トリコ・コム デ ギャルソン(trict COMME des GARÇONS)の2017年春夏コレクションは、ロマンティックで軽やか。チュールやレースといった、透け感のある素材が主役を担い、春風のように穏やかな空気を運んでいる。始まりはチュールのトップスから。うねるように胸元で波打つ生地、その下から繊細なレースや花模様が並んだプリーツ地、スパンコール刺繍が顔を出している。合わせたスカートは、様々なシースルー地をランダムに重ねたもので、一部分をラウンドカットしたり、模様違いに繋ぎ合わせたり、ギャザーを寄せて変形させたりして、豊かな表情を創り出している。中盤から登場するブラック&ホワイトのルック。このクラシックウェアも、今季は軽快な印象だ。ロングコートは麻を交えたコットンで作り上げ、シャツにはナイロンオーガンザを用い、刺繍を全面にあしらった。キュプラとレーヨンを合わせた丸襟ジャケットは、なめらかな触り心地で‟早く春になって纏いたい”といった衝動へと繋げる。淡く柔らかなムードは大きく広がり、ディテールへも。多くの装いにはフリルがあしらわれ、胸元や袖口、ぺプラム辺りを彩る。テープで描いた花模様やカット刺繍、爽やかなホワイトのステッチも好印象で、フェミニニティをドラマティックに見せてくれる。序盤に提案されたリボンのニット、シースル地に浮かび上がるウールのモチーフはどこか懐かしく、心をほっこりとさせてくれる。
2016年11月06日ミュベール(MUVEIL)は、2017年春夏コレクションで一人の女性にオマージュを捧げた。長年モード誌でクリエイティブ・ディレクターを務めてきた実在の人物。デザイナー中山路子は、彼女のキャラクターや仕事ぶり、日々の生活から得たインスピレーションをファッションに落とし込む。エレガントでチャーミング、そして実直。今季の洋服たちを纏えば、まるでミューズと直接会話しているかのような不思議な気分に心が浸る。あちらこちらから顔を出す女性像。ワインが大好きだという彼女をイメージして、グラスやブドウをモチーフに採り入れた。デニムジャケットには、フレッシュなフルーツと食器が並び「乾杯!」という声が聴こえてきそうなほど賑やかなムード。膝下丈スカートのウエストゴム部分には、「べろんべろんに飲んじゃおう(Swilling fruit wine)」と挑発的なメッセージがあしらわれている。ペットの猫たちは「ご主人さま」と言わんばかりに、堂々とした姿でトップスから現れ、ヘルシー志向の食生活は「グルテンフリー」の合言葉にのせて、優雅に表現されている。また、公の場で度々見かけた奇抜なスタイリング。チャイナドレスやパジャマシャツといった彼女のアイコンは、ミュベールらしく立体的な刺繍と鮮やかな色使いで‟東京のいま”に合った形にリデザインされている。アイキャッチなデザインと豊かな色彩に恵まれているシーズンであるが、細部へのこだわりは変わりない。蜂の羽根や苺の種までビーズで表現したエンブロイダリー、シャツに施された細かなシャーリング。デニムパンツには、ポケット部分の刺繍にバリエーションを持たせ、レモンや洋梨、ブドウなど様々な果物が揃っている。
2016年11月06日ミュベール クリエーションライン(MUVEIL CREATIONLINE)の2017年春夏コレクションが発表された。昨シーズンよりスタートした新ラインでは、メインライン・ミュベールとはまた違ったデザイナー中山路子の感性に出会える。ウィメンズの洋服ではあるが、今季のイメージソースは中世の高貴な男性。馬に跨るその姿から歴史性を引き出し、官能的なディテールを添えて、メンズライクな中からフェミニニティを見つけ出す。キーマテリアルは麻だ。通気性の良さと涼しげな佇まいでまさに夏の救世主。王室の人々も好んで着ていたといわれるこの生地を利用して、ハリのある立体的なフォルムを作り出した。膝下丈のワンピースは、キュッとウエストを絞りシルエットに強弱をつけ、バルーン状のアームラインで可愛らしさを演出。ニュートラルカラーの優しげな世界に、あえて光沢を投じる。麻と真逆の存在ともいえるベロアのトップスは、繊細なレースを隠し込み、艶やかな光を纏っている。タックインしたトップス&トラウザーのスタイルと見まがえるオールインワンには、ツヤを帯びた素材を起用した。光の加減によってシワ感が浮かび上がり、色気へと繋げる。異素材のコンビネーションによる新しいサマーシーンでは、ビビットなグリーンがヒロインである。
2016年11月06日ミハラ ヤスヒロ(MIHARA YASUHIRO)の別ライン「マイン(MYne)」から2017年春夏コレクションが2017年1月上旬より登場。今シーズンのコレクションでは、ブランドロゴや、「WARNING」の言葉が書かれたバリケードテープや、落書きのようなイラストを使用しストリート感を演出している。ストリートスタイルを確立するマインのウェアスウェットトレーナーは、胸元に赤い文字でブランドロゴを配してシンプルにまとめ、バックには落書きのようなグラフィクをプリント。サイドや裾をカットオフしてクールな印象に仕上げた。サイドの切り口に施されたバリケードテープがポイントになっている。パンクスタイルを連想させるボーダーのカットソーは、肩が落ち、袖が長いゆったりとしたシルエット。ブラックのスキニーは、シンプルなデザインながらも、膝の切り込みやバックの膝下のペイントがさりげなくストリート感を添えている。スニーカーに新作「RUBBER SOLE HYBRID」登場新作スニーカーとして「RUBBER SOLE HYBRID」が登場。スニーカーの内側から別のスニーカーが飛び出したようなデザインのハイブリッドスニーカーだ。履き口にはチェッカーフラッグやゼブラ柄を、アッパーの外側にはスエード生地を使用することで表情に変化を持たせた。MYne × ニュー エラ コラボレーションキャップニュー エラ(New Era Cap)とのコラボレーションキャップは今季で3シーズン目。New eraの代表的なモデル「59FIFTY」のフォルムをブラックで統一したストリート感のあるキャップと、「920」モデルをレザー風の素材で仕上げたパンクなデザインのキャップ、2型がラインナップする。キャップは一足先に、2016年12月17日(土)よりMYne スニーカーショップにて発売開始する。伊勢丹新宿店の限定ストアで全アイテムを展開マインの限定ストアが1月18日(水)から24日(火)まで伊勢丹新宿店メンズ館にオープンする。コラボレーションキャップや新作スニーカーをはじめ、2017年春夏コレクションの全アイテムが店頭に並ぶ。アイテム詳細マイン 2017年春夏コレクション発売日:2017年1月上旬◼︎アイテム例・DANGER キャップ 6,000円カラー:ホワイト / イエロー / ブラック・ラクガキ スカジャン 42,000円カラー:ホワイト / ブラック・ハンドグラフィック スウェット プルオーバー 18,000円カラー:ホワイト / ブラック・ハンドグラフィック ビッグ Tシャツ 9,300円カラー:ホワイト / イエロー / レッド・ハンドグラフィック ノースリーブ 7,500円カラー:ホワイト / ブラック・スーパーロングスリーブ ボーダーカットソー 9,000円カラー:ホワイト-ブラック / ブラック-レッド・フーデッド ライトコート 39,000円カラー:ブラック / グレー・サイドテープ コート 47,000円カラー:ブラック-オレンジ / ブラック-ブラック・グラフィック デニムジャッケット 42,000円カラー:ブラック・グラフィック ライン スキニーデニム 27,500円カラー:ブラック・サイドテープ パンツ 29,500円カラー:ブラック-オレンジ / ブラック-ブラック・ハイブリッド ハイカット チェッカー スニーカー 29,000円カラー:ブラック / イエロー / ターコイズ・ハイブリッド ローカット ラバーソール スニーカー 28,000円カラー:ブラック-ブラック / イエロー / ベージュ / ブラック-ホワイト・MYne × New era コラボレーションキャップ 2型 各9,200円 ※2016年12月17日(土)よりMYne スニーカーショップにて発売開始。限定ストア詳細期間:2016年1月18日(水)〜1月24日(火)場所:伊勢丹新宿店メンズ館2F=インターナショナル クリエーターズ プロモーションスペース住所:東京都新宿区新宿3-14-1【問い合わせ先】Sosu co.,ltdTEL:03-5775-7941
2016年11月04日マリナ リナルディ(MARINA RINALDI)は、ステラ ジーン(Stella Jean)と共に2017年春夏カプセルコレクションを発表。2017年1月末より発売予定だ。2016年春夏、ツモリチサト(TSUMORI CHISATO)と共にカプセルコレクションを発表したマリナ リナルディ。今回は、ハイチ出身の母親を持ちイタリアで育った、特殊なバッグボーンのステラ・ジーンをゲストデザイナーとして迎えた。コレクションは、ステラのユーモアに溢れている。「カリブ海と地中海との出会い」をキーワードに、色鮮やかなグラフィックプリント、幾何学模様のジャカードが主役を担う。個性豊かなテキスタイルが融合する様は、一度見ると忘れられない強いインパクトを持ち、エキゾチックなムードを演出する。アクセサリーは、カニやロブスター、オウムといった動物たちがモチーフとなり、全体に活気をもたらした。一方でシルエットは、着心地のよさを追求するマリナ リナルディならではのアプローチで、日常に寄り添うモダンな仕上がり。スカートはフレアに、ブラウスは丸みのある柔らかなラインで、しっとりと女性らしさを添えている。店頭には、Tシャツやクロップドパンツといった、アクティブなウェアをはじめ、サンダルやネックレス、バッグといった小物も揃う。【詳細】マリナ リナルディ2017SS カプセルコレクション展開時期:2017年1月末(予定)取り扱い店舗:全国のマリナ リナルディ店舗※価格は未定。【問合せ先】マックスアンドコー ジャパンTEL:03-6434-5101
2016年11月03日G.V.G.V.(ジーヴィージーヴィー)の2017年春夏コレクションが発表された。今シーズンはパンチの効いたプリントやディテールを取り入れて、ブランドが追い求めるスタイルを映し出していく。なかでも、カルネボレンテ(carne borente)のメンバーの1人、アゴストン パリンコ(agoston palinko)とのコラボレーションによるポップなプリントが目を引く。アニマル柄やフラワーモチーフを色とりどりに表現したドレスは、黒のスカラップレースで女性らしさを加えた。パフスリーブのクラシカルなワンピースで提案する一方、トレンチコートに配すなど登場の形は様々だ。レースアップシリーズはデニム仕様で装い新たに登場。人気のMA-1だけでなくワイドパンツなどとしても提案している。斬新なプリントや人気アイテムに負けじと存在するオリジナルのキャラクターは、今季を語る上では欠かせない。彼らはカットソーやバッグに顔を出し、ポップな印象をもたらしてくれる。もちろん、ブランドらしい大胆なシルエットやデザインも健在である。ナイロンのマウンテンパーカーやベロアのトラックパンツには、「フェミニン」と大声をあげて主張するかのようにフリルが施されている。大胆なストライプを動かすラッフルは、デフォルメされたワードローブの雰囲気をより一層ラグジュアリーに変えた。主張的なものが共存する今シーズンのテーマはスポーツフェミニン。新鮮なプリントも定番のデザインも、ひとつひとつを汲み上げればそのテーマが感じられるだろう。そして対極にある2つを一挙に表現することで見えたのは、ブランドが常に追い求めているフェミニンとマスキュリンが同居する世界である。
2016年11月02日フィラージュ(filage) - 株式会社ルックから2017年春夏、新ブランドが立ち上がった。根底にあるのは、糸を紡ぐところから服になるまで真摯に向き合いたいという想い。ファストファッションが溢れる時代に、真正面から洋服に向かい合うブランドが誕生した。ファーストシーズンは2017年春夏。デビューショーを2016年10月27日(木)東京・六本木で行った。ブランド名および詳細に関しては当日まで明かされず、会場に集まった観客は、どんなブランドがローンチされるのかと胸をドキドキさせていた。ファーストルックは、ブラックのワンピース。フレアな仕立てでレングスは膝下。上品でありながらも、パキッとしたホワイトステッチとキャップとのコンビネーションがアクティブな印象を与えている。続く、ギンガムチェックのブラウスとワンピースのコンビも、裾はローエッジ仕立て。スタンドカラーのシャツも、ストライプ柄のワイドパンツと合わせてラフなムードを演出している。フィラージュのベースにあるのは、女性らしさやフォーマルといったシーンを問わないエッセンスである。しかし、投じられるのは程よいトレンド感だったり、オリジナリティへと導く大胆さ。太ももを大きく見せたワンピースのカッティング、ドキっとさせるような鮮烈な色使い、切りっぱなしまたはワイドなデニムパンツ・ソックスオンシューズといったストリートで見かけるコーディネート。それらの要素が融合され、新しいファッションカルチャーが生まれている。また、糸を紡ぐところから~というこだわりは、美しく素材使いに現れている。グリーンのメタルレザーやとろみのある光沢素材、肌を美しく魅せるシースループリーツ地。とにかく質感での遊びはお手の元で、テーラードジャケットにはラメ糸で縦縞模様を織り込み、デニムスカートにはゴールドラメを散りばめた。ディテールはフェミニンに。ノースリーブトップスをフリルが飾り、ブラウスにはボウタイリボンがあしらわれた。また、ボリュームパンツと並んでミニ丈スカートやワンピースが存在感を放っている。フィラージュは2017年春夏コレクションより発売をスタート。価格帯は、ドレスやジャケットで79,000円、スカート・パンツ・ブラウスは36,000円より展開予定だ。
2016年10月30日バルムング(BALMUNG)は、インスタレーション形式で2017年春夏コレクションを2016年10月23日(日)に発表。東京・渋谷で披露された今季は「公園はぼくらのファンタジー」と名付けられている。デザイナーHachiと古くからの友人であるLy。ブラックとホワイト、このベーシックな2色を用いて、一度見たら忘れられないシュールな作品を生み出しているアーティストであり、最近は「GRAY PARK」という作品を製作した。今季はLyとコラボレーションし、「PARK」というキーワードをLyの作品世界から借りてくる形で、「公園」という対象を隠喩的に表現して洋服に落とし込んでいる。デザイナーのHachiは、このキーワード「公園」を都市だったりカルチャーだったりを意味していると話す。「"戦う"ということと表現することはとても近いと思っていて、表現する場所としての都市迷彩、戦う場所としての都市、そういう意味をもって公園とそれを呼んでいます。」と語る。キーカラーは、黒でも白でもない混濁した色彩‟灰色”。迷彩柄のアイテムや、迷彩色とグラフティを意識した総柄のウェアが登場している。シワ加工のようなプリント、胸元に大きく空いた穴、ボトムスのサイドを走るラインディテール。細かな部分に投じられた個性が、互いに響き合いファンタジックな世界観へと繋げていく。 シルエットは、変わらずビックボリュームで、オーバーサイズのトップスや身体を包み込むようなビッグパーカーなどが展開されている。灰色迷彩によるブルゾンやショーツ、また重ねられたレースとミックスさせたショーツやスカートは、中でも印象的だ。‟ストリートスタイル”の象徴である、オールスタータイプのスニーカーは、今シーズンもHiroki Kataokaとのコラボレーションによるもの。また、今季らしい点として攻撃的な一面も挙げられる。膝を覆うギブスのようなプロテクターや、ハイネックトップスのアームラインを締め付けるベルト。そういった強いエッセンスは、『自分たちの「公園=遊び場」は自分たちで守らなきゃいけない。』というデザイナーHachiの想像力から生まれている。
2016年10月28日ハイク(HYKE)は、2017年春夏コレクションより、竹ヶ原敏之介が手掛ける「ビューティフルシューズ(BEAUTIFUL SHOES)とのコラボレーションライン「ビューティフルシューズ×ハイク(BEAUTIFUL SHOES×HYKE)」を展開する。これまでグローバルブランドと、様々な企画を行ってきたハイク。2014年秋冬コレクションには、マッキントッシュ(MACKINTOSH)と共に「マッキントッシュ×ハイク(MACKINTOSH×HYKE)」を始動させ、2015年にはアディダス オリジナルス(adidas Originals)とタッグを組み「アディダス オリジナルス バイ ハイク(adidas Originals by HYKE)」をスタートさせた。ハイクの次なるコラボレーション相手は、「ビューティフルシューズ」。ファーストシーズンは、パイソンを上品に用いたパンプス4型を発売。指先のあたりで切り替えを施し、モダンな印象に仕上げている。華奢なポインテッドトゥタイプだが、ウエッジヒールなので履き心地も抜群だ。【アイテム詳細】ビューティフルシューズ×ハイク展開時期:2017年3月(予定)価格:62,000円+税、68,000円+税※モデルによって価格は異なる。【問合せ先】BOWLES / ボウルズTEL:03-3719-1239
2016年10月27日メゾン キツネ(MAISON KITSUNÉ)の2017年春夏コレクションが発表された。ブレイク・エドワーズ(Blake Edwards)監督の映画『The Party』の風刺喜劇の世界を探求した今シーズン。インド人俳優が巻き起こすハリウッドでのドタバタ劇を描いたコメディタッチな物語の世界を、自由奔放な女性像に変えて表現。プレイフルでありながらも今までよりもエレガントに、そしてロマンティックに。自由な組み合わせからは、フレンチガールたちの楽しい遊びが感じられる。軽快な装いは、流れるようなシルエットから生まれる。クレープやサテンを使用したエレガントなワンピースにはラッフルをプラスして、シースルーのトップスにはプリーツを施して、リラックスムードを流し込む。身体の動きにシンクロするように、動けばさらにその魅力を拡大する。新鮮に映るのはペイズリー柄で、エフォートレスなスタイルの中にインパクトを与える役割を果たしている。なかでも、ワイドシルエットのワークパンツはこれまでブランドがあまり提案したことのなかったスタイルだ。そして、春夏の定番とも言えるストライプやチェック柄は、いつもよりエネルギッシュに表現。ストライプは一層カラフルに、チェック柄はより大胆にあしらった。その様相は幻想的でありながらも生き生きとした雰囲気を醸し出す。ウィットに富んだディテールやテキスタイルが溢れる中、刺繍やプリントとなりユニークな表情を見せてくれたのは愉快な動物たち。特にゾウは映画の中にも登場したアイコニックな存在と言えよう。一方、透明なPVC素材のバッグやポーチに現れた魚は、2017年リゾートコレクションのジャック・タチの風刺喜劇の世界を受け継いだ、ヴィラ・アルペル邸宅の噴水彫刻をモチーフにしたものである。カラーは、ネイビーやブラック、グレー、エクリュといったニュートラルカラーに、イエローやオレンジ、そしてターコイズを加えることで遊び心をプラス。さらに、女性らしいパステルカラーを織り交ぜて、ロマンティックなムードを加速させている。
2016年10月26日ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、2016年10月22日(土)渋谷のみやした こうえんで発表された。1年ぶりのランウェイショーとなる今季のファーストルックは、白いシャツとパンツのコンビ。かっちりとしたシャツ地と対比させるように、ボトムスにはスウェット地を選んでいる。足元はリボンを飾ったチャンキーヒールシューズ。素材選びや小物遊びで個性をきかせているものの、サブカルチャーやティーンズの刹那性などを説いてきたこれまでと比べると、いささか物足りなさが残る。ストライプシャツ、ジレ、ショートパンツ。カラフルなメイクやデコラティブなシューズで刺激を差しても、続くのはかなりフォーマルな装いだ。そんな観客の‟拍子抜け”を察したように、ミキオサカベの遊びが始まる。ショートパンツは、‟腰パン”とはかけ離れるほど、ウエストラインをどんと落としてユニークに。テーラードジャケットは、肩を肘近くまでドロップドさせて、さらに身幅を広く丈感を短めに整えた。テーラードジレは、まるでトレーニング用のタンクトップのようにアームラインを大胆にカッティング。構築的であるはずのフォーマルウェアが変幻自在に形を変えていく。アップデートなナンバーに転調すると、色彩たちが弾け、お祭りのようなポップなムードに。先に述べた変形フォルムに、ピンクやイエロー、グリーンといった鮮やかカラーが溶け込み、カットジャカードやレオパード柄のホログラム調の生地が交差する。また、シルエット遊びは加速度を増し、シャツは袖が2重に、プリーツスカートは原型が崩れるほどビックサイズへとリサイズされた。タックインしたシャツがはみ出すほどのマイクロミニスカートや肩パット入りのトップス、懐かしさを感じるピースがショータイムの主役のように存在感を増していく。ショー終了後のインタビューで、デザイナーの坂部三樹郎が、70~90年代異なる時代のフォルムを融合させることが今季の一番の目標だったと明かしてくれた。時の流れから考えても、はたまた融合させる技術的な面から見ても、通常は混じり合うことのないもの。それらをドッキングさせることで、新しい発見があるかもしれない。そんな好奇心が、坂部の心をくすぐったのだ。また、これまでは東京カルチャーに魅せられてきた坂部であったが、今後は今までやってこなかったことにチャレンジしていきたいという目標も語った。海外で彼が学んで見てきたもの。それらに向き合い表現していくそうだ。
2016年10月25日ネーム(Name.)の2017年春夏コレクションが、2016年10月22日(土)、東京・渋谷ヒカリエで発表。東京ファッションウィークを締めくくる大トリということもあり、会場内のどよめきに期待感がにじみ出る。今シーズンの着想源は、The Whoの『The Kids Are Alright』から連想したノスタルジーなイメージと、Ryan McGinleyの同名の写真集から連想する豊かな色彩感覚や自由な若者達。同じ名前ながらも、異なった世界観を持つ両者が組み合わせられた時のメッセージをワードローブに落とし込んだ。ノスタルジックな世界の若者達を洋服から感じたシーン。それはまるで親のタンスから引っ張り出してきたような大ぶりのアイテムが現れた時だ。ジャケットにせよコートによ、パンツにせよ、2回りほど大きめに着こなしている。ハイウエストでタックインしたスタイリングや、アウターの上にさらに大きいベストレイヤードするなど、一見不慣れなようなバランスが、程よい均衡を生み出す。そんなモノクロ映像が脳内に流れるアパレルを現代に引き戻しているのが、パキっとしたカラーパレットだろう。オレンジやレッド、ブリーチしたインディゴをアクセントに加えることで、ブラックやキャメル、ヌーディカラーのアイテム達がより輝いた。着想源となった2つの“The Kids Are Alright”。その要素の強い部分も弱い部分も隠すことなくぶつけた結果、鮮やかさを孕んだ、どこか懐かしい洋服として結実した。
2016年10月25日コートメール(COTE MER)の2017年春夏コレクションが、2016年10月22日(土)に発表された。ランウェイには、ドーベルマンインフィニティのスウェイ(劇団EXILEの野替愁平)も登場した。ファーストルックからラストまで、一貫して捻りの効いたストリートウェアが登場。今季のテーマは“路地裏の美学”だ。デザイナー自身がロサンゼルスで暮らしたという経験や、古い洋服を好む美学を反映し、自分の生活の延長線上にあるようなコレクションを披露した。巧妙なデニム使いが、ストリート一色に染まったワードローブにアクセントをもたらす。フード付きビックサイズスウェットの片腕部分だけに用いたり、ペンキで汚したような跡をつけてジャケットに仕立てたり、ダメージジーンズとして登場させたり…。使い古されたヴィンテージ風の素材を用いることで、尖ったストリートウェアに有機的な一面を持たせた。何点か現れたデニムジャケットにも注目。バックには、着物の帯を用いた和柄模様の装飾が施されている。一方、肩や背中の上の方には3Dプリンターで製作したという、ひし形のようなオブジェが。異素材の混合だけではなく、古い物と最新の物とを混ぜ合わせて、新たなミックススタイルを提案している。ジャケットを解体してボトムに仕立てなおす、再構築の技を用いたことも今季の特徴の一つだ。一度利用した素材を再活用したり、古いものに価値を見出そうとする姿勢。こうして完成したワードローブは、決してメインストリートではない“路地裏”の美しさへと観る者を導いてくれた。
2016年10月25日プラスチックトーキョー(PLASTICTOKYO)の2017年春夏コレクションが2016年10月22日(土)に発表された。テーマは「イミグレーション」。入国審査やドレスコードなど、ある一つの空間に入るための「規定」に注目し、それを揺さぶるようなショーを展開した。証明が落とされた仄暗い会場。ランウェイには、向かい合うようにナイフやお皿といったテーブルセットが並び、その間には食事ではなく数本の蛍光灯が置かれている。アートワークの展示空間のような異質な演出は、まるでディナーという規定に縛られた場の解体を示唆しているようだ。序盤は、スーツをベースにしたルックが登場。パンツの裾をスネまでカットし、ブーツのように丈が長い革靴と合わせたり、ジャケットの背中を切り取り、シルク素材をなびかせたり。フォーマルウェアの代名詞とも言えるスーツを解体していく。グレーのストライプスーツは、ベストにブルーのシルクの袖を組み合わせ裾口を絞り、まるでブルゾンのように再構築。パンツの側面には、同じくブルーでラインを施し、スポーティな印象に仕上げた。フォーマルなイメージがあるツイードは、ゆったりとしたシルエットでジャージのようなセットアップに。アウターも一般的なジャケットではなくパーカーに仕上げた。ナイロンのパンツやウィンドブレーカーなどのスポーティなアイテムと合わせて、さらにかっちりとした印象を崩していく。終盤には、ベルトを使ったルックを展開。デザイナー、今崎契助が「ストリートを象徴するアイテム」と語ったベルトを何本も重ねて作ったベストは印象的だ。カジュアルなアイテムをフォーマルに見立てることで、ドレスコードをかいくぐること様を表現しているこのベストは、まさに「イミグレーション」をテーマに掲げる本コレクションを表すアイテムと言えるだろう。
2016年10月25日スカートブランド「シートーキョー(SHE Tokyo)」が、2017年春夏コレクションよりデビューする。「出過ぎず、存在感のある佇まい」をコンセプトに、上品で程よい存在感を持った、大人のためのスカートを提案するブランド。ウィメンズ・メンズ共に様々なブランドでの経験を積んだデザインチームと、販売、バイイング、マーケティングで経験を積んだメンバーが集結し、女性が最も美しく見えるシルエットと素材を追求する。ファーストシーズンは、“ボリューム”をテーマに、女性がもっとも女性らしく見えるボリューム感、ドレープ感、素材感にこだわり、様々なタイプのスカートを展開。ふくらはぎ程度の丈感のものが中心で、Aラインに広がるシルエットが脚を細く見せてくれそうだ。黒と白の大ぶりなチェック柄スカートはカジュアルな装いに、後ろにタックを寄せてレースのプリーツスカートを重ねたものは、ドレッシーな装いに。コーディネートや着ていく場所に合わせて、スカートをセレクトする楽しみを味わえるブランドとなりそうだ。【詳細】シートーキョー(SHE Tokyo)価格帯:26,000円~62,000円+税【問合せ先】PANZON Co.,LTDTEL:03-6447-2911
2016年10月25日ケイスケ ヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)の2017年春夏コレクションが、2016年10月22日(土)に渋谷・みやした こうえんにて披露された。アキコアオキ(AKIKOAOKI)に続くファッションポートニューイースト(FASHION PORT NEW EAST)での発表となる。これまでの3シーズンは、“日本の子供たち”や“制服”を取り上げ、そのテーマの背後にある景色を表現してきた。4シーズン目となる本コレクションは“リボーン(Reborn)”がテーマ。これまでのブランドイメージを刷新して生まれ変わるような、ウィメンズに絞った新しい挑戦を見せた。スーツやシャツといったメンズ服のベーシックな素材を主に使用。素材だけでなく、シャツの袖をスカートから垂れ下げたり、ボタンを縦に羅列したりすることで、そのディテールも取り入れた。全体を通して特徴的なのは、フリルとプリーツを応用していること。ファーストルックから、大きなラッフルが揺れる白のスカートに、プリーツを部分的に取り入れた黒のトップスを合わせた。フリルは、パンツにライン上に施されたり、真っ赤なドレスの襟となったり、大きなカフスとなったり…様々なルックに姿を変えて登場する。色合いも、ピンクや薄いブルー、ホワイト、ベージュといった淡いものをセレクトし、フェミニンなワードローブと程よく調和している。シンプルな布地を彩るプリントは、写真家の草野庸子によるもので、女性クリエーターとも積極的に協働したという。これまでのコレクションには見られなかった、女性に寄り添う服作り。精神的“リボーン”を遂げたブランドの今後の展開が楽しみだ。
2016年10月25日アキコアオキ(AKIKOAOKI)が、2017年春夏コレクションを2016年10月22日(土)に東京・渋谷のみやした こうえんで披露。レナルメルスキー(Lena Lumelsky)に続くファッションポートニューイースト(FASHION PORT NEW EAST)での発表となる。目立ったのは、体のラインをあらわにするシルエットと、対比的にボリュームあるフォルム。コルセットはその手段として多様されている。シャツの上から巻いてウエストのシェイプを強調。裾には短冊型のピンストライプをヒラヒラと舞わせた。あるいは、オーバーサイズのデニムコートの上から施して、豪快な襟のボリュームとのコントラストを生んだ。腰の部分が不自然に飛び出したロココ調のワンピースは、女性をエレガントに見せる必需品として幾度となく登場している。肩から腕にかけてのラインは、ボリュームを持たせたものが多く、パフスリーブ、チューリップスリーブといった具合に、ギャザーを添えて空気を孕むシルエットを構築している。クラシカルなシャツは、袖のボリュームを控えめにする代わりに大きなリボンタイを設けて足し引きしたゴージャスを導きだした。人工的なシルエットだけでなく、バックが大きくあいたベストやテーラードジャケットは肌をそのまま見せることで女性的なラインを創出。露出という面でいうならば、シュミーズのようなサテン地のドレスは、裾も切り拓かれた解放感溢れるルックのひとつである。また、ワイドパンツはプリーツを施してランダムなヘムに仕立てることで動きを出し、流動的な空間を作りだした。素材にも、服と身体の空間を意識したものが採用されている。特に、肌に密着するラバー素材のボディコンシャスなワンピースや、透明のナイロンコートがそうだろう。フェミニンな花柄やマニッシュなストライプに紛れた近未来的なものたちが、このコレクションに大きなインパクトを与えている。
2016年10月25日レナルメルスキー(Lena Lumelsky) 2017年春夏コレクションが、2016年10月22日(土)、東京・渋谷にある、宮下公園スケートパークで発表。ファッションポートニューイースト(FASHION PORT NEW EAST)のトップバッターを飾るブランドのショーに注目が集まる。2007年、ヴェトモン (Vetements)のデザイナー、デムナ・ヴァザリアとともにステレオタイプスとして東京コレクションに参加しているデザイナー、ヘレナ・ルメルスキー(Helena Lumelsky)。アントワープを卒業後、初めてのショーを行ったこの街で、原点に帰る気持ちで挑んだ。「LUCKY」をテーマに設定した今シーズン。従来ブラックを採用することが多いブランドではあるが、世界のネガティブな情勢と対照的な、ポップな色使いで、楽しげなワードローブを展開する。シルクやコットンといったナチュラルな素材を、一流の職人の手によって加工。一見化学繊維や合成繊維を思わせる技巧的な風合いを醸し出す。メッシュのように軽やかな加工が施されたヌーディーなテキスタイルは、着ている人の肌の色をパッと明るくするような印象すら与えてくれる。アシンメトリーなアイテムが立体的な物量感をもたらしているので、春夏のウェアといえど、過剰なシンプルさは影を潜めている。それよりももっと日常に、普段の生活に寄り添うような、気張らないシルエットを意識した。例えば、コルセットは通常の締め付けるデザインではなく、体を包むような柔らかさがもたらされている。歩くたびに揺れ動く洋服の表情が、女性たちの内なるポジティブな願いと通じ合い、美しさに拍車をかける。「LUCKY」を意識したからこそ見える、フェミニンな魔法が会場を包み込んだ。
2016年10月25日エトセンス(ETHOSENS)は、2017年春夏コレクションを東京・渋谷ヒカリエで2016年10月22日(土)に発表した。東京で9年目を迎えたエトセンス。今季のテーマは「交わる線」だ。白い菱形のブランドタグ「white rhombus」に向き合い始めた2015年秋冬。そこから線の面白みに惹きつけられるかのように、シーズンを越えて同じテーマ「線」に向き合い続けている。昨シーズンはテーマ名も同じ「交わる線」であったが、今季は視覚的な仕掛けを添えて、より複雑なウェアを提案している。線と線の交差する様からイマジネーションを膨らませて、ドッキング型の新ウェアが誕生した。デニムジャケットの上にまたデニムジャケット、ボンパージャケットにさらにボンパージャケット。同じアイテム同士をレイヤードしているかのようにみせる独特のフォルムが、表現しがたいまとまり感へと繋げている。白いTシャツはツヤのあるシャツと繋ぎ合わせた。コットン風のカジュアル素材から覗く、光沢を帯びたシャツ地。異なる個性を持つ2つのウェアであるが、同系色でまとめることで、ユニークな一体感が出来上がっている。また、ラインへの意識はディテールへのこだわりにも影響。パンツやコートには大きくスリットを配し、どのトップスも通常より長めのスリーブに整えられている。また、ベルトやサスペンダーを使った遊びも面白く、ロングコートの裾よりもさらに低い位置でベルトが垂れ下がている。
2016年10月25日サルバム(sulvam)が2017年春夏コレクションを2016年10月22日(土)に東京・渋谷ヒカリエで発表した。アップテンポのランウェイは、観客を一気に飲み込んだ。モデルたちは、全員が小走りほどの速いスピードで颯爽と歩いていく。緩いジャケットにパンツ、粗めに編まれたニットを赤と黒で表現した力強いルックがスタート。袖の縫い方も荒く、本来内側になるはずの断切り面が露わになっている。続くセットアップは、白い糸が飛び出していてシーチングのような粗目の素材が裏地として採用されている。脆いシャツは、縫い目がずらされていて、掛け違えたボタンによってそのジャケットにふさわしい“くしゃくしゃ”としたフォルムだ。アウターのライナーは、本来は一体化しているはずなのにあえてレイヤードの仕立てになっていて、早いスピードがマッチしている。風は躍動感の味方だ。“袖があるのに袖のない服”を揺らし、大きくスリットの入ったワンピースを靡かせた。縫製すべきところを安全ピンでとめた荒々しさは、縫い代をわざと外に出す豪快なディテールよりも、さらに雑多なイメージを与える。滑らかなベロアからローゲージのニットまで、あらゆる素材からなるルーズな洋服の装飾品としても役目を果たした。また、それと同時にパンクなイメージも連想させ、ボンテージパンツや縛ったベルトと相互作用を生んでいたようだ。こんなに荒々しくも力強いワードローブがなぜ完成したのか。それはおそらくブランド名でもあるサルバム(=即興演奏)が答えなのかもしれない。パターンをひく時も、縫製をするときも、服作りの過程で一瞬の感情を、純粋にぶつけた洋服。それが今回のコレクションではより顕著に表れていたように思う。
2016年10月25日ベッドフォード(BED J.W. FORD)の2017年春夏コレクションが、2016年10月21日(金)、東京・渋谷ヒカリエで発表された。ブランド創設以来、初めてのランウェイとなる今回、デザイナーの山岸慎平と高坂圭輔がどんなワードローブを展開するのか、会場が期待に包まれる。音楽を担当したのは、日本のバンド「yahyel(ヤイエル)」。デザイナーの憂鬱な気分を反映したような、内臓を動かす音楽が、空間に響き渡る。彼らのフィーリングは、テキスタイルの表情や洋服のシルエットにも顕出。肩や袖などがきっちりと作られている一方で、パンツやコートの裾はアシンメトリーにカットされ、揺らぎを感じさせるデザインだ。ジャケットやコートを多用しながらも、重々しさはあまり感じさせない。シャツを作るように作ったというこれらのアイテムが、スタイリングに統一感をもたらしている。テーマの“BATTLE DRESS JACKET”が色濃く出ているのは、カラーパレットだろう。ネイビーやキャメル、ブラックといった色は、どこか軍服を連想させる色合いだ。それぞれの要素が、輝きを放つ中、コレクションとしての“筋”を通しているのは、スタイリングの興味深さだ。ブラックのロングコートの下には、オレンジのストライプの大判スカーフをインナーのようにあしらい、丈に立体感を創出。同系色でありながら、素材の違うアイテムを上・下に配置し、歩いた時の動きの違いを楽しませてくれるものもあった。流行のシルエットなどには一切左右されず、自分が「カッコイイ」と思ったものだけを作ることに徹したという今シーズンのベッドフォード。これを機に、今後もランウェイでの発表をしていくという日本のブランドから目が離せない。
2016年10月24日ユキヒーロープロレス(YUKIHERO PRO-WRESTLING)の2017年春夏コレクションが2016年10月21日(金)、渋谷のライブハウス「クラブ キャメロット」にて発表された。今シーズンのコレクションは、人気ティーンファッション誌のモデルによって結成されたアイドルグループ「夢見るアドレセンス」や女優、秋野暢子を迎えた、ミュージカル形式で展開。 スポットライトが青い光を放ち、スモーク立ち込める会場内に設置されたステージには、土管や電柱などが並ぶ。これから何が起こるのか全く予測できないユニークで斬新な演出がブランドらしい。古典的なミュージカル映画を思わせる快活な音楽が流れ、『ヒールをはいた猫』という演目がスタート。猫に扮したメンバーによるダンスや歌がショーを盛り上げる。さらにストーリーは進行し、舞台は突如モデルたちによるランウェイに変化する。ポップアートをはじめとする「60年代のアメリカ文化」、ミュージカルの主役でもある「猫」、そしてブランドを象徴する「プロレス」。この通常は交わることがない3つの要素が、プリント、素材、シルエットで表現され、融合し、全く新しいものが生まれている。プリントは、メンバーが着用していた衣装にも施されていたアンディ・ウォーホルの名作『キャンベルスープ』を猫缶にオマージュしたものや、猫のモチーフをコピーのように何匹もプリントし、ポップアート風に仕上げたものなどが登場。裾を結んだシャツや、腰のくびれを強調したワンピースなど、シルエットも60年代らしい。モデルもマリリン・モンローのようなメイクで登場した。さらに、プロレスラーのキャラクターでさりげなく遊び心を演出。ニットにプリントされたリングのコーナーのモチーフは、一見グラフィカルな模様のよう。黒のデニムパンツはフロントから見るとクールな印象だが、後ろのポケットにはプロレスラーが。さらに、かっちりした印象のジャケットにはメッシュ素材を使用するなど、プロレスを切り口にイメージを崩していくようなディテールがなんともユニークだ。クライマックスには、デザイナー本人も登場し、モデルからミュージカルの役者まで全員を交えてダンスや歌で大騒ぎ。エネルギーと個性が溢れるブランドにふさわしい斬新なショーに幕を閉じた。
2016年10月24日ケイイチロウセンス(Keiichirosense)が2017年春夏コレクションを2016年10月21日(金)、渋谷・ヒカリエで発表。“共鳴”というテーマを掲げた今季は、不安定かつ抑圧の存在する現代に対して戦う姿勢を洋服に落とし込んだ。暗い会場に閃光が走り、辺りが明るくなってショーは始まる。ビニール製のジャケットやワンピースに、光沢のあるブルーやゴールドのタイトなスカートをスタイリング。近未来的な洋服は、現代のサブカルチャーをデザイナー・由利佳一郎のフィルターに通すことで生まれたものだ。らせん構造のような形状の布を施したタイツや、前から見ると純円に見えるポンチョからは曲線を纏うことへのこだわりを感じる。ワイヤーで形状を固定したスカートの曲線は歩くだけでは崩れない。服を作るというよりは“皮膚”を作ることを意識しており、銀のブラトップやタイトなシルバーのパンツなど、身体の動きに関係なくしっかりと形が決まるようなアイテムが多数登場する。日本の伝統的な要素がプラスされていることに注目したい。刺繍の和柄や、襟部分が着物になっている服、背中部分が大きく開いている帯…これは戦国時代から未来である現在にタイムスリップしてきたというテーマを反映している。バック・トゥ・ザ・フューチャーのように様々な時代・視点に立って、ケイイチロウセンスの考えている未来を映したコレクションだった。
2016年10月24日ユマ コシノ(YUMA KOSHINO)が、2017年春夏コレクションを2016年10月21日(金)に東京・渋谷ヒカリエで発表。コンセプトは“Optical Illusion”。エッシャーのだまし絵のような視覚効果を表現していた。ブルーのレーザーがランウェイの道筋を示し、ショーは始まる。ジャケットやスカート、ソックスに配されたアルチザンジャカードは、クリーミーなカラーのトップスと合わせて存在感を放った。重たげな印象を抱くと思いきや驚くほど軽々と揺れる。コレクション序盤は同系色のアイテムを合わせていたが、ミニマルなミュージックにイレギュラーな鋭い音が入り会場を期待感に包むと、徐々に視覚的なコントラストを訴えかけるように。暖色のオレンジと寒色のブルーのアイテムを組み合わせたり、光沢感で冷ややかな印象の素材とふわふわと暖かそうなニットなどの素材を合わせたり。さらに、テクスチャーをミックスすることで、引き立て合って相互作用を生んでいた。熱量を感じるマルチストライプのようなグラフィックは、リボンや裾のカッティングによる効果で、下から上へと私たちの視線を常に動かす。これは、水が重力に逆らって坂を上っていくように見えるエッシャーのだまし絵を想起させる。ラストは、ブラックと原色のプリーツウェーブのドレス。一枚の布から出来ているプリーツは、歩くと風を含み一瞬一瞬カラーバランスが変化する。釘付けになるような錯覚・視覚効果をグラフィックと素材感で表現し、期待で終始目が離せないコレクションだった。
2016年10月24日ジン カトウ(ZIN KATO) 2017年春夏コレクションが、東京・渋谷ヒカリエで2016年10月21日(金)に発表された。今シーズンのテーマは「Eternal Return(永劫回帰)」。1回ではなく、同じことが何度も循環していく意味の言葉を、巡り巡って、繰り返されていくファッションムーブメントに重ね合わせた。今再び感じる1920〜30年代ファッションの息吹。そんな時代のエッセンスを取り入れたコレクションを披露した。ファーストルックは、まるで優美な蝶を彷彿させるようなシフォンドレス。ボリュームのある裾の広がりがエレガンスを運ぶ。続いて、様々な色彩のバラなど、フローラルを取り入れたワンピースやドレスが登場。裾や肩部分のレース使いや、歩く度に揺れるフリルによって、まるで妖精のような雰囲気だ。そんな、優美なドレススタイルが中心だが、中にはクロプド丈のトップスにショートパンツやミニスカートを合わせた着こなし、ショート丈のサロペットなども披露された。ルックにはすべて、アクセサリーとしてチョーカーが取り入れられ、インスピレーションとなった時代を感じさせる。後半は大ぶりのビーズやビジュー、スパンコールといった、きらびやかな装飾使いを採用したドレスを展開。少しタイトめのラインで、ゴージャスな雰囲気が1920〜30年代に代表される名作『グレート・ギャツビー(The Great Gatsby)』の世界観を彷彿させた。
2016年10月24日ミューラル(MURRAL)の2017年春夏コレクションが2016年10月21日(金)に渋谷・ヒカリエで発表された。柔らかな木漏れ日の中、1人の女の子がゆっくりと歩をすすめる。ここはメランコリック ガーデン(melancholic garden)。彼女はまだ色をしらない。その女の子が身に着けているのは真っ黒の衣装。ジャカードのコートにかすかな光を受けて光る繊細なラメが唯一の色で、それでも大きな襟には立体的な刺繍が貼られていたり、パンツはエナメルを用いたり、黒一色のなかで一生懸命のお洒落を楽しんでいる。時には歪つな光沢を放つクロコの型押しを配して、フリルをたくさんあしらって、そしてラグジュアリーなレースはボトムスに多用して…、試行錯誤を繰り返している。そんな中、流れるラッフルに導かれて、辿り着いたのは色の世界。森の中で出会った花は彼女に色を教えてくれた。まだ合わせ方はちぐはぐで、ロイヤルブルーのワンピースには、裏地が赤く染まったピンクのブルゾン、中には黄色のメッシュをレイヤードして、沢山の色を寄せ集めた。フォレストグリーンのロマンチックなシャツには、目の覚めるようなイエローをあわせて、アクセントとして繊細なレースを施している。彼女が最後にたどり着いた世界は、どこか地に足の付かないような浮遊した空間。身に着けたのは、優しい赤とピンクのコントラストから成るメランコリーなワンピース。手刺繍による歪んだパールを装飾して“優雅っぽく”彩っている。肩のラインに沿うような小さなフリルの集合体も、裾で揺れる小さなタッセルも、すべてがこの浮遊した世界ではラグジュアリーに変わる。彼女のお洒落は足元にもぬかりない。フリルのサンダルや、ワードローブと同じく刺繍を施したサボ、時折グリッターシューズを織り交ぜて魅せていた。精一杯のファッションへの姿勢は、憂鬱なものでは決してなくて希望の光にみちたものだった。
2016年10月24日ケイタマルヤマ(KEITA MARUYAMA)が10月21日、東京・南青山の丸山邸で2017年春夏コレクションを発表した。ショーではなくモデルを使ったインスタレーション形式で行われた今回。「何れ菖蒲か杜若」をテーマに、日本的なものや花のモチーフ、中国的なものなど、様々な要素をミックスした丸山敬太らしいデザインを見せた。会場は丸山邸の1階。中でにはいると通常はショップとして使われている空間に椅子や机が並べられている。モデルは7人ほど。花のモチーフを使ったブラウスやドレスを着たモデルは椅子に座ってくつろぎ、グラフィカルなアイテムを身につけたモデルは店内奥の机に置かれた麻雀で遊ぶ。店内中央の順路を進むと左側にはスパンコールドレス姿で椅子に座り、最後は、宇野亞喜良の描く歌舞伎をイメージしたプリントを使ったドレスのモデルがかごの中での鳥を見つめている。1度に入ることができる人数が少ないため、30近くあるデザインのうち見られるのは7体程度で時間によって見られる服は違う。だが、会場でインスタレーションを見た女性が「空気までケイタマルヤマ」と言うほど“ケイタマルヤマワールド”が伝わってきた。丸山は「世界観の中で洋服が匂い立つような見せ方にしたかったし、近くでじっくり見てもらえるようにプレゼンテーション形式にしました。実際は見てもらった3倍以上の作品を創りましたし、実際にこの上で撮影もしていますが、そういうものはSNSですぐに発信することができます。それよりも生で感じてほしい。トレンドや一押しのアイテムやデザインは関係ないと思っていますし、気分を最優先させました。ライティングで色が違って見えたかもしれませんが、今は色や形よりもムードの時代。何を伝えたいか、どういう気持ちでありたいかを最優先するべきだと思っています。ただ、ショーは大好きなので次どうするかはまだ決めていません」と話した。
2016年10月24日ビューティフルピープル(beautiful people)の2017年春夏コレクションが、2016年10月20日(木)に渋谷・ヒカリエで発表された。来シーズンから発表の場をパリへ移すことを公表し、今回は東京でのラストショーとなった。そんな今季のテーマは「Do it Ourselves=自分達でやってみよう」。春らしいレース・シフォンのワンピースやスカート、パジャマパンツ、オールインワンなどを展開。ブランドのシグネチャーアイテムとも言えるトレンチコートは、今シーズンノースリーブ仕様に。上着でウエストマークし、まるでドレスのような着こなしを提案した。全体を通してウェアはビッグシルエットで、リラックスした雰囲気が漂う。ポリエチレンや和紙といった素材使いによりシワ感を出し、テーマ通り“着る人が自分で味付け”できるように作り上げた。そんなウェアは小物使いで遊び、ヒネリを効かせた。2017年リゾートコレクションでも展開された、デザイナー・熊切秀典の「熊」をモチーフにしたアクセサリーは今季も豊作だ。ブランドのシグネチャーアイテム:レザージャケットを羽織ったテディベアのポシェットや、つま先のかぎ爪が光る熊のファーサンダルなど。ゴールドやシルバーのかぎ爪は、ブレスレットやスニーカーの装飾にも取り入れられた。さらに、イエローやオレンジといった、鮮やかなカラーサングラスも着こなしのアクセントに。ランウェイショーの最後は、デザイナー自身がテディベアの着ぐるみを纏って登場。テーマに合わせて、自分たちのバンド演奏で締めくくり、会場を沸かせた。
2016年10月23日ベッドサイドドラマ(bedsidedrama)が2017年春夏コレクションを2016年10月20日(木)、東京・渋谷ヒカリエにて発表。テーマは“daydream believer”。起きてても夢を忘れないデザイナーの、10周年への意気込みが感じられた。ブランコと窓が吊り下げられた幻想的な会場に、スローテンポの曲が流れ始めてショーは始まった。動物のぬいぐるみが付いているマフラーや、袖にフェザーがついたオールインワンが、会場をふわふわとした優しい雰囲気で包む。ぼんやりともやがかかったような象徴的な柄は、トップスやワンピース、スウェットなどにカラーを変えて登場する。シルエットは眠りに落ちる時のようにリラックスしており、ルームウェアのようなセットアップやワンピース1枚で完成されたスタイリングも。ぬいぐるみを抱えて、夢を見る準備は万端といったところだろうか。靴やかぎ針編みのパンツに鎖のモチーフを付けたり、大きなタッセルがついたテニスラケット、ロウソクのヘッドピースなど非現実的で無秩序なモチーフは、私たちの夢の中での風景を思わせる。カラーパレットはアースカラーや、ホワイトやグレーで基本的にナチュラルな風合いだが、単色のレッドワンピースなど主張の強いアイテムも。カーキのブルゾンの胸元に配された動物は歴代のルックで登場したキャラクター達で、10周年の意味合いも込めている。最後は忌野清志郎の「デイ・ドリーム・ビリーバー」の女性ボーカルアレンジが流れ、締めくくられたショー。柔らかな夢を私たちに見せると同時に、10年経っても色褪せないデザイナーの夢を反映していたコレクションだった。
2016年10月23日ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)の2017年春夏コレクションが、2016年10月20日(木)に恵比寿ガーデンホールにて発表。“BOUNDARY(境界)~あたりまえへの挑戦~”と題された今季のコレクションは一体どのようなものなのか、会場は期待に包まれた。登場したファーストルックは、サイドにラインが入ったスキニーパンツにタンクトップを合わせたシンプルなデザイン。素材はジャージのようなもので、伸縮しながらドレープを作る。続く数ルックも同素材だが、スポーティな印象を与えるそのラインはやがて曲線となり、デザインにユニークさをプラスしていった。突然、曲調の変化と同時に、ワードローブも変化。赤や青、黒がぶつかり合うキュビスム絵画のような柄が現れた。キュビスムを創始したピカソ風の描写を取り入れたモデルのメイクが、このユニークな柄と共鳴する。写実的な絵画を捨て、自らが考えるリアリズムをキュビスムによって獲得しようとしたピカソは、コレクションのテーマである“あたりまえへの挑戦”をした代表的人物といえるだろうか。多彩な素材のうちいくつかは、スポーツへの関連を想像させた。メッシュのタンクトップや、ダンボールニットのように厚みと柔らかさを持った生地。アクティブな要素を保ちつつも、曲線を描く絶妙なカッティングによって優雅さを損なわない。常に前へ、先へと挑戦しようとするスポーツが、“あたりまえへの挑戦”というテーマの元に、キュビスムと一つになっていく。終盤は、オールホワイトとオールブラックのルックのみだ。メッシュやカッティング、ジャカードといったマテリアルの多様性を生かし、それらを重ね、ワードローブに変化をもたらす。当たり前のカラーに限定された中での表現の挑戦には、崇高ささえ感じることができた。
2016年10月23日