昨年ミュージシャンとして、メジャーデビュー。今年1月にはドラマ初出演にして、初主演で俳優デビューも果たす。たちまち台湾のみならず、アジア圏で人気急上昇。実は日本人のYUさん。日本の雑誌に初登場!たった2年でアジア圏で人気爆発!ついに待望の日本デビュー。見惚れるほどの透明感に、ミステリアスな空気感。YUさんは、全世界に熱いファンを持つ俳優でありミュージシャン。中華圏では、楊宇騰YU(ヤン・ユータン ユー)の名で知られ、台湾を拠点に活躍。昨年8月にミュージシャンデビューすると、ミニアルバムは大手通販サイトで1位を獲得した。「嬉しい気持ちはもちろんありました。でも、自分の想像を超えたことが起こりすぎて、大変なことになったって感じで(笑)」と、当時の心境を流暢な日本語で答える。というのも、日本と台湾をルーツに持つ彼は、生まれも育ちも日本。大学進学を機に台湾に移り、そこで芸能活動をスタート。この日も東京と台北を繋いでの取材で、最初に画面の中に現れた彼は、「僕、すごく人見知りなんです」とはにかむ。この素直なかわいさが、ファンから“天使”と呼ばれる理由のひとつ。芸能の世界に興味を抱いたのは高校生の頃。あるアーティストのライブ映像がきっかけだった。「客席には、泣いているお客さんが何人もいたんです。その光景を見て、“こんな世界があるんだ”と感動して。でも、研修生になった頃は、歌のスキルに自信がなく俳優志望で。だからこそ、デビューは不思議な感覚でしたね」台湾への移住、現地デビュー、日本進出と転機が多いけれど、あえてひとつに絞ってもらうと「ドラマ」と答えた。それはアジアで配信された『We Best Love 永遠の1位/2位の反撃』のこと。ドラマ初出演にして初主演に抜擢された作品だ。「多くの方に僕を知ってもらえたきっかけですし、間違いなく大きなターニングポイント。中国語での演技なので、プレッシャーもありました。でも、終わってみると、楽しかったなって思えたんです。これって仕事をするうえで一番大切なことなんじゃないかなって感じていて。だからこれからも、“楽しかった”と思えるように取り組んでいきたいです」最新作のEPでは、中国語での作詞にも挑み、彼の内面にあるダークな部分を表現したという。「2曲とも歌詞とメロディラインを悲惨なものにしたくて。特に『天使烏鴉/Fallen angel』は、直感的に今これを書くべきだと思った曲。今思うと自分にとって大切な時期に感じていた、挫折や絶望を色濃く描きました」作詞に2か月かけたという今作。何度も行き詰まり、そんなときは、一人でふらりとごはんに出かけては、頭を空っぽにしていたそう。「僕は性格的に、自分に対してあまりOKを出さないんです。当たり前だけど、自分が納得できるまで突き詰めたい。困難な壁があっても、きちんと逃げずに向き合うことが重要だと思っています」台湾で暮らして8年。最初は「中学生の英語レベルだった」という中国語も、コミュニケーションには困らないほどになった。「中国語で話していると、“めっちゃタメ語やん”って思うことが時々あるんですよ(笑)。だから年上の方と話していても、年代の差は感じないですね。あと、いい意味で楽観的だとも思います」そんな場所で癒される時間は、一人でごはんを食べているとき。多い日は、3軒をはしごするそう。「食べることもですが、たくさん人がいる中に、自分だけがポツンといる雰囲気が好き。気が楽なのもありますが、自分の世界に入れてリラックスできますね」今回の撮影場所には、昨年台北にオープンした音楽文化施設をピックアップ。建物を見て、「こんな素敵な場所でいつかライブをしてみたい」と目を輝かせた。「これまで有観客ではコンサート会場とライブカフェでは歌ったことがあります。特にライブカフェでは、どこを見ても目が合って(笑)。そんな距離感も好きになりました。やっぱり聴いてくださる皆さんの顔が見えることは、すごく贅沢なことだと思えた瞬間です」日本での活動については、プレッシャーよりも期待が勝る。「日本でどんなことができるのか楽しみです。実は自分のことなのに、どこか客観的にアーティストYUという存在に期待している部分もあるんです。制限なく、何にでも挑戦してみたいですね」ユー1995年1月3日生まれ、愛知県出身。2020年8月、台湾デビュー。作詞に初挑戦した最新デジタルEP『邃宇Dark wings』が配信中。※『anan』2021年11月3日号より。写真・Ivy Chenスタイリスト・Paul Tsao取材、文・野村紀沙枝臺北流行音樂中心(Taipei Music Center)(by anan編集部)
2021年11月02日8歳から独学でプログラミングを学び、15歳でプログラマーとなり、台湾のデジタル担当政務委員(大臣)を務めるオードリー・タンさん。コロナ対策での手腕に注目が集まり、ネット上では、その名を見ない日がないほど。そんなオードリーさんが、ネット時代の感情抑制法を教えてくれました。――感情のコントロールに関して、オードリーさんは、幼少時、心臓の問題で、泣いたり怒ったりすると命に関わる時期があったそうですが、どのように感情を抑制していたのですか。特に怒りの抑制は難しいように思いますが…。オードリー:自然な呼吸をして、寝ることです。目を閉じて眠りにつくことです。よく眠れないなら、少なくとも呼吸を整えることです。――怒りの原因に目を向け考える必要はないのですか。オードリー:心の中に、怒りのためのスペースを与えてあげてはどうでしょう。例えば、リビングやソファを用意するイメージ。そこへお客さんである“怒り”を誘導し、自由にしていてもらう。そうすれば、怒りと関わることが少なくなります。――放置するわけですね。もし、思い出してしまったときは…。オードリー:心の中に怒りがある、というのを見つけ出したときは、深呼吸をして十分な睡眠を取ってください。呼吸法は心身の調節にとても有効です。両親が気功をやっていたので、幼い頃に私も一緒に呼吸法を習ったことが役立ちました。――くしくも“呼吸”は日本のホットワードです。今年は、正義感あふれるヒーローが活躍する映像作品がヒットしました。オードリーさんは、台湾のコロナ対策のヒーローのお一人。今、日本の若者の間では、あなたのようなリーダーの登場が切望されています。オードリー:台湾は‘03年のSARSの感染拡大の経験があり、比較的十分な準備ができていたというだけのことです。日本の有事に関していえば、大震災の際には有志による“組織”ができ、災害救助を行うのを目にしてきました。たとえ物事を見る角度は違ったとしても、精神的な価値観を同じくする人と“組織”すれば、第1に自分一人でどうにかする必要がなくなります。第2に比較的実行可能な創造性、つまり、より良い方法を見つけられます。今、「Be Water」という、形にとらわれない柔軟な“創作”スタイルが各所で見受けられます(香港での抗議活動時、スローガン化した言葉に由来)。こうした“組織”では、必ずしも誰かがリーダーとして統率するわけではありません。このような方法を検討してもよいのではないでしょうか。――また、台湾のコロナ政策の成功例や大規模な野外フェスが開かれたニュースなどを見聞きして「それに比べて日本は…」という嘆く声も巷にあふれています。オードリー:南極も感染は広がっていませんよね(笑)。こうした問題は比べてもキリがありません。大切なのは、自分がそこで何ができるかという点。ひとたび“創作”を始めたならば、常にアイデアについて考えねばならず、不安な気持ちも消えていくのではないでしょうか。今の状況を変える第一歩は、先ほどもお話ししたように、とにかく価値観を同じくする人と“集まる”ことです。例えば、マスクの在庫マップも、元々は台南のシビックハッカーが友人らのために開発したもの。これに注目し、政府に在庫データの公開を求め、誰もが活用できるようにしたところ、多くのマップアプリが誕生しました。――つまり、一人のカリスマを求めるのではなく、一市民が得意分野を発揮すべく集まり、大きな物事を成し遂げよ…と。これはオードリーさんがフォーカスしているSDGsの17番目の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」に通じますね。青色の洋服をお召しになるのは、この17番目のシンボルカラーにちなんでいるとか。オードリー:ここのところ着ている青のストライプの上着は、台湾の紡績産業団体・紡拓会がコーヒーかすとペットボトルをリサイクルして作った生地“咖啡紗”で仕立てた一着です。台湾人デザイナーの唐宗謙氏がこの布を使って、私のためにデザインしてくれたものを購入しました。素材自体が経済の循環を象徴していて“リサイクルすることで、より良い価値を創り出す”という彼らの精神を支援すべく、毎日着ています。中の藍染めのシャツは、雑誌でモデルを務めた際に用意していただいたものですね。台湾藍四季研究会と日本の全国阿波藍染織作家協会がコラボレーションするという企画でした。――オードリーさんはインタビューなどの終わりに、アメリカのSFシリーズ『スタートレック』に登場するバルカン人の挨拶をされますね。人さし指と中指、薬指と小指をくっつける“バルカン・サリュート”のポーズを。オードリー:それは、コロナの流行後からするようになった挨拶です。意味するところは「長寿と繁栄を」。このポーズなら、インターネットを通してでも、相手に祈りの気持ちを送ることができます。――彼らは感情を抑制することができ、非常に論理的というキャラクター。まるでオードリーさんのようだと、トレッカーと呼ばれるファンの間で囁かれています。オードリー:私はしばしばSF作家の言葉を引用しますが、バルカン人について特に考察したことはありません。――そうでしたか(笑)。今日は日本の読者に、バルカン式ではない励ましの言葉をいただけますか。オードリー:すべてのものには裂け目がある。しかし、その裂け目からは光が差すでしょう。生い立ちからデジタル担当政務委員としての活躍ぶりまで、彼女にまつわるあらゆる情報を網羅した一冊『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』(アイリス・チュウ、鄭仲嵐 共著/1400円文藝春秋)。巻末の防疫レポート「特別付録 台湾 新型コロナウイルスとの戦い」も必読!オードリー・タン1981年4月18日生まれ。台湾名・唐鳳。8歳から独学でプログラミングを学び、15歳でプログラマーとなり、翌年にはIT企業の共同経営者に。以後、フリーソフトウェアの開発等に取り組む。アップル社の顧問などを歴任し、33歳でビジネス界からの引退を宣言。2016年、35歳の若さで蔡英文政権に入閣、デジタル担当政務委員(大臣)に就任。※『anan』2020年12月23日号より。写真・Ivy Chenコーディネーター・アイリス・チュウインタビュー、文・堀 由美子(by anan編集部)
2020年12月23日台湾のコロナ対策での手腕に注目が集まり、ネット上では、その名を見ない日がないほど。超多忙ななか、デジタル担当政務委員(大臣)を務めるオードリー・タンさん。超多忙ななか、貴重なお時間をいただきました。巷にあふれる質問を携え、訪ねてみると…。国境を軽々と越えるITの使い手であり、大臣就任後は卓越した先見性と実行力で台湾の守護神としてご活躍。――畏れながら…オードリー・タンさんには「天才」という枕詞がついて回りますが、うんざりすることは?自分に貼られたレッテルが不本意だったときはどう対処すればいいでしょう。オードリー:どう形容されようと私は気にしていません。レッテルというものは、他人の“創作”ですからね。――つまり、他人が定義した言葉にすぎないと割り切ればいい、と。ただ、学校や職場で毎日言われてしまうと心が折れてしまう人も…。オードリー:その“創作”を毎日楽しめばいいのです。一日の時間配分を考えたとき、人とやりとりするインタラクティブな時間はおよそ8時間。この8時間は他人の“創作”を楽しむ時間だと考えてください。そして残りの8時間は、自分が楽しいと思うことに使う。そうやって区切りをつけ、気持ちを切り替えられれば、心がアンバランスになる状況は起こりにくいと思います。――ちなみに、天才と称されるあなたが考える“天才”とは?オードリー:どんな人にも天性の才能があります。生まれ持った才能、それが天才です。今日、私を撮ってくれたカメラマンなら光の使い方、イメージの運用といった部分。そうしたお互いの天性の才能は簡単に目に入ってくるものです。ですから、先ほどの不本意なレッテルの話の…例えば馬鹿呼ばわりしてくる同級生がいたとする。でも、その同級生は自分にはない何らかの才能を持っているかもしれない。ならば、その人を巻き込んで、一緒に“創作”を楽しんでしまうのも手です。“創作”では、それぞれの長所が生かされ、足りない部分は補完されていく。どんな影響であれポジティブな力に変えていくこと、創造性のあるものに変えていくこと。そして楽しむのです。――日本の漫才のボケや自虐ネタのようなイメージですか。オードリー:それもひとつのクリエイションといえますね。――オードリーさんは、幼い頃から目立った存在だったと聞きますが、多様性を受け入れる土壌が十分に育っていない日本では、突出したキャラクターは苦しみがちです。集団になじみにくい人が生きやすくなるコツはありますか。オードリー:台湾に引っ越してきてみては。移民を受け入れていますからね。それが難しければ…ネット上のコミュニティに居場所を見つけるというのもよいのでは。画面を介せば、必ずこうでなければならない、という制約は少ないはずです。――よく語っておられる“ハッシュタグの活用”も、これに含まれますか。キーワードに#をつけたタグとともに発信することで、仲間や居場所が見つかる…という。オードリー:そうです。ハッシュタグはコミュニケーションの助けになります。――人間関係でいうと、コロナ禍で、インターネット上で交流する場面が増えました。活用にあたってのアドバイスをいただけますか。オードリー:マスクの有無はさておき、画面を介したほうが、実際に対面するよりもお互いに意識を向けやすく、コミュニケーションがとれている実感が得やすいように思います。その際に重要なのは、高速のインターネット環境です。十分な帯域幅がない場合、見えにくい、聞こえにくいという状況になり、脳が不明瞭な部分や不足部分を補正するということが起こりがちなんです。すると、自身の思い込みや推測を相手の発言だと誤解してしまうことに。安定したブロードバンド環境の確保は、とても大切です。――では、SNS上での発言、活用法で気をつけるべきことは?オードリー:注意点は2つです。まずは十分な休憩時間を確保する必要があります。というのは、通勤時には家から会社への移動時間に気持ちを切り替えることができますが、SNSでは、そうしたタイミングが得られにくいからです。ずっとスワイプし続けたり、こちらの会議から次の会議へ、こちらの動画を見終えたら、すぐさま別の配信へ…と移行し、空白の時間がなくなりがちです。ですから、そうした節目ごとに、少なくとも5分の休憩を設けることが大事です。2点目は、十分な睡眠を取ることです。――コロナ禍のストレスからか、不用意な発言や相手を責めるコメントも散見される昨今ですが…。オードリー:心の中に渦巻いている思いを書き出してみることは有意義です。書くことで心の外に出してしまえば、自分から離れていきます。それはきっとあなたの助けになるはずです。ただし、それを発信してしまうと、相手を困らせることになる。ですから、日記を綴るつもりで書き、発信しないことです。――逆に、意図せず炎上を引き起こしてしまったときには…。オードリー:コメントの9割が放言だとしても、残りの1割に価値があることもあります。まずこの1割の部分を見つけ、共感し、真摯に対応してください。また、なぜそのような書き込みをしたのかを相手の角度から考えてみると、新しい世界が見えてきます。ですから、自由に言わせておけばよいのです。時には面の皮を厚くして。このスタンスをとれば無礼な発言にも丁寧に対応できるようになるでしょう。生い立ちからデジタル担当政務委員としての活躍ぶりまで、彼女にまつわるあらゆる情報を網羅した一冊『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』(アイリス・チュウ、鄭仲嵐 共著/1400円文藝春秋)。巻末の防疫レポート「特別付録 台湾 新型コロナウイルスとの戦い」も必読!オードリー・タン1981年4月18日生まれ。台湾名・唐鳳。8歳から独学でプログラミングを学び、15歳でプログラマーとなり、翌年にはIT企業の共同経営者に。以後、フリーソフトウェアの開発等に取り組む。アップル社の顧問などを歴任し、33歳でビジネス界からの引退を宣言。2016年、35歳の若さで蔡英文政権に入閣、デジタル担当政務委員(大臣)に就任。※『anan』2020年12月23日号より。写真・Ivy Chenコーディネーター・アイリス・チュウインタビュー、文・堀 由美子(by anan編集部)
2020年12月22日