一人一人、好きな食べ物や個性が異なるように、妊娠や出産の仕方、子育てだってみんなと同じじゃなくてもいい。親子の数だけ子育ての仕方もあっていいはず。子どもと向き合う時間は限られているからこそ、子どもの成長を感じて笑い、ときに悩み、ときに泣き。無我夢中で子を育ててきた。
毎回、子育てを経験したパパとママに話を聞く「子育て、私の場合」。今回話を伺ったのは日本人で2人目の宇宙飛行士として任務を果たした山崎直子さん。2010年、スペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗するまで訓練に費やした年月はざっと11年。その間、結婚、妊娠、第一子の出産といくつかの節目を迎え、生後まもない赤ちゃんと共にアメリカで生活をし、その後は単身ロシアに渡っての訓練……。
とその都度、優先順位を考え決断をしながら“宇宙”を目指す日々をおくってきた。周囲の人に協力してもらいながら子育てに奮闘し、自身の夢に邁進してきた山崎さんの信条とは。
子どもの頃は自分専用の部屋も勉強机もなし!
いくつもの小さなきっかけが外国への夢を育んだ
世の中に星の数ほど存在する職種の中でも、格段にスペシャルな位置づけにあるのが “宇宙飛行士” ではないだろうか。知力、体力ともに世界最高のレベルを要求される選ばれた人たち、きっと幼い頃から英才教育を受けて育ってきたに違いない――。そんな私たちの思い込みを、日本で2人目の女性宇宙飛行士、山崎直子さんは笑って否定する。
「両親からは『勉強しなさい』と言われたことはなかったですね。放任だったのかな(笑)。小・中学生の間は自分用の勉強机すらなかったんです。
勉強はいつも居間のちゃぶ台で。その横では父がよくテレビで野球の中継を見ていたので、うるさいなぁと思いつつ(笑)。
でも、高校生になると、さすがにパーソナル・スペースがほしいなと思うようになりますよね。それで、廊下の隅に机を置いて、父が仕切りのためのカーテンをつけてくれました。ちょっとした半畳くらいのスペースなので “部屋” じゃないですね(笑)。親とケンカして『入ってこないで!』と言ってこもっても、『ごはんだよ』って、カーテンをパッと開けられちゃいますから(笑)」
小学校卒業後は、小学校のすぐ近くにあった公立中学に進学。中学校で初めて習う英語は、まだ見ぬ広い世界への新しい扉を開けてくれた。山崎さんが外国への興味を持つようになったきっかけとして、今でも忘れられない出来事がある。