ヒント3.子どもが変わるきっかけは家の中にはない…!?
楢戸:最後に、ママたちに「これだけは伝えたい!」ということはありますか?
はやとかげ:不登校が長引いてしまった場合、彼ら・彼女らが変わるときは、おそらく
家の中ではないんです。変わるときは、何か機会が与えられて、
「きっかけ」が生まれたときです。
右:はやとかげこと林隼人先生、左:著者
たくさんの不登校の子どもたちと出会ってきた僕は「不登校が長引いてしまった場合は、
放っておいて治るということはない」と考えています。そのまま放っておくだけだと、「ただ家にいる」という状態が年単位で続くこともあります。
「トラウマだから家で休んだ方がいい」と勧める医師がいたり、勇気を出してバスに乗ったら、やっぱり怖くなってパニックになってしまったり…ということもあるでしょう。
でも、やっぱり僕は
人が変わるときは、家の外で何かが起こっているときだと思うのです。「今日を凌ぐこと」だけに終始していたら、
子どもはあっという間に大きくなります。
気がつけば数年経っていた、となったときに、「家で休んだ方がいい」と言っていた人が責任を取ってくれるのだろうか? そこは冷静に考えた方が良いと思います。焦る必要はありませんが、このことは忘れないでいて欲しいです。
【POINT3】
焦りは禁物! でも、今の状況を変えるきっかけは「家の外にある」というのを頭においておくこと。
■不登校の子どもの課題がわかる…花メンの学び
楢戸:花メンには、数年単位で不登校だった子どもたちが毎日楽しそうに登校しています。どのような学びが行われているのでしょうか?
はやとかげ:漢字や計算といった
基礎学習の時間は、全体の20%くらいです。その他の比重イメージとしては、PBL(プロジェクトベースドラーニング・課題解決型学習)が20%、体育が20%、畑が20%、宿泊学習といった野外学習が20%といった学びの中で子どもたちは育っています。
いろんなタイプの授業をやってみると、その子が
抱えている課題がわかるんです。ある長期不登校の子は、1年生からまったく学校に行っていませんでした。中学年になった今年から花メンに通うようになりましたが、その子の今の課題は、(PBLの一環である)フリマ(フリーマーケット)で見えたんです。課題が見つかったら職員室の全員で、その子のことを話し合います。
■多種多様な生きた学びを子どもたちに!
楢戸:花メンの職員室に伺うと、いつもいつも、子どもたちのことを話し合っています。
はやとかげ:花メンをつくる前に、みんなで「どんな学校をつくりたい?」ということを話し合いました。結論、
「職員室を、日本一子どもたちのことを話している職員室にしたい!」となりました。
花メンは、不登校に特化した学校としてつくった訳ではないんです。そうではなく、「(既存の学校にはない)独自の子どもの伸ばし方をガンガンやろう!」という気持ちで、毎日子どもたちと向き合っています。
英語、スポーツ、農業と、僕らが今までやってきたことすべてを注ぎ込んだ学校で、いわば「日本版インターナショナルスクール」というイメージです。花メンの開校時間から考えると、不登校の子どもたちが通ってくれることは僕たちの思惑通りです。
楢戸:取材当日、商店街で「一番好きな夏の歌」について街頭インタビューをしている花メンの子どもたちにばったり会いました。子どもからお年寄りまで世代の違う人に声をかけるのは勇気がいることだと思いますが、臆することなく話しかけていく姿に人間としての力強さを感じました。こうした多種多様な生きた学びで個性がどんどん発揮されていくのだなと感じました。
いかがでしたか? 長年、花まる学習会の高濱先生を取材してきました。花メンを運営している花まる学習会グループは、「新しい学びを追求しよう!」というエネルギーに満ち溢れていますが、そのエッセンスを濃縮したのが、花メンだという気がします。
子どもが不登校になるかもしれないという状況に動揺する親御さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、
発達障害と診断された息子を育てた筆者は、
子どもが「ふつう」から外れたときこそ、親子ともども世界が広がるチャンスなのだと実感を込めて思います。ぜひ、多くの学びの選択肢にアンテナを伸ばしてみてくださいね!
■不登校に関する情報収集で役立つサイト
【学校以外の子どもの居場所】
●フリースクール全国ネットワーク
日本全国の子どもの居場所・フリースクールをつなぐネットワークのサイト。「加盟団体一覧」を見てみると、「新しい学びの可能性に挑戦している団体が、こんなに世の中にあるのか!」と驚く。地域毎に分かれているので最寄りのフリースクール探しに役立ちそう。
【学校以外の不登校についての相談先】
●こころもメンテしよう(厚生労働省)
国が作った若者を支えるメンタルヘルスサイト。「困ったときの相談先」をクリックすると、若者向けのサイトなので「どんなふうに相談すればいいの?」と初めて相談をする時の心の持ち方を知るコンテンツもある。「こころの相談窓口」には、地域の保健所や保健センターなど、公的な相談先が多数紹介されている。
●児童相談所一覧(こども家庭庁)
不登校の相談は、児童相談所でも受け付けている。都道府県別の対応窓口の電話番号が出て来るのでアクセスしやすい。
●カタリバ相談チャット
不登校支援の名著「不登校親子のための教科書」を作ったNPOカタリバのサイト。他の保護者の話が聞けるオンライン(Zoom)でゆるやかにおしゃべりする会を定期的に開催して」いるそう。不登校傾向で悩んでいる保護者を対象に、30分のオンライン面談も行っており、利用は無料。
【花まるエレメンタリースクールとは?】
花まるエレメンタリースクール(通称・花メン)は、学校に行かない選択をした子どもたちのためのフリースクールです。写真は実際の花メンの子どもたち。全員が不登校の経験があるとは信じがたい、生き生きと自信にあふれた表情です。
●「花メン」の日々の様子:インスタグラム
林 隼人(はやし はやと)プロフィール
花まるエレメンタリースクールの校長“はやとかげ”こと、林隼人先生
花まるエレメンタリースクール校長、ファッションブランド「ノットイコール」代表、農業×ビジネス教室「みんなビレッジ」主宰。元中学校教諭、サッカー日本代表 川島永嗣と立ち上げたグローバルアスリートプロジェクト学長を経て、高濱正伸との運命的な出会いがあり現在に至る。親と離れて暮らす社会的養護の子どもの人権活動にも取り組んでいる。
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