香水で、意志を纏う。金木犀が香る「The PERFUME OIL FACTORY 」No.10
それはつまり、自分の願望をあらわにする行為だと思う。
わたしにとって香水は、意志 だ。
香水(とそれに添えられた言葉)をつけることは、「こう在りたい」「こうなりたい」を纏うことと同じだから。
もちろん、たかが言葉だということはわかっている。その言葉があってもなくても商品自体は変わらないし、その言葉を身体に刻むわけでも、印字して旗のように振りかざすわけでもないから、「関係ない」と言ってしまえばそれまでだろう。そうわかっていても、言葉たちの力を見ないことにはできない。「かわいくなあれ」「きれいになあれ」と子供の頃にささやいたあの魔法の呪文のように、添えられた言葉たちがわたしに働きかけてくるような気がする。
件の金木犀の香りにはこんなコンセプトストーリーがあった。
「ささやかで豊か」。すこしの感激を持ってなんども口に出して、レジへと進んだのは言うまでもない。わたしも、ささやかで豊かで在りたい。
ささやかで豊かな女性になって、ささやかで豊かな文章を綴りたい。
人の記憶の扉を開いてしまう金木犀が、けれど暴力的ではないように。自身の存在を人に知らせる金木犀が、けれど押し付けがましくはないように。