子育て情報『なくならないパワハラ指導。順番を間違えるとブラック指導になるスポーツ現場の「人間教育」』

なくならないパワハラ指導。順番を間違えるとブラック指導になるスポーツ現場の「人間教育」

例えば、軍隊で上の者が下の者を意のままに動かすために暴力をふるうような文化。日本のスポーツ界は、それをそのままひきずってきました。支配するための暴力がいつの間にか「人間教育」という耳障りの良いものに変容してしまいました。

それが令和になった今でも踏襲されています。鹿児島県の高校の監督が「いけないとはわかってたが......」と前置きしたのは、もしかしたら「いけないけれど、やらなければならないときもある」と解釈しているのもかもしれません。

「精神的に追い詰められる場面がないと強くなれない」という指導者もいっぱいいます。が、そういう選手は他人に追い詰められなければ立ち上がれない人間になります。もっともつくるべきは、自分で高い目標を掲げ、そこに自分を追い詰めて努力していける人間です。


■方法論や順番を間違えると、ブラックな指導になる

なくならないパワハラ指導。順番を間違えるとブラック指導になるスポーツ現場の「人間教育」

(写真は少年サッカーのイメージです)

これを知る者はこれを好むに如(し)かず。
これを好むものはこれを楽しむものに如かず。

「論語」に出てくる有名な言葉です。

知ることよりも、好きなことが、好きなことよりも、楽しむことが上達につながるという意味です。育成期の子どもたちには、ここを懸命に伝えなくてはいけない。それなのに、目の前できれいに整列する「出来栄え」を追求してばかりいる。

それが今最も多い指導者の姿ではないでしょうか。

思えば、私がおよそ20年前にドイツから帰国し「スポーツマンシップ教育を取り入れましょう。
このままでは日本のスポーツは廃れてしまいますよ」と訴えたとき、学校関係者の方々の多くから「人間教育なら、もうやっているよ」と言われました。

その当時はわかりませんでしたが、その方々が考えていた人間教育は、実は方法論や順番を間違えると、ブラックな指導になる危ういものだったのです。

私たちは、もうそろそろ過去の常識を疑わなくてはいけません。

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高橋正紀(たかはし・まさのり)
1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜協立大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。
聴講者はのべ5万人に及ぶ。

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