癇癪のお悩み、対応方法と減らしていくヒントは?作業療法士・野田遥さんが解説!
「なぜ?」に着目して癇癪への対応を考えよう
作業療法士の野田遥です。LITALICO発達特性検査の研究・開発に携わっています。
今回は2024年の夏に開催したLITALICO発達特性検査のオンラインセミナーでの講義内容を再構成し、「なぜ?癇癪(かんしゃく)が起きるのか?」に着目した対応方法について、基本となる考え方をお伝えします。
イベントの内容やLITALICO発達特性検査について、詳しく知りたい方は以下の記事を併せてお読みください。
この記事では、怒りや不安、欲求不満などの感情によって、気持ちや行動のコントロールがうまくできなくなった状況のことを癇癪と呼ぶこととします。お子さまの癇癪は、子育ての大きな悩みの一つであり、対応が難しいと感じている保護者の方も多いかもしれません。
Upload By LITALICO発達特性検査 編集部
保護者の方にとって、お子さまの癇癪は止めたい、起きないように予防したいものだと思います。今回は、この「なぜ?」に着目した考え方に沿って、癇癪が起きたときの対応、また減らすための対応方法について、詳しくご紹介します。
前回の記事では「癇癪がなぜ起こるか」についてお伝えしました。
・興奮の波に影響される
・コミュニケーションの手段が少ない
・お子さまに癇癪と関係しやすい発達特性がある
など、癇癪が起きる仕組みやきっかけになりやすいことがあります。これらの中からお子さまの場合、関係していそうな要因はないかを考え、理解することが最初のステップになります。
「なぜ癇癪が起きているか?」、つまりお子さまにとって癇癪がどのような機能を持つかを考えた場合、その行動は「何かを伝えたい」という誰もが持っているコミュニケーションの一つの形でもあります。そう考えると、癇癪という手段に頼らなくても自分の気持ちや要求が伝えられるようになったり、興奮の波をある程度コントロールできるようになることが、癇癪を減らしていくことにつながります。
基本となる癇癪への対応方法
癇癪の前後や最中には、お子さまは興奮状態にあると言えます。まずは、この興奮に対してアプローチする方法を2つご紹介します。癇癪が頻繁に起きる場合、お子さま本人が自分で気持ちを落ち着けるのは難しいことが多いです。
お子さま自身に頑張ってもらうこと以上に、周囲の大人の対応の仕方や環境調整によって、落ち着きやすい状態にすることが対応の基本になります。以下で詳しく見ていきましょう。
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癇癪の要因となる興奮を抑えるために、刺激の少ない状態にするということがポイントです。
焚き火にガソリンを注ぐとどんどん燃え、周りに燃えるものがなくなってくるとだんだん火は鎮火してきます。癇癪も同じで、興奮の燃料となる刺激をなくしたり、減らすことが重要です。癇癪を起きにくくするだけでなく、癇癪が起きたときにも、再燃させる刺激がなければ、時間経過とともに癇癪や気持ちの興奮もだんだん落ち着いていきます。
そのため、癇癪が起きたときに刺激のないクールダウンルームやスペースを利用するということが有効な場合があります。専用の部屋や設備をしっかり作らなくても、工夫することでご自宅や園・学校などでもクールダウンのスペースを作ることができます。
例えば、教室の後ろに大きめの段ボールを置き、切り抜いて扉を作ることでクールダウンスペースにする方法があります。ちょっと気持ちがしんどくなってきたときや、気持ちのコントロールが難しそうだな、というときにお子さまが自発的に中に入れるようにしておきます。そうすると、癇癪が起きたときにクールダウンを促したり、癇癪が起きそうなときにお子さまが自ら選択して刺激を避けることができます。
落ち着くことにつながる活動も有効です。
落ち着きやすい活動はさまざまな選択肢があります。お子さまに合ったリラックスできる方法がないか探してみてください。
・水を飲む
・仕切られた空間で横になる
・お気に入りのぬいぐるみを触るなど
ほかの活動をして気をまぎらわすというのも一つだと思います。単調なことをしたり、好きな活動をすると、落ち着いてくることがあります。
・緩衝材のプチプチを潰す
・好きな本や音楽を聴くなど
ここまで2つあげましたが、何より大事なのが安全確保です。
投げて怪我をしそうなものなど、周りに危険なものがないようにしておく、自動車などが通る場所であれば移動するといった対処や、壁に頭を打ちつけるなどの行動が見られるときには、お子さまが怪我をしないよう専門家に相談しながら対応を考えていく、調整していくということが必要になるかもしれません。また、本人だけでなく、保護者の方やきょうだいなど、周りの方の安全確保も大事です。年下のきょうだいがいる場合、怪我をしたり巻き込まれたりしないよう特に気をつけたいポイントです。
お子さまが成長するにつれ、力が強くなっていくこともあるので、より安全確保が重要になってきます。
興奮状態のお子さまを抑えて安全を確保するのが難しい場面もあると思います。ぜひ、保護者さまだけで抱え込まず、周囲や専門家に相談していただければと思います。
癇癪を減らしていくためのヒント
予防的に取り組めることの一つとして、直接的に癇癪にアプローチするだけでなく、癇癪以外の行動や選択肢を増やすようなアプローチを取ることが考えられます。
充実した時間を過ごすことができていると、癇癪が起きるような状況が減ってきたり、興奮や不快な刺激が少なくなったりすることがあります。反対に、手持ち無沙汰でほかにすることがない場合や、楽しめる複数の選択肢がないと、切り替えのタイミングで癇癪が起きることも多いですね。
例えば排水溝にものを落とす遊びが好きで、ほかの遊びにあまり興味がないというお子さまの場合、それを止められてしまうと「ほかに自分にとっての楽しいことがないから、楽しいことを奪われた」という気持ちがすごく強くなるでしょう。しかし、ほかにいろいろな遊ぶ手段があれば、「別の遊びをすればいいか」「排水溝から離れても楽しいことがある」などと切り替えやすくなるかもしれません。
そういった意味で楽しくできることの選択肢を増やすというのが重要です。癇癪を起こしていない時間が長く、充実していることが、癇癪を減らすこと自体につながるのです。
また、選択肢を増やしていくという意味では、癇癪を別の行動に置き換えたり、気持ちを切り替えてみた結果、いいことがあった、という経験を増やして実感できるようにするのもポイントです。
選択肢をどう作るかのポイントとしては、興奮するような楽しいことだけでなくて、落ちついて楽しめることを見つけることです。
「落ち着くことにつながる活動をする」でご紹介したような、リラックスできるような状況や手段を増やすことが大事になってきます。
癇癪につながるサインに応じて、癇癪が起きる前の対応も重要です。興奮の波をキャッチして、癇癪の前兆の段階で落ち着けるような関わりをしてクールダウンしていくというのが大事になってきます。癇癪の前兆のサインは「モジモジしている」「動きや声が大きくなる」などお子さまによってさまざまです。
起きている時や事前にどういうことがあったかなどを分析すると、こういう時に起きやすいんだな、というパターンが見えてくることがあります。「よく起きるな」というときの状況や様子をメモなどにして書き溜めて振り返ってみるといいかもしれません。
癇癪が起きている間に気をつけること
癇癪を起こしている際は、いつもなら受け入れられる内容でも刺激になってしまう場合があります。興奮して怒っているときや、納得できていないときに正論を言われても、注意したことが刺激となって、かえって癇癪が収まりにくくなることもあります。
もちろん安全確保は必要ですが、まずは気持ちを落ち着けることを優先した方がいいかもしれません。
説明が必要な点については、落ち着いて話ができるようになってから伝えるといいでしょう。
癇癪をやめさせるためにお菓子やおもちゃを与えると、その場では収まりやすいかもしれません。特に長い時間癇癪が収まらないとき、気分がなかなか切り替えられないとき、外出先でどうしても収めたいときなどには、つい、頼りたくなってしまいますよね。ですが、その後、それが欲しくて癇癪を起こすというふうに意味合いが変わってくる可能性があります。
「癇癪を起こしたら欲しいものが手に入った」という経験から、お子さまが菓子やおもちゃを欲しいときに癇癪を起こすということを学習し、要求のコミュニケーションとして癇癪を用いるようになるということです。
ここでポイントとなるのが、欲しいものをあげることがよくないのではなく、「癇癪を起こしたからあげる」というのは避けた方がいいということです。
反対に、事前に約束したご褒美であれば有効だと考えられます。例えば癇癪が起きる前に、「歯医者さんで頑張ったら、おもちゃを用意しているからね」と事前に提案しておいて、できたらご褒美をあげるというのは、苦手なことだけど必要なことに取り組んでもらうためにはとてもいいと思います。
ご褒美の仕組みや取り入れ方については、以下の記事も参考にしてください。
まとめ
今回のコラムでは、オンラインセミナーでお伝えした内容をもとに、癇癪についての基本となる対応方法をお伝えしました。取り入れられそうなものがあれば、試してみてください。
とはいえ、癇癪は、解決するのがとても難しいお悩みの一つです。対応する保護者の方にとって、家庭で抱え込んでつらくなってしまうこともあるかもしれません。癇癪が起きる要因は複雑で分かりにくい場合もあります。具体的に分析し、どのようにサポートするか方法を考えるハードルもあるでしょう。そのような場合には、相談機関や支援者の方への相談をお勧めします。
近くに相談できる場所がないという場合には、サポートの方法のヒントが得られるオンラインツールなど、負担を減らす方法を検討するといいでしょう。発達ナビにもいくつかの選択肢があります。活用できるものがないか探してみてください。
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