電車に乗ったり雑誌を開いたりしたときなど、日常の多くの場面で脱毛にまつわる広告が目に入る。施術価格が下がったこともあり、エステティックサロンや医療機関で脱毛することは、女性はもちろん男性にも浸透しつつある。
確かに鼻毛や女性のワキ毛は、身だしなみの一つとして整えることは必要かもしれないが、あらゆる体毛を除去しようとする現代の風潮に「人間の体毛というのは、あるべくしてそこにあるのでは……? 」という疑問が生じなくもない。
そこで、今さら人に聞けない体毛にまつわる疑問について、脇坂クリニック大阪院長・脇坂長興先生に聞いてみた。
○体の大切な臓器を守る体毛
そもそも人間の体になぜ体毛があるのかというと、産毛も含めて体毛の役割は「体温を保つ、外からの刺激(紫外線、こすれ、衝撃など)から体を守る」というのが定説のようだ。確かに、毛が多く生えている場所には脳(頭)、生殖器(デリケートゾーン)、リンパ節や太い血管(ワキ)などの大切な器官や組織がある。
また、毛が生えている毛穴(=毛孔・もうこう)の奥には皮脂腺が開口している。毛穴から分泌される皮脂と角質が剥がれ落ちた垢が、常在菌によって天然のクリームとなり、皮膚をバリアする役割を果たしているという面もある。