【医師監修】妊婦さんは「馬刺し」NG!母子感染のリスクとは
しかし、特に危険を感じるような症状は現れず、本人が気付かないままに日が過ぎてしまうことが一般的です。トキソプラズマ症であれば発症しても、数週間ほどで回復します。多くの場合、成人は感染経験があり、細菌などに負けない抗体を持っているからです。
しかし、妊娠中は免疫機能が低下しているため感染のリスクは高まります。特に、妊娠中の女性にとって初めての感染である場合には、胎児への感染リスクが高まるため注意が必要です。トキソプラズマやリステリア菌は体内に入った量が少ない場合であっても胎児に重篤な症状が出ることは少なくありません。
具体的な症状としては、たとえばお母さんが感染すると38~39度ほどの熱が出たり、頭痛や嘔吐などの症状が現れたりすることがあります。また、ひどい場合には、意識障害やけいれんが起こる可能性もあるので要注意です。
さらに、感染症によって授かった子どもを流産してしまうこともあります。加えて、出産後、赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症や精神発達障害、視覚障害を発症してしまうリスクもあるのです。先天性トキソプラズマ症になると、水頭や小眼球、網脈絡膜炎、肝臓肥大といった症状が見られるようになります。生まれてすぐに症状が見られない場合でも、遅発型であれば成人までに網脈絡膜炎や精神神経・運動障害などを起こす可能性もあるのです。
リスクを抑えたい! 病院でできる感染症対策
妊婦さんの健康にさまざまなリスクがある馬刺しは食べないようにすることがすすめられています。トキソプラズマ感染症においては妊娠中の初感染だと3割に胎児感染が発症するという報告もあります。そのようななかで慎重を期して、感染の可能性を把握し、感染リスクに対する対策を取りたいなら、妊娠初期に抗体検査をしておくのも1つの方法です。
お母さんの血液の抗体を測定し、陰性の結果が出れば感染のリスクは高いことになるため、妊娠中、食べ物の摂取に特に強い意識で気を付けることができます。
また、すでに感染が疑わしいと判断された場合であれば、分娩まで抗菌薬を投与したり、超音波検査を通して胎児の発育状態などを注意深くチェックしたりすることも可能です。さらに、出生後にも抗体測定などを続け、症状に合わせて早期の対応を取れるようにもなります。
加えて、誤って生のものや加熱が十分でない馬刺しを食べてしまった場合にも、きちんと検査しておくと安心です。