2021年12月1日 06:15
第3回日本ダウン症会議・合同学術集会をレポート。自立していくため、保護者の不安と孤独を埋めるためにーー「つながる」の大切さとは
という言葉から始まった基調講演。3冊の著作『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』、『傘のさし方がわからない』、『もうあかんわ日記』に収録されている家族を巡る数々のエピソードを、関西弁まじりのご自身の言葉でライブ感たっぷりに語りました。笑いと涙と、どんなにつらい経験だったろうと想像しがたいエピソードもたくさんありました。
良太さんがいかに、周りの人から愛されている存在なのかは、エッセイの端々に表れていますが、そういう存在になったのも、「言葉でのコミュニケーションがほとんどできない弟に、母が『ありがとう』『ごめんなさい』『こんにちは』だけはしっかりと覚えさせていたから。人見知りのお姉ちゃんより、味方をつくっているんです」と話していました。
講演後、市民公開講座の司会の長谷部真奈見さんとの対話の時間がありました。
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長谷部真奈見さん:最新の本『傘の差し方がわからない』のエピソードで「60歳になったときの自分の姿が見えなかった」というところ、しみじみと読みました。
奈美さんが、母と弟と離れて暮らす姿を思い浮かべることができなかった、とありました。私自身も、今小学生のダウン症のある娘と、いつか離れて暮らすなんて考えられないと思ったんですよね。
岸田奈美さん:悲しいですよ、やっぱり。私が先に死んだらとか、弟が死んだらどうしようとか、順番からしても母は私よりも先に亡くなるだろうし、とか…何回想像しても何回でも悲しいです。
ひとりぼっちだったらとは思うけれど、それは私がどれだけ考えても、どうにもならないことなんです。お金を残すとか、弟にとっていい場所を見つけるとかはできますが、それ以上は限界があります。
だから、弟が越えるべき壁を、自分の壁にしちゃだめだなと思ったんです。弟がさみしい思いをするとか、ひとりぼっちになるということは、彼が人生の中でぶち当たる壁なんです。
それを私が先回りして、弟にとっていい環境ばかりを用意していたら、彼にとってよくない環境に出合ったときに、自分で助けを求める力を奪うことになるんじゃないかと、思ったんです。
弟が大好きだから、弟がつらい未来は考えただけでつらい。でも、私が一生家族のめんどうをみることが大事なんじゃなくて、自立と言うのは、できるだけ依存する先を増やしていくことだと思うんです。味方を増やしていく。