遺伝子か環境か。子どもの “学力と運動能力” はどちらで決まる?――「行動遺伝学」の答え
一方で、0~6歳ごろまでは遺伝の影響はまだそれほど見られず、家庭環境の影響が大きいと言えるそう。このように、学力の場合は年齢によって、遺伝の影響が大きい時期と、環境の影響が大きい時期が異なるようです。
実際に割合の数値で見てみると、要素によっても異なりますが、大まかに言えば遺伝が「50%」、環境が「50%」影響すると言われています。
体型は遺伝が強く、性格は環境の影響を大きく受ける
しかし、要素別に細かく見てみると、遺伝と環境の割合は微妙に異なってきます。ここでは、要素別に遺伝と環境の影響の割合をご紹介しましょう。
<学力>
行動遺伝学の中で最も研究されている分野が、学力や知能に関すること。その研究結果によると、遺伝子の影響が60%程度、環境の影響が40%程度と言われています。また、知能に関しては、小さい頃は環境の影響が大きく、年齢を重ねるにつれて遺伝の影響が強くなることもわかってきています。
<運動能力>
運動能力の場合は、ほかの要素に比べて遺伝の影響が大きいようです。66%は遺伝要因で決まると言われています。また、トレーニングなどでどれくらい鍛えられるかというのも、遺伝的要素が関係してきます。
<芸術的センス>
芸術的なセンスは科学的な測定が難しいため、エビデンスはあまりありません。しかし、音楽の分野では、リズム感や絶対音感などは50%程度の影響があると認められています。
<性格>
性格の特徴には、さまざまな要素があります。例えば、「協調性」や「外向性」「開放性」「神経質」「誠実性」などです。そして、そのような要素が親から子へどのぐらい遺伝するかは、30~40%程度と言われ、環境の影響は60〜70%です。
つまり、性格は遺伝の影響よりも、環境の影響が大きいと言えるでしょう。
<体型>
肥満になる遺伝の影響は非常に大きく70%、身長は80%ぐらいと言われています。
要素別に見てみると、学力や芸術的センスはおおよそ半々の割合ですが、運動能力と体型は遺伝の影響が大きく、逆に性格は環境の影響を受けやすいことがわかります。安藤先生によると、「双生児法」を使った調査では、そのほかにもいろいろとおもしろいことがわかったと言います。たとえば、同じ遺伝的素養があっても、環境によって出る場合と出ない場合があるそうです。問題行動の遺伝的素養の場合は、しつけが厳しすぎたり一貫していない家庭のほうが強く出る傾向があり、しつけがきちんとしている家庭では遺伝的素養を持っていてもそれが表れにくいのです。