シリーズ 専門家にきく! 映画『若おかみは小学生!』高坂希太郎監督にインタビュー 子どもたちに伝えたい“おっこ”が大切にする「もてなしの心」
編集部:学研キッズネット編集部
累計発行部数300万部超という大人気の児童文学『若おかみは小学生!』(令丈ヒロ子・作/亜沙美・絵講談社青い鳥文庫)が、ついにアニメ映画化され、9月21日(金)から全国ロードショーとなります。
主人公・おっこ(関織子)は小6の女の子。交通事故で両親を亡くし、祖母の営む温泉旅館で若おかみの修業をしながら、少しずつ成長していく、笑いと涙の物語です。
この映画を手がけた高坂希太郎監督に、作品について、そしてご自身の少年時代についての話を聞きました。
高坂希太郎(こうさかきたろう) 1962年生まれ。神奈川県出身。1979年OH!プロダクション入社。アニメーターとしてのキャリアをスタートさせる。1986年にフリーとなり、多数のスタジオジブリ作品に作画監督や原画として参加(作画監督:『風立ちぬ』『耳をすませば』『千と千尋の神隠し』(共同)
『崖の上のポニョ』(共同)他、原画:『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『火垂の墓』他)。2003年に『茄子アンダルシアの夏』で監督デビュー。同年カンヌ映画祭に出展され高く評価される。2014年、『風立ちぬ』で、東京アニメアワードフェスティバル・アニメーター賞受賞。
監督から見た主人公“おっこ”の魅力
――主人公“おっこ”は、ちょうどキッズネット世代で、この作品のファンも多いのですが、 “おっこ”の魅力は、どんなところだと思いますか?
高坂:おっこは旅館のおかみの修業をするわけですが、おかみの仕事は自分の思いや感情を抑えて、お客さんのために働くことが求められるんです。そんな「他者のために我を忘れて行動する姿こそ、おっこの最大の魅力」と思いました。
「もてなしの心」は、日本だけのものではなくて、英語にも「ホスピタリティー」という言葉があるように、世界共通だと思います。
ところが、そんな登場人物って、最近の作品ではあまりないと思ったんです。だからこそ、もてなしの心を大切にする自然体なおっこの姿を、ていねいに描いていこうと考えました。
――原作や現在放送されているテレビアニメ(TV東京系)と違う部分もあるのでしょうか?
高坂:原作もテレビアニメも「死」に敢えて触れていないんです。それは児童向け原作の持ち味で良いところだと思います。でも今回の映画では、ふだんは元気なおっこが「両親の死」という、内に秘めた影の部分も描きました。