10月29日(米国時間)、Microsoftはリストバンド型のウェアラブルデバイス「Microsoft Band」を発表した(関連記事)。内蔵センサーから心拍数や歩数といった身体情報、GPS経由による走行ルートなどを記録する。さらにスマートフォンと連動し、メールや予定表の確認、音声アシスタント「Contra」によるコントロールも可能だ。さらに、収集したデータをクラウドサービス「Microsoft HealthVault」にアップロードし、健康管理に役立てられる。Windowsストアアプリ「BINGヘルスケア&フィットネス」との連動も期待できるだろう。データを閲覧するアプリケーションは各プラットフォームで無償配布中。Windows Phoneを筆頭にiOS版、Android版も用意している。OSに関する公式の説明はないが、組み込み向けのWindows Embedded Compactあたりを採用していると思われる。「Microsoft Band」の登場により、Appleの「Apple Watch」、Googleの「Android Wear」搭載製品とウェアラブルデバイスにおいても各社そろい踏みの状態になった。スマートフォン市場では後塵を拝したMicrosoftだが、スマートウォッチ市場に対するスタートは大きく遅れなかったといえる。話は変わるが、筆者は最近iPhone 6を購入した。各種センサーを利用した健康管理システム・アプリケーション「ヘルスケア」の存在に注目していたのである。フタを開けてみると、リリース直後からフレームワークであるHealth Kitは正常に動作せず、安定動作したのは2014年9月末にリリースしたiOS 8.0.2以降。そのせいか、ヘルスケアに対応するアプリケーションは最近出始めた程度だ。もちろんスマートウォッチ市場を席巻するには、ライフログ/ヘルス系の機能に加え、シンプルで使いやすいアプリケーションの提供など、数多くの要因が入り交じる。そこで重要になるのがアプリケーションなどを販売するコンテンツストアの存在だ。登録アプリケーション数について、Windows Phoneストアは2014年8月時点で30万本を超えたことをアピールしたが、App Storeは2014年6月のWWDCで120万本と発表。Google Playは2014年6月のGoogle I/Oで150万本を超えたことを明らかにした。App StoreはWindows Phoneストアの4倍、Google Playは5倍にまで拡大している。だが、注目すべきは登録アプリケーション数ではなく、その背景にいるアプリケーション開発者だ。スマートフォンと連動するスマートウォッチが、魅力的なプラットフォームとして開発者の目に映るかがポイントなのである。ハードウェアの面でも、アプリケーションの面でも各社スマートウォッチは横並びの状態だ。これから生み出されるアプリケーションがデジタルガジェットマニアではなく、大多数の一般コンシューマーが、「便利だ」「面白い」と感じるかが、スマートウォッチ市場を征する鍵となるだろう。阿久津良和(Cactus)
2014年11月04日Microsoftは、Windows 8でスタートメニューを廃止した。その代わりとまではいかないが、かなり便利に使えるのが「Win」+「X」キーで呼び出すクイックアクセスメニューだ。ショートカットキーの組み合わせから「WinXメニュー」と呼ばれることもあるが、今回はクイックアクセスメニューの活用方法を紹介する。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○アクセラレータキーで素早く操作する2015年リリース予定のWindows 10はスタートメニューを復活させる見込みだが、さすがにWindows 10テクニカルプレビュー版をメインPCのOSとして使うことはおすすめできない。そのため、クイックアクセスメニューを活用すべきだ。Windows 8.1でクイックアクセスメニューを呼び出すには、画面の左下隅を右クリックするか「Win」+「X」キーを押す。上図はWindows 8.1のものだが、Windows 8のそれと異なり、「シャットダウンまたはサインアウト」が項目として加わっている。クイックアクセスメニューが特徴的なのは、アクセラレータキーが存在する点だ。例えば、コマンドプロンプトのアクセラレータキーは「C」のため、「Win」+「X」キー→「C」キーと押せば起動する。さらに管理者権限を持つコマンドプロンプトの場合は「Win」+「X」キー→「A」キーと押せばよい。中には、「ファイル名を指定して実行」のように、既存のショートカットキーと重複する項目もある。こちらは「Win」+「X」キー→「R」キーと押すよりも、「Win」+「R」キーと押すほうが簡単で、操作ステップも少ない。それでも、1つのツールに複数の起動方法を用意し、ユーザーの使用状況に合わせて選択できるのは便利だ。さらに「Win」+「X」キー→「U」キーと押せば、サインアウト/スリープ/シャットダウン/再起動といったアクションを手軽に実行できるのは大きい。キーボードでWindows 8.1を操作するユーザーにとって、クイックアクセスメニューは有効活用できる存在なのだ。上図のとおり、サインアウトは「I」キー、スリープは「S」キー、シャットダウンは「U」キー、再起動は「R」キーが割り当てられている。例えば再起動する場合は、「Win」+「X」→「U」キー→「R」キーと押せばよい。○コマンドプロンプトとPowerShellを切り替える本来、Windows PowerShellは、コマンドプロンプトに置き換わるCUI(キャラクターユーザーインタフェース)である。エクスプローラーのリボンからも簡単に呼び出せるが、PowerShellを多用するユーザーは下図の操作を試してみよう。クイックアクセスメニューの項目がコマンドプロンプトからPowerShellに切り替わり、より簡単にPowerShellを呼び出せるようになる。ただし、アクセラレータキーが「C」キーから「I」キーに変更するので、その点だけ注意してほしい。阿久津良和(Cactus)
2014年11月01日Windows 8.1はタブレット用UIとデスクトップ用UIを両立させており、その点が従来のWindowsユーザーから低い評価を受けている1つの理由だ。設定を見直すことでWindows 7以前の操作性に近づけることは可能なので、今回はモダンUIのマウスジェスチャーを無効にするTipsを紹介する。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○Windows 8.1におけるキーボード操作派の苦難「デスクトップをどのように操作するか」は、ユーザーの使用スタイルによって異なる。通常はキーボード+マウスを想定するが、トラックボールが好きなユーザーや、筆者のようにポインティングスティック装備のキーボードを愛用する方もおられるだろう。例えばマウスは、直感的な操作が可能という利点を持ちつつも、キーボードのホームポジション(両手)を維持できないため、ショートカットキーが使いづらくなるといった欠点も存在する。このように、ポインティングデバイス1つ取っても、さまざまな見方があり、ユーザーの数だけ評価も異なるのだ。Windows 8.1は、ポインティングデバイスで操作を行うとき、(常にではないが)意図しないアクションが発生する。画面の隅にポインターを動かすと現れるチャームバーや、Windowsストアアプリのスイッチャーだ。○チャームバー/アプリケーションスイッチャーを無効にするデスクトップ環境を中心にWindows 8.1を使うユーザーであれば、これらの機能は無効にしたほうが使いやすい。設定項目は、「タスクバーとナビゲーションのプロパティ」の「ナビゲーション」タブだ。ここに並ぶ「右上隅をポイントしたときにチャームを表示する」のチェックを外せばチャームバーが、「左上隅をクリックしたときに、最近使ったアプリに切り替える」のチェックを外せば、アプリケーションスイッチャーを無効化できる。なお、チャームバーは「Win」+「C」キーで、アプリケーションスイッチャーは「Win」+「Tab」キーで呼び出せるので(Windowsストアアプリ未起動時は応答しない)、これらのショートカットキーを身につけておけば、各機能が必要になった場面でも困ることはない。○スナップ操作を無効にするウィンドウをデスクトップの左右にドラッグすると自動的にリサイズするスナップ機能も、ユーザーによって評価が分かれるところだ。こちらも設定を切り替えることで、無効にできる。設定は「コンピューターの簡単操作センター」の「マウスを使いやすくします」だ。「ウィンドウが画面の端に移動されたとき自動的に整列されないようにします」にチェックを入れることで、スナップ機能が無効になる。下図のようにスナップ機能は無効になり、画面左右や画面上にドラッグした際のウィンドウリサイズは動作しない。スナップ機能をうっとおしく感じるようなら、試してみてほしい。阿久津良和(Cactus)
2014年10月31日Microsoftが10月21日(米国時間)に公開したWindows 10テクニカルプレビューのアップデートは、OS本体の変化もさることながら、今後のアップデート戦略に方針を及ぼすシステムを採用した。Windows 10はサブスクリプション方式で提供されようとしているのだろうか?○スピーディなアップデートを実現するRing ProgressionWindows FundamentalsチームのGabe Aul氏は公式ブログで、「Ring Progression(連続する輪)」と呼ぶ仕組みを採用したと述べた。上図のように、Microsoftの開発陣は新たなコードを書き、問題が発生した部分を修正するコードを結合して、コンパイルしたビルドを毎日生成している。これを「Canary Ring(カナリアの輪)」と呼んでいるそうだ。そのビルド結果を次のOSG(Operating System Group)メンバーに渡し、仕様が正しく反映されているか検証を行う。OSGの検証を通過したビルドは数万人のMicrosoft社員がテストを行い、安定性を確認したうえで、Windows Insider Program参加者に手渡される。つまりWindows 10テクニカルプレビューを試している我々だ。関係者に取材したところ、日本マイクロソフト社内でもWindows 10テクニカルプレビューを業務に利用する許可が一部出ているという。ビルド9860以降はさらに新たな輪が加わる。そのヒントは「Preview builds」に用意されたドロップダウンリストにあった。「Fast」「Slow」の2項目を用意し、「更新頻度の高いビルドをWindows Update経由で入手したい場合は前者、コミュニティの間で発見した問題の回避方法を踏まえて、安全にWindows 10テクニカルプレビューを使いたい場合は後者を選択してほしい」とAul氏は述べている。余談だが、このRing Progression自体はさほど目新しいものではない。多くのOSは社内もしくは一部関係者を含めて、同様の開発工程を行っているからだ。初代Windows NTの開発指揮を執ったDavid N. Cutler氏が開発チームに「ドッグフードを食べろ」と言って、Windows NTの開発進捗を加速させたのは有名な話である。○Windows 10でサブスクリプションモデルは導入できるか?さて、ポイントはテクニカルプレビューにもアップデートシステムを導入した点だ。確かにWindows 8.1 UpdateはWindows Update経由でリリースし、過去のService Packも似たような様式でアップデートファイルを提供してきたが、いずれもWindows Updateの更新履歴にその内容が示してきた。だが、今回は様子が異なる。過去の履歴はクリアされているのだ。ビルド9860のアップデートプロセスを踏まえると、ユーザー情報やシステム設定など一部情報をリカバリーしつつも、新たなインストールイメージファイルを用いたリフレッシュに近いのである。この仕様変更がWindows 10テクニカルプレビューに限るものなのか、現時点で判断するのは難しい。だが、その先にはWindows 10をOffice 365のように、サブスクリプションモデルとして提供することを望むMicrosoftの姿勢が見えてこないだろうか。多くの識者はコンシューマーユーザーや法人ユーザーに対して異なるモデルを導入すると推測する。筆者も同様の考えだが、日本国内に限れば、欧米と同じモデルをそのまま適用できるかは疑問だ。プレインストールモデルが好まれる日本では、「Office Premium」や「Office 365 Solo」は、米国版のリリースから約3年の期間を要している。さらに、OS Xを筆頭にiOSやAndroidがアップデート料金を無料にしている状況も大きい。AppleはMacやiPhoneといったハードウェアなどから収益を得るビジネスモデルを貫き、Androidはデバイス上の広告から開発コストを賄っている。近年のMicrosoftは柔軟な姿勢で他社プラットフォームへ積極的に参加しているが、OSという重要製品を軽んじることは考えられない。Windows 10のリリースに至るまでには、シェア争いに打ち勝つためのアップデート料金無料化(もしくは極め安価な設定)や、安定した収益の確保を可能にするサブスクリプションモデルの導入など、判断を下さなければならない問題が多数存在する。仮にWindows 10でサブスクリプションモデルを導入するとしても、最初は法人ユーザーを対象とし、コンシューマーユーザーは従来のプレインストールやオンライン購入となるだろう。オンプレミス型のソフトウェアが終息しつつある今、Microsoftは岐路に立たされている。阿久津良和(Cactus)
2014年10月27日Windows使用時にもっとも使うアプリケーションは「エクスプローラー」だ(意識するしないに関わらず)。デスクトップやスタート画面もエクスプローラーが担い、描画を行ったり、各種の機能を提供している。今回はこのエクスプローラーの動作に関するTipsを紹介しよう。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○各フォルダーサイズが記憶されない?本来エクスプローラーは、フォルダーごとにウィンドウの位置やサイズ、表示形式を個別に記憶する仕組みを備えていた。煩雑になるためロジックは割愛するが、Windows XP以前とWindows Vista以降は動作が異なり、前者はウィンドウを閉じる際に各種情報をレジストリに格納している。だが、後者の動作は不明確だ。上図をご覧になると分かるように、表示形式などは保存情報を利用するが、ウィンドウサイズは直近のものを利用しているため、不便に感じるユーザーも少なくないだろう。フォルダーごとにウィンドウの位置とサイズを覚えてくれないため、例えば「マイコンピューター」を開くたびに、位置とサイズが変わってしまうことが多いのだ。残念ながら筆者も、Windows Vista以降の仕様変更に対する解決策を持っていないが、表示形式をリセットすることで、ウィンドウサイズ以外の問題は解決可能だ。なお、ここでは取り上げないが、「ShellFolderFix」というフリーソフトを使うと、フォルダーごとのウィンドウ位置とサイズを記憶できるようになる。○フォルダーをリセットするフォルダーの表示形式をリセットするには、フォルダーオプションダイアログに用意されたボタンを利用する。ここでは分かりやすくするため、表示形式を「一覧」に変更しているが、「並べて表示」以外であれば何でも構わない。これでフォルダーオプションが起動するが、上図の手順であれば「Alt」+「V」キー→「Y」キー→「O」キーと順に押しても実行できる。また、検索チャームから「フォルダーオプション」を検索すれば、直接ダイアログを呼び出すことも可能だ。「表示」タブの「フォルダーをリセット」ボタンをクリックすると、「この種類のすべてのフォルダーの設定を、既定の表示設定に戻しますか?」というメッセージが現れる。「リセット」は既定に戻すための作業なので、「はい」をクリックする。するとフォルダーの表示形式が、すぐに「並べて表示」に切り替わるため、リセットされたことを確認できるはずだ。ポイントはウィンドウサイズに変化が生じない点。このように表示形式はリセットできるものの、ウィンドウサイズはそのままなのである。○表示形式を全体に適用する先ほどの手順では、フォルダーオプションダイアログの「フォルダーに適用」ボタンがグレーアウトしているため選択できない。これはフォルダーオプションダイアログを開いたフォルダーの場所が影響しているからだ。この問題は、「PC」以外のフォルダーを開いた状態でフォルダーオプションダイアログを呼び出せば解決する。その前にウィンドウサイズを自身の好みに応じて変更しよう。今回は「詳細」を選択するが、列を右クリック/長押しし、メニューから「すべての列のサイズを自動的に変更する」を選択すると便利だ。後はダイアログの「フォルダーに適用」ボタンをクリック/タップすれば、すべてのフォルダーに対してウィンドウサイズと表示形式を適用できる。阿久津良和(Cactus)
2014年10月25日●文化変革、5つのスローガン日本マイクロソフトは、IT技術者向けのカンファレンスを例年開催している。同社にとって年に1度の最大規模を誇るイベントだが、今年もその季節がやってきた。10月23日に都内で開催した「The Microsoft Conference 2014」は、2日間で82セッションという内容だ。事前登録者は8,400名を超え、基調講演には立ち見客が出るほどだった。○企業文化を変革し、新たなIT時代を目指す日本マイクロソフト登壇した日本マイクロソフト代表執行役 社長の樋口泰行氏はまず、「どこの会社も改革を進めるためには企業文化を変化させなければならないが、(Microsoftおよび日本マイクロソフトは)現在のITにおける大きな柱となる『モバイル』『クラウド』に軸足を置くという展望の元、企業文化を変えていく」と述べた。スライドに映し出された「マイクロソフトの文化変革」は、5つのスローガンをピックアップ。「チャレンジャー精神」は、WindowsやOffice製品で成功してきた過去があるものの、その成功にあぐらをかいてチャレンジ精神を失っているのではないか、という考えを現している。これは前CEOだったSteve Ballmer氏がタブレットなどに押し込まれた2013年までの状況も影響しているのだろう。「お客様第一主義」だが、収入はお客様からいただいているからこそ、そちらに顔を向けなければならない、という至極まっとうな意見だ。これは過去の日本マイクロソフトが顧客に顔を向けていなかったというよりも、後述するコンシューマー視点を強化したいという意思の表れだろう。「学ぶ姿勢・チームワーク」は常に変化する状況に対応し、個人プレイではなくチームで、時には自分の責任範囲ではないこともカバーする意味だと樋口氏は説明した。近年の日本マイクロソフトは、Windowsにこだわらないマルチプラットフォームへの対応や、Microsoft AzureとDockerの提携など柔軟な姿勢に移行しつつある。パートナー企業との連携がさらに増えたことから、このようなスローガンにいたったのではないだろうか。冒頭のチャレンジャー精神と重なるが、「現実を踏まえた戦略」は現状を現す適切なスローガンだ。樋口氏いわく、過去はWindows一本槍で、それ以外は認めない排他的な姿勢だったと述べつつ、皆がiOSやAndroidを使うのなら自社製品を展開する。Microsoft Azureも他社製ソリューションを搭載可能にするなど、全方面へのアプローチを行うことでユーザーのメリットにつながるという。最後の「『光る』会社に」は具体的な説明がなかったものの、新CEO・Satya Nadella氏の就任から半年強が過ぎ、自身を含む社員も企業文化変革を期待しているという。さらに「Microsoft Japan Partner Conference 2014」で発言した後出しジャンケン的な話題も再登場した。樋口氏は「モバイルやクラウド分野でも(WindowsやOfficeが成功したように)同様の展開を目指したい」とまとめている。続けて「マイクロソフトのコア(核)」というテーマで自社の方向性を説明した。「B2B(法人向けビジネス)とB2C(個人向けビジネス)の両者の文化に対応できる企業は少ない」(樋口氏)とし、相反する部分もあるB2BとB2Cのビジネスを両立するため、両者の垣根を崩せるソリューションを提供する企業を目指すという。さらに1964年の東京オリンピックを引用し、50年前と現在を比べてワークスタイルやライフスタイルの変化について語った。一昔前は「出張に出ればこっちのもんや」といわれることもあったが(羽目を外せるというニュアンスを含む)、今では飛行機の中でもLyncでビデオ会議をしている人を見かけたという。「仕事」がついて回る状況については、デジタルデトックス(PCやスマートフォンを使わない脱デジタルの時間を持つ健康法)が重要視されつつあるが、(ビジネスの)オンタイムは生産性をさらに向上させ、オフタイムの過ごし方という両者を考え直さなければならない、と持論を語った。この他にも法人向けタブレットの市場拡大やタブレット用OSのシェアなどについて言及し、最後に自社製品の導入事例として、大手コンビニエンスストアフランチャイザーのローソンや、大手医薬品メーカーの中外製薬などを紹介した。●Windows Phone 8.1も登場した最新デモンストレーション(その1)○Windows Phone 8.1も登場した最新デモンストレーション次に登壇したのは、日本マイクロソフト 事業執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏。昨年のThe Microsoft Conference 2013と同じく、各種デモンストレーションを担当した。最初は会場に展示したWindowsタブレットとして、Adobeの「Adobe MAX 2014」で披露した「VAIO Prototype Tablet PC」や、パナソニックの「TOUGHPAD 4K UT-MA6」を紹介しつつ、自社製品であるSurface Pro 3のアピールは忘れなかった。Surface Pro 3は、Surface Pro 2の11倍の売り上げを達成し、法人向けも好調だという。最初のデモンストレーションは、一体型マルチ決済機能付きタブレット。クレジットカードや非接触型の電子マネーカードを使って、購入品や飲食代の決済を可能にするシステムだ。iPadなどと連携した決済システムは飲食店でも見かけるが、Windowsベースのオールインワンデバイスは日本初である。Windows Embedded 8.1 Industryを搭載したエンパシ製のEM10を用いた決済シーンでは、売り上げ管理なども披露した。次は「Microsoft 3D Printing」と題した3Dプリンターだ。Windows 8時代からDirectXの技術を駆使したシステムとしてアピールしていたため、覚えている方も少なくないだろう。会場では3D SystemsのCube 3を使い、Windowsタブレットから造形を行った。3Dプリンターの普及をMicrosoft/日本マイクロソフトが後押しするとなると、色々と面白くなるだろう。なお、Microsoftは3Dファイル最適化サービスとして、Model Repair Serviceも提供している。ここで登壇者は樋口氏に戻り、エンタープライズ系の話題へと移るのだが、本稿では西脇氏のプレゼンテーションを追いかけることにしよう。●Windows Phone 8.1も登場した最新デモンストレーション(その2)会場では、「リアサカLIVE Jリーグ」「Jリーグ動画アーカイブ」という、2つのWindowsストアアプリを紹介した。前者はW杯でも登場したWindowsストアアプリのJリーグ版、後者はJリーグメディアプロモーションが公開中のコンテンツをWindowsストアアプリベースで視聴可能にしたものだ。なお、当初からXbox One版もアナウンスしていたため、Xbox One上での動作も披露していた。ゲストピーカーとして登壇した楽天CTO(最高技術責任者)のJames Chen氏が語ったのは、英語に日本語の字幕を付けるデモンストレーションだ。Microsoft Researchが開発した「MAVIS」(Microsoft Audio Video Indexing Services)という、動画にインデックスを付けるシステムを利用している。動画上の音声をテキストとして抜き出し、Microsoft Azure Media Services経由でキーワード化したのち、Bing翻訳を用いることで半リアルタイムに翻訳を可能にしているという。西脇氏は動画検索にも活用できると本技術の可能性を語っていた。この流れからSkypeのリアルタイム翻訳の動画も放映した。こちらの技術に関しては、筆者が寄稿した6月の記事で述べているので合わせてご覧いただきたい10月早々に発表したコンテンツ制作ツール「Office Sway」も紹介。スマートフォンなどで撮影した写真のような各種コンテンツをアプリケーション内で配置し、Webページを作るというもの。Microsoft製品に詳しい方は、直感的な「FrontPage」といえば分かりやすいだろうか。さらに会場では、iPhone版Office Swayも披露した。最後はOSに関する説明だ。1つ目はWindows Phone 8.1である。音声アシスタント「Cortana(コルタナ)」によるアラーム登録や、アプリケーション起動のデモンストレーションを行った。注目するのは、1回目に失敗したアプリケーション起動が、2回目には正しく動作(起動)した点だ。Cortanaは機械学習技術と知識レポジトリ「Satori」(Bingでも採用中)を用いて学習し、場面に応じた適応能力を備えている。西脇氏のデモンストレーションは、まさにその適応能力を示す結果となった。合わせて、Winodws Phone 8.1が備えるWord Flow Keyboardも披露。BUILD 2014のKeyNote初日に、Joe Belfiore氏が紹介したことでも有名な機能であり、ソフトウェアキーボードをなぞるだけで単語入力が可能になる。これは英語という基本26文字のアルファベットだから可能な技術であり、日本語で実現するのはかなり難しそうだが、将来性をアピールするという点では魅力的な内容だった。もう1つはもちろんWindows 10。ただし、現在Windows 10テクニカルプレビューを提供中であることと、時間が足りなかったためか、特に重要なことは語られなかった。今年も魅力的なデモンストレーションやプレゼンテーションを披露した日本マイクロソフトだが、米国では来年4月にBuild 2015、5月にはMicrosoft Ignite、6月には日本でde:codeの開催と、イベントがめじろ押しだ。まずはThe Microsoft Conference 2014の公式サイトにて、公開予定のセッション動画や資料にアクセスしてみてはいかがだろうか。阿久津良和(Cactus)
2014年10月24日Windows 8.1を使う上で欠かせないのは「ピン留め」機能だ。2015年に登場する予定のWindows 10はデスクトップ環境を強化しているが、Windows 8.1も工夫を重ねることで、便利なデスクトップ環境を構築できる。今回はタスクバーへのピン留めに関するTipsを紹介しよう。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○ピン留めは以前から導入されていた?「ピン留め」という機能はWindows 8から導入されたと思いがちだが、実は以前から存在する概念だ。Windows 3.x時代も「Pin」という単語が使われていたように記憶しているが、今回確認できたのはWindows XP時代である。Windows XPにおいて、「Shift」キーを押しながら実行形式ファイルを右クリックすると、「[スタート]メニューにアイコンを追加」という項目が現れる。これを英語版Windows XPで確認すると、「Pin to Start Menu」だ。このように、ピン留めという概念は、以前からWindowsで使われてきた。○アプリビューからピン留めするWindows 8時代、アプリケーションをインストールするとスタート画面へ自動的にピン留めしていたため、煩雑な印象を覚えた方も少なくないだろう。その点を考慮してWindows 8.1は、自動的にピン留めすることをやめて、アプリビューなどからピン留め操作をするようになった。○各所からピン留めするアプリケーションをタスクバーへピン留めする手順は基本的に同じだが、いろいろな場所から実行できることをご存じだろうか。前述のアプリビューだけでなく、スタート画面のタイルやデスクトップのショートカットファイル(もしくは実行形式ファイル)、検索結果からもピン留めが可能だ。特にデスクトップ(厳密にはエクスプローラー)で操作する場合、メニューのアクセラレータキーを利用すると、スムーズにピン留めできる。アプリケーションを選択した状態で「App(アプリケーション)」キー→「K」キーと順番に押せばピン留め可能だ。○ボタンはドラッグ&ドロップで入れ替えるピン留めしたアプリケーション(ボタン)がタスクバーに並んだら、適切な位置に入れ替えよう。使用頻度の高いボタンを左側に寄せると使いやすくなる。その理由がショートカットキーの存在だ。各ボタンには「Win」+「1」から「9」キーが割り当てられており、未起動時はアプリケーションを起動。起動済みの場合はアクティブウィンドウを切り替える。このようにタスクバーのボタンを使いこなせば、Windows 8.1のデスクトップもより使いやすくなるだろう。阿久津良和(Cactus)
2014年10月24日●各種Webブラウザの対策法は?○SSL 3.0に脆弱性、各種Webブラウザの対策法は?誤解を恐れずに述べると、セキュリティに対して敏感になるには、"偏執的"にならなければならない。どこにセキュリティホールが埋もれているか、いつ誰が自社のシステムに攻撃を試みるか"妄想"を抱えつつ、開始や対策を講じる必要があるからだ。もちろん筆者を含めた大体数のユーザーが、その域に達するのは難しい話である。だが、近年はセキュリティ脅威も拡大傾向にあり、個人ならオンラインバンキングからの不正送金や情報漏洩など、「知らなかった」では済まされない状況になりつつあるのだ。このような話をした理由は9月中旬、SSL 3.0の脆弱性が発覚したからである。今回、脆弱性を発見したのはGoogleの研究者。SSL 3.0およびOpenSSL 1.0.1iを特定(CBC)モードで使用した際に攻撃が可能になる「POODLE (Padding Oracle On Downgraded Legacy Encryption)」という脆弱性を発見した。Microsoftおよび日本マイクロソフトは、マイクロソフト セキュリティ アドバイザリ(3009008)を公開し、グループポリシーエディターやInternet Explorer 11のオプションダイアログからSSL 2.0、SSL 3.0の無効化およびTLS 1.0、TLS 1.1、TLS 1.2の有効化を推奨している。Mozilla Foundationは次のバージョンとなるMozilla Firefox 34でSSL 3.0のサポートを終了し、11月25日までにリリースする。なお、現行版であるMozilla Firefox 33の場合、about:configから「security.tls.version.min」の値を「1」に変更することで、SSL 3.0を使わずTLS 1.0以降を使用する。Google Chromeは、以前からSSL 3.0に関する脆弱性を未然に防ぐ技術「TLS_FALLBACK_SCSV」を導入しているため、問題ないとアナウンスした。忘れがちなのがJava SEである。バージョン7u67で確認したところ、Internet Explorer 11と同じくSSL 3.0は有効、TLS 1.0/1.1/1.2が無効だったため、対策を講じるためには、これらの設定も変更すべきだ。●SHA-1サポート終了を前に○SHA-1サポート終了を前にさて、ポイントはSHA-1の存在だ。SSL/TLSは、SSLサーバー証明書から取り出したWebサーバーの公開鍵を取り出し、それを元にランダムデータの生成や暗号化を行っている。その際、送信するデータレコードは番号や共通鍵、データからMAC(メッセージ認証コード)を算出したデータを付加するのが通例だが、ここで改ざん検出に用いるアルゴリズムがMD5やSHA-1、SHA-2などだ。しかし、すでにMD5は2004年の時点で、SHA-1は2005年頃からコリジョンアタックと呼ばれる攻撃方法が確立し、SHA-1の使用は推奨されていない。NIST(米国立標準技術研究所)も2010年までの移行を勧告していたが、2012年1月の時点で移行が進まないため、"非推奨"という表現に変更した。移行が遅々として進まなかった理由として、被害に遭うユーザーが皆無だった点が1つ。NISTは政府機関ながらも法的な勧告でなかったことが挙げられる。さらにMicrosoftもSHA-1を利用した証明書のサポートを2017年で中止すると、2013年11月に発表した。蛇足だが早期からSHA-2への移行を促した民間企業はMicrosoftのみ。Google ChromeがSHA-1サポート中止スケジュールをし発表したのはつい最近、2014年9月のことだった。具体的には2016年1月1日以降は、SHA-1を利用したSSL/TLS証明書およびコード署名証明書の新規発行を中止し、場合によってはMicrosoftが管理するルート証明書プログラムメンバーから、証明機関としての登録除外も予定している。さらに2016年1月1日以降のタイムスタンプで署名した証明書/コード署名はWindowsで利用できなくなる予定だ。そして2017年1月1日以降はSSL証明書も使用できなくなるという具合だが、日本マイクロソフトのセキュリティチームの記事によれば、2015年7月の時点で移行状況を再確認し、処置の見直しも予定しているという。現在SHA-1廃止に関してコミットしているのは、Microsoft/日本マイクロソフトだけではない。2014年以降は、証明書サービスを提供する企業も移行を促すアナウンスや対策を講じている。先日とあるインターネットセキュリティ事業者を取材したが担当者は、ホスティングサービスを提供する顧客へのアピールが忙しい旨を語っていた。あと2カ月で2014年も終わり、SHA-1を利用した各種証明書の新規/更新/再発行は残り1年で終了する。既に多くのWebブラウザーや有名なWebサーバーもSHA-2への対応は完了し、エンドユーザー側が起こすべきアクションはない。あとはWebサイトを設置するコンテンツ提供側の早期対応が望まれる。このようにセキュリティ界隈は進化に伴う変化が生じ、ソフトウェア開発者やサービス提供者はもちろん、ユーザーも新しい情報を敏感に感じ取らなければならない。特にPCを中心としたITに関わるユーザーは、常日頃からセキュリティ情報に対して、鋭敏なアンテナを張る必要があるだろう。阿久津良和(Cactus)
2014年10月20日従来のWinodwsはローカルデバイス全体を対象にしたフルバックアップが基本だったが、Windows 8以降はシステムファイルを初期状態にする「PCのリフレッシュ」などが加わり、フルバックアップの必要性が低下した。PCを利用する上でバックアップは不可欠だが、その際に役立つのが「ファイル履歴」だ。今回で一区切り、最後にバックアップデータの保持期間と削除方法について紹介しよう。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○バックアップの保持期間はどれが適切か?ファイル履歴のバックアップデータ保持期間は、「無期限」を既定値としている。誤って破損や削除したファイルを、時をさかのぼって復元するというコンセプトを踏まえれば、間違いではない。だが、バックアップ先となるストレージの容量は有限だ。バックアップ元(ドキュメントフォルダーやデスクトップなど)によって必要な容量は異なるものの、筆者が普段から使っているPCのバックアップデータは、283GB、約17万ファイルと約5千のフォルダーが含まれている。バックアップデータの保存期間を1カ月に制限しても、だ。バックアップデータの保存期間は「詳細設定」の「保存されたバージョンを保持する期間」で設定する。最短1カ月から無期限、もしくは「保存容量が足りなくなるまで」、保存期間を選択できる。気になるのは、どれが適切な設定値なのかという点だろう。こちらも使用スタイルで異なり、他のバックアップツールを併用している場合は1カ月でも構わない。バックアップは「ファイル履歴」機能だけで済ませるという場合は、ファイル履歴専用のストレージを用意し、「無期限」や「領域が足りなくなるまで」を選択すると安全性が増すだろう。○古いバックアップデータをクリアするバックアップデータの保存容量が大きくなりすぎた場合、一時的に削除する機能も用意されている。こちらを使えば、1/3/6/9/12/24カ月以前、もしくは最新以外の全バックアップデータを削除することも可能だ。当初はバックアップ保持期間を「無期限」にし、バックアップ専用ストレージの空き容量を見据えながら、空き容量が足りなくなったらクリーンアップ機能でバックアップデータを削除する……。この方法を使うことで、使用中のストレージ容量に対して適切なバックアップデータの保持期間を見いだせるはずだ。○オフラインキャッシュとは「詳細設定」の画面をながめていると、もう1つ気になる項目が存在する。それが「オフラインキャッシュのサイズ」だ。バックアップデータの保存先として、ネットワーク上の共有フォルダーや取り外し可能な外付けドライブを選択している際に利用する、キャッシュファイルのサイズである。例えば、外付けドライブを接続していなかったり、ネットワークがオフラインだったりした場合、1度ホストドライブ(通常はCドライブ)にキャッシュファイルを作成する。バックアップデータの保存先ストレージが認識されると、キャッシュファイルをコピーしたのち、キャッシュファイルを削除する仕組みだ。仮にホストドライブ(に作成するキャッシュファイル用)の空き容量が足りないと、一部のファイルがバックアップできない問題が発生してしまう。場合にもよるが、128GBや256GBくらいのSSDを使っているなら、注意すべきポイントだ。キャッシュ容量の既定値はディスク容量の5%だが、環境に合わせて10%や20%を選択することをおすすめしたい。逆に、常に接続しているローカルドライブをバックアップ保存先にしている場合、オフラインキャッシュファイルは基本的に使用しないため、2%を選択しておくとよいだろう。阿久津良和(Cactus)
2014年10月19日従来のWinodwsはローカルデバイス全体を対象にしたフルバックアップが基本だったが、Windows 8以降はシステムファイルを初期状態にする「PCのリフレッシュ」などが加わり、フルバックアップの必要性が低下した。PCを利用する上でバックアップは不可欠だが、その際に役立つのが「ファイル履歴」だ。今回はファイル履歴機能に関する設定ポイントを紹介しよう。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○バックアップから除外するフォルダーを指定するファイル履歴は、デスクトップやドキュメントフォルダー、OneDriveフォルダーなど各所に格納したファイルをバックアップ対象としている。しかし、それらの中に一時フォルダーを含んでいる場合や、バックアップデータのサイズを抑えたい場合、「除外するフォルダー」機能が役に立つ。あらかじめ任意のフォルダーを指定することで、バックアップ対象に含めないというものだ。ただし、一般的なバックアップ機能のように、ファイルの拡張子やワイルドカードを使った除外方法は選択できない。少し脱線するが、Windows 7まではファイルやフォルダーのプロパティダイアログに「以前のバージョン」タブが用意されていた。これはバックアップ時や復元ポイント作成時に作成したスナップショットを用いて、以前の状態からファイル/フォルダーを復元する機能だ。Windows 7を使っていた、または今も使っているなら、お世話になったことのある方も少なくないだろう。Windows 8 / 8.1は、ファイルやフォルダーのプロパティダイアログから「以前のバージョン」タブを取り外した。しかし、先ごろ公開された「Windows 10テクニカルプレビュー」では、「Previous Versions(以前のバージョン)」タブが復活している。もっとも、復元ポイントを作成しても、またはファイル履歴によるバックアップを作成しても、ダイアログの内容は更新されない。たまたまコードが含まれたのか、正式版で機能を復活するつもりなのか定かではない。○バックアップ実行間隔を指定するさて、ファイル履歴によるバックアップ実行間隔は「1時間」を既定値としている。「詳細設定」から開く設定項目からは、最小10分から1日1回まで変更できるが、通常であれば初期状態で問題ない。履歴を参照してバックアップを透過的に実行するのであれば、より間隔が短い10分ごとに変更すべきだろう。ファイル履歴は変更が加わっていないファイルはスキップし、ファイルサイズやタイムスタンプが異なるファイルだけをバックアップ対象としているため、初回のバックアップアップ作成時以外は、PCへの負荷もさほど高くない。上図はSSDおよびHDD上にあるユーザーデータを、ファイル履歴の機能によってHDD(バックアップ先)へコピーされたときのグラフだ。svchost.exeから呼び出されるFile History Service(fhsvc)プロセスが、数秒ほど突出していることが分かる。WordやExcelで書類を作成している程度であれば、上記の一時的な負荷も「バックアップが始まった」と分かる程度で済む。しかし、ブルーレイビデオ視聴やPCゲームなど、PCへのちょっとした負荷が悪影響をおよぼす可能性がある場面では困る。保存先として共有フォルダーを選択した場合は、ネットワークトラフィックが増大するため、ネットワークを利用するアプリケーションにも悪い影響を与えるかもしれない。そのため最初は、ファイル履歴によるバックアップ間隔として「10分ごと」を選択し、お使いのPCでバックアップ時の負荷を体感してみるとよい。ある程度分かってきたところで、許容できるタイミングを選択すると、適切なバックアップ環境を構築できるだろう。阿久津良和(Cactus)
2014年10月18日●クラウドに一番近い場所で新Officeイベント - 「Office Premium」搭載PCと「Office 365 Solo」発売○クラウドに一番近い場所で新Officeを既報の通り、本日10月17日から、「Office Premium」プレインストールPCと「Office 365 Solo」のリリースが始まる。その発売を記念して日本マイクロソフトは、「日本のパソコンが変わる」と題したイベントを、東京スカイツリータウンのプラネタリウム「天空」(コニカミノルタ提供)にて開催した。最初に登壇した日本マイクロソフト 執行役専務 マーケティング&オペレーションズ担当の平野拓也氏は、「『クラウド』に一番近い(宇宙をイメージできる)、プラネタリウムという場所を選んだ」と語りかけ、訪れた報道陣をなごませた。続けて「3年ぶりに欧州から日本に帰国し、日本のデバイス環境が大きく変化したことに深く感慨を覚えた」としつつ、「街中で皆がスマートフォンやタブレットを使いこなしているが、デジタルライフを充実させるには、スマートフォン&タブレットだけでは足りず、3Cと呼ばれる『使う・つながる・作る』を満たすためにPCが欠かせないことを再確認した」とも。さらに日本マイクロソフトの視点に立てば、日本がユニークな市場であることについても言及した。Microsoft OfficeをプレインストールするPCが支持を集めるのは日本特有であり、高品質なPCを求めるユーザーが多いことも特徴的だという。Office PremiumおよびOffice 365 Soloに関する説明は、Officeビジネス本部プロダクトマネージャの中川智景氏が行った。基本的には、10月1日の日本マイクロソフト発表会レポートと同じ内容だ。中川氏は、サブスクリプション型のOffice 365サービスを提供することによって、ユーザーがローカルに存在していたアプリケーションやデータがクラウドに移行し、好みのタイミングでデバイスを利用可能になることを強調。そして従来の「デバイス+ソフトウェア」から、「デバイス+ソフトウェア、そしてサービス」の時代に移行しつつあると語った。ここでOffice PremiumおよびOffice 365 Soloについて少し解説しよう。前者はPCにライセンスが紐付き、デスクトップアプリのWordやExcelは永続ライセンスを取得できるが(常に最新版へアップデートされる)、PCを買い換えたり破棄した場合、ライセンスは消滅する。そしてOffice 365を筆頭に、OneDriveの1TB容量プラスやSkypeの1時間/月の通話、Office for iPadを含むマルチデバイスの提供といったサービスは、Microsoftアカウントに紐付く。そのため、家族で1台のPCを共有する場合、デスクトップアプリのOffice Premiumはみんなで利用可能だが、前述したサービス群は1つのMicrosoftアカウントで利用し、1年ごとの更新(参考価格:5,800円)が必要となる。Office 365 Soloは、自作PCや非Office PremiumプレインストールPCを購入したユーザー向け製品だ。ただし、従来のようなパッケージではなく、コンビニエンスストアなどで見かけるPOSA(Point of Sales Activation)で提供する。Office 365 Soloは、デスクトップアプリおよびOffice 365、そして各種サービスに対するライセンスは1年限りだ。2年目以降は、Office Premiumと同じく更新(参考価格:11,800円)が必要だ。Office Premiumとの違いとして、WordやExcelなどのデスクトップアプリも、1年ごとのライセンス更新になる点を覚えておきたい。個人的には、従来の(サポート期間が続く限りの)永続ライセンスに慣れているため、煩雑な印象が残るのが正直な感想だ。しかし、中川氏は今後Office Premiumが浸透することで、大多数のユーザーがクラウドを使用する利便性を肌で感じ、PCを含めたデジタルライフが大きく変化すると予測。さらにクラウドの普及はライフスタイルの変革につながり、各個人の生産性向上にもつながると語った。この背景には以前から日本マイクロソフトの関係者が語るとおり、国内プレインストールモデルの大々的な普及や、商業利用権という他国では見られない、日本固有の市場が大きく影響しているのだろう。●PCベンダーと小林麻耶さん・麻央さん姉妹が駆けつけた○今後のPC需要に展望を見いだすマイクロソフトとPCベンダー陣さらに会場では、Office Premium搭載PCをリリースするPCベンダーのキーマンを招き、トークセッションを開催した。冒頭、日本マイクロソフト 執行役 コンシューマー&パートナーグループ ゼネラルマネージャの高橋美波氏は、PCベンダーを筆頭にしたパートナー企業との連携を強調。2014年末までに、10社から300機種以上(10月16日時点)のOffice Premium搭載PCがリリースされる述べた。司会役を担当した日本マイクロソフト 執行役 コンシューマー&パートナーグループ オフィスプレインストール事業統括本部長の宗像淳氏は、今回の会場(プラネタリウム)を選んだ1つの理由として、Office PremiumおよびOffice 365 Soloの開発コードを「Gemini」(ジェミニ:双子座)と名付けていたことを紹介。会場となったコニカミノルタプラネタリウム「天空」の投影機名も、「ジェミニスター」という。トークセッションに登場したPCベンダーとキーマンは、NECパーソナルコンピュータ 取締役 執行役員常務の留目真伸氏、東芝 国内営業東海部 部長の長島忠浩氏、富士通 ユビキタスビジネス戦略本部 本部長の高木達也氏だ。「PCというハードウェアと新しいOfficeの融合」という質問にNECの留目氏は、今回秋冬モデルを一新しつつ、多彩な顧客にニーズに応えるため、モバイルPCのラインナップを強化とアピール。東芝の長島氏も同様に、秋冬モデルを一新し、スマートフォンやタブレットが台頭する現状を踏まえ、コンテンツを制作する上でPCの可能性を改めて強調した。ユーザーの多様化するニーズに応えるため、4K搭載ノートPCから値頃感のあるモバイルPCをそろえたという。さらに年末にはペン対応デバイスのリリースも予定しているそうだ。富士通の高木氏は、あくまでユーザーの立場に立って、子どもでも簡単に角度を変えられるアジャストスライダーを搭載した一体型デスクトップPCのESPRIMO WH77/Sをアピールした。3Dカメラを搭載し、家族で使って楽しいPCを目指したという。筆者の興味を引いたのは、スマートフォン/タブレットの普及当初はPC市場が追いやられていたが、マルチデバイスによる使い分けが普及しつつ、PCが情報の中心に戻るのではないか、という宗像氏の質問である。クリエイティブを実現してきたデバイスであるPCと、スマートフォン/タブレットの役割は大きく異なっているのは、改めて述べるまでもない。その回答として留目氏は、日本のデジタルライフが変わると強調した。現状を踏まえると多くのアナログデータがデジタル化されず、とどまっているいう。そして、大多数のユーザーは本来の楽しみを享受していないのでは、と提言した。新しいOfficeやクラウド時代に沿ったPCの登場で、日本人固有の生活に見合ったデジタルライフをベンダー側から提案するのが大事だと述べた。長島氏の発言も興味深い。ちょうど1年前はWindows XPのサポート終了と重なる時期で、東芝でも買い換え促進キャンペーンを行ったが、(同社顧客の)半分ぐらいがPCを押し入れにしまい込んでいるのでは、と思うほど不調だったという。だが、サポート終了に伴う買い換え需要を見渡すと、75%程度のユーザーがPCを買い換え、改めてPCが不可欠な存在であること認識したそうだ。以下は、タッチ&トライコーナーに展示されていた、各社のOffice Premium搭載PC。ユーザーとして気になる点の1つに、既存のOffice 2013との関係があるだろう。日本マイクロソフトは、今後もOffice 2013を継続して販売していく。その理由として宗像氏は、バージョンコントロールを求めるユーザーニーズに対応するためと回答した。我々は永続ライセンスを持つデスクトップアプリ版と、クラウドアプリケーションへの移行のいずれかを、自身の利用スタイルや利便性を踏まえて選択する岐路に立たされたともいえるだろう。○小林麻耶さん・麻央さん姉妹トークセッションとフォトセッション会場には、ゲストとしてフリーアナウンサーの小林麻耶さんと麻央さんの姉妹が。お二人とも写真をよく撮っては見るそうで、1TBのOneDriveには一体どれだけの写真を保存できるのかという話題に、目を丸くしていた。Skypeは海外通話に使いたいという。阿久津良和(Cactus)
2014年10月17日○まもなく標準化するHTTP/2のサポート状況我々が普段閲覧しているWebページの表示には、HTTPという、WebサーバーとWebブラウザー間でデータの送受信を行う通信プロトコルが欠かせない。起源をさかのぼれば、ハイパーテキストやXanaduプロジェクトなど数多くあれど、ドキュメントとして残されたのは1991年のHTTP 0.9が最初だ。そのドキュメントは現在でもWorld Wide Web ConsortiumのWebページで閲覧できる。現行のHTTP/1.1がRFC 2616として定められたのは1999年だが、既に15年もの月日が経っている。そのためIETFに所属するHTTPbis WGは、GoogleのSPDYプロトコルをベースにしたHTTP/2を2012年11月に発表。そして先日、Microsoftは、Windows 10テクニカルプレビューに搭載したInternet ExplorerがHTTP/2に対応していることを明らかにした。Webブラウザー側の実装が始まりつつあるのだ。まずはHTTP/2の特徴を解説しよう。従来のHTTP/1.1はWebサーバーとデータ送受信を行う際、Webクライアントはサーバーにリクエストを送信し、その結果WebサーバーはレスポンスをWebクライアントへ送信する。この繰り返しにより、Webページの表示を行うため、必然的に通信量の増加も発生する。HTTP/2はWebサーバーとWebクライアント間のTCPセッション(コネクション)を多重化することで、パフォーマンスの向上を実現した。ストリームと呼ばれる仮想的な通信路を用いた結果、従来は複数張られていたコネクションを1つで済ませている。HTTP/2への対応は通信量の軽減につながるため、スマートフォンなど外出先でのネットワーク環境も向上しそうだ。実のところHTTP/1.1でもパイプラインという解決法を用いていたが、レスポンスの順番を変更できないため、完全な問題解決には至らなかった。その他にもプロトコルの内容もテキストベースからバイナリベースへ変更し、ヘッダー圧縮やサーバープッシュといった機能も備えている。気になるのはHTTP/2対応がどこまで進んでいるかという点だ。前述したSPDYベースでGoogleをはじめとする大手Webサイトは対応していたが、HTTP/2の標準化に伴い、TwitterやYahoo! JAPANはHTTP/2への取り組みを表明済み。クライアント側もGoogle Chorome Canary版やMozilla Firefox Nightlyビルド、そして冒頭で述べたInternet Explorer for Windows 10テクニカルプレビューが対応している。なお、プレビュー版の配布を開始したWindows ServerテクニカルプレビューのIISも対応するという。○さらなるJavaScriptのパフォーマンス向上プロトコルの高速化による恩恵はWebサーバー側の対応が待たなくてはならないが、エンドユーザーレベルでもメリットを享受できるのが、JavaScriptエンジンのパフォーマンス向上だ。もともとInternet Explorerは、長年「Chakra(チャクラ)」というJavaScriptエンジンを搭載している。そのJavaScriptは、逐次解析しながら実行するインタプリタ方式が一般的だったが、近年は実行前にコンパイルして処理を高速化するJIT(Just-in-Time)コンパイラを備えるようになった。Internet Explorerはバージョン9からJITコンパイラを実装済みである。バージョンを重ねるごとにJITコンパイラの最適化を進めてきたが、今回もさらなる改善を加えた。その一つがシンプル化。Windows 8/8.1のInternet Explorer 11は少々煩雑なプロセスを経てソースコードをJITコンパイラに渡していたが、Internet Explorer for Windows 10テクニカルプレビューは、最適化時に複雑なコード生成を避けることでシンプル化を実現した。開発チームは文字どおり「Simple JIT」と読んでいる。もう一つの改善点は、実行デバイスを認識してJITスレッドを複数実行する仕組みを導入した点だ。Windows 10が再統合を目指したOSであることは過去のレポートでも紹介したが、その際Internet Explorerは、マシンパワーが異なるデバイス上で動作することを想定しなければならない。そこでChakraにハードウェアを認識させ、ハードウェアリソースに余裕があるデバイスの場合は、複数のJITコンパイラを同時に実行する仕組みを導入させるという。開発チームによるとTypeScript(JavaScriptを拡張した言語)のパフォーマンスが最大30%高速化するそうだ。その他にもコードのインライン化機能を強化し、ガベージコレクションを改善するなど、数多くの改良が加わっている。HTTP/2のサポートはWebサーバー側の対応が必要だか、Chakraの最適化はWebサーバー管理者もコンテンツ作成者も関係なく、我々エンドユーザーの利益に結びつくことは明らかだろう。新たにInternet Explorer 12としてリリースするのか、バージョン番号を取り外すのか現時点で不明だが、Windows 10正式リリースの暁には、より快適なWeb閲覧環境を享受できそうだ。阿久津良和(Cactus)
2014年10月14日従来のWinodwsはローカルデバイス全体を対象にしたフルバックアップが基本だったが、Windows 8以降はシステムファイルを初期状態にする「PCのリフレッシュ」などが加わり、フルバックアップの必要性が低下した。PCを利用する上でバックアップは不可欠だが、その際に役立つのが「ファイル履歴」だ。今回はバックアップデータからの復元方法などを紹介しよう。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○ファイルを復元するファイル履歴で作成したバックアップデータからファイルを復元するには、ナビゲーションウィンドウにある「個人用ファイルの復元」を選択し、新たに現れるウィンドウから実行する。バックアップの作成については前回を参照いただきたい。各ファイルは復元先(バックアップ元)のパスを保持しており、基本的にはバックアップ時と同じフォルダーにファイルを復元する仕組みだ。復元先に同一名のファイルやフォルダーが存在する場合、操作の選択をうながされる。その際は「ファイルごとに決定する」を選択し、「~ファイルをスキップする」をチェックオンにしてから、上書きするか否かをファイルごとに判断してほしい。○特定のファイルを復元するファイル履歴を使う上で意識しておきたいことは、世代バックアップに対応するためファイル名に変化を加えるが、基本的には単純にファイルをバックアップしている点だ。指定したドライブのルートに「FileHistory」フォルダーを作成し、サブフォルダーにはバックアップデータをそのまま格納している。そして、ファイル名にはUTC(協定世界時)ベースの日時を加えて、世代バックアップを実現する仕組みだ。さて、前述したファイル復元のウィンドウは、基本的にエクスプローラーベースで実行しているため、比較的柔軟な操作が行える。残念ながらドラッグ&ドロップによる復元はサポートしていないものの、メニューからファイル内容の確認や復元、フォルダーを指定した復元も可能だ。この仕組みと操作方法を覚えておけば、不意にファイルを上書き保存してしまった場合も、バックアップ間隔によっては以前のファイルを無事に取り出せるかもしれない。○バックアップ間隔を変更するファイル履歴のバックアップ間隔は既定値で1時間が選択されるが、この設定は詳細設定から変更可能だ。選択肢は、10分 / 15分 / 20分 / 30分 / 1時間 / 3時間 / 6時間 / 12時間 / 1日を用意している。前述した上書き保存によるデータ消失などに対応するためには、10分間隔に変更するといいだろう。ただし、10分ごとにI/O処理が発生するため、システムに対する負荷は多少なりとも高くなる。実行中のアプリケーションに悪影響をおよぼす可能性があることも承知してほしい。阿久津良和(Cactus)
2014年10月11日従来のWinodwsはローカルデバイス全体を対象にしたフルバックアップが基本だったが、Windows 8以降はシステムファイルを初期状態にする「PCのリフレッシュ」などが加わり、フルバックアップの必要性が低下した。PCを利用する上でバックアップは不可欠だが、その際に役立つのが「ファイル履歴」だ。その概要やバックアップ実行までを紹介しよう。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○ファイル履歴とはWindows 7以前は「バックアップと復元」を用いて、個人用ファイルやシステムイメージのバックアップを作成していた。Windows 8.1には「PCを初期状態に戻す」「リフレッシュする」機能があるため、基本的にシステムイメージは不要だ。そして新たに加わった「ファイル履歴」は、個人用ファイルだけを対象にしたバックアップ機能である。具体的には、一定時間ごとにドキュメントフォルダーなどを対象にミラーリングバックアップを実行するというものだ。さらにディスク容量が許す限り、更新前のファイルも残すため、時間をさかのぼってファイルを復元することも可能。対象となるフォルダーは下記の通りだが、その他にも自身が作成したライブラリーも対象に加わる。■「ファイル履歴」が対象とするフォルダー・ドキュメントフォルダー・ミュージックフォルダー・ピクチャフォルダー・ビデオフォルダー・デスクトップフォルダー・お気に入りフォルダー・アドレス帳フォルダー・OneDriveフォルダーでは、システムイメージのバックアップ機能は削除されたのかと言えば、答えは否。「ファイル履歴」のナビゲーションウィンドウに、「システムイメージバックアップ」として残されているのだ。ただしUEFI環境の場合、回復パーティションの容量不足に伴うイメージ作成エラーや、システムイメージによる復元失敗といったトラブルが多数報告されている点は覚えておきたい。いずれ機会を見て再検証したいが、現時点でフルバックアップを求める場合は標準機能ではなく、他のバックアップアプリケーションを用いた方が簡単だ。○ファイル履歴の保存先ファイル履歴はローカルディスクや、NASなどの共有フォルダーを保存先として利用できる。既定値では1時間ごとにバックアップを実行するため、常に稼働しているローカルディスクがベストな選択だ。だが、バックアップデータの安全性を考えれば、物理的に異なるNASなどを用いた方がよいという見方もある。無線LANなどネットワークの速度が遅い場合は、他の作業を阻害する可能性も出てくるため、注意してほしい。ローカルディスクをバックアップ先として利用する場合、「ファイル履歴」を起動し、「オンにする」ボタンをクリック/タップするだけだ。ネットワーク上の共有フォルダーを利用する場合は、ナビゲーションウィンドウの「ドライブの選択」から「ネットワークの場所の追加」、もしくは「ネットワーク上の場所をすべて表示」をクリック/タップし、保存先を選択する。○ファイル履歴を「オン」にするファイル履歴をオンにすると、すぐに初回のファイルコピーが始まる。前述したバックアップ元の容量によって所要時間は異なるが、数分から数10分待てば実行時刻を含んだメッセージに切り替わり、作業完了だ。後はスケジュールされたタスクを元に定期的なバックアップが行われる。なお、タスクは「\タスクスケジューラライブラリ\Microsoft\Windows\FileHistory」に登録する仕組みだ。バックアップのログ情報を確認する場合は、ナビゲーションウィンドウの「詳細設定」から、「ファイル履歴イベントログを開いて最新のイベントまたはエラーを表示する」をクリック/タップする。基本的にバックアップが正しく実行できている場合、ログは残らない。下図は別PCでファイル履歴を実行した際のイベントログだが、とあるアプリケーションのログファイルがロック中でバックアップに失敗→その後成功した、という処理が加わった情報が示されている。この他にもイベントログには、「MAX_PATH」というパスの最大値を超えたファイルがバックアップ対象に含まれる場合、エラーログが残ることを確認した。もし、お使いの環境で同様のイベントログ(イベントIDは100)が記録された場合は、ファイル名やフォルダー名の付け方を見直してみるとよいだろう。阿久津良和(Cactus)
2014年10月10日●仮想デスクトップを起動する仮想的なデスクトップを用意し、作業内容に応じてデスクトップを切り替える「仮想デスクトップ」は決して目新しいものではない。UNIX系なら以前からウィンドウマネージャーが仮想デスクトップ機能を備え、Windows XP時代もPowerToys XPの1つとして、Virtual Desktop Managerをリリースしていた。ついでに述べればMax OS Xもバージョン10.4からSpacesと呼ばれる仮想デスクトップ機能を表示搭載している。筆者が首をかしげるのは、なぜこのタイミングで搭載してきたのか、という点だ。前述のとおりMicrosoftのWindows開発チームは、仮想デスクトップの利便性を理解したからこそ、Virtual Desktop Managerをリリースしたのだろう。それなら続くWindows VistaやWindows 7に実装しても決しておかしくない。Windows 10に仮想デスクトップを実装した経緯や理由は不明だが、確かなのはWindows 10テクニカルプレビューの仮想デスクトップは、想像以上に使える機能ということだ。○仮想デスクトップを起動する前回述べたようにWindows 10テクニカルプレビューは、アプリケーションの切り替え方法として「Task view」を実装している。その際に画面下部へ現れるのが仮想デスクトップの作成リンクだ。「Add a desktop」と書かれた部分をクリックすると、自動的に2つめの仮想デスクトップが現れる。そして、その仮想デスクトップを選択すると、画面が切り替わるという仕組みだ。ここで気になったのが新たに起動したアプリケーションの動作である。本来であればアクティブな仮想デスクトップに映し出されるのが一般的だが、今回試したところ元のデスクトップに切り替わり、デスクトップアプリが起動してしまった。Linuxのウィンドウマネージャーが備える仮想デスクトップでは、あり得ない動作である。もちろんWindows 10テクニカルプレビューは完成品ではないものの、明らかにバグが潜んでいると理解するしかない。ちなみにPCを再起動し、再び同じ操作を試してみると、正新たに作成した仮想デスクトップで起動した。その一方で仮想デスクトップに切り替えた状態をタスクバーに示すのはよいアイディアだ。実行中のアプリケーションが存在する場合、タスクバーボタンの下部にちょっとした効果が加わっている。これなら無駄にアプリケーションを起動するような操作ミスは未然に防げるだろう。なお、タスクバーボタンをクリックすると、そのアプリケーションがアクティブなデスクトップに切り替わる。●アプリはTask view画面から移動可能 / ショートカットキーで操作○アプリはTask view画面から移動可能実行中のアプリケーションを特定の仮想デスクトップに移動する機能がないか探してみたところ、Windows 10テクニカルプレビューの場合は、Task view画面にのみ用意されていた。同画面のサムネイルなどを右クリックすると<Move to><Close>という2つの項目を持つコンテキストメニューが現れる。この状態から<Move to>→<Desktop {仮想デスクトップを示す番号}>と選択すれば、アプリケーションが指定した仮想デスクトップに移動する仕組みだ。この辺りはアプリケーションメニューやタイトルバーのコンテキストメニュー、ショートカットキーなどから実行可能になれば、もっと便利になるだろう。○ショートカットキーで仮想デスクトップを操作UNIXなどのOSで仮想デスクトップを使ってきたユーザーには、冗長な操作が気になるところだが、仮想デスクトップにまつわる機能の大半はショートカットキーが用意されている。たとえば新しい仮想デスクトップは[Win]+[Ctrl]+[D]キーを押せば作成可能だ。冒頭で紹介したマウス操作と異なり、ショートカットキーを押した時点で新たなデスクトップが開くため使い勝手はよい。ここでふっと気になったのが作成可能な仮想デスクトップ数である。先ほどのショートカットキーを延々と押してみると、40を超える仮想デスクトップの作成を確認できた。システムへの負荷も高いだろうとタスクマネージャーで監視していたが、デスクトップ描画システムであるDesktop Window Managerの負荷やメモリー消費量はさほど激しくない。厳密なベンチマークなどはRTM(Release To Manufacturing version)で確認したいところだが、気軽に使えるのは間違いなさそうだ。この他に用意されたショートカットキーだが、仮想デスクトップは[Win]+[Ctrl]+[←/→]キーで切り替える。ほぼ瞬時に切り替わるため、作業内容を把握している場合、順番に加工処理を加えなければならないような作業向きだ。また、仮想デスクトップを閉じる場合は[Win]+[Ctrl]+[F4]キーを押す。すると他の仮想デスクトップに表示させていたアプリケーションは直前の仮想デスクトップに移動する仕組みだ。このようにWindows 10テクニカルプレビューにおける仮想デスクトップは、横に並んだ2次元の仮想デスクトップが並ぶ概念を用いている。もっとも本機能がそのまま作業効率の向上につながるかと言えば、筆者は首をかしげざるを得ない。本来なら、仮想デスクトップは作業内容やアプリケーションごとにデスクトップを切り替えるが、Windowsの場合はアプリケーションの最小化や[Alt]+[Tab]キーによる切り替えで事足りたからだ。筆者もWindows XP時代はVirtual Desktop Managerを試していたが、いつの間にか使わなくなった経緯がある。今回述べてきたようにWindows 10テクニカルプレビューの仮想デスクトップ機能は、ユーザビリティ面で疑問や物足りなさを感じてしまった。だが、作業効率を向上させる方法が増えるのは歓迎だ。2015年中頃まで半年以上もあることを踏まえ、今後の改良を期待したい。阿久津良和(Cactus)■前回の記事はこちら・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第4回) - フラットデザインの強化と「Task view」
2014年10月09日●さらに強化したフラットデザイン古い話だがWindows XPリリース直後、Windows 2000に過剰な装飾を加えて動作が"重くなった"と愚痴るユーザーが少なくなかった。Windows XPの普及度を踏まえれば単なるPCのスペック不足から生まれた不満だったことは容易に想像できるだろう。その一方でWindows Vistaリリース後も同じような愚痴がメディアやネットに溢れかえった。結局のところラガード(Laggards)に属するユーザーはすべてにおいて保守的であり、革新的なハードウェア/ソフトウェアが登場しても、「○で十分」と思考停止を選択してしまう。もちろんユーザーニーズと製品の役割が合致していない場合はその限りではないものの、いつの時代も新たなものを受け付けないラガード層は存在する。なぜ、このような話から始めたかと言えば、Windows 10においても同様の論争が起きそうな気がしたからだ。○さらに強化したフラットデザインまずは下図をご覧頂きたい。これはWindows 95/XP/7、そしてWindows 10テクニカルプレビューのデスクトップを並べたものだ。時代ごとの流行を反映させ、ボタン1つとっても立体的なものからフラット化し、ウィンドウフレームも角張ったものから一度丸みを帯びている。そしてWindows 10テクニカルプレビューでは再びソリッドなデザインを採用した。世の中のUIデザインがフラット化に進んでいることは、Mac OS XやiOS、Androidといった他のOSを見れば時代の風潮であることは明らかである。さらに述べればWindows 8もフラットデザインを多用し、モダンUI自体がタイポグラフィを重視したデザインだ。良しあしに関しては好みに類するため割愛するが、Windows 10テクニカルプレビューを触って最初に気付くのは"ウィンドウの影"である。静止画では分かりにくいが、ウィンドウ上下左右の50ピクセル程度に影がかかっていることにお気付きだろうか。上図で言えばコントロールパネルの右側にあるバージョンダイアログや、右下にあるエクスプローラーに影がかかっている。以前からWindowsはタイトルバーでアクティブ/非アクティブウィンドウを見分けていたが、さらに影を強調することでウィンドウの重なり具合を直感的に把握可能になった。フラットデザインの採用は、WindowsというOSでは当たり前に存在していたウィンドウフレームが存在しないように見える。Windows 8/8.1では太く感じたウィンドウフレームのボーダーサイズだが、Windows 10テクニカルプレビューになると1ピクセルにまで縮小した。このボーダーサイズは、伝統的にHKEY_CURRENT_USER\Control Panel\Desktop\WindowMetricsキーの文字列値「PaddedBorderWidth」で制御し、Windows 8.1の既定値は「-60」である。Windows 10テクニカルプレビューも同値だったため、太くしてみようとデータを変更してみたが、変化を確認できなかった。まだ詳しく精査していないため、Windows 10が同文字列値を参照しないのか確認できないが、時節を踏まえると製品版までこのまま進みそうだ。なお、タスクバーの半透過処理はそのまま受け継がれている。さらに背景画像によってウィンドウフレームなどの配色が変化する点も同じだ。この範囲はスタートメニューに広がり、背景画像を濃くした配色が用いられる。この自動配色も個人の好みで評価が分かれるところだが、Windows 8.1と同じくカスタマイズ可能なため、大きな問題にはならないだろう。●稼働中のアプリケーションを切り替える「Task view」○稼働中のアプリケーションを切り替える「Task view」「クールスイッチ」「Windowsフリップ」など数々の呼称が用いてきたアプリケーション(タスク)切り替え機能だが、Windows 10テクニカルプレビューは「Task view(タスクビュー)」に改称している。さらに同機能を呼び出すためのボタンをタスクバーに用意した。スタートボタン、<Search(検索)>ボタン、<Task view>ボタンと並ぶと、Windows 95の開発コード名「Chicago」のデザインを思い出す方もおられるだろう。それはさておき、Task viewを実行するとデスクトップにアプリケーション名とアイコン、サムネイルが並ぶ。サムネイルの内容はWindows 7から搭載したライブサムネイルと同じくリアルタイムに変化し、アクティブなアプリケーションを切り替えるという仕組みだ。Windows 8.1の場合、画面左端からスワイプするか[Win]+[Tab]キーを押すことで、最近使ったアプリケーションの一覧表示と切り替えを実行する機能を提供していたが、Windows 10テクニカルプレビューの場合は上図のTask viewが起動する。ここで気になるのが[Alt]+[Tab]キーという初期Windowsから用意されていたショートカットキーとの兼ね合いだ。同ショートカットキーを押すと以前と同じように[Tab]キーもしくは[Shift]+[Tab]キーを押すことで、カーソルを移動できるのはWindows 10テクニカルプレビューでも変わらない。だが、Task viewを実行するとキーから指を離しても画面は閉じず(デスクトップに戻らず)、矢印キーでアクティブにするアプリケーションを[Enter]キーで選択する。上図を見比べても違いは仮想デスクトップの有無だけだ(仮想デスクトップに関しては次回以降詳しく述べる)。キーボードでWindowsを使ってきたユーザーにとって、通常は[Alt]+[Tab]キーを使用し、仮想デスクトップが絡む操作を行う場合はTask viewと場面に応じた使い分けが求められそうだ。阿久津良和(Cactus)■前回の記事はこちら・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第3回) - デスクトップで使えるWindowsストアアプリ
2014年10月07日●オプションボタンでWindowsストアアプリをキーボード操作Windowsストアアプリは数インチクラスのタブレットであれば、十分使い物になる存在だった。機能的には賛否両論ありつつも、フルスクリーン表示はiOSやAndroid用アプリケーションを見ても時流として"正しい選択"であることは間違いない。だが、長らくマルチウィンドウに慣れてきたWindowsユーザーにとってフルスクリーンアプリケーションは、高解像度ディスプレイやアプリケーション同士の連携といった優位性を捨てざるを得ない側面を抱えていた。そのため旧来のデスクトップアプリを使用するユーザーには敬遠され、新たなマーケットとして成功したApp Store(iOS)や、Google Playストア(Android)にいまだ追いついていない。ちなみにMetroStore Scanner調査によれば、2014年10月時点の登録アプリ数は17万本。対するApp Storeは120万本と2014年6月のWWDCで発表している。サービスローンチ期間を鑑みると単純に比較できないが、後塵を拝しているのは事実だ。Windows 10で「One store」を実現する要素は数多くあれど、"Windowsストアアプリのウィンドウ化"は「ユニバーサルWindowsアプリ」と並んで重要な機能なのである。○オプションボタンでWindowsストアアプリをキーボード操作デスクトップ上でWindowsストアアプリを起動すると、最初はWindows 8.1と同じくフルスクリーン表示だが、大きく異なるのはタイトルバーはすぐに隠れず(後述するオプションボタンの<Full Screen>を選択すると完全なフルスクリーンになる)、そのままタイトルバーの<Restore Down(元に戻す)>ボタンをクリックすると、ウィンドウ表示に切り替わる仕組みだ。タイトルバーの右側に並ぶ3つのボタンはデスクトップアプリと同じボタン構成だが、大きく異なるのはアプリケーションボタンの右側にある<…(オプション)>ボタンだ。クリックすると分かるようにアプリコマンドの実行や、Windowsストアアプリの設定を行う項目がメニューに並んでいる。これはデスクトップ環境で希薄だったチャームバーに置き換わる機能だ。たとえばデスクトップやデスクトップアプリがアクティブな(アプリケーションがバックグラウンドの)状態で、チャームバーを呼び出すショートカットキー[Win]+[C]キーを押すと、Windows 8.1と同じくチャームバーが現れる。だが、Windowsストアアプリがアクティブな状態で同じショートカットキーを押すと、先のメニューが開くのだ。その際はアクセラレータキーが有効になるため、アプリコマンドやフルスクリーンへの切り替えは、すべてキーボードが実行できる。もちろんWindowsストアアプリがキーボード操作に対応していなければ、今までどおりマウスやタッチ操作が必要になるだろう。だが、デスクトップを中心に使うユーザーにとってWindowsストアアプリのウィンドウをキーボードで操作できるのは大きな改良点だ。●ユニバーサルWindowsアプリを活かすサイズ変更 / キーボードによるウィンドウリサイズ強化○ユニバーサルWindowsアプリを活かすサイズ変更MicrosoftはBuild 2014で、Windowsストアアプリ/Windows Phoneアプリのコード共通化を行い、将来的にはXbox OneやiOS/Android上でも動作する「ユニバーサルWindowsアプリ」を発表した。開発者向けの情報は割愛するが、既にVisual Studio 2013 Update 2の時点で画面サイズの取得を行うことが可能になり、さまざまな画面サイズに対応している。この利点を大きく活かしたのが、Windowsストアアプリのウィンドウ化だ。下図は1280×800ピクセルの解像度でWindowsストアアプリのサイズを変更したものだが、テキストの折り返しや画像のリサイズが行われている。本来であればデスクトップPC/Windowsタブレット/Windows Phoneで見比べるのが一番分かりやすいのだが、筆者もWindows Phoneは所有していないため、ウィンドウのサイズ変更で紹介した。このようにソフトウェア開発者側には若干の負担が発生するが、エンドユーザー側から見ればWindowsストアアプリをリサイズすることで、広大なデスクトップを活かせるのがWindows 10の特徴と言えるだろう。○キーボードによるウィンドウリサイズも強化ウィンドウのリサイズと言えば、スナップ機能も見逃せない。Windows 8でも[Win]+矢印キーによるリサイズ機能は用意していたが、Windows 10テクニカルプレビューの場合、デスクトップに並ぶウィンドウを4分割する機能が新たに用意された。たとえばデスクトップ中央にあるウィンドウを左上に移動させる場合、[Win]+[←]キーでデスクトップ左側にスナップできるのはWindows 8.1と一緒。新しいのは[Win]+[↑]キーを押すと、デスクトップ4分の1にリサイズする点だ。たとえばデスクトップ解像度のY軸が800ピクセルの場合、380ピクセル(タイトルバーやウィンドウフレームを含む)のウィンドウが縦に2枚並ぶ。一見すると地味なことこの上ない。だが、Windows 8.1ユーザーであれば、ウィンドウリサイズをキーボードで実行する利便性は十分理解できるはずだ。ただし、この画面分割をWindowsストアアプリに適用するのは難しい。もしくはディスプレイをランドスケープモードで使っている場合に限られそうだ。そもそもWindowsストアアプリをウィンドウ化し、最小サイズにしても502×662ピクセル。タスクバーの領域を計算するとデスクトップ解像度のY軸は1,364ピクセル以上必要となるからだ。いずれにせよウィンドウリサイズに関する機能は、Windows 10テクニカルプレビューでわずかながらに進化したと言える。●ウィンドウ化は先祖返りか否か○ウィンドウ化は先祖返りか否か前述のとおりWindows 10テクニカルプレビューは、Windowsストアアプリをデスクトップアプリと並べてウィンドウ化できる。改めて述べるまでもなく本来Windowsストアアプリは異なる画面サイズを持つデバイスで動作するように設計してきたが、あくまでもフルスクリーン表示が前提だった。そのため、ウィンドウ化は"先祖返り"と揶揄(やゆ)されても致し方ない。もちろんタブレットなどのスモールデバイスが台頭しているなか、Windowsストアアプリを破棄するのは得策ではないし、旧来のデスクトップを強化しなければ過去のWindowsユーザーがそっぽを向いてしまう。このことはWindows 8/8.1で明確になった。Windowsストアアプリのウィンドウ化は移行期におけるMicrosoft苦肉の選択だったのではないだろうか。いずれにせよSDK(ソフトウェア開発キット)も用意していない現状で、Windows 10におけるWindowsストアアプリの状況を判断するのは早計である。だが、PCとタブレット/スマートフォンをつなぐWindowsストアアプリの登場次第で、その評価は大きく異なるだろう。阿久津良和(Cactus)■前回の記事はこちら・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第2回) - 遂に復活した純正スタートメニュー
2014年10月06日○「10」が意味する新世代のWindows既報のとおり10月1日(米国時間)、Microsoftは「Windows 10」を発表した。事前に「Windows 9」や開発コード名のThresholdをもじった「Windows TH」といった呼称が予測されていたが、ふたを開ければ「9」を飛ばして「10」を採用。関係者を驚かせた。この数字を採用した理由や意味について詳しくは語られていないものの、OS担当EVP(エグゼクティブバイスプレジデント)のTerry Myerson氏は公式ブログで「新世代のWindowsにおけるファーストステップを表す」と述べている。発表イベントでは「本当は『Windows One』と名付けたかったが、彼がすでに使ってしまった」と、Microsoft創設者であるBill Gates氏の若い頃の写真を映しだした。Build 2014でも言及し、関係者も語っていた"Windowsの再統合"を機として、キリのよい数字を選んだと推測するのが自然だろう。さらに今回の発表では「ワンプロダクトファミリー、ワンプラットフォーム、ワンストアー」というスローガンをあらためて披露した。これは、Microsoftが見据える今後の目標に合致するものとみていいだろう。以前からMicrosoftはHPC(ハイパフォーマンスコンピューター)からクライアントPCまで、自社製品による統一を目標としてきた。そのためサーバーOSであるWindows Serverシリーズや、クラウドプラットフォームであるMicrosoft Azureをリリースしている。Microsoft CEO(最高経営責任者)のSatya Nadella氏は、iOSやAndroid用アプリケーションをリリースするなど、クラウド時代を見据えたマルチプラットフォームをアピールしている。10月1日に来日した際には、「(自社における)もっとも重要なリリースのひとつ」とWindows 10が持つ存在感の大きさをアピールしながら、「人々のエクスペリエンスを変えるOSだ」とワンプロダクトファミリーの強みを強調した。このワンプロダクトファミリーは、タブレットやPC上で同じOS(Windows 10)が動作することを意味する。前述のMyerson氏やNadella氏が「スマートフォンでもタブレットでもPCでも、同じ(Windowsストアアプリ)コンテンツが動作する」と口にするように、Windows PhoneやWindows RTのコア部分を完全共通化し、再統合したのがWindows 10だ。○3つの"One"を目指すWindows 10拙著記事で述べているように、Windows 10は多くの機能を新たに搭載してきた。スタートメニューの復活やWindowsストアアプリのウィンドウ化、スナップの機能強化、タスクビューボタン、仮想化デスクトップと枚挙にいとまがない。Windows 10は、Windows Vistaから改良を重ねてきたカーネルと、Windows 7に改良を加えたUIという長所を兼ね備えたOSである。発表会でOS担当CVP(コーポレートバイスプレジデント)のJoe Belfiore氏が認めているように、多くのユーザーはタッチ操作が可能なモダンUIに興味を持たず、Windows 7を選択しているのが現状だ。少々脱線するが、多くのユーザーがモダンUIを避けているのは理解できる。ただし、それはデスクトップPCやノートPCといった旧来の操作で最適化された環境に限っての話だ。確かに筆者も当初は違和感を覚えたものの、使い慣れてみれば決して悪いOSではないことは述べておきたい。話を本題に戻そう。前述のとおりWindows 10はWindows 7時代の操作体系を活かすため、通常のPCはデスクトップ画面、タブレットはモダンUIのスタート画面構成となる。ただし、Surfaceのような2in1 PCの場合、その切り替えに手間が生じてしまう。この問題に対応するために、MicrosoftはUIを切り替える機能として「Continuum」をWindows 10に用意した。キーボードを取り外すと、Windows 10ではデバイスの切り離しを認識して、Continuumウィンドウが現れる。ユーザーはここでデスクトップUIを使い続けるか、モダンUIに切り替えるか選択が可能になるとBelfiore氏は説明した。筆者の初代Surface ProではContinuumの動作は確認できなかったが、いずれにせよContinuumは、さらに今後増えるであろうWindowsタブレットを見据えた正しい実装である。○Windows 10は2015年中にリリースWindows 10 Technical Preview for Enterpriseはすでに公開済み。今後のスケジュールとしてMyerson氏は、コンシューマー向け機能を2015年早期に明らかにすると語った。さらに2015年は、2008年以来となるハードウェア開発者向けカンファレンス「WinHEC」や、ソフトウェア開発者向けの「Build」も開催し、そこでもWindows 10について詳しく説明するそうだ。2015年中のリリースを目標とするWindows 10だが、新たなアップデートプレビューを公開するのか、それもとサブスクリプションタイプのアップデートに移行するのか、現時点では明らかにされていない。また、既存Windowsユーザーのアップグレード料金などについても不明だ。メジャーアップグレードというほどの変化が見られないのは、今後の進捗に期待すべきなのだろう。そしてWindows 10が本当に我々のPCライフを豊かにし、効率的な作業環境を提供する存在になり得るだろうか。楽しみと不安が入り乱れた気持ちで一杯、というのが筆者の正直な感想だ。阿久津良和(Cactus)
2014年10月06日本連載でも何度か触れてきたようにWindows 8.1の検索は、インデックスサービスによって支えられている。だが、検索チャームやエクスプローラーの検索ボックスを使わない方にとれば、無用の長物となるだろう。そこでインデックスサービスを無効にする手順を紹介する。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○インデックス情報を削除する筆者は多用している検索チャーム/検索ボックスだが、ファイルを正しい位置(フォルダー)に保存し、全体を把握していれば絶対に必要というものでもない。さらに前回述べたインデックスサービスは、事前に索引を作成するための機能であり、検索機能を使わないユーザーにとっては不要な存在だ。もちろん、インデックスサービスを使わずとも検索機能自体は利用できる。索引を用いないので検索速度は著しく低下するが、検索機能の使用頻度が低いユーザーや、アイドル時の処理を減らしたい場合にインデックスサービスを停止する、という選択肢もあるのだ。最初にインデックス情報を削除する。コントロールパネルなどから「インデックスのオプション」を起動し、「変更」ボタンで「インデックスが作成された場所」を開く。「選択された場所の要約」に並ぶ項目をクリック/タップすると、「選択された場所の変更」セクションの項目が参照可能になるので、この操作を繰り返しながら、すべてのチェックボックスをオフに切り替えよう。これで元のダイアログに戻るが、この時点では数千から数万(環境によって異なる)のインデックス情報が残ったままだ。数分待つと自動的に空になるが、ここではインデックスの再構築を実行する。インデックス作成対象となるファイルは「0」のため、インデックス数も「0」となる。これでインデックス情報の削除はひとまず終了だ。○サービスを停止する今度はインデックス作成を担当している「インデックスサービス」を、停止および無効にする。コントロールパネルの「管理ツール」を開いて「サービス」を起動。これでWindows 8.1に含まれるサービスの一覧が現れた。この中から「Windows Search」を開く。その際「W」キーを押せば、探しやすくなるので試してほしい。ダイアログが開いたら「停止」ボタンをクリック/タップした後に、「スタートアップの種類」を「無効」に変更する。環境によっては「別のサービスの停止」といったサービス停止を注意するダイアログが現れることもあるだろう。これは「サービスの依存関係」が影響しているためだ。例えば「Windows Search」は「Remote Procedure Call」というサービスに依存し、「Windows Media Player Network Sharing Service」「Work Folders」というサービスから依存されている。つまり「Windows Search」が稼働していない場合、Windows Searchに依存するサービス「Windows Media Player Network Sharing Service」と「Work Folders」の2つは、稼働できないという訳だ。この操作を行った場合、Windows Media Playerの共有サービスや「ワークフォルダー」機能は使用できなくなるので、このことを踏まえてから実行してほしい。なお、手順は割愛するが、依存されている2つのサービスに対しても「スタートアップの種類」を「無効」にしない限り、イベントログにエラーが記録されるので、気になる方は変更した方がよい。○「Search」フォルダーを削除する「Windows Search」を使用しない場合、インデックス情報などを格納した「%ProgramData%\Microsoft\Search」フォルダーも削除して構わない。ただし、インデックス情報を削除した時点で格納しているファイルは数十KB程度のため、後からインデックスサービスを再び使用する可能性がある場合、フォルダーは削除しない方がいいだろう。阿久津良和(Cactus)
2014年10月04日Windows 8から登場したチャームバー。次期Windowsの「Windows 10」ではチャームを廃止するという噂もあるが、筆者は以前から有益な機能として認識していた。そこで、インデックスのロジックなどを踏まえながら、検索チャームによるアプリケーションの起動方法を紹介する。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○インデックス型を用いた全文検索を採用以前のMicrosoftは「Windowsサーチ(MSNデスクトップサーチ)」という、PC上のファイルを対象にした全文検索ツールを配布してきた。Windows Vista以降は「Windows Search」という名称でOSに実装し、エクスプローラーやスタートメニューなどからファイルや設定項目を検索できたため、使ってきた方も少なくないだろう。一方でWindows 8以降は、モダンUIを採用したり、チャームバーと呼ばれる機能を用意したりしている。タブレットによる操作やWindowsストアアプリに共通するUIだが、前述の検索機能はチャームバーの1つ「検索チャーム」に引き継がれた。Windows 8.1の場合、検索チャームは「すべての場所」「設定」「ファイル」「Web画像」「Web動画」と5つの検索カテゴリーを用意している。それぞれ異なるカテゴリーで素早く検索を実行できることを、不思議に思ったことはないだろうか。高速検索できる理由は、PCのアイドル時(未使用時)にローカルディスクを調査してインデックス(索引)を作成し、その結果を検索するインデックス型の全文検索技術を採用しているからだ。Windowsのインデックスサービスは指定したフォルダーを対象に、ファイルのプロパティ情報やファイル内容をインデックス化している。○アプリケーションのリンクが検索できる理由インデックス対象を確認してみよう。コントロールパネルから「インデックスのオプション」の「変更」ボタンを開くと、インデックスを作成するフォルダーや種類を選択できる。ここで「選択された場所の要約」に並ぶ「スタートメニュー」を選択すると、「%ProgramData%\Microsoft\Windows\Start Menu」フォルダーが選択されていることが確認できるはずだ。もちろんこの選択はサブフォルダーにも続いている。検索チャームによるアプリケーションの検索結果には、「%ProgramData%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」フォルダーに用意されたリンクファイル(ショートカットファイル)が含まれているため、デスクトップアプリやWindowsストアアプリを起動可能にしているのだ。蛇足だが、検索チャームの「設定」「ファイル」を選択しても、リンクファイルは列挙されない。あくまでも「Win」+「Q」キーで呼び出す「すべての場所」に限られるので注意してほしい。○リンクファイルを追加するデスクトップアプリをインストールするときに、システム全体(すべてのユーザーが利用可能)か、個別ユーザー専用としてインストールするか、選択を求められることが多い。インストーラーによって差異はあるものの、大きく異なるのがリンクファイルの作成場所だ。システム全体の場合「%ProgramData%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」フォルダー、個人ユーザーの場合は「%APPDATA%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」フォルダーが対象になっている。今回確認したところ、後者のフォルダーはインデックス作成対象に含まれていなかったが、「%APPDATA%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」フォルダーに作成したリンクはインデックス作成後に検索チャームから検索可能だ。このロジックを利用し、(インストーラーが用意されていないような)デスクトップアプリのリンクファイルを「%APPDATA%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」フォルダーに作成することで、検索チャームから実行可能になる。阿久津良和(Cactus)
2014年10月03日●タイルを融合したスタートメニュー / スタートメニューを補助する検索ボックスタッチ機能をWindowsで使用するためWindows 8から導入したモダンUIは、それまでのデスクトップ/ノートPCでWindowsを使い続けてきたユーザーに戸惑いを覚えさせた。それまでと大きく異なるUIはユーザーを混乱させ、Windows 7にとどまるユーザーや、サードパーティ製のスタートメニュー復活アプリケーションを導入するユーザーも少なくなかったのは、読者が一番ご承知のとおりである。そのため、Windows 8.1でデスクトップ機能を強化し、2014年に開催した開発者向けカンファレンス「Build 2014」では、今後開発する次期Windowsでスタートメニューの復活を公言した。そして、今回リリースしたWindows 10テクニカルプレビューは約束どおりスタートメニューが復活したのである。○タイルを融合したスタートメニューその内容はBuild 2014で公開したものと基本的には同じだが、デザインやユーザーアカウントの画像、シャットダウンボタンの位置が変更された。注目すべきはタイルである。上図の「News」を見ればわかるようにライブタイルとして稼働するため、頻繁に確認することはない。だが、アプリケーション起動時など何らかのタイミングで、ライブタイルの情報を知り得ることができるはずだ。デスクトップ/ノートPCの場合は、全画面表示のスタート画面よりも使いやすいだろう。また、これらのタイルはドラッグ&ドロップなどで移動可能だ。ピン留めもWindows 8/8.1と同じく、アプリビューやスタートメニューの<All Apps>から参照するWindowsストアアプリを右クリック。コンテキストメニューから<Pin to Start>を選択するだけ。外す場合は<Unpin from Start>を選択する。ドラッグ&ドロップ操作でスタートメニュー外にドロップするとピン留めが外れると思ったが、ショートカットファイルを作成する仕組みだった。サイズ制限もないらしく、デスクトップ解像度が許せば右方向へ延々と拡大できるが、それではWindows 8/8.1のスタート画面と同じため、あまり試すメリットはないだろう。逆にすべてのタイルのピン留めを外せば、シンプルなスタートメニューとして使用できる。もちろんWindows XP以前のクラシックメニューには至らないものの、シンプルさを目指すユーザーには選択肢が広がったと言えるだろう。個人的な意見だが、<All Apps>にWindowsストアアプリが延々と並んでいるのは少々使いにくく感じた。現時点で列挙する内容をどこで管理しているのか確認できず、「%ProgramData%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」フォルダーや「%APPDATA%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs」フォルダーには見つからない。もっとも検索チャームのように検索ボックスを用いてデスクトップアプリ/Windowsストアアプリを参照する場合、さほどこだわる必要はないだろう。○スタートメニューを補助する検索ボックスその検索ボックスについても注目する。新しいスタートメニューの検索ボックスからは、Windows 7の検索ボックスやWindows 8/8.1の検索チャームと同じく、ローカルリソース(ファイルや設定など)と、Bingを用いたWebコンテンツの検索が可能だ。スタートメニューを開いた状態で[半角/全角]キーを押しても入力方式が切り替わらないものの、仮想キーボードであるタッチキーボードなどを用いると日本語による検索も実行できる。インデックス情報に日本語リソースが含まれていないためか、ローカルファイル・設定の検索はできなかったものの、Webコンテンツの検索は可能だった。●キーボード操作も可能なユーザー&電源ボタン / スタートメニューとスタート画面の切り替え○キーボード操作も可能なユーザー/電源ボタン個人的な評価で恐縮だが、スタートメニュー復活に伴い、一番便利に感じたのがユーザー/電源ボタンの復活だ。前者はボタンと称してよいのか不明だが、ここではまとめて紹介する。Windows 8.1でもクイックアクセスメニューを用いてキーボードによる電源操作が可能だが、Windows 10テクニカルプレビューも上図のように、[Win]キー→[↓]キー→[スペース]キーでユーザーボタンのメニューが開く。電源ボタンも[Win]キー→[↓]キー[→]キーで操作できる。もっとも筆者も最近は自動的にスリープに移行させることが多いため、使用頻度はさほど高くないことは理解している。だが、マウスを多用せず、キーボードを中心にWindowsを操作してきたユーザーには、矢印キーで各種操作を行えるスタートメニューはやはり便利に感じることだろう。○スタートメニュー/スタート画面の切り替えこのようにキーボードを備えたPCの場合はデスクトップとスタートメニュー、キーボードレスのWindowsタブレットにはスタート画面を提供するWindows 10だが、Microsoftの発表会で紹介した「Continuum」は動作しなかった。OS担当CVP(コーポレートバイスプレジデント)のJoe Belfiore氏が紹介した際も、PowerPointと思われるプレゼンテーションにとどまったため、Windows 10テクニカルプレビューには実装していないのだろう。そのため本プレビューの場合、スタートメニューとスタート画面の切り替えは「Taskbar and Start Menu Properties(タスクバーとナビゲーションのプロパティ)」ダイアログから実行する。<Start Menu>タブに用意した<Use the Start menu instead of the Start screen>のチェックを外し、Windows 10テクニカルプレビューに再サインインしなければならない。初期状態で<When I sign in or close all apps on a screen, go to the desktop instead of Start(サインイン時または画面上のすべてのアプリを終了したときに、スタート画面ではなくデスクトップに移動する)>が有効なため、最初はデスクトップが現れるが、[Win]キーを押せばスタート画面が現れる。再サインインするのは面倒だが、エクスプローラーの再起動を必要とするためと思われる。そこで強制的にExplorer.exeのみ再起動してみたが、変更結果は反映されなかった。これはサインアウトを実行しないと<Use the Start menu~>の設定がレジストリに書き込まれないからである。いずれにせよ正式版ではContinuumがサポートされることを踏まえれば、あまり気にするポイントではないろう。なお、Windows 10テクニカルプレビューのスタート画面に関しては<Customize>ボタンから開くダイアログも復活した。Windows 7以来のダイアログだが、アイコンはほぼ使われていない。こちらも今後改善していくと思われる。阿久津良和(Cactus)■前回の記事はこちら・短期集中連載「Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第1回) - テクニカルプレビューの入手と導入
2014年10月03日●Windows 10テクニカルプレビューとは次期Windowsの開発コード名として、「Threshold」という名称がメディアに登場したのは、2013年12月。2014年春にリリースしたWindows 8.1 Updateよりも前に報じられた。当時はWindows/Windows RT/Windows Phoneに加え、Xbox Oneに含まれるWindowsのカスタムカーネルを統合したプラットホームを目指すと見られてたのは記憶に新しい。実のところ、このコンセプトはWindows 8.1の開発コード名だった「Windows Blue(メディアに登場した2013年5月頃)」と同じだ。プラットホームの統合と言えば、Windows 9xとWindows NTの統合計画を思い出すが、当時は最終的に計画をキャンセルし、Windows MeやWindows 2000をリリースしている。ただし、今回のプラットホーム統合は当時と異なり、カーネルをはじめとする大部分が共通化されていることから、技術的よりも経営的判断の影響が大きいだろう。このような理由で今回リリースした「Windows 10テクニカルプレビュー」は再統合に至る最初のOSとなる。さらにモダンUI環境を強調したWindows 8/8.1と異なり、Windows 7以前のデスクトップ環境を重視したUIデザインを採用することで、多くの注目を集めるOSだ。そこで短期集中連載として、Windows 10テクニカルプレビューに関する注目点や新機能の使い方を紹介しよう。○Windows 10テクニカルプレビューとはOSの開発は、アルファー版やベータ版といった一定のブレイクポイントを設け、最終的にRTM(製造工程版)に至る。これら開発途中版は一部のベータプログラム参加者やパートナー企業など限られたユーザーに配布するのが一般的だが、Windows Vista以降は一般ユーザーにも門戸を開くようになった。Windows VistaとWindows 7は2段階、Windows 8は3段階のプレビュー版をリリースしている。今回リリースしたWindows 10テクニカルプレビューの正式名称は「Windows 10 Technical Preview for Enterprise」。ここから分かるように全機能を含むプレビュー版だ。ただし、あくまでもITプロフェッショナル向けのプレビュー版(非製品版)のため、2015年中旬を予定する正式版と内容が著しく異なる可能性があることを注意してほしい。さらにWindows 10 テクニカルプレビューのインストール後に元の環境へ戻すには、リカバリーメディアやUSB回復ドライブの使用が必要となる。そのため、既存環境への上書きインストールなどは決して行わず、余っているPCや仮想マシン、もしくは仮想HDDであるVHDブートを用いたマルチブートといったインストール方法を強くお勧めしたい。Windows 10テクニカルプレビューのシステム要件は基本的にWindows 8.1と同等だ。そのため64ビット版Windows 10は、CMPXCHG16b/PrefetchW/LAHF/SAHFといった特定の命令をサポートするCPUが必要となる。その他にもタッチ操作用にマルチタッチ用デバイス、インターネット接続環境などが必要になるが、特に大きな問題にはならないだろう。●Windows 10テクニカルプレビューのダウンロード&インストール○Windows 10テクニカルプレビューのダウンロード&インストールさて、ここからは多くの図版を用いながらダウンロードやインストールの手順を紹介する。今回は「Windows Insider Program」と呼ばれるWebページからダウンロードを行うのだが、特に難しい操作は必要ない。リンクをたどって先に進んでいくだけだ。なお、Windows 10テクニカルプレビューのサポート言語は、英語(米国/英国)/簡体字中国語/ポルトガル語の4種類に限られる。ダウンロードに関しては以前のプレビュー版と同じく、あっという間に終わっていまう。ダウンロードするISO形式ファイルには、SHA-1ハッシュ値が用意されているため、HashTabなどのオンラインツールを用いて正しくダウンロードできたか確認するといいだろう。ちなみに英語版のISO形式ファイルは64ビット版の「WindowsTechnicalPreview-x64-EN-US.iso」が3.81GB(ギガバイト)、32ビット版の「WindowsTechnicalPreview-x86-EN-US.iso」が2.93GBとなる。ここからはインストール手順に取りかかるが、こちらもWindows 8などの新規インストールを経験したユーザーであれば、難しいことは何もない。強いて言えばメッセージがすべて英語のため、そこでつまずく程度だろうか。最初に言語選択を求められるが、表示言語は英語以外選択できないため、「Time and currency format」を「Japanese」に変更して、日本語IMEや日本語向けキーボードレイアウトを選択しよう。次にWindows 10テクニカルプレビューのライセンス条項確認を求められる。ここでの表記は「プレインストールWindows OS」となっている部分が興味深いが、内容を確認して問題がなければ先に進もう。今度はインストール方法の選択を求められるが、新規インストールの場合は「Custom: Install Windows only」しか選択肢はない。同項目を選択するとディスクレイアウトのステップに進むが、今回は新規インストールのため、そのまま先に進むだけでよい。なお、マルチブートなどを行う場合は、ここで異なるディスクを選択するので細心の注意を払おう。これでWindows 10テクニカルプレビューの本格的なインストールが始まる。途中何回かPCの再起動が行われるが、すべて自動的に実行されるため、ここで離席しても構わないだろう。インストールを終え、Windows 10テクニカルプレビューが起動すると各種設定を求められる。正式版リリースの際に詳しく解説するので今回は割愛しよう。後はWindows 10テクニカルプレビューで使用するアカウント(ローカルアカウント/Microsoftアカウント)の選択や、OneDriveの有効化プロセスを経てWindows 10のインストールが完了になる。Windows 10は説明どおりスタート画面が復活し、一部アイコンデザインの変更も確認できる。また、チャームバーを呼び出すショートカットキーもそのままだ。詳しくは今後解説していくが、注意しなければならないのが試用期限。バージョンダイアログを確認したところ、2015年4月16日までとなる。次回以降はWindows 10テクニカルプレビューで確認できる新機能をピックアップし、紹介しよう。阿久津良和(Cactus)
2014年10月02日日本マイクロソフトは1日、日本市場向けオフィススイート「Office」の新製品を発表する「New Office Press Briefing」を開催。プレインストール版とサブスクリプション制度を融合させた新しい提供形態などを明らかにした。関連記事■Core i3版「Surface Pro 3」、10月17日にOffice 365付きで発売■日本マイクロソフト、サブスクリプション版含む日本市場向け新Officeを発表■日本マイクロソフト、iPad用Officeアプリを2014年内に国内発売かつて日本マイクロソフトが、日本国内・個人向けOffice 365を初めて公にしたのは、2014年7月に開催した新年度経営方針記者会見だった。日本マイクロソフト 代表執行役 社長の樋口泰行氏は、大手企業や教育機関などがOffice 365を採用しつつあることをアピールしながら、「日本市場に最適化した『Office 365 for Consumer』を2014年内にリリースする」と発言。担当役員であるコンシューマー&パートナーグループ オフィスプレインストール事業統括本部長の宗像淳氏も「国内はプレインストール版Officeが多いため、パートナーと培ってきた関係性を維持しつつ、Office 365 for Consumerの発売を目指す」と語っていた。それから3カ月。10月1日に「New Office Press Briefing」と題した記者会見を行い、日本市場向けOffice 365を発表した。概要を説明する前に、まずはOffice 365の立ち位置から解説しよう。Office 365が発表されたのは2010年10月。デスクトップアプリのMicrosoft Officeスイートを月額課金で使用可能にするエディションと、Exchange ServerやSharePoint Serverなどのサーバープランも同時に提供するエディションが複雑に絡み合っているため、正直分かりにくい。今回発表されたのは、米国のMicrosoft本社が提供している個人向けOffice 365とは異なり、日本独自の構成を採用した。○日本市場に最適化したOffice 365日本国内での名称は「Office PremiumプラスOffice 365サービス」(以下、Office Premium)」と、「Office 365 Solo」である。米国とはまったく異なる日本独自のエディションなので、はじめに概要を紹介しておく。今回の新Officeは、従来と提供形態が変わっただけで、少なくとも発表時点では機能的な強化点はないとのことだ(現行のOffice 2013と同等)。Office Premiumプラス Office 365サービスOffice 365 SoloOffice Premiumは「永続的に使用できるデスクトップアプリ+1年間のOffice 365サブスクリプション(購読)」。Office 365 Solo は「デスクトップアプリ+Office 365サブスクリプション、いずれも1年間」、と述べると分かりやすいだろう。今までのパッケージ版を使ってきたユーザーは違和感を覚えるかもしれないが、プレインストール版ユーザーの場合、1年間のOffice 365サービスが付いてくる。細かい計算は飛ばして、OneDriveのディスク容量プランを1TB追加すると22,800円/年、Skypeの通常回線通話料金は1時間135.6円のため、年間では約1,627円の無料使用権が付属する仕組みだ。(2年目以降は有料と言いつつも)お得なサービスと言えるだろう。米国のOffice 365と構成が異なる理由として、日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏は「(同社の調査によれば)日本市場は約94パーセントのPCにOfficeがインストールされている。だが、米国のOfficeユーザーは30パーセント以上がサブスクリプションを選択し、毎四半期で100万人以上が移行中。そして米国本社との連携や日本市場を踏まえた上で、独自の構成を用意した」と述べた。なお、Office Premiumのエディション構成は下記のとおり。Office 365 SoloのPC版はOffice Personal Premiumと同等の構成となり、Mac版はOffice for Mac 2011と同じWord/Excel/PowerPoint/Outlookが含まれる。ちょうどOffice Personal PremiumとOffice Home&Business Premiumの中間に位置する内容だ。「Office 365 Home」の最大ユーザーは5人だが、Office 365 Soloは2台に制限されている。この点について質問があがると、日本マイクロソフトの担当者は「日本の場合、5台も使うユーザーは少ない。1人が使うデバイスとして2台が最適と考えている」と回答した。○米MicrosoftのCEOも登壇。エコシステムをアピール今回の発表会はOffice 365が主役だが、もう1つの目玉がSatya Nadella氏の訪日だ。筆者の記憶が確かなら、同氏が訪日し、メディアに登場したのは今回が初めてである。登壇したNadella氏は、CEO就任以来掲げている「モバイルファースト、クラウドファースト」について語った。その内容は過去の寄稿記事と重複するため割愛するが、Nadella氏は「日本はOfficeがもっとも活用されている国の1つ」と評価しつつ、「Office for iPad」の日本語版を2014年内にリリースすることを明らかにした。会場ではOffice for iPadのデモンストレーションも披露。基本的には2014年3月にリリースしたものと変わらないが、日本語版UIや利用シナリオに応じて厳選したリボンを表示する仕組みをアピールしていた。なお、文書ファイルの閲覧は無料だが、編集時はOffice Premiere/Office 365 Soloのサブスクリプションライセンスが必要となる点も同じである。Nadella氏がスピーチした「モバイルファースト、クラウドファースト」は文字どおり、iPadやWindowsタブレット、およびクラウドとインフラが欠かせない。マルチプラットフォーム化を目指すMicrosoftにとって、サブスクリプションタイプのOffice 365とOffice for iPadの存在は大きいはず。そのため、今月(2014年10月)の17日とかなり早いタイミングでリリースするのだろう。なお、日本マイクロソフトのSurfaceや各社Windows PC/タブレットのプレインストール版Officeも、同日から順次Office Premiumに切り替わる。樋口氏やNadella氏が言うように、Officeのシェア率が高い日本国内において、Office Premium/Office 365 Soloが浸透するか否か…。これは「最初から全部入りが好まれる」日本という地域で、サブスクリプションに対する理解度をいかに高められるかと、そのための継続的かつ丁寧な説明が求められる。阿久津良和(Cactus)
2014年10月01日●シリコンバレー研究所を閉鎖し、研究員を全員リストラ○シリコンバレー研究所を閉鎖し、研究員を全員リストラSatya Nadella氏率いるMicrosoftが過去最大のリストラを発表したのは7月のこと。その際、1万8,000人の人員削減を2015年6月30日までに終えることを明らかにしたが、Mary Jo Foley氏がZDNetに寄稿した記事によれば、同計画は粛々と進められているという。筆者が懸念したのは、続報記事である。そのひとつがMicrosoft製品やサービスの屋台骨として数々の技術を研究してきたMicrosoft Research Silicon Valleyが含まれていることだ。Microsoft Researchは1991年9月にRichard "Rick" Rashid氏が、Microsoftへ入社する条件として設立した同社研究機関。1,000人以上の研究者が米国や中国、インドなど世界7カ国の研究所に在籍するだけでなく、各大学との共同研究も行っている。今回閉鎖されたSilicon Valley研究所について述べるため、各研究所の紹介ページを開いたところ、既に一切の情報は削除済み。そこで情報を集めたところ、同研究所へインターン生として在籍していた大学院生のブログを発見した。それが「Microsoft Research Silicon Valley 最後の日を見て - (iwi)の日記」である。同日記によれば、iwiwi氏は今回のリストラで実質1カ月しか滞在できなかったそうだ。iwiwi氏の記事によると、Silicon Valley研究所の研究員は50人強とさほど多くない。特徴的なのは「本当に研究だけをしていればよい」という点だ。本人は北京のMicrosoft Research Asiaにも3カ月在籍したそうだが、企業(=Microsoft)の意思や希望に添った研究ではなく、純粋な研究だけを突き詰められるのが、Silicon Valley研究所の特徴とだと述べている。Kinectが必要とする各種技術やBingのアルゴリズム、ExcelのPowerMapなど、Microsoft Researchの研究結果が製品に反映されてきた。だが、Silicon Valley研究所は基礎的な分野における研究が中心のため、その成果が製品に反映される可能性は少ない。その結果リストラの対象にSilicon Valley研究所も含まれたのだろう。iwiwi氏は研究者としての日々が短い期間で終わってしまったことを悲しみつつ、素晴らしい研究者たちとの日々を誇りに思うと述べている。●「信頼できるコンピューター」グループもリストラ対象○「信頼できるコンピューター」グループもリストラ対象もうひとつのリストラ対象がTrustworthy Computing グループ(以下、TwC)である。日本ではWindows XP "Service Pack 2 セキュリティ強化機能搭載"とサブタイトルが付けられたように、Microsoftはセキュリティの強化を2002年頃から始めていた。関係者に取材したところ、実際は1998年まで話はさかのぼるらしい。その頃から社内でもセキュリティ強化を必要とする意見は少なくなかったが、設立契機となったのは、MicrosoftのWebサーバーであるIISをターゲットにしたマルウェア「Code Red」の存在だった。2001年7月には感染したPCの数は約36万台におよび、抜本的な改革が求められたという。その結果として当時CEOだったBill Gates氏はTwCグループを設立した。Senior Advisor to the CEOであるCraig Mundie氏は、TwCの枠組みをホワイトペーパーとして残している。その内容はGates氏のリンクと同じくセキュリティやプライバシー、信頼性などを主軸としたものだ。現在のTwCはサイバー犯罪やプライバシー対策に加えて、開発ライフサイクルポリシーの策定、Microsoftのセキュリティ更新プログラムの監督を担っている。Foley氏の記事によれば、リストラ対象外となるエンジニアリングチームやTwCポリシー関連業務に就いていたスタッフの一部は、Cloud and EnterpriseチームもしくはLegal and Corporate Affairsチームに移籍するそうだ。Foley氏も述べているように、この移籍に不安を覚えるユーザーは少なくない。ちょうど2014年8月のセキュリティ更新プログラムは、Windows 7/8/8.1が起動しないケースや、稼働中にBSoD(Blue Scree of Death)を起こすといったトラブルを招いたばかりである。今回だけのケアレスミスであれば、それほど気にする必要はないと思いたいが、約1年前の「KB2823324」でも、PCが起動しなくなる恐れが発生した。確かにセキュリティホールを埋める作業は簡単だが、他のコンポーネントとの連動性や安定性の保持は過酷な作業である。また、読者が一番ご存じのとおりWindowsは、サードパーティー製アプリケーションの組み合わせや、設定によって影響幅が大きく変化するOSだ。エンドユーザーから見れば「それでもOSが起動しなくなるのは致命的」という意見が出てもおかしくないものの、セキュリティ"だけ"を重視した結果、本来求められる信頼性が欠落しつつあるのは否めない。その答えは、TwC担当CVP(コーポレートバイスプレジデント)であるScott Charney氏が明らかにしている。同氏は公式ブログで「TwCチームはすべての責任を持つためにグループを統合し、Cloud and Enterprise部門の一部となる。その結果、SDL(信頼できるコンピューティングのセキュリティ開発ライフサイクル)や、OSA(オンライン・セキュリティ・アシュアランス)プログラムに反映され、顧客の安全につながる」とブログで述べた。噂によればWindows 9(開発コード名:Threshold)をリリースする2015年春頃には、更新プログラムのリリースやサイクルの見直しを行いつつ、組織の再編成が予定されているという。もちろんMicrosoftは明言していないが、TwCチームがCloud and EnterpriseチームやLegal and Corporate Affairsチームに移籍するのもその一環だろう。○新CEOとしてのプレッシャーこれらのリストラが肥大化したMicrosoftをスリムアップし、他社と競える体制を再構築にあることは、改めて述べるまでもない。2011年にはSkype、2013年にはNokiaの携帯端末部門を買収し、従業員数は米国本社だけでも6万1,313人、全世界では12万7,104人(2014年6月時点)まで膨れ上がっている。ちなみに日本マイクロソフトの従業員数は2,182人だ。Microsoftの第3四半期決算を見ると売上高は約204億ドル、第4四半期は約234億ドルと好調で、株価も37.16ドル(2014年1月2日)から47.52ドル(同年9月19日)と右肩上がり。1999年12月に付けた最高値58.719ドルに迫る勢いだ。Dow JonesもNASDAQも堅調であることを差し引いても上々の出来である。だが、Windows Vista以降の低迷期からの脱却や、新たなIT時代への追従、取締役会からのプレッシャーは、Nadella氏の肩に重くのし掛かっていることは急速な革新やリストラを見れば明らかだ。当初筆者はNokiaの従業員を対象にしたリストラ、と高をくくっていた。そしてMicrosoftだけでなくHewlett-PackardやIBMなど他の大手企業も、近年はリストラや再配置を実施している。営利企業としては致し方ない。そのため、今回の研究所の閉鎖やTwCチームの再編成は、Nadella氏時代の新生Microsoftを目指すために、伴わなければならない痛みなのだろう。だが、チーム再編成は致し方ないながらも、未来を見据えるために欠かせない基礎研究を行う研究所の閉鎖が、Microsoftの遠い未来に暗雲をもたらす遠縁になる可能性は拭い切れないはずだ。筆者の推測が夢想になることを祈りたい。阿久津良和(Cactus)
2014年09月29日OSよりも重要性が高まりつつあるWebブラウザー。Mozilla FirefoxやGoogle Chromeなどサードパーティー製Webブラウザーも人気だが、Windows標準といえば「Internet Explorer」だ。今回は、起動時に特定のモードを選択するInternet Explorerの活用術を紹介する。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○InPrivateブラウズは起動時から有効にするInternet Explorerは、閲覧履歴やCookieなどのプライベート情報を、終了時(ページを閉じた際)に破棄する「InPrivateブラウズ」機能を持っている。これはInternet Explorer 8から備えてきたものだ。現在のInternet Explorer 11でも、「ツール」ボタン→「セーフティ」→「InPrivateブラウズ」とクリック/タップするか、「Ctrl」+「Shift」+「P」キーを押せば実行可能である。この他にもジャンプリストの「InPrivateブラウズを開始する」でもよい。InPrivateブラウズ機能も、コマンドラインからオプション「-private」を使用することで、Internet Explorer起動時から有効にできる。使用方法は前回と同じく、「ファイル名を指定して実行」を使用する。例えば、社内で不特定多数が使用するPCの場合、常にInPrivateブラウズを有効にした方が安全だろう。その際はInternet Explorerが終了した状態で、Shiftキーを押しながらタスクバーの「Internet Explorer」ボタンを右クリック/長押しし、プロパティを開く。続いて「リンク先」に「-private」オプションを追加すればよい。なお、InPrivateブラウズモードは既定でアドオン(ツールバーや拡張機能など)が無効になる。これを不便に感じる場合は「インターネットオプション」の「プライバシー」タブを開き、「InPrivate」セクションから設定を変更すればよい。○ホームページ(最初のページ)を空白で開くWebブラウザー起動時に開く最初のページを「ホームページ」などと呼び、Internet Explorerの場合、MicrosoftのMSNが既定となる。この設定は「インターネットオプション」の「全般」タブで自由に変更できるが、Internet Explorer 11では以前のような「空白を使用する」ボタンが取り除かれてしまった。この設定を行うには「ホームページ」セクションのテキストボックスに「about:Blank」と記述すればよい。続いてInternet Explorerを再起動すれば、最初のホームページ読込と描画を待たずに済むため、この状態を好む方も多いだろう。なお、ホームページ設定はそのままで、一時的に空白ページを起動させる場合は、コマンドラインオプションの「-nohome」を使用する。先の手順を参考に「ファイル名を指定して実行」から起動すれば、タイトルが何もない状態で空白のページが開く。なお、「ホームページ」セクションで指定できるaboutスキームは他にも用意されており、Internet Explorerのアドレスバーに「about:Tabs」と入力して「Enter」キーを押せば、「よくアクセスするサイト」。「about:Home」と入力して「Enter」キーを押せば、ホームページとして設定したWebサイトが開く。阿久津良和(Cactus)
2014年09月29日OSよりも重要性が高まりつつあるWebブラウザー。Mozilla FirefoxやGoogle Chromeなどサードパーティー製Webブラウザーも人気だが、Windows標準といえば「Internet Explorer」だ。今回は主に起動に関するInternet Explorerの活用術を紹介する。「Windows 8.1ミニTips 第17回」より、2014年4月9日にリリースされたWindows 8.1 Updateを適用した環境を対象としています。○アドオンが無効な状態で起動するInternet Explorerは各種の「アドオン」で機能を拡張できるが、Internet Explorer 7からアドオンを無効の状態で起動する仕組みが加わった。これはWeb上でリッチコンテンツを実現するアドオンが原因で、Internet Explorer自体が不安定になるケースが報告されてきたからだ。現在のInternet Explorer 11では、コントロールパネルなどから「インターネットのプロパティ」を開き、「プログラム」タブ-「アドオンの管理」ボタンをクリック/タップすれば、インストール済みアドオンの取捨選択が可能になる。もしくは、Internet Explorerが起動した状態で、「ツール」ボタン→「アドオンの管理」とクリック/タップしてもよい。だが、どのアドオンがトラブルの原因なのか、1つずつ有効/無効を切り替えていくのは面倒だ。Windows 7以前は「Internet Explorer(アドオンなし)」というショートカットファイルがメニューに並んでいたが、Windows 8のアプリビューを確認しても見当たらない。そこでコマンドラインオプションを用いて、アドオンが無効な状態でInternet Explorerを起動する方法を紹介しよう。Internet Explorerの情報バーに「アドオンは現在使うことができません」とあるように、一時的にアドオンが無効になっている。もし、ショートカットファイルなどを作成する場合は、以下の手順を実行してほしい。そのままショートカットファイルを適当なフォルダーに移動し、タスクバーにピン留めしても構わない。ここでは、ショートカットファイルをプログラムフォルダーに移動させた上で、スタート画面にピン留めしてみよう。これで、アドオンなしのInternet Explorerがいつでも起動可能になった。アプリビューにも列挙されるため、検索チャームなども利用できる。なお、本手順で複数のショートカットファイルが登録された場合は、ファイル名の最後に連番が付いた「○○ (2)」といったファイルを削除すればよい。阿久津良和(Cactus)
2014年09月28日TVアニメ『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインを担当した安彦良和氏の原画と、モビルスーツなどのメカデザインを担当した大河原邦男氏の画稿が、年賀状イラスト素材としてWebサイト「PRINT BASE」で公開されている。本企画は、「PIXUS×GUNDAM PROJECT」の一環として、11月26日発売の漫画誌『月刊ガンダムエース』(角川書店刊)とのコラボレーションで実現。安彦氏の年賀状イラスト素材は、同誌編集部が制作した『安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」』から4点が公開されている。詳細は、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』でのアムロ・レイ、シャア・アズナブル、ララァ・スン、セイラ・マス4人のカットイン、バルカンを発射するガンダム、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』からのシャアの原画、ア・バオア・クーを脱出したアムロが「ごめんよ、まだ僕には帰れる所があるんだ。こんなうれしいことはない…」と呟く印象的なシーンの原画が選出されている。そして、大河原氏の年賀状イラスト素材は、『月刊ガンダムエース』の人気連載コーナー『機動戦士ガンダムMSV-R』から3点。一年戦争末期に連邦軍が計画していたRX-78ガンダムの増加ウエポンシステムの一つで、ニュータイプのみで編成された特殊部隊への配備が予定されていた「フルアーマーガンダム(タイプB)」。地球連邦軍がコア・ファイターの汎用性の高さに注目し、火力向上および積載燃料の拡張を可能とするブースターユニットを装着した試作機「コア・ブースター プラン004」。さらにジオン公国軍初の戦闘用モビルスーツMS-05の改良版として開発に着手し、最終的にはMS-06Aとして量産され、当初はジオニック社のズム・シティ工場で生産されていた「ザクII」と、レアな画稿が公開されている。年賀状イラスト素材の公開期間は、11月26日~2014年1月15日まで。「PRINT BASE」で公開中のオリジナルシールと組み合わせることで、オリジナルの年賀状を作成することもできる。カスタマイズシールを出力しアレンジすれば、お好みメッセージを送るためのツールとして『ガンダムエース』秘蔵の素材を家庭で楽しむこともできる。なお、「PIXUS×GUNDAM PROJECT」ではそのほか13種類の年賀状素材を公開中で、今年10月よりテレビ東京系ほかにて公開中の『ガンダム』シリーズ最新作『ガンダムビルドファイターズ』の素材も用意。ほかにも「PIXUS」で誰でも制作できるガンプラ連動企画や公式サイトでスペシャルムービーの展開など、さまざまなコンテンツを展開している。(C)創通・サンライズ
2013年11月29日