不自然じゃない! バイリンガル教育への偏見とメリット&デメリット
Skutnabb-Kangas(1981)は、十分発達していない言語で学ぶときに感じるストレスについて指摘しています。
よくわからない言語で授業を聞く場合には、高度の集中力が要求され、それは大変に疲れることなのです。
その上、常に言葉自体に注意を払っていなければならないので、授業の内容まで考える余裕がない ということになってしまいます。
子どもは各教科の理解を深めると同時に、言語も学習しなければならないのです。
結果として、ストレスの高まり、自信喪失、そしてドロップアウトなどが起こる危険性があるのです。
小さい子どもの場合でも、この不安とストレスについて十分に注意を払わなければならないのは同じです。
2歳半のときに渡米。家ではとてもおしゃべりであるにも関わらず、通っている現地幼稚園ではいっさい声を発しない5歳の日本人少女の事例が『異文化に暮らす子どもたち―ことばと心をはぐくむ』という本の中で紹介されております。
『この少女は、プレッシャーと戦いながら、異文化に放り出された自分を失わないための自分なりの手段として、家庭と幼稚園での自分を使い分けていたのだろう』と著者である早津邑子さんは述べています。
残念なことに、この少女は専門医により重い心の病気であると診断され、治療のため日本に帰国することになってしまったそうです。
このような、つらく悲しい思いをかわいい子どもにはさせたくありませんよね。
私の娘の場合は、この事例の女の子とほぼ同じ年齢である2歳半でシンガポールに住み始め、英語の幼稚園に通い始めたわけですが、風邪を引いて熱があるにも関わらず幼稚園に行きたいと泣いたほど幼稚園が好きで、英語も短期間で驚くほど上手になりました。
良い先生に恵まれたのだと思います。子どもの性格が外向的であったことも幸いだったでしょう。
小さい子どもを外国語環境で学ばせる場合は、お子様の性格、学校環境、先生の質などに特に注意を払うことが必要ですね。
●まとめ
(1)バイリンガル教育は5千年以上の歴史を持ち、多言語社会の方がむしろ自然である。
(2)研究の結果から、脳には言語能力用に限られたスペースしかないためモノリンガルの方が望ましい、と考えるのは間違っていることが示されている。
(3)バイリンガル教育の結果、(a)異文化を理解でき広い視野で物事を判断できる、(b)