自己肯定感も勉強への姿勢も“熱中体験”の先で生まれる
そういう親御さんの多くは、人生を学力によって勝ち抜いてきた人でしょう。だからこそ、「学力は裏切らない」という思考が強く刷り込まれ、その人たちのアイデンティティーをつくっているのです。
でも、いまとむかしとは時代がちがいます。大学入試にしても、2020年には大きな改革が行われます。これまでの認知能力を問うテストではなく、その子が生きてきた人生をプレゼンテーションして推薦で入学を勝ち取るといったことも出てきます。そう考えると、それこそ子どもの好きなことをきちんと見つけて、熱中させてあげることが大切なのではないでしょうか。
それは個性を伸ばすといういい方もできるはずです。そういう意味では、アスペルガー症候群やADHD(注意欠陥多動性障害)もひとつの個性といえます。
じつは、たくさんの子どもたちと接するなかで、そういった特徴を持つ子どもこそ将来は大物になるのではないかと感じることも少なくないのです。
アスペルガー症候群の子の、ひとつの遊びだけをひたすらずっと続けられるという特徴からは、学者のようななにかを突き詰めていくような仕事への適性があると考えられます。ADHDの子のいろいろなことを並行して休みなくやれる力は、経営者に必要な力といえるでしょう。
もちろん、そういった特徴を持つ子どもたちの親には、大変なことがたくさんあるはずです。でも、なるべくその個性が育つ芽を摘まずに見守って伸ばしてほしいと思うのです。
これからのグローバル化社会に重要となる自己肯定感
さて、これからはただの学力ではなく、子どもが好きなことや個性を伸ばすべきだと述べましたが、わたしのなかで「これだけはきちんと伸ばしてあげてほしい」と思うものがあります。それは、「自己肯定感」です。
いまの日本は、グローバル化や少子高齢化がどんどん進んでいます。
労働力不足が叫ばれるなか、外国人とも一緒に仕事をすることがあたりまえになっていくでしょう。外国人とチームを組んで、自分が持っているものとはちがう多様な価値観を受け入れ、しっかりと仕事を成功に導いていけるのか――そういう力が求められるはずです。
そうなったとき、もし自己肯定感を持てていなかったとしたら……?自分とは異なる価値観に出会って、「これはちがうんじゃないか」と思うようなこともやらなければならないとき、自分に核となる部分がないとすごくつらいのではないでしょうか。