もちろん、どこが聞き取れていないか、答え合わせをするだけで終えてしまっては意味がありません。聞こえなかった部分をスクリプトで確認したら、音声を聞き直し、正しい発音をインプットしましょう。自分でも正しく言えるようになるまで発音練習を繰り返すことで、聞き取れる音が増えていきます。
このようにしてまずはリスニング力の素地をつくったうえで、イギリス英語など他の英語へ慣れる練習も行なっていけばよいと思います。
——共通テストでは発話内容がそのまま答えに直結する問題が減りましたね。内容を聞き取るだけでなく、話者の意図や状況までを読み取る力も必要になりましたが、こうした力はどのように対策すると身につくでしょうか。
田畑さん:
もちろん、意図や状況を読み取るためには細かい英語の表現やニュアンスを理解できないといけませんし、そのための語彙や文法知識は必須です。
ただ、そういった知識があるだけでは、実際のリスニングテストにおいて余裕をもって解答できないということが、往々にして起こります。
これは、リスニングスキルをいかに自動化(※3)するか、ということに尽きるかと思います。
リスニングをする際の脳内の処理プロセスを考えてみましょう。
まず、耳から音声情報が入ってきますね。その後、脳内では「音声知覚」という処理が行なわれます。簡単に言うと音声を認識して、そこから単語を割り出せるということです。このあと、「理解」の処理に移ります。ここでは文法の知識や、語彙の意味の知識、背景知識など、自分がもっている知識と照らし合わせて内容を理解したり、文脈を把握したりします。
この「音声知覚」→「理解」の処理がスムーズにいかないとリスニングがうまくいきません。
英語が母語ではない私たちは、最初の「音声知覚」の部分でつまづいたり、かろうじて聞き取れたとしてもそこで脳のワーキングメモリの多くを消費したりしてしまう、ということが起こります。そうなると、その後ろの「理解」の処理に回す余力がなくなり、内容の把握が追いつかなくなる、ということが起こるのですね。
瞬時に話者の意図や状況までを読み取るためには、いかに最初の音声知覚の負荷を下げ、自動化していくかということが鍵になってきます。
※3自動化:頭のなかで考えなくてもすぐにできる状態のこと。
大学入学共通テスト(英語)の点数を効率よく上げるには
出題形式が大きく変わった大学入学共通テスト(英語)。