マリメッコ(marimekko)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、フランス・パリで2016年10月2日(日)に発表された。フィンランドを代表するブランド・マリメッコは、自国が100周年を迎える2017年アニバーサリーイヤーに、伝統と革新を融合させた新たなコレクションを提案する。目を向けたのは、1960年~70年代のアーカイブテキスタイルだ。そこにボヘミアンスピリットを纏わせて、モダンなピースを完成させる。テキスタイルブランドらしい贅沢な生地使い。フレアスカートや一枚布のドレスは風を孕んで舞い動き、ブラウスにはたっぷりのギャザーを寄せた。ミドル丈のスカートには立体的なポケットをエプロンのようにあしらい、ワンピースにはポンチョのようにもう一枚布を重ねて袖の部分を加えている。テキスタイルはバリエーション豊かで、馬をモチーフにしたもの、鮮やかな草花を描いたもの、黒と白だけで陰影を表したものなどがロングラインの中で生きている。また、今季はキャンバス地やレザーとのコンビネーションも面白く、ミリタリーコートやレザーコートと合わせた着こなしが提案されている。アクセサリーラインも豊作だ。チャンキーヒールのパンプス、サイハイブーツ、楕円形のクロスボディバッグなどがラインナップしている。これらの革小物も、テキスタイル同様に鮮やかなカラーリングで表現され、春の訪れを感じさせた。
2016年10月05日ルシアン ペラフィネ(lucien pellat-finet)2017年春夏コレクションを紹介。コレクションは、“ラグジュアリーストリートスタイル”をキーワードに、ルシアン・ペラフィネ自身によってパリの街を舞台に撮影された。今季はいつにもまして鮮やかなカラーが目立つ。キーカラーは、レッド・イエロー・ブルー・イエローグリーンといったところだろうか。これらの色を組み合わせたシンプルなシルエットのカーディガンや、胸元にモスキートを大胆に描いたブライトイエローのニットなどが、都会的なパリの街中にリゾート感漂う空気を運んでいる。快適で気張らないシルエットながらも、素材はカシミアや、繊細な触り心地のエジプシャンコットンといった上質なものにこだわる。ホットドックを描いたニットにレザーの光沢を生かしたミニスカートを合わせるなど、ユニークなデザインが生むラフさを、選りすぐった素材感によって洗練されたテイストにまとめているのだ。また、前をオープンにして肌を見せる着方など、ルシアン・ペラフィネ自身によるスタイリングが、快適さを備えたラグジュアリーを生み出している。ユニークなデザインに華を添えるコラボレーションは、本コレクションにおいても継続。サングラスをかけたスヌーピーや、サーフィンをするザ・シンプソンズのキャラクターなどが、まるでバカンスを楽しんでいるようなポーズで登場した。
2016年10月05日アリス アンド オリビア(alice + olivia)の2017年春夏コレクションが発表された。今シーズンの舞台は、ロマンチックで神秘的な庭。18世紀のタロット・カード、そして太陽、月、地球といった情緒的モチーフによって、その世界を広げていく。モノトーンとカラフル。幻想的世界は、対照的なパレットの混合によって成り立っている。ブラックのミニドレスはラッフルが靡き、ランジェリーのようなセンシュアルさを、ホワイトのドレスは繊細なレースを味方にエレガントを紡ぐ。一方で、カラフルを具現化するものは、プリントだけでなく刺繍やビジュー、パッチワーク、レース使いなど多々挙げられる。立体的かつデコラティブな表現が加わることで、トレーンをひくようなナイトドレスも、モダンなデニムスタイルも、全てが甘美な演出となっている。その演出に拍車をかけたのは、“2つで1つ”を思わせるようなコーディネート提案。同デザインで長さが違うドレス、同素材のパンツスタイルとスカートスタイル、そして同アイテムの色違い……。ある一種のものを基準において並列させることで、幻想的世界はさらにファンタジックなものへ。小物ではタロットをそのまま落とし込んだバッグが印象的だが、なによりも今季のコーディネートに欠かせないのはアイウェアの存在だろう。特大サイズのキャットアイ、80年代のスタイルを踏襲する丸フレームなどが提案されている。ドレスルック、あるいはガウンやジャケットを取り入れたパンツルックにも馴染む多様なアイウェア。それらは、おそらく神秘的世界に現代女性を誘う一種の手段なのかもしれない。
2016年10月05日アー・ペー・セー(A.P.C.)は、2016年10月1日(土)フランス・パリにてプレゼンテーション形式で、2017年春夏コレクションを発表した。会場は、ムーラン・ルージュ近くのクラブハウスCARROUSEL DE PARIS。モデルたちはサウンドに合わせて、踊りながらステージに登場し、新作ピースを披露した。アー・ペー・セーは今季も変わらずシンプルだ。ミニ丈のワンピース、トレンチコート、ハーフ丈のジャケット。どれも日常に寄り添う着やすいものだ。無駄を削ぎ落としたクリーンな下地であるからこそ、胸元を飾るフリルやポケット、大きなボタンといったディテールが際立つ。ショーの後半では、デニムラインを多数紹介。後ろ前のように見えるポケット付きのスカート、ロールアップして登場したストレートパンツ、ブラックボタン付きのシャツなどをデニムオンデニムの形でコーディネートしている。合わせた、キャメルのベルトやフラットサンダルもカジュアルで心地よい。なお、このプレゼンテーションは「A.P.C. BAM BAM PARTY」と名付けられており、パリでの開催を皮切りに、今後様々な国を巡りパーティ形式で行われるそうだ。
2016年10月05日メゾン マルジェラ(Maison Margiela)「デフィレ」2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク2日目の2016年9月28日(水)に発表された。今季ジョン・ガリアーノが綴るのは、3つのメッセージ。ナポレオンとその妻ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネが生き抜いた18世紀、銀行員などに見られる典型的なユニフォーム、そしてスポーツ。これら3つの要素の再解釈し、日常に溶け込むように仕上げる。この主張は、時に一つの洋服の中に詰め込まれ、時にコーディネート全体で表現されている。トレンチコートには、英国バブアージャケットに見られるチェック模様を裏地にあしらい、ユニフォームのエッセンスを注入。バッグスタイルにはカッティングを入れ、さらにストラップを取り付けて、ドレスとして着られるように設計した。ドレスとして纏うと、コートのラペル部分が美しい二等辺三角形のエンパイアラインを描き、18世紀のイメージへと繋げる。一方、アクセントはドローコードを選び、スポーツのエレメントを香らせている。また、銀行員のようなシャツにはポリティカルメッセージのようにロゴを散りばめ、制服と18世紀のスタイルを融合させた。そこに、クラシカルなレーススカートをマッチさせるのだが、下にPVCを仕込むことでアクティブな要素をプラスしている。ウィンドブレーカーをドレスに変形させたり、ハリのあるメッシュでヴィクトリアンブラウスを作ったり、バックパックのネット部分でワンピースを仕立てたり…。奇想天外な手法はどれもクチュールライン「アーティザナル」に通じている。バルーン(風船)の装飾も、高いウエストラインの構築もすべて、クチュールからレディトゥウェアへと綺麗に落とし込まれている。シューズラインには、アイコン‟足袋”にスニーカーブーツが誕生。柔らかに屈曲するラバーソールを採り入れ、アッパーは18世紀調のジャカードやベルクロテープをプラス。洋服のエッセンスがそのまま取り込まれている。
2016年10月05日ロエベ(LOEWE)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表された。ジョナサン・アンダーソンが描くロエベウーマンも5シーズンを迎え、3度目となる夏を迎えた。今季は「サマーハウス」をキーワードに、彼女好みの陶器・ランプ・オブジェ・家具を揃えたリラクシングな空間がコレクションの舞台となる。好きなものに囲まれた贅沢な環境、この空気感はプリントとなり、装飾となり、ディテールとして花を咲かせる。キッチンに置かれたテーブルクロス、リンビングに敷かれたラグ。そんな温かみのあるファブリックがストライプ模様やチェック柄、バードモチーフとなって、服地の上から顔を出す。日本の家屋に飾られた生け花の花瓶はシルバーブレスレットへと転身し、‟こんなクッションがあったらいいな”という願望は、グラデーションストライプのレザーバッグで体現された。シルエットはなめらかなロングライン。袖は大きく広がり、ウエストは帯ベルトでタイトさを強調させて女性らしく仕上げた。そんな美しいキャンバスでは、ロエベならではのクラフツマンシップが‟わかりやすい形”でアナウンスされている。メッシュのように見えるスカートは、細いレザーリボンを編み込んだものであり、コットンドレスにはレザーのコルセットディテールを融合。ノースリーブドレスには未完成のクロシェを胸元にあしらって、フェミニニティを加えた。特筆すべきは、これらの職人芸がいつもより軽さを持って表現されていることだ。袖を通すとわかる、ロエベならではのシルエットの綺麗さに加え、軽量感による着心地の良さもよりパワーアップし、素敵なレディトゥウェアに仕上がっている。人気のバッグラインからは、丸みを帯びた「カヌーバッグ」が仲間入り。人気の「ハンモック バッグ」は新しいシェイプとなり、「フラメンコ」シリーズには、アイコンスエード・オロにカーペットデザインを施した新作も加わった。また、昨シーズンの‟キャット”に代わって、ヒロインとなったのは‟コウモリ”。ビックサイズネックレスとして登場している。
2016年10月05日クレージュ(courrèges)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク2日目の2016年9月28日(水)に発表された。アルノー・ヴァイヤンとセバスチャン・メイヤーも3シーズン目を迎えた。昨シーズンまでの半円状ランウェイから舞台を移し、新しい形で新作ウェアを披露する。発表形式は変更になったが、彼らのクリエーションの原点は変わらない。創設者アンドレ・クレージュへの敬意と、フューチャリスティック・スポーティ・イノベーションの3つの掟はいつも隣にあるようだ。アンドレがコレクション発表を行っていた時代。当時、ランウェイにスポーツの要素を持ち込むことがとても斬新で、アバンギャルドであった。時代は移り変わり現代は、スポーツミックスが当たり前となっているが、デザイナーデュオは変わらず「スポーツ」に新鮮味を見出している。ランウェイに登場したのは、ダイバー素材風のボンディングボディスーツ、細身のジャケット&パンツだ。どれも身体にピタッとフィットし非常にタイト。厚みがあり柔らかな素材は美しいボディラインを強調し、スポーツ着想ながら女性らしさを表現する。ホワイトのテーピングはアスレチックさを誇張し、シルバーのブローチは近未来的だ。フューチャリスティックのアイデアは、コミカルにも落とし込まれた。スペースステーションのモチーフがパッチワークとなりジャケットへ、そしてプリントとなりTシャツに姿を現している。アイコンのビニールジャケットは新素材でアップデート。軽く柔らかな生地を用いて、ビニールの重さを取り除き、アーカイブの良さを保ちながら、次世代が担う未来へと繋げる。‟カンガルーポケット”で話題をさらったミニドレスは、前身頃にクロスで布を貼り合わせてポケットをあしらったもの。シンプルな作りであるが、凹凸感のあるシルバー素材は未来的な光を放ち、他のコレクションピースと波長が合っている。
2016年10月04日リック・オウエンス(Rick Owens)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク3日目の2016年9月29日(木)に発表された。毎シーズン、様々な架空の動物たちをテーマにしているリック・オウエンス。今季は、アマゾンに実在するセイウチがモデルとなっている。昔からその地で進化せずずっと同じままで生息する姿勢に美しさを見出し、コレクションピースへと落とし込んだ。セイウチのなめらかなライン、動くときにできるシワ・くぼみ。そんな姿をイマジネーションさせるのは、ロングラインのドレスだ。服地の上には波のようにドレープが生まれ、うねるように流線を描いている。バックスタイルは、エプロンのような作りで大胆に肌を見せ、センシュアル。また、翼のように左右に大きくメッシュ地を広げたトップスは鳥をイメージしたものだという。複雑なレイヤードのように映るが、全体像を完成させているのは、ハーフパンツ、チュニック、タートルネックなど、アイテム数も少なくシンプル。ただ着こなしは、腕の部分から頭を出したり、カットした後ろ身頃からに腕を通したり、自由自在に楽しんでいる。昨シーズン生まれた、スリット入りのショートパンツは、前方にマキシスカートのように長い生地を張りつけアップデート。また、人気のウィンドブレーカーはハイネック仕様に。首から背中にかけて配置したハーフジップを開放すれば、襟を落としたモダンな着こなしを楽しむことができる。テキスタイルは、オリジナルが豊作だ。日本の着物からインスピレーションを得た「kimono」は、16本の糸を1本に寄り合わせて作った上質なもの。ウェディングドレスに使われるようなシルク地で、独特のハリ感が凹凸を作る。また、ポリエステルと馬の毛を織り込んだものはジャケットに、オーストリッチを手作業で糸に巻き付けたファーはコートに採り入れた。渦をまくファーのデコレーションなど、贅沢すぎるほどラグジュアリーな要素がランウェイに転がっている。
2016年10月04日エルメス(HERMÈS)が2017年春夏ウィメンズコレクションを、日本時間の2016年10月3日(月)23:30よりフランス・パリで発表。ショーの模様は、ファッションプレスでも生中継する。2016-17年秋冬ウィメンズコレクションでは、構築的なシルエットや軽やかな色使いによって、より追求したフェミニティを披露した。一方で、洗練とラフさなど相違するものが同居したルックも登場し、コレクション全体に変化とアクセントを加えていた。【詳細】エルメス 2017年春夏ウィメンズコレクション日本時間:2016年10月3日(月)23:30 / 現地時間:2016年10月3日(月)16:30
2016年10月04日ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表された。山本耀司が作るテーラード、この解体と再構築のショーである。気品があり男性性を象徴するジャケット、そこにカッティング、ペインティング、リサイジングを施して、新しいフォルムへと繋げている。ドレスへの転身は、片方を断ち切りワンショルダーにしたり、コルセットのようなリボンディテールを添えたり…と方法は様々。ウエストラインをキュッとしぼり、ラペルをデフォルメして折りたたみ、女性的なシルエットを作り出したものもある。セーラーカラーのような襟元もポイントだ。本来の形を保てているものも、それぞれに個性が宿っている。燕尾服のように前は短く後ろは長く加工したもの、バッグスタイルをラウンド型にカットしたもの、へそ上に断ち切りその下にもう一枚布地を重ねたものなど、美しいテーラードを保持しながら、どれもジャケットともコートともドレスとも言い難い、気品と艶めかしさを纏っている。次いで、キールックとなるのはオーバーオールのスタイルだ。さらしのようなブラトップに、フレアスカート型・クロップドパンツ型のオーバーオールを合わせているのだが、同時に腕や胸元に幾重にも布が巻かれ、どこまでがボトムスを支えるストラップか判別がつかない。それほど身体の上であらゆる線が交差し、複雑な構造が出来上がっているのだ。ショーはほぼほぼヨウジヤマモトの黒で進行する。時折現れる、純真の白と情熱的な赤がタイミングがよく心地よい。それらは前述したテーラードの再解釈を手助けしたり、身体に触れるかギリギリラインの一枚布ドレスとなって、コレクションに刺激と官能性を与えている。
2016年10月04日パコ ラバンヌ(paco rabanne)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク3日目の2016年9月29日(木)に発表された。ショーの幕開けは斬新でどこか懐かしさを感じさせるルックから。「FUTURE SEX」のロゴTシャツにロングTシャツをレイヤード。ストリート風のTシャツオンTシャツに、ビーズの華奢なキャミドレスを重ねた。アクセサリーは、水泳帽のような顔全体を覆うヘッドピースで、スポーツ要素を香らせた。ここに登場したすべてのムードが、シーズン全体に投影されている。まず、Tシャツに見られる快活さは、フード付きのロングコートやナイロン風のノースリーブドレス、パーカーのようなハーフジャケットなど、アウトドアシーンでも活躍しそうな日常的なウェアに落とし込まれた。そこに投じた、センシュアルなエレメント。型押しして一枚の中で表情を出したミニドレス、ランジェリー調のブラトップ、レース素材のドレスなどは、女性らしく挑発的な一面を持っている。ワントーンでまとめてコーディネートも、序盤からラストにかけてほぼ継続されているスピリットだ。メッセージ性の強いロゴと奇抜なアクセサリーのコンビネーションは、どこか懐かしく近未来的なレトロ・フューチャリスティックの世界へと繋げた。かつて時の人となったブーツカットがボトムスに採り入れられ、ワッペン付きのレザー融合型ドレスが、非デジタルな懐かしい未来を描いている。ストッキングのようなシースルーカラータイツも古めかしいが、同時に奇抜で新鮮味を与えている。
2016年10月04日ロシャス(ROCHAS)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク2日目の2016年9月28日(水)に発表された。色を楽しむ。とてもシンプルなキーワードであるが、アレッサンドロ・デラクアがこの春夏提案するのは、豊かなカラーコンビネーションだ。グリーンやイエロー、ベビーピンク、ブルー。花々が咲き始める頃だろうか、新緑が広がる頃だろうか、はたまた雲一つない青空が待っているのだろうか。とにかく暖かな季節が待ち遠しくなるほど、鮮やかな色彩がランウェイに転がり、モノトーンやヌードカラーと交わっている。1940~50年代、アメリカンヴォーグの表紙を担当したフォトグラファーから着想を得たというピースは、どれもクラシカルでフェミニン。スカートは、ふわりと広がったプリンセスタイプ、スリット入りのペンシル、軽やかなプリーツの3つがベース。ドレスはワンショルダー、キャミソール、ホルターネックタイプなどが用意された。型数はそれほど多くないが、ドット柄のレース、柔らかなジャージ、とにかく軽いデイジー柄のジャカード、レースとオーガンザを叩きつけたチュールなど、様々な素材で表現され、幾通りの組み合わせでレイヤードされている。色の重なりを楽しむスカートオンドレスのコーディネートが基軸であるが、マニッシュウェアの差し方もポイントに。ボーリングシャツのような胸ポケット付きシャツ、Rマーク入りのハーフスリーブニット、クロップドパンツがドレスと融合され、異なる光を届けている。コートは、肩から落としてレザーベルトでウエストマーク。オフショル風のスタイルもシーズンムードを反映した着こなしだ。
2016年10月04日アンダーカバー(UNDERCOVER)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表された。アンダーカバーの今季は、ピアニストのビル・エヴァンス、トランペット奏者のマイルス・デイヴィスといったアーティストたちが彩っている。彼らの名前や名盤はプリントとなり、愛する楽器たちはモチーフとなって落とし込まれた。トランペットモチーフのパンツ、ピアノやチェロなどを散りばめたジャケット、サックスプリントのロングTシャツ。それら洋服たちが奏でるサウンドは、リラクシングで心地よい。そして、そのムードは全体を包み込み、カーディガンやボーイフレンドデニムなど日常的で着心地のよいものが揃っている。カジュエルウェアには、リデザインの考えを宿して上品に仕立てる。ミリタリーパンツにはシャーリングを入れて、ワークジャケットには異素材を貼り合わせてロングコートに。また、パールのネックレスやサンバイザー風つば広ハットなどの小物たちも品よくまとめるための一仕事を担う。一方で、クラシックウェアはストリートへと変化。ツイードジャケットは、ミリタリー調のポケットとトリコロールテープを添えて躍動的に、ナポレオンジャケットは、タオルのような素材を用いてカジュアルダウンさせた。チェック柄のツイード生地で仕上げたカーゴパンツ、ドット柄のノーカラージャケット、f字孔にくり抜いたスーツもある。スポーツミックスも今季のスタイル。足元は、ラインソックス×スニーカーがお気に入りのようで、ピアノの鍵盤をモチーフにした可愛らしいソックスも登場している。ピンヒールにも同様に、カラフルソックスとコーディネートする。
2016年10月04日クリスチャン ワイナンツ(christian wijnants)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表された。インスピレーションとなったのは、航空力学と島に漂流したもので作品を作るアーティストのChristo。鮮やかなオレンジ、目の冴えるようなブルー、健やかなグリーン。エネルギーに溢れた色彩と咲き誇る花々の模様に溢れ、高揚感と喜びに満ちたシーズンだ。このコレクションに個性を与えるのは、ユニークな素材たちの動き。モデルたちの身体を包むパラシュート風の素材は、風を孕むように膨らみ美しいバルーンシルエットに。プリーツ加工をしたニット地は、バウンドしているかのように上下に弾み、洗いの掛けたシルクは風を切り爽快にたなびく。コーディネートは、ワントーンまたは同柄で統一するのがムード。ワンピースは1枚でさらりと着こなし、ワイドなストレートパンツはシャツをタックインして仕上げる。カーゴパンツはポケットの位置をずらして前へ持ってきて、テイラードジャケットやナイロンコートは、うねるように生地をアレンジしてモダンに調理する。アクティブウェアの着想から生まれたフードコートやフライトジャケット風アウターは、今季らしい一着。日本文化もディテールに採り入れられ、着物スリーブが存在。またプラットフォームサンダルの木製ソールも、ジャパニーズカルチャーから影響を受けているという。
2016年10月03日ディオール(Dior)は、メゾン設立以来初の女性アーティスティック・ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリを迎え、初めてのコレクションとなる2017年春夏ウィメンズコレクションをパリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表した。マリアが選んだ、デビューシーズンのキーワードは「フェンシング」。男性と女性が同じユニフォームを着用する「フェンシング」の特性に、男女の性差を縮めたいという想いを重ね、力強い女性を描き出す。身体を守る「フェンシング」の防具は、フェミニンなアレンジを加えてモードへと昇華。レース&チュールを重ねたベスト型、シャツとマッチさせたワンショルダータイプなどが登場している。刺繍の差し方が美しく、メゾンのアイコン蜂やCDのロゴ、真っ赤なハートなどが随所で顔を出している。また、テーラードは控えめになり、これまで見られなかったカジュアルウェアが投じられている。デニムパンツや「WE SHOULD ALL BE FEMINIS」とメッセージ性の強いTシャツ。そして、ブランドロゴをあしらったブラトップ・ショーツなどはシーズンアイコンの一つとなり、シースルードレスやブラトップにレイヤードされて、ランウェイに登場している。マリアがメゾンへ運んできたもの。ポエティックな刺繍ドレスは、そのわかりやすい例であろう。大小様々なビーズで描かれた、星座やガーデン、海の生き物などのエンブロイダリーは、一日眺めていても飽きないほど繊細で美しい仕上がり。アクセサリーラインには、ブッグ形のクラッチ(ストラップも付けることができる)や「フェンシング」風の新スニーカーを仲間に加え、メゾンの新しいワードローブを生み出している。
2016年10月03日イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク4日目の2016年9月30日(金)に発表された。今季のライブミュージックを担当するのは、新体制を迎えた3名のOpen Reel Ensembleのメンバーとsébuhiroko。4名のミュージシャンを光と影の演出で捉え、幻想的にショーはスタートする。磁気テープを張って弓のように演奏する‟磁楽弓”はリズミカルで軽やかな音色。そこにぽつりと一筋の光が差し、ファーストルックが登場した。イッセイ ミヤケが提案する新素材は「Cut & Stick」。スポーツウェアで培われたボンディング技術を応用し、ジャージとハリ感のある布帛をドッキングさせた。ホルターネック・スリーブレスのエレガントなドレスは、ヒップラインの膨らみが可愛らしく実に女性的。そこに、差し込まれた三角形・多角的にカラーアクセントが、活発な印象を知的に添えている。また、折り目があらかじめ織り込まれた布を蒸気で縮める「3D スチームストレッチ」、特殊なのりを高温で膨らませて凹凸を作る「ベイクド ストレッチ」の2素材も、さらに進化。「3D スチームストレッチ」は大小異なる正方形を幾重にも組み合わせて、立体感を造り出し、「3D スチームストレッチ」はプリーツの山部分に色柄を足して、トライバル模様を表現する。どちらもドレス、ジャケット、コートなど豊富な商品バリエーションだ。コレクション全体は、鮮やかな色彩が花々のように咲き乱れ、プリーツ素材が上下左右に揺れ動き、春の訪れのような開放感に満ち溢れている。ウエストバッグ、袋状バッグなどが揃うバッグラインには、ソニーと素材の共同開発した電子ペーパーを用いた新作も仲間入り。手にすると、点滅やグラデーションなど7種の柄に変化するもの。さらに、点・線・面がコンセプトのシューズ・プロジェクト「ISSEY MIYAKE × UN」もスタート。構築的なヒールのカラフルなサンダルがランウェイデビューを飾った。
2016年10月03日オフ-ホワイト ℅ ヴァージル アブロー(OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、フランス・パリで2016年9月29日(木)に発表された。今季ブランドが挑むのは、思い切りフェミニンなアイテムの噛み砕きだ。襟元から裾にかけて何段もフリルを重ねたワンピース、肩から流れるようにフリルをあしらったシャツ、レースを差し込んだランジェリー風ドレスといった、女性らしさを象徴するアイテムを日常に採り入れやすく、クールな形で調理していく。序盤に登場したストライプシャツ。バックスタイルにリボンをあしらったり、ギャザーを寄せたり、シャツ特有の知的さを残しながらも可愛らしくアレンジが施されている。これらの長所を飲み込みながらタウン着として落としやすくするため、ボトムスはデニムで固めた。カットオフしたハーフパンツ、裏側にペイントで模様を配したスリムモデル。その表情は様々だが、シャツとの間に豊かなコンビネーションを見せている。また、フレアなドレスやスカート、キャミソールドレスといったより女性的なドレスルックは、スポーツの要素をぶつけて中和させた。「OFF」のロゴ入りノースリーブやストライプ模様のパーカー、「WOMAN」のロゴ入りTシャツといったものたちが甘さを溶かし、モダンなムードへと昇華させる。チェッカーフラッグなど、グラフィカルな模様を交えての落とし込みも上手い。思い切りスポーティなラインパンツ、ジャージ風トップスは、パンツにはレザーを、トップスには光沢あるベルベットを用いて、リュクスへと繋げる。一方、カジュアルの代表デニムからは、ウールと掛け合わせたパンツ、ブラックとインディゴをパッチワークしたジャケット、裾をデフォルメしてラップ型にしたアウターなどが展開。手の込んだ仕掛けにより個性的な仕上がりだ。
2016年10月03日ネヘラ(NEHERA)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク初日の2016年9月27日(火)に発表された。ネヘラの春夏シーズンは、昨シーズン同様にホワイトやベージュをベースカラーにした柔らかな始まり。レースを差し込んだフレアなスカート、履き心地のよいフラットシューズ、絵描きのような小さな帽子。とてもナチュラルで穏やかな空気に包まれている。しかし、よく観察してみるととても実験的な要素が連続している。クラシックなスーツ、トレンチコートは解体され、ホルターネック仕様に変形されている。コートに至っては、ラベル部分に首を通し、その中にきたトップスのフードが外側に現れ頭を覆い、アウターとインナーの役割が逆転。ウエストには紐が結び付けられ、どちらもエプロンのようだ。シャツは活躍の場を上半身から下半身へと移した。本来腕を通す袖の部分に足が通っていて、スリムなパンツが完成している。またスタンドカラーのシャツは、襟の部分だけ宙に浮いたようにカッティングし、不自然な切れ端が首元に残した。ジャケットはアーム部分が削除され、ポンチョ型のコンパクトなものへ。花模様やレッド、ブルーなどでアクセントを効かせた中盤・終盤。やはり、変わらずクリエーションの原点はアバンギャルドさが支えている。ビニールのようなツヤ素材のパンツは、足首でぎゅっと縛って、美しいシルエットを封印。テーラードジャケットは、おへその辺りでカットして、ぐるっと90度以上回転させ貼り付けちぐはぐなビジュアルへと進化した。ひねって、カットして、結んで。出来上がったユーモラスなピースには、片耳ピアスを飾ってアンバランスなスタイルを完成させる。ハーモニカ笛のようなビックサイズのネックレスもアシンメトリーなルックの中で大きな存在感だ。
2016年10月03日ジャックムス(JACQUEMUS)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク初日の2016年9月27日(火)に発表された。今季は、フィンセント・ファン・ゴッホの名作≪アルルの女≫の題名に用いられた、南仏プロヴァンス・アルル地区に住む人々がモデルとなっている。コックや牧師、ラベンダー畑で働く女性など、彼女たちが着ているユニフォームをモダンにアレンジ。ジャックスらしい奇想天外な発想で、伝統的な装いをコレクションピースへと昇華させる。ホワイトやブラックなど落ち着いた色彩のリネン、コットン、ウールで仕上げたアイテムは、どこかボヘミアンなムード。差し込まれた、鮮やかな赤やドット柄の唐突さが、自由を愛するボヘミアンのスピリットと合致する。太さやレングスに差異はあるが、ボトムスはシンプルですっきりとしている。反して、トップスは枠に縛られることなく変幻自在。特にアーム部分での遊びは面白く、男性的なシャツの袖をお団子のような形にしたり、ラウンド型にしてフリルをあしらったり、左右不均衡に翼のように広げたりして楽しんでいる。一方、ボディラインは窮屈そうなまでにタイトに絞ったものや不規則にボタンを配置したものなど、ユーモラスな刺激で観客の心をくすぐる。ジャケットはレースを用いて、女性らしく仕上げた。素材選びはフェミニンであるのに、身体から浮いているような独特のサイジングのため、やはり柔らかさよりもファニーな表情が際立っている。シューズもウェア同様に、幾何学的なヒールを組み合わせて個性的な印象だ。
2016年10月03日サンローラン(Saint Laurent)は、新クリエイティブ・ディレクターのアンソニー・ヴァカレロを迎えて初めてのコレクション、2017年春夏ウィメンズをパリ・ファッション・ウィーク初日の2016年9月27日(火)に発表した。前任のエディ・スリマンが去った後、多くのメディアがメゾンの行方を報じてきたが、アンソニーのデビューはサンローランの伝統を重んじたものであり、ひたむきな姿勢を感じさせるものだった。インスピレーションを与えたのは、1972年のスキャンダラス・コレクション。角ばった肩のライン、刺激的なミニドレス。当時パリの街に衝撃を与えたピースたちが、モダンなアレンジを加えて蘇っている。アンソニーのお気に入りだというレザーが多用され、光沢のあるパテントから柔らかなスエードまで、様々なテクスチャーが用意された。また、レオパード模様も彼の心に火をつけた。カットジャカードやプリント、ビジューなどあらゆる形で表現され、ドレスやトップスとなり華を添えている。シルエットは、鋭利なショルダーを筆頭に構築的な作りが基本。片腕だけ出したセンシュアルなフォルム、そして上半身はタイトであればボトムスはボーイフレンドデニムで外すといった、ボリュームコントロールした形もムードだ。テーラリングは、母の洋服を現代の子供たちが着ている姿をイメージ。袖をカットオフしてジレに変形させたり、パンツをスカートへリメイクしたり、ジャケットに見立てたオールインワンを設計したり…と手の込んだ仕掛けで、クチュールのエレガンスをストリートへと落とし込んでいる。また、切りっぱなしのディテールやくたびれたようなブロークン仕様は、コレクションを通じて提案。マラケシュを想起させるタペストリー柄のジャケットは、あえてほつれた感じに見立ててヴィンテージライクに仕上げ、ワンショルダーのレーストップスは穴を空けて、ハードな要素を加えた。「YSL」のブランドロゴは、イヤリングやブレスレットに落とし込まれている。こちらもブロークンディテールが反映され、折り目や繋ぎ目でそれぞれの文字が離れるようにデザインされている。なお、1ピースで差し込まれたメンズピースは来年(2017年)に発表されるメンズコレクションの序章であるそうだ。
2016年10月03日アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク3日目の2016年9月29日(木)に発表された。アン ドゥムメステールのモノクロームの世界。この静かな空間で今季生み出されたのは、前後左右不均衡なルックだ。ベースとなるのは、軽やかな素材、素朴なコットン・シャツ地で作られた、ジャケット、ロングコート、ゆとりのあるフルレングスパンツ、そしてクロップドパンツといったクラシックなアイテム。そこに豊かな発想を咲かせて、アブノーマルな物語を綴る。部品となるアイテムは、バッグスタイルで真っ二つに裂いたジャケット、帯状にカッティングを入れたコート。前・後ろ身頃で素材を変えたものもある。そして、片腕が出るように解体されたシャツには、袖口に切れ端のようなパーツを添えた。こうして出来上がったパーツは、コーディネートという名の組み立てを施した。インナーの上にアウターを羽織るという概念は飛び越え、思うがままに重ね合わせていく。シャツは前身頃をサイドに寄せて着こなし、コートは体にぐるっと巻き付け、本来の前後左右といったポジションは全て入れ替えた。シャツ地のコルセット、ゼッケン風のエプロン、、ワンショルダーのアームカバーは、良いデコレーションでより複雑で不可思議な世界へ。しかし、この破壊と崩壊の連続の中にもフェミニニティは存在する。流れるようなリボンがどこからか飛び出し、パールのネックレスが首元を飾る。レースやチュールによる透け感やジャカードの光沢感もセンシュアルで、肌をちらりと覗かせるスリットもさりげなく色気を香らせる。
2016年10月02日カルヴェン(CARVEN)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク3日目の2016年9月29日(木)に発表された。メンズを担当していた、ベルナベ・アルディが退任したため、2017年春夏シーズンはウィメンズのみの展開となったブランド。カルヴェンの夏を彩る新作ピースは、新鮮さと新しさを秘めたものだった。コレクションの中心となるのは、シースルー素材で、カルヴェンのCマークを散りばめたトップス、ビニール地で出来たジャケット・ハーフパンツ・スカートなど揃っている。その透明感を利用したレイヤード法は斬新なもので、カラータイツを差したり、ブラトップを忍ばせたりしてインナーウェアとのミックスを楽しんでいる。アイコンともいえる台形ミニやタイトドレスは存在するが、今季はシルエットに遊びが見られる。とろみのある素材や風にたなびく軽いテキスタイルを使用して、スカートやアーム部分などにフレアなラインを描かせた。また、卵のように丸く膨らんだトップスも登場し、軽やかさや女性らしさを加えている。装いのアクセントとなるのは、ベルトディテールだ。シルバーメタルのパーツが胸元や腰元に2個も3個も並んでいる。また同デザインはアクセサリーにも採り入れられ、チョーカーとして存在感を放つ。一方本物のベルト(の役割をしているもの)は、ビジューを飾って煌びやかな印象。ジュエリーのようにリュクスなムードを着こなしに添えるのだった。
2016年10月02日ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク2日目2016年9月28日(水)に発表された。会場へ足を踏み入れると、氷に閉じ込められた花々が暗闇の中で輝いていた。空調がきいていない生暖かい空間、じわじわと溶け出す氷柱、それに合わせたように流れる溶ける氷の音色。様々な要素が融合されたその環境は、幻想的であり生命感を感じられた。ショーの始まりは突然で穏やかだった。開場時から続く、溶ける氷の音色以外に音は加えられず、真っ暗な中にファーストルックが浮かび上がった。真っ白なTシャツとハーフパンツ、潔いほどにシンプルだ。そして対象的にデコラティブなアクセサリーで飾られている。足元は下駄のようなサンダルで、突然現れた和の文化は不自然であるのに、面白いほどに調和している。その後はしばらく白の世界が続くのだが、洗いざらしのホワイトワンピースに唐突に投じられた、オレンジやイエローの花々が印象的であった。和、花模様、ワントーンに浮かぶ鮮やかな色彩、そしてカジュアルと対照的なアクセサリー。これらは、今季のドリス ヴァン ノッテンの折衷主義を支えるキーワードであるだろう。美しいジャカードや繊細なシースルー素材には、日本の着物から着想を得た花々がのっている。咲き誇るように優雅な姿をみせるもの、流れるタッチで描か曖昧な表情を浮かべるもの。繊細な感性によって描かれたモチーフは、国境を越え、時代を越えて、モダンウェアの中で再び命を宿し、花を咲かせている。光沢とマット、透け感などニュアンスに違いがあるものの、パレットはほぼ黒または白で構成されていて、そこに差し込まれた、明るいイエローや鮮やかなブルーは、驚くほど強い色彩のパワーを発揮している。コレクションピースはエレガンスが基本だ。Iラインドレスやジャカードのコート、フレアなスカートなど、高貴でフェミニンである。そこに差し込まれたTシャツやワークウェアには、ドレスルック同様に、オーナメントのように精巧なビーズ刺繍を添えた。ヴィクトリア時代を思わせる服の断片。その手の込んだディテールがリュクスとストリートの間を埋め、カジュアルをドレスラインまで昇華させている。
2016年10月02日ランバン(LANVIN)は、新アーティスティック・ディレクターのブシュラ・ジャラールを迎えて初めてのウィメンズコレクション2017年春夏をパリ・ファッション・ウィーク2日目の2016年9月28日(水)に発表した。ベースとなったのは、創設者ジャンヌ・ランバンのアーカイブピース。ここに女性ディレクターならではのエモーショナルなアレンジを加えて、男性・女性といった性差を越えたスタイルを創り出していく。ランウェイにはこれまでに比べ、パンツが多く揃った。ファーストルックを飾ったパンツスーツは、シルクサテンを使用したもの。真珠のような淡さと光沢が、マスキュリニティに色気を与える。ロングストライプシャツにはパールとビジューのボタンをあしらい、ジャンプスーツはシースルー素材で仕立てて、男性性と女性性を融合させた。テキスタイルは、ランバンらしい贅沢なもので、ライダースにはツイードを用いて温かみを出した。また、胸元だけこのツイードを裂きほぐし間にチュールを挟んでボリュームデコレーションへと転換。Vネックのミニドレスには、アストラカンを配してラグジュアリーに仕上げた。ヴィンテージシックなゴールドチェーンも、豊かさと煌めきを象徴する。ブラック&ホワイトのシックな色合いがムードだが、イングランドローズのモチーフがランウェイに華を添える。ロングドレスやジャケットには上からシフォンを重ねて優しく包みこみ、さらにジャケットの裾にはボーダーラインを添えてスポーツ要素を加えた。ブシュラが生み出すコーディネートは、セクシーなキャミドレスと快活なジャケット、スーツとロングシャツのマッチなど斬新なものである。そこに、クリスタルのボリュームアクセサリーや、メタルレースのバングル、花のコサージュなどを胸元やラペル、足首などに投下させて、より複雑な着こなしを楽しんでいる。
2016年10月01日アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッド(Andreas Kronthaler for Vivienne Westwood)の2017年春夏コレクションが、パリ・ファッション・ウィーク5日目の2016年10月1日(土)に発表された。今季ブランドは、鮮明な形で夏を迎えた。地中海が一つのインスピレーションとなり、ビキニやワンショルダーのサマードレスがランウェイを走る。パリジャンのYasmineとのコラボレーションによって生まれたスイムウェアは、花模様やフリルをあしらってフェミニンな仕立てだ。ビーチでのくつろいだ時間は、リラクシングで着心地よい時間をもたらした。ロングTシャツを1枚でさらりと纏った着こなし、またスイムウェアがギリギリ隠れる長さのミニスカート、ハートポケットのハーフパンツ、ゴムウエストのパンツなどが躍動的なシーズンテーマを体現している。一方、ビーチに相応しくないテーラリングは、リデザインして軽やかさを差した。パンツスーツは、ボトムスの内側にカッティングを入れ、スカートともパンツとも判別し難いシルエットへと変形、ジャケットにはバックスタイルにカッティングを入れリボンディテールを添えた。少年的なショートパンツのセットアップも登場している。訪れた人が思わずシャッターを切ってしまう、アイデアピース。今季は、流れ落ちるようなリボンが複雑性を持たらしたハット、ドレスを支えるクリノリンを逆さまにしたようなトップスなどが、個性的なシルエットを創り出している。
2016年10月01日ミラノ・ファッション・ウィーク 2017年春夏ウィメンズコレクションが終了を迎えた。今季は、ボッテガ・ヴェネタがブランド初となるメンズ・ウィメンズ合同ショーを開催。またディースクエアードも、2017年よりメンズ・ウィメンズを統一することをアナウンスし、ウィメンズ単独ショーのラストを飾った。アルマーニは、エンポリオ アルマーニの舞台を今季のみパリへ移すため、ジョルジオ アルマーニだけの展開。発表後すぐ購入できる「See now buy now」に取り組むブランドも増加し、マックスマーラは、人気モデルのジジ・ハディットを招き、イタリア・ミラノで新作バッグを早くも発売した。ニュース性の高い、ミラノ 2017年春夏ウィメンズコレクションをいち早くおさらい。グッチ、モスキーノといった人気ブランドから、プラダ、ジョルジオ アルマーニ、フェンディといった老舗、日本から2度目のミラノ参戦となるアツシ ナカシマまで、7つのキーワードとともに振り返る。注) ブランド名をクリックすると、コレクションレポートまたはルックがチェック可能。①プラットフォームシューズ&サンダル2017年春夏はプラットフォームシューズ&サンダルが大人気。プラダは、ビーチサンダルをショーに持ち込み、ヴェルサーチはアイコンのピンヒールを差し置き、プラットフォームシューズが旬な顔に。MSGMはカラフルなスニーカーを揃え躍動的だ。ジョルジオ アルマーニの新作はサマーブーツ、ディーゼル ブラック ゴールドのグラディエーターサンダルも気になるところ。CHECK:下記ブランドも展開グッチ、フェンディ、サルヴァトーレ フェラガモ、ブルーガール、ミッソーニ、トッズ、スポーツマックス②Tシャツスポーツテイストの流行は加速し、よりアクティブな方向へ。ドルチェ&ガッバーナは、イタリアンフードをあしらったドレスと共に、ブランドロゴTシャツを展開。また、ディースクエアードはTシャツだけでなく、チェックシャツもコレクションピースに採り入れ、斬新な動きを示した。アツシナカシマは、異例のプロ野球球団・東京ヤクルトスワローズとコラボレーション。ポップなTシャツでジャパニーズ・カルチャーを提示した。③スイム&アンダーウェア今季は、スイムウェアまたはアンダーウェアから着想を得たマイクロ丈がブームの予感。「モダン・ロココ」をテーマにしたフェンディは、本来ドレスの下にある下着をキーアイテムにフェミニンルックを提案。また、アルベルタ フェレッティはドレスに交えてブラトップを、プラダはジャケットと共にショートパンツを…と着こなしで遊びを効かせているブランドも多い。CHECK:下記ブランドも展開ブルマリン、エミリオ・プッチ、エルマンノ シェルヴィーノ④民族・トライバルブルーガールのキーアイコンは‟フリンジ”。マルチカラーのピアスやネックレスに採り入れ、カラフルなサマールックへと繋げた。ロベルト カヴァリは、民族ドレスやカウボーイルック、そして日本の着物スリーブ…と様々な文化をミックスさせた。トルコや中央アジアを旅する女性をミューズにしたエトロは、民族衣装・カフタンを主役に。タッセルを飾ったり、鮮やかな刺繍を施したりとモダンなアレンジも注目どころ。⑤ワントーンコーディネート装いからアクセサリーまで一色にまとめたシンプルスタイルも一つのムーブメントに。パワーショルダーで強さを表現したジル・サンダーは、クリーム・ペールピンク・ブラックなど様々なカラーのワントーンルックを披露。「トロピカル モダン」をテーマに、ボタニカル模様、アニマル柄を揃えたマックスマーラの中にも、鮮やかなオレンジ・ブルー・イエローで揃えた着こなしがあった。プリントが得意なマルニが、一色で勝負したのも興味深い。CHECK:下記ブランドも展開アルベルタ フェレッティ、N°21、エミリオ・プッチ、スポーツマックス、エルマンノ シェルヴィーノ、トラサルディ、フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ⑥アクティブバッグ最旬バッグのキーワードはアクティブ。マルニの新作は、洋服と同じ生地で仕上げた腰巻きバッグ。大きなサイズ感なので容量も抜群だ。一方、N°21のニューモデルもウェストバッグ。こちらはかなり小ぶりなタイプで、リボンをあしらってフェミニンに仕上げた。アクティブとは少し異なるが、グッチはリボンストラップを使って背負わせ、アルベルタ フェレッティは腰回りにベルトと一緒に巻き付け、新しいバッグの持ち方を提示した。⑦ビッグハットグッチの夏はとにかくヘッドアクセサリーが豊富。ターバン、乗馬風ハット、海賊風ハットなど個性豊かなコスチュームが揃う。プレコレクションから引き続き、大きな帽子をポイントにしたエミリオ・プッチ。顔を覆うほど大きなサイズ感に観客は釘付けに。本物の帽子ではないが…すべてのピースを‟だまし絵”で進行したモスキーノからも、ビッグなフェイクハットが登場している。合わせたビキニ、ビーチマットもプリントなので騙されないで!CHECK:下記ブランドも展開ブルマリン
2016年10月01日パリ・ファッション・ウィークが開幕。日本ブランド・アンリアレイジ(ANREALAGE)は、初日の2016年9月28日(水)に2017年春夏ウィメンズコレクションを発表した。テーマは「サイレンス」。そしてこの後には、「沈黙の中に声を探す、声なき服に耳をすませば」というメッセージが添えられていた。毎度実験的な取り組みを行っているアンリアレイジだが、今回はコレクション発表前に専用アプリを開設。アプリをダウンロードし、スマートフォンをかざすことで、AR(拡張現実)とサウンド演出が行われ、違った形でショーが楽しめるという。会場では、観客席の前にiPadが設置され、その画面を通じて最新ルックを確認することができた。昨シーズンに引き続き、サカナクションの山口一郎が手掛けたサウンドは、「サイレンス」という言葉からは想像できないほど大きな音が用いられていた。初まりは、ピーっという高音と地響きのような振動音が耳が痛くなるほど大音量で流され、ピタっと止まると同時にモデルがランウェイに登場した。白と黒のボーダーとストライプ模様で彩られたルック。線の太さやラメ加工の有無などの違いはあるが、ほとんど同じような色柄の羅列だ。シルエットは全体的にフレアで、マントやロングスカート、スリット入りのワイドパンツが並んだ。だた、iPadの前を通り過ぎても何も変化はなく、観客席からは少し不思議な表情が浮かぶ。せっかくのせたロゴやエンブレム、花模様にも打消し線のような黒い線が重ねられていて、洋服の顔がつかめない。その「?」を待ち望んでいたかのように、デザイナーの森永邦彦は仕掛けを投じる。森や海、花畑をモノクロで描き、不可思議な黒い帯状のものを合わせたワンピースをランウェイに送り込んだ。観客席前のiPadの前に立つと、静かにしてと言わんばかりに「しーっ」という声が流れる。数秒経つと、キラキラとした音とともに黒い帯状のものが画面上で変化し、洋服の模様を拡大して見せてくれた。続くのは、メッシュの白いワンピースを着たモデル集団。そして黒い帯状のものはパワーアップし、2~3本巻かれている。それぞれに何か文字が記されているが、序盤同様に打消し線が引かれていて判別はできない。先ほどと同様に、iPadの前に立つと今度は、帯状のものが消え去りロゴが浮かび上がる。と同時、ロゴの声が聴こえてくる。「NOISE」「SILENCE」「SOUND」「VOICE」といった具合に。森永のチャレンジは、ユニークで新しい可能性を秘めている。本来は視覚、そして着心地や手触りといった触覚で楽しむファッションを「聴覚」という観点でも喜ばせているからだ。将来自分のクローゼットから、こういった形で洋服の声が届く日が来るかもしれない。そんな淡い期待を抱かせてくれるものだった。
2016年10月01日サルヴァトーレ フェラガモ(Salvatore Ferragamo)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、ミラノ・ファッション・ウィーク5日目の2016年9月25日(日)に発表された。今シーズンのキーワードは、伝統と進化の結びつけだ。サルヴァトーレ フェラガモらしい気品は保ちながら、最先端の技法や素材を付け加え、モダンな女性像を構築していく。伝統的なテーラーリング技術を使ったジャケットは、センシュアルなアイテムへと変化を遂げた。袖を大胆にカットし、ウエストラインは曲線を描くように仕上げた。新鮮さが全体を包み込むが、クロコダイルのポケットにより高級感は残し続けて。トップスに対してボトムスはボリュームを持たせ、マスキュリニティを残したのもポイントだ。また、上品さを象徴するマーメイドスカートには、アクティブなエッセンスを投下する。ハイウエストに設計し腰回りを強調させ、サイドにジップを添えた。膝から下は大胆にフレアなラインを描かせ躍動的に。特に、フルジップアウターとの相性はよく、エレガント×スポーツのミックススタイルが心地良い。ランウェイで度々登場したプリントドレス。手書きのフラワーモチーフや直線ラインを重ねて3D効果を持たせたものも展開された。一見シンプルなこれらのドレスにも機能素材が起用されていて、スポーツウェアからのインスピレーションが、女性らしいライン作りに貢献している。
2016年09月29日ディースクエアード(DSQUARED2)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、2016年9月25日(日)イタリア・ミラノで発表された。今季のディースクエアードは、過剰なまでにデコラティブだ。デフォルメされたパフスリーブとミニスカートが基本スタイルで、そこにレオパード柄のスイムウェアや金刺繍の貴族風ジャケットといった‟ド派手”なウェアを差し込んでいる。シルエットはコンサバティブな要素も含んでいて、巻き髪&ピンヒールとコーディネートした姿は、80年代・バブル時代の日本を想起させるような懐かしい印象を与える。特筆すべきは、チェックシャツやプレーンなTシャツが、カジュアルの垣根を越えドレスラインへ到達していること。大きなリボンやビジューによる装飾が、ウェア本来の素朴さを打ち消し、強い個性へと繋げている。また、リップや目のモチーフを散りばめたシューズ、大振りなピアスによるコーディネートもゴージャスな姿へつなげるアシスト役だ。アイコンのデニムも同様に、ブリーチ加工&グリッター加工を加えて華麗に。ユニークなことに、ウエストラインから落として履く‟腰履き”がムードのよう。数年前、デニムからアンダーウェアを見せた履き方が日本で流行となったが、それ同様にカラフルな腹巻風インナーウェアをウエストラインから覗かせている。なお、コレクション終了後、ディースクエアードは2017年よりメンズ・ウィメンズ合同でショーを行うことを発表した。同じインスピレーション源を基に、よりメンズとウィメンズのウェアがつながった形で展開していくという。新体制のデビューは、2017年1月メンズのファッション・ウィークを予定している。
2016年09月29日プラダ(PRADA)の2017年春夏ウィメンズコレクションが、2016年9月22日(木)イタリア・ミラノで発表された。新しいエレガンスとは何か。この問いに、ミウッチャ・プラダが見つけ出した答えは、新しいコンビネーションとスタイリングで、身体を包みこむシルエットを創り出すことだった。象徴的なのは、ベルクロのディテールだ。トレンチコートやフレアスカートは、脇に寄せるようにベルクロ付きラバーバンドで留められている。花やストライプ模様があしらわれたラバーはどこかチープで懐かしく、高級な服地との間にアンバランスさが生まれている。また、身体のラインが見えるシースルー素材は大活躍だ。繊細で立体的なビジュー刺繍を飾り、チャイナ服やドレスになって登場する。プラスオンのアイテムとして、洋服の上にレイヤードされているものもある。毛足の長いファーで縁取られた袖や裾が、ここでもまた不均衡な印象を拡張させる。度々現れる花柄や幾何学模様は、ブラウンやエメラルドグリーンといった色使いでレトロ調だ。こういったアイテムもクラシカルにまとめるのではなく、スイムウェア着想のショートパンツや柄オン柄の組み合わせなどによって、独特のコンビネーションへと繋げている。ビーチサンダルでの着崩しは見事だ。会場では新作ピースと並んで、11月のロサンゼルス発表前に最新フィルムが公開された。これまでウェス・アンダーソン監督など、多彩なアーティストとコラボレーションを行ってきたプラダが、今回選んだのはデヴィッド・O・ラッセル監督だ。フィルムはモノクロでプラダルックに身を包む女性を捉え、知的でモダンな空気を作り出している。
2016年09月29日