子育て情報『「あなたはもう読んだ?」現代の子どもたちに必要な一冊とは』

「あなたはもう読んだ?」現代の子どもたちに必要な一冊とは

・からだをこわしたらいちばんこまる人たちが、いちばんからだをこわしやすい境遇に生きている(同第二節より)
・この人々のあの労働なしには、文明もなければ、世の中の進歩もありはしないのだ(同第三節より)

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みなさんは「人手不足 」という言葉をよく耳にされるかと思いますが、筆者はこの言葉に何か違和感を覚えてしまうのです。

なぜなら、労働者が自分の身を削ってする厳しい労働に対して経営者がそれに見合った正当な賃金を払っていさえすれば、「人手不足」になどなるはずがないからです。

保育士さんにしても介護士さんにしても適正な報酬が貰えていないからこそ人手不足になるのであって、「人手不足」などという言葉が横行する状況は企業経営者にとっては“恥 ”だと思わなければいけません。

『君たちはどう生きるか』では今から80年も前に、額に汗して働く人たちの労働こそが世の中の根底を支えているにもかかわらず、そのような労働に対して“支配する側”の人たちが適正な賃金を支払っていないことの不条理を指摘しています。

声高に“働き方改革”などと言う前に政治に携わる人たちにはこの本を読んでいただきたいものだと筆者は思ってしまいます。

己の情けなさを認めて初めて一人前

『君たちはどう生きるか』に描かれているもう一つの普遍 。それは、「人間は自分の弱さ・あわれさ・情けなさを認めるこ とができたときにようやく立派な一人前の大人になれる」ということです。

本作品第六章『雪の日のできごと』では、コペル君の同級生である北見君が上級生5~6人に囲まれて「俺たちが作った雪人形をわざと破壊しただろう」と因縁をつけられます。


上級生たちは「礼」や「規律」を持ち出して北見君に謝罪と服従を強要 しますが北見君はわざとやったわけではないのでそれを断るのです。

案の定、上級生たちの鉄拳が飛んで来たとき、級友の浦川君と水谷君は自分の身を盾にして北見君を守るのですが、コペル君は上級生たちのことが怖くて陰から事の成り行きを見守ることしかできませんでした。

友だちが危機に瀕しているときに何もできずただ隠れていたことにコペル君は、学校に行けなくなるくらいの強い自責の念 に駆られてしまいます。つづく第七章『石段の思い出』の中の「おじさんのノート」で、“おじさん”はコペル君にこう語りかけます 。

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・人間は、自分自身をあわれなものだと認めることによってその偉大さがあらわれる(第七章おじさんのノートより)

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