Windows 10では、Microsoft EdgeやInternet ExplorerといったMicrosoft製Webブラウザー以外に、当たり前だがMozilla FirefoxやGoogle Chromeも使える。ただ、米MozillaのCEOが苦言を呈したように、標準Webブラウザーを変更する手順は、以前のWindowsとは異なる仕組みとなった。今回はその手順や変更時の動作について述べる。○Windows 10公式対応のWebブラウザー執筆時点では、Windows 10に公式対応するサードパーティー製Webブラウザーは存在しない。Mozilla Firefoxは、次期リリース版となるバージョン40.0でWindows 10に対応する予定だ。Google Chromeはリリースアナウンスを行うChrome Releasesを確認した限り、Windows 10に関する説明を見付けることができなかった。筆者が確認した限りでは、Mozilla Firefox 40.0ベータはもちろん、Google Chrome 44.0.2403.130も、Windows 10上で問題なく動作する。Windows 7やWindows 8.1からWindows 10へアップグレードしたユーザーなら、体験済みの方も多いだろう。○Windows 10の標準Webブラウザーを変更するここではMozilla Firefox(40.0ベータ)を対象として、Windows 10の標準Webブラウザーを変更する。ベータチャンネルのサイトから同バージョンをダウンロードし、通常の手順でインストールを行う。すると以前のように、既定のWebブラウザーとするか確認を求めてくるはずだ。Windows 8.1以前は同意すればこれで終了するが、Windows 10はここから先が違う。「同意」を実行すると「設定」が起動し、「既定のアプリ」が開く。そこから「Webブラウザー」のボタンを押して、Webブラウザーを変更するという操作が必要だ。この操作はGoogle Chromeでも変わらない。さらに関連付け変更直後にタスクバーの「検索ボックス」から検索を実行すると、最初にWebブラウザーの選択確認を求められる。本来であれば「設定」の操作で関連付けは確定しているため、この確認は不要なはずだ。「既定のプログラム」で動作を確認したところ、ファイルの関連付けはもとよりHTTPSなどのプロトコルも変更されている。検索ボックス独自のURLスキームが存在するのか調べてみたが、執筆時点で該当するものは確認できなかった。○変更後の動作を確認する標準Webブラウザーを変更して大きく異なるのが、「検索ボックス」の動作である。Microsoft Edgeの場合、Bing検索から変更することはできない(詳細設定で変更できるのは、"アドレスバーからの検索"である)。前述の手順で関連付けを変更すると、起動するWebブラウザーはもちろんMozilla Firefoxだが、検索サイトもGoogleに変更される。これはMozilla Firefoxのオプション設定が影響しており、「検索」に並ぶ「Windowsからの検索に、この検索エンジンを使う」がチェックオン状態であれば、ドロップダウンリストで選択した検索サイトが使用。同項目がチェックオフの場合はBingによる検索を行う仕組みだ。ちなみにGoogle Chromeでも動作を確認してみたが、"Windowsの検索"に対応していないため、Bingで検索が行われる。阿久津良和(Cactus)
2015年08月08日Windows 10は新しいWebブラウザーとして「Microsoft Edge」を標準搭載しているが、イントラネットの閲覧など後方互換性を保つため、従来の「Internet Explorer 11」も用意している。今回はInternet Explorer 11の起動や常に使用するための方法を紹介しよう。○「すべてのアプリ」に登録されないIE 11Windows 10の標準WebブラウザーはMicrosoft Edgeだが、古いHTMLで構成されたWebページを正しく表示させるため、Internet Explorer 11を引き続き搭載している。イントラネットなど業務で使用しなければならない企業ユーザーには有用な存在だ。筆者が確認したところ、Windows 10 HomeでもInternet Explorer 11は使用可能。「F12」キーで開く「F12開発者ツール」が備えるドキュメントモードの変更もサポートしているが、Internet Explorer 8をエミュレートする「エンタープライズモード」を使用するには、グループポリシーエディターやレジストリの編集が必要となる。なお、具体的な操作方法はMSDNを参照いただきたい(機会があればこの連載でも取り上げたいと思う)。このように、Windows 10でもInternet Explorer 11は使用可能だが、「すべてのアプリ」には登録されていない。なぜこのような仕様になったのか疑問が残るところだが、察するにPC初心者向けに対して、Microsoft Edgeとの混合を避けるためではないだろうか。○IE 11をスタートメニューやタスクバーから起動するWindows 10でInternet Explorer 11を起動するには、タスクバーの「検索ボックス」を使用すればよい。インストール済みアプリケーションによって異なるが、Windows 10インストール直後であれば「I」と入力するだけで、Internet Explorer 11が検索候補に現れる。後は現れた項目のコンテキストメニューから「スタート画面にピン留めする」「タスクバーにピン留めする」を選択すれば、気軽にInternet Explorer 11が使用可能になるはずだ。Internet Explorer 11のタイルやボタンが不要になった場合は、通常のアプリケーションと同じくピン留めを外せば元の状態に戻る。阿久津良和(Cactus)
2015年08月07日2015年7月29日、ついにWindows 10無償アップグレードが始まった。詳しくは拙著の「Windows 10大百科」をご覧いただきたいが、アップグレード直後であれば、以前のWindows 8.1やWindows 7に戻すことが可能である。○以前のWindowsに戻す際の注意点Windows 10にアップグレードした環境から、Windows 7やWindows 8.1に戻すとき、「Windows.old」フォルダーが最重要であるのは前回に述べた。Windows 10アップグレード後に31日経過しなくとも、同フォルダーが削除される可能性がある(Windows.oldフォルダーが残っていないと、Windows 8.1やWindows 7に戻せない)。それは、ストレージの空き容量が10%を切った場合だ。この状態になると「Windows.old」フォルダー内の「\Users」を除くサブフォルダーは削除されるため、以前のWindowsに戻すことができない。ちなみに、過去のWindows 8.xでは28日経過後に自動削除される仕様だったことを踏まえると、Windows 10ではWindows.oldフォルダーの保存期間を延長したようだ。○Windows 10からWindows 7に戻すWindows 7からWindows 10へ無償アップグレードした場合、「設定」の「更新とセキュリティ\回復」に「Windows 7に戻す」という項目が加わる。このあたりは前回のWindows 8.1と同じだ。なお、Windows 10アップグレード後に「Windows.old」フォルダーを削除した場合、下図で示したように同名の項目は現れない。こちらのボタンを押すと、以前のOSに戻す理由の選択を求められる。この点も前回のWindows 8.1上と同じだ。Microsoftとしては、以前のOSに戻す理由を調査したいのだろう。その後に続く確認内容もWindows 10からWindows 8.1に戻す際と同じく、以前のOSに戻す際の注意点が続く。最後に「Windows 7に戻す」ボタンを押せば処理が始まる。処理は自動的に進むため、離席する場合はこのタイミングで行おう。Windows 7のログイン画面からログインすれば、見慣れたデスクトップが現れる。Windows 10からWindows 8.1へのロールバックと同じように、あらかじめデスクトップアプリをインストールしてみたところ、デスクトップ上のセットアッププログラムは残っていたが、「%ProgramFiles%」に展開したデスクトップアプリは削除されていた。このように、Windows 8.1およびWindows 7からWindows 10にアップグレードした後に、以前のOSに戻してみたが、動作は同じだった。下記の諸条件さえ満たしていれば、確実に以前のOSへと戻せる。Windows 10へアップグレードするか迷っている方は、本稿を参考にWindows 10にチャレンジしてみてはいかがだろうか。○以前のWindowsに戻せる条件Windows 10にアップグレードしてから31日間以内アップグレード後に新規ユーザーアカウントを追加していない「このPCを初期状態に戻す」を実行していないWindows.oldフォルダーが残っている阿久津良和(Cactus)
2015年08月01日2015年7月29日、ついにWindows 10無償アップグレードが始まった。詳しくは拙著の「Windows 10大百科」をご覧いただきたいが、アップグレード直後であれば、以前のWindows 8.1やWindows 7に戻すことが可能である。○以前のWindowsに戻せる条件Windows 8.xやWindows 7などの各Windowsは、新バージョンをアップグレードインストールした場合、以前のWindowsバージョンに戻す仕組みを用意している。具体的には、古いWindows環境を「Windows.old」フォルダーに移動させており、ディスククリーンアップなどで削除しない限り、古いWindowsへと書き戻すことが可能だ。ただし、Windows 10無償アップグレードの場合は以下のような条件を満たす必要がある。Windows 10にアップグレードしてから31日間以内アップグレード後に新規ユーザーアカウントを追加していない「このPCを初期状態に戻す」を実行していないWindows.oldフォルダーが残っている○Windows 10からWindows 8.1に戻すWindows 8.1からWindows 10へ無償アップグレードした場合、「設定」の「更新とセキュリティ\回復」に「Windows 8.1に戻す」という項目が加わる。こちらのボタンを押すと、簡単な質問が現れる。Microsoftとしては以前のOSに戻す理由を調査したいのだろう。任意の項目を選択して先に進むと、Windows 8.1に戻す際の注意点が現れる。Windows 10のユニバーサルWindowsアプリは使用できず、Windows 10で行った各種設定はWindows 8.1に反映されない。単純に、「Windows 10で行った変更はすべて破棄」され、「以前の状態に戻る」と考えて構わないだろう。なお、システムファイルを書き戻すため、ユーザーファイルが影響を受ける可能性は少ない。とはいえ万が一に備えて、外付けHDDやNASの共有フォルダーなど、PC本体とは物理的に異なるストレージに大切なデータをコピーしておくと安心だ。次のメッセージは、Windows Helloなどパスワード以外の認証システムを使ってサインインしていたユーザーを対象としているのだろう。筆者が確認した限り、Windows 8.1で使用していたMicrosoftアカウントのパスワードやPINも利用できたため、それほど神経質になる必要ない。最後に「Windows 8.1に戻す」ボタンを押すことで、以前のOSが書き戻される。この間ユーザーに操作を求められることはないので、そのまま離席しても構わない。Windows 8.1のロック画面を解除してサインインすると、見慣れたデスクトップ(もしくはスタート画面)が現れる。あらかじめWindows 10でデスクトップアプリをインストールしてみたが、ショートカットファイルは残っているものの、「%ProgramFiles%」や「%ProgramFiles(x86)%」など各フォルダーが以前の状態に戻るため、動作しなかった。次回は、Windows 7からWindows 10へとアップグレードした環境にて、Windows 10からWindows 7へと戻す方法を紹介する。阿久津良和(Cactus)
2015年07月31日日本マイクロソフトは新しいWindowsをリリースする際、通例として発売イベントを開催してきた。しかし、Windows 10は「リリース」ではなく「無償アップグレード」という形態で姿を現したため、発売イベントは行われない。そこで2015年7月29日、Windows 10の提供開始を祝う「Windows 10 FAN CELEBRATION EVENT」を開催した。MicrosoftがWindows Insider Program参加者とともにWindows 10ローンチを祝うイベントの、国内版にあたる(日本を含む13カ国の都市で開催)。会場には、7月1日付けで日本マイクロソフト 代表執行役社長に就任した平野拓也氏も姿を現した。今回のWindows 10 FAN CELEBRATION EVENTは時差の関係から、東京は米シドニーに続く世界で2番目のイベント開催都市となった。ステージに登場した平野氏は、普段目にするスーツ姿ではなく、「0」と「1」を組み合わせて飾ったWindowsフラッグTシャツを着て、「顔と名前が合わない平野です」と来場者の緊張を解きつつ、「待ちに待ったWindows 10のローンチを今まで違う形で皆さまと祝いたい」と、イベントに参加したWindows Insider Program参加者たちにお礼を述べた。多くの来場者は、Windows 10へのアップグレードに能動的なユーザーのはずだが、平野氏は「Windows 10をダウンロードされていない方?」という問いかけで会場の笑いを誘う。「まさかダウンロードせずに会場でご飯を食べているとは思いませんが、帰ったらぜひダウンロードして、明日には友人・知人にすすめてください」と声高に語りかけた。そのほか、世界110の非営利団体に合計1,000万ドル(10ミリオンドル)を提供して、「世界をアップグレード」(Upgrade Your World)するキャンペーンの紹介や、7月29日から始まったテレビCMの紹介で挨拶をまとめた。イベント中の取材で平野氏に聞いたところでは、「MicrosoftはワールドワイドでWindows 10無償アップグレードの予約見込み数をカウントしているが、予想を大幅に超える予約数を数えた」という。社長就任直後の大イベントとなるWindows 10無償アップグレードを迎えて、「Windows 10は自社の旗艦ともいる存在だからこそ参加できてうれしい」とも。続くトークセッションでは、日本マイクロソフト Windows本部の溝口宗太郎氏を筆頭に、同社エバンジェリストである田中達彦氏と大西彰氏がステージへ。各自の得意分野から、Windows 10の機能をアピールした。来場者の反応がよかったのは、Microsoft Edgeのドルビーオーディオ対応。2015年5月にMicrosoftの公式ブログで明らかにされたものだが、Microsoft Edgeは、次世代サラウンド規格となるドルビーデジタルプラスをサポートする初のWebブラウザーだ。会場では実際にデモサイトにアクセスして7.1チャンネルのサウンドを披露し、来場者を沸かせていた。大西氏は「今までは頑張っても2チャンネル程度でしたが、本機能でマルチチャンネルを実現しています」と機能を紹介し、刷新したWebブラウザーの可能性をアピール。既にWindows 10にアップグレード済みのユーザーは、その威力を目と耳で確認してほしい。さらに大西氏は、Build 2015などで披露した「WITCH CHAPTER 0[cry]」のデモンストレーションを再現。目を引いたのは、NVIDIAのグラフィックスカード「GeForce GTX TITAN X」を4枚(!)装着したPCを操作して、リアルタイムレンダリングの視点を変更している点だ。筆者も何度か同じデモを目にしてきたが、手動によるリアルタイムの視点変更を見たのは初めてである。会場からは、どよめきと驚きの声が漏れていた。(C) 2015 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.一方の田中氏は、音声パーソナルアシスタントの「Cortana(コルタナ)」に関するデモンストレーションを披露。英語で「Sing a song」と声をかけると、フランスの民謡「フレール・ジャック」を歌い出した。残念ながら日本語版Cortanaは登場しなかったものの、司会者のネイティブな発音に小気味よく反応するCortanaの実演は、国内イベントでも初めてだろう。最後に平野氏が再び登場。Windows 10の提供を記念したカウントダウンならぬ「10カウントアップ」を、会場が一体となって行った。大きな声で「10」を数えると、ステージを飛び降りた平野氏は前方の来場者とハイタッチし、そのまま会場を後に。「Windows 10ファンとともに祝う」の名に恥じないイベントだった。先のWPC(Worldwide Partner Conference)2015で「選ばれ、愛されるWindowsへ」と述べたのはMicrosoft CEOのSatya Nadella氏だが、今回のイベントで平野氏をはじめとする各関係者の口々からは、エンドユーザーとの距離をさらに縮めて密接な関係を構築したいという発言を耳にしている。Windows 10とともに、Microsoftと日本マイクロソフトは本気で変わろうとしているようだ。○フォトギャラリー阿久津良和(Cactus)
2015年07月30日Windows 10は、Windows Insider Programを通じた開発プロセスのオープン化、Windowsのサービス化に無償アップグレードなど異例ずくめのOSだ。Windows 7/8.1からWindows 10への無償アップグレードが開始された本日7月29日、あらためてその条件や注意点について整理したい。○7月29日にアップグレードできる環境とは日本マイクロソフトによれば約600万人を数える「Windows Insiderユーザー」が、もっとも早くWindows 10無償アップグレードが可能になる。もっとも配信タイミングは皆同じではない。ネットワークトラフィックの増加を抑止するため、配信タイミングはもちろん配信速度などをリアルタイムで調整するという。なお、アップグレードファイルの容量は3GB程度だ。次に対象となるのが、「Windows 10無償アップグレードの予約」を行ったユーザーだ。「Windows 10を入手する(通称GWX)」で予約した環境では、バックグラウンドでアップグレードファイルのダウンロードが始まる。互換性情報を踏まえる必要があるためか、日本マイクロソフトによれば「最大数週間かかる」そうだ。○Windows 10アップグレードは強制ではない大きく誤解を招いているのが、「Windows 7およびWindows 8.1ユーザーがWindows 10アップグレードを強制される」という風説だ。どのような経緯で広まったかは不明だが、Windows 10にアップグレードするか否かはユーザー自身が選択できる。つまり、Windows 7やWindows 8.1のまま使い続けることも可能だ。前述したWindows 10無償アップグレードの予約(GWX)についても、いつでもキャンセルできるため、使用中のPCがWindows 10との互換性に問題があるという情報をキャッチしたら、PCメーカーからの改善アナウンスを待つとよいだろう。日本マイクロソフトは、「Windows 10互換性情報&早わかり簡単操作ガイド」を公開しているので、アップグレードを実行する前に参照するとよい。同サイトからは、Windows 7およびWindows 8.1ユーザー向け操作ガイド(PDF)をダウンロードすることもできる。○今すぐWindows 10にアップグレードできる自作PCなど互換性情報を簡単にチェックできない環境では、GWXのアナウンスが行われてない可能性がある。筆者もメインPCは自作PCだが、7月29日午前3時の時点ではWindows 10のプリロードが始まると現れるという「$Windows.~BT」フォルダーの存在は確認できなかった。また、Windows Updateからのアナウンスを待たずに、Windows.comからアップグレードメディアを作成することも可能だと日本マイクロソフトは説明する。執筆時点ではWindows.comに該当するリンクは設けられていなかったが、この手順はあくまでもPCに詳しいユーザーに向けた対応策。自己責任において実行できるユーザーのみが対象だ。冒頭で述べたようにWindows 10は異例ずくめの取り組みを行っているため、本来OSが維持すべき安定性が今後も保たれるかは断言できない。慎重なユーザーであれば、Windows 10無償アップグレードを後回しにするのも賢い判断だろう。だが、常に進化するIT分野においてとどまるメリットはあまり多くない。互換性がクリアとなったPCやタブレットでは、早めにWindows 10へ無償アップグレードしても損はないだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年07月29日7月20日(米国時間)、Microsoftは音声パーソナルアシスタントシステムである「Cortana(コルタナ)」を数カ月以内に日本、オーストラリア、カナダ(英語)、インドのWindows Insider Program参加者に提供することを明らかにした。同様にブラジルやメキシコ、カナダ(フランス語)にも年内の提供を予定している。米国、英国、中国、フランス、イタリア、ドイツ、スペインの7カ国向けのCortanaは「7月29日」にWindows 10とともにデビューする。言語による公開タイミングの差を設けた理由としてMicrosoftは、「画一的なアプローチから脱却し、各国の文化に則したローカライズが必要だった」と説明した。Cortanaは2009年頃から開発が始まり、2014年7月にリリースしたWindows Phone 8.1の検索ボタンに置き換わる形でCortana英語版(ベータ版)を搭載している。さらに当初から多言語への対応を表明していたが、当時を思い返すと、Windows Phoneのシェアが低い中国市場への参入を疑問視する声も少なくなかったように記憶している。しかし、Microsoftの判断はより遠くを見据えたものだった。2012年10月に中国で開催したMicrosoft Research Asiaでは、スピーカーが述べた内容を音声認識した後に字幕として表示。さらに機械翻訳を用いた中国語の表示と音声発信を行っていた。このようにCortanaは、生まれるべくして生まれた機能であると言えるだろう。では、Cortanaを支える技術は、どのような仕組みになっているのだろうか。Build 2014のセッションによれば、以下のようなステップで動作する。アプリケーション上でVCD(ボイスコマンドの定義)を作成アプリケーション上のVCD XMLファイルに登録ボイスコマンドの有効化と実行ポイントとなるのは、2007年に買収したTellme Networksの音声認識技術だ。既存の研究結果とTellme Networksの技術を融合させた自然言語処理を、クラウド上で動作するセマンティック検索データベース「Satori」を経由して、適切なアクションを実行する。あくまでもこの説明は「Windows Phone 8.1のCortana」であるため、「Windows 10のCortana」と合致しない部分も存在するだろう。数カ月内に登場する日本語版では、Microsoftが説明する「各文化の分析結果に基づいて生み出したローカライズと個性」を楽しみにしたい。Cortanaのバックグラウンドとなる知識ベース(Knowledge Base)は、情報が多ければ多いほど精度が向上する。それはSiriやGoogle Nowといった他社の音声パーソナルアシスタントシステムも同様だが、MicrosoftはCortanaのiOS版とAndroid版のリリースを予定している。やがて約19億人のスマートフォンユーザー(※)がCortanaを使うことで、Satoriなどが蓄積するデータ量は増大化し、その結果として精度の飛躍的向上を期待できるだろう。この背景には、MicrosoftはCortanaをWindows 10の一機能として捉えず、CEOのSatya Nadella氏が掲げる「インテリジェントなクラウドプラットフォームの構築」などのビジョンと連動させようとしていることがうかがい知れる。※eMarketerが2014年12月に発表した2015年の予測値2015年7月13日に発表した「Cortana Analytics Suite」はビッグデータや音声分析などを組み合わせた分析ソリューションだが、遠隔モニターリングや病気予測など病院のソリューションシステムとして導入されている。たとえば、老齢者から送られてきた血圧の情報をオペレーターが分析して、その結果をMicrosoft Bandに通知、老齢者は指示に従って薬を飲むといった使われ方だ。つまり、MicrosoftはCortanaで得たデータをユーザーに還元しつつ、より先進的なクラウドソリューションを目指している。我々は、一歩ずつ歩みを進めるMicrosoftが、10年……いや数年後に生み出そうとしている世界を注視すべきだ。阿久津良和(Cactus)
2015年07月27日いよいよ7月29日にWindows 10無償アップグレードが公開される。多くのWindows 8.1ユーザーがWindows 10に移行するように、本連載でもWindows 8.1を取り上げるのは今回で最後。そこで、Windows 8から加わった「PC設定」などのモダンUIをコントロールパネルから呼び出すTipsを紹介する。○「shell:AppsFolder」まずは何も考えずに「shell:AppsFolder」を実行してほしい。するとWindows 8.1にインストールしたWindowsストアアプリや、デスクトップアプリが並ぶエクスプローラーが起動するはずだ。こちらはShellスキームであらかじめ定義された特殊フォルダーなのだが、筆者も実体は把握していない。ファイルのコンテキストメニューを確認すると、「プログラムと機能」のように、実行以外にもアンインストールも実行できる。○「PC設定」をコマンドラインから開く今回の主題はShellスキームではなく「設定コンテンツ」だが、最初に紹介した理由の1つが「PC設定」を直接呼び出す方法として、AppsFolderを使用するためだ。「ファイル名を指定して実行」などから下記のコマンドを実行すると、見慣れた「PC設定」が起動する。explorer.exe shell:AppsFolder\Windows.ImmersiveControlPanel_cw5n1h2txyewy!microsoft.windows.immersivecontrolpanelこのようにAppsFolderを利用することで「PC設定」を直接起動できる。explorer.exeから呼び出しているため、バッチファイル処理やショートカットファイルの作成などにも応用できるだろう。○「設定コンテンツ」ファイルとはこのパス名を見るとMicrosoftは、モダンUIベースの「PC設定」を「Immersive ControlPanel(没入型コントロールパネル)」と呼んでいることが分かる。こちらの実体は「%LOCALAPPDATA%\Packages\windows.immersivecontrolpanel_cw5n1h2txyewy\LocalState\Indexed\Settings\ja-JP」フォルダーに格納した「設定コンテンツ」ファイルだ。プロパティダイアログを確認すると拡張子として「.settingcontent-ms」を持ち、dllhost.exe経由で開くことができる。そのため設定コンテンツファイルをダブルクリックすると、ダイアログがPC設定の各カテゴリーに含まれる項目が開く仕組みだ。例えば「AAA_SettingsPagePCDiskSpace」なら「PCとデバイス\ディスク領域」が開き、「AAA_Proxy_Automatic_Config_Group」ならば「ネットワーク\プロキシ」が開く。「PC設定」の項目はPC環境に応じて並ぶ項目が異なるため、使用できない機能を呼び出す設定コンテンツファイルを実行した場合、「PC設定」のトップ画面が開くようだ。さて、次回からはタイトルを一部変更して、ターゲットをWindows 10に変更する。読者処理には引き続きご愛読をお願いしたい。阿久津良和(Cactus)
2015年07月26日Windows 10の提供開始となる7月29日まで、残り1週間を切った。本記事では、現在使用中のPCをアップグレードしたいというユーザーのため、各メーカーが発表しているWindows 10動作確認対象モデルの情報をまとめてご紹介する(順不同)。今回はBTO・海外メーカー編。国内主要メーカーをまとめた前編は下記でチェックいただければ幸いだ。このマシン、Windows 10に対応してる? メーカー別Windows 10対応リスト - 国内主要メーカー編○エプソンダイレクト●Windows 10 無償アップグレードのご案内エプソンダイレクトでは、2013年8月以降に販売したEndeavorシリーズ、Endeavor SシリーズがWindows 10無償アップグレードの対象となる。動作確認情報は後日サポートページで公開予定(24日時点では未掲載)。2013年7月以前に販売したPCについては動作確認の対象外になる。対象機種は、デスクトップがPro8100、Pro8000、Pro7500、Pro5600、Pro5500、MR7300E、MR7200E、MR7000E、MR4500E、MR4400E、MR4300E、TY5100S、TY1100S、AT992E、AT991E、ST170E、ST160E、ST11E、ST10E、PT110E、PT100E、NP31S、NB51E、PU100S、AY330S、AY321S、SY01。ノートPCおよびタブレットPCが、NJ5970E、NJ5950E、NJ5900E、NJ3900E、NJ3700E、NA511E、NA601E、NY2400S、NY2300S、NY40S、TN30E、TN20E、TN10E、NY10S、TB20S、TB01S。○マウスコンピューター●Windows 10 無償アップグレードマウスコンピューターは、日本マイクロソフトによるWindows 10無償アップグレードの対象PCであれば、アップグレードをサポートする。7月29日以降、アップグレード手順、ドライバ、ソフトウェアなどを準備次第公開予定。案内ページで公開されている対象機種は、デスクトップPCでLUV MACHINES H、LUV MACHINES R、LUV MACHINES Slim HS、LUV MACHINES Slim RS、MDV ADVANCE Z、MDV ADVANCE X、m-One。タブレットPC・スティックPCがWN801V2-BK、m-Stick。ゲーミングPCでは、NEXTGEAR-MICRO im550、NEXTGEAR-MICRO am510、NEXTGEAR i640、NEXTGEAR i850、MASTERPIECE i1450、MASTERPIECE i1580、NEXTGEAR-ONE io510、NEXTGEAR-NOTE i3500、NEXTGEAR-NOTE i3501、NEXTGEAR-NOTE i5500。ゲーミングを除くノートPCは、LuvBook C、LuvBook JF、LuvBook JW、LuvBook B、LuvBook FH、LuvBook FF、m-Book T、m-Book PF、m-Book PQ、m-Book W。ビジネス向けPCは、MousePro S、MousePro T、MousePro NB500、MousePro P。○パソコン工房●Windows 10 搭載パソコン | 無償アップグレード・価格・性能パソコン工房では、無償アップグレード対象モデルの販売ページに「Windows 10対象」アイコンを記載。必要なドライバ、ソフトウェアなどは、7月29日以降に準備が整い次第サポートページにして公開していく予定。具体的な対象モデルはデスクトップPC、ノートPC、ゲーミングPC、即納PCに分け、一覧で公開している。○ドスパラ●Windows 10 無償アップグレード 対応パソコンドスパラでは、現在販売中のモデルにつては、オンラインショップの製品ページに、Windows 10アップグレード対応アイコンが表示されるようになっている。また、2013年11月以降ですでに取り扱いがないがアップグレード対象のモデルは、こちらに掲載されているので、確認してほしい。また、対応モデルが検索できるページも用意している。○フロンティア●MicrosoftWindows 10対応予定リストフロンティアでは、対応モデルに関しては準備ができ次第、手順やドライバーなどを公開する予定。ただし、提供はリリース後になる可能性もある。また、以下の対応リストは、パーツメーカーによるデバイスドライバの提供予定を元に保証しているものであり、プリインストールされているアプリケーションの動作は保証外となっている。デスクトップPCの対応シリーズは、FRAC、FRCI、FRDS、FRS、FRGA、FRGB、FRGM、FRGT、FRGT、FRGX、FRMX、FRST、FRS。ノートPCの対応シリーズは、FRNZ、FRNX、FRNV。○日本HP●新しくリリースされるWindows 10にアップグレード本社がある米HPの発表によると、2015年モデルの全製品についてはWindows 10に対応予定。2015年以前に出荷されたWindows 7 / Windows 8.1搭載PCも対応予定だ。Windows 10の独自機能に対応したモデルの一部は以下の通り。しかし、日本で展開しているモデルは、日本HPが対応機種を確認中とのこと。23日現在、案内ページは公開されているが、具体的な機種は確認できない。米HPが発表したアップグレード対象機種の一部は、デスクトップPCがHP EliteDesk 800 Desktop Mini PC、HP Elite x2 1011 G1。ノートPCがHP Pavilion x360、HP Spectre x360、HP Pavilion、HP ENVY、HP OMEN、HP EliteBook 1020 Folio、HP Elite x2 1011 G1、HP ZBook 14/15u。○デル●Windows 10へのアップグレードデルでは、Windows 10のリリースに合わせて各種情報を公開する予定。Q&Aページによると、Windows 10アップグレードの条件を満たしているPCであれば対象となるようで、「複数のDellシステムでドライバの互換性を検証している」とする。○レノボ・ジャパン●WINDOWS 10 アップグレード対象製品レノボ・ジャパンでは、2015年7月以前に発表した、Windows 10 アップグレード動作検証済みのLenovo製品を一覧で案内。デスクトップPCでは、Windows 8.1搭載のLenovoシリーズ、IdeaCentreシリーズ、Erazerシリーズ、ThinkCentreシリーズ。Windows 7 SP1搭載モデルも一部対応する。ノートPCおよびタブレットでは、 Windows 8.1搭載のLenovoシリーズ、IdeaPadシリーズ、Erazerシリーズ、ThinkPadシリーズ。Windows 7 SP1搭載モデルも一部対応する。なお、ThinkPadシリーズについては、HaswellやBroadwell世代の32bit搭載モデルなど、アップグレード動作検証非対応となる細かな環境設定があるので注意したい。○日本エイサー●Windows 10へのアップグレード日本エイサーでは、Windows 10のリリース直後に、簡単に行えるアップグレード手順を案内予定。また、アップグレード対象となるエイサー製品の全モデルのリストも掲載する(23日時点では未掲載)。○ASUS JAPANASUS JAPANについては、6月に発表されたスタイラスペン付属の「ASUS TransBook T300Chi」や2015年PC夏モデルなどでWindows 10無償アップグレード対応をうたっているが、24日現在で公式サイトに案内が公開されておらず、具体的な対応機種は不明。今後情報が公開されるものとみられる。***Windows 10のアップグレード提供は7月29日。この「7月29日」という日付は、各国の現地時間となるため、日本でも29日にリリースが行われる。具体的なリリース時間は現時点では不明だが、Windows 10アップグレードファイルは約3GBと(ダウンロードするには)大きめなので、順次提供されていくと予想される。新OSがどういった新機能を持っているのか、既存OSとどういった部分が違うのかといった点については、他記事「短期集中連載 Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第1回) - テクニカルプレビューの入手と導入」や、「日本マイクロソフト、Windows 10無償アップグレードの要件を公開」、「Windows 10の無償アップグレード、7ユーザーが注意すべきポイント - 阿久津良和のWindows Weekly Report」などをご参照いただきたい。
2015年07月25日Windows Vistaから備わったBitLockerドライブ暗号化は、TPM(Trusted Platform Module)チップを用いてストレージを暗号化する機能だ。主にビジネス向けPCの中には、SSD(もしくはeMMC)に対してBitLockerドライブ暗号化を標準で有効にしている製品もあるのだが、対する暗号化を解除することでストレージ性能が向上するという話を聞く。本当かどうか検証してみよう。○BitLockerドライブ暗号化とはBitLockerドライブ暗号化は、PCの盗難や紛失に備えてストレージ全体を暗号化し、情報漏えいを未然に防ぐセキュリティ機能の1つだ。だが、Microsoftも「暗号化されたボリュームは、ストレージパフォーマンスが3~5%ほど低くなる可能性がある」と説明している。基本的に、セキュリティ強化と利便性(または性能)はトレードオフであるため、ある程度のパフォーマンス低下はしかたない。では、BitLockerドライブ暗号化のボリューム暗号化を解除すると、ストレージのパフォーマンスは本当に改善するのだろうか。ちょうど筆者の手元には、出荷状態からBitLockerドライブ暗号化が有効になったWindows 8.1タブレットがあるため、こちらを使ってボリューム暗号化解除前・解除後のパフォーマンスを測定することにした。テスト機のスペックは、Intel Atom Z3740(1.33GHz)、2GBのメモリ、32GB eMMC(Samsung MBG4GC)という構成である。Windows 8.1は32ビット版だ。○ボリュームの暗号化を解除するWindows 8.1の場合、ボリュームの暗号化はコントロールパネルなどから呼び出す「BitLockerドライブ暗号化」ではなく「デバイスの暗号化」に置き換わる。そのため、ボリュームの暗号化解除は「PC設定の変更」から行う。「PC情報」を開くと「デバイスの暗号化」カテゴリが用意されており、こちらの「オフにする」ボタンを押すだけでよい。ただし、ボリュームの暗号化解除は結構な時間を要し、筆者が試したデバイスでは30分ほどかかっている。解除中もタブレットを使うことはできるものの、可能であれば自宅など落ち着いて操作できる場所で、時間的に余裕あるときに実行してほしい。○暗号化解除の結果は?今回はhiyohiyo氏の「CrystalDiskMark 4.1.0」を使用し、ボリュームの暗号化解除前と解除後の速度を測定してみた。まずは結果をご覧いただきたい。上図のように、シーケンシャルリード・ライト以外は大きな変化はなかった。すべての端末に当てはまるとは言えないが、ボリュームの暗号化解除は必ずしも利点につながるわけではなさそうだ。セキュリティポリシーを踏まえながら、ボリュームの暗号化を選択するのが賢い判断だろう。阿久津良和(Cactus)
2015年07月24日Windows 10の提供開始となる7月29日まで、残りちょうど1週間。本記事では、現在使用中のPCをアップグレードしたいというユーザーのため、各メーカーが発表しているWindows 10動作確認対象モデルの情報をまとめてご紹介する。このリストに入っていないモデルにおいても、搭載OSが正規ライセンスのWindows 7 SP1、8.1 Update、Windows Phone 8.1であれば、一部を除きWindows 10無料アップグレードの対象となる。具体的には、タスクバーの通知エリアに「Windows 10無料アップグレードアイコン」が出ていれば大丈夫と思っていいだろう。このアイコンの詳細については「Windows 10の無償アップグレード予約開始 - Windows 7/8.1に通知現る」をご覧頂きたい。ただし、メーカーが動作保証しないモデルは、独自アプリが動作しなかったり、今後ドライバの提供が行われない可能性がある(多数のメーカーが、アップグレード対象機種でも、利用できない機能やソフトウェアが発生する可能性があると注意を呼びかけている)。インストールは購入時の状態に戻すリカバリディスクを必ず作成し、自己責任で慎重に行いたい。○NECパーソナルコンピュータ●Windows 10 サポートのご案内NECパーソナルコンピュータでは、2013年5月以降発表のLaVie(LAVIE)、LaVie Tab W(LAVIE Tab W)、VALUESTARで、Windows 10の動作保証が確認されている。ただし、Windowsタブレット「LAVIE Tab W」シリーズのPC-TW710M1S、PC-TW710M2S、PC-TW508BASは動作保証対象外。2013年4月以前に発表したLaVieとVALUESTARについても、同じく動作確認の対象外となる。具体的な機種は「アップグレード対象製品一覧」ページで確認可能。○富士通●Windows 10アップグレード対象機種について富士通では、現時点でWindows 10の動作保証を行なう機種を案内するほか、7月末に「Windows 10アップグレード情報」を公開予定(22日時点では未公開)。デスクトップPC「ESPRIMO」シリーズの対象機種は、ESPRIMO FH(2012年10月以降発表モデル)、ESPRIMO DH(2012年10月~2014年5月発表モデル)、ESPRIMO WH(2013年10月発表モデル)、ESPRIMO EH(2013年2月発表モデル)。ノートPC「LIFEBOOK」シリーズでは、LIFEBOOK AH、LIFEBOOK SH、LIFEBOOK CH(2012年10月以降発表モデル)、LIFEBOOK UH、LIFEBOOK SH(2013年2月以降発表モデル)、LIFEBOOK TH(2014年1月・2月、2015年1月発表モデル)、LIFEBOOK GH(2015年1月発表モデル)。タブレットPC「ARROWS Tab」、「STYLISTIC」シリーズでは、ARROWS QH(2014年10月、2013年10月発表モデル)、ARROWS Tab Wi-Fi QH(2012年10月発表モデル)、STYLISTIC QH(2012年10月発表モデル)。○東芝●Windows 10 アップグレードサポート対象予定機種について東芝では、2014年5月以降に発表されたモデルをアップグレードの保証対象としている。これに加え、2013年7月発表以降のモデルについても確認作業を行なっており、結果を後日掲載するとのこと。確認作業の結果によっては、現在案内しているアップグレード対象機種も含め、サポート対象外になることや、制限事項などが発生する可能性もある。また、アップグレード対象機種では、アップグレード手順や必要なソフトウェアなどの情報提供を行う予定だが、それらはWindows 10リリース以降になる場合もあるという。本稿でリストアップはしないが、企業向けモデルも同等の条件だ。アップグレード対象機種は、dynabook D、dynabook REGZA PC、dynabook T、dynabook EX、dynabook BX、dynabook B、dynabook AX、dynabook P、dynabook KIRA、dynabook R、dynabook N、dynabook tab Sシリーズ。東芝ダイレクトモデルのdynabook DB/D、LIFEBOOK REGZA PC、dynabook TB、dynabook BB、dynabook AB、dynabook Satellite、dynabook P、dynabook KIRA、dynabook R、dynabook NB/N、dynabook tab S。○VAIO●Windows 10情報(ソニー)VAIOでは、ソニー製造分(ソニーのサポートページに掲載)と、VAIO製造分(VAIOサポートページに掲載)が、別々に案内されている。ソニー製造分のサポート対象機種は、2012年以降に販売された、Windows 8プリインストールモデル、Windows 8.1プリインストールモデルが対象。具体的には、Windows 8.1をプリインストールしたDuo 13、Fit 11、Fit 13、Fit 14、Fit 15、Pro 11、Pro 13、Tap 11、Tap 21。もしくは、Windows 8をプリインストールしたDuo 11、E11、E14、E15、E17、Fit 13、Fit 14、Fit 15、Tap 20、L24、Pro 11、Pro 13、S13、S15、T11、Tap 11、T13、T14、T15、Tap 21。●Windows 10アップグレード情報(VAIO)VAIO製造分では、全VAIO製VAIOがアップグレードの動作確認対象となる。機種別のサポート情報は、後日VAIOサポートページで公開予定とのこと(22日時点では未掲載)。○パナソニック●Windows 10 サポート 評価情報パナソニックでは、2013年6月以降に発売したLet’snoteシリーズ、TOUGHBOOK、TOUGHPADについて、Windows 7とWindows 8.1 Update搭載モデルが、Windows 10アップグレード保証対象機種となる。ただし、アップデートの際に、制限事項や注意事項が発生する可能性があるため、詳細については現在確認中。Let’snoteシリーズの対象機種は、CF-RZ4、CF-MX4、CF-SX4、CF-NX4、CF-LX4、CF-AX3、CF-MX3、CF-SX3、CF-NX3、CF-LX3。TOUGHBOOKおよびTOUGHPADでは、CF-19Z、CF-314、CF-C2C、FZ-G1F、FZ-M1A、FZ-M1C、UT-MB5、UT-MA6。***Windows 10のアップグレード提供は7月29日。この「7月29日」という日付は、各国の現地時間となるため、日本でも29日にリリースが行われる。具体的なリリース時間は現時点では不明だが、Windows 10アップグレードファイルは約3GBと大きめなので、順次提供されていくとみられる。新OSがどういった新機能を持っているのか、既存OSとどういった部分が違うのかといった点については、他記事「短期集中連載 Windows 10」テクニカルプレビューを試す(第1回) - テクニカルプレビューの入手と導入」や、「日本マイクロソフト、Windows 10無償アップグレードの要件を公開」、「Windows 10の無償アップグレード、7ユーザーが注意すべきポイント - 阿久津良和のWindows Weekly Report」などをご参照いただきたい。
2015年07月22日既報のとおり、Microsoftは7月29日にWindows 10無償アップグレードを開始するが、同日から使用可能になるエディションはWindows 10 HomeおよびProのみ。Enterprise エディションは8月1日以降、SA(ソフトウェアアシュアランス)を通じて展開を始める。Enterprise エディションは中堅~大企業の利用を想定した設計のため、コンシューマー向けのエディション以上に安定性や信頼性が要求される。特にRTM(製造工程版)という開発プロセスを省いたWindows 10では、十分な検証期間を設ける必要があるだろう。個人ユーザーの多くは、HomeやProを選択することになるものの、それでもEnterprise エディションがすべての機能を備える"全部入り"であることに違いはない。上図は日本マイクロソフトが作成したスライドである。Home/Proと重複する機能も並んでいるが、ビジネスユーザー向け機能として、Enterprise Data ProtectionやAzure AD(アクティブディレクトリ)との連係をアピールしている。同社の説明によれば、これらのエンタープライズ系機能がどのような条件下で動作するのか明確に決まっていないとのことだが、たとえばEnterprise Data Protectionはシステム管理者が各機能の有無をポリシー設定するため、ドメインやAzure ADへの参加が必要となるだろう。また、Home/Proにも共通する機能ではあるが、Windows 10では指紋や虹彩、顔などを用いた生体認証でWinodws 10にサインインできるWindows Helloを実装した。さらにPKI(公開鍵基盤)やチャレンジ&レスポンス認証を加えた新たなシングル・サイン・オン・サービスをMicrosoft Passportと連動させた。Enterprise エディションでは、このような機能を使えるWindows 10だが、執筆時点では不確定な部分が多い。これはWindowsが長年続けてきたメジャーアップデートを終了し、Windows 10が年に2~3回のペースで機能拡張を行う「サービスとしてのWindows」に改めるため、「RTMの時点で完成を目指す必要がない」という面が大きいだろう。日本マイクロソフト関係者の「将来はOSという単語を使わなくなるかもしれない」と言う軽口も実のところ冗談ではなくなるかもしれない。Microsoft CEOのSatya Nadella氏は先頃開催したWPC(Worldwide Partner Conference)2015で、「(目標の1つとして)よりパーソナルなコンピューティングへ」向かうと語った。これは、2015年1月に発言した「必要とされるWindowsから、選ばれ愛されるWindowsを目指す」と深く関連するビジョンと言えよう。Windows自身はもちろん、それを取り巻くIT環境も、提供するMicrosoft側も時流に合わせて変化している。長年当たり前のように存在したWindowsが目の前で変わりゆく様は実に刺激的だ。阿久津良和(Cactus)
2015年07月21日Windows 8.1のネットワークに関する安全性を守る「Windowsファイアウォール」。前回はファイアウォールのルール設定をバックアップする方法を述べた。今回はそれを復元する操作を紹介しよう。○疑問が残る例外設定ダイアログの動作前回はWindowsファイアウォールのインバウンド/アウトバンドに触れたが、アウトバウンドについてはもう少し述べておきたい。通信検知時の例外設定をうながすダイアログがインバウンドに限られている理由として、クライアントOSであることが大きいと筆者は推測する。クライアントOS、インターネット側と多くのコネクションを発生させている。だが、アウトバウンド通信(PCからインターネットへ向けた通信)に対して頻繁にダイアログが出ると、PC初心者は戸惑ってしまう。そのためMicrosoftは、このような仕様を選んだのだろう。残念ながらWindows 10も同じため、セキュリティにこだわる個人ユーザーは、別途ファイアウォール系ツールの導入を一考する必要がある。○ルール設定を復元するさて、前回作成したルール設定のバックアップファイルだが、復元操作も「セキュリティが強化されたWindowsファイアウォール」から実行する。コンソールの操作ウィンドウに並ぶ「ポリシーのインポート」から、バックアップファイルを選択すればよい。これで復元操作は終了だが、違いが分かりにくいため、事前に「受信の規制」をすべて削除した状態で復元操作を行った結果をご覧いただきたい。すべてのルール設定が復元していることが確認できる。○コマンドラインから復元する復元操作はコマンドラインからも実行可能だ。管理者権限を持つコマンドプロンプトを起動してnetshコマンドを使えば、より簡単に復元できる。上記の手順はデスクトップにファイルがあることを前提にしているが、ドキュメントフォルダーにバックアップファイルを格納している場合は、「netsh advfirewall import "%userprofile%\Documents\WF-rule-Backup.wfw"」に変更すればよい。阿久津良和(Cactus)
2015年07月18日2015年7月29日、Windows 10の無償アップグレードが始まるが、今回は異例ずくめのせいか情報が入り乱れ、誤解を生んでいる場面も見受けられる。そこで現時点におけるWindows 10のアップグレードに関する情報を整理し、7月29日以降のアップグレードを予定している読者諸氏にお届けしたい。○世界中で「7月29日」からアップグレードが始まるMicrosoftおよび日本マイクロソフトは、Windows 10のアップグレード公開日を7月29日と定めているが、海外との時間差など不明確な点が多かった。「いち早くWindows 10へアップグレードしたい」と考える方も少なくないだろう。日本マイクロソフトの説明によれば、「7月29日」という日付は「各国の時間」として世界中で統一される。例えば、日本と米国太平洋側(ロサンゼルスなど)の時差は16時間だが、日本で7月29日午前0時を迎えるとき、米国太平洋側は28日11時。そのため、日本はWindows 10アップグレード対象国である190カ国の中でも、かなり早いタイミングで公開されるようだ。気になるのは「何時から公開が始まるのか」という点だが、現時点では不明。さらに、すべてのユーザーが7月29日にWindows 10へアップグレードできる訳ではない。既報のとおりWindows 10は、Windows Insider Program(WIP)参加者からアップグレード情報の通知が始まる(WIP参加者数は現時点で約500万人に達しているため、WIP参加者だけに限っても、全員同時にダウンロードするのは難しいだろう)。Microsoftは、Windows 10のアップグレードファイル(約3GB)による、ネットワークトラフィックの増加を懸念しており、リアルタイムで監視しながら調整する予定だ。同じWIP参加者の間でも、すぐにWindows 10へアップグレードできるユーザーもいれば、数時間ほど待たされるユーザーも出てくるだろう。次に対象となるのが「Windows 10を入手する(WGX)」で予約を行ったユーザーだが、ここで出てくるのが互換性問題である。既にWGXは互換性チェックを行っているが、必ずしもお使いのPCでWindows 10の完全動作が保証される訳ではない。そのため、Microsoftや日本マイクロソフト、各PCベンダーが、互換性問題について検証を終えたPCから優先的に通知を開始する。そして最後に、予約していないユーザーに対して、互換性チェックなど準備が整ったデバイスから順にプッシュが始まるという順番だ。仮に互換性問題が発覚した場合、アップグレードプロセス中に詳細情報を提供するという。7月29日のアップグレード開始はMicrosoft主導のため、執筆時点で日本マイクロソフトが公開する情報はないとしながらも、Webサイトに手動ダウンロードのリンクを用意する予定があるそうだ。プロダクトキーが必要になるのかなど、詳細は一切決まっていないものの、何らかの理由でWindows UpdateにWindows 10アップグレードが現れないユーザーの救済策となるだろう。ただ注意すべきは、お使いのPC(Windows 7やWindows 8.1)で使えていたPCベンダーの独自機能や周辺機器が、Windows 10で使える保証がない点である。例えば、Windows 10はFDD(フロッピーディスクドライブ)のインボックスドライバーを含んでいないというが、レガシーなデバイスほど動作しなくなる可能性は拭えない。そのため、手動ダウンロードはあくまでも自己責任において試すべきだ。7月29日当日の状況もいくつか明らかになった。当日から主要量販店7社の店頭でWindows 10にアップグレードしたPCを展示し、体験コーナーや販売パートナーによるアップグレードサービスの提供が行われる。こちらは各PCベンダーがWindows 10の互換性を確認したPCに限られるものの、自らの手でWindows 10へのアップグレードに不安を覚える方は訪れてみるといいだろう。なお、Windows 8.1搭載PC/タブレットを店頭購入した場合、同じようにアップグレードサービスを受けられる。気になるパッケージ版やDSP版も、国内販売することが明らかになった。時期や価格は同じく未定だが、既報のとおり、米AmazonがWindows 10のUSB/Disc版の予約受付を開始していることを踏まえると、8月中には国内でも手にすることができそうだ。ちなみにWindows 10へのアップグレードは、ユーザーファイルも引き継がれるため、これまで使ってきたWindows転送ツールは提供されない。また、Windows Media Centerの削除に関しては、MicrosoftのGabriel Aul氏が「将来的にDVDビデオ再生オプションを提供する」とツイートしているが、こちらの詳細も7月29日以降だという。日本マイクロソフトはWindows 10の互換性問題を重視している。Windows 10の開発中から、同社の開発部門はもちろんマーケティング部門ととも各ISV/IHVに対して、Windows 10の事前説明を行ってきた。具体的な社名は明らかにしていないが、国内で大きなシェアを持つアプリケーション開発企業に対しては最新ビルドを提供して、互換性問題の解決に努めてきたという。アップグレード登場まで残すところ12日。Windows 10の登場は本当に我々のIT環境を一新するのか、さらなる注目が集まる。阿久津良和(Cactus)
2015年07月17日Windows 8.1をネットワークの脅威から守る「Windowsファイアウォール」は、インターネットアクセスが当たり前となった現在では、欠かせない機能の1つである。間もなく登場するWindows 10も同様の機能を備えているが、今回はWindowsファイアウォールで設定した「ルール」のバックアップ方法を紹介しよう。○長い歴史を持つWindowsファイアウォールWindowsが最初に「Windowsファイアウォール」を実装したのは、2004年9月リリースのWindows XP SP2と、11年前である。厳密に言えばそれ以前も実装していたが、当時はマルウェアが世界レベルで氾濫し、セキュリティリスクが高まっていた。Microsoftは急きょUIを改善してSP2にWindowsファイアウォールを含めている。しかし、Windows XP SP2のWindowsファイアウォールはインバウンド(外部からPCへの通信を遮断・制御)にとどまり、アウトバウンド(PCから外部への通信を遮断・制御)をスルーしていた。Windows Vistaでアウトバウンドに対応したものの、簡易的なUIでは制御できず、「セキュリティが強化されたWindowsファイアウォール」を使わなければならない。例えば、Windowsファイアウォールがアプリケーションの通信を検知すると、例外設定をうながすダイアログを出すが、アウトバウンドに対するダイアログは現れない。残念ながら、この仕様は現在のWindows 8.1まで続いてる。○ルール設定をバックアップするそれでも、別途ファイアウォール系ツールを導入することを考えれば、Windowsファイアウォールが標準で備わっているのは有益だ。細かい設定を気にせずWindowsファイアウォールを利用しているユーザーも多いと思うが、いわゆるルール設定(プログラム単位やTCPポート単位での制御など)は、バックアップしておくことをおすすめしたい。バックアップ操作は、Windowsファイアウォールではなく、「セキュリティが強化されたWindowsファイアウォール」から実行する。コンソールの操作ウィンドウに並ぶ「ポリシーのエクスポート」を使えば、拡張子「.wfw」を持つファイルの作成が可能だ。今回はデスクトップに作成したが、普段はドキュメントフォルダーなどにバックアップファイルを作成し、そのままユーザーファイルと一緒にバックアップ対象として追加しておこう。○コマンドラインからバックアップするこの操作はコマンドラインからも実行できる。管理者権限を持つコマンドプロンプトを起動し、netshコマンドを使う。やはりデスクトップを出力先としているが、ドキュメントフォルダーに直接保存する場合は「netsh advfirewall export "%userprofile%\Documents\WF-rule-Backup.wfw"」に変更すればよい。次回は、バックアップしたWindowsファイアウォールのルールを、復元する方法を紹介しよう。阿久津良和(Cactus)
2015年07月17日7月8日(米国時間)、Microsoftは最大7,800人にも及ぶ人員削減計画を発表した。2014年7月に発表した18,000人削減、2009年の5,000人削減から数えて3回目の大規模リストラとなった。2015年1月時点でのMicrosoft全世界従業員数は126,945人。その数字に対して約13%の人員削減となる。対象となるのはスマートフォンデバイス事業に従事する社員。2014年のリストラもその中心は旧Nokiaに在籍していた専門職および工場従業員だった。リストラを敢行する理由としてMicrosoft CEOのSatya Nadella氏は「我々は単独のスマートフォンビジネスを成長させる戦略から、Windowsエコシステムの構築と成長を推し進める戦略へ移行中だ」、「携帯電話は我々のファーストパーソンデバイスに含まれるが、短期的にはより良い製品とスピーディで効果的なスマートフォンの資産構成を目指す」と今回のリストラが単なる人員削減ではない点を強調している。また、リストラに要する費用として7.5~8.5億ドル(約908~1,028億円)を見込んでいるが、これは大きな問題ではない。よりも注目するべきは、Nokiaのデバイスおよびサービス事業から得た資産を一括で償却する点である。その結果、76億ドル(約9,200億円)の減損になるとMicrosoftは説明した。○MicrosoftはWindows Phoneから撤退するのかさて、Microsoftは「Lumia」ブランドのWindows Phoneデバイスを日本以外の各国で発売している。先頃は日本マイクロソフト社員用デバイスも、特別に技適マークを取得したLumiaデバイスに切り替わり、日本国内におけるWindows Phoneデバイスの再投入に期待が高まりつつあった。だが、今回のリストラ計画には、Microsoft自身がスマートフォンデバイス(=Lumia)事業を続ける意味が小さいため、競争軸を変更する目論見がある。Nokiaの携帯電話事業買収にもっとも乗り気だったのは前CEOであるSteve Ballmer氏であり、Nadella氏はもともと反対の姿勢を示していた。2015年Q3のスマートフォンデバイス部門に関する情報を確認すると、Lumiaシリーズは860万台を販売し、14億ドルを売り上げている。だが、前期と比べると16%の減収であり、決してよい成績とは言い難い。市場シェアもiOS/Androidに大差をつけられたままだ。このように"お荷物"的存在であるスマートフォンデバイス事業に対して、アプローチと変えようとするのが今回の発表内容だ。では、MicrosoftはLumiaシリーズから完全撤退するのだろうか。筆者の予測は"否"である。まず、2015年後半に登場する予定のWinodws 10 Mobileをインストールするデバイスが現状では少な過ぎるのだ。7月1日、日本マイクロソフト代表執行役社長に就任した平野拓也氏は「今までお付き合いの少なかったデバイスベンダーからも多くの問い合わせを受けている」、とWindows Phoneデバイスの開発が国内でも盛り上がりつつあることを示していたが、ハードウェアをパートナー企業だけに頼る旧来の手法を選択する可能性は薄い。Surfaceのようにターゲットを絞って開発を続けるのではないだろうか。もちろん、Winodws 10 Mobileを捨て去る予定は、Nadella氏の手帳に書き込まれていないだろう。既にLumiaやSurfaceなどを扱っていたMicrosoft Devices Groupを、WindowsやWindows Phoneなどを扱うOperating Systems Groupに統合し、新たにWindows and Devices Groupを新設した。この部門再構築は"Windowsエコシステムに注力する"という意思の表れと言える。阿久津良和(Cactus)
2015年07月13日○パーティションを分割する前回は、HDD/SSDに存在する複数のパーティションを結合する方法を紹介した。今回は逆に、1つのパーティションを2つ以上のパーティションへと分解する操作を取り上げよう。こちらも「ディスクの管理」とウィザードで手順を進めるため、操作は簡単だ。ポイントは分割元ボリュームの縮小サイズ(容量)で、ストレージ全体の容量と用途に応じた容量を考えて調整する。例えば、ファイル履歴専用ボリュームであれば、ユーザーフォルダーが占める容量の1.5~2倍くらい、システムイメージなどバックアップ用ボリュームならホストドライブの1.5倍くらいを目安にサイズ(容量)を調整するとよい。後は、パーティション確保後にNTFSボリュームを作成すれば作業完了だ(NTFSでフォーマット)。「ディスクの管理」画面に加えて、トースト通知(ポップアップ)によってボリュームを認識したことが示され、エクスプローラーを起動すれば新たなドライブが加わっているだろう。これらの手順で、自分が使いやすいストレージ環境を構築してほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年07月12日HDDやSSDの記憶領域は、全体をいくつかに区切って利用するケースが多い。Windows 8.1も、インストール時に複数の区切りを使って、起動用の領域や、Cドライブ用の領域を設けている。今回は領域(パーティション)の概要とサイズ(容量)を変更する方法を紹介しよう。○Windowsのパーティション構成は?HDD/SSDにおいて、分割された領域を「パーティション」、そのパーティションを任意のファイルシステムで使用可能にした状態を「ボリューム」と呼ぶ。まずは下図をご覧いただきたい。一方はBIOS、もう一方はUEFI(EFI)を搭載したPCにWindows 8.1をインストールし、HDD/SSDのパーティションを「ディスク管理」で表示させた状態だ。「システム予約済み(MSR)」にはブートマネージャーとBCD(ブート構成データベース)を、環境によってはBitLockerドライブ暗号化で使用するスタートアップファイルを格納する。UEFI環境の場合、システム予約済みパーティションの代わりに「回復パーティション」「EFIシステムパーティション」が加わっている。前者はWindows RE(回復環境)を格納し、後者はブートマネージャーが主に使う。なお、ディスクの管理では非表示となるが、MSRパーティションも存在する。○パーティションを結合する今回のターゲットは、上記のようなWindowsセットアップが自動生成する特殊なパーティションではなく、ユーザーが自由に使用するボリュームだ。前述したBIOS環境のPCにWindows 8.1をインストールした例では、CドライブおよびEドライブという2つの領域が存在する。最近の大容量HDDの場合、フラグメント(断片化)を少しでも抑えるためにパーティションを分割する利便性もあれば、空き容量を意識せずにデータをため込めるように1パーティションで運用するケースもある。このあたりはユーザーのスタイルによって異なるが、まずは分割したパーティションの結合方法から紹介しよう。まずEドライブを削除して空き領域にしてから、その空き領域を使ってCドライブの容量を増やすという手順を取る。ボリューム上のデータ操作は割愛するので、あらかじめ破棄するボリューム(今回の例ではEドライブ)のファイルは移動させてほしい。上記の手順を行うことで、ボリュームの結合が完了する。結合時はPCの再起動といった操作は必要なく、そのままエクスプローラーで操作可能になる。1つのボリュームを2つ以上に分割操作に関しては、次回紹介しよう。阿久津良和(Cactus)
2015年07月11日Microsoftは7月2日(米国時間)、Windows 10 Insider Preview ビルド10162をリリースした。6月29日にビルド10158、翌日の30日にビルド10159をリリースし、そして今回のビルド10162である。この3連打には少々驚かされた。そもそもWindows 10開発プロセスに関してMicrosoftは、「Ring Progression(連続する輪)と呼ぶ仕組みを採用した」と説明している。6月末の時点で新規コードの追加は行わず、既存コードのバグフィックスに専念していると思われるが、いずれにせよデイリービルドを生成するのはこれまでどおり。その結果をOSG(Operating System Group)メンバーが検証し、安全性を確保すると、Microsoft社内の数万人が運用を開始。その次にWindows Insider Program参加者に公開するという流れだった。6月の終わりから立て続けにリリースしたWinodws 10 Insider Previewのビルドは、いずれも高速リングを対象にしているが、それでも早急な印象は拭えない。直近の社内ビルドは確認できなかったが、上図で言うところのOSGリングの検証をスキップしているのではないか、という印象がある。OSG FundamentalsチームのエンジニアリングジェネラルマネージャーGabriel Aul氏は、「ほぼすべてのビルドが内部リングにあり、開発チームは"最終的な仕上げ"に取りかかっている」と言う。振り返るとビルド10159は「Hero」と呼ばれる画像をロック画面やデスクトップの背景画像に採用し、サインイン画面を再デザインした。そのほか、300を超える修正も加わっている。そして今回のビルド10162では、信頼性やパフォーマンス、バッテリー消費の改善を行った。その結果を踏まえてAul氏は、ビルド10162の安定が確認できれば、低速リングおよびISOファイルの提供を7月第2週に予定していると述べていたが、同日早々にISO版のダウンロードリンクを更新している。話は変わるがWindows 10は、これまでのバージョンやService Packといった区切りごとにローンチする手法から、常に更新していく「Windows as Service」に移行する。本連載でも何度か触れてきた話題だが、今後もWindows Insider Programは続く。そこでMicrosoftは、Windows 10へ移行するエンドユーザーに対して2つの道筋を用意した。上図はBuild 2015のスライドをde:code 2015開催時に日本語化したものだが、Windows 10は旧態依然としたプロセスを破棄し、従来のWinodws Updateによる更新プログラムのリリース「CB(Current Branch)」の直前に、早期テストプログラムとしてInsider Preview Branchを設けている。同プログラムの参加者数は500万人を突破。もちろん間もなく登場するWindows 10に対する関心の高さから、増加傾向にあるのだろう。このように7月29日に登場する(アップグレードを開始する)Winodws 10はゴールではない。今後数年以上は確実に続くであろうMicrosoftの新たなスタート地点となるのだ。Windowsユーザーが初めて体験するパッケージからサービスへの移行は、どのように化学変化を起こすのだろうか。ちょうど既報のとおりMicrosoftは創業40周年、日本法人設立も30周年の節目にあたるが、サービスへの移行をユーザーに浸透させるため、これまで以上のチャレンジャー精神を求められるだろう。なお、日本マイクロソフト関係者は「Windows 10搭載PCの調整や交渉で、夏から秋・冬にかけては非常に忙しい」と筆者に説明しつつ、「一部のPCベンダーが7月29日前後にWindows 10プレインストールPCをリリースする可能性はゼロではない」とも述べていた。阿久津良和(Cactus)
2015年07月06日7月29日に登場するWindows 10に備え、Windows 8.1をメンテナンスしておきたい。前回はスタートアッププログラムの整理を行ったが、今回は「タスク」を利用するプログラムの確認や整理方法について紹介しよう。○タスクで実行するプログラムとは前回でも軽く触れたが、近年は「タスクスケジューラ」にタスクを作成し、プログラムの実行や情報更新などを行うアプリケーションが増えている。例えば、Google Chromeを始めとするGoogle製アプリケーションは、「GoogleUpdateTaskMachineCore」などのタスクを作成し、サインイン時や特定の時間にタスクを実行して更新処理を行う仕組みだ。しかし、タスクの中には、どのようなアクションを実行しているか分からないものも少なくない。このようなケースに対しては「操作」タブを開いて、プログラムの実行パスを確認しよう。下図に示したタスクは作成者が「SkypeSetupLight」、プログラムの実行パスはMozilla Firefoxに対して、「~」という引数が与えられている。このことから、Skype Webで音声・ビデオ通話を実現する「Skype Webプラグイン」のタスクであることが分かるだろう。このように、タスクにも多くの自動実行プログラムが存在し、ユーザーが意図しない状態でも多数のプログラムが稼働している。○エクスポート → 無効化 → 削除の手順を踏む要不要の判断はスタートアッププログラムと同じだ。ユーザー側で理解できないタスクでも、特定のプログラムが必要とし、自身のアップデートやデータ更新などに用いる可能性がある。そこでおすすめしたいが、バックアップ→無効化→削除という流れだ。タスクはXML形式ファイルでエクスポートできるため、これを利用してバックアップを作成する。次に、エクスポート操作を行ったタスクを無効にすればよい。これでしばらく様子を見て、Windowsやアプリケーションの動作に問題がないようであれば削除を実行する。なお、明らかにタスクの無効化が悪影響を及ぼした場合は、「有効」を選択してタスクが稼働するように切り替えよう。○タスクをインポートする万が一、タスクを削除してから問題発生に気付いた場合は、インポート操作でタスクを復元する。操作ウィンドウに並ぶ「タスクのインポート」から先ほどのXML形式ファイルを選択すればよい。このような手順でWindowsのタスクを制御することが可能だ。Windows 10へのアップグレードに備えて、環境の整理に役立てほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年07月03日7月29日に登場するWindows 10に備え、Windows 8.1をメンテナンスしておきたい。使用頻度が低く、今後も使う機会が少ないアプリケーションのアンインストールなどだ。最初に目を向けるのは、OSの動作に大きく影響を与えるスタートアッププログラムではないだろうか。今回はOS起動時に自動実行するスタートアッププログラムを整理しよう。○スタートアッププログラムの登録場所スタートアッププログラムの構造は、Windows 2000以降から現行のWindows 8.1まで大きく変わらない。特定のフォルダーとレジストリの2カ所でプログラムを自動実行し、多様な機能を実現してきた。まずフォルダーは「%APPDATA%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs\Startup」と、「%ProgramData%\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs\Startup」だ。前者はサインインするユーザー専用のスタートアップフォルダー、後者はPCにアカウントを持つユーザー全員が参照するスタートアップフォルダーとなる。これらのフォルダーに登録された実行プログラム(もしくは実行プログラムへのショートカット)が、Windows 8.1が起動したあと自動的に実行される仕組みだ。一方のレジストリは多岐にわたる。下記は64ビット版Windows 8.1を例にまとめたものだが、この他にも「次回起動時にセットアッププログラムを登録」するための、「HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Active Setup\Installed Components」キーなど枚挙に暇がない。この連載ではレジストリ操作は行わないため詳細は割愛するが、Windowsはこのようにフォルダーとレジストリエントリで、スタートアッププログラムを管理しているのだ。なお、近年はタスク(スケジューラ)から設定する諸条件でプログラムを起動するものも増えている。クリーニングという観点からは、こちらもチェックしなければならない。○タスクマネージャーで整理するスタートアッププログラムを整理するには、標準的なフォルダーやレジストリエントリ両者が対象となる。その際に役立つのが「タスクマネージャー(taskmgr.exe)」だ。下図は実行ファイル名で起動しているが、「Ctrl」+「Shift」+「ESC」キーを押して起動しても構わない。タスクマネージャーを起動したら、ウィンドウ左下の「詳細」をクリックして、詳細表示に切り替えよう。「スタートアップ」タブには、プログラム名の他に「発行元」や「状態」、「スタートアップへの負荷」が並ぶ。例えば負荷が「高」の場合、プログラム実行時に一定時間を要していることを意味する。コンテキストメニューに並ぶ「無効化」や「無効にする」ボタンを押すことで、スタートアッププログラムの自動起動を無効にすることが可能だ。ポイントはスタートアッププログラムが、どのアプリケーションに影響を及ぼすかという点。先ほどのコンテキストメニューから「ファイルの場所を開く」を選択して、実行ファイルを格納するフォルダーを開いて確認しよう。スタートアッププログラムを無効にすると、アプリケーションが正常に動作しない例もあるため、無効にする意味と結果を踏まえながら取捨選択してほしい。阿久津良和(Cactus)
2015年07月02日読者の方々も聞き飽きている頃だろうが、2015年7月29日のWindows 10アップグレードリリースまで残すところ約1カ月。2015年当初から「可能であれば毎月プレビュー版を更新する」と公言したようにMicrosoftは、6月29日(現地時間)にWindows 10 Insider Preview ビルド10158をリリースした。アップグレードタイミングなどを鑑みると、これが(リリース前)最後のプレビュー版となるだろう。○遂に搭載したMicrosoft EdgeWindows 10アップグレードリリース直前と相まって、さまざまな噂が世間をにぎわしている。筆者が耳にした中では、Microsoftが7月12日から5日間、フロリダ州オーランドで開催するWorldwide Partner Conference 2015の前後に、Windows 10がRTM(製造工程版)に達し、OEMパートナーへの影響が始まる可能性が高いという。真偽のほどは不明だが、Windows Updateで提供するアップグレードプログラムのテスト期間なども考慮しなければならないため、7月29日から逆算すると7月第4週の初め(21日)には、Windows 10 RTMに達していなければならない。となれば、ビルド10158以降はバグフィックス以外のコーディング作業は存在せず、Windows 10開発陣は一区切りできるだけの完成度を目指す必要がある。今回リリースしたビルド10158の進捗状況を元に、その完成度や前ビルドからの変更点を確認しよう。最初に目に付くのはタスクバーに並ぶMicrosoft Edgeのアイコンである。これはビルド10147(未公開)から、Internet Explorer 11の代わりにMicrosoft Edgeが標準Webブラウザーとなったためだ。ただし、ベータ版だったProject Spartanに置き換わる存在ではなく、内部的には異なるアプリケーションとして管理しているため、お気に入りやCOOKIEなどは引き継がれない。OSG(Operating Systems Group)FundamentalsチームのエンジニアリングジェネラルマネージャーGabriel Aul氏は「アップグレード前にバックアップしてほしい」と本ビルドのリリースを発表した公式ブログで説明している。具体的には「%LOCALAPPDATA%\Packages\Microsoft.Windows.Spartan_cw5n1h2txyewy\AC\Spartan\User\Default\Favorites」フォルダーの内容を「%USERPROFILE%\Favorites」フォルダーにコピーし、Microsoft Edgeでインポート操作を実行すればよい。Aul氏によるMicrosoft Edgeの変更点を確認すると、新たに<ホーム>ボタンが復活している。これは多くのフィードバックを受けて対応した改善の1つだ。また、前述したように、お気に入りやブックマークをインポートする機能を追加している。本ビルドのMicrosoft EdgeはInternet Explorerしかサポートしていないが、Mozilla FirefoxやGoogle Chromeへの対応は今後の課題となるのだろう。設定項目を眺めると「プログラムから開く」に<スタートページ>が加わっている。こちらは単にトップページを開くだけの設定だ。なお、新規タブではトップサイトやおすすめのコンテンツを表示する機能を備えて、Microsoft Edgeにも引き継がれているものの、"おすすめのコンテンツ"が表示されない。「新しいタブを開いた時に表示するページ」の既定値が「トップサイト」だったことが影響しているのか分からないが、不可解に動作する部分が残っているようだ。詳細設定の「プライバシーとサービス」では、<パスワードを保存する>を新たに加えている。フォーム入力の記録はProject Spartanにも用意していたが、これでWebサイトのパスワード入力に煩わされることは減りそうだ。さらに<保存されたパスワードを管理する>からは、各Webサイトで記録したパスワードを管理できる。現時点では編集機能は備えず、<×>ボタンでエントリーを削除するだけだった。この他にMicrosoft Edgeを最小化した状態での音楽再生機能や、タブをドラッグすることで別ウィンドウを開く機能、ダークテーマを用意している。○安定に向けてさらに進んだビルド10158まずはMicrosoft Edgeの新機能をご覧頂いたが、以前のビルドで悩まされていたExplorer.exeのハングアップ問題をようやく解決した。極めて当たり前なのだが、再サインインするたびに警告音とダイアログに悩まされなくなったのは、大きな開放感につながる。ビルド10158はタブレットモードのアニメーション効果やスタートメニューの動作など、UX(ユーザーエクスペリエンス)的な改善が加わり、デスクトップモードとタブレットモードの切り替えも以前のように描画が遅延するような場面はない。また、タスクバー上のボタンにもいくつかの改良が加わった。エクスプローラーによるファイルコピー時は進捗状況を示すアニメーションが、下から上方向に垂直に増える効果から、Windows 8.xと同じ効果に戻っている。そしてアプリケーションからの通知が発生した場合はオレンジ色で点滅する仕組みが加わった。ユニバーサルWindowsアプリ「フォト」もストア経由で最新版に更新している。バージョンを確認すると15.618.18170.0だったが、相変わらずアルバム機能が正しく動作しない点は変わらない。こちらはピクチャフォルダーに格納した画像ファイルから類似するものを、ひとまとめにする機能と思われる。Aul氏は受け取ったフィードバックのトップは"アニメーションGIFのサポート"だったため、同バージョンから表示可能にした。また、同じくフィードバックを受けて<プログラムから開く>を追加している。我々日本人には現時点で関係ないが、Cortanaの改善やOffice 365の統合が本ビルドから加わっている。詳細はこちらの公式ブログが詳しく、Office 365のスケジュール管理機能とCortanaのリマインダー機能が連動するといった連係が行われるようだ。そのCortanaだが、Windows 8.xの「Windowsの機能」に相当する「オプション機能の管理」を眺めていると、「日本語の音声合成」「日本語の音声認識」といったコンポーネントがインストール済みであることが確認できる。もっとも、音声認識エンジンを選択する「時刻と言語\音声認識」のドロップダウンリストはグレーアウトしているため、Cortanaを使用できないことに変わりはないが、準備は着々と進んでいるのだろうと思いたい。ちなみに本ビルドから「Insider Hub」はプリインストールされなくなった。Windows 10 Insider Previewに関する最新ニュースやミッションの最新情報もチェックしたい方は、「オプション機能の管理」からインストール可能だ。断言するのは難しいがビルド10151は我々に提供される最後のビルドとなる。Aul氏によれば、6月30日(日本は7月1日)にWindows 10 SDKプレビュー版のリリースを予定していることを踏まえると、いよいよ完成に向けたラストスパートに入るのだろう。Windows 10へアップグレードする方や、Windows 10 Insider Previewで評価しつつ、Windows 7などにとどまる方も、本ビルドは高速リングを選んで可能な限りインストールすべきだ。阿久津良和(Cactus)
2015年06月30日Windows 10は「One Windows」というカーネルやプラットフォームを統合したビジョンを目指している。そのため、デスクトップ/タブレット向けOSのWindows 10だけでなく、スマートフォン向けOSのWindows 10 Mobileの存在も興味深い。Windows 10 Mobile ビルド10136をリリースした際に、Microsoft OSG FundamentalsチームエンジニアリングジェネラルマネージャーのGabriel Aul氏は、「開発が順調に進めば、今年の後半には(Windows 10 Mobileを)リリースできると思う」と述べている。これまでの流れを振り返ってみよう。最初にWindows 10 Mobileのプレビュー版が登場したのは2015年2月12日だった。そのころは「Windows 10 Technical Preview for Phones」と呼ばれ、プレビュー版がサポートするデバイスは、Lumiaシリーズの第2~第3世代などに限られていた。その後、3月27日にサポートデバイスを拡充し、4月10日にはバージョン10.0.12534.56(ビルド10051)、4月21日にはバージョン10.0.12534.59(ビルド10052)と、開発者向けセミナー「Build 2015」に向けて駆け足でプレビュー版を更新していった。正直に述べればこの頃の筆者は、Windows 10 Insider Previewの変化を追いかけるのに忙しく、Windows 10 Mobileにあまり興味を持っていなかった。それを大きく覆したのが、2015年5月14日にリリースしたバージョン10.0.12562.84(ビルド10080)である。ビルド10080ではUIを改良し、新しいアクセントカラーやライブタイルアニメーション、透明化などを実装。Windows 10 Insider Previewと同じく「ミュージック」や「ビデオ」のプレビュー版アプリや、Windowsストアのベータ版を提供し始めたのもこの頃である。しかし、筆者も実際に試したが、Windows Phone 8.1の安定度には遠く及ばず、一部のアプリケーションが起動しない場面に何度も出くわした。その後しばらくアップデートする気配はなかったものの、5月26日に突然「Phone Companion」を発表。こちらはPCとWindows Phone/Android/iOSの連係を目的とし、アプリケーションのインストールやOneDrive経由のデータ同期を実現するスタータープログラムである。注目すべきは音声パーソナルアシスタントのCortanaをAndroid/iOSに提供する点だ。もっとも2015年7月29日のWinodws 10アップグレード開始時点では、Cortanaは日本語に対応していないため、我々が恩恵を受ける場面は少ない。Cortanaについては機会を見て報告する。Winodws 10 Mobileが安定し始めたのは、6月16日リリースのバージョン10.0.12634.131(ビルド10136)あたりからだ。アップデートロジックにバグがあるため、一度Windows Phone 8.1に戻してからインストールする必要があるなど、不具合も残ってはいるものの、ようやく使えるレベルに達したように感じた。開発チームも手応えを感じ、本稿冒頭のように2015年後半のリリースを示唆するに至った。そして6月25日、バージョン10.0.12648.133(ビルド10149)をリリースした。今回はWindows 10 Insider Previewと同じく更新プログラムでアップデートを実行する形だが、最後のステップで日付と時刻が表示されないロック画面が10分ほど続いた状態になる、とAul氏は注意を喚起している。筆者の環境でもアップデートを実行後の再起動処理がうまく続かず、0x80091007エラーが発生。そのため、Windows Phone 8.1→Windows Insiderアプリのインストール→高速リングへ変更という手順を経て、ようやくビルド10149にたどりついた。ビルド10149における変更点はUXやCortanaの改善、写真撮影時のOneDrive自動アップロード機能の復活やバグ修正など多岐にわたる。筆者は途中参加ながらも一連のプレビューを見て行くと、Windows 10 Mobileが一歩ずつ安定性や利便性を向上させてきたことがよくわかる。2015年中に登場予定のWindows 10 Mobileの開発は順調だ。まもなく登場するWindows 10と合わせて利用する予定の方は期待していいだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年06月29日○Windows UpdateのデータベースをクリアするWindowsの重要な更新プログラムなどを適用するWindows Updateは、意外と不安定な一面がある。前回はWindows Updateの自動メンテナンスを紹介したが、今回はエラーコード「0x80070003」を対象にした手動メンテナンス方法を取り上げよう。なお、今回の操作を行うと、更新プログラムの適用履歴がリセットされる点に注意してほしい。まずはWindows Updateの手動停止だ。こちらは「サービス」から操作すればよい。Windows Updateを止めたら次の手順に進むが「サービス」は再び使用するので、閉じずに最小化しておくといいだろう。次に、「%SystemRoot%\SoftwareDistribution\DataStore」フォルダーと、「%SystemRoot%\SoftwareDistribution\Download」フォルダーの中身をキレイに削除しよう。「SoftwareDistribution」は更新プログラムのダウンロードや適用時に利用するフォルダーだ。何らかの原因でデータベースが破損した場合、Windows Updateが正常に動作しないことが多い。そのため、データベースファイル(DataStore.edb)やログファイル(Logsフォルダー)、ダウンロード済みファイル(Downloadフォルダーの内容)を削除するのだ。削除には管理者権限が必要なため、アクセス拒否を示すダイアログが現れた際は「すべての項目にこれを実行する」にチェックを入れてほしい。また、UACの昇格プロンプトが現れた際も指示に従って管理者権限を一時的に取得しよう。後は先ほどの「サービス」を呼び出してWindows Updateを実行すればよい。これでデータベースファイルやログファイルの再構築が始まり、コントロールパネルなどからWindows Updateが実行可能になる。○コマンドラインから実行する一見すると煩雑な操作手順だが、Windows Updateのサービスを停止してから、2カ所のフォルダー内をクリーニング。そしてWindows Updateのサービスを開始するだけだ。そのため、これらの操作はコマンドラインからも簡単に実行できる。net stop wuauservdel /s /q "%SystemRoot%\SoftwareDistribution\DataStore\*.*"del /s /q "%SystemRoot%\SoftwareDistribution\Download\*.*"net start wuauserv筆者はコマンドプロンプトの方が慣れているが、普段PowerShellをお使いの場合は、こちらの操作方法を用いた方が簡単だろう。PowerShellも管理者権限が必要となる。Stop-Service wuauservRemove-Item -Recurse $env:SystemRoot\SoftwareDistribution\DataStore\*Remove-Item -Recurse $env:SystemRoot\SoftwareDistribution\Download\*Start-Service wuauserv阿久津良和(Cactus)
2015年06月27日約1カ月後には登場するWindows 10。Windows 8.1に対しては、Windows Update経由のアップグレードが予定されている。だが、Windows Updateは意外と不安定だ。そこでWindows 10登場前に、Windows Updateの自動メンテナンス方法を紹介する。○Windows Updateのエラーコード問題を解決する1998年6月(日本語版は8月)リリースのWindows 98から実装したWindows Update。Microsoftが公開した修正プログラムを、自動的に適用する便利な仕組みだった。一方で多くのトラブルがあった(ある)のも事実である。今回、更新プログラム適用によるトラブルには触れず、Windows Update本体の問題を見ていく。Windows Updateはエラーの発生をコードで提示するため、ユーザー自身が不具合を改善することが難しい。本稿を執筆するにあたって調査したところ、MicrosoftはWindows Updateのトラブルに対応するサポートサイトを設けていた。用意されたリンク「一般的なWindows Updateのエラーの解決方法」を押してOSを選択すると、Windows Updateが通知したエラーコードの入力を求めてくる。ここで任意のコードを入力して「Enter」キーを押せば、具体的な手順や解決方法を提示するようになった。エラーコードの説明は割愛するが、今回の例ではトラブルシューティングツールや手動による解決方法が示された。問題を抱えているユーザーは、これらの情報を元に対応するとよいだろう。○トラブルシューティングツールで解決するWindows 7から、問題を起こしたシステムファイルの整理や、レジストリメンテナンスを自動的に行うトラブルシューティングツールを実装した。同じ仕組みはWindows 8.1にも引き継がれている。これらの中にWindows Updateに関するツールも含まれるが、オンラインの同ツールとは内容が異なるようだ。前述したサポートページが提示したトラブルシューティングツールを実行すると、BITS(Background Intelligent Transfer Service)がメンテナンス対象に含まれていることが分かる。こちらはアイドル時のネットワーク帯域を利用してファイル転送を行う機能だ。Windows XP時代から実装し、更新プログラムが正しくダウンロードできない場合、BITSに何らかの問題が発生している可能性が高い。後は手順に従ってトラブルシューティングツールを実行すれば、Windows Updateで発生している問題を自動的に解決できる。次回も、Windows Updateを題材にしたトラブルシューティング方法を紹介しよう。阿久津良和(Cactus)
2015年06月26日2回にわたって、Windows 8からWindows 8.1 Updateまでの特徴を大まかに紹介してきた。第1回や第2回と重複する部分もあるが、ここで改めて考えてみたい。Windows 8 & 8.1(Update)はダメなOSなのだろうか。確かにWindows 8は野心的なOSだった。それまでデスクトップ環境を主として使ってきたユーザーにとって、スタート画面は使いやすいものではない。Aeroグラスの廃止やモダンUIは結局のところ慣れの問題だが、必ずしも欠点とは言い切れない。また、Windowsストアアプリもローンチ直後と相まって、選択肢はかなり少なかった。だが、デスクトップ環境ならマルチディスプレイにすればスタート画面は大きなキャンパスとなり、Windowsストアアプリの全画面表示もさほど気にならない(前提条件が存在すること自体、マイナス面であることはその通り)。Windowsストアアプリもその後は充実し、デスクトップPCで使うメリットは少ないが、タブレットであれば利便性の高いアプリケーションや、息抜きできるゲームもそろってきた。あまり知られていないのが、タブレットでWindows 8を使ったときの利便性だ。タッチ操作でアプリケーションを切り替え、必要に応じてペンや指で手書きする直感的な操作には感心させられる。タブレットを中心にしてWindows 8を開発したからこそ、デスクトップ環境と相いれない部分が生じ、そこがダメなOSといわれる大きな理由の一つなのだろう。これも前回までと繰り返しになるが、Windows 8は脆弱(ぜいじゃく)性の緩和機能を強化するなど、セキュリティ面も大きく改善された。Windows Vistaで実装したASLR(アドレス空間のランダム化)も、Windows 8で実行時に確保するメモリー領域のランダム化によって、外部からの攻撃が成功してしまう危険性を大幅に低下させている。カーネル内部に目を向けても、無効なポインターを悪用する攻撃を防止するためのNULLポインター(通常無効なメモリーアドレス)の利用を原則禁止し、プロセッサが持つSMEPやPXNといった機能を用いて、脆弱性攻撃によるコード実行を抑止した。カーネル内のDEP(データ実行防止)を導入したのも、Windows 8からである。セキュリティ面でも、最新技術を搭載したOSを使うメリットは大きいのだ。○Windows 8.1はカスタマイズで使いやすくなるOSはカスタマイズすることで使いやすくなる。これはWindows 8.1に限った話ではない。ただWindows 8.1の場合は(特にデスクトップ中心のユーザーにとって)、これまでのWindowsと比べて、使いやすくするまでのカスタマイズ必須度が高い点が問題だ。最大のネックといえるスタートボタン/スタートメニューについては、「Classic Shell」に代表されるスタートメニュー復活アプリケーションで解決できる。Classic Shellの場合、クラシックスタートメニュー、Windows XP風のスタートメニュー、Windows Vista / 7風のスタートメニューから好きなものを選べる。また、「フォルダーウィンドウを閉じたときに、ウィンドウサイズや位置を記憶しなくなった」のも悪名が高い。これはWindows VistaからでWindows 8.1でも同様だが、「ShellFolderFix」をインストールすればよい。ShellFolderFixは、2009年にファーストリリースしたGeorg Fischer氏作のオープンソフトウェアだ。独自のデータベースを用意し、フォルダーを閉じるときに保存したウィンドウサイズ/位置データを、同じフォルダーを開く際に参照する仕組みである。Windows XPまでの挙動と完璧に同じとはいかず、Windows 7向けのソフトウェアではあるものの、筆者の環境ではWindows 8.1 Updateでも問題なく動作している。Microsoftのソフトウェア全体に共通していえることが、ファーストリリースは骨子を生み出したに過ぎず、そこから一歩ずつ改善する点だ。ちょうどWindows 8が8.1に、Windows 8.1が8.1 Updateへと歩みを進めてきたように、である。この3年間で、Winodws 8.xは確実に完成度を高めた。2015年7月29日に無償アップグレードが始まるWindows 10は、旧来のスタートメニューとスタート画面を融合した"新"スタートメニューを実装し、Internet ExplorerはMicrosoft Edgeへとリニューアル。仮想デスクトップやAeroグラスライクな透過効果など、デスクトップ環境の強化が目覚ましい。今さら「Windows 8.xへアップグレード」とはいわないし(企業ユーザーは状況が異なるかもしれない)、個人として「ダメなOS」と評価しているユーザーが多いことも承知の上で述べると、Windows 8.xは、デスクトップを主たる作業場として使っている筆者にとって遜色ないOSである。Windows 8.xは巷(ちまた)の声ほどダメなOSではないとまとめたい。阿久津良和(Cactus)
2015年06月25日○セカンドエディション? Windows 8.1(2013年) & 8.1 Update(2014年)2013年10月にリリースしたWindows 8.1は、Windows 8ユーザーに無償提供され、多くのユーザーは新機能の恩恵を受けた(Windows XP / Vista / 7ユーザーには有償パッケージを提供)。前回はWindows 8の「ユーザー評価が低い点」と「評価すべき優れた点」をまとめたが、今回はWindows 8.1およびWindows 8.1 Updateで改良された点や新機能を振り返っていく。この頃のMicrosoftは、より短い期間で新しいOSをリリースする「Rapid Release(ラピッドリリース)」というビジョンを提唱しており、当時の日本マイクロソフトは「その時代に即した機能を提供することで、デバイスとOS(ソフトウェア)の格差を縮める」と述べていた。例えば、InstantGOのサポートはその代表的といえるだろう。Windows 8時代はConnected Standbyという呼称を用いていたこの機能は、PCのスタンバイ時にも通信を断続的に行うことで、メール受信やカレンダーのバックグラウンド同期などを実現する機能だ。当初はMicrosoftの説明不足や実装の難しさから周知にいたらなかったが、現行のWindowsタブレットは多くがInstantGOをサポートしている。Bing検索の強化もWindows 8.1のポイントだった。当時のBing検索は「スマート検索」「ビジュアル検索」という2つのコンセプトをもとに、大幅な改良を加えている。前者は先ごろローンチした「Bing不動産」でも分かるBingのプラットフォーム化だ。また、ユーザーの検索体験を改善するためにキーストロークを読み取ることで、適切な検索結果が現れるようになった。同時に検索チャームの融合も行っている。後者は「ヒーローアンサー」と呼ばれるフルスクリーンUIだ。著名人や有名な都市を対象にさまざまな情報を提供する専用UIを用意し、テーマカラーも画像などの配色を取得して自動的に変化するユニークな機能である。Internet Explorer 9から始めたWeb標準への準拠を、さらに進めた「Internet Explorer 11」を搭載したのもWindows 8.1からだ。さらなる性能強化やHTML5への対応と、標準的なWebブラウザーとしてサードパーティー製Webブラウザーと肩を並べるようになったのは記憶に新しい。このほかにも、モダンフォントして遊明朝/遊ゴシックを採用し、クライアントHyper-Vのクリップボードサポートなど、かゆいところに手が届くような改良が加わった。○キーボード&マウスのユーザーエクスペリエンスを向上したWindows 8.1 Updateしかし残念ながら、Windows 8の「スタート画面ショック」は、Windows 8.1でもシェア拡大にブレーキをかけた状態のままである。Microsoftはラピッドリリースビジョンに沿って、2014年4月、Windows 8.1 Updateをリリースした。スタート画面には新たに電源ボタンと検索ボタンを追加し、コンテキストメニューの追加などUI面にさらなる改良を加えたが、ここでは「WIMBoot」(Windows Image File Boot)の実装に注目してみたい。下図はTechNetライブラリの説明図をキャプチャーしたものだが、パーティションレイアウトを整理することで、ストレージの空き容量が増えていることが分かる。具体的にはWindows RE回復ツール(winre.wim)などをイメージパーティションに移動させ、Windowsパーティションにはイメージに対するポインターファイルを用意することで、空き容量の拡大を実現している。既にWindows 8.1 Updateをプリインストールした一部のストレージ容量が少ないタブレットはWIMBootを利用しているようだ。各所に改良を施したWindows 8.1 Updateは、機能面も表面的な使い勝手も、Windows 8からは確実に良くなってる。ここをポジティブに評価するか、それとも「まだダメ」と評価するかは、ユーザーによって異なるところだろう。そうこうしているうち、2014年10月に次期Windows 10が発表され、Windows 8.xの求心力は低下した。次回はまとめとともに、Windows 8.xの使い勝手を昔に近づける方法などを紹介する。○Windows 8.1(Update)の改良点や、追加された機能・設定阿久津良和(Cactus)
2015年06月24日Windows 10のリリースが近づき、期待が高まっているところで、Windows 8・8.1を振り返ってみたい。同じく期待されて登場したWindows 8は、OS本来の実力はさておき、エンドユーザーの評判は必ずしも良くなかった。またまだ現役が続くWindows 8.1だが(Microsoftのサポート終了は2023年1月10日)、Windows 8を含めて本当にダメなOSなのだろうか。ちょっと昔から追ってみると、2000年のWindows Me(Millennium Edition)は低評価、2001年のWindows XPは高評価、2007年のWindows Vistaは低評価、2009年のWindows 7は高評価、2012年のWindows 8(2013年にWindows 8.1)は低評価というように、評価が低いWindowsと高いWindowsが交互に並ぶ(2000年のWindows 2000は高評価だがITプロフェッショナル向けOSだった)。Windows MeやWindows Vistaを経験してきたユーザーにとっては、Windows 10には否が応でも期待が高まるというものだ。○タブレットを意識しすぎたWindows 8(2012年)2012年8月、Windows 8の開発が完了し、MSDNや当時のTechNet参加者へリリースが始まった。一般的な発売日としては、10月26日にリリースしたGA(一般販売版)版を指すことが多い。当時はNHKなどのTV報道で「Windows 8をインストールしただけでタッチ操作が可能になる」的な取り上げられ方をされ、苦笑いした方も少なくないだろう。Windows 8の登場で多くのユーザーを驚かせたのは、スタート画面に代表されるモダンUIの存在である。それまでデスクトップに慣れ親しんだ人々にとって、PCとタブレットの操作性を両立させる(という考えのもとに開発した)モダンUIは、受け入れられるものではなかった。MicrosoftはなぜWindows 8.xというOSを開発し、そしてWindows 10にいたったのか。少し当時を振り返りたい。現在でも多くのユーザーが手にするiPhoneが日本に初上陸したのは、2008年7月のiPhone 3Gである。この頃はアーリーアダプタ層が手にするだけだったが、iPhone 4のリリース直前となる2010年3月までの累計出荷台数は約4,910万台。同じくAndroid搭載スマートフォンも2010年第1四半期の時点で、約5,450万台とかなりの数だ(いずれもワールドワイド)。当時はMicrosoftもWindows Phone 7というスマートフォン向けOSをリリースしていたが、Windows CEからWindows Mobileの後継OSという位置付けだ。国内では採用する通信キャリアも少なかったことから、iOS/Androidという新興の波に飲まれ、追いやられていた。Microsoftは、2009年からWindows部門に参加したSteven Sinofsky氏をリーダーとして、Windows 8に関する多くの情報提供を2011年8月から開始している。つまり、Windows 95から圧倒的シェアを持っていたMicrosoftが、iOS/Androidなどに追い抜かれ始めた時期だ。そのためMicrosoftは、当時ほかのOSがシェアを拡大しつつあったタブレット市場をにらみ、看板製品のWindowsをタブレットでも使えるようにした。これがWindows 8だ(Winodws XP Tablet PC Editionの存在を踏まえると、タブレットの画面サイズとタッチ操作に合わせて、GUIの最適化を図ったといったほうが近いかもしれない)。○Windows 8の悪いところ、良いところWindows 8は、Developer Previewの時点でモダンUIを実装し、スタート画面の実装は既定路線だった。このことが、1995年リリースのWindows 95からずっと、デスクトップとスタートメニューに慣れ親しんだユーザーの反発を生む。Windows 7まで残っていた「Windowsクラシック」のGUIがなくなったのも同様だ。Windows 95は20年前のOSだが、多くのユーザーは2001年10月リリースのWindows XPを体験のベースとしているのだろう。それでも10年以上も前だ。人は一度慣れた環境から抜け出しにくいことが、よく分かる。改めて、コンシューマーユーザーにあまり評判のよくないWindows 8について、不評を買ったところと、評価すべき優れたところのいくつかを、下表にまとめた(少々個人的な視点が含まれるのはご容赦いただきたい)。Microsoftアカウントの導入は賛否両論あるものの、それまでシングルアローンだったローカルアカウントから移行をうながす意味を持ち、力を入れ始めていたオンラインストレージ「OneDrive」との連係を実現した。モダンUIとスタート画面ばかり目が向きがちだが、Windows 7と比べても圧倒的な起動速度は、Windows 8の大きなアドバンテージといえる。OSブートメニューを呼び出すためのキーを押す合間もないため、OS上から選択するようになったのもWindows 8からだ。また、SSDやマザーボードのUEFIといった最新ハードウェアのサポートが進んだり、OSそのものとしてセキュリティが強固になったりと、見るべき点は多い。蛇足だが、Windows 8に関してはブランディングのミスが目立ったのも印象的である。前述したWindows Phone 7の頃は「Metro UI」という名称を用いていたが、諸事情の問題でモダンUIに改称。前述のOneDriveも、もとの名称であったSkyDriveから2014年1月に改称している(商標権の関係)。これらのブランディングは米国本社が主導しているため、日本マイクロソフトはどうすることもできなかったのだろうが、ビジネス畑出身のBallmer氏が主導していた時期だけに、筆者はかなり首をかしげていた。話を戻して、Windows 8で"ダメ"とされる部分もちょっとしたアプローチで解決できたりするのだが、そこは第3回に予定するとして、次回は現行OSであるWindows 8.1について詳しく注目してみよう。阿久津良和(Cactus)
2015年06月23日MicrosoftがWindowsやOfficeといったソフトウェアの開発スタンスを大きく変更したのは、Windows Vistaからである。2006年5月にリリースしたWindows Vista Beta 2は、それまでと異なり、誰もがダウンロードして試すことができた。当時のMicrosoftは、Windows XPの後継OSであるLonghorn(開発コード名、後のWindows Vista)を開発中だったが、その歩みは厳しかった。実装するはずだった統合ファイルシステム「WinFS」の完成に至らなかったため、Longhornの開発を一度リセット。「MinWin」と呼ばれていた基礎的なカーネルをベースにWindows Vistaを作り直した。この遅れを巻き返すためにMicrosoftは方針転換し、プレビュー版を一般公開するようになったのである。Windows 10もその例に漏れず、2014年10月からプレビュー版を一般公開した。そして不具合や要望など多くの情報を収集するため、「Windowsフィードバック」を追加している。Microsoftはフィードバックへの投稿を求めているが、果たして我々ユーザーの声がどの程度反映されているのだろうか? そんな疑問に答える記事がWindows公式ブログに掲載された。投稿したのはData and FundamentalsチームでWindowsフィードバックのシニアプログラムマネージャーを務めるSamer Sawaya氏である。下図は2015年5月28日(米国時間)から直近までのWindows 10 Insider Previewに対するフィードバック数を示している。説明によれば2014年10月にリリースした最初のプレビュー版から数えて、300万件ものフィードバックを受け取ったという。そのうちポップアップ通知による回答は250万件。Microsoft社内では、Windowsフィードバックから受け取った意見を「UIF(ユーザー・インタフェース・フィードバック)」、Microsoft側からユーザーへ応答を求めた結果を「SIUF(システム・イニシエイテッド・ユーザー・フィードバック)」と読んでいる。受け取ったフィードバックはWindows 10に携わるすべてのチームで共有し、開発者は直接コメントを読んでいるという。下図はそのデータベースをWindows 10 Mobile ビルド10080を対象にしたフィードバックに絞り込んだものだが、スタート画面や検索、アプリケーションといった項目に分けて管理していることが見て取れる。以前、日本マイクロソフトの関係者は「フィードバックは日本語で構わない」と説明していたが、これはデータベース登録時に英語へ自動翻訳しているためと思われる。このローカライズに関してSawaya氏は「ローカライゼーションチームは、特定の言語を使用してフィードバックを検索し、誤ったUIの翻訳を修正している」と説明している。Windows 10は190カ国/111言語に対応するため、ローカライゼーションチームの責任は重要だ。そこで、どのアプリケーションもしくは機能に対してフィードバックが増えているか解析するシステムを用意したという。下図はWindows 10 ビルド10049に対するキーワードクラウドだが、Microsoft Edge(開発コード名:Project Spartan)に関するフィードバックをひと目で確認できる様子がうかがえる。ここで日本からWindows 10 Insider Previewに対して、どれだけのフィードバックが行われたか確認してみたい。Sawaya氏が公開したデータによれば、ビルド10130に対する日本からのフィードバックは154件。トップだった米国の4,817件に対して約30分の1だ。同氏は累計データを示していないため、この数字が多いのか少ないのか判断しかねるが、我々はもっと能動的に意見を述べた方がよさそうだ。その際は自分の意見が他と重複していないか、検索およびフィルター機能で確認するとよい。最近のWindowsフィードバックにはフィルター機能が加わり、現行ビルドの限定や提案・問題点の切り分けが可能になっている。これまで筆者は、Microsoftに個人情報が伝わるのを避けるため、フィードバックに関する機能を抑止するチューニングを紹介してきた(もちろん同社は個人を特定する情報収集は行っていないと説明している)。だが、このように我々が提案した意見や希望が開発チームに伝わり、Windowsが本当に使いやすいOSになるのであれば、積極的に意見を送ることは自身の利益につながるはずだ。Windows 10は2015年7月29日のリリースに向けた最終段階に入り、関係者の話によれば9~10月頃にはWindows 10をプリインストールしたPCが店頭に並ぶ予定だという。Windows 10リリース以降もMicrosoftはフィードバックを受け付け、常にWindows 10を刷新することを明らかにしている。Sawaya氏が最後に「素晴らしいフィードバックを続けて欲しい」と述べたように、今後も我々のフィードバックはWindows 10によい影響をもたらすだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年06月22日2015年6月19日、日本マイクロソフトは、10.8型Windows 8.1タブレット「Surface 3」を発売した。日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏は「売って売って売りまくる」とSurface 3のスタートダッシュに対する意気込みを語っている。○タブレットとPCの長所を併せ持つSurface 3「出しちゃいました」Surface 3は米国で2015年3月31日(現地時間)に発表し、同年5月5日に販売を開始したタブレット、もしくは2-in-1 PCである。追いかけるように日本国内でも、同年5月12日に発表、6月19日に発売することを明らかにしたのは記憶に新しい。そして発売日の当日、ビックカメラ有楽町店、ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaにおいて、発売記念セレモニーを開催した。会場となったビックカメラ有楽町店では、ビックカメラ 代表取締役社長の宮嶋宏幸氏が「発表後に多くの予約を頂いて、本日の発売日を楽しみにしていた。有楽町店では、Windowsの世界をお客様に知ってもらうため、本日からフロアを刷新した」と挨拶し、Surface 3と同店舗に設置した"日本最大級のWindowsエリア"をアピールした。宮嶋氏は夏商戦に向けた起爆剤として、Surface 3に期待を寄せているという。日本マイクロソフトの樋口氏は、Windowsエリアを指して「東京で一番のショーケースといっても過言ではない」と評価しつつ、Surface 3や2015年7月29日にリリースするWindows 10の情報発信基地として「(Surface 3を)売って売って売りまくりたい」と挨拶した。また、「タブレットと同じ軽さと薄さ、PCの機能を兼ね備えたものが出ればいいな」というニーズが多かったことを述べながら、「出しちゃいました」と軽快にSurface 3の長所をアピールしていた。ビックカメラ有楽町店 店長の佐藤壮史氏も「WindowsエリアはSurfaceを中心に全15社、150アイテム(オーダーメードPCを含めると380アイテム)の展示販売で構成している。訪れたお客様に対して詳しい説明を行いつつ、催事スペースを活用して各メーカーのイベントを始めとする情報発信を行っていく予定」と、同エリアを紹介。さらにSurface 3が若者に焦点を当てたデバイスであることから、「女性ユーザーのニーズが高まるのでは」と期待を語った。興味深いのが、Windows 10発売後の展開である。日本マイクロソフト 執行役 コンシューマー&パートナーグループ ゼネラルマネージャーの高橋美波氏は、「他の店舗でも同様の"Windowsエリア"を展開したいと考えている。9月~10月ごろから、各PCメーカーからWindows 10搭載デバイスが登場する予定」と述べていた。このことから察するに、Windows 10は6月中にもRTM(製造工程版)に達し、7月中には各PCメーカーへのOEM版提供を開始する予定になりそうだ。○ヨドバシAkibaでは…場所は変わって秋葉原。ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaでも発売セレモニーを開催した。ここでも登壇した樋口氏は、「張り切って(Surface 3ロゴの)Tシャツに着替えたが若干肌寒い」と。降りしきる雨の中でSurface 3をアピール。発言の多くはビックカメラ有楽町での内容と重複するため割愛するが、「Surface 3の背面にはMicrosoftのマークをプリントしている。既に見飽きた感はあるものの、我々はこのマークとともにマーケティングを展開していく」と述べていた。続いてスピーチしたのは、ソフトバンクモバイルのエリック・ガン氏。ソフトバンクモバイルと日本マイクロソフトはパートナーシップを結んでおり、Y!mobileのLTE回線およびSIMカードは、Surface 3との動作確認が行われている(Surface 3はSIMフリー端末なので、対応バンドが会えば他社製のSIMも使用可能。ただし動作検証は行われておらず、自己責任となる)。ガン氏は当日の天候を指して「雨は幸運を示す」と風水の意味を引用しつつ、Surface 3や自社のLTEサポートをアピール。ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba店長の御代川忍氏は「注文の数に驚かされている。Surface 3に触れて軽さや通信速度を実感して欲しい」と述べた。実際に店内へ入ると、正面入り口付近にSurfaceのロゴや映像CMを流した展示が目に入る。店舗に訪れた一般のお客も、興味深そうにSurface 3を触っていた。既報のとおり樋口氏は、2015年7月1日付けで日本マイクロソフト 代表執行役 会長に就任するため、コンシューマー向けイベントは本日が最後の登壇となる。2008年4月1日付けだった日本マイクロソフト 代表執行役社長への就任から数えて7年と3カ月を振り返り、「クラウドを前提にした製品開発が一般的になり、PCを取り巻く環境が大きく変化したのが印象深い」と述べていた。会長就任後は「社内の人材育成・活用といった非ビジネス系はもちろん、重要なプロジェクトやパートナーとの提携や関係性を補完したい。(2015年7月1日から代表取締役社長に就任する)平野(拓也氏)のスタートアップをサポートする」という。あと半月足らずで日本マイクロソフトは社長交代を迎え、その約1カ月後にはWindows 10がリリースされる。Surface 3の発売と相まって日本マイクロソフトは、今後も多くの注目を集めるだろう。阿久津良和(Cactus)
2015年06月19日