と書かれていたし、これはもう、いかにも私の世界を定義してくれそうではないか。
要するに、私は疲れていた。自分の概要を誰かに決めてほしがっていた。
もうだめだ。何も思い浮かばない。思い浮かばないどころか、何をしようとしていたかも思い出せない。思い出せないどころか、そもそも生まれてこの方、一度も「思う」という経験さえなかったかもしれない。辛うじて搾り出した僅かなものを捏ね回し格闘する。
もがけばもがくほど、唸れば唸るほど、今手の中に持っているたったひとつのものが確からしいかどうか、正解かどうかだけが気になり、世界は小さく狭く、たったひとつの形に収束されていく。
乱暴に開封し、25mlのボトルをシャツの裾から無理やり忍ばせる。薄暗い遊歩道でもぞもぞと不審に蠢く人物がひとりくらいいても、コートを着込んでいるので誰も気にしない。ボトルを強く押す。思ったより多量の液体がこぼれ出たことを悟り、あ、やば、つけすぎたかも、と焦った瞬間、
――私は若いロボットと老人に同時に抱きしめられていた。
つまり、天使に抱きしめられていた。野暮ったいと言ってもいいかもしれない、古びたドレスを着た天使。
私は混乱した。