自分の「好き」を再インストール。時代が決めた「正しい顔」は手放した
数日後、「あのチークがあれば、きらきらになれる」と安直な考えから買った新作のチークを早速試してみた。ーーなんか、違う。メイクさんにつけてもらったときの新鮮さはなくなり、鏡には田舎顔のどこか垢抜けない顔の自分が映っていた。
……あ、そうか、ひとつだけ新しいからなんか浮いてるのかも。アイシャドウもリップもファンデーションもぜんぶ新しくしなきゃ!
そこから新作・流行を調べ、いろんなコスメを買っては試す日々が続いた。誰かがいいと言ったものは、手当たり次第に買った。コスメだけでは飽きたらず、服や髪、ネイルまでも流行に乗らなければと焦り始めた。入りも満足ではないのに、出費はどんどんかさんでいった。
それでも、コスメ集めはやめられなかった。
もっと、もっと、もっと、私はきらきらになりたいの!
お財布が空っぽになりながらも頭から爪先までを旬のアイテムですべて揃えたとき、なんだか、ほっとした。鏡の中で「流行のメイク」で仰々しく着飾った自分が、貼り付けた笑顔を浮かべている。仕事の際にメイクや服装で褒められることも増えた。これで、私も、憧れのきらきらなお姉さんに近づけたはず。しかし、残酷なほど流行はすぐに過ぎ去る。