子育て情報『自閉症ラッパー・GOMESS「親が願う"正規ルート"からの脱却と、幸せにならなきゃいけない理由」――発達障害を描いたCMプロデューサーが聞く【新連載 #見えない障害と生きる】』

2020年8月3日 13:00

自閉症ラッパー・GOMESS「親が願う"正規ルート"からの脱却と、幸せにならなきゃいけない理由」――発達障害を描いたCMプロデューサーが聞く【新連載 #見えない障害と生きる】

その中で音楽が一番ハマりました」

ここでもう一つエピソードがある。「音楽に勉強的だった」頃、ゲームにも没頭していた。裕福な家庭ではなかったため、買ってもらえたのは中古で300円ほどのスーパーファミコンのソフト『RPGツクール2』。その名の通り、命令や画像・音楽を組み合わせ、オリジナルのロールプレイングゲームを作るゲームで、GOMESSはPC版も含めこのシリーズをやり込んだ。そこで音楽素材のため、曲を作り始めたのだという。結果、自作のRPGは完成しなかったが、サウンドトラックはできていた。

「親がゲームを止めないでくれたんですよね。それは大きかったですね。
だからポジティブな気持ちで何かやってるときは、そういう何かが生まれることがある」

姉が好きだというモーニング娘。のCDも借りて聴き、衝撃を受けた。「これめっちゃファンクじゃん!すげぇかっこいい!」と、インストゥルメンタル版のテンポを遅めてビートを乗せ、ラップをする。自然とサンプリングもこなれたものになっていた。

自閉症ラッパー・GOMESS「親が願う"正規ルート"からの脱却と、幸せにならなきゃいけない理由」――発達障害を描いたCMプロデューサーが聞く【新連載#見えない障害と生きる】の画像

Upload By 桑山 知之


家族が疲弊…ラップが人生を見つめ直すきっかけに

献身的に我が子を見守り続けた親だったが、自分を責め、時に精神的に病むこともあったという。

「何年も何年も手を尽くしてくれた結果、頑張った末ですね。俺もズカズカとお母さんに言っちゃうから、お母さんは自分を責め続けちゃって。お母さんが僕よりも程度のひどい引きこもりになりました。
部屋から出てこないみたいな。台所とかでたまたま会って、目が合うと下向いてすぐに速足で自分の部屋に帰っていって、扉をバンと閉めるみたいな」

当時は自分が正気を保つのに精一杯で、家族に支えられていることに気付いていなかった。ラップを通して、いつしか自己を客観的に見られるようになった。

「CDデビューをしたり、テレビに出たり、ライブをしたりするようになってから、精神的自立が始まったのかなと思うんですよね。その辺から少しずつ。歳で言えば18・19歳から20・21歳にかけての4年間くらい。僕にとって過去の清算じゃないですけど、こういう恩恵を受けていたんだなとか、一つひとつ噛み砕いていく時間だったなと思います」

第2回『高校生RAP選手権』で準優勝を収め、世間からの注目が彼に集まる中で、姉も存在を認めるようになっていた。家でブツブツとラップをしていた引きこもりの弟が、「お姉ちゃんにとっても、ようやく人として接する価値のある人間になれたのかな」

関連記事
新着子育てまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.