2018年7月30日 10:00
コントロールを外れて暴れる体と、終わりのない追いかけっこー『どもる体』伊藤亜紗さん×発達ナビ編集長
「言い換え」などの工夫を身につけて、傍目には吃音だとわからないぐらいに話し方をコントロールできるようになったけれど、どもらなくなったことで、「本当の自分」を出せていない感覚がして、どこに行ってもどもりたくなってしまう人。
どもらずに話せるようになって、どこか”嘘っぽく”生きることも含めて自分だと受け入れて、吃音と付き合っている人。
「吃音当事者であること」と「その場その場でうまくやり過ごして生きていること」が、微妙に両立しないことがあるんです。
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鈴木: どちらが良い悪いといった話ではなく、個人の生き方の問題になってきますね。
伊藤: ええ、そうなんです。たとえばどもる自分が「本当の自分」だと考える人にも理由があって、どもらないで話すなかで、「本当の自分が出せていない」と感じる経験が重なったからこそだったりするんですよね。
鈴木: 吃音とどう付き合っていくのか、その人が自分の価値観を形成していくまでの物語がある。
伊藤: その物語というのも、今後また変わっていくかもしれないんです。
今は落ち着いていても、これから違うタイプの吃音症状が出るかもしれません。人間関係や生活環境などの影響も受けながら、吃音との付き合い方も変わっていくのだと思います。
鈴木: たとえ今、自分なりに吃音というものの付き合い方が整理できていても、いつまたその前提が揺さぶられるかわからない…。伊藤: みなさんそれぞれ、「こんなときに自分はどもる」とか「自分の吃音の原因はこれだ」と分析して理屈を立てているんですが、結局、100%説明できる合理的な理由なんてものはないんです。
立てたところで、すぐその理屈を裏切られてしまうから、常に自分の体に敗北宣言している感覚です。
結局、個々人が自分の人生の中に吃音を意味づけてつくった「物語」も、長い時間軸で見たら体が全部飲み込んでいくんですよ。うまくしゃべろうとするとどもるとか、どもらないようにすると難発になるとか、吃音って、努力すれば確実に実る、というような分かりやすい話じゃないんですよね。
…なんだか、明るいメッセージが出てこないですね(笑)。
鈴木: そうですね(苦笑)。ま、それも「どもる人」としての誠実さということで…
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撮影:鈴木江実子
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