パク・チャヌク監督がカンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞したサスペンスロマンス『別れる決心』。独特の表現に夢中になる人が続出している本作から、パク・チャヌク監督自身が語る3分でさらに分かる特別映像が解禁された。隅々にまで監督のこだわりが込められた本作には「何度か観て謎や伏線を確認したい」「一度では消化できないけれど、傑作」といった声が上がり、その独特な表現に何度も観たくなるとリピーター続出中。今回解禁となった映像では、ソレ(タン・ウェイ)とへジュン(パク・ヘイル)はなぜ惹かれ合うのか、そして監督が描き上げた2人の関係性、さらに2人の脇を固める魅力的なキャラクターまでをパク・チャヌク監督が自ら徹底解説している。◆2人の関係性についてまずパク・チャヌク監督は、『別れる決心』のタイトルには、“私たちは合わない”と別れる決意をしたとしても、 心の奥底では“別れるべきではない”と分かっているという意味が込められているという。このタイトルのように、本作の表現もひと筋縄ではいかないものばかりだ。「へジュンとソレは考え方が似ているから、2人は恋に落ちるのだ」と言うが、その表現の優雅さにはただ驚くばかり。本映像の中でも紹介されているが、ソレはヘジュンに「慈悲深い人は山を好むが、自分は海が好きだから慈悲深くない」と語りかける。それに対してへジュンも「僕も海が好きです」と答える。海にも山にも見えるディティールが散りばめられた本作では、さらに2人が好きな荒れ狂う海で映画史に残る衝撃のラストにたどり着くのである。2人が似ているという表現はほかにも出てくるが、「夫の死を言葉で説明するか、写真で確認するか」というものであったり、「取調室で高級寿司を食べる様子」であったりと、どれもほかの映画では見ないものばかり。そういった独特な表現を通して描かれる2人の関係性に、夢中になる人が続出している。さらに、本作では「霧」という国民的歌謡曲や、霧の多い“イポ”という架空の街など、“霧”が印象的に登場している。とあるシーンで、ソレはへジュンに「ここは霧がありません」と優しく語りかけるのだが、それは「彼女が彼の沈んだ心を晴らすと宣言しているようなものだ」と監督は言う。決して“愛している”と言わないラブストーリーを作りたかったというように、本作はこうした直接的ではない表現が度々登場しており、2人だけの世界をより一層ロマンティックに作り上げている。監督は本作について、「ある2人の関係の発展と崩壊までを描いたラブストーリーだ」と語っている。喪失を描いた悲痛な物語であるが、それを悲劇に浸るのではなく、さりげなく優雅に語るように表現することを心がけたのだという。◆ポン・ジュノ監督も絶賛、脇を固める魅力的なキャラクターたちタン・ウェイが演じたソレとパク・ヘイルが演じたへジュンの脇を固めるキャラクターたちについても、パク・チャヌク監督は語っている。へジュンの妻アン・ジョンアン(イ・ジョンヒョン)は、ソレと対極にある存在として描かれており、ソレが再婚した夫も名刺のデザインだけで高慢な人間性が伝わってくる。また、へジュンに憧れて釜山にきた後輩刑事のスワン(コ・ギョンピョ)はへジュンとは違う視点で物事を見つめることができる存在であり、へジュンがイポへ移ってからの後輩刑事のヨンスはスワンとはまた正反対のキャラクターである。ヨンスを演じたキム・シニョンは人気コメディアンで、本作が映画デビュー。パク・チャヌク監督は「彼女は天才だ!」と称賛し、さらに『パラサイト 半地下の家族』(2019)で知られるポン・ジュノ監督も絶賛していることを本映像で明かしている。『別れる決心』はTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:別れる決心 2023年2月17日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED
2023年02月28日映画『アラビアンナイト 三千年の願い』よりジョージ・ミラー監督のインタビュー映像が公開された。前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』から8年。物語の舞台を灼熱の荒野からイスタンブールのホテルの一室へと一転させ、前作とはまったく異なる題材に挑戦した本作は、3000年もの間幽閉されていた孤独な魔人と現代の女性学者の「願い」をめぐる寓話を描く。主演はティルダ・スウィントンとイドリス・エルバが務め、メインスタッフに『怒りのデス・ロード』の精鋭スタッフが再結集した。本作の原作はA・S・バイアットの『The Djinn in the Nightingale’s Eye』という短編小説。ミラー監督は昔に読んだその小説が長年心に残り、「ある日、映画化すべきだと思い立った」という。また本作を作るうえで最も大切にしたことが、『怒りのデス・ロード』のようなアプローチだったと語る。ガイガーカウンターで放射線を探し当てるかのように、そこに「引き込まれるような、ダイナミックな物語展開があるか」を探す作業が、ふたつの作品に共通したアプローチだったと明かした。さらに、今回初めてタッグを組んだ主演のふたりについて言及する場面も。ミラー監督はスウィントンのことを、「敬意を込めて、ティルダ様(Her Tildaness)と呼んでいる」と明かし、彼女と仕事をした監督たちの一員になれて光栄だと述べている。エルバに関しては、彼の俳優としての特徴は「カリスマ性」だと述べ、親しみやすい存在であると同時にミステリアスなところが彼の魅力だと語った。そして、まさにそれこそが本作の主人公である“魔人”の特徴でもあったという。また「なぜ人は物語を語るのか?」という哲学的な問いにも言及。物語や寓話には「真実」が込められており、子どもに「哲学的なことや心理学的なことを伝える」ために物語という伝達方法があると語っている。そして「踊るペンギンや喋るブタの映画制作でそれを学んだ」と、『ベイブ』や『ハッピー フィート』での経験が、今に繋がっていることを語った。『アラビアンナイト 三千年の願い』は全国の劇場で公開中。映画『アラビアンナイト 三千年の願い』ジョージ・ミラー監督インタビュー映像<作品情報>『アラビアンナイト 三千年の願い』公開中『アラビアンナイト 三千年の願い』ポスタービジュアル (C)2022 KENNEDY MILLER MITCHELL TTYOL PTY LTD.監督・脚本・製作:ジョージ・ミラー出演:イドリス・エルバ、ティルダ・スウィントン関連リンク公式サイト::
2023年02月25日映画館が閉鎖され、映画をスクリーンで観ることのできない期間があったコロナ禍。そんな状況下でスティーヴン・スピルバーグ監督や、デイミアン・チャゼル監督、インド出身のパン・ナリン監督らが次々と映画へのラブレターともいえる作品を生み出した。イギリスの演劇界で活躍し、映画『1917 命をかけた伝令』や『007 スペクター』などでも知られるサム・メンデス監督も、最新作『エンパイア・オブ・ライト』を「最も個人的な思いのこもった作品」として、自身が10代を過ごした1980年代初めを舞台に映画と映画館についての愛の物語をオリジナル脚本で作り上げた。メンデス監督がその演技に魅了され、主演に起用したオリヴィア・コールマンに、注目の新鋭マイケル・ウォード、英国の至宝コリン・ファースらが“映画館「エンパイア劇場」”に勢ぞろい。社会不安や性的抑圧、メンタルヘルス、人種差別など今日と地続きのテーマが盛り込まれている。オリヴィア・コールマンが熱演痛みを抱えた女性の人生に光を射す映画主人公は、海辺のやや寂れた「エンパイア劇場」で働くヒラリー・スモールという中年女性。過去に辛い経験をして、いまはひとり慎ましく暮らしているヒラリーの前に、サッチャー政権の厳しい不況下で夢を諦め、エンパイア劇場で働き始めた黒人の青年スティーヴン(マイケル・ウォード)が現れる。前向きに生きるスティーヴンと心を通わせながら、次第に生きる希望を見出していくヒラリーだったが、あるときから、まるで人が変わったようになってしまう。オリヴィア・コールマンは常に“史上最高の演技”を更新していく、現代を代表する“お気に入り”俳優の1人だ。孤独で哀れな女王を演じてアカデミー賞主演女優賞を受賞した『女王陛下のお気に入り』や、ノミネートされた『ファーザー』や『ロスト・ドーター』、あるいは「Fleabag フリーバッグ」のイヤミな継母、「ハートストッパー」の温かい母親役で知る人も多いだろう。そのほかアニメの声優からマーベル作品まで、近年は特に多彩なキャリアを築いている。もともとシットコム「ピープ・ショー ボクたち妄想族」や映画『ホット・ファズ俺たちスーパーポリスメン!』などコメディで活躍してきたが、その卓越した演技力からシビアな役柄を任されることも多い。メンデス監督はオリヴィアと面識はなかったそうだが、彼女がエリザベス2世を演じたNetflixシリーズの「ザ・クラウン」を見て本作の主演に当て書きしたという。「ザ・クラウン」シーズン3&4では当時のサッチャー首相(演:ジリアン・アンダーソン)との対立も描かれており、同時代を生きた女性を演じているわけだ。本作のヒラリーは、毎日エンパイア劇場でマネージャーとしての仕事を淡々とこなす、一見、物静かで繊細な女性だ。スティーヴンと知り合い、惹かれるようになってからは明るい表情を見せるものの、序盤の彼女の瞳は虚ろで光が感じられない。彼女が抱える事情につけ込んだ劇場支配人のエリスからは、性的な関係を強要されている。多くは語られないが、複雑な内面を持ち合わせているヒラリー。夫からDVを受ける女性を演じた『思秋期』(2010)もよぎる。長びく不況も遠因だろう。幾層にも重なった悲しみ、怒り、拒絶や絶望が彼女の心を蝕んできたのだと、オリヴィアに圧倒されながら腑に落ちていく。その姿には監督自身の母親が投影されているという。ただ、ヒラリーは、オリヴィアが2021年のドラマ「ランドスケーパーズ 秘密の庭」で演じた、現実から逃げるために映画の世界に生きるしかなかった女性とはまた違う。ヒラリーは映画館で、ある映画に救われる。人生には何が起きるか分からない。決して“煌めき”ばかりではないからこそ、私たちには暗闇に包まれる瞬間が、映画館が必要なのだと彼女が教えてくれるのだ。イギリスの名優たちが「エンパイア劇場」に集う『ブルース・ブラザース』から『炎のランナー』まで、「エンパイア劇場」にかかる映画からも時代を感じられる本作。映画を映画館で見ることの喜びと、感情の浄化を描く本作の舞台となったのは、イングランド南東部の海辺の町マーゲイト。“ドリームランド”という名の現存する元映画館とダンスホールというロケーションが使用されている。劇中では、全盛期を過ぎた「エンパイア劇場」は当初4つあったスクリーンが半分閉鎖されており、ゴージャスだった時代がうかがえる最上階はいまやハトたちの住処になっている。また、劇場の仕事といえば、上映前後はスナックを用意したり、掃除やゴミ捨てをしたり、売り上げを計算したりと慌ただしいが、上映が始まればちょっとした時間ができる。その時間と、かつての華やかな場所がヒラリーとスティーヴンが心と体を通わすオアシスとなった。この2人のシーンでは、メンデス監督と5度目のタッグとなり本年度アカデミー賞にノミネートされている撮影監督ロジャー・ディーキンスの手腕がいかんなく発揮された。寂れた空気感の中にも、過去の栄光に思いを馳せることができる映像はスクリーンで目にしてほしい光景ばかり。何より、スティーヴンを演じるマイケル・ウォードは、あのオリヴィアと対峙しながら眩い光を放つまさに新星だ。スティーヴンが直面する、職にあぶれたスキンヘッドの白人青年たちからの惨い差別もしっかりと描かれる。彼が苦境の白人を助けるためだけの、単なる“親切な黒人”とならぬよう努めていることも伝わってくる。さらに、オリヴィアと夫婦役を演じたことのあるコリン・ファース扮するセクハラ・パワハラ支配人のエリスはさて置き、スティーヴンに「暗闇の中の光」について話す映写技師ノーマン役(彼の映写室がまた素晴らしい)のトビー・ジョーンズ、「ザ・クラウン」シーズン4でも女王に関わる重要な役を演じていたトム・ブルックら、劇場スタッフたちの人間味と温かさも疑似家族のように2人を包み込んでいる。『エンパイア・オブ・ライト』は2月23日(木・祝)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(上原礼子)■関連作品:エンパイア・オブ・ライト 2023年2月23日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2023年02月23日2月23日(木・祝) より公開される映画『エンパイア・オブ・ライト』より、サム・メンデス監督らの映画&映画館讃歌を詰め込んだ特別映像が到着した。本作は、名匠サム・メンデス監督が5度アカデミー賞作品賞を世に送り出したサーチライト・ピクチャーズとタッグを組んだ最新作。監督が初の単独脚本に挑み、「最も個人的な思いのこもった作品」と明かす本作は、第80回ゴールデングローブ賞で主演のオリヴィア・コールマンが主演女優賞(ドラマ部門)にノミネート、第76回英国アカデミー賞では英国作品賞、助演男優賞マイケル・ウォード、撮影賞ロジャー・ディーキンスの主要3部門にノミネート、そして第95回アカデミー賞ではロジャー・ディーキンスが撮影賞にノミネートされている。公開されたのは、キャストとスタッフ陣が本作にとって大きな核となる“映写室”やその技術について語る特別映像。トビー・ジョーンズ演じる映写技師のノーマンがマイケル・ウォード演じるスティーヴンに映写機の使い方を教えているシーンに続き、名撮影監督ロジャー・ディーキンスが「映画は魔法のように人を魅了する」、サム・メンデス監督が「映写されたフィルムのわずかなチラつき、柔らかみ、そこに美がある」と、映写機を通してスクリーンに映し出される“映画”の素晴らしさについて語る様子から映像は始まる。現在、映写技術はほぼデジタルに移行されたが、本作の時代には熟練した映写技師が2台の映写機を使い、セルロイドのフィルムをアーク灯で映しながら関係者だけが分かる信号をきっかけにフィルムのかけ替えをしていた。映画が物語の核となる本作では、当時の80年代の技術を完全に再現した映写室のセットが準備され、何十年も映写をしてきたという設定のノーマンを演じたトビー・ジョーンズも映写技師の技術をいちから学んだ上で撮影に挑むほどのこだわりっぷり。ジョーンズは「映写機を切り替えるときはタイミングが重要になる」とその難しさについて語っており、映像ではノーマンに弟子入りして初めて映写に挑戦したスティーヴンがフィルムのかけ替えに成功してスクリーンと客席を見つめながら大喜びする様子が映し出される。そんなスティーヴンを演じたマイケル・ウォードが“映写”を「限られた人間だけが味わえる特別な体験だ」と表現し、そしてサム・メンデス監督が「最後のピースは映写技師。映画とは映写する人から観る人たちへのギフトなんだ」とリスペクトを込めてコメントする姿に続き、最後は映写機の操作の仕方を教えるノーマンと、キラキラした目でそれを見つめるスティーヴンの姿で映像は締めくくられる。コロナ禍におけるロックダウンをきっかけに「映画館がなくなってしまうのではないか」という懸念が心を捉えたことから本作の制作にふみきったというメンデス監督。インタビューでは「映写技師は自分も映画制作陣の1人だと捉えている。映画制作の最後の工程だからね。『アラビアのロレンス』をかける時は、デヴィッド・リーン監督の代理になった気持ちでかけるんだ」と映写技師を制作チームの一員であると同じくらい重要な存在として感じていることも明かしている。『エンパイア・オブ・ライト』特別映像<映写の技><作品情報>『エンパイア・オブ・ライト』2023年2月23日(木・祝) 全国公開【ストーリー】イギリスの静かな海岸の町、マーゲイト。辛い過去を経験し、心に闇を抱える女性ヒラリーは地元で愛される映画館、エンパイア劇場で働いている。時は1980年代初頭、厳しい不況と社会不安のなか、彼女の前に夢を諦め映画館で働くことを決意した黒人青年スティーヴンが現れる。過酷な現実にも前向きに生きるスティーヴンに、ヒラリーは希望を見出していく。映画館に行き交うそれぞれの事情を抱えた仲間たちが支え合い、友情を育むなか、思いもかけない大きな事件が起こる……。監督・脚本:サム・メンデス出演:オリヴィア・コールマン、マイケル・ウォード、コリン・ファース、トビー・ジョーンズ、ターニャ・ムーディ、トム・ブルック、クリスタル・クラーク ほか公式サイト:公式Facebook:公式Twitter:公式Instagram:
2023年02月20日『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督らとともに、日本映画監督として海外から高い評価を得ている深田晃司監督。最新作にして9本目の長編映画『LOVE LIFE』の北米配給権を、アメリカの配給会社オシロスコープ社が獲得。ニューヨークで開催されるMoMI(Museum of The Moving Images)First Look Festivalにて上映されることになった。本作は、2022年9月に日本で劇場公開。同年の第79回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門にも出品され、国内外で高い評価を得た作品。映画は、ミュージシャン・矢野顕子の1991年にニューヨーク移住後に発表した初のアルバム「LOVE LIFE」に収録された同名楽曲をモチーフに、「愛」と「人生」に向き合う夫婦の物語を構想期間18年の時を経て完成させた。木村文乃、永山絢斗、ろうの俳優・砂田アトムらが出演した。オシロスコープ社の買い付け担当者、アクイジションマネージャーのアーロン・カッツ氏は、「我々は長い間、深田晃司監督のファンでした。この真情がこもった映画の公開に関わり彼と一緒に働く機会を得たことを嬉しく思います。深田監督は感情的な筋立てによって複雑なキャラクターを作り上げている一方で、同時に、相対的に彼の世界を展開できるよう現実的な選択をしている。彼は現代の巨匠であり、本作を観客の皆さんと共有できて胸が躍る思いです」と「DEADLINE」に語っている。深田晃司監督本作は、3月15日から19日までニューヨークで開催されるMoMI(Museum of The Moving Images) First Look Festivalにダルデンヌ兄弟監督の『トリとロキタ』などとともに選出されており、アメリカで本格上陸する。『LOVE LIFE』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:LOVE LIFE 2022年9月9日より全国にて公開©2022映画「LOVE LIFE」製作委員会&COMME DES CINEMAS
2023年02月19日フランソワ・オゾン監督・脚本の映画『苦い涙』が、2023年6月2日(金)より公開される。フランソワ・オゾン監督・脚本の『苦い涙』フランソワ・オゾン監督・脚本による『苦い涙』は、かつてドイツの映画監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが1972年に公開した映画『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』を自由に翻案した作品。1970年代ドイツのアパルトマンを舞台にした室内劇という作品の大枠はそのままに、アレンジを加え、風刺やユーモアもふんだんに織り交ぜた。ドイツ・ブレーメンを舞台に、恋人と別れ落ち込んでいる映画監督・ピーターが、若く美しい青年・アミールに恋をして翻弄される姿をユーモアたっぷりに描いた物語となっている。フランソワ・オゾンは、物語を通してユーモラスかつシニカルに「人を愛するということとは何なのか」という根源的な問いを投げかける。恋愛だけではない人間関係や、芸術における支配と隷属のパワーバランスの鋭い考察、そして刺激的なヴィジュアルや、1960~70年代のヒットソングをちりばめた音楽にも注目だ。主演に『悪なき殺人』のドゥニ・メノーシェ主人公のピーターには、『ジュリアン』『悪なき殺人』など、フランス映画界で引っ張りだこの俳優ドゥニ・メノーシェを起用。またアカデミー賞2度ノミネート、セザール賞最多5回受賞の名優イザベル・アジャーニがオゾン作品に初出演。ピーターの親友で大女優シドニーを演じ、ミステリアスで強烈な存在感を放つ。さらにピーターの母親役は、ファスビンダーの1972年オリジナル作品にも出演し、2023年の『すべてうまくいきますように』に続きオゾン作品の出演となる名優ハンナ・シグラが務める。ピーター・フォン・カント…ドゥニ・メノーシェ著名な映画監督。助手のカールをしもべのように扱いながら、事務所も兼ねたアパルトマンで暮らしている。親友のシドニーから紹介された美青年アミールに心を奪われる。9ヵ月の間アミールとともに暮らすが、関係性が様変わりしアミールに翻弄される。アミール…ハリル・ガルビア俳優志望の美青年。ピーターによりキャスティングのカメラテストに招かれ、ピーターの自宅に住むことに。ピーターとは情熱的に関係を構築し、ピーターからのバックアップにより映画界の新星としての注目を集めるも、その後ピーターに対して奔放な言動を繰り返すようになる。シドニー…イザベル・アジャーニピーターの親友で、大女優。3年ぶりにピーターのもとを訪れ、アミールを連れてくる。カール…ステファン・クレポンピーターの助手。<映画『苦い涙』あらすじ>恋人と別れて激しく落ち込む映画監督・ピーターは、親友で大女優のシドニーが連れてきた青年・アミールに一目で恋をする。ピーターはアミールに才能を見出し、自分のアパルトマンに住まわせ、映画の世界で活躍できるように手助けするが、美しい青年・アミールに翻弄されていく。【詳細】映画『苦い涙』公開日:2023年6月2日(金)監督・脚本:フランソワ・オゾン出演:ドゥニ・メノーシェ、イザベル・アジャーニ、ハリル・ガルビア、ステファン・クレポン、ハンナ・シグラ、アマンテ・オーディアール原題:Peter Von Kant
2023年02月19日現代映画界&演劇界が誇る名匠サム・メンデス監督が、アカデミー賞常連サーチライト・ピクチャーズとタッグを組んだ最新作『エンパイア・オブ・ライト』。この度、監督が自身初の単独脚本に込めた思いについて語り、オリヴィア・コールマン、コリン・ファースらが70年代~80年代のリアルな情景や映画館への愛がたっぷり詰まった本作の魅力を熱弁する特別映像が、シネマカフェに到着した。1980年代初頭のイギリスの静かな海辺の町、マーゲイトにある映画館を舞台に、生きていくことの複雑さや美しさを名匠サム・メンデスが温かく、繊細に描く本作。この度解禁されたのは、メンデス監督とキャスト&スタッフ陣が本作の魅力や撮影について明かす特別映像。1970年代の終わりから1980年代の初めにかけ、その時代の音楽や映画、ポップカルチャーによって人格が形成されたというメンデス監督は、「あの時代の音楽や映画、あの時代の全てを呼び起こしたかった。この映画には私の個人的な思い出がちりばめられている」と、脚本に当時10代のメンデス監督自身が感じた情景や思いを込められていることを明かす。脚本を読む前に即座に出演オファーを快諾したという主人公ヒラリー役のオリヴィア・コールマンは「ファッションも髪型も特徴的」と言い、共演のコリン・ファースは「嘘偽りのない現実を描いている」、ターニャ・ムーディは「脚本を読んだら当時にタイムスリップした」とキャスト陣も当時のイギリスをリアルなタッチで描いた脚本の魅力を口にする。メイキング映像では、穏やかな笑顔を見せ、時に真剣な眼差しでキャストと語り合っているメンデス監督の姿も映し出され、コールマンの「どう言えば俳優に伝わるか監督は理解していたし、演技を見て心から悲しみ笑っていた」というコメントをはじめ、キャスト陣らがメンデス監督へ厚い信頼を寄せていたことも窺える。彼の脚本のなかでも特に重要な要素となるのが、心に問題を抱えるヒラリーはメンデス監督の母親がモデルであるということ。メンデス監督は「母の心が壊れつつあったことは、私の人格形成に大きく作用したと思う。その記憶の多くをヒラリーに投影した」と語り、『1917命をかけた伝令』『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』でもメンデス監督とタッグを組んできた製作のピッパ・ハリスが「心が空っぽになった女性が映画の中に家族を見いだす。その過程を温かく描いている」という言葉からはメンデス監督から母への温かな思いも感じられる。複雑な過去と苦悩を抱えるヒラリーを見守る映画館スタッフの仲間たち、そして心を通わせるスティーヴン。社会からはじかれ、どこにも適応できないながらも身を寄せ合って家族のように生きている彼らの姿は、映画館を「ここは私の“家”だ」と表現するメンデス監督の言葉にも重なる。続いてメンデス監督は「人と人との愛だけでなく映画館という小さな世界への愛を描いている。映画そのものの美しさを描いているんだ」と本作へ映画館への愛とリスペクトを込めていることを明かし、また最後はファースの「大切なのは観客が一緒になって泣いたり笑ったりすることだ。集まることをやめると人は共通性やつながりを失ってしまう。映画館に足を運んでほしい」と、いまもなお続くコロナ禍をきっかけに映画館から離れた人々へのメッセージも収められている。そんな監督の個人的な思い、映画や映画館への愛が詰まった本作は、本年度アカデミー賞にノミネートされた撮影監督ロジャー・ディーキンスの美しい映像美によって紡がれている。『エンパイア・オブ・ライト』は2月23日(木・祝)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エンパイア・オブ・ライト 2023年2月23日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2023年02月18日恋愛をテーマに、人物像、人間の関係性や本質、リアルな感情に寄り添い、悩み続けながら多くの話題作を作り続けている、映画監督の今泉力哉さん。Netflix映画『ちひろさん』、ドラマ『杉咲花の撮休』が公開を控えている。――最新作の『ちひろさん』を拝見して、有村架純さんが演じた役の中でも、ちひろさんはすごく好きなキャラクターになりました。今泉力哉(以下、今泉):嬉しいです。原作の漫画が面白すぎて、映画にするのに、今回もかなり悩みましたから。多くの方が有村さんに、明るくてやわらかくて、可愛らしい方という印象を持っているようですが、俺の中では、どこか真面目さやクレバーな空気、ある種の暗さも知っている方だなと感じていて。だから、有村さんにちひろさんを演じてほしかったんです。原作者の安田(弘之)さんの「主演は根暗というか、暗さを知っている人がいい」という言葉を撮影前に有村さんに伝えたら「そこだけは大丈夫です」って言っていただいて(笑)。――子役の嶋田鉄太くんも、お芝居とキャラが最高でした!今泉:これを観たら、みんなあの子の話になっちゃいますよね。オーディションで、“泣く”と書かれたシーンのお芝居で泣かずに、審査を終えたんです。それで彼が帰りがけに、まだ部屋を出る前にボソッと「泣けないところが出ちゃったかぁ」って言ってるのが聞こえて、この子はヤバいぞって(笑)。それで彼に賭けることにしたんです。セリフはきちんと覚えられるし、演出をつけた通りに芝居も変えられる。ただ、落ち着きが全くなくて、カットがかかった瞬間に動き回っちゃう(笑)。その両立って、なかなかすごいと思います。彼を選んで、本当によかった。――今作でこだわったことや、気をつけたことはありますか?今泉:主人公のちひろさんは、決して誰かを積極的に助けるわけではなくて、ちひろさんに出会った人たちの視野が勝手に広がったり、こんな大人がいてもいいんだ、と思わせてくれるような物語。だから誰かに正解を押し付けたり、家族の温かみはやっぱりいいね、みたいになるのが怖くて。脚本の段階からなるべく、“感動作”にならないように気をつけていました。関係者向けの試写会で、思い入れのある安田さんはきっと厳しくご覧になるだろうと覚悟していたんですが、試写室から出てきたらすごくいい顔をされていたので安心しましたし、お世話になったスタッフも泣いていました。思わず僕と安田さんが握手をしていたら、その後ろから現れた有村さんが、まあまあ冷静な顔をしていて(笑)。さすがちひろさんだ!って。手放しに喜ばない感じ。有村さんのそういうところが大好きです。――以前のインタビューで、「『愛がなんだ』ぐらいから芝居を役者に委ねるようになってきた」とおっしゃっていたのが印象的でした。今泉:自分の思い通りに撮れても全然面白くないし、想像以上のことが起こらないかな、って毎日思っているんです。それは、天候一つとってもそうだし、何かハプニングが起きてもそれを楽しむことで、使う使わないは別として、映画が豊かになればいいなってことなんですけど。役者に芝居を任せるのもその一つで、まずは何も言わずに一回演じてもらいます。言ってしまうと正解がひとつになってしまい、それ以上が生まれにくくなる。例えば、よく仕事をしている若葉(竜也)さんは常にこちらの想像を超えてきますね。『ちひろさん』でも、原作とはまるで違うタイプのキャラを初日に提案してきたので、これはもう挑まれているなと(笑)。彼は人物の読み解き方が他の人とはちょっと違う、特別な役者ですね。『愛がなんだ』などでご一緒した成田(凌)さんは、若葉さんとはちょっとタイプが違うけど、同じようにアイデアがある人。このシーンは感情を込めすぎるとうまくいかないとか、そういうことに気づく“危機察知能力”が高いんです。――魅力を感じる役者とは?今泉:演じる技術や能力よりも、人間味を感じる役者がやっぱり魅力的ですね。『杉咲花の撮休』でご一緒した、杉咲さんもそうだし、若葉さんや岸井ゆきのさんとかも、みんなめちゃくちゃうまいんですけど、それよりも人間味の方が前に出ていて、うまさがその奥に隠れているんです。それから役者は自分から発信することも大事だけど、いかに相手の芝居を受け取れるかの方が大事だと思っていて。その点、杉咲さんは受け取る能力がものすごく高いです。言葉のセンスもあるし、芝居にフラットさがあるのも彼女の魅力です。いまいずみ・りきや1981年2月1日生まれ、福島県出身。代表作は映画『愛がなんだ』(2019年)、『あの頃。』『街の上で』(共に’21年)、『窓辺にて』(’22年)、WOWOWドラマ『有村架純の撮休』(’20年)ほか。『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』はヨコハマ映画祭で監督賞を受賞。元風俗嬢のちひろは、小さなお弁当屋で働きながら、心に傷や痛みを抱えてうまく生きられない人々に影響を与えていく。Netflix映画『ちひろさん』は2月23日より全世界配信&全国劇場にて公開。杉咲花の休日を松居大悟、今泉力哉、三宅唱の3人の監督が描いたWOWOW 連続ドラマW-30『杉咲花の撮休』は、2月10日より順次放送・配信中。※『anan』2023年2月22日号より。写真・宇佐美直人インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2023年02月17日PFF(ぴあフィルムフェスティバル)が、2019年に創設した映画賞「大島渚賞」の第4回受賞者が、山崎樹一郎(やまさき・じゅいちろう)監督に決定した。この賞は映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする、若くて新しい才能に対して贈られるもの。かつて大島渚監督が高い志を持って世界に挑戦していったように、それに続く次世代の監督を期待と称賛を込めて顕彰してきた。これまで、第1回は小田香監督(『セノーテ』)、第2回は「該当者なし」、第3回は藤元明緒監督(『海辺の彼女たち』)が受賞している。今回受賞した山崎監督は1978年、大阪府生まれ。2006年に岡山県真庭市の山間に移住し、農業に携わりながら作品に向き合うという、独自のスタイルで映画製作を続けている。対象作品となった2022年公開作の『やまぶき』は監督の長編第3作にあたり、日本映画史上初めてカンヌ映画祭のACID部門に選出されたほか、14の海外映画祭で話題をさらった注目作だ。監督は「このもやもやした生きづらさに一撃を!」のキャッチフレーズのもと、クラウドファンディングで資金を集め、16ミリフィルムで撮影に挑んだほか、主演に韓国人俳優を起用し、フランスの製作会社と共同製作を行うという国際色豊かな一面をもつ本作に対して、「段違いの大きなスケールをもった映画である」と審査員の意見が一致し、授賞が決定した。3月14日(火)に実施する授賞式では、審査員の黒沢清監督らから審査講評が発表され、翌15日(水)には、一般向けに記念上映会も開催。『やまぶき』の上映と山崎樹一郎監督らゲストによるトークショーに加え、今年も大島渚監督作品の上映を行う。上映作品やゲストなどのイベント詳細は、2月末に発表予定だ。※山崎樹一郎の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記■ 「第4回大島渚賞記念上映会」()日時:3月15日(水)会場:丸ビルホール上映作品:『やまぶき』+大島渚監督作品※山崎樹一郎監督らによるトークショーあり
2023年02月17日是枝裕和監督が率いる「分福」に所属する気鋭の新人監督・川和田恵真監督による商業映画デビュー作『マイスモールランド』の凱旋上映記念舞台挨拶が、2月13日に新宿ピカデリーにて開催され、川和田監督と主演の嵐莉菜が登壇。サプライズで是枝監督も登場した。川和田監督は「この映画が公開した時(2022年5月)に、ここ(新宿ピカデリー)で舞台挨拶をさせていただきました。観ていただいた皆さんのお蔭でこうして再上映することができて、本当に嬉しく思っております」と感無量の様子で、「公開から時間が経った中でも、映画を作って伝えることの大切さを、日々感じることができています」と挨拶。また、本作の主人公で、自分の居場所(アイデンティティ)に葛藤しながら成長していくクルド人の少女・サーリャを演じ、映画初出演にして初主演を務めた嵐さんは、「山路ふみ子映画賞」をはじめ、「報知映画賞」「毎日映画コンクール」「キネマ旬報ベストテン」「高崎映画祭」などで数々の新人賞を受賞。再び川和田監督と一緒に舞台に立った嵐さんは「想像以上の反響があり、映画賞を受賞できることも想像していなかったので、評価していただけたことがとても光栄で、こんなに幸せなことはないです」と笑顔でコメント。「『マイスモールランド』で、お芝居の基礎から、クルドの文化まで、たくさんのことに触れてきて、たくさんの学びを得た」という嵐さん。モデルとしても活躍する彼女だが、本作への出演を通して感じた俳優としての醍醐味について「自分が他の役になりきるというところだけじゃなく、役を通して、いろいろなことを学べることに、すごく魅力を感じました」と明かした。嵐莉菜、釜山国際映画祭が思い出に「すばらしい光景を見られた」嵐さんとは本作のオーディションで初めて会ったという川和田監督。「最初、会う前に思っていた、すごく華やかな子だなという印象は今も変わっていないんですけれど、さらに一緒に過ごした時間の中で、こんなに気さくな子なんだなと分かって。いろんなことで笑い合える関係になれたのは嬉しいです」とコメント。「そして何より、やっぱりお芝居になったときに見せてくれる表情ですね。お芝居では、会う前に想像していたのとはまったく違う強い魅力を見せてもらえたなと思っています。莉菜さんのお芝居を信じて、一緒に最後までいくことができました」と嵐さんの芝居への大きな信頼を口にした。世界各国の国際映画祭に出席してきた中で、「各地でたくさんの出会いがあって。場所は違っても、描いている物語の核となる部分では、言葉を超えて伝わることができるんだと思った」と語る川和田監督。「釜山国際映画祭では、莉菜さんと2人でレッドカーペットを歩いたことが一番の思い出」との監督の言葉に、嵐さんも「韓国の方々がすごく温かく優しい笑顔で迎え入れてくれて。Q&Aでは、とても集中して、大切にこの作品を観てくださったんだなぁと感じる質問もたくさんいただけました。すばらしい光景を見られたので、連れて行ってくれた監督には感謝しています」とふり返った。是枝監督「時間がかかったことによって、この作品が嵐さんと出会えた」本作『マイスモールランド』は川和田監督が所属する「分福」の企画会議から始まり、是枝監督からの応援もあって実現した作品。舞台挨拶の途中に登場し、2人に花束を手渡した是枝監督は、「こんなふうに凱旋で上映をしていただけるというのは、なかなかないこと。まず何よりもこういう形でまたお客さんに観ていただける機会をもらえるということが、作品にとっても、キャスト、監督、関係者にとっても、本当に嬉しい出来事。おめでとうございます」と祝いの言葉を贈る。すると嵐さんは「びっくりしました......なんだか泣きそうになってしまって......。是枝監督とは釜山国際映画祭でもお会いしたんです。またお会いできる機会があって、すごく嬉しいです」と思いがけぬサプライズに目をうるませるひと幕も。「本当に企画の最初から是枝監督が応援し続けてくれたおかげで、5年以上かかったんですが、実現することができました。本当にありがとうございました」と感謝を伝える川和田監督。是枝監督は「ずいぶん時間がかかったので、もっと早くできれば良かったなぁとは思っているんですけど、考えようによっては、時間がかかったことによって、この作品が嵐さんと出会えたというふうにも考えられる。やっぱり、そういう出会いに恵まれて、生まれるべきタイミングで生まれた作品が強い作品なんですよね」と力説、「そういう意味では、この作品は本当に強い、いい映画になったんじゃないかなと思っています」と応えた。さらに是枝監督は、映画界での大きな一歩を踏み出した2人に「デビュー作で、これだけ注目を集めるというのは、もちろん本当に作品がすばらしいこともありますが、いろんな人の縁に恵まれていただいている評価だと思います。この次だよね。2人とも、今回の受賞がピークじゃない形で、この先のキャリアを重ねていってほしいと思っています。一作一作、前へ進んでください」とエール。川和田監督は「この映画作りを通して、とても大きなものを自分自身もらったので、今度それをまたどう次につなげて作っていくかということを、これから考えていきたいなと思います」と抱負を述べつつ、「本作は自分にとって、これが最初で最後になっても絶対に作る! という思いを持ってきたものです。この作品をもっと届けたいという気持ちも強いので、まだまだ多くの人に伝えていきたいなと思っています」と本作への熱い想いを吐露。そして嵐さんは「川和田監督と皆さんと作り上げた作品が、こうして大切に長く興味を持っていただけることが何より幸せ。自分にとって、本当に人生が変わった大切な作品です。川和田監督とまたこの場に立てるように、私もがんばっていきたいなと思っています」と、こみ上げる想いに涙ぐみながら展望を語っていた。『マイスモールランド』は2月24日(金)まで新宿ピカデリー、MOVIX川口、なんばパークスシネマにて2週間限定凱旋上映中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:マイスモールランド 2022年5月6日より新宿ピカデリーほか全国にて公開予定©2022「マイスモールランド」製作委員会
2023年02月14日予算は全作共通、尺は25分以内、監督本人が必ず出演する…などのルールのもと、5人の俳優が短編映画を制作する『アクターズ・ショート・フィルム』。第3弾となる今作について、チーフプロデューサーの射場好昭さんは「監督たちが自分の深いところで温めてきた“孤独な表現欲”を共有することで、“五人五様”の物語を深掘りできた」と話す。5人の人気俳優たちが監督に!それぞれの個性が光る短編映画。「この企画では、映画を愛し、映画に愛される方々に監督のオファーをしています。“やってみたい”と直接声をかけていただくこともありますし、俳優さんとの会話やメディアでのコメントを通じて、“この人は監督に向いているのではないか”と伝わってくることも。今回で3度目となり、マッチングの精度がより上がっているのではと思います」監督が決定したら、まずは脚本づくりからスタート。監督自ら書くこともあれば、脚本家を招くこともあるそう。キャスティングは俳優たちの交友によって決まることが多く、監督と深い信頼関係にある出演者が揃うとやはり意思疎通も円滑だ。演じる者同士だからか、初めて仕事をする相手でもすぐに分かり合えることが多いという。それから、ロケハンや衣装、美術や小道具に至るまで、すべて監督が指揮をとっていく。「第3弾では、ルーティン化する部分と監督ごとに個別化する部分がより明確に。制作側のミッションとしても、監督の魂の深い部分に共鳴したいという意識がありました。そうすることで、より思い切った変化ができたかなと。作り手の色がしっかり表れる、この多様性こそが、短編映画というジャンルの持つ大きな魅力の一つではないでしょうか」#1 『CRANK‐クランク‐』監督:高良健吾出演:中島歩、染谷将太東京に暮らす若者のリアルな葛藤を描く。メッセンジャーとして働き、東京中を忙しく走り回っている丸(中島歩)は、仕事帰りに立ち寄った町中華でメッセンジャー仲間のヒデ(染谷将太)と偶然出会う。妻の田舎へ移住しようと語り出すヒデの話を聞き、自分の未来が不安になった丸は夜の道を自転車で駆けていく。主役の二人はもちろん、井浦新や柄本佑、河井青葉など脇を固める豪華キャストにも注目。撮影は高良の映画デビュー作も手がけた名匠・山崎裕が担当。#2 『COUNT 100』監督:玉木宏出演:林遣都栄光と挫折を知るボクサーの不思議な体験。かつてはチャンピオンだったプロボクサーの光輝(林遣都)。手酷い負けを経験したことで自信を失くし、故郷から共に出てきた彼女からも見放されそうになっている。そんなある日、「あなたの未来を変えてあげる」と書かれた奇妙なチラシを受け取ったことを機に光輝の生活が大きく動き出す。自身もボクシングの経験がある玉木宏が監督を担当し、撮影は『百円の恋』や『アンダードッグ』で知られる西村博光が手がけた。#3 『Prelude~プレリュード~』監督:土屋太鳳出演:土屋太鳳、有村架純過去を大切にしながら苦悩を乗り越えていく家族。戦争の苦い記憶を持つ祖父(S-KEN)、バレリーナの道を志したものの挫折感を抱えた歩架(土屋太鳳)、悲しみの中に沈む母(岩瀬顕子)、自らも苦しい過去を抱えながら歩架たちを優しく見つめる親友の桃子(有村架純)。平穏な日常生活の中で大切な記憶を引き継いでいく、家族と仲間の物語。カメラマンを務めたのは、『ワンダフルライフ』や『花よりもなほ』など是枝裕和監督とのタッグで知られる山崎裕(#1も担当)。#4 『いつまで』監督:中川大志出演:井之脇海、板垣瑞生、林裕太同世代の監督と俳優がリアルな想いを切り取る。親友の結婚式の後、終電を逃して田舎の小さな駅に降ろされた教師の洸(井之脇海)、サラリーマンの礼司(板垣瑞生)、画家の卵の泰正(林裕太)。3人は、「そこへ行けば願いが叶う」という駅員の勧めに従って夜の神社へと歩き出す。未来に漠然とした不安を抱える彼らは、夜道の途中でそれぞれの想いを吐き出していく。中川大志と同世代が脚本とキャストを務め、監督のありのままのメッセージが込められた等身大の作品が完成。#5 『虎の洞窟』監督:野村萬斎出演:窪田正孝悲劇の名作に着想を得た現代を生きる男の物語。シェイクスピアの『ハムレット』と中島敦の『山月記』をモチーフに、孤独な青年の心象風景を抉るように描く。周囲から“社会のゴミ”と罵られ、自らの居場所を見出せない男(窪田正孝)は、ある日不思議な声に誘われて外へ駆け出す。すると、力がみなぎって虎になっている自分に気づくのだが……。窪田正孝の息をのむ演技はもちろん、警官役に勝村政信と梶原善、若者役に萬斎長男の野村裕基が出演するのも見どころ。いば・よしあき1967年生まれ。WOWOW制作部で『アクターズ・ショート・フィルム3』のチーフプロデューサーを務める。過去には古典落語をモチーフにしたオムニバスドラマ『にんげんこわい』などを手がけた。WOWOW『アクターズ・ショート・フィルム3』予算・撮影日数など同条件のもと、5人の俳優たちが25分以内のショートフィルムを制作。アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」のグランプリを目指す人気シリーズの第3弾。WOWOWにて2月11日(土)20:00より放送・配信。※『anan』2023年2月15日号より。取材、文・大場桃果(by anan編集部)
2023年02月13日スティーヴン・スピルバーグ監督最新作『フェイブルマンズ』が3月3日(金) に全国公開される。このたび、スピルバーグ監督の最新インタビューを含む予告映像が公開となった。本作は、初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になったサミー・フェイブルマン少年(ガブリエル・ラベル)が、両親との葛藤や絆、そして様々な人との出会いによって成長していきながら、人生の一瞬一瞬を探求し、夢を追い求める物語。第80回ゴールデングローブ賞で作品賞(ドラマ部門)、監督賞のダブル受賞を果たし、第95回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞、作曲賞、美術賞の主要含む7部門でノミネーションされるなど、オスカー最有力候補として注目を集めている。公開された映像では、本作の象徴的なシーンとともに「私の映画は主に自分の体験を映し出しています」と自身のフィルモグラフィを振り返るスピルバーグ監督の姿が。さらに「この映画はたとえ話ではなく、私の記憶なのです」と自らの原体験が最も色濃く反映された作品だと続け、「この物語を語らずに、キャリアを終えることは想像すら出来ません」と思いを明かしている。映画『フェイブルマンズ』予告編<作品情報>映画『フェイブルマンズ』3月3日(金) 全国公開監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ脚本:トニー・クシュナー音楽:ジョン・ウィリアムズ関連リンク公式HP::
2023年02月08日WOWOWによる『アクターズ・ショート・フィルム3』の完成報告会見が2月7日(火)、都内で行われた。5人の俳優たちが“監督”として予算・撮影日数など同条件で、25分以内のショートフィルムを作成し、WOWOWで放送・配信をする短編映画企画。会見には監督を務めた高良健吾、玉木宏、土屋太鳳、中川大志、野村萬斎が勢ぞろいし、自身の作品にこめた思いを語った。片寄涼太との結婚を発表して以来、初めて公の場に立った土屋は「人生、何が起こるかわからないと実感している」と“映画監督”として舞台挨拶に立つ心境を告白。初の監督業だったが、「プロフェッショナルな方々に囲まれて、心強く、苦労は感じなかった」といい、「脚本も作らせていただいたが、25分という中で自分の伝えたいことを、どのくらい削るのか、判断するのが苦労した」と振り返った。土屋太鳳親交の深い有村架純との初共演も実現し、「架純ちゃんが『太鳳ちゃんが伝えたいことや演出に寄り添えるように頑張るね』と言ってくれた」と感謝の意。作品の出来ばえについては「いつか表現したい、伝えたいことをすべて詰め込みました」と自信を示していた。高良が「道路交通法が大変で、早朝でなければ撮るのが難しいシーンもあった。もう少し自由に撮れれば、もっとやりたいこともあった」と東京でのロケの難しさを振り返ると、萬斎も「交差点での撮影を選んで、夢は大きく渋谷スクランブル交差点でって思ったが、実際には五反田の片隅で(笑)」と大きくうなづいていた。高良健吾野村萬斎ボクシングを題材にした玉木は、林遣都をキャスティングした経緯について、「ちょうど(妻の)大島優子さんとお話する機会があって『今、(ボクシングを)やっているよ』と。過去にもボクシングの作品に出ているし、じゃあ林君にお願いしようという話になった」と驚きのエピソードを披露。中川は撮影に入る前、プロデューサー陣とともに、キャスティング会議に出席したといい「会議の裏側は、生々しい話も多くて(笑)。俺もこういう感じで、名前が出ては、名前が消えていくのかなって。ちょっとザワザワしましたね」と話していた。玉木宏中川大志取材・文・撮影:内田涼<番組情報>『アクターズ・ショート・フィルム3』2月11日(土・祝) 20:00~WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信監督:高良健吾、玉木宏、土屋太鳳、中川大志、野村萬斎(五十音順)●『CRANK-クランク-』監督:高良健吾出演:中島歩、染谷将太メッセンジャーの丸(中島歩)は東京中を走り回る。仕事帰りにメッセンジャー仲間のヒデ(染谷将太)から東京を離れるかもと聞き、自分の未来も不安になった丸は……。●『COUNT 100』監督:玉木宏出演:林遣都プロボクサーの光輝(林遣都)は、一度はチャンピオンの座につくものの、手ひどい負けを喫して、彼女からも見放されてしまう。ある日、路上で不思議なチラシを渡され……。●『Prelude~プレリュード~』監督:土屋太鳳出演:土屋太鳳、有村架純戦争の苦い記憶を持つ祖父、バレエの道を志したものの挫折感を抱えた歩架(土屋太鳳)、悲しみに沈む母、親友桃子(有村架純)もまた苦しい記憶を抱えて、今を生きていく。●『いつまで』監督:中川大志出演:井之脇海、板垣瑞生、林裕太結婚式に出席した教師の洸(井之脇海)、サラリーマンの礼司(板垣瑞生)、画家の卵の泰正(林裕太)の3人は終電を逃して田舎の小さな駅に降ろされてしまう。●『虎の洞窟』監督:野村萬斎出演:窪田正孝「ハムレット」と「山月記」をもとに孤独な青年の心象風景を描く。社会に居場所を見いだせない男(窪田正孝)は、ある日不思議な声に誘われて外に駆け出していく。
2023年02月07日映画『独裁者たちのとき』が、2023年4月22日(土)からユーロスペースにて公開される。監督は、アレクサンドル・ソクーロフ。アーカイヴ映像で画面上に蘇る20世紀の独裁者たち映画『独裁者たちのとき』は、ロシアの“鬼才”と称されるアレクサンドル・ソクーロフが監督を務め、ヒトラー、スターリン、チャーチル、ムッソリーニといった、20世紀の独裁者たちの姿を過去のアーカイブ映像から独特なデジタルテクノロジーで再現した作品。ダンテの「神曲」を彷彿させる冥界を舞台に、独裁者の“おとぎ話”を紡いでいく。セリフは本人の手記や発言を引用ヒトラーやスターリンら、独裁者たちのセリフは全て、過去の手記や実際の発言の引用によって作られている。すでにこの世を去っているはずの独裁者4人を画面上に蘇らせ、嘲笑と陶酔の晩餐を描く。時には滑稽に、時には暴力的に、そしてシュールに映し出される独裁者たちの姿が、観る者に驚きと衝撃をもたらすだろう。ロカルノ国際映画祭コンペ部門、東京国際映画祭に出品映画『独裁者たちのとき』は、当初カンヌ国際映画祭での披露を予定していたが中止に。また、ロカルノ国際映画祭コンペ部門に出品された他、2022年の東京国際映画祭では『フェアリーテイル』というタイトルで上映され、話題を呼んだ。映画『独裁者たちのとき』あらすじ深い霞に覆われた色のない廃墟の中で男たちが蠢いている。ヒトラー、スターリン、チャーチル、ムッソリーニなど第二次世界大戦時に世界を牛耳っていた独裁者たちだった。煉獄の晩餐が始まると、お互いの悪行を嘲笑、揶揄し、己の陶酔に浸っている。〈地獄〉のようなこの場所で〈天国〉へと続く扉が開くのを待っているのだった――。【詳細】映画『独裁者たちのとき』公開日:2023年4月22日(土)監督・脚本:アレクサンドル・ソクーロフ製作:ナタリヤ・スマギナ、ニコライ・ヤンキン音楽:ムラト・カバルドコフ音響:アレクサンドル・ヴァニュコフ出演:アドルフ・ヒトラー、ヨシフ・スターリン、ウィンストン・チャーチル、ベニート・ムッソリーニ原題:Skazka英題:Fairytale2022年|ベルギー・ロシア|ジョージア語・イタリア語・フランス語・ドイツ語・英語|78分
2023年02月05日映画『レッド・ロケット』が、2023年4月21日(金)より公開される。監督・脚本・編集は、ショーン・ベイカー。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』のショーン・ベイカーが監督映画『レッド・ロケット』は、第90回アカデミー賞にノミネートされた『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』や、全編をiPhoneで撮影した『タンジェリン』などで知られるショーン・ベイカーによる作品。2021年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で初披露され、北米ではA24が配給権を獲得した。再起を夢見る元ポルノスターを描く物語は、落ちぶれた元ポルノスターのマイキーが夢見る、“大迷惑なサクセスストーリー”。アメリカ社会の「声なき声」をすくいあげ、丁寧に描いてきたショーン・ベイカーが、社会の片隅で生きる人々をカラフルに映し出した“ひとクセあり”のヒューマンドラマだ。主演はサイモン・レックス主人公・マイキー...サイモン・レックスご都合主義でうすっぺら、⼝先だけの元ポルノスター。今は落ちぶれ、無⼀⽂で故郷テキサスへ舞い戻っている。別居中の妻から罵られながらもどうにか家に転がり込むことに成功したマイキーは、ドーナツ店で働く少女と出会ったことで何かの“スイッチ”がオン。再起を夢見るが…?主演を務めるのは、サイモン・レックス。過去のポルノ出演映像が流出したことで、一時は表舞台から姿を消すなど、マイキーと重なるようなスキャンダラスな経歴を持つ。レクシー…ブリー・エルロッドマイキーの妻。ストロベリー…スザンナ・サンストロベリーを演じるのは、スザンナ・サン。ロサンゼルスの映画館ロビーでショーン・ベイカーより直接スカウトされたという。テキサスの工業地帯をエモーショナルに映す撮影監督は、『WAVES/ウェイブス』のドリュー・ダニエルズ。16mmフィルムのエモーショナルな映像で、テキサスの工業地帯を美しく切り取った。映画『レッド・ロケット』あらすじ「ポルノ界のアカデミー賞を5回逃した」ポルノ俳優だったが、今は落ちぶれ無⼀⽂で故郷テキサスへ舞い戻ったマイキー。17年のブランクのおかげで仕事はない。昔のつてでマリファナを売りながら糊⼝を凌いでいたある⽇、ドーナツ店で働く少⼥と出会い再起を夢⾒るが…。【詳細】映画『レッド・ロケット』公開日:2023年4月21日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国順次公開監督・脚本・編集:ショーン・ベイカー共同脚本:クリス・バーゴッチ撮影:ドリュー・ダニエルズ美術:Stephonik出演:サイモン・レックス、ブリー・エルロッド、スザンナ・サン2021年/アメリカ/英語/130分/カラー/シネスコ/5.1ch/原題:Red Rocket/ R-18+/⽇本語字幕:岩辺いずみ
2023年02月03日インドのチャイ売りの少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる。パン・ナリン監督自身の驚くべき物語を映画化した『エンドロールのつづき』は、トライベッカ映画祭ほか5つの観客賞を受賞し、さらにバリャドリード国際映画祭では最高賞にあたるゴールデンスパイク賞をインド映画として初めて受賞。世界中の映画祭から喝采を浴びた本作は、日本でも大きな話題となった『RRR』などを抑え、第95回アカデミー賞インド代表作品(国際長編映画賞)にも選ばれた。パン・ナリン監督は、本作とスティーヴン・スピルバーグ監督のアカデミー賞7部門ノミネート作『フェイブルマンズ』について米メディア「TheWrap」で言及している。『フェイブルマンズ』と『エンドロールのつづき』には“映画の魅力に惚れ込んだ監督の自伝的物語”という大きな共通点がある。幼少時代に映画から受けた影響や家族の反応などがリアルに描かれ、多くの観客に感動を与えている。『エンドロールのつづき』パン・ナリン監督ナリン監督は「キャストとスタッフ全員で『フェイブルマンズ』を見に行ったのですが、映画が始まると、少なくとも30回は『そんなことありえるの?』と顔を見合わせました」と『フェイブルマンズ』を観たときの驚きを明かす。主人公の名前もサミーとサマイ。少年が持つ仲間たち。支えてくれる母と反対する父、さらには電車への共通のこだわりなど、『フェイブルマンズ』と『エンドロールのつづき』には類似点が多い。「映画人は皆、同じようなことを考えているのだと驚きました」とナリン監督は言う。『フェイブルマンズ』© 2022 Universal Pictures. ALL RIGHTS RESERVED.さらに監督が自分自身の物語を紡ぎながら、映画そのものを称賛する「映画についての映画」の公開も相次いでいる。サム・メンデス監督の『エンパイア・オブ・ライト』、そしてデイミアン・チャゼル監督の『バビロン』なども映画を称え、映画が辿る時代の変化を描いている。なぜいま、自伝的な映画、そして映画の魅力について語られる作品が製作されているのだろうか。ナリン監督は「なぜ私は映画を撮っているのだろう? その理由は何だったのだろう? いつから映画が好きになったのだろうとコロナ禍で内省し、物語を探し始めた」と語っている。『エンドロールのつづき』パンデミックが始まり、世界中の映画館は封鎖され、映画鑑賞の終焉を予言する悲観的な声まで生まれた中、スピルバーグは「コロナ禍がきっかけで、このことを書こうと思った」と語り、サム・メンデス監督も「ロックダウンは、私たち全員にとって、強烈な自己検討と反省の期間だった」と述べている(「Variety」より)。あと1本しか映画を作れないとしたら、自分は何を描きたいのか?人生と仕事の集大成は何だろう?映画作家としてその1つの答えが「映画についての映画」を製作することなのかもしれない。最後にナリン監督は、「『エンドロールのつづき』は『映画へのラブレター』であり、スタンリー・キューブリックのような偉大な映画人に捧げるものだ。映画を通して自分がある。これは彼らにオマージュを捧げる唯一のチャンスかもしれない」と締めくくる。映画人が“映画”への溢れんばかりの愛情を込めて製作した、日本公開が相次ぐ4本を紹介する。『エンドロールのつづき』公開中“映画”への溢れんばかりの愛情を込めて本作を監督したのは、インド出身でいまや国を超えて活躍するパン・ナリン。リュミエール兄弟、スタンリー・キューブリックなど、監督が敬愛する巨匠たちへのオマージュがちりばめられ、自らの才能で未来を照らす光を追い続ける少年の姿に、誰もが無邪気な幼少期を思い出すような、幸せで希望あふれる物語が誕生した。大きな夢を抱く主人公、チャイ売りの少年サマイ役には3,000人の中から選ばれた新たな才能、バヴィン・ラバリ。観客が一体となった映画館、スパイスたっぷりの手料理、陽気な音楽とダンス…どこか懐かしいインドの魅力が満載。本作では監督自身の故郷であるグジャラート州でのロケを敢行し、大自然の音や光の撮影方法にこだわり、映画は映画館でしか観られなかった時代のゆったりとした時間の流れや、幼い頃の飽くなき探求心を美しい映像で表現した。サマイの仲間たちを演じた愛嬌溢れる子役たちも全員グジャラート州出身であることにこだわり、監督の幼少期の思い出が詰まった故郷の、独特な雰囲気や風情を見事に再現した。『バビロン』2月10日(金)公開『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督最新作の舞台は、ゴージャスでクレイジーなハリウッド黄金時代。豪華なファッションに、ド派手なパーティ、規格外の映画撮影に、熱狂的なジャズミュージックが観る者の感性を刺激する。ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバらをキャストに迎え、激動のハリウッドで夢を叶えようとする男女を演じる。『エンパイア・オブ・ライト』2月23日(木・祝)公開現代映画界&演劇界が誇る名匠サム・メンデス監督が満を持して、5度アカデミー賞作品賞を世に送り出したサーチライト・ピクチャーズとタッグを組んだ最新作。舞台は1980年、イギリス南岸の静かなリゾート地。本作はそこに生きる人々の絆と“映画と映画館という魔法”を力強く描く。メンデス監督が、地元の映画館エンパイア劇場で働く主人公にオリヴィア・コールマン、撮影監督にロジャー・ディーキンスなどアカデミー賞受賞の最高の才能とともに贈る奇跡のストーリー。『フェイブルマンズ』3月3日(金)公開人生の出来事、その1つ1つが映画になった。「この物語を語らずに自分のキャリアを終えるなんて、想像すらできない」と、50年にわたるキャリアの中で、『ジョーズ』から『E.T.』『ジュラシック・パーク』まで、史上最も愛され、変幻自在なフィルモグラフィを世界に送り出してきたスティーヴン・スピルバーグが“映画監督”になる夢を叶えた自身の原体験を描く。初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になったサミー・フェイブルマン少年。そんなサミーを芸術家の母は応援するが、科学者の父は不真面目な趣味だと考えていた。そんな中、一家は西部へと引っ越し、そこでの様々な出来事がサミーの未来を変えていく――。『エンドロールのつづき』は新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋ほか全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:バビロン(2022) 2023年2月10日、全国にて公開© 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.エンドロールのつづき 2023年1月20日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋ほか全国にて公開ALL RIGHTS RESERVED ©2022. CHHELLO SHOW LLPエンパイア・オブ・ライト 2023年2月23日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.フェイブルマンズ 2023年3月3日より全国にて公開© 2022 Universal Pictures. ALL RIGHTS RESERVED.
2023年01月28日マーベル映画のジミー・ウー役で知られるアジア系コメディ俳優ランドール・パークが『Shortcomings』で監督デビューを果たした。主要キャストは、すべてアジア系俳優。パークらしい、温かさとユーモアに満ちた作品だ。日系アメリカ人のベンは、やはり日系のミコと北カリフォルニアのバークレイに住んでいる。ある日、ミコは、夢がかなって3ヶ月のインターンシップに受け入れてもらえることになり、ニューヨークに行ってしまう。このところ、ふたりの関係がぎくしゃくしていたこともあり、恋人関係をいったんお休みにすることで、ふたりは合意。ベンはさっそく若い白人の金髪女性にアプローチするが、ミコが電話の返事をまるでくれなくなったことも、気になってしかたがない。そしてついにこっそりとニューヨークに乗り込んで行った彼は、衝撃的な事実を発見するのだった。映画には、アメリカに住むアジア系が共感できる要素がたっぷり。たとえばベンの女友達は韓国系のレズビアンだが、彼女は親に対して絶対にカミングアウトしないと決めている。理解してもらえるはずがないからだ。そんな彼女は、ベンを恋人に仕立てて親に紹介しようとするも、親は日本人を嫌っているため、韓国系ということにしてもらう。また、ベンは、自分は金髪女性と付き合いたいくせに、ミコが白人男性と一緒にいるのは許せない。タイトルこそ出さないものの、『クレイジー・リッチ!』がアメリカで爆発的にヒットしたことについての複雑な思いについても触れられる。あの商業的な映画でアジア系が注目されたことにベンは抵抗を覚えるが、ミコは、多くの人が楽しんで感動するならいいではないかという。多様化が叫ばれる今日のハリウッドで、マイノリティにとってはタイムリーでリアルなトピックだ。主演は、『アフター・ヤン』でAIを演じたジャスティン・H・ミン。今作ではまるで違う、チャーミングで生き生きした魅力を発揮する。ほかの出演者に、『スパイダーマン』新3部作でネッドを演じたジェイコブ・バタロン、『エクス・マキナ』『クレイジー・リッチ!』『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』のソノヤ・ミズノなど。パークも小さな役で出演する。文=猿渡由紀(C)Sundance Institute
2023年01月27日映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』が、2023年4月14日(金)に公開される。主演は坂口健太郎が務め、企画・プロデュースを行定勲、監督・脚本を伊藤ちひろが担当する。“誰かの想い”が見える青年の切なくも美しい物語映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』で描かれるのは、リアルとファンタジーが混在する「マジックリアリズム」が息づく物語。そこに存在しない“誰かの想い”が見える不思議な力を持つ青年・未山を主人公に、切なくも美しいストーリーを紡いでいく。坂口健太郎が不思議な力を持つ青年に“圧倒的な透明感”をもって、主人公・未山を演じるのは、坂口健太郎。柔らかくも神秘的な雰囲気とともに、傷ついた人を癒す青年を演じる。その他、乃木坂 46からの卒業発表後初の映画出演となる齋藤飛鳥や、市川実日子、浅香航大、磯村アメリ、そしてKing Gnuの井⼝理といったキャストが名を連ねている。■主人公・未山…坂口健太郎そこに存在しない“誰かの想い”が見える不思議な力を持ち、身体の不調に悩む人やトラウマを抱えた人、傷ついた人を癒す青年。詩織、美々と暮らしている。どこから来た何者なのか、未山の持つ秘密とは。演じるのは、『劇場版シグナル長期未解決事件捜査班』『余命10年』『ヘルドッグス』など話題作への出演が続く坂口健太郎。■莉子…齋藤飛鳥かつて起きたある事件がきっかけで、未山の前から姿を消していた元恋人。未山の過去の秘密の鍵を握る。■詩織…市川実日子未山と共に生活を共にしている看護師の恋人。■草鹿…浅香航大未山の高校時代の後輩であり、ミュージシャンとして活動している草鹿。■美々…磯村アメリ詩織の娘。監督・脚本は伊藤ちひろ企画・プロデュースは行定勲。また、『世界の中心で、愛をさけぶ』をはじめ、行定勲と数々の作品を作り出してきた伊藤ちひろがオリジナル脚本を書き下ろし、監督を務めた。美術・装飾スタッフ出身である伊藤ちひろならではの感性が光る、詩的な映像世界が展開される。主題歌はクボタカイ「隣」映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』の主題歌は、クボタカイにより特別に書き下ろされた楽曲「隣」。エモーショナルな楽曲が、物語の切ない余韻を際立たせる。さらに、劇中の音楽は、Yaffleが担当。藤井風やiri、SIRUPなど人気アーティストの楽曲を数多くプロデュースしてきたYaffleが映画の世界観をどのように彩るのかに注目だ。映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』あらすじそこに存在しない“誰かの想い”が見える青年・未山。その不思議な力で様々な人を癒やし、周囲と寄り添いながら、恋人で看護師の詩織とその娘・美々と静かに暮らしていた。そんな未山はある日、自らの”隣”に謎の男が見え始める。どこか異質なその想いを辿り、東京に行き着いた未山。ミュージシャンとして活躍していたその男から、未山に対する特別な感情や、元恋人・莉子が遭遇した事件の顛末を明かされ、未山は自らが置き去りにしてきた過去と向き合うことになる。【詳細】映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』公開日:2023年4月14日(金)出演:坂口健太郎、齋藤飛鳥、浅香航大、磯村アメリ、茅島成美、不破万作、津田寛治、井口理、市川実日子監督・脚本:伊藤ちひろ原案:伊藤ちひろ企画・プロデュース:行定勲製作:「サイド バイ サイド」製作委員会制作プロダクション:ザフール製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
2023年01月23日豊田徹也の人気漫画『アンダーカレント』が映画化。2023年10月6日(金)に公開される。主演は真木よう子、監督は今泉力哉。豊田徹也の伝説的コミック『アンダーカレント』映画化『アンダーカレント』は、豊田徹也による唯一の長編漫画。2004年8月より1年間に渡り講談社『月刊アフタヌーン』にて連載され、2005年10月には単行本を出版。「まるで1本の映画を観ているようだ」「何度も読み返したくなる」と漫画評論家や口コミで高い評価を得て、カルト的な人気を呼んだ伝説的漫画作品だ。加えて、フランスを中心とした海外でも人気を博し、2020年にフランスメディアで発表された「2000年以降の絶対に読むべき漫画100選」では、世界中の名だたる漫画がランクインする中、堂々の3位に選出されている。そんな『アンダーカレント』が、満を持して映画化。“人を知ろうとすること”の尊さを教えてくれる、心が震えるヒューマンドラマを描き出す。真木よう子が5 年ぶりに主演主演を務めるのは、映画『焼肉ドラゴン』以来、5年ぶりの主演作となる真木よう子。映画『さよなら渓谷』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、『そして父になる』で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞をダブル受賞するなど、数々のヒット作で異彩を放つ真木よう子が主人公・かなえ役を担当する。主人公・関口かなえ…真木よう子家業の銭湯を継ぎ、夫の悟とともに順風満帆な日々を送っていたかなえ。しかし突然、悟が失踪してしまう。途方に暮れていたかなえだったが、なんとか一時休業していた銭湯を再開。そんなある日、「銭湯で働きたい」と堀と名乗る謎の男がやってくる。堀隆之…井浦新かなえが営む銭湯 「月乃湯」に銭湯組合の紹介を通じてやって来る謎の男。住み込みで働くことになる。山崎道夫…リリー・フランキー風変りな探偵。失踪したかなえの夫・悟の行方を期間限定で探すことになる。関口悟…永山瑛太失踪したかなえの夫。菅野よう子…江口のりこかなえと悟の大学の同級生。かなえに探偵・山崎を紹介する。木島敏江…中村久美月乃湯を手伝う気の良いおばちゃん。田島三郎…康すおん煙草屋の店主。月乃湯の常連。藤川美奈…内田理央月乃湯の近所に、小学生の娘・みゆと暮らすシングルマザー。監督は今泉力哉監督を務めるのは、『愛がなんだ』や『あの頃。』『街の上で』『窓辺にて』など話題作を次々と発表し、映画『ちひろさん』も手がける今泉力哉。『アンダーカレント』の紡ぐ繊細で静謐な人間ドラマを、みずみずしくリアルな描写で映像化している。また、脚本は、『愛がなんだ』の澤井香織が、今泉力哉とともに手がけている。音楽は細野晴臣音楽を担当するのは、細野晴臣。深層に響き渡るような音色で物語の中へと誘うような楽曲を提供している。映画『アンダーカレント』あらすじ家業を継ぎ、夫の悟と銭湯を切り盛りし順風満帆な日々を送るかなえ。しかし突然、悟が失踪する。彼の行方は一向に分からず、 途方に暮れるかなえだったが、一時休業していた銭湯の営業を再開させる。そこに「働きたい」という謎の男・堀が現れ、ある手違いをきっかけに住み込みで働くことに。その日からかなえと堀の不思議な共同生活が始まる。友人から紹介された胡散臭い探偵・ 山崎とともに期間限定で悟を探しながら、穏やかな日常を取り戻しつつあったかなえ。しかし、ある事件をきっかけに、堀、悟、そしてかなえが閉ざしていた心の深層(アンダーカレント)が、徐々に浮かび上がってくる。【作品詳細】映画『アンダーカレント』公開日:2023年10月6日(金)出演:真木よう子、井浦新、 リリー・フランキー、永山瑛太、 江口のりこ、 中村久美、康すおん、内田理央監督:今泉力哉脚本:澤井香織、今泉力哉原作:豊田徹也『アンダーカレント』(講談社「アフタヌーン KC」刊)製作幹事:ジョーカーフィルムズ、朝日新聞社企画・製作プロダクション:ジョーカーフィルムズ配給:KADOKAWA
2023年01月19日マイケル・ジャクソンの伝記映画『Michael』の監督に、アントワーン・フークアが決まった。脚本は『ラスト・サムライ』『アビエイター』などのジョン・ローガンが手がける。プロデューサーは『ボヘミアン・ラプソディ』を大ヒットさせたグラハム・キング。製作にはマイケル・ジャクソンの財団もたずさわる。フークアは現在、デンゼル・ワシントン主演の『イコライザー3』をイタリアにて撮影中で、これは彼の次の作品になるようだ。撮影は今年後半にスタートの予定。フークアの最近作は、ウィル・スミス主演の『自由への道』。文=猿渡由紀
2023年01月19日第26回PFFスカラシップ作品の清原惟監督作『すべての夜を思いだす』が2月16日~26日(現地時間)にドイツで開催される、第73回ベルリン映画祭に正式出品されることが決定した。舞台は多摩ニュータウン。そこですれ違う3人の女性たちのある一日の物語を描く。誰かにとって大切な記憶が、ほかの誰かの一日と呼応する。街に積み重なる時間の痕跡に触れ、小さな変化が起きていく…。清原惟監督は、「PFFアワード 2017」でグランプリを受賞した初長編映画『わたしたちの家』が、2018年の第68回ベルリン映画祭の同部門でも上映されており、カンヌ、ヴェネチアと並ぶ世界三大映画祭のひとつベルリン映画祭で、初長編から2作品連続で上映されるという快挙を成し遂げた。フォーラム部門は4年前に運営メンバーが交代となり、今回セレクションで清原監督作品に初めて触れることになった選考メンバーの面々だったが、「選考メンバーの全員一致で招待が決まった」とのこと。同部門ディレクターのクリスティーナ・ノード氏から、早くも絶賛の声が届いている。斬新な視点を提示する新進の映像作家たちを紹介する、ベルリン映画祭のフォーラム部門において、2月にどのような反応が出るか期待が高まる。「PFFスカラシップ」の第26回作品として製作された、清原監督の商業映画デビュー作となる本作は、劇場公開に向けて準備中だ。清原惟監督<清原惟監督コメント>『わたしたちの家』で初めて呼んでいただいた国際映画祭であるベルリン映画祭で、再び上映できること、とても嬉しく思います。一日の小さな旅の映画が、そのゆっくりとした歩みで海のむこうへと旅立っていくのを、楽しみに見守りたいです。<海外からのコメント>ベルリン映画祭フォーラム部門ディレクター クリスティーナ・ノード冒頭のカットから、これは特別な映画だ、と直感しました。3人の女性の一日を、離れたところから、ゆったりと見つめる。その「場所」の素晴らしさにときめきながら、一緒に歩いていく。『すべての夜を思いだす』は、眩しく、優しく、時に爽やかな風が通り抜けるあの夏の日、のような映画です。クリチバ国際映画祭(※『わたしたちの家』がグランプリを受賞したブラジルの映画祭)プログラマー アーロン・カトラー感動しました。極めて微妙なニュアンスと繊細さをもって、説明せずとも人々に深い共感を呼び起こすことに成功していることに。ずっと、ロベルト・ロッセリーニのこと、そして、歴史は常に我々を取り巻いている、ということを感じていました。(text:cinemacafe.net)
2023年01月16日チャイ売りの少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる――。監督自身の驚くべき物語を映画化した『エンドロールのつづき』。この度、そのパン・ナリン監督がオンラインで登場し、日本の観客とトークショーを行った。世界中の映画祭から喝采を浴びた本作は、日本でも大きな話題となった『RRR』を抑え、第95回アカデミー賞インド代表(国際長編映画賞)としてショートリストにも選出され、ノミネートへの期待が高まっている。物語の舞台である、インドのグジャラートに工場を持つ大手自動車メーカー「スズキ」株式会社により実現した本試写会は1月13日に実施。抽選で約100人の観客が招待され、映画評論家の森直人氏が登場し、つづいてオンラインでロサンゼルスにいるパン・ナリン監督と繋がった。「日本の皆さんとお話できて嬉しいです。今は来たるアカデミー賞のために会員向けの試写会に参加しています」と挨拶。現在、忙しくキャンペーンを繰り広げている中でのオンライントークショーがスタート。ロサンゼルスで実施したという試写会では、ハリウッドで活躍する名だたる撮影監督が試写に来てくれたといい「みなさん心から感動してくれて、自分の涙を指で拭って私に触れたんです。この映画をみて、撮影監督に感動してもらえたというのは、とてもエモーショナルな体験でした」と感激の体験を明かした。映画の着想について話題が及ぶと、2011年に監督の故郷、インドのグジャラートに行った際に友人に会ったことがきっかけだったそう。「友人はデジタル化の波で35mmフィルムが無くなって失職しました。他にもたくさんの映写技師が職を失ったんです。その友人とフィルムに対する愛について語りました」と言う。「当時自分は学校に持っていくお弁当を彼に持っていくことで(交換条件として)映画を見せてもらっていた。生涯の友です。そんなところから本作の着想が始まりました」というと、森さんは「映画そのままですね!」と驚きのコメント。さらにカースト最上位のバラモンでありながら、生活に苦労を強いられていたというところ、映画を見せてもらえなかったところも実話と明かし、「子供のエピソードはそのままです!」と映画で描かれた幼少時代そのままの生活を送っていたと語る監督。「ガラスや捨てられたミシン、扇風機などを集めて自分なりの映写機を作りました。それは子供だったので特別なことではないんです。子供は人にどう見られるかということを恐れない。やりたいことをやるというところがクリエーションの源です。それは大人になると失われてしまいます」と語り、インド公開時のキャッチコピー「何もないからこそ、なんでもできる」という言葉を紹介した。そして、原題『Last Film Show』から日本のタイトルが『エンドロールのつづき』となったことについては、すぐさま「日本のタイトルは大好きです!原題の『Last Film Show』より気に入っています」と会場の笑いを誘う監督。「原題は何かが終わってしまうというふうに感じますが、日本の題名には未来が感じられますね。松竹さんから連絡をもらった時、なんて頭がいいのだ!と思いました。フィルムの終焉は描かれていますが、映画自体は続いていくということがテーマにもなっている。変わらず続いていくんです」と述べた。また、本作には沢山の巨匠監督へのオマージュが散りばめられており、それは「映画作家への大きな大きなラブレター」という監督。勅使河原宏、小津安二郎、黒澤明の名前も出てくるが、そんな巨匠たちの作品を配給した松竹で本作も配給されることについて聞くと、「オーマイガー!本当に心から光栄に思い、ワクワクしています。松竹のロゴが出てくるとこれからすごいものが見られるんだ!とワクワクした学生時代を思い出しました」と語り、「涙が出るくらい嬉しいです。歴史が古く映画が始まった頃からあった松竹さんに公開してもらってとても幸せです」と感激しきり。最後に「この作品はスターがいる作品ではありません。心で作った作品です。運良く世界中の方達に愛されています。ぜひ日本でも沢山の方に見ていただきたいです」と観客に向けてメッセージを送り、「あさってから日本に行きます!ぜひ直接皆さんとお話しできればいいなと思っています」と来日を楽しみにしていることを語っていた。『エンドロールのつづき』は1月20日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エンドロールのつづき 2023年1月20日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋ほか全国にて公開ALL RIGHTS RESERVED ©2022. CHHELLO SHOW LLP
2023年01月16日ユニクロ(UNIQLO)のグラフィックTシャツブランド「UT」は、映画監督ソフィア・コッポラとコラボレーションした「セレブレイティング ソフィア・コッポラ UT」を2023年3月6日(月)より全国のユニクロ店舗ほかにて発売。ユニクロ「UT」×映画監督ソフィア・コッポラ「UT」がタッグを組むのは、現代を代表する映画監督であり、2023年にデビュー25周年を迎えるソフィア・コッポラ。繊細で美しい彼女の代表作品にフィーチャーし、華やかで甘くも物悲しい映画の世界観をユニセックスなボディシルエットのTシャツやトートバッグに落とし込んだ。『ヴァージン・スーサイズ』など5作品をモチーフに今回のコラボレーションでモチーフにしたのは、『ヴァージン・スーサイズ』『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』『SOMEWHERE』『ブリングリング』の5作品。いずれも色彩豊かな世界観の中で描かれる、印象的なシーンや台詞が美しく表現されている。【詳細】「セレブレイティング ソフィア・コッポラ UT」発売日:2023年3月6日(月)予定取扱店舗:全国のユニクロ店舗、オンラインストアアイテム:・ウィメンズ Tシャツ 5柄 1,500円・トートバッグ 1柄 1,500円
2023年01月15日『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督による音楽ドキュメンタリー『モリコーネ 映画が恋した音楽家』より本編特別映像が解禁された。2020年7月に亡くなった、映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネ。本作は、500作品以上の映画とTVの音楽を手掛けた伝説のマエストロの栄光に隠された真実の姿に迫るドキュメンタリー。6度にわたるアカデミー賞ノミネーションを経て、モリコーネに遂に<初受賞>をもたらした『ヘイトフル・エイト』(2015)。生粋の“マカロニウエスタン”、そして“モリコーネ”のファンとして知られるクエンティン・タランティーノ監督が、念願叶ってオリジナル作曲を手掛けてもらった作品だ。解禁された本編映像で、タランティーノ監督は「エンニオ・モリコーネは大好きな作曲家だ」「映画音楽、作曲家のレベルを超えている」「彼はモーツァルトであり、ベートーヴェンであり、シューベルトなのだ」と、授賞式の壇上でその喜びを爆発させる。一方、作曲家のA・デ・ローザからは「タランティーノは(マカロニウエスタンの巨匠)レオーネ映画の大ファン。違う音楽を期待したはず」と裏話も。マカロニウエスタンといえば、その世界的ブームの引き金となった『荒野の用心棒』(1964)では“口笛”をフューチャーした楽曲、『続・夕陽のガンマン』(1966)では“コヨーテの遠吠え”に似せたテーマ曲を作曲するなど、およそそれまでの映画音楽では見られなかったモリコーネによる斬新な作曲が特徴であり、タランティーノも当初同様の音楽をイメージしていたはずだと言う。しかし『ヘイトフル・エイト』でモリコーネは、その予想に反してストラヴィンスキーの<詩篇交響曲>フーガの冒頭など<本物の交響曲>であるクラシックを採用している。「ウエスタンに復讐する気分だった」「つまり過去との決別だ」と述べるように、モリコーネを一躍有名にしながらも長きに渡って彼を囚えていた<エンターテイメントの作曲家>というラベリングから自分で自分を解放、「新たな地平が開けた」(タランティーノ監督)という評価を獲得することになる記念碑的作品でもあったことが明かされる。そのほか、アカデミー賞受賞式の壇上で熱すぎるモリコーネ愛を語るタランティーノ監督に対してレオナルド・ディカプリオやエディ・レッドメインなど錚々たるハリウッドスターたちが、笑顔で暖かく見守る様子も必見の本編映像となっている。『モリコーネ 映画が恋した音楽家』は1月13日(金)よりTOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:モリコーネ 映画が恋した音楽家 2023年1月13日よりTOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開©2021 Piano b produzioni, gaga, potemkino, terras
2023年01月14日山下智久が韓国映画『私の頭の中の消しゴム』のイ・ジェハン監督のもと、人気ウェブ漫画家NASTY CAT作の「見えなくても聞こえなくても愛してる」の実写映画化『SEE HEAR LOVE ~見えなくても聞こえなくても愛してる~』に主演。Prime Videoにて独占配信されることが決定した。今作は次第に目が見えなくなる病を患った漫画家と、生まれつき聴覚障がいを持つ女性の切なくも温かい愛に溢れた日韓共作で贈るラブストーリー。主演を務めるのは、約6年ぶりに王道ラブストーリー作品を演じる山下智久。「今際の国のアリス」シーズン2や「THE HEAD」など、言わずと知れた日本を代表する俳優で近年では世界を股にかけ活躍している。そんな山下さんが今作で自身初の漫画家、そして視覚障がい者役に挑む。ハリウッド映画『The Man From Toronto』(原題)の撮影に参加するなど、海外作品へも意欲的に参加し、国内外で活躍する山下さん。さらには音楽活動も精力的に行い、俳優としての存在感を増しながらアーティストとしての活躍も目覚ましい。本作では韓国の監督・スタッフらと作り上げる、俳優としての新境地に期待が高まる。そんな山下さんは今回の作品について「人生で何を大切にするべきか、真実の愛をそっと見せてくれるような優しい作品にしたいと思いました。完成を楽しみにして頂けたら幸いです」とコメント。「以前から、イ・ジェハン監督のファンでもありましたので、今回のお話を頂いた時、とても光栄に思ったのと同時に、この作品を見て下さる方に何を受け取ってもらえるか深く考えました」とも明かす。監督を務めるイ・ジェハンは、ラブストーリーの金字塔『私の頭の中の消しゴム』を手掛けた恋愛映画の名手。2010年には日本で撮影した『サヨナライツカ』を監督。以降『戦火の中へ』『第3の愛』『オペレーション・クロマイト』など幅広い作品を演出し、グローバル感覚を備えた監督として評価されている。監督は「日本を代表する情熱的な俳優・山下智久さんと作品をご一緒することができて本当に光栄です」とコメントし、山下さんとの初タッグを楽しみにしている様子。「『SEE HEAR LOVE』を通して『見る』というものが何なのか、『聞く』というものが何なのか、そして『愛する』というものが何なのかを濃密に追求し、掘り下げていきたいと思います」と語る。本作は、1月10日よりクランクインし、現在撮影中。あらすじ漫画を描いて生計を立てている漫画家、泉本真治は病を患い、視力を徐々に失うことになる。それにより、やっと軌道に乗って人気がでてきた連載漫画も休載。一緒に暮らしていた祖母の面倒も見切れなくなっていく…。1人になった真治は孤独と恐怖に襲われ、ベランダから身を投げ出そうと考える。そんなとき、真治の漫画のファンで、耳が聞こえない相田響に助けられる。こうして出逢った真治と響が支え合いつつ、切なくも温かいラブストーリーを織りなす。『SEE HEAR LOVE ~見えなくても聞こえなくても愛してる~』は2023年、Prime Videoにて配信予定。(text:cinemacafe.net)
2023年01月13日国立映画アーカイブでは、日本における女性映画人の歩みを歴史的にふり返る「日本の女性映画人(1)――無声映画期から1960年代まで」が2月7日(火)より開催される。監督・製作・脚本・美術・衣装デザイン・編集・結髪・スクリプターなど、様々な分野で女性が活躍した作品を取り上げる今回の上映企画。『お父さんの歌時計』[無声短縮版](1937年、原作・脚本:鈴木紀子)Part1となる今回は、無声映画期から1960年代以前にキャリアを開始した、女性映画人80名以上が参加した作品を対象に、劇映画からドキュメンタリーまで計81作品(44プログラム)を上映。近年、再評価が進んでいる女性監督第1号の坂根田鶴子、女優から監督に進んだ田中絹代や望月優子、脚本の水木洋子や田中澄江、編集の杉原よ志、衣装デザインの森英恵のみならず、多様な領域で手腕を発揮した女性映画人たちにスポットライトを当てる。また、戦前の日本映画の黄金期に大手映画会社で健筆をふるった鈴木紀子を中心として、戦前の女性脚本家の小特集も実施する。『キクとイサム』(1959年、脚本:水木洋子)橋田壽賀子脚本の『姉妹』、和田夏十脚本の『黒い十人の女』、水木洋子脚本の『キクとイサム』ほか上映作品は、国立映画アーカイブの公式サイトにて掲載中。なおチケットは、1月31日(火)以降、毎週火曜日10時より、翌週(火~日)上映回の電子チケットを各回の開映15分前までオンライン販売。窓口販売ほか購入方法詳細は公式サイトに記載されている。「日本の女性映画人(1)――無声映画期から1960年代まで」は2月7日(火)~3月26日(日)国立映画アーカイブにて開催。(cinemacafe.net)
2023年01月11日是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二が初タッグを組むオリジナル映画 『怪物』(2023年6月2日公開)のクリエイター、キャストが5日、明らかになった。同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作。これまで、森の中を走る2人の子供たちのイノセントな写真と、作品タイトルが『怪物』であることが明らかになっている。この度第1弾ポスター&特報映像が公開された。坂本龍一による音楽で構成され、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子ほか超豪華実力派キャストが出演することも明らかになった。特報映像では、坂本龍一が本作のために書き下ろした楽曲を背景に、子供たちの「怪物だーーれだ」という声が何度もこだまする中、是枝裕和、坂元裕二、そして坂本龍一という錚々たるクリエイターたちの名前が浮かび上がり、キャスト陣(安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、田中裕子)の印象深い表情が続きます。そして、学校の上履きのそばに滴り落ちる血という意味深なカットにタイトル『怪物』の文字が続く撮影は2022年の春と夏に終え、現在ポストプロダクション中だという。○坂本龍一 コメント「怪物」怪物と言われると誰が怪物なんだと探し回ってしまうんだが、それはうまくいかない。誰が怪物かというのはとても難しい問いで、その難しい問いをこの映画は投げかけている。さて、その難解なテーマの映画にどんな音楽をつければいいのだろう。救いは子供たちの生の気持ち。それに導かれて指がピアノの上を動いた。正解はない。今回残念ながらスコア全体をお引き受けする体力はなかった。監督からのたってのご所望でピアノ曲2曲を提出した。新しいアルバム「12」からの曲や、古い曲を使って全体を構成してくださった。○是枝裕和監督 コメント・坂本龍一について長年の念願が叶ってようやくコラボレーションが実現しました。撮影中も編集中もホテルの部屋で坂本さんの音楽をかけながら作業をしていたので正直お引き受け頂けなかったら途方に暮れていたと思います。歓喜、しています。・キャストについて安藤サクラさん、永山瑛太さん、田中裕子さん、こんなキャスティングが実現したらいいですね、と坂元裕二さんとワクワクしながらお話した通りのキャストが出演してくれました。身震いしました。安藤サクラさんは『万引き家族』に続きまして、2作目のお付き合いでしたが、前回とはまた全く違う凄みのある役を見事に体現していただきました。永山瑛太さんは初めての出演でしたが坂元裕二さんが瑛太さんに当て書きした役でもあり、もう彼以外ではあり得ない妙な、しかし、愛すべき人物に仕上がっております。田中裕子さんは、実は学生の頃に一度だけお会いしたことがあり、映画はもちろんですが、久世光彦さんと組まれたドラマの大ファンだったのでプレッシャーでしたが、至福の時間でした。怪物でした。主役の2人の男の子はオーディションを重ねて選ばせて頂きました。黒川さん、柊木さん、ふたりとも抜群でした。顔立ちも個性も全く違うのですが、撮影中見事な化学変化を作品にもたらしてくれたと思います。将来が楽しみです。高畑さん、獅童さんは以前ご挨拶をさせていただいてまして、いつか、とお約束していたのでこの作品で実現して良かったです。角田さんは、元々ファンでしたが『大豆田』でお芝居を拝見して、更にファンになり、お願いしました。登場しただけでちょっと微笑んでしまうんですが、素晴らしい存在感でした。(C)2023「怪物」製作委員会
2023年01月05日竹田優哉監督『暮れる』は、“真実の映画”だ。映画監督への登竜門と呼ばれる自主映画のコンペティション、ぴあフィルムフェスティバルの「PFFアワード」は、1977年から続く歴史の中で、黒沢清監督や諏訪敦彦監督など日本映画界を牽引する映画監督を数多く輩出してきた。今年開催されたPFFアワード2022で京都会場のグランプリ「京都観客賞」を受賞したのが『暮れる』だ。主人公は祖母と愛犬と暮らす無職の青年。将来への不安を抱えながら静かな日常をおくっている。ある日彼は犬の散歩中に原因不明の腹痛に襲われ、犬のリードを離してしまう。迷子になってしまった犬を探して辿り着いた自然の中で、彼はキャンプ中の男性と出会い、そこで一夜を過ごすことになる。痛みは、湖の水面や火の音と同じように、全てリズムなのだ。少し掴みづらいリズムもあるというだけだ。世界に隠された優しい真実を見せてくれた竹田監督は、どのような眼差しで世界を見つめ、映画にしたのだろうか。竹田監督が本作に込めた思いを伺った。――『暮れる』を製作した経緯を教えてください。大学院で長期間留学に行く予定だったんですが、コロナで中止になってしまって1年間ほど空き時間ができたというのが大きな理由です。どうせなら何かやろうと思って、友達と2人でアイディアを発表する会を立ち上げました。そのとき僕の頭の中にあったのが『暮れる』のような映画をつくることでした。その会を開いていた場所が友達の家族が所有していた山の近くにある空き家だったんですが、そこの環境がすごく良くて、この場所で友達と一緒に映画をつくりたいという思いが徐々に湧き、プロットを書き始めました。そのとき一緒に会をやっていた友達が『暮れる』の主演の子です。スタッフも大学の後輩や先輩や友達などを集めて撮りました。――『暮れる』は少し俯瞰的な視点から日常を描いているように感じました。そこは意識されていますか?映画の視点というのは常に意識しています。ある映画監督から、「監督の重要な仕事のひとつは、カメラポジションを最良の位置に持ってくることだ」という言葉をいただいたことがあります。それから「最良のカメラポジション」ってなんだろう…とずっと考えていました。僕は登場人物の主観やモノの肌触りを感じるような作品が好きだったので、当初は人間の目線に近い画角を意識して撮ろうと考えていました。だけど同時に、必要以上に物語に入り込みたくないという気持ちもありました。だから、手持ちカメラなどとは別のやり方で、普段感じていることを映画で表現してみようと思いました。脚本を書いたのは僕ですが、それに必要以上に縛られるとわざとらしくなってしまいます。そうならないために今回使った手法は、リハーサルを繰り返して、セリフを役者が言いやすいように変えたり、役者の普段の立ち振る舞いをもとに脚本を考えたりすることでした。撮影もどこからか眺めているような映像を目指してつくりました。――葛藤の末に生まれた視点だったのですね。PFFアワードで入選したことはやはり嬉しかったですか?めっちゃ嬉しかったです(笑)。自分が考えていることを自分なりに映画にしたら、10人中9人はつまらないと言うけど、1人くらいの心には届くんじゃないかなという期待はありました。PFFアワードの審査員の中にそういう方が1人くらいいたら、もしかしたら…と思っていたら、そのもしかしたら起きました(笑)。積極的に賞をとりにいった作品ではなかったのですが、せっかく本気でつくった映画なので、誰かに届いてほしいという思いはありました。だから入選したときは本当に嬉しかったです。――主人公が月に一度襲われる原因不明の腹痛や迷子になってしまう犬など、印象的な描写がありますが、これは竹田監督の経験に基づいたものでしょうか?腹痛は僕自身の経験です。人はコントロールできない何かとどういう風に折り合いをつけていくのかということにずっと興味がありました。それを考えているときに映画づくりでピックアップしたのが、まず自分にとって身近な腹痛、つまり身体です。犬や自然というのも、人間のコントロールから外れてしまう存在として入れました。――どうしてコントロールできない存在との関係性に興味を持ったのですか?僕はコントロールできないものとうまく折り合いをつけることができないから、興味を持ったんです。うまく生きていくことができないなとずっと思っていました。たぶんそういう人はたくさんいると思うんですけど、そういう人たちの中でもすごく楽しそうに生きている人はいるじゃないですか。彼らはどうやって楽しく生きているんだろうというのを探っていくと、やっぱり彼らなりの工夫がたくさんあることがわかりました。僕も折り合いをつけて楽しく暮らしていきたいので、そのためにまず人の生き方を観察したいという思いがありました。大学院ではそういうことを研究していました。――主人公の青年が歌う開放的なシーンがありましたが、あれは折り合いのつけ方のひとつでしょうか?あれは単純に、自己主張が苦手な青年がきっかけを与えられたことで自分を表出するというシーンを撮りたかったんです。でも、言われてみれば折り合いのひとつかもしれませんね。主演の子は歌がすごくうまかったので、これを活かさない手はない、と思っていました。もし彼が走るのが得意だったら、走らせていたかもしれないですね(笑)。――竹田監督の映画観についてお聞きしたいのですが、竹田監督にとって映画はどのような存在ですか?映画は僕にとって一番馴染みのあるメディアですし、元気をもらえたり、自分の人生を見つめ直すきっかけになったりもします。でも映像をつくる一番の理由は、考えていることを言葉でうまく伝えられないからだと思います。言葉をうまく操ることができなくても、映像だったらできそうだなと思うんです。僕はどこか自分の気持ちを隠してしまう癖を持っているので、それと向き合うためにも映画づくりが必要でした。――最後に、『暮れる』を通してどのようなメッセージを伝えたいですか?あえて言うとすれば、「みんないろいろ背負っていると思うけど、大丈夫。そのまま生きていけばいい」ということかもしれません。でも僕は、何かメッセージを伝えたいというよりは、ひとつの自律した世界のような映画を生み出したいという気持ちの方が強いです。映画を観終わったあとも、映画の世界や人物が動いているのではないかと思えるような映画をつくりたいです。そんな映画を観ると、たぶん自分を見つめ直すきっかけになるんじゃないかなと思います。僕自身、そうやって今まで映画に救われてきました。『暮れる』も、別の誰かの人生を見ることで自分の人生を考えなおす鏡のような存在になればいいなという思いでつくりました。今後もそのような映画はつくっていきたいです。そして、何かで悩んでいる人たちの考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。「PFFアワード2022」は2023年1月13日(金)まで「スカパー!番組配信」にて配信中。※視聴には、スカパー!のいずれかの有料チャンネル、プラン・セット(一部有料PPS放送を除く)のご契約が必要です。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【映画祭】ぴあフィルムフェスティバル 2013年9月14日〜20日、渋谷シネクイントにて開催
2022年12月27日スリラー映画『ノック 終末の訪問者』が2023年4月7日(金)より公開される。監督はM・ナイト・シャマラン。『シックス・センス』M・ナイト・シャマランの最新作映画『ノック 終末の訪問者』は、『シックス・センス』や『オールド』を生み出したスリラー映画の名手M・ナイト・シャマラン監督の作品。「究極の選択」をテーマに、家族愛と恐怖が入り交じる“終末スリラー”を作り上げた。愛する家族1人の犠牲か、世界の終焉――家族が下す結論は?ゲイのカップルであるエリックとアンドリュー、その養女であるウェンが穏やかな休日を過ごす中、突如武装した見知らぬ謎の男女4名が訪れ、家族は訳も分からぬまま強制的に囚われの身となってしまう。そして、謎の男女たちは家族に「いつの世も選ばれし家族が決断を迫られた。君たちの1人が犠牲となり止めるのだ。世界の終末を」「君たちの拒絶は何十万ものの命を奪う」と告げ、時には対話も試みながら、想像を絶する“選択”を迫る―。愛する家族1人の犠牲か、世界の終焉か。耳を疑うような究極の選択を迫られる家族だったが、テレビに映る世界各国で起こり始めた甚大な災害を目にしてもそんな話をすぐに信じられるはずもなかった。突如訪れた異常な状況に両親の協力のもと山小屋から脱出を試みるウェンや、疑心暗鬼だった“選択”をいつしか信じ始める両親たちのそれぞれの葛藤――。果たして家族はどんな結論を下すのか?『ハリーポッター』シリーズ、ルパート・グラントら出演出演者は、謎の訪問者役に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのデイヴ・バウティスタ、『ハリー・ポッター』シリーズのロン役で知られるルパート・グリント。悲劇に襲われる同性カップルの家族・エリック役をドラマ「Fleabag フリーバッグ」のベン・オルドリッジ、アンドリュー役を『マトリックスレザレクションズ』のジョナサン・グロフが務める。■謎の訪問者…デイヴ・バウティスタ、ルパート・グリント、ニキ・アムカ=バード、アビー・クイン■エリック…ベン・オルドリッジ■アンドリュー…ジョナサン・グロフゲイのカップル。養女のウェンと人里離れた森の奥深くにある山小屋で過ごしていたところ、謎の男女にとらわれる。■ウェン…クリステン・キュイエリック、アンドリューの養女。【詳細】映画『ノック 終末の訪問者』公開日:2023年4月7日(金)全国ロードショー監督:M・ナイト・シャマラン脚本:M・ナイト・シャマラン、スティーヴ・デスモンド、マイケル・シャーマン原案:ポール・トレンブレイ著「The Cabin at the End of the World」出演:デイヴ・バウティスタ、ジョナサン・グロフ、ベン・オルドリッジ、ニキ・アムカ=バード、ルパート・グリント
2022年12月23日映画『アイスクリームフィーバー』が、2023年7⽉14⽇(⾦)にTOHO シネマズ日比谷ほかにて公開される。監督は千原徹也、主演は吉岡里帆。川上未映子の小説を初映画化映画『アイスクリームフィーバー』の原作は、川上未映子の短編集『愛の夢とか』に収録されている「アイスクリーム熱」。川上未映子の原作小説が映画化されるのは、本作が初となる。“4人の女性”が交錯するラブストーリー『アイスクリームフィーバー』では、10代から30代までの4人の女性を中心に、彼女たちの“想い”と“人生”が交錯するラブストーリーを展開。20代後半の主人公、常田菜摘をはじめとする、4人それぞれの“好きのような想い”がすれ違い、時間軸と心情が複雑に絡み合う異色の恋愛物語に注目だ。アートディレクターの千原徹也が初監督監督を務めるのは、H&M(エイチ&エム)などの広告や、ファッション、TVドラマ、ウンナナクール(une nana cool)他のブランディングなど、様々なフィールドで活躍するアートディレクター、千原徹也。映画『アイスクリームフィーバー』では、「映画制作をデザインする」と題して、アートディレクターの視点から従来のやり方にとらわれない手法で映画を構築した。主演は吉岡里帆、モトーラ世理奈&詩羽&松本まりかも出演主演は、吉岡里帆。『ハケンアニメ!』など話題作への出演が続く吉岡里帆が、夢を諦めかけている20代の主人公・常田菜摘を演じる。また、モトーラ世理奈や、水曜日のカンパネラでボーカルを務める詩羽、松本まりかもメインキャストとして出演する。主人公・常田菜摘…吉岡里帆20代後半、夢を諦めかけている。美⼤を卒業してデザイン会社に就職するもうまくいかず、アイスクリーム屋のアルバイト長として日々を送る。アイスクリームをきっかけに、佐保と出会いを果たす。橋本佐保…モトーラ世理奈20代前半、人生に怯えて一歩踏み出せない。アイスクリーム屋の常連客の作家。桑島貴子…詩羽(水曜日のカンパネラ)10代後半、まだ恋が何かも知らない。菜摘のアルバイトの後輩。高嶋優…松本まりか30代後半、人生のわだかまりに蓋をしている。仕事が生きがい。アイスクリーム屋の近所の銭湯に通っている。⾼嶋美和…南琴奈15歳の中学3年⽣。⺟親を事故で亡くしており、家を出ていった⽗親を探すため、夏休みを利⽤して叔⺟の優を頼って上京する。優は突然の姪の訪問に⼾惑うが、美和の⽗親探しに協⼒するため、ふたりは共同⽣活を始めることになる。⾼嶋愛…安達祐実優の姉。姉妹間で起きた“ある出来事”がきっかけで、愛と優の⼼には⼤きなわだかまりが残ることに。古川イズミ…後藤淳平(ジャルジャル)掴みどころがなく⾃由奔放な美和の父親。中⾕清也…はっとり(マカロニえんぴつ)アイスクリーム屋のある街に引っ越してきた男。演じるはっとりは、マカロニえんぴつのボーカルとして活動。『アイスクリームフィーバー』が映画初出演にして演技初挑戦となる。薫…コムアイ主⼈公・菜摘の元同僚。菜摘のデザイナーとしての才能を認め、デザインの道を離れた後も何かと気にかけながら⾒守る。荒川直⼦…MEGUMI菜摘たちが働くアイスクリーム屋のオーナー。双⼦の⾚ちゃんのママ…もも(チャラン・ポ・ランタン)アイスクリーム屋の客。マリ…藤原⿇⾥菜優が⾏きつけの銭湯の店員。安藤ほのか…新井郁優の会社の後輩。卓球場の店員…ナツ・サマー主題歌は吉澤嘉代⼦の書き下ろし曲「氷菓⼦」映画『アイスクリームフィーバー』の主題歌は、吉澤嘉代⼦による書き下ろしの楽曲「氷菓⼦」。吉澤嘉代⼦は、主題歌を担当する他、モトーラ世理奈演じる佐保の隣⼈である“オトナリさん”役として出演も果たしている。エンディングテーマは⼩沢健⼆「春にして君を想う」『アイスクリームフィーバー』のエンディングテーマは、⼩沢健⼆が1998年に発表した楽曲「春にして君を想う」。“⼦供のように⽢えたいのだ 静かなタンゴのように”というフレーズのリフレインが優しく響く、バラードソングが物語のラストを彩る。東京・高円寺の人気老舗銭湯「小杉湯」とコラボ劇中にも登場する、東京・高円寺の銭湯「小杉湯」と映画『アイスクリームフィーバー』がコラボレーション。松本まりか演じる優が足繁く通う銭湯として登場する「小杉湯」は、人気の老舗銭湯だ。2023年7月7日(金)から9日(日)には映画の世界観をモチーフにした湯船に浸かることのできる「イベント風呂」を開催し、7月6日(木)から7月26日(水)までの期間には、小杉湯の待合室にて写真や映像を展示し、アナザーストーリーを掲載した小冊子を設置する。さらに、監督の千原徹也が登壇するトークイベントや、1日限定の「アイスクリームフィーバーカフェ」も開催予定だ。映画『アイスクリームフィーバー』あらすじいまはアイスクリーム店「SHIBUYA MILLION ICE CREAM」のバイト⻑として⽇々を送る常⽥菜摘は、デザイン業界に戻るか、このままアイス屋を続けるか、どちらが幸せで正解だろう︖と 思い悩んでいた。ある⽇、店にやってきた作家・橋本佐保に運命的なものを感じ、その⽇以降佐保の存在が頭から離れなくなっていく。⼀⽅、バイト仲間で後輩の桑島貴⼦は、変わりゆく菜摘をどこか複雑な想いで⾒つめていて――。⽚や、アイスクリーム店のご近所さんの⾼嶋優は、突然の来訪者に⼾惑っていた。疎遠になっていた姉の娘・美和が、何年も前に出ていった⽗親を捜すため、⾼校の夏休みを利⽤して突撃してきたのだ。いきなり始まった共同⽣活。優の内⼼を占める不安は、それだけではなかった……。【作品詳細】映画『アイスクリームフィーバー』公開日:2023年7⽉14⽇(⾦)出演:吉岡里帆、モトーラ世理奈、詩羽、安達祐実、南琴奈、後藤淳平、はっとり、コムアイ、MEGUMI、⽚桐はいり、松本まりか監督:千原徹也原案:川上未映子「アイスクリーム熱」(『愛の夢とか』講談社刊収録)エグゼクティブプロデューサー:千原徹也、山本正典、木滝和幸プロデューサー:勝俣円、塚原元彦 宣伝プロデューサー:小口心平脚本:清水匡音楽:田中知之主題歌︓吉澤嘉代⼦「氷菓⼦」撮影:今城純制作:れもんらいふ制作協力:DASH、doors配給:パルコ■映画『アイスクリームフィーバー』×小杉湯 コラボイベント例場所:小杉湯(東京都杉並区高円寺北3-32-17)・小杉湯待合室特別ブース実施期間:7月6日(木)〜7月26日(水)・アイスクリームフィーバーの湯実施期間:7月7日(木)〜7月9日(日)・アイスクリームフィーバーカフェ実施日:7月9日(日)・千原徹也 トークイベント実施日:7月23日(日)
2022年12月23日