健康管理しすぎは逆効果? 医師たちが語る“フィンランド症候群”の根拠
こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。
30代以下のみなさんにはあまり馴染みのない言葉だろうと思いますが、1990年代の前半にわが国でもメディアで大きく取り上げられた概念で、『フィンランド症候群 』というものがありました。
フィンランド保険局が40歳から45歳までの管理職約600人を選んで定期検診・栄養管理・運動指導・酒タバコ塩分の抑制を義務づける一方で、同年代同職種600人の別グループを選定し定期的な健康調査票への記入だけを依頼したうえで、あとは自由になさってくださいとしました。
1974年から1989年までつづけられた追跡調査の結果、15年後に出た答えは、「後者の健康管理されなかったグループの方が健康で死亡率も低い 」でした。
この事実のことを当時のわが国のマスメディアが『フィンランド症候群』と呼んだのです。
健康管理の専門家ともいえる医師たちの中に今、「フィンランド症候群には根拠がある」と言い、現代人の“過度な健康志向”に警鐘を鳴らす人が次々に現れています。
今回は「フィンランド症候群には根拠がある」と言う医師たちの論拠について考えてみたいと思います。
●熊本市の元ラガーマン歯科医師は“依存”と“免疫機能低下”を指摘
熊本市で歯科医院を開業する歯科医師の菊川明彦先生は、東京医科歯科大学ラグビー部でプレーした元ラガーマンですが、ご自身の『菊川歯科』のホームページの中でフィンランド症候群について触れ、次のような主旨のことを述べています。
“フィンランド症候群を初めて世間に紹介したロラン・ジャカールとミシェル・テヴォスの共著『安らかな死のための宣言』では、「治療上の過保護と生体の他律的な管理は健康を守ることにはならず、逆に依存・免疫不全・抵抗力の低下をもたらす 」と指摘している。むろん必要な医療は受けなければならないが、健康保持には平生、自ら抵抗力をつけ免疫機能を高める工夫が肝要だ”
ラガーマンらしい捉え方ですが、フィンランド保険局の調査で心臓血管系の病気、高血圧、癌、自殺等いずれの調査項目においても健康管理をされなかった人々のグループの方がはっきりと好結果を示している事実をみると、菊川先生の考え方には注目すべきところがあるのではないでしょうか。●気鋭の精神科医が語る「ストレスフルな人生こそ身体に悪く、NK細胞の不活性を招く」