「抗体が少ない?」検査で発覚した思いもよらぬ事実とは? #2
現在、子どもの約16人に1人が体外受精によって生まれています。今回は凍結していた受精卵を体に戻さないことを決断した女性の物語です。ケース4、松本あゆみさん(39・仮名)の場合。
産婦人科クリニックを受診するものの、あゆみさんの体に特に異常はなし。特に問題はないのに、薬を飲むことに抵抗を感じ、通院を辞めてしまったけれど……。
不妊治療を決意するも初診まで3カ月待ち
現状が変わらないまま、あゆみさんは33歳になっていた。本気で赤ちゃんを望んでから6年。高齢出産となる「35歳」が近づいていた。
漠然とした不安が、いよいよ大きな焦りとなって襲いかかって来た。思い悩むあゆみさんに寄り添ってくれたのは、またしても母だった。
「近くに不妊治療専門の評判のいいクリニックができたってお友だちから聞いたから、行ってみたら?」
母が紹介してくれたクリニックは、県外からもたくさん人が集まる有名クリニックだった。連絡すると、初診の前に説明会に参加しなければならないとのこと。その説明会が2カ月待ちだった。
ようやく順番がめぐってきた説明会には、県内外から40人ほどが参加していた。人数の多さに圧倒された。質問をする人、熱心にメモをとる人。
みんな真剣だった。説明会後、初診の予約を取ると1カ月先だった。質の高い不妊治療を、これほど多くの人が求めているという現実を知った。
「風疹の抗体が少ない?」不妊治療が始められない焦り
ようやく本格的な通院が始まった。夫婦で検査をすると、あゆみさん側に思いがけない検査結果が出た。
「風疹の抗体が少ない」
子どものころに風疹のワクチンを打っていたはずだったが、「まれに抗体が低下してしまうことがある」と伝えられた。
厚生労働省によると、妊娠20週頃までに風疹ウイルスに感染すると、胎児の目や耳、心臓などに障がいを持つ「先天性風疹症候群」にかかる可能性がある。
2013年を中心に国内で流行し、45人の先天性風疹症候群の患者が報告された。
不妊治療に入る前に、ワクチンを接種することになった。ただし、接種後2カ月間は妊活や不妊治療はできない。
初診まで3カ月かかった挙句、ワクチンで2カ月待機。今すぐにでも授かりたかったのに、5カ月近く足踏み状態が続いた。