2015年7月29日リリースのWindows 10で消えそうな機能の1つが、Windows 8.1の検索チャームだ。インデックス作成が完了した環境では、ほぼ瞬時に検索結果を示すためランチャーとしても使えて、便利なのは確かだが…。今回は検索チャームの検索結果を整理するTipsを紹介しよう。○検索チャームは便利で不便?皆さんは検索チャームをお使いだろうか。タッチ操作なら右端からスワイプ、キーボード派であれば「Win」+「Q」キーで起動し、そのままキーワードを入力すれば、ファイルや設定を呼び出せる便利な機能である。筆者も比較的多用している機能の1つだが、問題はファイル名に依存している点だ。例えばレジストリエディターを起動したいとしよう。その場合、「レジストリエディター」と入力すればよいはずだが、検索結果にレジストリエディターは現れない(模範解答は、実行ファイル名「regedit」をキーワードにして検索)。このように検索結果が異なるのは、プログラムフォルダー(「%APPDATA%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」、および「%APPDATA%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」フォルダー)に登録されていないからだ。○プログラムフォルダーにショートカットファイルを登録するプログラムフォルダーにショートカットファイルを作成すれば、この問題は解決する。注意するのは、インデックス作成のタイミングだ。ショートカットファイル名をリネームしてからフォルダーに追加しないと、「○ - ショートカット」と登録されてしまう。そのため、一度デスクトップにショートカットファイルを作成してからリネーム、そして移動というステップを踏もう。また、この操作で動作が反映されない場合は、「インデックスのオプション」から「%APPDATA%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」フォルダーにチェックを入れて、同じダイアログのインデックス数が増加するか確認するとよい。○不要な検索結果を削除するWindows 8.1にアプリケーションをインストールすると、アンインストーラーやドキュメントのショートカットが加わることがある。検索チャームをランチャーとして使っているユーザーには邪魔な存在となるだろう。これらもプログラムフォルダー内にあるショートカットファイルが原因なので、削除すれば済む話だ。そろそろWindows 8.1からWindows 10へのアップグレード時期が近づいてきているため、これを機に不要なファイルを整理しておくのもよいだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年06月19日Oculus VRのヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift(オキュラス・リフト)」は、次世代のバーチャルリアリティを実現するデバイスとして注目を集めている。そのOculus RiftがWindows 10でネイティブ動作することが発表された。Microsoftは公式ブログで「DirectX 12を活用するOculus Riftは、Windows 10こそ最高のプラットフォームとなる」と両者の提携を紹介している。Oculus VRは2012年のE3でOculus Riftの試作機を発表し、そこからKickstarterで資金を集めて開発を進め、2014年3月にFacebook傘下企業となった。当初はマルチプラットフォームデバイスを目指していたOculus Riftだが、「開発に注力するため」との理由でOS XやLinux版の開発を一時停止し、Windowsに注力することを明らかにしている。穿った見方をすれば、この時点でMicrosoftとOculus VRの提携がほぼ決まっていたのだろう。さらに今回、Oculus Riftの専用コントローラー「Oculus Touch」を発表すると同時に、「Xbox Oneワイヤレスコントローラー」を同梱することを明らかにした。MicrosoftはWindows 10でXbox Oneワイヤレスコントローラーを使用するための「Xbox One Wireless Adaptor」を米国で6月16日から発売する予定だ。Oculus RiftがサポートするプラットフォームはWindows 10にとどまらず、Xbox Oneも含まれる。Microsoftは、Xbox Oneでプレイ中のゲームをWindows 10搭載デバイスにストリーミング配信する「Game Streaming」を予定しているが、この機能をOculus Riftにも広げるようだ。あくまでもWindows 10を経由することになるが、興味深い機能といえるだろう。Xbox部門の代表を務めるPhil Spencer氏も「(Oculus Riftが生み出す)VRと、それを生み出した彼らの仕事は素晴らしい。Oculus Riftは次世代のVR体験を提供できるだろう」と、今回の提携をアピールしているが、Oculus Riftは2016年第1四半期のリリース予定。我々がVRの世界でゲームを楽しむのはまだ時間がかかりそうだ。○ビジネス会議を変える「Surface Hub」我々のPC体験を変革させるのはOculus Riftだけではない。既報のとおり、Microsoftは7月1日(米国時間)に「Surface Hub」をローンチする。Surface Hubは、55インチと84インチの2モデルを用意した大画面コラボレーションデバイスだ。タッチ機能とインク機能を備えたWindows 10デバイスとして、企業の会議やICT教育など幅広い分野での活躍が期待される。MicrosoftはSurface Hubの参考価格として、55インチモデルで6,999ドル、84インチモデルで19,999ドルを提示した。日本国内での販売時期や価格は未定だが、Surface Hubはディスプレイを壁に移動することで、Oculus Riftは目前に映し出すことでPC体験を大きく様変わりさせる。我々は今、ITの変革期に生きているのだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年06月16日Oculus VRは6月11日(現地時間)、米MicrosoftのXboxチームとパートナーシップを締結。2016年第1四半期に提供を予定するOculus Rift製品版に、Xbox Oneのコントローラーが同梱されることが明かされた。6月16日から3日間ロサンジェルスで開催するE3(Electronic Entertainment Expo)でも、実機を出展する予定だ。Oculus Riftは2012年から試作機の開発を続け、2013年の開発向けキットリリース以降は、海外のPCゲームベンダーが自社タイトルをOculus Riftに対応させたことで注目を集めている。出荷は2016年第1四半期を予定。Oculus Rift本体は、自身の位置を検出するセンサーやカスタムディスプレイを内蔵し、360度の視野を確保する。さらに開発向けキットと比較すると、ヘッドセットの安定性も向上させた。この点についてOculus VRは、「野球帽をかぶるように簡単だ」と説明している。また、ヘッドフォンやマイクを備え、ゲーム中のサウンドやボイスチャットも使用可能にした。Oculus Rift製品版では、第1世代のゲームを"プレイしやすくするため"として、Microsoftの「Xbox Oneワイヤレスコントローラー」を同梱することを明らかにした。合わせて、仮想現実世界に対応するゲーム向けコントローラーとして、モーショントラック・コントローラー「Oculus Touch」の試作機も発表した。Oculus Touchは、1アナログスティック2ボタン1トリガーを持つコントローラー2つを両手それぞれに持ち、プレーヤーの手の位置を検出しながらゲーム中に自身の手が融合した表現を可能にする。具体的には、現実の動きとOculus Rift内の映像をリンクさせ、実際の手の動きで、Oculus Rift内に映る物を掴んだりすることができる。Oculus VRはOculus Riftに対応するゲームタイトルとして、CCP Gamesの「EVE: Valkyrie from」や、Insomniac Gamesの「Edge of Nowhere」といったタイトルを、前述したE3でデモンストレーションする予定だ。阿久津良和(Cactus)
2015年06月13日まもなく登場するWindows 10にアップグレードする方もいれば、しばらく様子を見る方もおられるだろう。そこで大事になるのが既存のWindows 8.1環境である。単純にドライブ全体のイメージバックアップを作成してもよいが、今回はカスタム復元イメージファイルを作成し、Windows 10のアップグレードに備えよう。○カスタム回復イメージとはWindows 8.1は「PC設定」の「保守と管理」-「回復」から、リフレッシュやWindowsの再インストールを実行する仕組みを用意しているが、この際に用いるのが回復イメージだ。主に「install.esd」や「install.wim」といったファイルを利用する。しかし、ユーザーカスタマイズの結果やデスクトップアプリを破棄してしまうため、バックアップ・復元という観点からは役に立たない。そこで登場するのが、今の状態を保持したカスタム回復イメージだ。現在の状態を確認するには「reagentc /info」コマンドを実行すればよい。下図は操作を行う前の状態だ。○パーティションを用意するカスタム回復イメージを作成するには、専用のパーティションを用意した方が扱いも簡単になる。「ディスクの管理」にある「ボリュームの縮小」などで10GBほどの空き容量を確保しよう。厳密には4GB程度で十分だが、今回はきりのよい数字を選んだ。空き容量を確保したらNTFS形式でボリュームを作成する。こちらはウィザード形式で進むため、特に難しい操作はない。○カスタム回復イメージを作成するカスタム回復イメージの作成は、管理者権限を持つコマンドプロンプトから実行する。先ほど起動したコマンドプロンプトをそのまま利用し、「recimg /createimage e:」と実行しよう。図版中、Eドライブの部分はお使いの環境に合わせて変更してほしい。30分ほど待つとイメージの書き込みが完了し、約4GBのカスタムイメージ回復ファイルが完成する。○カスタム回復イメージを確認する最後に結果を確認しよう。先ほど紹介した「reagentc」コマンドを実行すると、先ほどまでは空だった「カスタムイメージの場所」「カスタムイメージインデックス」に情報が加わっているはずだ。これでカスタム回復イメージの作成は完了となる。次回、作成したカスタム回復イメージの使い方を紹介しよう。阿久津良和(Cactus)
2015年06月12日筆者は先週のレポート記事で「Windows 10は8月~9月上旬にリリースされる」と述べた。過去のWindowsリリースまでのプロセスから導き出した一つの予想だったが、現実Microsoftは想像を超えていた。Microsoftは7月29日からアップグレードを提供すると発表したのである。これまでの推測のとおり、音声パーソナルアシスタントのCortanaは米国をはじめとする7カ国に限定提供され、7月29日の時点で日本語音声は使えない。正直なところ、"リリース日ありき"で進んでいる印象を拭い切れないが、同日からWindows Update経由でWindows 10に無償アップグレードできることは確実である。そこで現時点の情報を踏まえて、システム要件やアップグレードパスを確認しよう。まず、システム要件は基本的にWindows 8.1と大差はない。だが、ディスプレイ解像度を明言している点は目新しい。すでに多くのPCがシステム要件を満たすようになったため、Windows 7は必要解像度を併記せず、Windows 8では「Windowsストアアプリをスナップする場合、1,366×768ピクセル以上」という注意書きがあった程度。Windows 8.1ではさらに「1,024×768ピクセル以上」に緩和されている。■Windows 10のシステム要件プロセッサ:1GHz以上のプロセッサまたはSoCメモリ:32ビット版は1GB、64ビット版では2GBハードディスクの空き領域:32ビット版OSでは16GB、64ビット版OSでは20GBグラフィックカード:DirectX 9以上(WDDM 1.0ドライバ)ディスプレイ(画面解像度):1,024×600ピクセルWindows 10が要求する1,024×600ピクセルは、WSVGAとも言われ、一時期のネットブックで多く用いられていた解像度だ。もちろん当時のネットブックは低スペックなプロセッサを搭載していたため、Windows 10が動作するとは思えない。こちらは7インチクラスのタブレットを考慮したシステム要件と捉えるべきだろう。アップグレードパスについては、基本的にHome系エディションはWindows 10 Homeへ、Pro向けエディションはWindows 10 Proへアップグレード可能である。なお、Enterprise エディションやWindows RTは対象外だ。32ビット版のWindows 7/8.1から64ビット版Windows 10にアップグレードできるか否かについては明示されていない。筆者は技術的に可能と推測するが、無駄な混乱を避けるためか今回は保留された形だ。その際必要になるのがクリーンインストールだが、OSG Data and FundamentalsチームのGabriel Aul氏は、詳細は後ほど公開すると断りながら、「1度アクティベートすれば再インストールは何回でも可能」とツイートしている。この発言が「回復」の再インストール機能を指している可能性もあるが、MicrosoftはWindows 8.1のインストールメディアを作成する公式ツールをリリースしていることから、あまり神経質になる必要はなさそうだ。ただし、Aul氏はISOの提供については「わからない」と述べている。他方でWindows 10にアップグレードすると削除される機能が存在する点にも注意を払いたい。まず、Windows Media Center、Windows 7のデスクトップガジェット、USBフロッピードライブのインボックスドライバーが削除される。USBフロッピードライブに関しては、Windows 10 Insider Preview ビルド10130をインストールしたPCに接続したところ、インボックスドライバーで動作した。もっともこの結果を踏まえて「大丈夫」と判断するのは早計だ。今後もUSBフロッピードライブが必要な方は、ベンダーが配布するデバイスドライバーを確保しておこう。あと、Windows 7ユーザーが注意したいのがDVDビデオの視聴である。Windows 8からDVDビデオ再生時に用いるMPEG-2コーデックを省いており、Windows 10にも搭載していない。Windows 10アップグレードの日まで残り8週間。今のうちに未適用の更新プログラムを確認し、使っていないアプリケーションをアンインストールするなど、PC環境の整理に勤しむことをお薦めしたい。阿久津良和(Cactus)
2015年06月08日以前はタスクトレイと呼ばれていた「通知領域」。過度な情報通知でユーザーに不快感を与えないようにするため、表示・非表示の切り替えを搭載したのはWindows XPが最初である。Windows歴が長い方なら直感的に把握しやすい通知領域アイコンの動作だが、Windows 7などからPCを始めたユーザーにとっては少々分かりにくい。そこで、通知領域アイコンの動作を解説する。○「通知領域アイコン」の基本操作通知領域に並ぶ「▲」ボタンを押すと、非表示になっている「隠れたインジケーター」が開く。参照性の乏しいアイコンを、このインジケーターに隠す仕組みだ。新たにインストールしたアプリケーションのアイコンなども一度は通知領域に並ぶが、ユーザーが操作しない場合はインジケーターに隠れる。この操作は、「Win」+「B」キー→「スペース」キーと順番に押せば代用可能だ。インジケーターに用意された「カスタマイズ」を押すと、コントロールパネルなどからも起動可能な「通知領域アイコン」が現れる。各アイコンに対する動作は後述し、リンクや設定項目から先に紹介しよう。「システムアイコンのオン/オフ」は「時計」や「音量」といったWindows 8.1が用意したシステムアイコンの表示・非表示を切り替える。「タスクバーに常にすべてのアイコンと通知を表示する」にチェックを入れると、「隠れたインジケーター」が無効になり、すべてのアイコンが通知領域に並ぶ。ただし、この状態では前述したショートカットキーは使用できない。○アイコンの動作を検証する「通知領域アイコン」に並ぶ各アイコンの動作は、「アイコンと通知を表示」「アイコンと通知を非表示」「通知のみを表示」の3つから選択可能だ。分かりにくいのは具体的な動作ではないだろうか。そこで各動作を選択した際の結果を下図に示したのでご覧頂きたい。動作名どおりの動きになることが分かるだろう。つまり、常にスッキリした通知領域を維持したいのであれば「通知のみを表示」がベストだ。なお、「隠れたインジケーター」からドラッグ操作で通知領域にアイコンを戻すと、動作が「アイコンと通知を表示」に切り替わり、逆の操作を行うと動作は「通知のみを表示」に変わる。それまで選択していた動作は無視するようだ。阿久津良和(Cactus)
2015年06月06日既報のとおり、Windows 10へのアップグレードが7月29日から始まる。それに先立ち、Windows 7(Service Pack 1)やWindows 8.1(Update)には、Windowsフラッグを模したアイコンが通知領域に現れていると思う。日本語では「Windows 10を入手する」という名称を付けているが、実行ファイル名などを確認すると「GWX(Get Windows 10)」ということが分かる。今回はGWXの動作を検証しよう。○GWXが起動しない?多くの方が目にしているであろうGWXだが、必ずしもすべての環境で動作している訳ではない。FAQによれば、PCがWindows 10のシステム要件を満たしていない場合や、更新プログラムの適用状態が最新でない場合、GWX.exeの起動プロセスが発生しないと書かれている。筆者が普段使用している仮想マシンを確認したところ、GWXが稼働していない。「%SystemRoot%\System32\GWX」フォルダーは存在しているが、プロセス上にGWX.exeが稼働している形跡を見付けられない。各タスクを手動実行してもだ。GWXはWindows Update経由で導入したあと、タスクスケジューラで「\Microsoft\Windows\Setup\GWXTriggers」の各タスクを実行している。ネット上で情報を収集したところ、VMware上の仮想マシンでGWXが起動したケースも多く、別PCで稼働しているHyper-V上のWindows 8.1では、即座にGWXが現れた。こうした状況から、仮想マシンだからといってGWXが動作しないとは考えにくい。しばらくの間PCを放置するのが、一番簡単な解決策のようである。もし、何らかの解決方法を見付けたら本連載などでご報告したい。○GWXの動作を確認する続いてGWXの操作方法について紹介しよう。Windows 10の予約方法は簡単なので割愛するが、メインウィンドウのハンバーガーボタンを押すと、各メニューが現れる。ポイントは「アップグレードの入手」だ。予約前は「PCのチェック」となる部分が、予約を終えると「PCは準備完了」に切り替わる。また、Windows Updateの表示も書き換わり、「Windows 10のアップグレード予約が完了しました」というメッセージが現れるようになった。こちらはGWX.exeをプロセス上から削除しても結果は同じだ。GWX.exeはプロセス上に鎮座するが、Process Explorerで確認したところ、メモリを6.7Mバイトほど消費している。詳細は省くが、もう少し細かく見ると、GWX.exeの本体ともいえる部分が占めるメモリは0.1Mバイトにも満たない。そのため、常にGWX.exeが稼働していても害がないといえるだろう。○GWXを削除する7月29日直後からWindows 10へ移行せず、何カ月間かは様子を見たいという方は、GWXの本体となる「KB3035583」を削除すればよい。「プログラムと機能」の「インストールされた更新プログラム」を開き、更新プログラムをアンインストールする。このとき、検索ボックスに「KB3035583」と入力すると見付けやすいだろう。さらにタスクスケジューラを起動し、「\Microsoft\Windows\Setup\GWX」を削除すれば完了だ。あとはレジストリエントリの削除だが、この連載ではレジストリ編集を行っていないため割愛する。気になる方は「GWX」で検索し、エクスポート後に削除すればよい。なお、筆者はGWXのアンインストールを推奨しない。どうしても存在が気になる場合は、GWXアイコンをインジケーターに移動させて、非表示にしておくとよいだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年06月05日●SIMフリー? 海外で使える? 発表後に多かった問い合わせ2015年6月19日の販売開始を控えるSurface 3だが、日本マイクロソフトは6月1日に報道関係者向けとして「Surface 3体験会」を開催した。Surface 3を購入するかどうか迷っている方の参考になれば幸いだ。なお、マイナビニュースではSurface 3のレビュー別途お届けする予定なので、こちらもご期待いただきたい。○実は自由度が高い個人向けSurface 3最初に登壇した日本マイクロソフト Surface&PCハードウェア戦略本部長の三野達也氏は、「発表後、弊社には多くの質問が寄せられたため、改めて(体験会を)設けた」とメディア向け体験会の趣旨を説明した。会場ではSurface 3のキーポイントを改めて説明したが、本体情報に関して重複するため、気になる方は以前寄稿した記事をご覧いただきたい。まず注目したいのは、Surface 3に関して寄せられた質問の数々だ。Surfaceデバイスのテクニカルセールスを担当する松平氏は、多くの一般消費者から寄せられたSIMロックに関する質問に対して、「日本国内で販売するSurface 3はSIMロックフリー」と回答している。Surface 3自体にSIMロックはかけていないと説明するが、今後展開する海外モデルは、市場背景や提携するキャリアに応じて、SIMロックを有効にする可能性を匂わせていた。Wi-Fi(無線LAN)に関しても改めて説明。松平氏によれば、個人/法人向けモデルのネットワーク関連機能に差は存在せず、SIMカードを挿せばLTEや3Gの使用、そのままでもテザリングや無線LANアクセスポイントへの接続は可能である。ここで下図をご覧いただきたい。こちらはSurface 3がサポートするLTE/3Gバンドの一覧だ。例えばLTEバンド1はNTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルが対応し、バンド3ならNTTドコモの東名阪バンド、ソフトバンクモバイルとなる。バンド8はソフトバンクモバイルが対応する。興味深いのは、2.6GHzのバンド7や800MHzのバンド20をハードウェアレベルでサポートしている点だ。例えば前者は北欧や香港、中南米で使われる通称「拡張IMTバンド」、後者は欧州で主に使われる周波数である。松平氏によれば「海外で使えるか」がもっとも多かった質問だという。つまり国内でSurface 3を購入し、「前述した海外各国に関しては使用可能」である。契約キャリアのローミング機能や、現地SIMカードへ切り替えることで、LTE 1/3/7/8/20を使用する通信キャリアがある国では使用可能、と理解するのが正しいようだ。個人ユーザーが気になるのは「ワイモバイル(ソフトバンクモバイル)以外の回線は使用可能か」という点だろう。Surface 3は前述したネットワーク機能に関して技適マークを取得予定のため、別キャリアのSIMカードを利用しても罪に問われることはない。その点に関して松平氏は「(別キャリアのSIMカードは)テストしていない」とこれまでの公式発表と同じ回答を繰り返している。ただし「法的にも技術的にも(別キャリアの使用を)妨げるものはないので、個人責任で使用する分には問題がない」とも述べた。では、なぜ「ワイモバイル(ソフトバンクモバイル)のネットワークに最適化」という表現を用いたのだろうか。その理由として、Surface 3のテスト機が完成した頃からソフトバンクモバイルの研究所でネットワークテストを行い、多くのフィードバックを日本マイクロソフトがSurface 3に取り込んできたからだという。Surface 3のプリインストールOSと一般的なWindows 8.1との相違点についてはオープンにしていないと回答を避けたが、関係者によればワイモバイルのAPN(Access Point Name)データを内包し、簡易的なTCP/IP周りのチューニングを行っているようだ。●Cherry TrailことIntel Atom x7-Z8700を初搭載したSurface 3○Surface 3は"本当に使える"タブレットSurface 3はタブレット向けプロセッサであるIntel Atom x7-Z8700(1.60GHz、開発コードネーム:Cherry Trail)を搭載しているが、Surface 3が初搭載デバイスとなる。その関係から、インテル チャネル企画戦略室 室長の小澤剛氏も本体験会でプレゼンテーションを行った。インテルは以前からマイクロアーキテクチャの開発において微細化と機能向上を交互に繰り返す「チック・タック(Tick-Tock)モデル」を採用しているが、Atomに関しては製造プロセステクノロジーの微細化と機能向上を毎年同時に刷新している。その結果、製造プロセスを収縮させることで、空いたスペースにGPUのトランジスタを搭載するなど"アグレッシブな進化"を遂げてきた。小澤氏はAtom x7を搭載したSurface 3を指して、「本当に使えるWindowsタブレットが完成した」と自身の感想を述べている。続けて小澤氏は、Atomシリーズは「ネットブックなどに搭載するプロセッサという印象が強かったが、Bay Trail(開発コード名)の登場で悪いイメージは払拭(ふっしょく)できた」と過去を振り返りつつ、Atom x7の特徴として"GPU性能の向上"をアピールした。Cherry Trailは、Broadwell(第5世代Intel Coreプロセッサ)と同等の、第8世代と呼ばれるGPU「Intel HD Graphics」(Gen8)を実装している。DirectX 11.2やOpenCL 2.0へも対応し、小澤氏の言葉を借りれば「デスクトップPCと同等。PCゲームも十分楽しめる」プロセッサだ。ここで実機を用いたベンチマークを披露しよう。時間の都合で比較マシンを用意できなかった点はご容赦いただきたい。ひよひよ氏のCrystalDiskMark 4.0.3によれば、Surface 3のストレージがeMMCであることも作用してか、正直あまりよいストレージ性能とはいえない。とはいえ、約1時間という制限のなかで触れた限りは、数値で示したような遅さは体感していない。けっこうサクサクと動く。もう1つは、FuturemarkのPCMark 8(2.4.304)を用いて、タブレットやノート/デスクトップPC向けのHome Accelerated 3.0テストを実行。こちらのスコアは「1652」ポイントと想像以上の結果だ。小澤氏が説明したようにAtom x7のGPU性能向上が寄与した結果といえるだろう。ちなみにPCMark 8実行中でもSurface 3本体が過度に熱くなるような場面もなく、背面上部が"ほんのり"暖かくなる程度だった。前述のようにわずか1時間という短い間だが、筆者が気になったのは「Surface 3 Type Cover」の打鍵感である。筆者は初代Type Cover、Type Cover 2と個人的に購入してきたが(Surface Pro 3は未購入のため、同Type Coverは試用レベル)、それまでと比べて打鍵感が向上したように感じた。担当者は「タイプ時に発生した"しなり"を極力減らした」と説明し、全体的に強度が増したようである。また、冒頭で紹介した「Surface特別ブース」ではタッチ&トライだけではなく、法人向けリセラーに見積もり依頼を出すWindowsストアアプリもインストール済みだった。名刺をSurface 3などで撮影すると、連絡先を読み取るなどOffice Lensに似た機能を備え、本体やType Coverの配色、オプションも合わせて選択注文できるのは面白い。さて、日本マイクロソフトの説明によれば、6月第1週末から大型の量販店でSurface 3の実機展示を開始し、多くの方々が実際に試用できるようになるそうだ。前述のとおり、コンシューマーはLTEモデルが前提となるが、本体のみ購入することもできるため、"外出先でのネット接続が必須"な方や、"お手軽な2in1 PCがほしい"という方は、その手でSurface 3に触れてみていただきたい。阿久津良和(Cactus)
2015年06月01日○2015年夏リリースの公約を守るMicrosoft5月29日(米国時間)にWindows 10 Insider Previewのビルド10130がリリースされた。着々と開発が進むWindows 10だが、Neowinが「Microsoftの関係者によれば、Windows 10の開発は7月中旬に終了する」と報じている。この7月というキーワードは、MicrosoftがWindows 10のリリース時期を「今夏」と公表した後に、AMDのCEOが「7月末」とうっかり漏らしたことから始まった。仮に内部関係者の情報が真実だとした場合、開発終了後から最終チェックを経てRTM(製造工程版)に至るまで数週間を要するため、MicrosoftがAMDなどのパートナー企業に通達した「7月末」という時期の信用度はさらに高まる。例えばWindows 8 RTMは2012年8月1日に完成し、8月16日にMSDNや当時のTechNetの会員向けにリリース開始。GA(一般販売開始)は10月26日だった。MicrosoftはWindows 10を「サービスとしてのWindows(Windows as aService)」と定義して、アップデートシステムを大幅に変更することを表明している。それはパッケージ販売時代のソフトウェアと異なり、RTMの完成度を極限まで高める必要がないという見方もできるだろう。リリース後の更新プログラムで完成度を高めることができるからだ。その結果、RTMとGAの期間は大幅に短くなる可能性も考えられる。また、欧米における9月は新学期開始月だ。そのタイミングに合わせた販売キャンペーンが、売り上げアップにつながることを踏まえれば、Windows10のGAは8月末もしくは9月上旬という想像はあながち間違いではないだろう。○Windows 10 Mobileを同時リリースする可能性気になるのは、Windows 10 Mobileである。以前のレポート記事でも述べたようにWindows 10は「One Windows」を具現化したOSであり、Windows 10 Mobileの存在も大きい。筆者も、Windows 10 MobileのInsider Preview(ビルド10080)を試してみたが、デスクトップ版と比べると不安定な面が多く、まだ常用レベルには至らないのが現状だ。Windows 10 Mobileに関する動きとして注目したいのが、日本マイクロソフトが社員向けスマートフォンとしてLumia 830を配布した点だ。技適マーク(技術基準適合証明)を取得し、同社が使用するデバイスに限って国内使用を可能にしたという。ただし、Lumia 830自身に技適マークが付与された訳ではないため、我々は使用できない。これまで日本マイクロソフトの社員向けスマートフォンは、2011年8月に富士通東芝モバイルコミュニケーションズが開発した「IS12T」だった。当時はWindows Phone 7.5を搭載し、2013年1月にWindows Phone 7.8へアップデートしたものの、2014年10月に同OSのサポートが終了。つまり、半年ほどサポートが終了したOSを使用し続けていたことになる。少々脱線したが、話をWindows 10 Mobileに戻そう。先のde:code 2015では、マウスコンピューターの「MADOSMA」のデモ機が展示されていたようだが、現時点では、Windows 10 Mobileを搭載するかどうかは明らかにされていない。MicrosoftはBuild 2015で「PC版とモバイル版(の開発テンポ)は異なる」と述べていることから、2015年夏リリースを期待することは難しいだろう。だが、Lumia 830導入に際して、日本マイクロソフトの「日本市場での事業展開・製品発売を直接的に意味するものではない。だが、社内活用を今後のスマートフォン関連事業の検討・展開材料にする」といった発言からは、前向きな姿勢がくみ取れる。まずはPC版のWindows 10、そしてWindows 10 Mobileの完成を心待ちにしたい。阿久津良和(Cactus)
2015年06月01日2015年5月29日(現地時間)、Microsoftは高速リングを選択しているユーザー向けに最新ビルド10130をリリースした。別記事で述べたようにWindows 10の開発は7月中旬に終える見込みだが、実質的な6月版となる本ビルドは、アイコンデザインの変更やアプリケーションの動作改善、一部UIに関する改良を加えている。特にアイコンデザインはフラットデザインを目指したビルド10122以前と異なるのが特徴的だ。それではいつもどおり前ビルドと見比べて異なる点を紹介しよう。○アイコンデザインを刷新昨今のUIトレンドはフラットデザインと言われてきた。それまでの立体感を持たせた現実世界的なスキューモーフィズム・デザインからフラットデザインに変更したのは、Windows 8のモダンUIである。だが、モダンUIと旧来のデスクトップを融合せたWindows 10が、両者を両立させることは難しい。そのため、デスクトップアイコンもフラットデザインをベースにした簡素なアイコンを採用してきたことは、本レビューをご覧になってきた方ならご承知のとおりだろう。しかし以前からの噂どおりビルド10130は、そのアイコンデザインを一新させた。そもそもWindowsフィードバックを眺めてみると、"中途半端なデザイン""美しくない"と手厳しい意見が多い。筆者もカートゥーン的なアイコンにはいつまでも慣れず、一抹の不安を感じてきた。OSG(Operating Systems Group)Data and FundamentalsチームのGabriel Aul氏もビルド10130リリースを伝える公式ブログで「以前のプレビュービルドはあまりにもフラットすぎて豊かさに欠けていた」と反省し、スイスのグラフィックデザイン、ドイツのプロダクトデザインを調査して一貫したデザインに更新したと述べている。上図はWindows 8.1/Windows 10ビルド10122以前/同ビルド10130のドライブアイコン及びユーザーアイコンを並べたものだ。ご覧になるとWindows 10はドロップシャドウの削除やオーバーレイアイコンのデザイン変更を行ったことに改めて気付かされる。また、ビルド10130のユーザーフォルダーはWindows 8.1のデザインを模しながらフラットデザイン風にアレンジしたことに気付くはずだ。開発スケジュールを鑑みるとアイコンデザインはこれで決定すると思われるが、7月中旬の開発完了を前提にすると、開発チームにはあと90日ほど残されている。Aul氏は「デスクトップとモバイル上のモノラインスタイルアイコンのバランスを取りながら提供する」と述べており、開発終了までは何らかの変更が加わるかもしれない。○カスタマイズ可能になったスタートメニュースタートメニューに関する設定が可能になったのも本ビルドが備える特徴の1つだ。「設定」の「パーソナル設定\スタート」は文字どおりスタートメニューに関する設定項目を集めたものだが、ビルド10122は「一覧のカスタマイズ」を強制的にグレーアウトし、ユーザーに設定の変更を許していない。その理由は不明だが、ビルド10130は"おすすめアプリやコンテンツ"を推奨する機能やアプリケーション使用履歴、グループ表示の有無を制御できる。なお、何度か再サインインを繰り返してみたが、リコメンドメッセージは確認できなかった。また、Windows 7における「[スタート]メニューのカスタマイズ」ダイアログに相当する「一覧のカスタマイズ」が使用可能になったのも本ビルドから。こちらはスタートメニューの左下に"エクスプローラー"や"設定"、"(電源の)オン/オフ"といった項目の表示/非表示を切り替える設定である。ただし、ビルド10122からアップデートした環境では、各アイコンが消えてしまうバグが残っているため、「一覧のカスタマイズ」から設定を変更してからWindows 10へ再サインインするとよい。これで同項目による設定内容はリアルタイムで反映される。○ジャンプリストとMicrosoft Edgeなどの改善Aul氏が「ジャンプリストのUIを洗練した」と述べているように配色をタスクバーと連動するものに変更した。下図に並べた画像を拡大するとタスクバーとジャンプリストの配色はほぼ同じく、一貫した印象を持つことができる。しかし、「設定」の「パーソナル設定\色」にある「スタート、タスクバー、アクションセンターを透明にする」とは連動しない。同項目のスイッチをオフした状態でジャンプリストを開くと、配色が異なっていることに気付くだろう。もちろんすべてが連動すればよい訳でもなく、フラットデザインはレイヤーの上下関係が分かりにくくなるため、ジャンプリストの配色は固定でも構わないように思えてきた。ベンチマークの好結果で期待を集めるMicrosoft Edgeにも改善が加わり、お気に入りなどを管理する"ハブ"のピン留め機能や印刷機能の向上などがポイントだ。主にフィードバックを受けてのマイナーチェンジだが、他にもフルスクリーンビデオ視聴のため全画面表示の改善も加わったとAul氏は説明している。仮想デスクトップ使用時におけるタスクバーの動作に関して、Microsoftは4月ビルドの時点で、タスクバーに表示するボタンを使用中のデスクトップに限定(="フィルター済みタスクバー")するのか、それとも仮想デスクトップを含めるすべてを対象にする(="グローバルタスクバー")のかユーザーに投票を求めていた。その結果は全体を表示するグローバルタスクバーとフィルター済みタスクバーの満足度スコアは3.8対4.2。その結果「設定」の「システム\マルチタスク」に並ぶ「タスクバーに次の場所で開いているウィンドウを表示する」の既定値は「使用中のデスクトップのみ」としたとAul氏は説明している。もっともこれらの設定は同箇所から自由に変更できるため、特に気にする必要はないだろう。○本ビルドから加わったゲームバーと新仮想プリンターその他にもAul氏は[Ctrl]+[C]キーでCortanaが呼び出せる機能をアピールしているが、同昨日はビルド10122も備えている。もっとも表示言語を日本語にしている場合、Cortanaは使用できず、ビルド10130では同ショートカットキー自体が動作しなくなっていた。これは誤操作を避けるための処置と思われる。以前のビルドで同ショートカットキーを誤って押した際、Cortanaが使用するサーバーへのアクセスが発生していたため、個人的にはありがたい改善だ。ただし、検索ボックスにフォーカスを移動する[Win]+[Q]キーも動作しなくなったため、一時的なものかもしれない。ショートカットキーと言えば、GDC(Game Developers Conference)2015で発表した[Win]+[G]キーの動作をようやく確認できた。下図に示した「ゲームバー」は左から「Xbox」アプリの呼び出し、ゲームのバックグラウンド録画、スクリーンショットの作成、録画の即時開始、設定とボタンが並ぶ。もっとも現時点では未完成らしく、録画機能はいずれも動作しない。スクリーンショットの作成は成功を示すトースト通知が現れるものの、「Xbox」アプリが正常に起動しないため確認できなかった。些末(さまつ)な部分では、仮想プリンターがこれまでの「Print as a PDF」から「Microsoft Print to PDF」に改称……いや、新たな仮想プリンターが加わっている。Aul氏も「以前の"Print as a PDF"は削除して構わない」と述べているとおり、古い仮想プリンターは削除しておこう。ところで上図をご覧になると思い出すように、MicrosoftはXPS(XML Paper Specification)をPDFのライバル電子フォーマットとしてプッシュし、2009年6月には国際標準規格にもなったが、あまり目立った形跡を見付けられないのが現状だ。Microsoft自身の方針変換というよりビジネスモデルの変革を踏まえ、個別のフォーマットにこだわっている場合ではないのかもしれない。○ビルド10130の不明確な動作Aul氏が公式ブログで述べているように、ビルド10130はいくつか既知の問題が存在する。Wi-Fi接続に失敗する場合はPCの再起動を推奨し、タスクバーからのフライアウト(=ポップアップ)失敗や「メール」のハングアップやバックグラウンド同期ミスは、更新プログラムで対応するそうだ。筆者が本ビルドに触れて気付いたのは、先のフライアウトが失敗する際はほぼエクスプローラーがハングアウトしているケースである。例えばスタートメニューやアクションセンターが現れない際、Windows 10に再サインインすると必ずと言ってよいほど、Explorer.exeがハングアップしていることを確認した。また、ビルド10122まで使用できたPIN(暗証番号)によるサインインオプションが選択できず、パスワードによるサインインを強制されるのも本ビルドで出くわした不具合の1つ。こちらは「アカウント\サインインオプション」に「Windows Hello」を追加する際に何らかのコードが加わったため、誤動作を起こしているのだろう。このようにビルド10130は高速リングで提供していることからも分かるように、不安定なプレビュービルドである。もっともAul氏は「ビルド10130がよさそうな場合は低速リング及びISOリリースする」と述べていることから、いずれの問題も簡単に改善するのだろう。Windows Insider Program参加者はこれらの問題を踏まえて、低速リングにとどまるか高速リングを選択するか判断してほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年06月01日Windows 7以降、PCに接続したストレージは自動デフラグの対象となる。Windows 8.1の場合、HDDは基本的なフラグメント(断片化)の解消、SSDならTrimコマンドの実行を一定のスケジュールで実行する仕組みだ。しかし、大容量化が進むHDDの自動デフラグは、場合によって日常業務を妨げかねない。そこで「ドライブの最適化」に関する設定の見直し方法を紹介しよう。○自動デフラグの仕組みHDDは構造的に、ファイルが断片化(データが連続配置されず各所に点在した状態)すると、ヘッドの移動時間が増える。必然的に、アクセススピードの低下につながる。結果、PC全体のパフォーマンスやWindows 8.1に応答性にも影響を及ぼし、いわゆる「遅いPC」となってしまうのだ。そのためWindows 7は、毎週夜半にデフラグを実行するスケジュールを定めている。Windows 8.1も同様の設定ダイアログを用意しているが、頻度選択は毎日/毎週/毎月のみ。実行時刻を選択する項目は取り除かれた。これは自動デフラグが必要か否かという、断片化状態を確認するタスクを実行しているからである。どのような条件でタスクを実行しているかは確認できなかったが、興味深いのは実行時のオプションである。コマンドラインからヘルプを確認したところ、「優先度"通常"で各メディアに適した最適化をすべてのボリュームに実行する」というものだが、唯一「$」の説明が見当たらない(下図)。オプション「$」を取り除いた状態で動作を確認してみたが、空き領域の統合など最適化処理に関して違いを確認することはできなかった。○自動デフラグの実行タイミングを変更するユーザーレベルでは制御できない自動デフラグだが、重要なのは実行頻度である。上図でも示したように、自動デフラグは既定で「毎週」実行するが、PCの使用頻度が低い場合は、そこまで頻繁に実行しなくてもよい。毎日PCを使用する場合も、大量のファイルを操作するようなケースを除けば、「毎月」程度で構わないだろう。こちらの設定は「ドライブの最適化」ダイアログのドロップダウンリストから「毎月」を選択すればよい。これで、2in1 PCを開いていざ作業を……といった場面で自動デフラグに悩まされることは減るはずだ。また、SDカードやUSBメモリーといったリムーバブルメディアを装着した場合、自動デフラグの対象に含まれる。こちらは「選択」ボタンを押すと現れるダイアログにて、「新しいドライブを自動的に最適化する」のチェックを外しておくか、一覧からリムーバブルドライブのチェックを手動で外そう。阿久津良和(Cactus)
2015年05月30日BSoD(Blue Screen of Death)というキーワードを耳にしたことがあるだろうか。Windows OSは何らかの異常が発生した際、デスクトップが終了し、主要な原因やエラーコードを表示する画面が現れる。これがBSoDで、単に「ブルースクリーン」と呼ぶほうがピンと来るかもしれない。BSoD発生が発生したらすぐに再起動や、メッセージをじっくり確認したいなど、今回はBSoDに関するコントロール方法を紹介する。○BSoDとは物事に完璧がないように、人が作ったものは壊れる。Windows OSも同じだ。理由は多岐にわたるが、デバイスの物理的な破損から発生するエラーや、ソフトウェアに潜むバグで意図しない動作が発生すると、Windowsは青色の画面に簡素なメッセージを書いたBSoDを表示する。Windows 8.xのBSoDはメッセージを日本語化し、配色も淡い青色に変更した。以前に比べてBSoDに出くわす場面は減っているので、こちらも紹介しておこう。下図に示したように、Windows 8.1のBSoDは、エラーキーワードによる検索をうながすメッセージが現れる。○BSoD発生時にメモリーダンプを作成しないBSoD発生時は「エラー情報を収集しています」というメッセージとともに、クラッシュダンプを作成する。こちらのファイルはメモリーの内容を出力し、バグの原因を調べるために用いるものだが、開発に携わらないエンドユーザーには必要ない。クラッシュダンプの作成は「起動と回復」の「システムエラー」セクションで制御可能だ。ドロップダウンリストから「(なし)」を選択すれば、クラッシュダンプを作成せずにWindows 8.1は再起動する。○BSoD発生時の再起動を抑止する一方で、再起動せずにエラーキーワードをメモに残したい場合もあるだろう。再起動の有無も、上記と同じ「起動と回復」の「システムエラー」セクションにある、「自動的に再起動する」のチェックを外せばよい。この状態でBSoDが発生すると「再起動できます」というメッセージが現れるので、エラーキーワードをメモしてから、PCのリセットボタンを押してハードウェアリセットを実行する。BSoDの原因を探るのは、PC歴の長いユーザーでも難しい。最初は周辺機器を取り外して様子を見たら、物理メモリーの品質やストレージに不良が出ていないか、1つずつ確認してみよう。阿久津良和(Cactus)
2015年05月29日今後、Windows 10に移行する上で重要になるのがセキュリティ対策である。セキュリティの甘さから生まれるリスクは限りなく危険であり、コンシューマーもビジネスユーザーもこの点は同じだ。de:code 2015では、Windows 10のセキュリティに関するブレイクアウトセッションも開催していたので、語られた内容を紹介しよう。○3つの対策でセキュリティリスクを未然に防ぐWindows 10の進化は数多くあれど、セキュリティ面の強化は目覚ましい。まずはWindows 10のセキュリティ対策についてまとめてみよう。Winodws10で強化したセキュリティ対策は「ID管理」「データ保護」「脅威への対抗」の3つだ。まずは「ID管理」。広く使われているID/パスワードのユーザー認証は、欠点が多い。簡単もしくは連想しやすい短いパスワードを使わせないため、大文字小文字や記号を組み合わせた不規則な文字列、そして定期的な変更をユーザーに求めても、根本的な解決にはならない。なぜなら、複雑なパスワードは記憶するのが難しく、パスワード管理ソフトやメモ書きのテキストファイルを使ったりしているユーザーは多いはずだ。さらにID/パスワードに関する問題では、リスト型攻撃の増加も発生する。例えば、複数のWebサイトで同じパスワードを使い回していた場合、その文字列はもっとも脆弱(ぜいじゃく)なWebサイトに合わせなければならない。仮に、サイトAのパスワード範囲は8文字まで、サイトBは特定の記号が使用できないという制限があったとしよう。このような制限が各所で発生すると、必然的に「弱いパスワード」を選ぶことになる。簡単なパスワードは盗まれやすく、攻撃者がID/パスワードを手に入れた途端、各Webサイトに対して総当たりアクセス(ブルートフォースアタック)を行う傾向が強い。現在、ID/パスワードという管理方法は限界に達しているのだろう。近年は、スマートフォンや他のメールアドレスを用いた2要素認証も浸透しつつあるが、それでも完全とは言い切れない。そこで注目すべきが、Windows 10から実装する「Windows Hello」と「Microsoft Passport」だ。FIDO 2.0準拠やPKIの仕組み(公開鍵と秘密鍵)を使ってチャレンジ&レスポンス認証を行うため、キーロガー対策などあらゆる面でID管理のセキュリティレベルが向上する。ここでは、Microsoft Passportのロジックを簡単に紹介しよう。最初にWinodws Service 2016(仮称)やMicrosoft Azure AD(Active Directory)で構築した認証プロバイダでユーザー登録を行ったら、クライアント側で鍵ペア(公開鍵と秘密鍵)を作成。秘密鍵をTPM(Trusted Platform Module)に保存し、公開鍵を認証プロバイダにアップロードした後、ユーザーと紐付ける。ここまでが事前準備だ。認証時はクライアントからサーバーへIDを提示すると、認証プロバイダは乱数をクライアントに返信し、乱数に対して秘密鍵で署名を求める。署名済み乱数を受け取った認証プロバイダは紐付け情報(=公開鍵)を検証し、クライアントへトークンを発行。トークンを受け取ったクライアントは、Webサイトへアクセス可能になる仕組みだ。このチャレンジ&レスポンスでポイントとなるのは、秘密鍵が漏えいしない限り、セキュリティリスクが発生しない点である。秘密鍵はクライアントのTPMに保存するため、中間者攻撃(MITM)を受けてもセキュリティレベルの維持が可能なのだ。資格証明書の保持に関しても、Windows 10には改良が加わっている。それが「VSM(Virtual Secure Mode)」の存在だ。ハイパーバイザー上で動作するVSMは隔離したマイクロOSとして実存し、資格証明書やトークンはLSAS(Local Securty Auth Service)に可能にする。Windows 10自身とVSMはプロセス間通信でデータを送受信するため、今まで以上にハッキングリスクは低下するだろう。「データ保護」に関しては、「Enterprise Data Protection」が頼りになる。文字どおりビジネスユーザー向けの機能だが、合わせて紹介しよう。あらかじめポリシー設定で許可したアプリケーション同士ならコピー&ペーストはOKだが、それ以外ではプロテクトが働くというものだ。ITに詳しくないユーザーが、知らずにルールを破ってしまうようなセキュリティ脅威にも有効となる。「脅威への対抗」は、いくつかの新機能を組み合わせて実現している。まず、Windows 10はブートプロセスの完全性を見直している。起動時にマルウェアを検出する「ELAM(Early Launch Anti-Malware)」はWindows 8でも組み込まれていたが、先にデバイスドライバーが読み込まれていたため、拡張子「.sys」のマルウェアが侵入した場合、お手上げだった。だが、UEFI上で動作するWindows 10は「Platform Secure Boot」というロジックを用いて、ブートローダーに改ざんが加わっていないかをチェック。その上で、カーネルを読み込んだ後、ELAMが動作する仕組みへと変更している。Windows Defenderも新しくなった。Winodws 10では「Windows Defender Cloud Protection」を導入し、PCを今まで以上に保護する仕組みを加えた。MicrosoftはOutlook.comに代表するメールサービスを運営しているが、多大なトラフィックが発生し、1分間に1,000万通のスパムメールをブロックしているそうだ。そこから得た情報(攻撃者が使用する文面やマルウェア)を解析し、クラウド上に蓄積。加工したデータをクライアントに配信して、PCを保護する。さらに、Internet ExplorerのSmart Screenなどにも同様のロジックを組み込んで、30億種のマルウェアアラートを実現可能にする。この他にも、ASLR(アドレス空間配置のランダム化)対策や、脆弱性攻撃によって行われる任意のコード実行を防ぐControl Flow Guard、コード署名を付与したアプリケーションだけを動作可能にするDevice Guardなど、数多くのセキュリティ対策を講じている。筆者もまだ片りんに触れた程度だが、昨今のセキュリティインシデントを目にしていると、古いOSにとどまる理由を見付けるのは難しそうだ。阿久津良和(Cactus)
2015年05月28日「de:code 2015」は開発者向けイベントではあるが、今夏リリース予定のWindows 10が注目の話題であることに違いはない。そのため日本マイクロソフトは、Windows 10に関するブレイクアウトセッションを用意した。本稿ではその概要を大掴みにご紹介する。なお、登壇者やセッション名の公表、スライド撮影などは禁止だった点をご了承いただきたい。筆者が参加したセッションはWindows 10に関する多くの機能説明が行われたが、なかでも「サービスとしてのWindows」と「アップデートブランチ」について整理する。○これからも続くWindows Insider ProgramこれまでMicrosoftは公式ブログを通じ、Windows 10に関して70件以上のアナウンスを行ってきた。これはWindows 10が従来のバージョンアップと異なる存在であり、MicrosoftがクラウドOSとデバイスOS&ハードウェアという両軸を持った「One Core」を中心に定めているからだ。核となる"デジタルワーク&デジタルライフ"は、職場の一員も家に帰れば一個人であるように、プライベートとビジネスの垣根がなくなりつつあることを示している。Microsoft/日本マイクロソフトが目指すビジョンの入り口が、Windows 10であると同社は定めているようだ。このことを的確に表しているのが、「サービスとしてのWindows(Windows as a Service)」。少し歴史を振り返りつつ、このキーワードを見ていこう。これまでのWindows OSは、複数のクライアントOSに分かれていた。簡単にまとめると、Windows 2000とWindows 9xを統合したWindows XPから始まり、Windows 8の時点でWindows Phone 8とXbox Oneでカーネルを完全統合。Windows 8.1にてWindows Phone 8.1のアプリモデルを統合してきた。そしてWindows 10は、あらゆるデバイスで同一のコアカーネルやアプリケーションプラットフォーム(UWP: ユニバーサルWindowsプラットフォーム)が動作する、「One Windows」へと至る。注目すべきは、Windows VistaがWindows 7へバージョンアップしたような従来的スタイルを、完全に捨て去ることを決定している点だ。「サービスとしてのWindows」が意味するところは、数年内に登場するであろう新技術やセキュリティ脅威に対応するためである。以前のWindowsはカーネルレベルでの根本的な見直しが求められてきたため、OSのメージャーバージョンが繰り上がるまで、大幅な機能拡張が見送られてきた。Windows 10は、新技術やセキュリティ脅威に対応するため、機能改善や新機能をWindows Update経由で無償提供するスタイルに切り替わる。これが「サービスとしてのWindows」の正体だ。ただし、Microsoft関係者が壇上で「Windows 10は常に最新の状態を維持する」と語ってきたのは、OS XやiOS、Androidなど他のOSが無償提供スタイルに切り替わり、デバイス販売やライセンス提供で構築してきたビジネスモデルをMicrosoftも取り入れるという意味も持つ。2000年頃から開発者の間では、迅速かつ現場に適応したソフトウェア開発を行う手法「アジャイル開発」が重要視されるようになった。Microsoft/日本マイクロソフトはソフトウェアを核とした企業であるため、アジャイル開発にも積極的だ。その一例がWindows 10のプレビュー配布に用いた「Windows Insider Program」である。Windows 10 Insider Previewは、「高速リング」「低速リング」の2パターンによって、不安定さを厭わない能動的なテストユーザー(高速リング)、安定性を重視するテストユーザー(低速リング)と位置付け、Windows 10のプレビューテストを行ってきた。この"リング"という概念は今後も継続するという。Windows 10リリース以降もOSの開発が継続し、その成果はMicrosoft/日本マイクロソフトの社員(数万人)が検証を行う。Windows NT時代からいわれ続けてきた「ドッグフードを食らう」という手法だ。そして、Windows Insider Programの参加者である約100万人(2015年5月時点で約700万人)に配布し、バグの発見や新機能といったフィードバックを開発チームに渡す仕組みを残す。このスパンは約4カ月を予定し、一定のタイミングで、前述したWindows Update経由で更新プログラムの配布を行う。つまり、今夏リリースするWindows 10は終わりではなく、「継続の始まり」となるのだ。だが、Windows 10をビジネスシーンに使用するユーザーや組織にとって、このビジョンは必ずしも最適とはいえない。そのため多くの企業ユーザーは、4~8カ月後に更新プログラムなど適用する、「Windows Update for Business」を使用するスタイルとなるのだろう。さらに、銀行などミッションクリティカルな環境でWindows 10を使用するユーザーに対しては、別の仕組みを提供する。ここで新たなアップデートシステムを整理しよう。Windows 10のアップデートシステムは、コンシューマー向け「CB(Current Branch)」、ビジネスユーザー向け「CBB(Current Branch for Business)」となる。基幹システム向けには機能アップデートを行わず、セキュリティ更新とバグフィックスに限って、最長10年間の運用をサポートする「LTSB(Long Term Servicing Branch)」と、3つのブランチを用意する。読者諸氏の多くは、CBもしくはCBBを選択することとなるだろう。さらにアクティブなユーザーはWindows Insider Programに参加し、リリースの数カ月前から最新のWindows 10を利用可能になる仕組みだ。阿久津良和(Cactus)
2015年05月28日米Microsoftが2015年5月に開催したBuild 2015のキーセッションをご覧になっていた方は、突然スクウェア・エニックス第2ビジネス・ディビジョン ディビジョン・エグゼクティブの田畑端氏が映像とともに現れたことに驚かれたかもしれない。スクウェア・エニックスが開発したリアルタイムCG技術デモンストレーション「WITCH CHAPTER 0[cry]」は、同社だけではなく、ソフトウェアとしてのMicrosoft、ハードウェアとしてのNVIDIAの協力があったからこそ生まれたものだと田畑氏は語った。de:code 2015の基調講演後の20分間という短い時間だが、制作に関する話を聞けたので、その情報をご報告する。○最先端の3社タッグで生まれた「WITCH CHAPTER 0[cry]」ラウンドテーブルを始める前に田畑氏は、Build 2015で用いたデモンストレーションPCとほぼ同等のモデルを会場に持ち込み、我々に披露した。下図をご覧になっても分かるとおり、NVIDIAのグラフィックカード、TITAN×4枚差しというパワフルなモデルだが、実行時はGPU周辺の温度が90度程度まで上昇するという。"ほぼ同等"と述べたのは、開催場所によって使用するPCが異なるからだ。Build 2015とde:code 2015はもちろん、de:code 2015の基調講演時と5月27日開催のブレイクアウトセッションにおいても、使用するPCが異なるそうだ。もっとも基本的なスペックは同じで、CPUはIntel Corei-7、マザーボードはASUS X99-E、ストレージはSSD、GPUはGeForce GTX TITAN X 4way SLIという構成だ。物理メモリーは、基調講演用のPCは64GBだが、ブレイクアウトセッション用は32GBとなる。こちらのPCで実行したリアルタイムCG技術デモンストレーションが、WITCH CHAPTER 0[cry]だ。Build 2015のキーノート(2日目)の動画で視聴できるため、未見の方はリンク先から1度ご覧になってほしい。WITCH CHAPTER 0[cry]に関するスペックも明らかにされたので、こちらもまとめて紹介しよう。キャラクターライティングパスは1,100万ポリゴンに至る。一般的に髪の毛の本数は約10万本と言われているが、登場する女性キャラ「アグニ」にも同等の本数を描画し、そのポリゴン数は600万本に及ぶ。女性の首回りにあるファーは200万ポリゴン、その他の体やアクセサリーといったパーツに300万ポリゴンを当てている。アグニに対するシャドーにも600万ポリゴンを使っているため、キャラクターだけでもトータル1,700万ポリゴン、背景ライティングパスにも1,100万ポリゴンを使っているそうだ。このような個人では手の届かないレベルのCGを、前述したPCでリアルタイム描画できるかチャレンジするのが、本デモンストレーションの目的という。なお、内部的(デバイスに送信するレンダリングターゲット)は4K映像で処理し、実際の出力は2K(フルHD)だ。田畑氏は、詳細を5月27日のブレイクアウトセッションで述べると前置きしながらも、スクウェア・エニックスだけで実現することは難しかったため、最先端のソフトウェア(=Microsoft)とハードウェア(=NVIDIA)が共同で取り組んだ技術的成果であると強調した。プロジェクト自体は2014年12月頃にスクウェア・エニックス社内で始まり、日本マイクロソフトやNVIDIAへほぼ同じタイミングで声をかけたという。水面下の交渉を経て、2015年1月にスタート。ここで、日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部エバンジェリストの大西彰氏が発言。「日本マイクロソフトは米国本社との窓口的な役割にあたった。当時開発中のDirectX 12にアクセスするための交渉や、2015年3月からサンフランシスコで開催したGDC(Game Developers Conference)2015にスクウェア・エニックスの関係者を招いて、DirectXチームやWindows APIチームなど開発に携わるコアメンバーを紹介した」そうだ。GDC 2015の脇でスクウェア・エニックスチームはMicrosoftとの交渉にあたったという。他方で、WITCH CHAPTER 0[cry]を実行するPCとして、GeForce用DirectX 12対応デバイスドライバーの取り組みが早々に始まることになったと語るのは、NVIDIAコンテンツ&テクノロジー事業本部コンテンツマネージメント部 コンテンツマネージャの平柳太一氏だ。DirectX 12自体はGDC 2015の時点でAPI周りが確定し、後はチューニングを残すのみとなっていたため、そこからはスクウェア・エニックス側でDirectX 12の可能性や検証データの収集といった、時間との闘いが始まったという。Build 2015において、デモンストレーション可能なレベルに達したのは4月上旬だったそうだ。WITCH CHAPTER 0[cry]の開発でもっとも苦労したのが「DirectX 12の可能性」と語るのは、スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードアーティストの岩田亮氏。DirectX 11はほぼ理解していたが、(その時点では)DirectX 12に関して未確定な部分も多く、DirectXの早期ビルドに参加していた背景から、Windows 10 Insider Preview(当時はTechnical Preview)とともに頻繁なバージョンアップに悩まされたという。そのため岩田氏は、「現ビルドで動作したコードが、次のビルドでどのように変化するか。これを見定めながら開発を進めなければならないため、霧の中を歩むようだった」と語っていた。田畑氏はWITCH CHAPTER 0[cry]で、「リアルタイムレンダリングCGの可能性を突き詰めたかった」と述べている。スクウェア・エニックスは2012年6月に「AGNI’S PHILOSOPHY - FINAL FANTASY REALTIME TECH DEMO」を公開しているが、「当時は(同社のゲームエンジンであるLuminous Studioの技術デモンストレーションとして)、社内技術を試すにすぎなかったが、今回は最先端技術を持つ3社の協力体制で生まれた結果をユーザーに表現したかった」という。もちろん本デモンストレーションの成果が、普段から我々が楽しむPCゲームやコンソールゲームに反映するわけではなく、田畑氏も「短期的なビジネスは目指していない」と述べている。だが、「DirectX 12のポテンシャルを感じた」(岩田氏)という発言から、今回の成果が何らかの形で反映することに期待して良さそうだ。阿久津良和(Cactus)
2015年05月27日●Microsoft/日本マイクロソフトが目指す「3つの野心」「de:code」は、Microsoftが以前から開催してきた「TechED」と「build」を融合させた、日本マイクロソフト独自のイベントだ。開発者を対象としているが、MicrosoftのBuild 2015と同じく、次期製品に関する多くの情報を披露するため、注目イベントの1つに数えられる。また、Microsoft/日本マイクロソフトが持つ数多くの新技術を一挙に披露するため、読者諸氏にとって興味深い話題に事欠かないだろう。まずは2015年5月26日に行われた、140分にわたる基調講演(キーノート)の内容をご報告する。○Microsoft/日本マイクロソフトが目指す「3つの野心」とは最初に登壇したのは、日本マイクロソフト執行役 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏。Microsoft/日本マイクロソフトの最新技術を内外にアピールする、エバンジェリストの大黒柱を勤める。伊藤氏は、Microsoftが今年創立40周年を迎えたその日、創業者の1人であるPaul Allen氏のツイートコメントと、同社最初の製品となる8080プロセッサ用BASICのソースコードをスライドに映し出し、わずか8週間で完成したといわれていると紹介した。次に40周年を迎える前日に、もう1人の創業者であるBill Gates氏が全社員に向けて送信したメールをスライドで紹介。そこには「ポール・アレンと私は『すべての机上と家庭内にコンピューターがある世界』をゴールと定めたが、当時は想像を超えた不可能なアイディアだといわれていた。コンピューターの進化と未来を想像することは素晴らしく、我々はMicrosoftが果たしている役割を誇りにしてよい」と書かれている。伊藤氏はGates氏の「大事なのは過去ではなく、我々が次に何をやるかだ」を用いて、自社の変革と"マイクロソフトの次"を感じてほしいと、導入スピーチをまとめた。次に登壇したのが、来期(2015年7月)から代表執行役 社長に就任する、日本マイクロソフトの現・代表執行役 副社長 平野拓也氏。昨年のde:codeは現・代表取締執行役 社長の樋口泰行氏によるユニークなスピーチが好評だったが、平野氏は文字どおり"マイクロソフトの次"を象徴する存在だ。平野氏が自身で述べたように、今回のde:codeは社長就任発表後初のメジャーイベントとなるため、次期新社長を開発者にアピールする狙いもあったのだろう。平野氏は「マイクロソフトはWindowsの世界に皆さんをお招きした後に、その周りに壁を建てて囲い込んでいたのかもしれない」と過去を振り返りつつ、「我々はPCや人を中心とした考え方に変化している」と、Microsoft CEOのSatya Nadellaのビジョンを紹介した。さらに過去のビジョンを捨てて、新たなメッセージを発信している点を強調。例えば、9インチ未満のWindowsタブレットに対するOSライセンスの無償提供、iOS/Android向けOfficeの提供、そしてLinuxへの歩み寄りは、Microsoft/日本マイクロソフトの変革を示した好例だ。平野氏によれば「Microsoft Azureの20%はオープンソース(Linux)が動いている」という。その上で競合企業ともパートナーシップを組みつつ、モビリティ&クラウド世界においてチャレンジャーからリーダーを目指すという、強い姿勢も打ち出した。平野氏は続けて「(我々は)3つの野心を持っている」と述べ、Microsoft/日本マイクロソフトの目指す将来を次のように定義した。1つめはPCやスマートフォン、タブレットに限らず、車などを含めた広義のスマートデバイスで、変わらぬシームレスな経験が重要になるという。その上で同社は、SurfaceやSurface HUB、HoloLensといったデバイスを世に送り出し、Windows 10というプラットフォームを重要視していると説明した。2つめはプロダクティビティー(生産性)とプロセス(手順)の再定義だ。一般的に、これらのキーワードはビジネスで用いることが多いものの、ビジネスとコンシューマーの垣根は既になくなり、場所やデバイスにとらわれないデュアルシナリオが必要になるという。3つめはインテリジェント(知性的な)クラウド。これまでのように、データセンターにすべてを集約させるのではなく、ハイパースケールもしくはトップグレードなセキュリティなど対応力を高め、モビリティ環境を包括的にサポートする考え方だという。平野氏は話をそのままMicrosoft Azureにつなげ、MicrosoftのMicrosoft Azure team in the Cloud & Enterprise group担当CVPのJason Zander氏に交代したが、本稿では割愛し、その次に登壇したDeveloper Experience & Evangelism group担当シニアディレクター Giorgio Sardo氏のスピーチを紹介しよう。●「ユニバーサルWindowsプラットフォーム」の姿○UWPが実現するOne Windowsの具体的な内容をアピールSardo氏の発言内容は、基本的に今年のBuild 2015やMicrosoft Igniteで披露した情報を改めてトレースしたものとなるので、キーポイントを大掴みに紹介する。Windows 10が生み出すチャンスとして、Sardo氏は4つの注目ポイントがあるした。1つめは巨大なターゲット市場。平野氏の説明と重複するが、Microsoftはさまざまなデバイスに対して1つの経験を提供すると述べ、この2~3年内に10億台のデバイスがターゲットになると語った。2つめはスマートエンゲージメント。日本語に置き換えると洗練した参加スタイルというべきだろうか。Sardo氏はロック画面におすすめのアプリケーションを提供する「App Spotlight」や、アクションセンターやトースト通知からメッセージアクションに対して直接返信できる"対話型の通知"、そしてパーソナルアシスタントして働くCortanaを紹介。音声検索時に該当する情報がローカルに存在しない場合は、Webへ情報を探しに行くという。3つめとして、デスクトップモードとタブレットモードをシームレスに切り替えるContinuum(コンティニューム)や、スマートフォンをPCとして利用するContinuum for Phonesも紹介。残念ながら実機を用いたデモンストレーションは行われなかったが、スマートフォンを簡易PCとしてWordやExcelを利用できるシナリオは実に興味深い。以前寄稿した記事でも述べたように、デバイス側の対応や国内の正式リリースが必要だが、日本マイクロソフトの社員にWindowsスマートフォンのLumia 830を配布したことを踏まえると、Continuum for Phonesを体験するのも遠くない話になりそうだ。4つめは「One WindowsのためのOne Store」。Sardo氏は「1つの方法でアプリケーションを開発し、配信できる」と、シームレスなシナリオを強調した。さらに統合した開発プラットフォームとして、Windows 10に搭載したアプリプラットフォーム「UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)」を紹介。ここでスピーカーは日本マイクロソフトのテクニカルエバンジェリスト高橋忍氏に切り替わった。UWPアプリは、同じアプリケーションが異なるデバイスで正しく動作するものだが、高橋氏は「楽天トラベル」のUWPアプリ版をデモンストレーションとして披露。ディスプレイが小さなデバイスでは、そのサイズに応じた内容へフレキシブルに変化する仕組みを持ち、デスクトップやタブレット、スマートフォンといった異なるデバイスで同一の情報を提供することが可能だという。スピーカーがSardo氏に戻り、UWPの概要について説明された。UWPのデバイスが最適な情報を提示するUIを、「レスポンシブルデザイン」と呼ぶ。コントロールするツールを使えば、開発者は難しいレイアウトを意識せず、Microsoftがデバイスに応じた最適なUIを提供するため、UWPアプリに移行できるという。さらにUWPは、Windowsカーネルと各開発言語(ランタイム)の間に存在するため、開発はワンパッケージで進められる点も強調。大半はAPIとして提供し、2,500以上もの機能を利用できると語った。具体的なコード利用のデモンストレーションも行われたが、そこは割愛してエンドユーザーが気になるMicrosoft Edge(Internet Explorerに代わる新しいWebブラウザー)について紹介する。Microsoft Edgeが4,200以上もの相互運用性を改善し、Webスタンダードに準拠しながらも、ベンチマークなどの結果が好調といった点は、ご存じの方も多いだろう。注目すべきは「Hosted Web Apps」と呼ばれるWebサイトのアプリ化だ。HTMLやJavaScriptといったWebコンテンツをUWPアプリ化し、ストアに登録するというものだが、その一例としてWebブラウザー上で動作するフライトシミュレーターをアプリ化するデモンストレーションを披露。下図に示したように、画面右上にはXbox Liveのトースト通知が現れ、アプリケーション化していることが確認できる。さらに、アプリケーション側から利用時間の警告を発したい場合も、数行のコードで実現する様子も目の前で行われた。この様に、Sardo氏は具体的なデモンストレーションを交えてUWPの可能性や開発の容易性をアピールしていた。●スクウェア・エニックスの超美的なリアルタイムCGも披露○スクウェア・エニックスの超美的なリアルタイムCGも披露Sardo氏のスピーチはIoT関係など多岐にわたったが、最後にゲストとして登場したスクウェア・エニックス 第2ビジネス・ディビジョン ディビジョン・エグゼクティブの田畑端氏らによる発表に注目しよう。ここでの発表は2つ。1つめは「FINAL FANTASY AGITO」のWindows 10版リリース。具体的なリリース時期は不明だが、年内のローンチを予定しているという。もう1つがBuild 2015でも披露した「WITCH CHAPTER 0 [cry]」。会場では4K解像度の動画をフルHDで出力した映像が流された。筆者もBuild 2015のセッションやYouTubeで視聴したが、目の前のスライドで動画を視聴したのはこれが初めて。その迫力や映像の細やかさは筆舌しがたいクオリティの高さだ。田畑端氏らには話を伺ったので詳細は別記事として紹介したい。蛇足だが、Sardo氏が登壇する前には、日本マイクロソフトのテクニカルエバンジェリスト 高橋忍氏と安納順一氏が会場に現れ、Microsoft Power BIプレビューとマイクで収集した声の大きさをデシベルに変換して、一定値を越えたらSardo氏を招くという休憩を兼ねたミニイベントも披露。ちょうど基調講演時間が半分を過ぎたあたりで行ったため、来場者にリラックスしてもらいたいという開催陣の心遣いもあったのだろう。この他にもBuild 2015のキーノートで紹介した手書きの譜面をデジタライズして、演奏する「StaffPad」や、Microsoft AzureのDockerのデモンストレーションなど、数多くの情報が140分の間に詰め込まれていた。ここですべてを紹介するのは難しいため、興味があって状況が許すなら(de:code 2015の参加費は税込73,440円と高価だった)、ぜひ来年はご自身の目でご覧になってほしい。今回の基調講演を振り返ると、情報提供の多さはもちろんだが、日本マイクロソフトが開発者に歩み寄る姿勢が強く感じられたのが印象的だ。次期社長である平野氏が語っていたように、ITの変革とともMicrosoft/日本マイクロソフトは変革を受け入れ、社全体が変わりつつあるようにも思える。阿久津良和(Cactus)
2015年05月27日Webアプリケーションとして動作する地図サービスは、Googleマップを筆頭に各社がしのぎを削っている状況だ。Microsoftが2005年から展開する地図サービス「Bing Maps」も、新機能の追加やデータの充実に努めている。そして日本マイクロソフトは、リクルート住まいカンパニーと連携し、新サービス「Bing不動産」を2015年5月25日から開始することを発表した。○地図上で物件や住環境を下見できる「Bing不動産」現在、Bing Mapsは航空写真や立体的な鳥瞰(ちょうかん)写真を提供しているが、あくまでも地図情報という単独の機能にとどまっていた。その地図を別の角度から応用するのが、今回発表した「Bing不動産」である。Microsoft Bingインターナショナル シニアビジネスディベロップメントマネージャーの佐野健氏は、BingがWindowsやOfficeといった自社製品のバックグラウンドエンジンとして動作し、さまざまサービスにつながる「知的エンジン」であると紹介した。MicrosoftはBingを、ビジネスや開発を手助けするソリューションと位置付け、専用ページの用意や企業向けに有償のAPIを提供中だという。佐野氏は国内でもビジネス向けの「Bing Maps for Enterprise」の日本語Webサイトを解説し、具体的な内容は明日から開催するde:code 2015で紹介すると語っていたが、コンシューマー向けではないため本稿では割愛する。さて、Bing不動産は、「地図で物件を探す」をコンセプトにした不動産検索サービスだ。MicrosoftのBingプラットフォーム(Bing MapsやBing検索、Microsoft Azure)と、リクルート住まいカンパニーが運営するSUUMOの物件情報を統合。直感的なUIと視覚的な地域情報を確認した後は、SUUMO経由で物件情報の取得が可能になるという。日本マイクロソフト アドバタイジング&オンライン統括本部 マーケティング部 部長の佐藤賢氏は、地図上で物件を絞り込むためのスライダー機能や、用途地域などのオーバーレイ情報を活用することで、諸条件に見合う物件を探し出せると自信を見せていた。また、Bing不動産のアドバンテージとして、住所ではなく公園など周辺施設をキーワードにした検索や、条件によっても異なる住環境を事前に地図で確認できるなど、地図サービスならではの活用方法を披露した。Bing不動産は本日(5月25日)から試せるため、実際のスクリーンショットを交えて機能を説明しよう。下図は東京千代田区神田周辺の賃貸物件を検索したものだが、画面左下の「物件検索スライダー」に注目してほしい。価格や専有面積、駅徒歩と3つの条件をスライダーで調整し、ヒットしたのが緑色の吹き出しアイコンだ。人気物件は、右側に写真付きで表示される。吹き出しアイコンをクリックすれば右ペインに物件情報が現れ、賃料を始めとする物件情報や写真、間取り図を確認できる。下図は日本マイクロソフトが用意したスクリーンショットだが、右ペインのオレンジ色をクリックすれば、SUUMO経由で物件の資料請求を行うという仕組みだ。なお、現時点でのBing不動産は、PCでのみ利用可能となる。スマートフォンなどへの対応は今後の課題にするとのことだ。左ペインに折りたたまれた部分は、マンションや一戸建てといった対象物件の変更、専有面積、間取りといった条件設定の変更に利用する。お気に入りの管理、閲覧履歴なども選択可能だ。前述したオーバーレイ情報としては、用途地域と地価公示の2つを用意した。前者は土地用途の混乱を防ぐために、都市計画法で定めた地域地区の1つ。住居や商業など12種類の条件を定めているが、この情報と物件を重ね合わせることで、物件周辺の雰囲気を大まかに把握できるはずだ。例えば、静かな住宅地区を望む場合は住居専用地区を選択し、近くで買い物をしたい場合は近隣商業地域を意識して選択すればよい。その際に、周辺施設情報も合わせて表示すると便利だろう。後者(地価公示)は、政府が調査した公的な地価情報をオーバーレイ表示する機能だ。公示価格が高い地域は、必然的に賃料や物件価格が上昇するため、大まかな予算の目安として利用できる。この他にも、Bing不動産の検索ボックスには「物件名+口コミ」がクエリーとして挿入済みのため、物件を絞り込むときの、関連情報の収集も便利そうだ。佐野氏はインタビューにて、「今回のサービスは実験的な側面が大きく、今後の展開によっては同様のサービスを他の国でも展開する予定」と述べつつも、不動産物件情報に限らず、「コンシューマーユーザーの利益につながるサービスも考えてきたい」と説明していた。もちろんMicrosoft/日本マイクロソフトは営利企業のため、何らかのビジネスモデルにつなげなければならないが、Bing不動産のように地図を応用し、ユーザーが便利に使えるサービスに進化するのは大いに歓迎したい。阿久津良和(Cactus)
2015年05月25日○海賊版無償アップグレードはリップサービス?既報のとおり、海賊版(非正規版)へのWindows 10無償アップグレードは見送られた。まずは経緯から振り返ろう。ことの始まりはMicrosoftが3月に中国・深センで開催したWinHEC 2015における、Operating Systems担当EVP Terry Myerson氏の発言である。Reutersは、Myerson氏が電話インタビューで「Windows 10へのアップグレード対象に海賊版Windows OSを含める」と説明したと報じた。海外メディアの取材にMicrosoftの広報は、Myerson氏の発言を認める姿勢をみせていたが、その後「Windows 10にアップグレードしても、正規ライセンスではない」とアナウンスした。そこから約2カ月の沈黙を経て、Microsoftはブログで本件に関する公式発表を行った。発言内容について大掴みにまとめてみよう。Microsoftは「Windowsを正しくインストールせず、ライセンスや改ざんの可能性を検知した際は、デスクトップにウォーターマーク(透かし)を作成し、ユーザーへアナウンスする」と述べている。ちょうどこれはWindows XPで行った「Windows Genuine Advantage Notifications」に似た対策機能だ。厳密に述べればウォーターマークは電子情報の著作権保護のために用いることが多く、通常はユーザーに見えないようにするが、海賊版Windowsへの対策としてユーザーに正規ライセンスの購入をうながすという。ちなみに筆者も目にしたことはないが、Windows 7などにも同様の仕組みが組み込まれており、「This copy of Windows is not genuine」というウォーターマークが現れたスクリーンショットを掲載する掲示板もあった。Microsoftが海賊版を許容することは、長年海賊版に悩まされてきた歴史を振り返ると考えにくい。しかし、中国市場において海賊版ユーザーを正規ライセンスに導くことで得られるメリットは大きく、ソフトウェア単体からプラットフォームから収益を得るビジネスモデルの変革を踏まえれば、昨今のMicrosoftならあり得る話でもある。また、BSAグローバルソフトウェア調査2013コンプライアンスギャップによれば、2013年時点の中国における海賊版使用率は74%で世界4位(トップはベネズエラの88%)。2007年の同様の調査では、中国は82%だったことから率としては低下しているが、被害額は年々増加している。この様な背景と、中国市場を対象にした開発者向けカンファレンス開催にあたり、Myerson氏は3月、リップサービス的な発言に至ったのではないだろうか。繰り返しになるがMyerson氏は前述のブログで「非正規Windowsを搭載したデバイスに無償アップグレードは提供しない」と述べている。その上で重要なOEMパートナー数社と協力して、魅力的なアップグレードプランの提供予定があると説明した。そのプランが何を指すのか現時点では不明だが、Windows 7やWindows 8.1ユーザーに1年間限定で無償アップグレードを提供することを踏まえると、海賊版ユーザーにも同様に安価なアップグレードパスを提供してもMicrosoftの懐はそれほど痛まない。それはサポート終了後も使い続けるWindows XPユーザーにも当てはまるだろう。今この瞬間は多くのコンシューマーが正規料金を支払って得た権利と、公平性を欠くような施策が見送られたことに安堵することにしよう。阿久津良和(Cactus)
2015年05月25日デスクトップ画面を撮影する方法として紹介しておきたいのが、Windows 7以降から用意された「Snapping Tools」だ。Windows OSの標準機能と異なり、自由形式や背景画像を含めた領域を自由にキャプチャーできるため、応用性は高い。○領域を四角くキャプチャーし、保存する前回紹介したキャプチャー方法はデスクトップ全体、もしくはウィンドウやダイアログ単位の撮影となる。そこで最初から必要な部分だけをトリミングし、簡単な加工やメール送信といった次のアクションまで実行できるのが「Snipping Tool(SnippingTool.exe)」だ。まずはSnipping Toolの起動から。検索チャームやアプリビューから簡単に呼び出せるが、本連載ではお馴染みのコマンドラインから起動してみよう。下図に示したように「ファイル名を指定して実行」や、エクスプローラーのアドレスバーなどからファイル名である「SnippingTool.exe」を実行すればよい。「新規作成」ボタンをクリックするとデスクトップ全体が反転し、キャプチャーする領域をドラッグするだけだ。この操作の場合、対象となる範囲を四角く取り込める。キャプチャー画像は「切り取り領域の保存」ボタンをクリックすれば、PNG / GIF / JPEG / MHTML形式による保存が可能だ。○キャプチャー形式を変更する先ほどの「新規作成」ボタンの右端には、ドロップダウンリストを開く「▼」ボタンがある。ここからは既定アクションの「四角形の領域切り取り」の他に、「自由形式の領域切り取り」「ウィンドウの領域切り取り」「全画面領域切り取り」と計4アクションを選択可能だ。後者の2つは、ショートカットキーによるキャプチャー機能と同等なため、注目すべきは「自由形式の領域切り取り」である。マウスやタッチ操作で必要な部分を囲むと、そのとおりにキャプチャーする機能だ。マウス操作はコツが必要だが、後からトリミングすることを考えると、一手間省けるのはうれしい。○MHTML形式ファイルとして保存するSnipping Toolが備えるユニークな機能が、MHTML(MIME Encapsulation of Aggregate HTML)をサポートしている点だ。MHTML形式ファイルはMIMEのマルチパートを利用し、HTMLファイルや画像といった素材を1つのファイルにまとめているため、扱いやすい。だが、Webページをキャプチャーする際は自動的にURLが挿入されてしまう。こちらは既定値で「切り取り領域の下にURLを追加する」が有効になっているためだ。この設定項目を無効にすれば、URLの挿入機能は抑止できるので、不要に感じた方は試してほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年05月23日書類やプレゼン資料作成時に必要となるのが、画面の撮影機能だ。以前からWindows OSはキャプチャー(取り込み)機能を備えており、Windows 7以降は画面キャプチャー画像をPNG形式ファイルで保存できるようになった。今回は各画面キャプチャー機能の使い方を紹介しよう。○デスクトップ全体のキャプチャーを作成するWindows 8.1を含むWindows OSが備えてきたキャプチャー機能。スクリーンショットや画面の取り込み、画面ハードコピーなど言い方は異なれど、いずれもショートカットキー「1つ」で実行できる。まずは下図に示した手順を試してほしい。キーボードの「PrtSc(PrintScreen)」キーを押すと、デスクトップ全体の画像がクリップボードへ格納される。クリップボードは、ソフトウェア間でデータを一時的に共有する領域の1つ。我々が普段意識せずに行っているコピー&ペーストも、クリップボードを経由しているのだ。「PrtSc」キーは、デスクトップ全体を、画像としてクリップボードへ格納するにすぎない。そのため、内容を貼り付ける画像編集アプリケーションが必要だ。ここでは「ペイント(mspaint.exe)」を使用するが、使い慣れたアプリケーションをお持ちなら、そちらを使っても構わない。キャプチャーした画面(画像を)書類で使えるように、ファイルとして保存しよう。「ペイント」はビットマップ形式やJPEG形式、PNG形式など5種類の画像ファイル形式を選択できるため、用途に合わせたファイル形式を選択すればよい。一般的な書類であればJPEG/PNG形式でよいだろう。このような流れで、デスクトップ全体のキャプチャーを画像ファイル化することが可能だ。○アクティブウィンドウのキャプチャーを作成する作成する書類によっては、ウィンドウやダイアログ単独のキャプチャーを作成したい場合もあるだろう。その際は対象となるウィンドウをアクティブ化(前面表示)した状態で、「Alt」+「PrtSc」キーを押せばよい。あとは先ほどと同じように画像編集アプリケーションを起動し、クリップボードの内容を貼り付けるだけだ。○キャプチャーファイルを作成するいちいち画像編集アプリケーションを起動するのが面倒な場合は、別のキャプチャー機能をお勧めする。それが、「Win」+「PrintSc」キーだ。こちらのショートカットキーを利用すると、「PrtSc」キーと同じくデスクトップ全体をキャプチャーし、そのままPNG形式ファイルで保存してくれる。このPNG形式ファイルは、ピクチャフォルダー下のサブフォルダー「スクリーンショット」のなかに、「スクリーンショット(1、2、3……).png」として自動保存される。あとから必要に応じてスクリーンショットを加工し、書類作成に役立てればよい。阿久津良和(Cactus)
2015年05月22日2015年5月20日(現地時間)、Microsoftは高速リングを選択しているユーザー向けに最新ビルド10122をリリースした。今夏リリースを目前にしたWindows 10にとって、残り時間は少ない。そのような状況下でリリースした本ビルドは、バグフィックスを中心に調整や安定性の向上、更なる研磨を目標にしている。そのため目立った変更点は多くないが、前ビルド10074と比較し、変更点をピックアップして紹介しよう。○既定アプリケーションの確認ロジックを変更筆者は当初「5月のプレビューリリースはない」と思い込んでいた。前回紹介したように、4月22日(現地時間)にビルド10061、4月29日(現地時間)にビルド10074をリリースしたからである。もっともこのタイミングで新機能を試すような試みは少なく、OSG(Operating Systems Group)Data and FundamentalsチームのGabriel Aul氏も公式ブログで述べているとおり、調整や安定性の向上といったブラッシュアップが中心だ。それでは変更ポイントを1つずつ見ていこう。これまでのWindows OSにもあった既定のアプリケーションを選択する処理に変更が加わっている。Windows 8.1上のデスクトップアプリは、既定アプリケーションの確認を求めるプロンプトを呼び出すことができるものの、Windows app(Windowsストアアプリ)は不可能だったという。例えば「ストア」からAdobe Photoshop Expressなどフォトレタッチアプリケーションをインストールした後に、JPEG形式ファイルを開くと下図に示したアプリケーションの確認を求めるアプリケーションが現れるという仕組みだ。Aul氏は本仕様がデスクトップアプリとWindows Appの垣根をなくす意味があると同時に、古いデスクトップアプリとの互換性に労力をつぎ込んだと述べている。新たな仕様に合致しないデスクトップアプリをインストールした際は、「システム\既定のアプリ」から変更をうながすプロンプトを表示する仕組みが加わった。○新たなタブから次のWebページにアクセスする「Microsoft Edge」本ビルドのリリースにあたっては大きな問題が残っている。それはAMD製GPUを搭載しているPCでは、Microsoft Edge使用時にクラッシュするバグが潜んでいるのだ。Aul氏はデバイスドライバーを1週間程度で改善し、Windows Update経由で配布する予定と述べている。更にリリース直前にはTwitterで、ビルド10122をリリースすべきか否かアンケートを行っていた。前ビルドを試した方ならご承知のとおり、Microsoft Edgeの名称で使用可能になったのはビルド10122から。劇的な変化はないものの、各所に使い勝手を向上させる改善は加わっている。例えば、Internet Explorerシリーズにあったアドレスバーを選択するショートカットキー([Ctrl]+[L]キー及び[Alt]+[D]キー)を復活させ、新たなタブを開くとピン留めしたWebサイト(サジェステッドコンテンツ)や、MSNニュースのコンテンツ(トップサイト)が現れる仕組みを加えていた。また<他の操作>ボタン(3点リーダーで示されたアイコン)を押すと現れる項目にも変化が生じている。下図はProject Edge(0.11.10074.0)とMicrosoft Edge(13.10122.0.0)のメニューだが、ひと目で項目が増えたことを確認できるはずだ。<Hub>はお気に入りやリーディングリストといった<Hub>ボタンを押した時に現れるメニューを開き、<Make a Web Note>はMicrosoft Edgeで開いたページにメモを書き込み、共有操作などを行う<Webノートの作成>ボタンと同等。<新しいウィンドウ>や<スタート画面にピン留め>は、Internet Explorer 11の機能をそのままインポートしたと考えて構わないだろう。<設定>にも本改善に伴う項目が加わっていた。例えば「起動時に開くページ」は新たに<New tab page>を追加し、「Open new tabs with」のドロップダウンリストからは新規タブに表示するコンテンツをトップサイト&サジェステッドコンテンツ、トップサイトのみ、空白ページの3つから選択できる。○バックアップ機能を再搭載?既にビルド10122を試した方はお気付きのとおり、開発チームのブラッシュアップはスタートメニューなど各所で確認できた。例えばスタートメニューを開くと、<エクスプローラー>と<設定>がメニュー項目の下部に移動し、誤訳の<仕事率>も<オン/オフ>に変更している。その一方で<ドキュメント>を削除しているが、こちらの取捨選択を行う設定項目は見つからなかった。また、スタートメニューを全画面表示に切り替える<スタートメニューを展開>ボタンも取り除いている。その全画面表示の有無は「設定」の「パーソナル設定\スタート」に並ぶ、<デスクトップで全画面表示のスタート画面を使う>で制御可能。ただし、ビルド10074のようにデスクトップを残して全画面表示するスタートメニューではなく、タブレットモードに切り替えた際のスタート画面が現れる仕組みだった。なお、ハイライトカラーが明るくなったのも本ビルドが備える特徴の1つ。下図のようにスイッチオン時は着色するため、全体的に設定状況が分かりやすくなかった。「設定」の項目を徒然(つれづれ)と眺めていると「更新とセキュリティ」にも変更が加わっている。なかでも「バックアップ」には「Windows 7からファイルを復元します」というカテゴリーが加わり、Windows 7のバックアップ機能で作成したデータからの復元をサポートする「バックアップと復元(Windows 7)」の起動が可能になった。名称からも分かるようにWindows 7のバックアップ機能を復元したものだが、バックアップ設定を行うとシステムイメージの作成を行うフルバックアップの設定も行える。ご承知のとおりWindows 8.xはこれらの機能を"基本的"に削除していたため、定期的なシステムバックアップを必要とするユーザーには朗報だ。「更新とセキュリティ」は以前のビルドから存在した「開発者向け」を選択してもハングアップせず、開発者向け機能の選択が行える。「アプリのサイドロード」はストアを経由せず社内のみなど限られた環境でアプリケーションの開発やインストール環境を提供するモード。「開発者モード」はデバイスドライバーやソフトウェア開発者向けの設定だが、いずれもデバイス情報や個人データを送信するセキュリティリスクの確認をうながされる。「更新とセキュリティ\Windows Update」の<詳細オプション>には、<アップグレードを延期する>という項目が新たに加わった。リンク先のヘルプページは未設置だったため、詳しい動作を確認するに至らなかったが、Windows 8.1からWindows 10の様なメジャーレベルのアップグレードに適用されるのではないだろうか。なお、Microsoft Igniteで詳細を発表したWindows Update for Businessに関する設定項目は見当たらなかった。そして重箱の隅をつつく様で恐縮だが、エクスプローラーのコンテキストメニューには気になる項目名が加わった。前ビルドは<OneDriveのリンクを共有する>と直感的な項目名だったが、本ビルドでは<キョウユウOneDriveのリンクを共有する>と不要な語句が残っている。<その他のOneDrive共有オプション>も<タキョウユウその他のOneDrive共有オプション>といった具合だ。スタートメニューの<仕事率>はご愛敬(あいきょう)といえるものの、今回のケアレスミスは正直頂けない。もちろん動作に支障が生じる訳もなく、今後のビルドで改善するはずだが、少々げんなりしてしまった。最後にビルド10122で加わった修正ポイントと既知の問題について報告しよう。本ビルドでは、GPU用デバイスドライバーが原因で発生していたWindows Updateのエラー0x80070103を改善や、IPv4プロパティを変更できなかった問題を改善。また、高DPIディスプレイ上でのフォントレンダリングの調整や、メール/カレンダー/ピープル/天気/マネーといったWindows appを更新している。既知の問題だが、以前のプレビュー版からアップデートした場合、一部のPCで0x80070057などのエラーが発生する。デバイスドライバーのセットアップ情報(.inf)ファイルが原因。システムファイル及びデバイスドライバーのクリーンアップを行い、不要な周辺機器をデバイスマネージャーから削除した後、再アップデートを試してほしいとAul氏は述べている。筆者は問題なくビルド10074からビルド10122にアップデートできたが、同様の問題が発生したISOダウンロードページから新規インストールした方が早いだろう。なお、執筆時点でビルド10122の日本語版ISOファイルは公開していなかった。また、Cortanaの音声に不具合が発生するが、現時点でCortanaは日本語をサポートしていないため、大きな問題とはいない。Aul氏はWindows 10リリース以降もInside Preview参加者に開発協力を求め、多くのフィードバックを求めている。既にプレビュー版をお使いの方は「Inside Hub」や「Windowsフィードバック」を使って気になる箇所を報告すれば、より使いやすいWindows 10が生まれるだろう。今夏リリースまで残り2カ月程度だが、6月のプレビューリリースでどのように変化するのか期待したい。阿久津良和(Cactus)
2015年05月21日米国では3月31日(現地時間)に発表し、5月5日にリリースしたことから、国内への投入タイミングが待ち望まれていたMicrosoftのWindowsタブレット「Surface 3」。日本マイクロソフトは2015年5月19日、記者会見を開いて翌20日から予約を受け付け、6月19日から販売開始することを明らかにした。現行のメインストリームである「Surface Pro 3」とは異なり、解像度1,920×1,280ピクセル(フルHD)の10.8型ディスプレイや、Intel Atom x7プロセッサを搭載している。○LTE契約せずにWi-Fiモデルとして代用可能かSurface 3の詳しいスペックや価格は既報のとおり。デバイスの厚さは8.7mm、重量も約622g(4G LTEモデルは約641g)と、米国モデルと大差ない。そこで本稿では、記者会見の内容やデバイスの注目ポイントなどを取り上げよう。最初に登壇した日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏は、「ユーザーは『どのPCを選ぶ』から『どのエコシステムを選ぶ』に変化しつつある。我々はソフトウェアに特化しつつも、WindowsやOfficeとバラバラだった。今後はiOSやAndroidといった他社エコシステムも梃子(てこ)に、自社のエコシステムを進化させていく」と語った。さらに米国本社CEOであるSatya Nadella氏の発言「Empower every person and every organization on the planet to achieve more」を引き合いに、すべてのコンシューマーユーザーや企業ユーザーの利便性を向上させるために、力づける姿勢で革新を続けることを再アピール。このビジネスにおいても、個人にも通用するタブレットとしてSurface 3を位置付けているそうだ。今回は「New Surface Press Conference」という名称で、Surfaceシリーズ最新版を披露する発表会である。ここで同社の姿勢を改めてアピールするスピーチ内容に筆者は首をかしげていたが、その答えはSurface 3のモデル構成にあった。今回は一般向けモデルを2機種、法人向けモデルを4機種というラインナップ。加えて個人モデルは米国と異なり、LTEモデルに限定。Wi-Fiモデルは用意していない(後の質疑応答でもWi-Fiモデルに関する予定は未定とした)。その理由として樋口氏は、「戦略的パートナーシップを最大限に活用し、ブレイクさせるため」と語っていた。今回、日本マイクロソフトは、ソフトバンクモバイルと戦略的パートナーシップを結んだ。LTEモデルは、従来の家電量販店に加えて、ソフトバンクモバイル(Y!mobileショップやワイモバイルオンラインストア)も販売店に加わるという。読者諸氏が気になるのは料金プランではないだろうか。ソフトバンクモバイル専務取締役のエリック・ガン氏は、「スマートフォンと同じ料金プランを適用する」と説明。2年契約の場合は、3年までは3,696円/月(4年め以降は4,196円)が、Surface 3の本体料金に加わる形だ。また、スマホプランLと組み合わせて、月7GBまでの通信容量をスマートフォンとシェアできることも明らかにした。既にソフトバンクモバイルと契約しているユーザーには大きなメリットとなる。Surface 3自体はSIMロックをかけておらず、他社製SIMカードを挿すこともできそうだ。しかし、日本マイクロソフトは「ソフトバンクモバイルのSIMカードのみ検証した」と、明確な回答は行わなかった。もっとも、Surface 3は4G LTEバンドとして1/3/8、3Gバンドは1/8をサポートしているため、検証する価値はあるだろう。さらにガン氏は、一括購入であればソフトバンクモバイルと契約せずに端末のみ購入することも可能だと説明した。○Surface 3はビジネスアプリ中心のユーザー向けかそれでは、Surface 3自体のスペックにも少し目を向けてみよう。Surface 3の搭載CPUはIntel Atom x7という説明だが、型番までは明らかにしていない。ただ、2Mバイトキャッシュに1.6GHz(ターボ時は2.4GHz)という公式情報や、会場のタッチ&トライコーナーで確認したところ、開発コード名「Cherry Trail」を持つAtom x7-Z8700を搭載していることを確認した。ストレージはSamsung MDGAGC。こちらは安価なタブレットのストレージとしてよく使われるeMMC(embedded MMC:フラッシュメモリーの一種)である。実際に長期間使用してみないと断言できないが、昨今のSSD搭載PCなどに慣れているユーザーには、遅く感じるかも知れない。軽く試用した範囲では、アプリケーションの起動で手間取るような印象は受けなかった。搭載OSもWindows 8.1 Updateに置き換わっている(法人モデルはWindows 8.1 Pro)。前モデルとなるSurface 2はWindows RTだったが、プレゼンした米Microsoftのブライアン・ホール氏は、「今後ARMプロセッサやWindows RTを(Surfaceに)使う予定はない」と発言し、改めてWindows RTが終息したことを認めた。筆者は3月の米国発表時から、安価な原稿執筆マシンとしてSurface 3に注目していたが、前述のように個人向けモデルはLTEのみ。この1点で意気消沈したものの、冷静に考えれば大手量販店で直接購入し、LTE契約をせずスマートフォンのテザリング機能でインターネットに接続すれば、通常のWi-Fiオンリータブレットと同じ使い方ができるはずだ。だが、Surface 3の価格構成はお世辞に安価とは言い難い。「メモリー2GB・ストレージ64GB」モデルの参考価格は81,800円、「メモリ4GB・ストレージ128GB」モデルの参考価格は91,800円。ここにSurface 3 Type Coverの15,680円、Surfaceペンの5,980円が加わると、10万円を越える。さらに消費税8%も痛い。Surface ProやSurface Pro 2が予想以上にヒットしたのは、当時の為替レートが大きい。Surface Proの国内発売は2013年6月7日だが、当時のドル円レートは約98円。Surface Pro 2は同年10月25日発売だが、レートは約97円と100円を切っている。そして現在は1ドル約120円だ(2015年5月19日時点)。このレート差はワールドワイド企業であるMicrosoft/日本マイクロソフトに大きく影響し、Surface Pro 3も2015年6月1日から事実上値上げする。Surface 3はこのレート設定を反映させたため、やや高額な値付けがなされたのだろう。囲み取材で樋口氏も「各社(為替レートという)同じ条件のため、その土壌で勝負したい」と語っていた。現時点では、Microsoftが行っているようなSurface RTなどの下取りキャンペーンも予定していないため、いかんせんSurface 3は高額なデバイスとなってしまう。割高感のあるSurface 3だが、デバイスサイズや622g(4G LTEモデルは約641g)の軽量ボディ、Intel Atomが実現する長時間のバッテリ駆動(最大約10時間の動画再生)など利点は多い。Surface Proシリーズと比べるとスペック面の魅力は足りないものの、ブライアン・ホール氏の言葉を借りれば、Surface 3は「過去の経験をすべて投入した最高のデバイスを目指した」モデルだ。ハイスペックを要するアプリケーションを使わず、WebやOfficeスイートが問題なく動作するといった用途を踏まえれば、十分魅力的なデバイスに映るはずだ。ちなみに一般向けモデルのWindows 8.1は64bit版をプリインストールしているが、今夏に迫ったWindows 10を考えると、4GBモデルがベストチョイスとなる。この辺りは懐具合と相談しなければならないが、Surface 3の購入を思案中の方は参考にしてほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年05月19日Microsoftは5月13日(現地時間)、Windows 10のエディション構成を明らかにした。先週は「Skype Translator Preview」のパブリックリリースなど興味深い話題も多いが、やはり多くの読者が興味を持つであろうWindows 10のエディションを整理し、報告する。○コンシューマー向けエディションは3種類ここ数年のWindowsにおける混迷はエディションにも影響を及ぼしてきた。Windows VistaはStarter / Home Basic / Home Premium / Business / Enterprise / Ultimateの6エディション。Windows 7も基本的には同じだが、新興市場向けだったStarterとHome Basicの役割が入れ替わっている。そして、Windows 8 / 8.1は無印 / Pro / Enterpriseの3つに整理されたが、Microsoftの戦略的理由でリリースしたWindows 8.1 with Bingや、厳密にはWindows 8.xファミリーではないものの、ARMアーキテクチャとなるWindows RTも存在した。そして、Windows 10はデスクトップPCからモバイルデバイスまで1つのOSでカバーする「One Windows」を掲げて来たが、ようやくエディション構成が判明した。ここではWindows 8.xと比較しながら、Windows 10の各エディションを解説しよう。Windows 8.xの無印版に相当するのが「Windows 10 Home」だ。基本的な機能に加え、音声パーソナルアシスタントのCortanaや、Windows Helloに代表する各生体認証などにも対応する。大多数のユーザーは本エディションで問題ないだろう。次に、Windows 8.x Proに相当するのが「Windows 10 Pro」。ビジネス用途を想定し、リモート管理やCYOD(企業が認可した複数のデバイス候補から従業員が使用するデバイスを選択する仕組み)を想定した機能、Windows Update for Businessなどをサポートする。なお、同社公式ブログでWindows and Search Marketing担当CVPのTony Prophet氏は、Cortanaに関して「各市場でローンチした時点で利用可能になる」と説明し、日本語による音声コントロールにも対応する可能性は高まった。この説明だけでは、個人ユーザーがWindows 10 Proを選択するメリットは少ないように見えるだろう。だが、リモートアクセスなど非ビジネスユーザーにも便利な機能をエディションの差別化に用いてきた過去を踏まえると、個人ユーザーでもWindows 10 Proを選択肢に加えるべきだ。そして、Windows 10 for Mobileなどさまざまな呼称を用いてきたモバイルデバイス向けは「Windows 10 Mobile」に決定した。こちらはWindows Phone 8.1の後継OSにあたる。Windows 10 Mobileに関してはBuild 2015で披露した「Continuum for phone」が目新しい(タブレットモードとデスクトップモードをシームレスに切り替えるWindows 10のContinuumと差別化するため、改称したようである)。Windows 10 Home / ProはWindows 7もしくはWinodws 8.1から、Windows 10 MobileはWindows Phone 8.1から、リリース後1年間に限り、無料アップグレードが可能となる。ここまでは個人向けエディションだ。○教育関係者向けや企業向けモバイルエディションも登場大量のライセンス購入を求める大手企業向けには、「Windows 10 Enterprise」を用意する。先のブログ記事ではEnterpriseエディション関して目を引く機能は紹介されていないものの、クライアントOSですべての機能を欲する方は今後の情報発表に注目すべきだろう。企業向けエディションはEnterpriseに限らず、教育関係者向けの「Windows 10 Education」が新たに加わった。一般的な教育関係者向けソフトウェアと同じく、教師やスタッフなど学校関係者、学生を対象にしたAcademic Volume Licensingを適用。ちなみに機能差は存在せず、Windows 10 HomeやWindows 10 Proのアップグレードパスとなる。スマートフォンおよび小型タブレットを利用するビジネスユーザー向けには、「Windows 10 Mobile Enterprise」を用意した。VL(ボリュームライセンス)ユーザーに提供し、セキュリティやデバイス管理面の強化を図っている。そしてIoT用のWindows 10として「Windows 10 IoT Core」をエディションに加えた。こちらもすでにInsider Preview版を公開しているため、予想の範囲内だが、MicrosoftはATMやPOSデバイスでの利用や、Raspberry Piのようなシングルボードコンピューターでの利用を想定している。以上がWindows 10における7エディションの概要だが、気になるのはアップグレードパスである。例えば32ビット版Windows 7から64ビット版Windows 10へアップグレードできるのか。Windows 8.1無印からWindows 10 Proへアップグレードできるのか、といったシナリオだ。前者はアーキテクチャの問題があるものの、各プレビュー版でWIM(Windowsイメージ)ファイルを用いたアップデートを繰り返してきたことを踏まえると、可能性は残されいてる。後者も単なる機能差であり、Windows 8.1なら「Windows 8.1への機能の追加」が示すように、上位エディションへのアップグレードも可能だ。加えて、32ビット版OSにユーザーをとどめるメリットは少ない。もちろん予測の域を超えないため、Microsoftの公式発表を待つしかないが、Windows 10の無料アップグレードは64ビット化するよいタイミングとなるはずだ。阿久津良和(Cactus)
2015年05月18日Windows 8.1マシンの共有フォルダーにアクセスしたものの、フォルダー内のファイルを編集できないといったケースに出くわすことがある。これは共有フォルダーの「アクセス許可」設定が適切に行われていないからだ。アクセス許可のキホンと設定方法を紹介する。○共有フォルダーの「アクセス許可」を確認するWindows 8.1で共有フォルダーを利用する上で、意識しなければならないのが「アクセス許可」である。Windows OSは、ファイルやフォルダーなどに対してアクセス制御リスト(ACL)を保持し、一定のセキュリティレベルを維持してきた。例えば上図に示したダイアログでは、「Everyone」グループが存在し、アクセス許可設定を確認できる。Everyoneグループはすべてのユーザーを含み、共有フォルダーに対して「読み取り」のみ許可を与えている。通常の操作で共有フォルダーを作成した場合、Everyoneグループのみ設定が付加する仕組みだ。ここで覚えておきたいのが、共有フォルダーを利用しているセッションやファイルの確認方法である。管理コンソールの「共有フォルダー(fsmgmt.msc)」を起動して、実行したPCに接続しているユーザーを確認してみよう。上図の場合、「コンピューター名『eve』のユーザー『kaz』がセッションを張っている」ことが確認できる。さらに下図は「開いているファイル」を開いた状態だが、dirコマンドを実行することでフォルダーに対する参照が発生し、さらに共有フォルダー内のファイル「test.txt」を参照したため、同じように列挙した状態だ。いずれのモードも「読み取り」になっている点に注目してほしい。○アクセス許可の設定でファイル保存を可能にするこのように、共有フォルダーにはユーザー/グループごとにアクセス許可が存在し、その設定に応じて動作は変化する。そこで特定のアカウントに「フルコントロール権」(読み書きを自由に行える)を与える操作を紹介しよう。上図のとおり「ユーザーまたはグループの選択」ダイアログからユーザーを追加し、アクセス許可設定を変更するだけだ。このとき、Everyoneグループにある「読み取り」のチェックボックスをオフに変更して、同グループに対するアクセス許可を取り除いておこう。さらに先の手順で行ったセッションを切断するための操作も必要となる。こちらは「共有フォルダー」の「セッション」に並んだセッションのコンテキストメニューから、「セッションを閉じる」を選択すればよい。この操作を終えてから再び共有フォルダーにアクセスすると、今度はファイルのオープンモードが「読み取り」から「書き込みと読み取り」に変化し、ファイルの編集や保存が可能になる。阿久津良和(Cactus)
2015年05月15日こんにちは、阿久津です。Microsoft Igniteでは、Windows 10で実装するWindows Update for Businessの存在やOffice 2016 Previewのリリースなど、多くの新機能や新製品が発表されました。特にOfficeはクラウド連動とコラボレーション機能を強化し、複数のユーザーが常に同じ情報にアクセス可能になります(図01~02)。さて、Windows 10 Technical Preview改めWindows 10 Inside Previewのビルド10074は、Windows 7でGUI環境として実装された「Aeroグラス」を一時的に復活させています。よく誤解されているようですが、Windows 8/8.1でもWindows Aeroを廃止していません。Windows 8/8.1ではモダンUIを優先するため、ウィンドウフレームやタスクバーの「ぼかし効果」を無効化し、機能自体は残っています(図03)。Windows 10 Inside Previewのにおけるぼかし効果は、スタートメニュー、タスクバー、アクションセンターで確認できますが、すべてのWindows 10 Inside Preview環境で有効になる訳ではありません。50%の環境は通常の透過処理を行い、残りの50%にぼかし効果を加えて、プレビューユーザーからのフィードバックを求めています。どのようなしきい値を用いて機能の有無を制御しているのかわかりませんが、レジストリを確認しますと、ぼかし効果を制御するエントリの存在を確認できました。そこで今週はWindows 10 Inside Preview ビルド10074を対象に、スタートメニューなどのぼかし効果を有効にするチューニングをお送りします。これでチューニングが完了しました(図04~10)。早速結果を確認してみましょう。[Win]キーを押すなどしてスタートメニューを開いてください。するとチューニング前は単なる透過処理だったスタートメニューにぼかし効果が加わります。この際「天気」など任意のWindows appを起動しておくとわかりやすいでしょう(図11~12)。このようにWindows 10 Inside Preview ビルド10074のぼかし効果は、HKEY_CURRENT_USER\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\ Themes\PersonalizeキーのDWORD値「EnableBlurBehind」で制御し、データが「0」の場合は単なる透過。データが「1」の場合はぼかし効果が加わります。本チューニングはWindows 10 Inside Previewの動作に悪影響を与えるものではありません。不要になった場合は以前の値に戻してください。それでは、また次号でお目にかかりましょう。阿久津良和(Cactus)
2015年05月13日●世界中がターゲットとなるサイバー攻撃の現状警視庁がまとめた2014年度のインターネットバンキング不正送金被害額は約29億円。その不正送金を仕掛けるボットネットに感染したPCは世界で約8万2,000台と見られているが、警視庁はその半分となる約4万4,000台のPCを国内で特定し、日本初のボットネットテイクダウン(撲滅)作戦を実施したばかりだ。このように、セキュリティ被害は対岸の火事ではなく、ユーザー各人の意識改革が求められている。日本マイクロソフトも2015年2月18日に「Digital Crimes Unit(サイバー犯罪対策センター)」の日本拠点を設立し、サイバー犯罪などに立ち向かう姿勢を表明したばかりだが、2015年5月12日にサイバーセキュリティ対策に対する取り組みを説明した。○世界中がターゲットとなるサイバー攻撃の現状ITとセキュリティを取り巻く環境は、10年前と見比べると大きく変化している。Microsoft Worldwide Public Sector部門でCSO(Chief Security Officer)を勤めるJennifer Byrne氏は、「セキュリティに対する考え方を変えなければならない。モバイル(デバイス)側によるセキュリティ対策が必要だ」と、現在のセキュリティ対策のキーポイントを説明した。なお、Byrne氏はMicrosoft入社前の18年間、サイバーセキュリティに関する業務に従事。現在はCSOとして各国の政府機関や企業とともに、セキュリティに関わる問題に取り組むセキュリティアドバイザーを率いる立場にある。「世界中の企業や政府機関もしくは個人をターゲットに、攻撃を仕掛けるサイバー犯罪やプライバシー情報の漏えいは、企業経営者や政府機関の重要課題」とは、米国のコンサルティング企業であるMcKinsey & Companyの発言だ。これ引用して、現在の調査情報を説明した。日本マイクロソフトがまとめた数値によれば、不正な侵入を検知するまで要する期間は243日、データ侵害に対する平均コストは4.2億円。年間15%ずつ増加している。そして、サイバー攻撃による生産性低下や成長障害といった全体的な損害は、約360兆円にも及ぶという。セキュリティ問題が解決に至らない背景には、IT環境の複雑化があるとByrne氏。ITの技術革新はメリットである反面、プラットフォームやインフラが複雑に絡み合い、デバイスの多様化も拍車を掛けている。この複雑化した構造はセキュリティチームの負荷にもつながり、その隙間を縫って攻撃者はプライバシー情報の奪取やマルウェア攻撃などを仕掛けているのが現状だと述べた。次に引用したのが、米Verizon Communicationsのセキュリティレポート「2014年度データ漏えい/侵害調査報告書(Data Breach Investigations Report)」である。写真では分かりにくいものの、Byrne氏は「セキュリティ問題が複雑かつ変化している点を視覚的に把握するため」と引用理由を説明した。ちなみに左上の折れ線グラフは2009年から2013年までのセキュリティインシデント(侵害事例)をまとめたものだが、2009年トップのブルートフォースアタックは年を重ねるごとに順位を下げ、2013年は12位に下落している。年月を重ねるごとに新しい脅威が登場し、過去のセキュリティ対策は役に立たなくなるパターンが例年繰り返されていると、セキュリティ対策の現状を分析。そのためMicrosoftは、セキュリティチームが現状を把握したうえで、労力に対する優先度の付け方が重要だと考え、企業や政府はもちろん社会全体にコミットしているという。また、先のセキュリティインシデントは9つのパターンに分類できるため、セキュリティチームが優先順位を付けることが可能である点も強調した。それが右上の棒グラフだが、2011年から2013年でもっともインシデント数が多かったのは、POS侵入(31パーセント)、次にWebアプリ攻撃(21パーセント)であることが読み取れる。前述のとおり報告書はVerizon Communicationsがまとめたものだが、Byrne氏は「共通する特徴がある」とMicrosoftの分析を紹介した。1つめは、OSやソフトウェア、デバイスといったシステムの脆弱(ぜいじゃく)性だ。セキュリティホールをふさぐパッチ未適用の環境がターゲットとなりやすい。2つめはユーザーの関与。例えば社内ユーザーが攻撃の抜け道を作ってしまうケースは、意図するしないに関わらず発生する。また、BYODがマルウェアに感染した場合も類するとした。そして最後はデータを標的にした攻撃。例外としてDoS攻撃などを用いてネットワークそのものを攻撃の対象にするケースも存在するが、最終的にはデータ奪取を目的としているという。●セキュリティに対する意識改革が求められる○セキュリティに対する意識改革が求められるこのように、セキュリティに対する意識改革が求められる昨今だが、アイルランドのコンサルティング企業Accentureと米ポネモン研究所の共同研究結果、「積極的なセキュリティ戦略に取り組んでいる企業は53%の効果が現れるが、非積極的な企業は2パーセントの向上にとどまる」を引き合いに出し、他方で「技術革新と信頼に対する懸念のバランス」が求められるとByrne氏は説明する。冒頭から述べてきたように、クラウドやモバイルデバイスなど技術革新から生まれたIT技術の登場で、管理やセキュリティ対策が後手に回るケースは珍しくない。だからといって技術革新の導入に手をこまねいていると、企業成長に遅れが生じる可能性もある。だからこそByrne氏は、先の研究結果を引用してバランスの重要性を強調したのだろう。その結果求められるのが、すべての環境に対して同等のセキュリティ対策を提供するソリューションだと結論づけた。例えば、データセンターの防御壁はルータやファイアウォールだったが、クラウドやモバイルデバイスの活用に伴い、過去のセキュリティ対策モデルは妥当ではない。そのためユーザーこそが新しい防御壁となり、個々のデバイスに対してファイアウォールなどと同じセキュリティ対策が求められるという。ここでByrne氏は、Microsoftとセキュリティに関する過去を振り返った。2000年当時のインターネット利用者は3.89億人まで増加し、当時のマルウェアは世界中に広まるまでに1日を要しなかった。その結果セキュリティに対する概念が変化し、それまでのウイルス対策ツールのパターンファイル更新では追いつかなくなったという。Microsoft創業者であるBill Gates氏は「世界中のデスクトップにPCを」という構想を持っていたため、後の「TwC(Trustworthy Computing: 信頼できるコンピューティング)」につながったそうだ。2002年当時、Microsoftの主力製品による売り上げは240億ドル(約2.88兆円)に及んでいた(具体的な製品名を述べなかったが、当時はWindows XP Service Pack 1をリリースしていた)。TwC構想の下、開発を中断してセキュリティ対策に取り組んだのはMicrosoftの歴史を知るユーザーであれば有名な話である。その結果リリースしたのが、「セキュリティ強化機能搭載」のサブタイトルを持つWindows XP Service Pack 2だ。このような取り組みは現在に至るまで続けており、他社ともソフトウェアの脆弱性情報やマルウェア対策情報を共有。その結果をWindowsやクラウドなど各製品に反映させている。Microsoftはセキュリティ対策に必要な取り組みとして5つのポイントを掲げた。それが上図のスライドである。Byrne氏は利用者のIT基盤やデータを保護するために、データセンターだけではなくデバイスやクラウド、データを利用するすべての環境をターゲットにしなければならないと説明した。前述した防御壁の変化につながるポイントだ。ID管理システムの脆弱性を狙った認証情報の盗取を妨げるため、管理を強固にするのは重要ながらも容易ではないと続けて説明。システム基盤全体を見据えたうえで、IDやデータを一括管理する仕組みが求められるという。そして透明性を実現するためにプライバシーと法令遵守の保証についても言及した。以前のクラウドはブラックボックス的な扱いを受けてきたが、Microsoftは技術的・物理的な透明性が必要だと考えているという。同社は以前からMicrosoft Azureに対する透明性を重要視し、事あるごとにアピールしてきたが、Byrne氏は「この透明性を保証することで顧客と信頼関係を結べる」とその意味を説明した。一連の会見はここで終了したが、Q&Aセッションに入ると、セキュリティ更新プログラムの事前通知サービス(ANS)に関する質問が挙がった。同サービスは2015年1月に停止し、現在はプレミアサポートを利用する顧客や関係組織に限定している。その理由としてByrne氏は「ANSの参照回数は非常に少ないため、停止に至った」という。同席した日本マイクロソフト チーフセキュリティアドバイザーの高橋正和氏も、詳細情報まで確認するユーザーは少ないと筆者に語っていた。なお、Windows 10に関する質問も挙がったが、Byrne氏は言及を避けてFIDOアライアンスの生体認証サポートにとどめていた。Microsoftは以前から国際レベルでサイバー犯罪を調査し、各国の政府機関と連携するDCU(Digital Crimes Unit)を運営している。今回説明した同社のセキュリティ対策姿勢やDCUの活動が、サイバー犯罪の減少につながることを強く期待したい。阿久津良和(Cactus)
2015年05月13日Microsoftは5月4日(現地時間)から5日間、米・シカゴでITプロフェッショナル向けに「Microsoft Ignite」を開催した。これまでのTechEDなど各イベントを包括的に統合したテクノロジーカンファレンスである。ここではコンシューマー向けの興味深い発表について掘り下げていく。○ビジネスユーザー向け「Windows Update」を発表最初に登壇したMicrosoft CEOのSatya Nadella氏は、自社が変革の途中にあり、変革を起こし続けなければならないというメッセージを発信した。さらに「Build 2015」でも用いた「Create more personal computing」を掲げて、革新的なハードウェアやモビリティ経験、NUIといった新たなUXに向けた方策が求められていると語った。その一環として突如発表したのが「Windows Update for Business」だ。ここからはOperating Systems担当EVPのTerry Myerson氏のスライドを交えて説明しよう。Windows 10は新機能やUIの変更を求めないビジネスユーザーにとっては互換性を失う結果となり兼ねないため、Microsoftはユーザーの使用スタイルや用途に合わせたアプローチを用意した。たとえば、Windows Update for Businessではシステム管理者によって、Windows Updateの適用範囲をセキュリティ更新プログラムに限定したり、新機能を追加するタイミングをコントロールすることが可能になる。具体的には、Windows 10 Technical(現Inside) Previewで用いている「配布リング」を使用して、更新プログラムの適用範囲を選択。P2P技術を利用することで社内や支店のPCへの更新プログラム配信も効率的に実行できるという。もちろんこれらの設定を管理するツールもリリースする予定だ。誤解を恐れずに述べれば、Windows Update for Businessから我々コンシューマーユーザーが得るメリットは少ない。これまでのWindows UpdateでWindows 7やWindows 8.1が不調を来すのも、大半がセキュリティ更新プログラムを起因しているからだ。それでもビジネスユーザーと同じように変化を敬遠するユーザーや、パフォーマンス以外の理由でLunaではなくクラシックテーマを使っていたユーザーとって、Windows Update for Businessは興味深い機能となるだろう。○新機能てんこ盛りの「Office 2016」に新プレビュー版登場次に、Microsoft Office部門のジェネラルマネージャーを勤めるJulia White氏が披露したOffice 365のデモンストレーションに目を向けよう。注目は次期Officeスイートとなる「Microsoft Office 2016」である。すでに2015年3月にOffice 2016 IT Pro and Developer Previewを公開済みだが、今回のイベントでは、最新版となるOffice 2016 Previewを公開したことを明らかにした。Office 2016ではクラウド連携の強化とコラボレーション機能がキーポイントとなる。たとえば、Excel 2013からファイルを開く際にOneDriveを選択しても、最近使用したフォルダーが並ぶだけだったが、Excel 2016 PreviewではOneDriveのフォルダーがそのまま現れるため、今まで以上にローカルとクラウドの垣根を感じさせなくなった。Outlook 2016 Previewでもファイル添付に関する操作を刷新し、OneDriveへのアクセスを容易にしている。また、添付ファイルに対する共有設定もメニューから選択可能になった。すでにOffice Onelineで実現しているコラボレーション機能(リアルタイム共同編集機能)も実装する。こちらは他のユーザーが編集した結果がリアルタイムに反映されるというものだ。ただし、今回のプレビューには盛り込まれず、今後のアップデートでWord 2016 Previewから実装する予定という。その他にもOffice 2016 Previewをスマートアプリケーションとして用いるため、機械学習を用いた検索機能の強化や、Outlook 2016 Previewで受信したメールを自動的に整理する「Clutter」、作成中の文書からBingを用いて関連情報を検索する「Insights」。また、別アプローチとしてPower BIを用いるなどしたデータ分析機能の強化など、多数の機能が盛り込まれる。なお、Office 2016 PreviewはOffice 2013と共存できないため、事前のアンインストール作業が必要だ。阿久津良和(Cactus)
2015年05月11日前回も述べたように、Microsoftは4月29日から5月1日(現地時間)までの3日間、米サンフランシスコで開発者向けカンファレンス「Build 2015」を開催した。今回は初日の基調講演以外の情報をピックアップし、Windows 10周辺の情報を整理する。○すべでのデバイスで動作する「Universal Windows Apps」Build 2015のセッションを俯瞰すると、Microsoft Azureなどエンタープライズ製品を除けば、Universal Windows Apps(UWA)をテーマにした講演が多いことに気付く。UWAの概念自体は目新しいものではなく、2010年9月にリリースしたWindows Phone 8.1までさかのぼる。MicrosoftはWindowsストアアプリとWindows Phoneストアアプリのコードを共有することで、開発コストの軽減やプラットフォームの一元化を目指していた。そして「One Windows」という旗の下、PCやモバイルデバイスだけでなく、Xbox OneやIoTデバイスなどまで展開するのが現在のUWAだ。Build 2015のセッションではUWAの開発について、アプリケーションの基本設計やガイドライン、具体的なコードの記述方法などを説明した。ここ最近、Microsoftは自社プラットフォームにこだわらない姿勢や活動を見せているが、それと並行して、Windowsを核においた従来のビジネスモデルも推進していることがわかるだろう。いずれにせよ2015年夏に登場するWindows 10によって、UWAのセカンドステージが始まる。ただし、すべてのアプリケーションを即時UWA化するのは難しい。そのため、3月にGDC 2015関する記事でも述べたように、Microsoftはここ数年をWin32アプリケーションからWinRTアプリケーションへの移行期と見なしている。○複数GPUの利用など期待大の「DirectX 12」DirectX 12(DX12)に関するセッションも興味深いものだった。資料に目を通すとBuild 2015の時点でDX12はAPIレベルの開発を完了。Steamの調査結果によると、2015年中に50%以上のPCゲーマー、67%の一般ユーザーがDX12対応デバイスに移行するという。Direct3D Development LeadのMax McMullen氏は、中国Snail Gamesの「King of Wushu」を使ったデモンストレーションで、DX11とDX12のパフォーマンスを比較した。レンダリングスピードとキャラクター増加時のフレームレートに差はないが、fps値の最低値と最高値に大きな違いが生じていることが見て取れる。これはDX12で実現するコマンドリスト構築とCPUの並列処理や、複数GPUエンジンのワークロード調整など、パフォーマンスに関する最適化が効を奏しているのだろう。スクウェア・エニックス「WITCH CHAPTER 0 cry]」のデモは[こちらの記事で述べたとおりだが、1シーンあたり6,300万のポリゴンと8K×8Kのテクスチャによって実現した映像だ。これらの数値はDX11に比べ6~12倍に及ぶという。さらにUnreal Engine 4(UE4)のデモでは、DX12からサポートするMultiadapter(マルチアダプター)をアピール。こちらは異なるベンダーのGPUを組み合わせることを可能にする技術だ。すでにNVIDIA SLIやAMD CrossFireXといった技術は存在するものの、これらは同一ベンダーのGPUに限られる。その点Multiadapterに制限はない。上図のデモはIntel製GPUとNVIDIA製GPUを組み合わせたものだが、Intel製GPUが低スペックなのか、わずかながらもfpsの差として結果が現れている。DirectX Developer Blogの記事によれば、NVIDIA製GPUが担う一部の処理をIntel製GPUに渡すことで、数ミリ秒の差が生じる結果になったという。阿久津良和(Cactus)
2015年05月07日●新Webブラウザー「Microsoft Edge」のベンチマークを公開Microsoftが2015年4月29日(現地時間)から開催中の開発者向けカンファレンス「Build 2015」。開催2日目のセッションなどで発表された新テクノロジーや製品に関する最新情報から、キーポイントを取り上げる。大きなトピックは、新Webブラウザー「Microsoft Edge」のベンチやDirectX 12のデモだ。○新Webブラウザー「Microsoft Edge」のベンチマークを公開2日目となる基調講演の最初に登壇したのは、Developer Platform&Evangelism担当CVPおよびチーフエバンジェリストのSteve Guggenheimer氏と、Developer Platform担当CTOおよびテクニカルフェローのJohn Shewchuk氏。Windows app上のデジタルドラムマシンを鳴らしながら、応答を実現するためのコードを説明していた。続いて登壇したOSG(Operating Systems Group)担当CVPのDavid Treadwell氏は、Universal Windows Platformの概要として、さまざまなデバイスでWindowsが動くという従来の説明を繰り返した。また、初日に発表したWindowsストアの刷新や、アプリケーション開発者のマネタイズにつながることもアピール。興味深いのは、同じく初日発表の新Webブラウザー「Microsoft Edge」のベンチマークである。Microsoft Edgeは現在のWeb標準技術に対して、インターオペラビリティ(相互運用性)の向上を実現し、その数は4,200を超えるという。性能面においても、他のWebブラウザーに勝るベンチマーク結果を発表した。ベンチマークの測定環境などを詳しく述べていないため、そのまま受け入れることはできないものの、関係者はMicrosoft Edgeの性能に自信を持っているのだろう。●期待が集まるDirectX 12のデモンストレーション○期待が集まるDirectX 12のデモンストレーションこの他にも機械学習などの話も出たが、ここでエンドユーザーに身近な話題として、DirectX 12のデモンストレーションを紹介する。NVIDIA GeForce GTX TITAN X 4-way SLI環境のシステムにWindows 10をインストールし、その上でスクウェア・エニックスの「WITCH CHAPTER 0 [cry]」を披露した。プレレンダリング&リアルタイムCGを研究してきたスクウェア・エニックスは、自社製ゲームエンジン「Luminous Studio(ルミナス・スタジオ)」に組み込み、今後のゲーム開発に活用すると述べている。○Windows 10のXAMLの深い関係さて、今回は興味深いセッションに関してもいくつか取り上げてみよう。Windows 10はXAML(Extensible Application Markup Language)をUIフレームワークとして、Windows 8.x以上に活用している。スタートメニューのタイル自身やライブタイルのアニメーション効果などがよい例だろう。「What’s New in XAML for Universal Windows Apps」というセッションでは、XAMLのコントロールに関する使い方を紹介していた。例えば、確認ダイアログをXAMLで記述すると下図のように置き換わる。テキストボックスもIMEと連動したサジェスト機能を備えるようになり、キータイプの手間を大きく省きそうだ。XAMLベースのUIはPC上のWindows 10だけでなく、Windows Phoneデバイスなど大きさの異なるデバイスでの動作も前提に入れなければならないため、従来のように「PCならでは」の操作性を求めるユーザーは、新たなUIに多少の慣れが必要となるかもしれない。阿久津良和(Cactus)
2015年05月02日●CEOのNadella氏はプラットフォームの技術革新をアピール米Microsoftが2015年4月29日(現地時間)から開催中の開発者向けカンファレンス「Build 2015」。ここで発表された新テクノロジーや製品に関する最新情報から、キーポイントを取り上げてご紹介する。○プラットフォーム技術革新をアピールしたNadella氏最初に登壇したMicrosoft CEOのSatya Nadella氏は、Microsoft AzureやWindows 10といったさまざまな角度からのプラットフォーム拡充と、技術革新を目指すことを声高に語った。続いて「StaffPad」の開発者であるDavid William Hearn氏を招き、デモンストレーションを披露。その後はプラットフォームというステージが持つチャンスをアピールした。○Windows 10でAndroid/iOSアプリが動く時代へここから開発者向けにMicrosoft Azureプラットフォームの新技術やOffice 365のビジネスソリューションの講演が続くが割愛し、Windows 10に関して語るOperating Systems担当EVPのTerry Myerson氏の講演を紹介しよう。Windows 10およびWindows 10 Mobile(仮称)の特徴的な機能を紹介しつつ、2年~3年内にWindows 10が10億台のデバイス上で動作することを目指すとアピールした。その下地として、Webサイトのアプリケーション化、.NET FrameworkやWin32で開発したデスクトップアプリケーションをWindowsストアで配布・販売可能にする完全サポート。Android(Java/C++)やiOS(Object C)向けのアプリケーションを、Windows 10へ容易に移植できるSDKを用意する。この10億台という一見すると突拍子もない数字は、PCに限らない。モバイルやIoTデバイスを含みつつ、Windows 7やWindows 8.xユーザーに対しては、Windows 10へのアップグレードパスを1年間無料で配布する方針も含まれる。なお、Windows 10の具体的な発売日は明らかにしなかった。●Windows 10が搭載する最新Webブラウザー「Microsoft Edge」○新Webブラウザー「Microsoft Edge」次に登壇したPC/Tablet/Phone担当のCVPであるJoe Belfiore氏は、Windows 10が搭載するロック画面にユーザーの行動履歴などに基づいたメッセージが加わることを明らかにした。また、Aeroグラスを復活させることを明示すると、会場から拍手がわき起こった。映像ではスタートメニューの背景に曇りガラスのような透過効果を加えているが、OSG(Operating Systems Group)Data and FundamentalsチームのGabriel Aul氏は「一時的に復活」という言葉で本機能を公式ブログで紹介している。なお、Cortanaに関するデモンストレーションも披露したが、日本国内のユーザー向けに目新しい情報はない。Project Spartanの名称で開発が進んでいた新Webブラウザーの名称が「Microsoft Edge」になることも明らかにした。目新しい新機能はないものの、Mozilla FirefoxやGoogle Chrome向け機能拡張を、簡単な変更でMicrosoft Edge向けに移植できることをアピール。会場ではGoogle Chrome用reddit(海外の掲示板)拡張機能を、Microsoft Edge上で動かすデモンストレーションを披露した。●スマホがデスクトップPCに変身する「Continuum」○スマホがデスクトップPCに変身する「Continuum」Belfiore氏の講演は続き、Windows PhoneデバイスをHDMIモニターとBluetoothキーボードに接続して、デスクトップPCライクに使用する「Continuum」を紹介。ただし、現在のLumiaシリーズもHDMI出力は上位モデルに限られるため、現行製品がすべて対応するとは限らない。○近未来を描くマジックデバイス「HoloLens」続いてOSGに所属するテクニカルフェローのAlex Kipman氏が登壇。同氏は「HoloLens」に関するスピーカーとして、メディアに登場しているが、2015年1月以来の発表に注目が集まった。今回もTVカメラにHoloLensをつなげて、SkypeやMicrosoft Edgeなどの仮想画面を部屋に並べるデモンストレーションを披露した。視点がマウスカーソルとなり、メニューからアプリケーションを起動する様や、動画をリアルタイムで視聴するシーンは近未来をのぞき見るようだった。Kipman氏は既に建築業界などと協力体制を敷いていることも明らかに。その一例としてケースウェスタンリザーブ大学の教授を招いて、医学生による肉体構造の学習にHoloLensが有効であることをアピールした。さらにRaspberry Piで作成したマシンとHoloLensを組み合わせ、仮想ロボットとコミュニケーションを取るデモンストレーションも行われた。現在、NASAやUnityといった各企業・団体との協力し、完成を目指すという。なお、具体的な発売時期は未発表だ。阿久津良和(Cactus)
2015年05月01日