター名を確認するには、「PC設定」から「PCとデバイス\PC情報」を参照する。詳しくは次回で紹介するが、各所でコンピューター名の変更が可能だ。一連の手順を目にしたとき、「コンピューター名」と「フルコンピューター名」という2つの項目に疑問を覚えたかもしれない。後者は、ドメインというネットワーク管理方法に属している場合にのみ使用する名前だ。詳細は割愛するが、ドメインに参加済みPCの場合、「{コンピューター名}.{ドメイン名}」という形式で示される。CUIの場合も多数の確認方法が用意されているので、まとめて紹介しよう。もっとも簡単なのが、現在のコンピューター名を表示する「hostname.exe」。コマンドを実行すると標準出力でコンピューター名が示される。このコンピューター名は環境変数「COMPUTERNAME」が保持しているため、「echo」コマンドで確認してもよい。また、IPアドレスの割り当てなどを確認する「ipconfig.exe」でも確認が可能だ。今回はコンピューター名だけが必要なため、文字列の検出コマンド「findstr.exe」で「ホスト名」を抜き出すと分かりやすいだろう。誌面が尽きてきたので、コンピューター名の変更に関しては次回紹介する。阿久津良和(Cactus)
2015年04月17日Microsoftは4月2日(現地時間)、これまでWindows Phone向けに提供していた「Office Lens」を、iOS(iPhone)およびAndroid向けアプリケーションとして公開した。Office Lensはスマートフォンのカメラで撮影したホワイトボードやレシート、紙資料などを、OCR機能によってテキスト化する機能を持つ。以前からMicrosoftは撮影画像のOCR処理機能を提供していた。振り返れば2013年6月開催のBuild 2013で公開したデモンストレーションをその後「翻訳(旧Bing Translator)」というWindows appとしてリリースしている。さらにさかのぼれば、Microsoftの研究機関であるMicrosoft Researchの「Whiteboard It!」にたどり着く。遠近法を踏まえたゆがみ補正や彩度識別でホワイトボードに書かれた内容をデータとして取り組む研究プロジェクトである。研究者も早期からOfficeアプリケーションとの連動を想定し、Officeチームとオンライン会議を重ねて、Microsoft Research ASIAとの協業や、処理品質を大きく向上させた結果、「Office Lens」が生まれた。マイクロソフト ディベロップメントの担当者に確認したところ、OCR機能はもちろん、撮影画像の解析やレイアウト、ファイル生成に至るまでの課程は、Microsoft Development Center Serbiaの基本技術を使用したという。その技術をMicrosoft Azureサーバー上で運営しているのが、日本マイクロソフトのOffice Lens開発チームだ。Channel9でも、セルビアのOCRチームに所属するIvan Stojiljkovic氏のインタビュー動画を公開し、各モバイルアプリケーションからOCR機能を利用するためのサンプルコードやパッケージの利用方法などを紹介している。ソフトウェア開発者なら興味深い情報を得られるだろう。では、Office Lensの具体的な動作を確認しよう。アプリケーションを起動すると、「写真」「ドキュメント」「ホワイトボード」といったモードを切り替えて、ホワイトボードや印刷物を撮影。写真はそのままだが、ドキュメントモードはトリミングや色調整、ホワイトボードモードもトリミング処理に加えて強い光や影の調整を行う。なお、インポート機能で撮影済みの画像を読み込むことも可能だ。この際、撮影した画像はデバイス上で傾き補正を行った後、サーバー上でのOCR処理を経て、OneDriveへアップロードする仕組みである。今回はWordを選択したため、OneDriveフォルダーの「ドキュメント\Office Lens」フォルダーにファイルが生成されたが、PowerPointやPDFを選択した場合も結果は同様。ただし、OneNoteを選択した場合は既定のQuickノートに、OneDriveは「画像」フォルダーにファイルを生成する。ポイントはWordやPDF形式を選択した場合だ。前述したようにOCR処理で撮影画像上の文字列をテキストとして処理し、他のアプリケーションへコピー&ペーストが可能になる。PowerPointも同様の仕組みを備えているようだが、筆者が試した限りでは文字を画像として認識し、そのまま流用することはできなかった。筆者が実際に使っていて便利に感じたのは、カンファレンス動画視聴時に現れるスライドの取り込みである。セッションによってはPowerPoint資料を公開しないため、その際はスライドをドキュメントモードで撮影し、PDF形式で出力すれば記事で引用する際や後から確認する場面でも便利だった。強いてOffice Lensの短所をあげると、名刺モードの利用方法が複雑な点である。Office Lensで撮影した名刺画像をOneNoteに送信すれば、各テキスト情報やVCF(vCard)形式ファイルの作成が可能だ。しかし、ここからスマートフォンの連絡先に取り込むには手間がかかるため、同種のアプリケーションのように単独で取り込めるような仕組みの搭載を期待したい。冒頭で述べたようにOffice LensはWindows PhoneからiOS/Androidへと活躍の場を広げるが、OCR系アプリケーションはすでにごまんとある。"レッドオーシャン"と言える厳しい市場だ。しかし、Office Lensは無償提供とOfficeアプリケーション連動という大きなアドバンテージを持ち、Windowsユーザーにとっては親和性も高い。有象無象のOCR系アプリケーションに埋没する可能性も否定できないが、ビジネスの生産性向上を金看板とするMicrosoft Officeなら、筆者の危惧など吹き飛ばしてくれるだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年04月13日PCを使っていて、「直前の操作をキャンセルしたい」という場面は珍しくない。Windowsでも、直前の操作をキャンセルする「アンドゥ(Undo)」と、キャンセルした操作を実行し直す「リドゥ(Redu)」という機能を用意している。今回はアンドゥ/リドゥ機能をWindows 8.1で使用するTipsを紹介したい。○今さら聞けない「アンドゥ」と「リドゥ」普段からWindowsやアプリケーションを使っていても、アンドゥ機能そのものに注目する機会は多くない。コピー&ペーストなどの機能と同じく、普遍的な存在だからだ。その歴史は、40年以上前の1974年に使われていた「Bravo」というテキストエディタまでさかのぼる。パロアルト研究所で開発したBravoにアンドゥ機能を実装し、そのときのショートカットキーが「Ctrl」+「Z」キーだったため、その後の各OSやアプリケーション、Windowsでも同様のキーバインドが用いられた。○「元に戻す」と「やり直し」それでは、Windows 8.1でアンドゥとリドゥの動作を確認してみよう。適当なファイルを事前に用意し、フォルダウィンドウ(エクスプローラー)でそのファイルを選択して、「Ctrl」+「C」キー→「Ctrl」+「V」キーと順に押す。通常であれば、元となるファイルのほかに、名前に「 - コピー」が加わったファイルが生成される。ここでデスクトップのコンテキストメニューを確認してほしい。メニューには「元に戻す - コピー」という項目が有効になるはずだ。これがアンドゥである。項目名は直前の操作内容によって異なり「移動」「削除」などに変化し、冒頭で述べた歴史背景があるため、使用可能なショートカットキーは「Ctrl」+「Z」キーだ。一度、「元に戻す - コピー」を選択してみよう。その上でデスクトップのコンテキストメニューを参照すると、今度は「元に戻す - コピー」が「元に戻す - 削除」に変化し、新たに「コピー のやり直し」という項目が加わる。後者がリドゥだ。ちなみにショートカットキーは、「Ctrl」+「Y」キーが伝統的に割り当てられている。アンドゥとリドゥを使うときに気を付けるのは、直後でなければ実行できない点だ。エクスプローラーの操作に対するアンドゥ&リドゥは、ファイルのコピーや移動、リネームといった操作を行うと、リセットされてしまう。この点に注意しておけば。Windows 8.1のファイル操作はより簡単になるはずだ。○IEでアンドゥを実行するアンドゥ機能は多くのアプリケーションが備えている。例えばInternet Explorerなら、「閉じたタブを再度開く」というアンドゥ機能が便利だ。タブを閉じてから気になる記述を思い返し、再び同じWebページを開きたい場合にタブのコンテキストメニューから「閉じたタブを再度開く」を選択するか、「Ctrl」+「Shift」+「T」キーを押せばよい。ただし、こちらも他の操作(別のWebページをタブで開くなど)を行うとリセットされてしまうため、エクスプローラー同様に操作直後に実行できる機能として覚えておいてほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年04月10日こんにちは、Windows 10 Technical Previewでも、暇があればレジストリエディターで徒然とエントリーを眺めている阿久津です。Microsoftがリリースしたビルド10049を使っていたところ、レジストリエディターに新たな機能が加わっていることを確認しました。具体的には、「同名のキーがある場合、そちらのキーに移動する」項目がメニューに加わります。例えばHKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWAREとHKEY_CURRENT_USER\Softwareキーと同じSOFTWARE/Softwareキーを選択した状態で右クリックしますと、一方に移動する項目が現れるという仕組みでした(図01~02)。筆者は見落としていましたが、neowinの記事によれば、3月18日(米国時間)にリリースされたビルド10041から搭載された機能だとか。どちらにせよ(一部のユーザーには)使用頻度の高いレジストリエディターに改善が加わるのはうれしい限りです。さて、Windows Updateに現れた「KB3035583」は「Windows 7 SP1/8.1の更新通知に関する追加機能」とのこと。ナレッジベースは詳しい説明を行っていませんが、更新プログラムを適用しますと、「%SystemRoot%\System32\gwx」フォルダーを作成し、いくつかのファイルを展開しました(図03~04)。具体的な動作は現時点で不明ですが、EXE/DLL形式ファイルのリソースを参照するツールで確認したところ、「Windows 10を入手する」といった文字列が確認できました(図05~06)。いよいよMicrosoftも、Windows 10リリースに向けた準備を始めた、というところでしょうか。しかし、必ずしもWindows 7/8.1をインストールしたPCをWindows 10へアップグレードするとは限らず、しばらくの間は既存のOSを使い続けるユーザーも少なくありません。そこで今週はKB3035583のインストール抑止と、インストール済みの場合はアンインストールするチューニングをお送りしましょう。まず、未インストールの場合はWindows UpdateからKB3035583を右クリックし、メニューの<更新プログラムの非表示>を選択するだけです。アンインストール操作もGUIから実行できますが、今回はコマンドプロンプト上から実行してみましょう(図07)。1. 管理者権限でコマンドプロンプトを起動します。2. プロンプトから「wusa.exe /uninstall /kb:3035583 /quiet /norestart」を実行します。3. コマンドプロンプトを終了します。これでチューニングが完了しました(図08~09)。早速結果を確認してみましょう。「ファイル名を指定して実行」やエクスプローラーのアドレスバーから、KB3035583の適用で作成された「%SystemRoot%\System32\gwx」フォルダーを参照してください。下図に示したようにエラーになればチューニング成功です(図10~11)。「wusa.exe」はWindows 7時代から加わった「Windows Updateスタンドアロンインストーラー」です。KB3035583は適用時もPCの再起動を求められなかったため、今回は再起動を実行しないオプション「/norestart」を加えました。また、ユーザー操作を抑止するオプション「/quiet」も併用していますが、こちらを使わない場合は下図に示したダイアログが現れます(図012)。それでは、また次号でお目にかかりましょう。阿久津良和(Cactus)
2015年04月08日Windows 10 Technical Previewの新ビルドやSurface 3の発表など新情報がラッシュアワーのように舞い込んだため、紹介するタイミングを逸していたが、米国サンフランシスコで3月初めに開催されていたGDC(Game Developers Conference) 2015でも、Windows 10に関するいくつかの新情報が明らかにされていた。本レポート記事で何度も触れてきたように、Microsoftは「One Windows」という方向性を持って変革を進めている。下図はChannel 9でMicrosoftが公開したGDC 2015のセッションから抜粋したものだが、「One Windowsへの旅程」と題したスライドでは、WindowsやWindows Phone、XboxをWindows 10に統合し、1つのOS・1つの開発環境・1つのストアに生まれ変わることを示している。これまでのMicrosoftは、WindowsやWindows Phone、Xboxの開発チームがそれぞれ独立した存在として開発を続けてきた。その結果、ヒューマンリソースの分散や開発コストの増加が発生していたため、状況を見直す意味でもOne Windowsという選択は正しい。今にして思えば、より早期に舵を切り直すべきだったかもしれない。だが、Windowsという存在は大きくなりすぎたのである。ただし、One WindowsといってもXbox上でWindowsがそのまま動作するわけではない。あくまでもAPIを統一し、共通化するのはコア部分に限られる。アプリケーションも統合APIを前提としたWindows appに移行するものの、PCとスマートフォンなど操作特性や用途が異なるデバイスに対しては個別の機能を用意し、条件分岐文を用いた1つのコードとしてパッケージングするとMicrosoftのDon Box氏は説明していた。また、Windows 10で動作するWindows appのAPI/ABI(OSとアプリケーション間の低レベルインターフェース)も変化する。Windwos 8から導入したWindows RT(Runtime) APIへ移行するが、すぐに切り替わるわけではない。既存のデスクトップアプリはWin32 API上で動作しているが、Box氏も「一定期間は重複する」と語ったように、Windows 10リリース時は移行期として両者が残る形となる。さて、GDCは文字どおりゲーム開発者向けカンファレンスのため、DirectX 12やWindows 10とXbox Oneの連動についての説明も行われた。DirectX 12に関して注目すべきはExecuteIndirectというCPU占有率を大幅に下げる機能だ。下図はDirectX 11とDirectX 12を比較したデモンストレーションだが、描画処理に関する負荷をCPUとGPUで制御することで、全体的なCPU占有率を軽減することが可能になる。例えば繰り返し処理を行う場合、DirectX 11はループ文を使っていたが、DirectX 12はGPUに処理を投げるだけで済むため、CPUの負荷が軽減するとPrincipal Development LeadのMax McMullen氏は説明した。Microsoftの説明によれば、DirectX 11は並列化のネックなどGPU性能を完全に引き出すことができなかったという。そこでDirectX 12はゲーム開発者にGPU性能を開放し、さらなる処理の向上を実現する。ゲーム開発者の負担は増えるものの、エンドユーザー側から見ればDirectX 12の恩恵は大きそうだ。PCゲームを楽しむエンドユーザー側から見たWindows 10の新機能が「Game Bar」である。基本的にはXbox appを起動するための新たなUIとなり、スクリーンショットやMP4形式によるゲーム動画の撮影が可能だ。MP4ファイルは一度保存してから、Xbox appやSNSなどに公開するといったソリューションを想定しているが、コンテンツ保護されている部分は録画できないという。なお、本機能は最新のWindows 10 Technical Previewとなるビルド10049にも組み込まれていない。Windows 1.0から数えると今年の11月で30周年を迎えるWindowsは、ゲーム分野の強化も行いつつ、Windows 10という完成形を目指している。その姿は現地4月29日からサンフランシスコで開催されるBuild 2015や、現地5月4日からシカゴで開催されるMicrosoft Ignite、日本では5月26日から2日間開催するde:code 2015で明らかにされるだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年04月06日●SiegfriedをホストPCに導入する○独自の映像圧縮エンジンで高画質・高圧縮を実現手元にないPCをネットワーク経由で操作する「リモートデスクトップ」のニーズは高い。Windowsも標準でRDP(Remote Desktop Protocol)を実装しているが、低速なネットワーク環境での高速化はもちろん、さらなる応答性の向上など改善を求める声は少なくない。そのような要望を持つユーザーに試してほしいのが、個人や法人(営利/非営利)を問わずに使用できるフリーソフトウェアとして、2015年4月2日に正式リリースを迎えた「Siegfried(ジークフリード)」である。Siegfriedを開発したIchiGeki氏は、2012年4月からMicrosoft MVP for RemoteDesktopServicesを受賞し続け、iOSからWindowsを遠隔操作する「KeroRemote」などをリリースしてきた。使用した経験をお持ちの方ならご承知のとおり、いずれのアプリケーションも高い応答性を備えている。その背景にあるのは、On2 Technologies(現在はGoogleが買収済み)が開発したビデオコーデック「VP8」をベースに、独自開発した映像圧縮エンジン「KUGA」だ。KUGAは動き判定をもとに、内部でVP8と、これも独自開発のビデオコーデック「GBVC(GaeBolgVideoCodec)」を内部的に切り替えることで、高画質と高圧縮を実現。IchiGeki氏のブログを参照すると、2013年8月頃に1つの完成を迎えたKUGAは、その後もパラメーター調整など改善を重ねてきた(技術的な部分は割愛する)。○ホストPCとなるWindowsマシンにSiegfriedを導入それでは、Siegfriedの使い方から解説しよう。ダウンロードリンクに用意されているのはZIPファイルのため、任意のツールを使って展開すると、実行形式を含めた3つのファイルが現れる。この中の「siegfried.exe」を実行し、ドロップダウンリストから「ServerMode」(サーバーモード)か「ClientMode」(クライアントモード)を選択して、リモートデスクトップのサーバーとクライアントを起動する仕組みだ。なお、Windowsのサービスとして動作させる場合は、管理者として実行すれば選択可能になる。サーバーモードで起動する場合は、最大64文字のパスワード設定が可能だ。空欄のままサーバーを起動しても構わないが、セキュリティリスクが発生することは理解しておこう。初回起動時はWindowsファイアウォールによるブロック解除をうながされるので、必要に応じてネットワークプレースを取捨選択してブロックを解除すれば、サーバーの準備は完了。サーバーの稼働中は、デスクトップ画面右下の通知領域にアイコンが加わる。また、通知領域アイコンを右クリックすると現れるメニューからは、リモートデスクトップ描画のフレームレート変更や、ファイルの送受信を行う項目を設定できる。共有フォルダーを未作成の環境でも、ファイルのやり取りができるのは何気なく便利だ。●SiegfriedクライアントPCから、ホストPCをリモート操作○SiegfriedクライアントPCから、ホストPCをリモート操作続いて、クライアント側の準備に取りかかろう。ClientModeに変更すると、設定項目が大きく変化する。「IP」はサーバー側で使用するIPアドレスを入力し、「Port」はサーバー側で変更しない限りは初期値の「49900」で構わないだろう。「Control」はリモートデスクトップ接続時にキーボードやマウス操作を行うか否かの設定だが、サーバー側で有効にしないと動作しない。「VideoQuality」は描画画質を5段階から選択できるが、接続後も変更できるので、まずは変更せずに接続してみよう。下図は、Windows 8.1から別PCのWindows 8.1へ接続した状態だ。実行スループットが約17Mbpsの無線LANでも(「LAN Speed Test Lite」で測定)、十分実用レベルである。さすがに画像クオリティやフレームレートを上げるともたつく場面があったため、有線LAN(実行スループットは約700Mbps)を試したところ、こちらは各種設定を変更しても遅延するような場面は皆無だった。Siegfriedで興味深いのが、マルチディスプレイに標準対応している点だ。筆者はデスクトップPCに4台のディスプレイを接続して普段から使用しているが、クライアント側からリモート表示/操作するディスプレイを自由に選択できるのはありがたかった。また、すべてのディスプレイを表示する項目も用意している。下図はディスプレイを横/縦/縦/横を配置しているため"いびつ"な形だが、さまざまな用途で活用できそうだ。●iOSデバイスから、ホストPCをリモート操作○iOSデバイスから、ホストPCをリモート操作冒頭で述べたようにIchiGeki氏は、iOS用リモートデスクトップアプリケーションとして、KeroRemote以外にも「Orthros」をリリースしている。WindowsマシンでSiegfriedサーバーを起動しておくと、いずれのクライアントからも接続できる。今回はKeroRemoteをiPadにインストールして接続を試みたところ、拍子抜けするほど簡単にリモート操作が可能だった。スワイプ操作でソフトウェアキーボードや操作ボタンを呼び出せば各種の操作を実現できるが、アプリケーション内にヘルプなどが用意されていないため、各種コントロールの消し方に慣れるまで時間を要するのは少々残念だ。Siegfriedを使用する上で留意すべきは、Windows標準のリモートデスクトップ接続とは、接続方法が異なる点である。リモートデスクトップ接続はWindowsのセッションを利用しているため、サーバーがWindows 8.1などクライアントOSの場合、同時接続可能セッション数が制限されてロック状態となる。一方でSiegfriedは、デスクトップの映像や音声などを圧縮転送しているため、クライアント側の操作はそのままサーバー側に逐一反映する仕組みだ。そのためSiegfriedによるリモート接続時は、サーバー側の負荷も高まり、アプリケーションによっては応答性が低下する場合もあることを踏まえて使ってほしい。○「ルーター超え」のリモート接続も可能最後に外出先からSiegfriedの接続を確認してほしいと編集部から指示を受けたため、検証結果を報告しよう。SiegfriedはIPアドレスとTCPポートさえあれば接続できるため、ルーター側でNAT(Network Address Translation)設定を行えば簡単そうだが、今回は集合住宅向けISPからVPN経由でフレッツ光接続したルーターへ接続。その上でSiegfriedのリモート接続を行ったが、もちろん問題はない。試しにスマートフォンとノートPCをBluetoothでつなぎ、通信キャリアのネットワークでNAT設定を行ったルーター経由で接続したが、こちらもリモート接続の成功を確認している。もっともNAT設定はセキュリティリスクも発生するため、特に問題がなければVPN接続を用いることをおすすめしたい。なお、今回取り上げたSiegfriedは圧縮率に特化しており、パフォーマンスを優先するのであれば「Brynhildr(ブリュンヒルデ)」と試してほしいとIchiGeki氏は説明している。阿久津良和(Cactus)
2015年04月06日こんにちは、阿久津です。いつものように本稿を執筆しようと各PCを起動したところ、Windows 10 Technical PreviewをインストールしたPCがビルド10049への更新が始まりました。詳しくは短期集中連載のレビュー記事で紹介する予定ですが、「Project Spartan(開発コード名)」を搭載しています。Project Spartanは音声アシスタントシステム「Cortana」との統合が注目ポイントですが、残念ながらCortanaは日本語に未対応。MicrosoftはWindows 10を今夏にリリースすると表明していますが、Windows 10 for Mobile(Windows Phone)との連携を踏まえますと、RTM(製造工程版)完成後も多くのアップデートが行われるかもしれません(図01~02)。そのWindows 10 Technical Previewですが、今ひとつ使いにくく感じるのはWindowsストアアプリ改めWindows Appのジャンプリストです。Windows Appは全画面で動作することを前提に設計されましたので、デスクトップ操作を強化するジャンプリストとは相いれません(図03)。しかし、Microsoftはこの問題の解決先として、スタートメニューのタイルからジャンプリストを呼び出す方法を試しています。今週はスタートメニューのジャンプリストを有効にするチューニングをお送りします。1. 管理者権限でレジストリエディターを起動します。2. レジストリエディターが起動したら、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\Advancedキーを開きます。3. DWORD値「EnableXamlJumpView」を作成し、データを「1」に変更します。4. レジストリエディターを終了します。5. エクスプローラーを再起動します。これでチューニングが完了しました(図04~12)。早速結果を確認してみましょう。前準備としてスタートメニューにエクスプローラーをピン留めしてください。そしてエクスプローラーのタイルにマウスオーバーしますと、右上に矢印アイコンが現れます。そちらをクリックすることでジャンプリストが使用可能になりました(図13~15)。もちろん本機能は公式にアナウンスされたものではありませんので、ビルドによっては動作しない可能性もあります。今回はビルド10041とビルド10049で確認しましたが、今後動作しなくなる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。また、チューニング後に何らかの問題が発生した場合や元の状態に戻す場合は、DWORD値「EnableXamlJumpView」を削除し、エクスプローラーを再起動します。それでは、また次号でお目にかかりましょう。阿久津良和(Cactus)
2015年04月01日2015年3月30日(現地時間)、MicrosoftはWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10049をリリースしたことを公式ブログで明らかにした。高速リングを選択しているプレビュー環境を対象とし、小さな改善と修正を加えているが、最大の特徴は「Project Spartan(開発コード名)」を搭載した点である。今回は次期標準WebブラウザーとなるProject Spartanの特徴を中心に、ビルド10049の変更点を紹介しよう。○Webページに直接書き込むWeb Note機能そもそもProject SpartanとはHTML5を核としたモダンなWeb技術に追従するため、再構築したWebブラウザーである。過度に拡張したInternet Explorerは互換性維持のため残し、新たなHTMLレンダリングエンジン"Edge"と共にWeb UX(ユーザーエクスペリエンス)の変化を目指すものだ。MicrosoftのOSG(Operating Systems Group)担当CVPであるJoe Belfiore氏は、別の公式ブログで、「Webページに焦点を当てた最新式のWebブラウザー」とProject Spartanを称している。Project Spartanの特徴を大きく分けると、Cortanaとの統合やペンによる書き込みと共有、リーディングリスト、レンダリングエンジンの刷新の4つ。まずCortanaはバックグラウンドで動作し、Webブラウズ時に追加情報提供するとBelfiore氏は紹介するが、Cortana自体が日本語に未対応のため、現時点では動作しない。次のインク機能はWebページに直接図形や文字を書き込み、保存や共有が可能になるというものだが、普段から使用できるわけではない。ツールバーに並ぶ<Make a Web Note>ボタンを押すと細字/太字といったペンが使用可能になる。その上で気になる記事をペンで囲み、後から再確認する文書をマーキングするといったアクションを実行する仕組みだ。なお、その横に並ぶアイコンは消しゴムのように思われるが筆者が確認した限り、正しく動作しなかった。その横に並ぶアイコンは、Webページ上にテキストを書き込むための機能を提供する。タイプした内容はテキストウィンドウ内のごみ箱アイコンで簡単に削除できるものの、ウィンドウ位置は変更できなかった。Webページ内のアイコンはドラッグ&ドロップで自由に移動できることを踏まえると、今後の改善で変化するのではないだろうか。次のアイコンはWebページのクリッピング機能を提供する。ちょうどOneNoteのWebページの一部分を取り込む「OneNote Clipper」と似ているが、クリッピング先は基本的にクリップボードだ。ツールバーの右側に並ぶフロッピーディスクアイコンや共有アイコンを併用すれば、前述したインクの書き込みやクリッピングの結果を、お気に入り/リーディングリストへの保存、Windows app経由で共有も可能である。ちなみに保存内容はHTMLファイルとPNGファイルが対になる状態で、「%LOCALAPPDATA%\Packages\microsoft.windows.spartan_cw5n1h2txyewy\AC\#!001\Spartan\History」フォルダーに保存していた。なお、Web Noteモードに入る際は、1度Webページをリロードする動作を確認している。普段は閲覧を全体したHTMLレンダリングを行い、Web Noteモード時はキャッシュを用いて再レンダリングする仕組みのようだ。○軽快さ魅力のProject SpartanWindows 8.1ではWindows appの「リーディングリスト」を使っていたが、Project Spartanは同機能を内包している。「Reading view(読み取りビュー)」は単独記事を開いた際、アドレスバーの横に本を開いた状態を模したアイコンが有効になり、テキストと写真のみを表示するモードに切り分かるというものだ。しかし、必ずしも使用できるわけではない。本誌サイトで動作検証を行ったところ、同じ記事でもアイコンが有効にならないケースも見受けられた。確証に至っていないが、広告部分がReading viewの可否につながっているのだろう。Project SpartanはHTMLレンダリングエンジンこそ"Edge"に置き換わっているが、Windows 8.xのWindows appである「Internet Explorer」をベースにしている部分がうかがえる。下図はProject Spartanの設定項目をつなぎ合わせたものだが、同アプリケーションと似た項目が並んでいることに気付かれるだろう。もちろんCortanaやReading viewといった新機能に関する項目も加わっているが大半は同じだ。シンプルなWebブラウジングを求めるユーザーにとってProject Spartanは有益かつ必要最小限の機能を持つ道具になりそうだ。もちろん開発途上版で判断するのも早計だが、普段からMozilla Firefoxなど拡張機能を使って、自分好みにカスタマイズするユーザーにとってProject Spartanは、物足りない印象は拭いきれない。もちろんMozilla FirefoxやGoogle ChromeもWindows 10に対応するであろうから、今後は軽快なProject Spartanと併用するスタイルが強まるだろう。なお、公式ブログによればWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10049は、「Photos」がカメラロールから呼び出す際にクラッシュする問題や、タブレットモードでウィンドウが背面に回ってしまう問題、手動ロックが正しく動作しない問題を改善。その一方でいくつかの問題が新たに発覚していることにも明らかにした。具体的には、サインイン後にデスクトップが現れない可能性があるという。その際はロックを実行するか([Win]+[L]キー)やタスクマネージャーを起動([Ctrl]+[Shift]+[ESC]キー)を押して再サインインを実行しなければならない。また、Outlookで受信したメールのインデックス作成や、仮想マシンのホストOSとして正しく動作しない問題が発生している。これらの問題に支障がある場合、テクニカルプレビューの更新を低速リングに変更することをお勧めしたい。阿久津良和(Cactus)
2015年03月31日既報のとおりWindows 10は今夏にリリースされる予定だが、「夏」と言えば一般的に6~8月頃を指し、一端の完成と見なすRTM(製造工程版)まで2~4カ月しか残されていない。だが、Windows 10の新Webブラウザーとなる「Project Spartan(開発コード名)」は大方の予想を覆し、2015年3月リリースのビルド10041に搭載されなかった。Project Spartanの開発進捗はどのようになっているのだろうか。○2つのWebブラウザーを備えるWindows 10最近、知り合いから「Windows 10のWebブラウザーは新しくなるが、IEとProject Spartanの2つを用意するのか?」という質問を受けた。Microsoftは当初、「デュアルレンダリングエンジン」と称して、Project SpartanとInternet Explorerから双方向的に「Trident」と「edge」の新旧HTMLレンダリングエンジンを使えるように説明していた。だが、3月24日(米国時間、以下同様)にMicrosoftが開催した「Project Spartan Developer Workshop」にて、プログラムマネージャーのKyle Pflug氏は、「Internet Explorer 11は従来のHTMLレンダリングエンジンであるTridentを使い、Windows 8.1 Updateと同等のものとなる」と述べている。つまりWindows 10は、Project SpartanとInternet Explorer 11と2つのWebブラウザーを備え、それぞれ単独のHTMLレンダリングエンジン上でWeb描画を行うことになるのだ。まずは、Project Spartanの概要をおさらいしよう。Project Spartanはレンダリングエンジンを刷新し、HTML5などへの完全対応やWindows 10が備える音声アシスタントシステム「Cortana(コルタナ)」との統合を目指しながら、完成を目指す次世代Webブラウザーである。Windows 10では標準Webブラウザーとなる予定だ。他方でInternet Explorerは企業のイントラネットなどレガシーなシステムとの互換性を維持するため、Windows 10にも残される。下に並べた2つの画像は、いずれもProject Spartan開発チームが公式ブログに掲載したものだ。Project SpartanにおけるCortanaとの統合を明言し、分類をレンダリングエンジン名からWebブラウザー名に変更した程度である。だが、これこそが、Project Spartanにエンジンの切り替え機能などは用意せず、モダンなWebサイトはProject Spartan、古いイントラネットなどはInternet Explorer、と分ける判断を下した明確な証拠と言えるだろう。もうひとつの興味深い発表がある。それはWeb Platform開発に関するAdobeとの提携だ。AdobeがW3C(World Wide Web Consortium)の標準化などにコミットしてきた技術をProject Spartanにも取り込み、モダンなWebサイトの再現性を向上させるのが主な目的である。具体的にはレイアウトやタイポグラフィー、グラフィックデザインといった面で貢献してもらったと、Project Spartanチームのプログラムマネージャー Bogdan Brinza氏は述べていた。さらに具体例として複数の背景色や画像を1つのセレクターに含めて合成を行うブレンドモードのフルサポートや、CSSによる双方向的なグラデーション効果をアピール。これらはビルド10041に更新したWindows 10 Technical Previewであれば、事前にInternet Explorerの「about:flags」から、"試験的なWebプラットフォーム機能"を意味する<Experimental Web Platform Features>で<有効>を選択することで試すことができる。本稿をWindows 10上でご覧の方はもちろん、他のWebブラウザーをお使いの方はリンク先(CSSグラデーション、ブレンドモード)で試してほしい。Web技術を振り返ると、シェア争いに端を発したWebブラウザー戦争を思い出す。各陣営は独自の技術を実装してシェア拡充を目指す一方で、標準化への追従遅延によるシェア減少など一進一退を繰り返していた。それはNetscape Navigator vs Internet Explorerの時代も、Internet Explorer vs Mozilla Firefox vs Google Chromeの時代も変わらない。だが、結局はユーザーメリットにつながることはなく、Web開発者は各Webブラウザーで同一の動作を保証するコーディングを強いられた。CSA Mosaicの誕生から数えて22年、Microsoftは他陣営に先立ってWeb技術でも共存の道を歩む"エコシステム"を選び、Project Spartanの開発速度を上げている。阿久津良和(Cactus)
2015年03月30日2015年3月19日にWindows Update経由でリリースし、同月25日はISO形式ファイルの配布も始まったビルド10041を対象にレビューを重ねてきたが、早いもので5回を数える。そこでビルド10041に関してはひとまず今回を一区切りとし、最後もビルド9926と比較して改善・変更された箇所を中心に報告したい。○「設定」のピン留めはスタートメニューのタイルへ最初に第18回で触れた「設定」のピン留め機能だが、その後スタートメニューの動作を検証していたところ、タイルとして加わることが分かった。今回はこの件から報告したい。Windows 10テクニカルプレビュー ビルド10041の初期状態は多くのタイルがスタートメニュー内に並び、右端にはスクロールバーも用意しているが、スタートメニューの右上に並ぶ<展開/復元>ボタンをクリックしたところ、存在にようやく気付いたというのがことの次第である。ピン留めしたタイルは「設定」の中カテゴリと同じ名称を持ち、他のタイルと同じくドラッグ&ドロップで移動可能だ。ピン留めのオン/オフも可能で試しにタスクバーへのピン留め操作を行ってみたところ、確かにピン留めされるものの、中カテゴリがジャンプリストには加わらない。Windowsストアアプリがジャンプリスト機能をサポートしているのか確認してこなかったが、Windows 8.1でいくつかのアプリケーションを試したところ、ファイルのドラッグ&ドロップによるジャンプリストへの追加サポートしていないようだ。今後もデスクトップを中心に使うことを踏まえると、コントロールパネルの「最近使ったもの」のようにジャンプリストに対応できると便利ではないだろうか。そういえば、"Windowsストアアプリ"という名称もWindows 10ではなくなるようである。MicrosoftでDistinguished Engineerを勤めるDon Box氏のキーノートスピーチをChannel 9で視聴していると、これまで「メトロアプリ」や「Windowsストアアプリ」と呼んでいたものを「Windows App」と定義すると語っていた。これはブランド命名時のトラブルも関係している。MicrosoftがWindows 10デバイスプラットフォーム上で同一のアプリケーションが動作する「ユニバーサルアプリ」への移行を推しているのはご承知のとおり。この2つの要素が相まって、モダン/Windowsストア/ユニバーサルアプリと呼ばれるものはすべて "ウィンドウアプリ"、Win32ベースのデスクトップアプリは「Windows desktop application(デスクトップアプリのまま?)」となるようだ。○P2P機能で更新プログラムを更新可能……?それでは、このところ続けていた「設定」の項目チェックに取りかかろう。最後は「保守と管理」の「Windows Update」からたどれる「更新プログラムのダウンロード方法を選択する」という設定項目だ。画面に並ぶのは複数のソースから更新プログラムのダウンロードを許可するスイッチと、その対象として<ローカルネットワーク上のPC><ローカルネットワーク上のPCとインターネット上のPC>の2項目。冷静に考えればLAN上のWindows 10搭載PCから同種の更新プログラムを取得していないか確認し、Windows Updateサーバーから取得したハッシュ情報などを確認しつつ、外部とのトラフィック量の軽減する仕組みだと予想できる。問題は後者の"~インターネット上のPC"という部分だ。多くのユーザーは更新プログラムに改ざんが加わるリスクを考えてしまうだろうが、ハッシュ情報を始めとするファイルの整合性を確認する手法は多いため、さほど問題ではない。では、P2P(Peer to Peer)技術を用いているのかと問われれば、その可能性は高い。そもそもMicrosoftはWindows Vistaの時点でP2Pネットワークを実現するサービスを標準で組み込み、Windows XP時代もIPv6やP2P機能を追加する「Advanced Networking Pack for Windows XP」をリリースしていた。ちょうどその頃はIMクライアントにP2P機能を実装した「3°(Three Degrees)」のベータテストも行っている。ただし3°は、ビジネスモデルやビジョンを確立できなかったため、リリースには至っていない。他方でP2P技術はWCF(Windows Communication Foundation)の1つとして組み込まれ、現在はSharePoint Workspaceに改称したOffice Grooveの基本的技術として用いられていた。このような背景から更新プログラムの取得方法として、"~インターネット上のPC"として近くのPCから更新プログラム(全体もしくは1部)を取得するのだろう。ただ、約10年前から作ってきたP2P技術をそのまま使うのではなく、2013年にMicrosoftが取得したP2P技術でファイル転送サービスを行うPando Networksを買収しているため、こちらの技術を取り込んだ可能性も捨てがたい。いずれにせよ、P2P機能を有効にする場合、"ダウンロード可能な場合はアップロードする側に回る可能性"も同時に発生する。更新プログラムのアップロードは何ら問題はないものの、1日のアップロード量を制限するISPをお使いの場合、オンラインストレージの利用に続く問題が発生しそうだ。○マウス/タッチ操作で変化するUIここからはWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10041の細かな変更点を確認していこう。例えばマウス操作時とタッチ操作時にUIが微妙に異なっていることに気付くだろうか。下図はWinHEC 2015の「Input Platform Enhancements for Windows 10」から抜粋したものだが、Windows 10はタッチ操作の改善を目指し、ペンや指で選択しやすくするサイズ調整機能を内包するという。もっともこれらはデスクトップ/タブレットモードによる差異のようだが、通常のデスクトップモードでもその違いは確認できる。お手元にWindows 10テクニカルプレビュー 10041がある読者はタスクバーボタンをマウスで右クリックした場合と、指で長押しした時の結果を見比べてほしい。コンテキストメニューの行間が大きくなることに気付くことだろう。Surface Proにインストールしたビルド10041で動作を確認してみたが、確かにタッチしやすさはWindows 8.1と段違いである。このような細かい改善はペンや精密タッチパッドにも加わるようだ。章を改めるまでもない細かい変更点は各所で見受けられる。例えば「ストア(ベータ)」にはアプリケーションやゲームといったカテゴリに「映画とテレビ」が加わり、RTM(製造工程版)リリース時は、動画コンテンツのレンタル/購入プロセスを「ビデオ」から移行させるつもりなのだろう。また、ドライブのダイアログを開くと使用状況を示す円グラフのサイズが小さくなっている。また、Windows 10が新Webブラウザー「Project Spartan(開発コード名)」と新HTMLレンダリングエンジン「Edge」を搭載することは既報のとおりだが、その一部機能をInternet Explorer 11で確認できる「Experimental Features(試験的な機能)」の設定項目も大幅に増えていた。詳しく述べていくとWindows 10の話から離れるため割愛するが、モダンWebへの対応は着々と進んでいるようだ。最後に本ビルド10041では確認できないが、今後を見据えた情報として「WDDM(Windows Display Driver Model) 2.0」に触れておこう。最初のアナウンスは2014年開催のBuild 2014のため目新しさはないものの、Direct3D 12 APIを利用に欠かせないため、Windows 10ではWDDM 2.0対応のビデオドライバーは必須となる(ちなみにビルド10041をIntel HDグラフィック4000上で動かした場合、WDDM 1.3のドライバーが組み込まれた)。上図はWinHEC2015のプレゼンテーション資料「Graphics Investments in Windows 10」から抜粋したものだが、ディスクリート(外部)GPUへのディスプレイ接続や、外部ディスプレイに出力する際のDPI/スケーリング調整をサポートするなど、"ちょっと気になる"部分の改善が各所に行われる予定だ。この辺りに関しては2015年5月からのBuild 2015で詳しく説明され、Windows 10の新ビルドで実際に試すことができるだろう。ビルド10041に関するレビューは今回でひとまずお開きにし、新ビルドが登場したあかつきには再び改善点などをご報告したい。阿久津良和(Cactus)
2015年03月30日○2人の管理者アカウントが存在する?前回、Administratorアカウントを有効にする手順を紹介したが、この時点でWindows 8.1には2人の管理者アカウントが存在することになる。なぜならWindows 8.1セットアップ時に作成したユーザーアカウントは、自動的にAdministratorsグループへ加わるからだ。また、セキュリティの観点からAdministratorアカウントを有効にする場合、自身のアカウントは標準ユーザー権限に降格させて構わないだろう。そこでグループの操作手順に取りかかる。○自身を「管理者」から「標準」に変更するもっとも簡単な方法は「ユーザーアカウント」から設定変更する方法だ。Windows 8.1におけるユーザーの種類(=グループ)は用途に応じて20種類以上存在するが、GUIからの設定では「標準(=Users)」「管理者(=administrators)」の2種類しか選択できないため、誤った操作も未然に防げる。アカウントの種類(グループ)の変更は、Windows 8.1からサインアウトしないと反映されないため、サインアウト操作を忘れずに行う。○自身をadministratorsグループから取り除く構造を理解しつつ操作したい場合は、「ローカルユーザーとグループ」の使用をおすすめしたい。基本的にはAdministratorsグループから自身のユーザーアカウントを取り除き、Usersグループに自身を追加するという方法だ。先の「ユーザーアカウント」で行った操作を手動で行うと、このような流れになる。こちらの操作方法でもWindows 8.1への再サインインが必要だ。ちなみに、Usersグループに自身のユーザーアカウントを登録し損ねると、Windows 8.1にサインインできないため、細心の注意を払ってほしい。○コマンドでAdministratorアカウントを有効にする最後にAdministratorアカウントを有効にするもう1つの方法として、管理者権限を持つコマンドプロンプトから「net user」コマンドを使ってみたい。「net user administrator {パスワード} /active:yes」と実行すれば、Administratorアカウントの有効化と、パスワード設定の両方が可能になる。○Administratorアカウントを無効にするAdministratorアカウントが不要になった場合は、必ず無効化設定を行うべきだ。ただし、Windows 8.1には、最低でも1ユーザー以上の管理者が必要となるため、前述した方法を参考に自身のユーザーアカウントをAdministratorグループに追加するか、アカウントの種類を「管理者」に変更してから下図に示す手順を実行する。阿久津良和(Cactus)
2015年03月29日執筆時点(3月25日午前)で日本マイクロソフトによるアナウンスはないが、MicrosoftはWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10041のISO形式ファイルを公開した。当初、MicrosoftのOSG(Operating Systems Group) Data and Fundamentalsチームでジェネラルマネージャーを勤めるGabriel Aul氏は「ISO(形式ファイル)を用意しない」と述べていたため、突然の方針転換と言えよう。「Windows 10 Technical Preview ISO March Update」という名称を持つビルド10041は、ビルド9926で低速リングを選択しているユーザーにも提供を始めている。今回もビルド9926と比較して改善・変更された箇所を中心に報告しよう。○サインイン直後にスタートメニューが現れる?「Settings」の変更項目を紹介する前に1つTipsを紹介したい。読者の皆さんはWindows 10テクニカルプレビューを使っていて違和感を覚えたことはないだろうか。それはサインイン後に必ず現れるスタートメニューだ。なぜこのような仕様になったのか不明だが、改めてビルド9926を確認すると同じようにスタートメニューが現れる。このスタートメニューの表示を抑制するには、「タスクバーとスタートメニューのプロパティ」ダイアログの<ナビゲーション>タブに並ぶ<サインイン後にスタート画面を表示しない>をチェックすればよい。だが、複数のPCにWindows 10テクニカルプレビューをインストールすると、<サインイン後にスタート画面を表示しない>の設定がグレーアウトしているPC環境が存在することを確認した。いずれもビルド9926からビルド10041へとアップデートした新規環境のため、筆者のカスタマイズ操作による影響とは考えにくい。ただ、本現象が発生するのは主に仮想マシンのみであり、実機では確認できなかったことから、PCのスペックが影響を及ぼしている可能性もある。この辺りの動作は正式版リリース後に追ってご報告したい。○無線LAN APの削除機能が復活それでは、「Settings」の設定項目を確認していこう。「ネットワークとインターネット」に並ぶ「Wi-Fi」には「SystemSettings.ViewModel.SettingEntry」という新項目が確認できる。こちらは日本語の言語パックもしくはLIP(Language Interface Pack)に対応する文字列を用意していないため、コードをそのまま表示しているにすぎないが、スイッチの動作を確認すると無線LANのオン/オフを切り替えるというものだった。また、「Wi-Fi設定の管理」からは第17回で紹介したWi-Fiスポットに関する設定や、1度接続した無線LANアクセスポイントの削除を可能にしている。まだ、Windows 10テクニカルプレビューをモバイルデバイスにインストールして外出する機会がないものの、Windows 8.1における「既知のネットワークの管理」と同じ操作のため、多くの無線LANアクセスポイントに接続しているユーザーなら便利に活用できそうだ。その他には「携帯電話」「DirectAccess」といった項目が見当たらないが、後者はWindows 10テクニカルプレビューのインストール時に、PCの所有者を会社・個人から選択するセットアッププロセスが影響していると思われる。○キーボードレイアウト誤認識からの解放「アカウント」に並ぶ「お使いのアカウント」には、「アプリとWebサイトのアカウント」という項目が新たに加わった。文字どおりWindowsストアアプリやWebサイトで利用するMicrosoftアカウントを指定するというものだ。Windows 10テクニカルプレビューにサインインするアカウントと別々に管理できそうに見えるが、ビルド10041ではアカウントを削除できても追加するボタンは現れなかったため、今後は何らかの仕組みを追加するのだろう。「時刻と言語」に並ぶ「地域と言語」は一見すると変化していないように見えるが、日本語のオプションに「ハードウェアキーボードレイアウト」という項目の追加を確認できた。<レイアウト>ボタンを押すと新たなウィンドウから、「日本語キーボード(106/109キー)」「英語キーボード(101/102キー)」の2種類から選択可能である。そもそもWindowsは以前から、106/109キーボード(日本語配列)を101/102キーボード(英語配列)として誤認識する問題がある。そのためデバイスマネージャーからドライバーの更新を行う経験をお持ちの読者も少なくないだろう。どのような構造で本機能を実現しているのか不明だが、Windows 10は本機能を追加することで、ハードウェアキーボードの誤認識にも容易に対応できそうだ。「プライバシー」も大きな変化はないものの、PCのマイクを使用する「マイク」には対応するアプリケーションとして「検索」が加わった。こちらはWindows 10の音声アシスタントシステムである「Cortana」による利用の有無を制御する設定項目だ。ビルド10041でも日本語には未対応だが、既定値は「オン」になっている。上図をご覧になると分かるように「連絡先」「カレンダー」「メッセージング」といった中カテゴリが加わり、各種データへのアクセス許可を制御するアプリケーションの取捨選択を行うようだ。また、「音声認識、手書き入力、タイピング」に変更点は見当たらないものの、ビルド9926はすべて英語だったメッセージが、ビルド10041ではすべて日本語に置き換わっている。最後の「保守と管理」についても述べたかったが、この続きは次回お送りする。阿久津良和(Cactus)■前回の記事はこちら・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第18回) - コントロールパネルから「Settings」への移行が際立つビルド10041■バックナンバー 一覧へのリンク
2015年03月27日こんにちは、Windows 10 Technical Previewの動作検証を繰り返す日々を送る阿久津です。その際に気になるのは、Windows 10がコントロールパネルから「Settings」へ設定項目を移行を進めている点。拡張に拡張を重ねてきたWindowsだけに、設定項目の再整理は欠かせませんし、コントロールパネルと「PC設定(Settings)」が混合する現状もよいことではありません。しかし、長年のユーザーとしては一連の操作をデスクトップで完結したい、と考えてしまうもの。そんなときのメインアクセサリとなるのがエクスプローラーです。「PC」を開けば、現れるのが各ドライブの記述(description)とドライブレター(文字)。ユーザーはこの両者からドライブ構成を認識し、利用してきました(図01)。このドライブに対する記述とドライブレターの組み合わせは、Windows XP時代から自由にカスタマイズできることをご存じでしょうか。それがDWORD値「ShowDriveLettersFirst」です。HKEY_CURRENT_USER\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorerキーに同エントリを作成することで、記述とドライブレターの順番を変更することや、ドライブレターを非表示とすることが可能でした。今回はWindows 10 Technical Previewでドライブレターの位置を変更するチューニングをお届けします。なお、本チューニングはWindows 10 Technical Preview ビルド10041で検証し、Windows 8.1やWindows 7上での検証は行っていません。ご了承ください。1. エクスプローラーのウィンドウをすべて閉じます。2. 管理者権限でレジストリエディターを起動します。3. レジストリエディターが起動したら、HKEY_CURRENT_USER\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorerキーを開きます。4. DWORD値「ShowDriveLettersFirst」を作成し、データを「4」に変更します。5. レジストリエディターを終了します。6. エクスプローラーを再起動します。これでチューニングが完了しました(図02~10)。早速結果を確認してみましょう。[Windows]+[E]キーを押すなどしてエクスプローラーを起動し、ナビゲーションウィンドウの「このPC」をクリックしてください。すると各ドライブの表示形式が "ドライブレター → 記述" に変化します。前述したWindows 8.1のエクスプローラーと比較すれば、その違いがわかりやすいでしょう(図11)。また、DWORD値「ShowDriveLettersFirst」のデータによって動作は異なり、データが「1」の場合はネットワークドライブを除いたドライブの表示が "記述 → ドライブレター" の順に変化し、データが「2」の場合は "ドライブレターが非表示" となります。タブレットなど接続するドライブが少ない場合は、ドライブレターを非表示にするとシンプルに使用できそうです(図12~13)。なお、元の状態に戻すにはDWORD値「ShowDriveLettersFirst」を削除し、エクスプローラーを再起動してください。それでは、また次号でお目にかかりましょう。阿久津良和(Cactus)
2015年03月25日一部で非正規版のWindows 7/8.1からWindows 10アップグレード可能とMicrosoftのOSG(Operating Systems Group)担当EVPであるTerry Myerson氏の発言が話題を集めているが、米CNETの記事によれば、アップグレード自体は可能ながらもアクティベーションされないことが明らかになった。このように多様な角度から話題を集めるWindows 10だが、今回もビルド9926と比較して改善・変更された箇所を中心に報告する。○ビルド10041は不安定?OSに限らずソフトウェアの開発に付きまとうのは、新機能の追加や既存機能の改善、そして新たに発生するバグの修正である。MicrosoftのOSG Data and Fundamentalsチームでジェネラルマネージャーを勤めるGabriel Aul氏は、ビルド9926からビルド10041に至る改善点として、「タスクバーを画面上部に移動させた際に検索ボックスが動作しない点や、OSのブートメニューが誤って追加される点、『Photos』のサムネイル表示が正しく行われない点などを改善」したと、公式ブログで述べていた。だが、ビルド10041を使っている方の大半が感じているように、本ビルドは不安定な部分が多い。第16回で述べた"Windowsストアアプリが再インストールできない問題"以外にも、"仮想デスクトップを作成するとタスクビューのサムネイルが黒くなる問題"、"サインイン画面でタッチキーボードが正しく動作しない問題"など枚挙に暇がない。いずれもAul氏が公式ブログで述べた既知の問題だが、本ビルドが「高速(Fast)リング」をターゲットにしていることを踏まえると致し方ない部分である。確かに過去のWindowsがRTM(Release To Manufacturing version: 製造工程版)に達するまでの工程を思い出すと、Windows 10の開発に関して拙速な印象を持ってしまう方は少ないだろう。そもそもOSというソフトウェアのメジャーバージョンはビジネス的な側面が大きく、Windowsに至ってはWindows 95(バージョン4.0)の時点でOS名とバージョンの連動性を破棄してきたが、Windows 10では連動性を取り直している。しかし、今年5月の開発者向けカンファレンスである「Build 2015」やリリースタイミングを今夏にしたことを踏まえると、開発スピードのさらなる加速を求められるのは明らかだ。そのためMicrosoftは、プレビューユーザーに門戸(もんど)を広げて多くのフィードバックを求めているのだろう。既にWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10041をお使いのユーザーは「Windows Feedback」を使って意見や感想を送ってみてはいかがだろうか。○細かな変化が加わった「Settings」の設定項目さて、ビルド9926とビルド10041のデスクトップを見比べると、バランスの再調整が目に入る。下図は両ビルドのデスクトップ解像度を同じくして「Settings」を起動。いずれもシステムフォントは「Yu Gothic UI」だ。一見するとフォントサイズが違うように見えるものの、実際はモダンUIベースのウィンドウ(アプリケーション)上のアイコン間隔を再調整したようだ。レジストリの内容を確認すると、システムフォント周りのエントリに差異はなく、エクスプローラーやダイアログで使われているフォントサイズやアイコンサイズはまったく同じである。以前も紹介したようにMicrosoftは、コントロールパネルから「Settings」へ設定項目を移行させ、スタートメニューもXAMLベースで再構築するように、以前からのWin32ベースのコードを少しずつ消し去るようだ。その「Settings」を見ると、2つの変更点に気付かされる。検索ボックスの横にピン留めボタンが加わり、スライダーやスイッチといった各GUIパーツのデザイン変更が行われた。まずピン留めボタンは設定項目の中カテゴリ(「システム」であれば「ディスプレイ」や「通知や操作」など)ごとにピン留めすることが可能になる……と思われるが、エクスプローラーのナビゲーションウィンドウにもジャンプリストにも加わる形跡はない。レジストリの動作をSysinternalsの「Process Monitor」で監視すると、HKEYCURRENTUSER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\RecentDocsキーへの書き込みが確認できた。同キーは最近開いたドキュメント名を記録する箇所だが、単にフォルダーを開いてもRecentDocsキーへの書き込みは発生するため、ピン留めボタンとの関連性は薄い。そのため具体的な機能概要はMicrosoftのアナウンスを待つしかなさそうだ。なお、後者のGUIパーツはサインイン画面に並ぶアイコン形式変更と同じく、全体的に丸みを帯びたデザインに統一するためだと思われる。それでは変更が加わった中カテゴリを順に確認しよう。まず「アプリと機能」はビルド9926における「アプリのサイズ」を改称し、デスクトップアプリのサイズも表示する機能を加えている。テキストボックスによるアプリケーション名の検索や、サイズ順/名前順/インストール日順による並び替え、ドライブベースの対象選択(既定は「すべてのドライブ」)も加わり、全体的な利便性が向上したのが特徴的だ。さらに各アプリケーションを選択すると、<アンインストール>ボタンが現れ、アプリケーションのアンインストールも行える。「アプリと機能」はWindows 8.xでアプリケーションの一覧表示やランチャーの機能を持つ「アプリビュー」と、コントロールパネルの「プログラムと機能」を備えたと述べると分かりやすいだろう。改称や機能変更はこれだけではない。次の「ウィンドウ化」は「マルチタスク」へ改称し、Aeroスナップといったアクションの有無を制御する設定項目が並ぶ。さらにウィンドウやタスクバー上のボタンの動作を変更する「追加のデスクトップ」が加わった。こちらは仮想デスクトップ使用時に、ウィンドウおよびタスクバー上のボタンをアクティブな状態に限って表示するか、各仮想デスクトップに表示するかという設定である。ちょうどWindows 8.xをマルチディスプレイ環境で使用する際に、「タスクバーとナビゲーションのプロパティ」ダイアログの<タスクバー>タブに並ぶ「複数のディスプレイ」セクションに似た項目を加えた状態、と述べると分かりやすいだろう。ちなみにビルド10041の項目名から分かるように、Windows Vistaから登場し、Windows 8.xで一部機能を廃止した「Windows Aero」は機能として残るものの、表舞台から消えるようだ。「マップ」は名称はそのままながらも、地図データの自動更新機能とネットワークが従量制課金だった場合の更新の有無が選択可能になっている。いずれも軽微な変更点のため、詳細な解説は割愛するが、相変わらず日本のオフライン地図データは用意されていない。さらに、ビルド9926では選択できた中国や台湾などは、ビルド10041では見当たらなかった。その他の「システム」の中カテゴリに関しては、「既定」に<リセット>ボタンと<アプリでの既定の設定>が加わり、「Windows Defender」の新設や「オプション機能」の廃止、「バージョン情報」には「関連する設定」という小カテゴリを加えて、<管理ツールの追加><デバイスマネージャー><システム情報>といったリンクを新たに用意している。個人的に便利に感じるのが「タブレットモード」へ新たに加わった「デバイスがモードを切り替えようとしたときの動作」という設定項目だ。ドロップダウンリストからメッセージ表示の有無や、タブレットモードの切り替え動作が選択できるため、ビルド9926をキーボード脱着可能なPCで使った経験をお持ちの方なら、その煩雑な通知から解放されたのは大きなポイントと言えるだろう。なお、Surface Proにビルド9926からビルド10041へアップグレードした環境の既定値は「メッセージを表示せず、常に現在のモードのままにする」だった。この他にもビルド10041は多くの変更箇所を確認できるため、次回も「Settings」を中心に変更箇所を報告したい。阿久津良和(Cactus)■前回の記事はこちら・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第17回) - ビルド10041で加わった音声合成エンジンや無線LAN機能■バックナンバー 一覧へのリンク
2015年03月25日MicrosoftのOSG(Operating Systems Group) Data and Fundamentalsチームでジェネラルマネージャーを勤めるGabriel Aul氏は、Windows 10テクニカルプレビュー ビルド10041に加わった多くの新機能を紹介しつつ、数多くのバグが残っていることを公式ブログで述べている。確かにメインPCにインストールして常用できるレベルではないものの、次期Windowsを知るよい機会であることは確かだ。今回もビルド9926と比較して改善・変更された箇所を中心に報告する。○Windows Phone 8の音声合成エンジンを搭載前回の記事を寄稿してから、試行錯誤を繰り返してみたものの、依然と表示言語は英語のまま。だが、改めてWindows 10テクニカルプレビュー日本語版のビルド9926を新規インストールし、そこからビルド10041へアップデートしてみたところ表示言語は日本語となり、下図のようにインストールの進捗状況も日本語で表示できた。ただし、BYODを選択するためのプロセスが現れなかったので、こちらは英語版ものを紹介しておこう。さて、新Webブラウザーとなる予定の「Project Spartan」は、ビルド10041に含まれていない。他方で音声アシスタントシステム「Cortana(コルタナ)」は中国/英国/フランス/イタリア/ドイツ/スペインの各言語で動作するというが、日本語は相変わらず未対応だ。言語に関して注目したいのはスピーチエンジンのダウンロード機能である。「時刻と言語\地域と言語」に並ぶ「日本語」の<オプション>ボタンからダウンロードを実行すると、「システム\音声認識」の「音声合成」に4種類の音声合成エンジンが加わった。日本語で話す「Microsoft Ayumi Mobile」「Microsoft Ichiro Mobile」の2つだが、これらの名称から分かるように、各音声合成エンジンはWindows Phone 8のデータを取り込んだものだ。さらに言語関係では、手書き入力のキャンパスを刷新。従来の手書きパネルを短いテキスト入力用に再構築し、Surface Proシリーズのようなペンタッチを想定している。もっとも複数のPCで動作を確認したところ、タッチキーボードが自体が起動しない環境もあり、不安定な印象も拭えなかった。○Windows 10で加わる無線LANの新機能システム面では、無線LANに関する改良が加わったのも本ビルドが備える特徴の1つ。通知領域のアイコンをクリックすると、新しいアクションセンターのデザインを用いたアクセスポイントの切り替えが可能になった。さらにアクションセンターの機能選択として「Wi-Fi」「機内モード」の2つが並ぶため、1箇所から無線LANに関する操作が行える。なお、この機能をMicrosoftは"ネットワークフライアウト"と名付けているが、現時点では未完成であるとAul氏はビルド10041をアナウンスする公式ブログで述べていた。Windows 10は無線LANに関する新しい機能が加わるという。既にテクニカルプレビューの時点で、無線LANのデバイスドライバーの一部はWDI(WLAN Device Driver Interface)に置き換わり、信頼性の向上やローミング時間の改善といった無線LANに関するUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供する予定だ。その結果として、WiFi認証の相互接続性を担保する"Wi-Fi HotSpot 2.0"への対応や、Wi-Fi HotSpotへの自動接続、無線LANの共有機能、Wi-Fiダイレクトの改善が加わる。上図はWinHEC 2015の資料から抜粋したものだ。"ノートPC&タブレット用無線LANセンサー"と題したスライドからも分かるように、「Wi-Fiセンサー」に前述した機能の設定項目が加わっている。Surface Proにインストールしたビルド10041で確認したところ、Wi-Fi HotSpotへの自動接続は「Wi-Fiホットスポットに接続する」という項目名で確認できたが、無線LANの共有機能は未確認。これらの新機能は同資料で"WDIのみ"と説明されていることから、チップやデバイスドライバー側の対応が欠かせないようだ。なお、Windows 10は無線LAN以外にもBluetoothやNFCに関する機能向上も加わる予定である。Windows 10の開発はWindows Inside Program参加者からのフィードバックを反映させているが、Windowsストアアプリの「Photos(写真)」に対する意見が多かったのか、今回パフォーマンスと安定性の向上が加わった。さらに多くのデジタルカメラが使用するRAW形式をサポートし、未対応のRAW形式に対してはデジタルカメラの型番をフィードバックすることで対応するとAul氏は語る。さらに今後数週間でショートカットキー機能を追加するとAul氏は述べているが、その一端として矢印キーによる画像表示とプロパティ情報の表示画面切り替えが加わった。現時点では、他の画像表示アプリケーションと比較しても使いにくい印象は拭えないものの、リリースまでの機能改善によっては標準アプリケーションの地位を目指せるかもしれない。阿久津良和(Cactus)■前回の記事はこちら・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第16回) - 更なる加速を見せるWindows 10 ビルド10041■バックナンバー 一覧へのリンク
2015年03月23日●無料アップグレード後にサブスクリプション型へ?3月18日・19日の2日間、中国・深センでMicrosoftはWinHEC 2015を数年ぶりに開催し、Windows 10を今夏にリリースすると発表した。Windows 10が190カ国・111言語に対応すること、生体認証によるサインイン、Windows 7/8.1からのアップグレードパス、システム要件など次々と明らかにした。新たにリリースしたWindows 10 Technical Preview ビルド10041も気になるところだが、今週はWindows 10に関する最新情報を整理しよう。○Windows 10へ無料アップグレードまず多くのユーザーが気になるのはWindows 10の無料アップグレードについてだろう。Microsoftは、2015年1月時点でWindows 10へのアップグレードを無料にすることを明言していた。Windows 10リリース後「最初の1年に限って無料」、その後は一定の料金が発生する仕組みだ。OSG(Operating Systems Group)担当EVPのTerry Myerson氏は「1回限りのアップグレード」と説明しつつ、Office 365のようなサブスクリプション型への移行を匂わせている。WinHEC 2015のプレゼンテーション資料によれば、Windows 10はWindows 7/8/8.1からのアップグレードをサポート。Windows Vistaはアップグレードの対象外となり、クリーンインストールを求められる。また、Windows 7 Service Pack 1およびWindows Phone 8.1ではWindows Update経由のアップグレードもサポートする予定だ。残念ながらWindows RTは対象外となり、個人的には手元のSurface RTが見捨てられたような気分である。○Windows 10にはUEFI搭載PC設定が必要?WinHEC 2015ではWindows 10のシステム要件についても明らかにされた。ディスプレイサイズは8インチ以上をコンシューマー向け、7インチ以上をプロ向けと定義し、最低解像度を800×600ピクセルまで軽減している。また、ファームウェアとしてBIOSに関する記述は見つからず、UEFIのバージョンは2011年4月に制定された2.3.1と定められた。Windows 10 Technical PreviewがUEFI非対応のPCでも動作していることを踏まえると、記載漏れの可能性はぬぐえない。ただし、Windows 8リリース時のシステム要件はUEFI 2.x以上と定義されており、今回新たにOS起動時のシステム署名をチェックする「セキュアブート」を加えたことを踏まえると、UEFI 2.3.1 Errata C以降に対応するPCを用意した方が確実だ。●顔や瞳でWindows 10にサインイン可能にMicrosoftが生体認証の標準化団体である「FIDO Alliance」に参加したのは記憶に新しいが、その成果はWindows 10で確認できそうだ。MicrosoftはWindows 10に「Windows Hello」という生体認証によるサインインシステムを導入する。○顔や瞳でWindows 10にサインイン可能にOSG担当CVPのJoe Belfiore氏は「Windows Helloは顔や眼球の虹彩、指紋を使ってデバイスをアンロックできる」と説明する。この発表に合わせてMicrosoftは、IntelのRealSense 3Dカメラで眼球の虹彩を読み取り、従来のPINコードや指紋認証と同じようにロック画面を解除する動画を公開した。今後ビジネス用途向けノートPCなどにRealSense 3Dカメラが組み込まれれば、よりセキュアなサインインが可能になるだろう。認証システムはWindows 10のサインインだけではなく、エンタープライズコンテンツやオンラインコンテンツへのサインインにも用いられる。それが「Microsoft Passport」。Microsoftの歴史に詳しい方ならMicrosoftアカウントの基盤となったSSO(シングルサインオン)システムを連想するだろうが、似て非なるものだ。MicrosoftはWindows Helloの技術基盤として、Windows Securityチームと「NGC(Next Gen Credentials:次世代認証)」を共同開発している。NGCは430万以上のテストケースを組み合わせた機械学習結果を用いて、99.1%の判定が可能だという。MicrosoftはWindows Hello、Microsoft Passportの基板となるNGCをWindows生体認証フレームワークと統合させるつもりなのだろう。○システムファイルの圧縮等で6.6GBの空き容量を確保Windows 10で注目したいのが、システムフォルダーにおける占有容量の削減だ。たとえば、Windows 8.1のスタンダードな環境のシステムフォルダーは約8.5GB。とてもコンパクトとはいい難い。加えて「One Windows」のかけ声と、タブレット上での利用を踏まえ、Microsoftはシステムファイルの圧縮ロジックを加えることを明らかにした。開発チームは「システムフォルダーの圧縮」と「リカバリーイメージの廃止」という2つのアプローチにより、最大で45%の削減を達成。32ビット版で1.5GB、64ビット版で2.6GBの削減に成功したと説明している。ファイルシステムの圧縮や特定フォルダーの圧縮といったアプローチは、以前から用いられてきたポピュラーな手法だが、パフォーマンスの低下というデメリットが存在するため、活用しているユーザーは多くない。そのため本機能もすべての環境に適用せず、Windows 10へアップグレードする際にユーザーが選択する方式をとるようだ(プリインストールPCの場合はベンダーが機能の有無を選択)。リカバリーイメージの廃止は、システムリフレッシュを前提としたWindows 8.xと真逆の手法に見えるだろう。もちろん単純に廃止するのではなく、ランタイムシステムファイルを用いてWindows 10のファイル群をリセットするという方法を用意した。さらに単なるリセットでは追いつかないほどファイルの破損が激しい場合は、ユーザーが独自のリカバリーイメージを作成するという選択肢も用意している。これらの結果、4~12GBの空き容量確保につながったそうだ。以上、駆け足でWindows 10に関する情報を整理してみたが、Windows 10は単に"スタートメニューを復活させたWindows 7の後継OS"ではないことが理解できる。PC独自のユーザーエクスペリエンスを提供するWindows 10登場の日は、すぐそこまで来ている。阿久津良和(Cactus)
2015年03月23日自身のPCを家族や第三者に使わせる場面は少なくない。家族ならユーザーアカウントを作成しても構わないが、一時的な利用ではゲストアカウントを有効にした方が便利だ。また、セキュリティの観点から自身のアカウントは標準ユーザーに変更して、Administrator(管理者)アカウントを用意したいと考える方もおられるだろう。今回は、ゲストアカウントと管理者アカウントを有効にするTipsをお送りする。○ゲスト/管理者アカウントとは?Windows 8.1は、ユーザーアカウントを所有していない人が一時的にPCを利用するために、「ゲスト」アカウントを用意している。だが、誰でも使用できるとセキュリティリスクが発生するため、初期状態では有効になっていない。同様に「Administrator(管理者)」アカウントも、初期状態では無効だ。AdministratorはOS全体を自由に操作できるため、誰しもが使用できるのは好ましくない。そのため、Windowsは歴史的に両アカウントを無効にしてきた。○ゲストアカウントを有効にするゲストアカウントを有効にする手順は簡単。コントロールパネルなどからたどる「アカウントの管理」で、「Guest」を選択して「オン」に切り替えるだけだ。上図の手順を踏むと、サインイン画面に「Guest」が現れる。ゲストアカウントとゲスト用のPC設定で、そのPCを使用することが可能だ。ゲストアカウントでは、PCの使用範囲が大きく制限される。他のローカルユーザー用フォルダーへのアクセスや、システム設定の大半はUAC(ユーザーアカウント制御)による昇格が必要だ。また、モダンUIベースの「PC設定」やWindowsストアアプリの使用は制限される。○ゲストアカウントを無効にする使用頻度が低くなったなど何らかの理由でゲストアカウントを無効にする場合、下図に示した手順で「Guest」を「オフ」に切り替えればよい。○管理者アカウントを有効にする その1管理者アカウントを有効にする方法はいくつか用意されている。分かりやすいのは「ローカルユーザーとグループ」を使う方法だ。こちらから「Administrator」アカウントのダイアログを開き、「アカウントを無効にする」のチェックボックスを外す。その後セキュリティ対策としてパスワードを設定すればよい。下図に示したように、サインイン画面に「Administrator」が加わり、自身(のユーザーアカウント)とは異なるユーザーとしてWindows 8.1を利用可能になる。なお、パスワードは「アカウントの管理」からも設定可能だ。一見するとこれで十分に見えるが、大きな問題が発生している。次回も「Administrator」を有効にする他の方法と、肝心の問題を解決する方法を紹介しよう。阿久津良和(Cactus)
2015年03月20日前回の第15回の掲載から1カ月半の月日が流れた。その間もWindows 10の開発は進み、多くのリーク版がネット上に流出ししている。そこから得た情報や、数年ぶりに開催したWinHEC 2015(中国・深川)で明らかになった新機能を各メディアが報じているのはご承知のとおりだ。そして2015年3月18日(現地時間。以下同様)、Microsoftは最新版となるビルド10041をリリースした。今回はビルド9926から大きく変化した箇所を中心にその変更点や筆者の推察をお送りする。○今後は月1回リリースするWindows 10 TP今回MicrosoftがリリースしたWindows 10テクニカルプレビュー ビルド10041はリングビルドを「高速(Fast)」に選択しているユーザーが対象となる。「低速(Slow)」を選択している場合はビルド10041を配布せず、今回はISO形式ファイルも用意していない。OSG(Operating Systems Group) Data and FundamentalsチームのジェネラルマネージャーであるGabriel Aul氏は、3月9日の記事で、3月初頭には新ビルドをリリースできる予定だったが、公開予告は開発チームを萎縮させるため明言できないと述べていた。各メディアが報じているように、Microsoft関係者も登壇したMWC(Mobile Wordl Congress)2015やGDC(Game Developers Conference)2015で、Windows 10に関する情報は数える程度。そして冒頭で述べたようにMicrosoft自社開催のイベントWinHEC 2015で多くの情報を公開し、今回のビルド10041リリースに至った。蛇足だがWinHECと題するイベントは2008年のロサンゼルス開催から数えて7年ぶり。加えて「Windows Hardware Engineering Conference」ではなく、今回は「Windows Hardware Engineering "Community"」と正式名を変更した。これはSatya Nadella CEO(最高経営責任者)が示した方針が浸透しつつあるスタイルと述べても過言ではないだろう。今回も実機および仮想マシン上でWindows 10テクニカルプレビュー ビルド9926からビルド10041へのアップデートを行ったが、少々不思議な現象に出くわした。一方では「Settings」の「保守と管理」に「プレビュービルド」が並んでいるのだが、他方のPCは「プレビュービルド」が項目として存在しないのである。確か2015年1月後半にMicrosoftは誤ってOSGリング(もしくはCanaryリング)レベルのFBL(Feature Build Lab)版となるビルド9932を、一時的に公開してしまったが、そちらを適用した環境では同項目が現れないようだ。筆者が確認したところ、Windows Updateを繰り返すことで、本問題を解決すると同時にビルド10041へアップデートする更新プログラムが適用されるので、同様の問題を抱えている方は試してほしい。さらにAul氏は3月18日の記事で、これまでの5段階リングを大きく変化させることを明らかにした。「我々は保守的だった。高速リングを選択しているプログラム参加者は高いリスクを受け入れる」と語り、OSGが確認した48時間後にFastリングとしてリリースする。上図を例に説明すると、デイリービルドとなるCanaryリングをOSGがチェックを行い、48時間以内に大きな問題がなければ我々がテスト可能になるという具合だ。Aul氏は「最低でも月に1回、場合によっては月に数回のビルドをリリースする可能性がある」と語り、あくまでもOSGの開発タイミングに合わせた非定期的リリースを明言している。Windows NTの父と言われるDavid Cutler氏の"自分で作ったドッグフードを食え"ではないが、今後はかなり早いタイミングでWindows 10の進捗状況を手にすることができるようだ。この背景にはWinHEC 2015およびOSG担当EVPのTerry Myerson氏の投稿記事による、Windows 10の今夏リリースタイミングの決定が大きい。Microsoftは具体的な月日まで明らかにしていないが、PCベンダーなどに提供するRTM(Release To Manufacturing version: 製造工程版)の完成スケジュールから逆算すれば、Windows 10は遅くとも7月までに完成していなければならない。当初"今秋"と言われていた10月頃からのリリースからすれば大きく短縮し、OSGの尽力具合やWindows 10を取り巻くIT状況が生み出した結果と言えよう。○日本語の表示言語はWindows Update経由で入手できないさて、ビルド9926から数えて100回もの再構築を重ねたビルド10041は各所で変化を確認できる。先頃ネット上にリークされたビルド10036から加わったサインイン画面や(筆者は初見の)インストール画面など、デザイン面の変化が大きい。また、議論を呼んでいるアイコンデザインの刷新もさらに進んでいる。サインインして最初に気付くのは表示言語が英語に戻っている点だ。しかし、MS-IMEや106/109日本語キーボードレイアウトなどは残されており、既定値の再設定や日本語(言語パック)の再インストールを行っても表示言語を日本語に切り替えることができなかった。Aul氏が述べていたようにWindows Insider ProgramからダウンロードするISO形式ファイルも、執筆時点(3月19日)ではビルド9926だったため、今回は英語のまま進めることを了承してほしい。○スタートメニューの背景に透過機能が加わった[Win]キーを押して現れるXAMLベースのスタートメニューは、Aul氏の予告どおり透過処理が加わっている。下図は「Settings」を起動した状態でスタートメニューを開いたところだが、「Accounts」や「Update&recovery」が透けてみるのが確認できるだろう。また、同時に気付くのが一部のWindowsストアアプリが破損している。具体的には「メール」「カレンダー」「People」がエラーとなり、「ストア」経由でも修復できない。その場合は管理者権限でPowerShellを起動し、「Get-appxprovisionedpackage -online | where-object {$_.packagename -like “*windowscommunicationsapps*”} | remove-appxprovisionedpackage -online」と実行する。その後「ストア」からWindowsストアアプリを再インストールすればよい。なお、ここで使用するのは「ストア(ベータ)」ではないので、その点に注意してほしい。Get-appxprovisionedpackage -online | where-object {$_.packagename -like “*windowscommunicationsapps*”} | remove-appxprovisionedpackage -online○ドラッグ&ドロップが加わった仮想デスクトップ仮想デスクトップはWindows 10に加わる新機能の1つだ。以前のビルドでもコンテキストメニューを利用してウィンドウを別の仮想デスクトップに移動することは可能だったが、さらにビルド10041はウィンドウのドラッグ&ドロップによる、ウィンドウの移動をサポートしている。具体的には[Win]+[Tab]キーなどで仮想デスクトップの選択画面に移行し、ウィンドウのサムネイル部分をドラッグ。するとタイトルバーと切り離されるので、そのまま仮想デスクトップ(のサムネイル)にドラッグして移動するといった具合だ。上図をご覧になると分かるように、仮想デスクトップのサムネイルが並ぶ画面下部にあった新規作成ボタンは右端に移動し、新たな仮想デスクトップの作成以外にも、前述したウィンドウのドロップ先として利用できる。また、"フィルタリングタスクバー"と称する機能も加わった。分かりやすく述べれば、Windows 8.1をマルチディスプレイ環境で使用し、<タスクバーをすべてのディスプレイに表示する>を有効にした状態で、「タスクバーボタンの表示先」を「開かれているウィンドウのタスクバー」を選択した状態と述べると伝わるだろうか。もっとも同機能は実装を決めたものではなく、Aul氏も「今後ユーザーフィードバックに基づいたテストを行う」と述べている。この他の変更点やビルド10041の注意点に関しては、また次回ご報告したい。阿久津良和(Cactus)■前回の記事はこちら・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第15回) - 新HTMLレンダリングエンジンとデスクトップアクセサリ機能■バックナンバー 一覧へのリンク
2015年03月19日こんにちは、阿久津です。2015年3月リリースのセキュリティ更新プログラムに、またOSの動作に不具合を加えるプログラムが含まれていた可能性があります。執筆時点でMicrosoftからの正式なアナウンスがないため、筆者も推測の域を超えませんが、"タスクバーのピン留めを解除した際に発生する不具合を修正する"「KB3035527」と、"Windowsテキストサービスのセキュリティを修正する"「KB3033889」の2つ。具体的には何らかのタイミングでタスクバー(エクスプローラー)が応答せず、場合によっては周りのアプリケーションも巻き込んで作業内容を消失させてしまうというものです。発生タイミングもユーザーによってちぐはぐで、特に欧米では話題にすら上がっていません(図01)。筆者は当初「KB3035527」をアンインストールして様子を見ていましたが、本稿執筆時も同様のトラブルが再発生。結局「KB3033889」もアンインストールおよび(更新プログラムを)非表示に切り替えることで、トラブルから逃れることができました。お困りの方はお試しください(図02)。さて、事前に共有フォルダーなどをネットワークドライブに割り当てている環境で、エクスプローラーから参照可能ながらも、アプリケーションのセットアッププログラムからネットワークドライブにアクセスできないケースがあります(図03)。多くのユーザーはUAC(ユーザーアカウント制御)有効かつ、自身はAdministratorsグループに属するユーザーとしてWindows 8.1にサインインすることでしょう。その際、LSA(ローカルセキュリティ機関)はすべて権限を持つアクセストークンと、フィルター制限付きアクセストークンを生成し、デスクトップなどは後者のアクセストークンを使用して起動しています。セキュリティの観点から各アクセストークン間の情報は共有しないため、ネットワークドライブのようにアクセス認証を用いるような場面では食い違いが発生するというものでした。本仕様はWindows Vistaから導入し、Windows 8.1にも受け継がれていますが、普段からの利便性を考えるとアクセストークン間でマッピングできた方が便利でしょう。そこで今週はアプリケーションのインストーラーなどからネットワークフォルダーへアクセス可能にするチューニングをお送りします。1. 管理者権限でレジストリエディターを起動します。2. レジストリエディターが起動したら、HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Policies\Systemキーを開きます。3. DWORD値「EnableLinkedConnections」を作成し、データを「1」に変更します。4. レジストリエディターを終了します。5. Windows 8.1を再起動します。これでチューニングが完了しました(図04~10)。早速結果を確認してみましょう。今回はテキストエディター「秀丸」のセットアッププログラムを使っていますが、ご覧のとおり図03の場面ではフォルダー参照時、ネットワークドライブは見つかりませんでした。しかし、チューニング後は同じ操作を行うとネットワークドライブが列挙されます(図11)。レジストリエントリを編集せず、一時的にネットワークドライブを列挙させる場合は「net use \{コンピューター名}{共有フォルダー名} /user:{ユーザー名}」と実行し、パスワードを入力してください。また、セキュリティなど何らかの不具合が生じた場合はDWORD値「EnableLinkedConnections」を削除し、Windows 8.1を再起動します。それでは、また次号でお目にかかりましょう。阿久津良和(Cactus)
2015年03月18日今年で放送開始から35周年を迎えた第1作『機動戦士ガンダム』において中核を担ったアニメーターであり、漫画家の安彦良和氏が、ジュンク堂書店・池袋本店とのコラボレーション企画として「安彦良和書店」を4月11日から開店することが明らかになった。当日13:00からは、オープニングセレモニーが行われる。ジュンク堂書店が実施している本企画は、作家本人が店長となり、自身が影響を受けた本などを漫画、絵本、文学書までジャンルを問わず販売。過去には詩人の谷川俊太郎や小説家の柴田元幸らが店長を務め、今回で二十一代目。会場となる7階特設会場では、現在新刊書店で流通している安彦氏の書籍をすべてそろえ、多岐にわたる選書と合わせて合計700冊ほどが並ぶという。さらに、会場には4月11日14:00~17日の期間に、描き下ろしの自画像の原画を展示するほか、アニメ化も果たした、"赤い彗星"と呼ばれるシャア・アズナブルと妹のセイラ・マスの過去を描いた漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(KADOKAWA)や、現在『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載中の『天の血脈』の複製原画を常時展示する予定。また、本とともに飾られる描き下ろしの手書きPOPは現在50枚以上を予定しており、こちらも大きな見どころとなっている。このイベントの様子は漫画誌『月刊ガンダムエース』(KADOKAWA)でも随時特集されるという。安彦氏は今回のイベントに当って、「こんにちは、安彦です。読書人でもなんでもない僕が、今回、何故か本屋さんをやることになりました。お店は七階の特設会場にあります。漫画本や絵本、ちょっと堅苦しい本、問題な本等、いろいろそろえました。それらは僕がものを考えたり、仕事をしたりするのを助けてくれた本達です。その他に『これから読もう』と思っている本なんかもあります。皆さんに手をとっていただくと本達も喜ぶと思います。どうぞ、よろしく」と直筆のコメントを寄せている。なお、開店当日には14:00から4階喫茶にて安彦氏によるトークイベントも予定。参加は要予約で定員は40名。参加費は1,000円。電話もしくはジュンク堂 池袋本店1階サービスカウンターで受け付けるという。
2015年03月18日先の2月に「Superfish」問題が世間を大きく騒がせたのは記憶に新しい。Lenovo製PCの一部にプリインストールされたSuperfish Visual Discoverは、オンラインショッピングの利便性を向上させるのが主目的のソフトウェアである。だが、自己署名認証局をWindowsにインストールするため、中間者攻撃(MITM)や盗聴(スニッフィング)が可能になってしまった。大まかな流れを紹介しておこう。Lenovoは20日に声明を発表し、翌日21日にSuperfishを自動削除するツールを公開、28日には「よりクリーンかつ安心なPCへの約束」として、McAfee LiveSafeサービスの6カ月間無料サブスクリプションの提供、プリインストールアプリケーション数を減少させることを発表した。MicrosoftもSuperfishをマルウェアと認定し、Windows DefenderやWindows Security Essentialsの定義ファイル、「悪意のあるソフトウェアの削除ツール」によって駆除可能にした。Superfishによるセキュリティの問題として、1つのフローチャートを紹介したい。上図はMicrosoftの公式ブログに掲載されたものだが、「a」は一般的なSSL/TLSによるセキュア通信としてオンラインバンキングとの通信が安全であることを示している。「b」はSuperfishがルートCA(Certificate Authority: 認証局)で検証されていない状態を示し、オンラインバンキングへは接続できないため、Webブラウザーなどはエラー表示となる具合だ。そして「c」はSuperfishが通信を乗っ取ってWebサーバーのドメインネームとして証明書を偽造し、これを信頼するような動作を行う。その結果、生成する秘密鍵(プライベートキー)はユニークではなく同一のため、秘密鍵を入手した中間者攻撃を狙うアタッカーは、あらゆる通信を盗み取って改ざん可能となる。詳細な説明は省いたものの、本件がどれだけ問題だったのかご理解頂けるだろう。さらにルート証明書を悪用した例として、任意のソフトウェアを実行させることも可能だと、MMPC(Microsoft Malware Protection Center)のGeoff McDonald氏は記事で述べている。本来であればUAC(ユーザーアカウント認証)などを経てプログラムの実行を抑止できるが、Superfishのデジタル署名を利用することで実行可能にしてしまう。Superfishが用いた手法はWindowsだけでなくセキュアなインターネットに対する信頼性を著しく低下させることとなった。Microsoftの調査によれば、2月20日から3月4日までの期間、SuperfishのユニークPCに対する検出量は最大6万台に達していたが、Lenovoによるアンインストール方法の紹介や自動削除ツールの公開以降は減少し、ほぼ2月中に取り除かれたことがわかる。このように普段からセキュリティに対して意識的でいても、あらがえないケースは少なくない。MMPCの公式ブログは、「Upatre」のリスクが増加していることを明らかにしている。Upatreはといえば2013年後半から猛火を振るい、他のマルウェアへ感染させるプログラムをメールに添付するタイプのマルウェアだが、多くの亜種が存在し、最近はC&C(コマンド&コントロール)サーバーと連動するタイプも横行するようになった。上図はMicrosoft調査によるUpatreファミリーの感染率だが、一見して分かるように米国の感染性率が群を抜いて高い。日本はスペインやメキシコと並ぶ15,000台程度ながらも、被害を受けていることがわかる。さらに下図はUpatreファミリー別の感染率だが、PCを迷惑メールの発信元とするDyzapや、他のマルウェアをダウンロードし、分散型サービス拒否(DDoS)攻撃を仕掛けるCutwailなど、各マルウェアの感染率は一様にバラバラだ。今回取り上げたマルウェアはすべてWindows上で動作するものの、インターネットというインフラを前にセキュリティを論ずれば、PCもスマートフォンも関係ない。すでにAndroidをターゲットとしたマルウェアも登場し、"Jailbreak(脱獄)"した対iOSマルウェアも存在する。インターネットに接続したデバイスは日頃から危険にさらされ、利便性の裏に潜むリスクがあることを常に意識してほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年03月16日