自分の「好き」を再インストール。時代が決めた「正しい顔」は手放した
半年後には、それまでの煽りはどこへやら、時代はまったく毛色の違ったスタイルを正解とした。その度に私は流行を調べ、情報に右往左往する。そんな生活は半年近くにも及んだ。
■私は誰のためにお化粧をしているんだろう?
おすすめのコスメとかってありますか?
コスメ集めが習慣になったある日、撮影で担当してくれたメイクさんに尋ねたことがあった。プロが選んだコスメは絶対に買わなきゃ、と身構える私に、うーん……と悩んだあとに彼女が選んだのは、ドラッグストアでいつでも買えるプチプラのマスカラだった。
「いろんなコスメを試したんだけど、やっぱこれかなあって。普通のドラッグストアでいつでも買えるんだけど。でもこのまつ毛がボリューミーになる感じがほら、あなたには合うと思うの」
そうやって、私のメイクをしながら彼女は続けた。
「やっぱりさ、今だとすっぴんっぽくおフェロな感じがいいとか言うけど、その人が好きなメイクが一番可愛くなると思うんだよね」
……メイクさんが語るたび、自分がどんどん情けなくなる。
肌の色になじまないアイシャドウ、瞳を大きく見せるためのカラコン、おすすめされたままにつけたネイル……時代が「正解」